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江東区でピロリ菌検査が開始 ~胃がんリスク層別化検査~


 胃炎にピロリ菌の検査や治療が保険適応になって4年が経ちました。

32 それは画期的なことでしたが、一方で胃炎の確認をするためには胃カメラが必須であり、これは今も変わりありません。

 この6月から江東区では血液で行うピロリ菌の検査が公費(自己負担500円)で始まりました。
 これは既に一部の健保組合の検診や人間ドックなど行われているABC検診とほぼ同じ内容であり、血液検査でピロリ菌の有無(ピロリ菌抗体(HP))と、胃炎(萎縮)の有無(ペプシノーゲン検査(PG))を検査してABCで分類します。
ざっくりこのような感じ↓
A群HP(-)PG(-)ピロリ菌はいないので胃炎もない
B群HP(+)PG(-)ピロリ菌に感染したけどまだ胃炎なし
C群HP(+)PG(+)ピロリ菌に感染して胃炎(萎縮)がある
D群HP(-)PG(+)ピロリ菌が棲めないほど胃炎(萎縮)がひどい
※江東区のリスク検査ではC群とD群まとめてC群としていますが意味はほぼ同じです。

A群からB群、C群と経過をたどり、それにつれて胃がんのリスクが高まります。A群以外の人は精密検査として胃カメラを行います。
(当院では可能であれば検査結果を聞きに来られた日に胃カメラを行って除菌薬処方まで完結できるようにしています。鼻からの内視鏡も可能です。いずれも健康保険でできます。)
ピロリ菌がいる胃の画像
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1枚目のゴツゴツしているのは鳥肌胃炎と言われる所見で、若い女性に多く胃がんになりやすいとされています。2枚目は同じ方の別の部位で赤くただれていることがわかります。いずれもピロリ菌によるものです。

江東区では予算の都合もあって一気に全ての人ができるわけではありません。「平成29年度内に40・45・50・55・60・65・70・74歳になる区民」が対象で、対象者には6月中旬に緑色の封筒で送られている事と思います。

江東区内の内科であれば多くのクリニックでできると思います。かかりつけや近くの内科で相談して下さい。当院では予約は不要なので対象となる方は直接来て下さい。

ただし対象者であっても検査を受けられないことがあります。ピロリ菌の治療を既にしていたり、胃の手術をしている方などです。胃酸をおさえる薬を飲んでいるとできないこともあります。説明書を読んでもわからない場合はお問い合わせ下さい。

また胃痛などの症状がある方はピロリ菌検査ではなくはじめから胃カメラが必要なこともあります。近隣の消化器内科に相談して下さい。

もう一つ重要なことを書きます。江東区のHPからそのまま載せますが、

この検査は胃がんになりやすい状態かを判定するものであり、胃がんを発見する「胃がん検診」ではありません。

バリウムを飲んでレントゲンを撮る胃がん検診は平行して行われています。リスク検診を受けても、胃がん検診が不要になるわけではないことは忘れないで下さい。


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治らない胃潰瘍にご用心 ~3度目の胃カメラで癌と診断~

MK1of3のコピー 今回ご紹介するのは70代の胃がんの患者さんです。下を向くと胃液がこみ上げてくるという症状で受診されました。2年前の胃レントゲン検査(バリウム)では問題なかったそうです。

 1回目の胃カメラでは、小さな胃潰瘍がみられました。潰瘍と言うよりはびらんと言って少し荒れている胃炎程度でした。組織をつまんで病理検査を行いましたが良性(グループ1)でした。

 この時ピロリ菌がいることがわかりましたので、除菌治療を行いましたが、後に不成功と判明しています。

病理検査(組織診断)は1から5までの5段階で表されます。簡単に言えば、グループ1は良性で問題なしで、グループ5は癌です。 

 当初の胃液が上がる症状の原因は、潰瘍やびらんではなく、逆流性食道炎が原因のようでした。胃酸を強力に抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)を処方したところ症状は改善しました。PPIは逆流性食道炎にも胃潰瘍にも効果があり、こういうときは好都合です。


MK2of3のコピー 胃潰瘍では治ったかどうか確認するため、数ヶ月後には再検査するのですが、この方の胃カメラは1年後となりました。嘔吐反射が強く、つい先延ばしになってしまいました。
 この2回目の胃カメラでも前回と同じ部位にびらんが見られました。ピロリ菌の除菌が失敗しているとはいえ、強力に胃酸をおさえるPPIを飲んでいても治らないのは変です。そこで病理検査を再度行いましたところ、結果はグループ2でした。

 通常病理の検査ではグループ1(良性)と3(腺腫)と5(癌)で表されることがほとんどでグループ2はあまり用いられません。グループ2は癌を強く疑うものではありませんが、病理の先生から「何か変だぞ!」という重要なシグナルなのです。


MK3of3のコピー そこで胃炎の影響を取り除くために十分PPIを飲んでいただき4ヶ月後に3回目の胃カメラを行いましたが、それでもまだ治りません。むしろ悪くなっています。

 この病理検査ではグループ4でした。グループ4は、癌(グループ5)とは断定できないけれど、癌を強く疑うということです。

 今回はこの経過から胃癌と診断し近隣の病院に紹介しました。幸い胃癌は早期であったため、開腹手術は不要で内視鏡で治療を行うことができました。

 あらためて胃潰瘍はしっかり治るまで確認しないといけないと思いました。胃潰瘍と診断されたまま来院されなくなる方も中にはいますが、今回は患者さんが定期的に通院されたので癌の早い段階で治療にもっていくことができました。

 正直に言えば、3回目の胃カメラは画質がいいハイビジョンのスコープで行いたかったのですが、嘔吐反射がとても強く、3回とも全て鼻からの内視鏡でした。経鼻内視鏡は画質や操作性はやや落ちますが、検査を受けてもらってこその胃カメラです。今回は比較的楽な経鼻内視鏡のおかげで、繰り返し検査を行えたことが早期発見につながったのかもしれません。


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胃炎のピロリ菌治療が保険でできるようになりました。

 ピロリ菌治療の保険適用が拡大されて、胃炎も対象になりました()。

 ピロリ菌の正式な名前はヘリコバクター・ピロリと言い胃潰瘍の原因として発見されました。その成果でオーストラリアのマーシャル博士とウォレン博士は2005年にノーベル賞を受賞しています。
IMG_1709 日本ではそれに先立ち、2000年からピロリ菌の検査・治療が保険適用されています。当時は胃潰瘍・十二指腸潰瘍のみが対象でした。

 その後、胃MALTリンパ腫特発性血小板減少性紫斑病(ITP)早期胃がんESD後と保険適用は拡大されましたが、多くの日本人がピロリ菌に感染しておりそれが胃がんの原因だと考えられているにも関わらず、胃炎は保険適用されていませんでした

 詳細な検証作業と学問的な研究の積み重ねによって、今回晴れて胃炎の患者さんでもピロリ菌の検査・治療ができるようになりました。日本人の胃がんを大きく減らす分岐点となるでしょう。
 
 ただし、胃炎は内視鏡検査による診断が必要です。胃潰瘍や十二指腸潰瘍の診断はバリウム検査(胃透視検査)でもよかったので、少し厳しくなりました。ご注意下さい。
(胃カメラもバリウム検査もしたことがない人は、保険での検査や治療はできません)
 なおピロリ菌の検査はいくつもの種類があります。検査の詳細はかかりつけの消化器内科でご相談下さい。あるいはネットで検索してみて下さい(手抜き(^^;))。代わりに、あまりネットでは書かれてない費用について、ざっくりとした金額を示しておきます(3割負担で初診料込み)
 
内視鏡で行う方法
  迅速ウレアーゼテスト(約6000円)
  鏡検法(病理検査) (約9000円)
  培養検査(約7000円)

内視鏡を使わない方法
  尿素呼気試験(約3000円)
  抗体検査(血清抗体)(約2000円)
  便中抗原テスト(約2000円)

※写真にはそれぞれの検査で用いるものが写っています。当院では全て対応可能です。 


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ピロリ菌の除菌

 これまでにも胃潰瘍・十二指腸潰瘍や胃がんの原因としてヘリコバクターピロリ菌について書いてきましたが、今回は除菌治療についてです。

 ピロリ菌除菌は2000年から保険が使えるようになり、広く行われています。

 当たり前の事かもしれませんが、患者さんは治療法の実際を知りません。ですから3種類の薬を1週間飲むだけだと知ると、意外と簡単なんだね、と驚かれる方もいます。

lansap この3種類の薬は、胃の薬(プロトンポンプ阻害薬)1種類と、細菌をやっつける抗生剤が2種類になります。
 抗生剤は、アモキシシリンというペニシリン系の抗生剤と、クラリスロマイシンというマクロライド系の抗生剤ですが、風邪をこじらせると出されることもあって、飲んだことがある方も多いと思います。

 飲み間違いが多いので、3つを1つのシートに並べた除菌専用の薬(ランサップ)がよく用いられます。

 除菌治療の効果ですが、3剤併用療法を行うと約90%程度の方がピロリ菌が消えましたが、現在では70-80%と言われています。この10年間でこれだけ効かなくなった理由は、様々なところで抗生剤が使用されて、クラリスロマイシンが効かないピロリ菌が増えたことが大きいようです。

 この3種類を、朝と夕の2回に分けて7日間飲みます。
 副作用として、下痢・軟便が最も多く、更に味覚異常や皮疹などが比較的みられます。

 ばい菌をやっつける治療ですから途中で中断してはいけません。しかし副作用が辛い時は主治医にご相談下さい。

 除菌した後、2ヶ月以上あけてから本当に消えたかどうか判定します。
 判定は胃カメラで行うこともできますが、とよす内科クリニックでは通常尿素呼気テストで判定を行っております。食事をとらずに来院した方には予約なしでその場で行っています。

 うまく除菌できなかった方には保険で2次除菌を行うことができます。
 ピロリ菌の話はもうお腹いっぱいかもしれませんので(^^;、2次除菌はまたいずれ。


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鳥肌胃炎とピロリ菌

torihada_201108_01 クリニックで普段使われている病名は、一般の方には取っつきにくい病名が多いのですが、今回取り上げるのは見たまんまの病名で、鳥肌胃炎です。

 この鳥肌胃炎の特徴は若い女性に多いことです。
 ここにある写真は先日当院で行った内視鏡の写真ですが、その方も例にもれず30代の女性でした。

 この鳥肌胃炎、若い女性の病気だから大したことないだろうと思うかもしれませんね。
 しかしこの鳥肌胃炎、油断ができません。胃がんができやすいことで知られています。

torihada_201108_02 その原因は、鳥肌胃炎のほとんどからみつかるヘリコバクター・ピロリ菌です。
 
 ピロリ菌が関連した胃炎と言えば萎縮性胃炎が有名ですが、この鳥肌胃炎もピロリ菌が関連しており、萎縮性胃炎同様に鳥肌胃炎も胃がんの危険因子です。

 ちょっと細かい話しですが、専門家から見て興味深いのは、萎縮性胃炎からは分化型の胃がんが発生しやすいのに対して、鳥肌胃炎では未分化型の胃がんが多いことです。
 分化型というのは、簡単に言えばがん細胞が元の細胞に近い形をしているのが分化型で、元の細胞には似ても似つかない細胞が未分化型です。がんの組織を一部取って、病理検査(顕微鏡で診断する検査)で診断します。この組織の違いでがんの進行は異なり、がんの治療にも大きな影響を与えます。

 ここからわかることは、ピロリ菌による発癌への影響は1つではないということです。 まだまだこれから解明されることがたくさんあるでしょう。その中で、鳥肌胃炎が女性に多い理由も解明されていくのかもしれません。

 ちなみにこの写真の女性もピロリ菌は陽性でした。除菌治療を行って将来の胃がんの危険性をかなり下げられると期待しています。
(左下の写真は特殊光(NBI)による観察です。こっちの方が凹凸わかりやすいですね) 

 なお、日本内視鏡学会の「消化器内視鏡用語集」には鳥肌胃炎と言う用語はなく、正式な名称となっていません。用語が定まらない(定義されていない)と、学問的な議論に影響が出ると思うのですが、どうなっているんでしょう、と素朴に疑問。
(日本消化器がん検診学会の「消化器がん検診用語集」には載っています)


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