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ガイアの夜明けで手術補助ロボット「ダヴィンチ」が紹介

 一昨日の「ガイアの夜明け」は、「切らずに治す ~がん治療最前線~」でした。

 ここでは「ダヴィンチ」という手術用ロボットが紹介され、藤田保健衛生大学の宇山一朗先生の手術シーンが放映されました。宇山先生は以前NHKの「ディープピープル」でスーパー外科医として出演され、慶応義塾大学付属病院で王貞治さんの腹腔鏡手術をしたことでも有名です。

 このダヴィンチはロボットといっても、自動で手術をしてくれるわけではありません。あくまでもロボットハンド的なもので、手術するのは人間です。ダヴィンチを使うことによって、手技が向上し精細な処置が可能となります。また患者さんの身体への負担が小さくなるとのことでした。

 今回紹介された手術は、胃がんで一度手術されている方の再手術でした。癒着も多く、通常の腹腔鏡では大変であったのでしょう。ダヴィンチを使うことによって短時間で手術を終えた宇山先生は、「脂肪が多くて取るべき組織が固まっている人は、通常の腹腔鏡ではなかなかやりにくいのでダヴィンチでやったことは意味があった」と仰っています。

 このダヴィンチを用いた胃がん手術(おそらく入院費込み)は200万円で、患者さんの負担は109万円とのことでした。通常の腹腔鏡手術では150万円かかり、患者さんの負担は9万円程度です。現在ダヴィンチは先進医療に認定されている為、混合診療のような形で負担は軽減していますが、それでも保険診療とは100万円の差があります。
 ダヴィンチを保険でできるようにしようという動きもあるようです。

注:日本の医療費は諸外国と比べて安く、今回の200万円という費用も実はかなり安いと思います。が、今回はそれは横に置いておきます。

 またダヴィンチはアメリカでは1344台導入されているのに比べて、日本では27台にとどまっている寂しい現状が紹介されていました。しかしアメリカのように、自分が買っている保険によって受けられる医療レベルが大きく異なる国との単純比較は危ういと思います。そもそも1台約3億円でメンテナンスに年間2500万円かかるダヴィンチを必要とする手術はどのくらいあるのでしょうか。僕にはそれがよくわかりませんが、何でも最高レベルの技術を用いてお金も最大にかけることは適切ではないと思います。
 
 現状で保険収載に慎重な厚労省の姿勢は残念ですが、理解できないでもありません。
 それでも今後、ロボットを用いた医療が浸透していくのは間違いないでしょう。

 今回の番組では取りあげられていませんでしたが、ダヴィンチの他にもゼウスというロボットもあります(確かそちらは2億円くらい)。更に今後も新たなベンチャーから続々と新しい手術ロボットが開発されるでしょう。

 価格が少しずつ下がり、技術的な習熟が広まり、その流れの中で保険収載がなされ、更にロボットの価格が下がって、日本でも本格的にロボット手術が普及するのではないでしょうか。
 
 個人的には日本企業による医療ロボットを期待しています!

追伸ですが、 番組後半では「粒子線治療」が紹介されていました。前立腺がんの治療費は粒子線だけで288万円とのこと。確かにメスを入れない治療は素晴らしいですが対象となるがんは限られそうに思いました。また前立腺全摘手術はダヴィンチが得意とするものでもありますから、長期の成績なども含め検討する必要があると思いました。


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