アニサキスの食中毒が増加という報道

名称未設定 4 アニサキスによる食中毒が増加しているという報道が最近みれらます。たしか5月8日に毎日新聞が「アニサキス 生の魚介類で猛威 10年で20倍」と報道したのがきっかけだったと思います。

 当院にもいくつか取材が来ました。おそらく以前ブログにアニサキスを書いているから目にとまったのでしょう。

 日本テレビのスッキリの取材を受けてインタビューがうつりました。うまくしゃべれないのに引き受けて後悔でしたが、国立感染症研究所の杉山広先生が的確にコメントされていてまとまりました。
 スッキリで杉山先生から報告数増加の理由として、2つあげられていました。

1.2013年に食品衛生法が改正され、保健所に届け出が必要になったこと。
2.遠隔地の魚が新鮮な状態で届くようになり生魚の流通が増えたこと。

 僕の実感では10年間で20倍もアニサキスが急増した印象はありません。
 杉山先生のコメントも、報告数が増えているがアニサキス症が増えたというよりは報告されてなかっただけというニュアンスだったと思います。(それと2番の理由)
 そもそも厚労省が出した件数は、2007年6件→2016年124件であり全く把握できていなかっただけのことです。というのもうちのような小さなクリニックでさえ毎年4-7件のアニサキスをみつけています。割合も胃カメラ100件あたり1件前後で変わりありません。

 それだけあるのになぜ少なかったかと言えば、保健所に届け出ができなかったこともあげられると思います。

 医師には届出義務がありますが、患者さんが店への調査希望がないと保健所はそれ以上調査せず届け出できませんでした。アニサキス中毒が確定すると店が営業停止になるのが重く感じられ、馴染みの店なので調査を希望しない方もいました。
 また釣ってきたりスーパーで買ってきた魚を調理して起こったアニサキス症は保健所に連絡してもそこで調査打ち切りでした。これでは実態が把握されず、有効な対策ができません。実態を把握するために届け出させてほしいとお願いしたこともあります。

 2013年の食品衛生法改正後も少し混乱があってそのような運用がありましたが、最近は全て報告できるようです。今回江東区の保健所に確認したところ、今は自分で調理したアニサキス症も全て受け付けてくれるとのことでした。
(上記の話しが全国に当てはまるのかはわかりませんが)

 ということでアニサキスの報告件数が増えた理由を杉山先生があげた他にあげるなら

3今まで保健所が受け付けなかった届け出が受理されるようになった。
4受理されなさそうな症例は報告を差し控えていた医療機関があった。(当院)

そして

5内視鏡が普及して診断数が増えた。
 大きい病院であっても緊急内視鏡のハードルは高かったのが、内視鏡の普及でその日のうちに内視鏡が気軽にできるようになったことも大きいでしょう。アニサキスは数日で改善するので、1週間後の予約では見つかりません。

6アニサキスの認知度があがり患者さんが適切な医療機関を受診するようになった。
 アニサキスだと思うから胃カメラしてほしいと来られる方がいます。散発的にアニサキスのニュースはありますから認知度が上がっているのでしょう。これも発見数増加の一助となっていると思われます。(今年はこのニュースで増えそうですね)

7.新鮮な魚の入手が容易になり熟練してない調理人が生魚を扱うようになった
 冷凍物ではない鮮魚は高級店でしか食べられないものでしたが今は違います。当院で経験したアニサキス症は、サバ専門の有名店から居酒屋や回転寿司まで様々です。面白いところでは、調理学校で実習で自分で調理した魚を食べて来た方もいました。お客さんの辛さを身体で覚えたことでしょう。

 これらのように、生魚が手に入りやすくなったのが一因ですが、アニサキスがそこまで急激に増えたとは言えないと思います。報告が増えていますが今までもあったのでしょう。


 日テレのスッキリに出てからアニサキスについて取材の申し込みが他からもあります。僕は杉山先生のように話せませんし、もう杉山先生の説明でいいように思いって出演はお断りしています。
(親が喜ぶと思ってスッキリには出ましたが、親孝行は十分させて頂きました(^^))

 今回のニュースで、飲食店がアニサキスに注意をより一層払うようになればと願っています。

 なお、今回出ている写真は、まさに今日摘出したアニサキスです。
 某ワイドショーから今日の取材を依頼されて断ったのですが、それを引き受けていれば来週月曜にはこのシーンがお茶の間に流れていたのでしょうね。 



doc_toyonaidoc_toyonai  at 20:50  | コメント(4)  |  この記事をクリップ! 内視鏡  

溶け残った錠剤

胃のむかつきが続く80代の方が胃カメラを受けたところ錠剤が残っていました
胃カメラの日は基本的に薬を飲まないで来て頂きますが、血圧や不整脈、てんかんの薬など飲んできてもらうものもあります。

名称未設定 1この方は当日朝に2種類の血圧の薬を飲んできました。2時間以上経っていましたが、そのどちらかが残った可能性があります。
不良品だったのでしょうか。

まさか溶けないなんてことないだろうと思ったのですが、一応調べる必要がありそうです。というのも、この方は以前から後発品(ジェネリック医薬品)に変更していました。

かなり前ですが、まだ後発品がゾロと呼ばれて低くみられていた頃、一部に粗悪品が出回っているという噂がありました。飲んだ薬が溶けずにそのままお尻から出てくるなんていう冗談もあったくらいです。
今時そんなことはありませんが、思い浮かんだのはそうした不良品の可能性でした。

そこで、2つの薬についてメーカーに問い合わせをしました。
すると一方の薬剤が、徐放剤(ゆっくり溶ける薬)のためコーティングが水に溶けない工夫がされており、まれに錠剤の形のまま便から出ることがあると返信がありました。
この薬は三和化学のニフェランタンCRですが添付文書にも書いてありました。
徐放剤なので疑わしいと思ったものの、赤い錠剤なので違うと思っていましたが色は抜けてしまうそうです。
メールでの問い合わせでしたが、速やかに返答して下さり助かりました。勉強になりました。

ところで、速やかに解決したように見えますが、実はこの患者さんがどの薬を飲んでいるかはすぐにはわかりませんでした。というのも、本来、処方せんに書かれた薬を後発品に変更した場合、薬局から医療機関へ情報提供する義務があります。しかしこの患者さんが通っていた薬局は、ここ数ヶ月後発品変更の連絡を怠っており、どのメーカーに変更されているのかがわからなかったのです。

薬局には今後そのようなことがないようお願いしました。


doc_toyonaidoc_toyonai  at 13:30  | コメント(2)  |  この記事をクリップ! 内視鏡 | 医療に関する情報 

C型肝炎:ハーボニーの先の新規薬剤~JDDW 2016 in 神戸~

28 今年もJDDW(日本消化器関連学会週間)に行ってきました。
 JDDWは消化器に関係した学会が5つまとめて行われる大きな学会です。

 今回は主に肝炎と発癌、C型肝炎、大腸内視鏡の精度管理についてみてきました。

 ここではお昼のセミナーで聴いた熊田先生(虎ノ門病院分院)のC型肝炎の話しについて書きたいと思います。

 C型肝炎はDAA(直接作用型抗ウイルス薬(飲むだけで治せる薬))の開発で、100%治ることが視野に入ってきました。10%も治らなかったインターフェロンの時代からは夢のような話しですが、更に新規の開発が続いています。

 もうすぐ発売されるエルバスビル / グラゾプレビル(elbasvir / grazoprevir)は耐性ウイルスに期待できそうです。リバビリンと併用にならなかったので、腎機能障害では使いにくいハーボニーと差別化ができ、ヴィキラックス(オムビタスビル/パリタブレビル)も腎機能障害がある方には使えますが、リトナビルが入っていることで併用薬に制限があります。そこでこのエルバ/グラゾに期待がかかります。

 最初に認可されたDAAであるダクラタスビル/アスナプレビルはやや著効率が低いことや耐性ウイルスが問題でしたが、この2剤にべクラブビルを加えた3剤の合剤ジメンシー(Ximency)が出てくるようです。

 更に注目すべきは、全ての遺伝子型に効く薬の登場です。これまでの薬のほとんどがgenotype1(今風にはGT1と書きますが)とGT2のためのものでした。グレカプレビル / ピブレンタスビル(glecaprevir / pibrentasvir(ABT-493/ABT-530))はGT1~GT6にまで効果があるようです。患者数は少ないものの日本にもGT1/2以外の方がいます。 日本での発売は早くて来年以降でしょうが、やっとDAAの恩恵にあずかれるようになりますね。(適応でGT1限定にならないことを願っています)

 抗ウイルス薬の進展はめざましいものがあります。しかしDAAは使い方次第では耐性ウイルスを作ってしまう両刃の剣であり、次の治療を閉ざしてしまいます。

 当院でもハーボニーやヴィキラックス、ソバルディなどのDAAは処方していますが、今後出てくる新規薬剤についてもっと勉強をしていきたいと思います。


doc_toyonaidoc_toyonai  at 09:45  | コメント(0)  |  この記事をクリップ! 肝炎 | 医療に関する情報 

充満胆石で手術

 胆石は腹部超音波(エコー)検査で比較的よくみつかる所見の一つです。今回は経過観察中に増えて手術に至った方を紹介します。

 そもそも胆石は痛みなどの症状がなければ、治療せず様子を見るのが基本です。
 胆石には薬(ウルソなど)で溶けるタイプのものもありますが、毎日飲む必要があること、溶ける可能性が半々であること、再発がよくみられることなどから、薬による治療は主流ではありません。

GBstone_pre 今回の方は60代の方で、B型肝炎キャリアのため定期的にエコー検査を行っており、その際に複数の胆石がみつかっていました。

 左がその画像ですが、胆石は最大のものは15mmでした。胆石の上の方には黒くみえるすきまが空いていることが分かります。
 身体の向きを変えると胆石が胆嚢の中を動くことが確認されます。胆のう炎や胆のう癌などはみられず、腹痛などの症状もないことから、治療せず様子をみることとなりました。

 1年半後に行った腹部エコー検査が次の写真です。
GBstone_post 胆石が胆のうの中に充満しており、隙間がありません。このように充満胆石になると体位を変換しても胆石は動きません。
 
 ところで、胆石による刺激が胆のう癌を引き起こす可能性が報告されています。しかしまだ明確な証拠とまではいかず、胆石と胆のう癌発生の関連は決着がついていません
 一方で、充満胆石は癌の原因だと単純には言い切れませんが、胆石が充満していると、癌ができても見つけにくくなってしまいます。
  そのため充満胆石は慎重な経過観察が必要とされ、たとえ症状がなくても手術を行うことがあります。

 このような経緯を説明し、ご本人が精査・加療を希望され、近隣の病院で手術をして頂きました。

 最近は腹腔鏡による手術が普及して、身体への負担が小さくなりました。今回の方は入院の翌日に手術を受け4泊5日で退院したとのことです。

 ただ、実際に胆石の方の経過観察をしていても、そうそう充満胆石になるわけではありません。今回の方は1年後の検査で充満して見えたものの、食事の影響だったのかもしれないと疑い、念のためその半年後に再検して改めて充満胆石を確認しました。

 1年でこうも見え方が変わる方は珍しいように思われました。充満胆石だけでなく、急激な胆石増加という点でも手術をしてよかったと考えます。
 

doc_toyonaidoc_toyonai  at 15:10  | コメント(0)  |  この記事をクリップ! 医療に関する情報 | 腹部エコー 

食道に刺さった魚骨

 今回の内視鏡写真は、魚の骨が食道に刺さっていた方のものです。
 魚の骨が喉に引っかかるというのはよく聞きます。たいていは自然に治まるものですが、それが1週間も続いてしまい来院されました。

01  患者さんは80代の方です。物忘れなどもなくとても元気な方です。1週間前から
胸のあたり(胸骨の裏)が痛く、大きな物を飲み込むと痛みが強くなるとのことでした。一時的によくなることもありますが、症状が消えることはありません。はじめから魚の骨が原因ではないかと疑って来院されました。

 すぐ内視鏡を行ったところ、食道に魚骨が突き刺さっていました。その周囲はむくんで腫れぼったくなっています。

  把持鉗子(異物鉗子)でつかみ、簡単に抜くことができました。幸い出血はありませんでした。
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 抜いた魚骨をみると、右側の刺さっていた部分に比べて左側の外に出ていた部分は汚れが付着していることがわかります。1週間経つとこうなるのですね。

04 魚骨の刺さり方によっては、食道を突き抜けて食道穿孔を起こすことがあります。食道周囲の縦隔に炎症を起こすとかなり重症となることがあります。幸いこの方は縦隔炎を起こすこともなく、処置したあと症状がなくなりました。
 
 喉の骨もそうですが食道となると指を突っ込んでも届きません。
 魚骨が喉やその奥にひっかかったのではと思ったら内視鏡ができるクリニックにご相談下さい。場所によっては耳鼻科で喉頭鏡の方がいい場合もあります。まず電話で連絡をいただければいいと思います。(すぐ内視鏡を行うこともありますので、朝食をとらずにご相談下さい)

 なおこの方の食べた魚はかますでした。あなどれませんね。



doc_toyonaidoc_toyonai  at 10:05  | コメント(0)  |  この記事をクリップ! 内視鏡