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2種類の肺炎球菌ワクチン(成人の定期接種化を受けて)

 成人(65歳以上)の肺炎球菌ワクチンが10月から定期予防接種になりました。これまでも江東区では独自に助成してきましたが、定期接種になっても自己負担は4000円と変わりません。違いは対象年齢が5歳刻みとなるところです。
 最近その影響で公費の対象ではない方から自費で打ちたいという問い合わせがありますが、説明で悩むことがあります。

 というのも、現在成人に使用できる肺炎球菌ワクチンは「ニューモバックスNP」「プレベナー13」の2種類があるからです。これまでプレベナーは小児のみの適用で、成人はニューモバックス(2歳以上に適応)しか選択肢がありませんでした。この6月からプレベナーも65歳以上に使用できるようになりましたが、成人が公費で使用できるのは今のところニューモバックスのみです。自費なら両方とも使えますがどちらのワクチンをすすめるべきでしょうか。
 
 この2つのワクチンの特徴を簡単に列挙します。
ニューモバックス(PPV23)
 ポリサッカライドワクチン/23価
 免疫記憶効果がなく持続効果が劣る。
 ワクチン接種を繰り返してのブースター効果なし
 鼻や喉の粘膜への定着(保菌)を防止できない
 プレベナーより安価 
 成人は公費で接種可能
 脾摘患者は保険で接種可能  

プレベナー(PCV13)
 コンジュゲートワクチン(結合型ワクチン)/13価
 免疫記憶効果あり。
 ワクチン接種を繰り返してのブースター効果あり
 鼻や喉の粘膜への定着(保菌)を防止できる
 ニューモバックスよりも高価
 成人は自費のみ。公費で接種できない
 小児は公費で接種可能


 ここからは長いので結論を先に書きますと、

 自費で接種する高齢者には現時点ではプレベナーをお勧めします。


 さて、肺炎球菌が問題なのは髄膜炎や菌血症といった本来無菌である部位に菌が入り込む侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)を起こすことですが、高齢者では当然肺炎も大きな脅威となります。ニューモバックスは敗血症などIPDの予防効果は認められていますが、「敗血症を伴わない肺炎」を予防できるかは意見が割れています(日本の高齢者介護施設でニューモバックスの肺炎予防を支持する報告がありますが、他にも両意見あります文献(引用47-55))
 また肺炎球菌の特徴の一つは、何も症状がない健康なヒトの鼻やのどの粘膜に菌が付着していることです。これを保菌と言い、小児で20-40%、成人で10%程度といわれています。ニューモバックスは多糖体(ポリサッカライド)を抗原とするポリサッカライドワクチンで、保菌を防げません。一方でプレベナーは、多糖体に蛋白質(ジフテリア由来)を結合した結合型ワクチンであり、粘膜への免疫が誘導され保菌を防ぐとされています。

 他にも違いをあげると、肺炎球菌は約90種類の型がありますがニューモバックスは23種類プレベナーは13種類に対応しています。ある型を予防すればまた別の型が増えるようであり、実際に感染して問題となる主な型は両ワクチンともカバーしているため数字ほどの大きな差はないようですがニューモバックスの利点です。
 もう一点ニューモバックスが優れているのはプレベナーよりも安いことです。

 これらを念頭に自費希望の患者さんにニューモバックスとプレベナーのどちらを接種するかを相談しています。

 ところで厚生労働省とアメリカCDCの情報は以下のようなものです。
厚生労働省
Q&Aにはプレベナーの情報は定期接種関連にとどまり、プレベナーとニューモバックスの位置付けについての情報はありません。
 
アメリカ疾病対策センター(CDC)
はじめて肺炎球菌ワクチンを打つ方にはまずプレベナー(PCV13)を接種することを推奨しています。更にその6-12ヶ月後にニューモバックス(PPSV23)の接種を薦めています。

Adults who are 65 years of age or older and who have not previously received PCV13, should receive a dose of PCV13 first, followed 6 to 12 months later by a dose of PPSV23.  

 CDCのサイトは読みやすく書いてあり参考になります。

 なお、抗生物質があるから予防しなくても心配ないのではと思う方がいるかもしれませんが、抗生物質が効きにくい肺炎球菌が増加して問題となっています。
 肺炎球菌ワクチンはこのような薬剤耐性肺炎球菌にも効果があります。予防で対処しましょう。


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