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進行食道がんの放射線療法

 今回は食道がんに対して放射線治療を行ったあとの写真です。その前に少しだけノーベル賞の話しを。

 今年のノーベル生理学医学賞は本庶佑先生が受賞されました。
 本庶先生は、がん細胞が免疫から逃れるのに重要な物質を発見し、この応用により画期的ながん免疫療法が可能となりました。高価なことで話題になったオプジーボやキイトルーダがそれです。

 これまでがん治療は、手術、放射線、抗がん剤(化学療法)の3つが主だったものでした。
 免疫療法と言う名の治療分野はこれまでにもありましたが、効果が乏しく信用に足る治療はないに等しい状況でした。今後は大きく発展するでしょう。しかし本庶先生のノーベル賞受賞により免疫療法の情報が錯綜する可能性があります。ニセ免疫療法に皆様ご注意を
 自費診療しているところでの免疫療法はおすすめしません。主治医と相談を。

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 さて今回の写真ですが80代後半の方です。飲み込みが悪いとのことでした。
 見るからに進行した食道がんです。全身状態は悪くはないもののご高齢であり手術はよくないかもなと思っていました。
 ご本人の希望により紹介した自宅近くの病院は手術や放射線療法をやってないとのことで別の病院へ紹介されたようです(僕としては迂闊でした)。そのためもあり治療した施設から報告書が来ず、今回書いていることも本人のお話での治療経過です。

 それから1年、久々に来院されました。
 癌の治療は、手術は負担が大きいので放射線治療をすすめられたそうです。週5回で合計30回。抗がん剤は併用しませんでした。通常その後もフォローするものですが、ご高齢だからかその後の通院指示がないようでCTや内視鏡もされていません。

 今回は胸のつかえ感があって胃カメラをやりたいとのことでした。治療した病院をすすめましたが、大きい病院は大変なようで当院でやりました。

名称未設定 2 それがこの写真です。(放射線1年後)

 わずかに狭くなっていますが粘膜は瘢痕化して綺麗でした。つかえはこの狭くなったところが原因のようです。

 化学療法を併用しておらず今後再発があるかもしれません。しかし90歳近い方が進行食道癌をうまくあしらって、つかえがあるとはいえ身体に大きな負担を残さずこうして日常生活を送っていることに感動を覚えます。

 ノーベル賞でにわかに免疫療法が注目されていますが、現場は粛々と患者さんに適切な治療を行っています。ブログを書いている僕が書くのも変ですが、がんの患者の皆さんにはネットの情報に右往左往せず医療機関で主治医と相談して下さい。
 魔法のような治療はありません。皆さんがよりよい治療を受けられるよう願っています。(現在食道癌はオプジーボ/キイトルーダの治療適応となっておりません)


doc_toyonaidoc_toyonai  at 09:30コメント(0) この記事をクリップ! 

アニサキスの食中毒が増加という報道

名称未設定 4 アニサキスによる食中毒が増加しているという報道が最近みれらます。たしか5月8日に毎日新聞が「アニサキス 生の魚介類で猛威 10年で20倍」と報道したのがきっかけだったと思います。

 当院にもいくつか取材が来ました。おそらく以前ブログにアニサキスを書いているから目にとまったのでしょう。

 日本テレビのスッキリの取材を受けてインタビューがうつりました。うまくしゃべれないのに引き受けて後悔でしたが、国立感染症研究所の杉山広先生が的確にコメントされていてまとまりました。
 スッキリで杉山先生から報告数増加の理由として、2つあげられていました。

1.2013年に食品衛生法が改正され、保健所に届け出が必要になったこと。
2.遠隔地の魚が新鮮な状態で届くようになり生魚の流通が増えたこと。

 僕の実感では10年間で20倍もアニサキスが急増した印象はありません。
 杉山先生のコメントも、報告数が増えているがアニサキス症が増えたというよりは報告されてなかっただけというニュアンスだったと思います。(それと2番の理由)
 そもそも厚労省が出した件数は、2007年6件→2016年124件であり全く把握できていなかっただけのことです。というのもうちのような小さなクリニックでさえ毎年4-7件のアニサキスをみつけています。割合も胃カメラ100件あたり1件前後で変わりありません。

 それだけあるのになぜ少なかったかと言えば、保健所に届け出ができなかったこともあげられると思います。

 医師には届出義務がありますが、患者さんが店への調査希望がないと保健所はそれ以上調査せず届け出できませんでした。アニサキス中毒が確定すると店が営業停止になるのが重く感じられ、馴染みの店なので調査を希望しない方もいました。
 また釣ってきたりスーパーで買ってきた魚を調理して起こったアニサキス症は保健所に連絡してもそこで調査打ち切りでした。これでは実態が把握されず、有効な対策ができません。実態を把握するために届け出させてほしいとお願いしたこともあります。

 2013年の食品衛生法改正後も少し混乱があってそのような運用がありましたが、最近は全て報告できるようです。今回江東区の保健所に確認したところ、今は自分で調理したアニサキス症も全て受け付けてくれるとのことでした。
(上記の話しが全国に当てはまるのかはわかりませんが)

 ということでアニサキスの報告件数が増えた理由を杉山先生があげた他にあげるなら

3今まで保健所が受け付けなかった届け出が受理されるようになった。
4受理されなさそうな症例は報告を差し控えていた医療機関があった。(当院)

そして

5内視鏡が普及して診断数が増えた。
 大きい病院であっても緊急内視鏡のハードルは高かったのが、内視鏡の普及でその日のうちに内視鏡が気軽にできるようになったことも大きいでしょう。アニサキスは数日で改善するので、1週間後の予約では見つかりません。

6アニサキスの認知度があがり患者さんが適切な医療機関を受診するようになった。
 アニサキスだと思うから胃カメラしてほしいと来られる方がいます。散発的にアニサキスのニュースはありますから認知度が上がっているのでしょう。これも発見数増加の一助となっていると思われます。(今年はこのニュースで増えそうですね)

7.新鮮な魚の入手が容易になり熟練してない調理人が生魚を扱うようになった
 冷凍物ではない鮮魚は高級店でしか食べられないものでしたが今は違います。当院で経験したアニサキス症は、サバ専門の有名店から居酒屋や回転寿司まで様々です。面白いところでは、調理学校で実習で自分で調理した魚を食べて来た方もいました。お客さんの辛さを身体で覚えたことでしょう。

 これらのように、生魚が手に入りやすくなったのが一因ですが、アニサキスがそこまで急激に増えたとは言えないと思います。報告が増えていますが今までもあったのでしょう。


 日テレのスッキリに出てからアニサキスについて取材の申し込みが他からもあります。僕は杉山先生のように話せませんし、もう杉山先生の説明でいいように思いって出演はお断りしています。
(親が喜ぶと思ってスッキリには出ましたが、親孝行は十分させて頂きました(^^))

 今回のニュースで、飲食店がアニサキスに注意をより一層払うようになればと願っています。

 なお、今回出ている写真は、まさに今日摘出したアニサキスです。
 某ワイドショーから今日の取材を依頼されて断ったのですが、それを引き受けていれば来週月曜にはこのシーンがお茶の間に流れていたのでしょうね。 



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100kmマラソンしての出血性胃炎

 激しい胃痛と30分ごとの嘔吐という30代の方が来院しました。さらに血便が出たかもということでO-157?虚血性腸炎?という感じで診察開始です。
 
 しかし話しを聞いてみると様相が違います。
 なんと前日100km走ったとのことです。それも100kmを10時間で走りきったそうで素晴らしいです。足が痛くてロキソニン(痛み止め)を飲みながら走ったとのことでした。

marathon2014_03 胃カメラはその日は行わず翌日にしました。
 本来吐血や下血は当日に内視鏡を行うのですが、食後であり検査がうまく行えそうにないと考えられ、またお聞きした話しから検査にこだわる必要はなくまず治療だと考えたのが理由です。その日はプロトンポンプ阻害薬(パリエット(10mg)2錠/日)を処方してお帰り頂きました。

 翌日の内視鏡では線状のびらんがしっかりとみられ、一部は潰瘍状でした。観察した時点では出血はなく、後日の検査ではピロリ菌の感染もありませんでした。内視鏡的には急性胃炎や出血性胃炎を呈しており、これらをまとめて急性胃粘膜病変(AGML)の状態だと考えられました。
 
marathon2014_01 血便があったのかはっきりしませんでしたが、腹痛や嘔吐はこのAGMLで説明がつきます。

 血液検査では予想通り貧血はなく、筋肉が壊れると上がる酵素CPKが約1万(基準値250未満)と著明に上昇していました。 マラソンは苛酷だと改めて感じました。
 
 ところで、ランナーの中には、走る時のストレス対策としてガスター10を内服する方々がいるそうで、この方も飲んでいました。ガスター10を飲んだ理由のもう一つは痛み止めのロキソニンから胃を守るためとのことでした。ロキソニンをはじめとした非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は胃炎や胃潰瘍の原因となることで有名です。

 しかしガスター(H2受容体拮抗薬:H2RA)の通常量では、NSAIDsによる出血性胃潰瘍を予防する効果は低いです。それは胃潰瘍診療ガイドラインに出ているとおりです。100kmマラソンのストレスも考えると、今回の一件はガスター10だけでは荷が重かったのかもしれません。

 かといって他の薬を飲んでいたら防げたかどうかはわかりません。そもそも今回のAGMLはマラソンのせいなのか、鎮痛剤のせいなのかはっきりしませんが、おそらく両方とも影響したのだと思います。

 運動不足の僕が言うのもおこがましいのですが、100km走るというのは身体に大きな負担を強いるものだと改めて思います。


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消化器内視鏡学会セミナー ~経鼻内視鏡で思うこと~

 この週末は日本消化器内視鏡学会とともに開かれているセミナー出席のため京都にきています。このセミナーは専門医が一定のレベルを保つために課せられたもので教育的な内容となっており2日間あります。

28 内視鏡専門医の資格更新という性質上、病院でないと行えない治療についての話も多く、それがとても楽しくもありますが(食道静脈瘤の話なんてわくわくしてしまいます(^^;))、役立てられないこともあります。また普通のクリニックで働く者として、若干の違和感がある部分もあります。たとえば経鼻内視鏡です。

 これまでは画質の悪さなどから専門医向けにはあまり話題にならなかった経鼻内視鏡ですが、最近は少し取り上げられるようになりました。スコープの性能の向上が理由のようですが、患者視点でみるとややずれている印象があります。

 確かに経鼻内視鏡は経口内視鏡に比べて暗くて画質は悪く胃液の吸引に時間がかかり組織検査もやりにくく、経口の方がやりやすいです。
 一方で、口からの内視鏡は検査の苦しさ(のイメージ)から敬遠され、検査そのものを受けないために病気の発見が遅れることがありましたし、げーげー吐いてしまって高性能の内視鏡で検査しても質が高い検査ができないこともあります

 僕たち検査する側からすれば、当然いい機械(経口内視鏡)で検査をやりたく、特に癌を疑っての精密検査では最高の画質で検査をしたいものです。
 しかし、ちょっとしたお腹の痛みで検査を受けるか迷っている方にとって、口からの内視鏡は敷居は高いでしょう。口ならやらないと言っていた方が鼻からならやる、と受診され進行癌が見つかることもあります。その中には40代50代の方もいます。アニサキスのような強い症状がある方でも、鼻からやれるなら、と来院されます。 

 そのため当院ではハイビジョンの経口内視鏡も備えていますが、患者さんとの相談を尊重して、口からの内視鏡を強制しないようにしています。経鼻内視鏡にはデメリットもありますが、内視鏡専門医だからこそそのデメリットを理解してカバーし、患者さんにはそのメリットを最大限に享受してもらいたいと思っています。

 他の先生からはお叱りを受けるかもしれませんが、昨日はセミナーを受講しながらそんなことを考えていました。
 今日も丸1日セミナーです。ここで勉強したことをまた皆さんのお役に立てるようにしたいと思います。
 今日は休診させていただきますがご了承ください。


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胃潰瘍

 今回の内視鏡写真は胃潰瘍です。

 30代の方で、嘔吐と軽い腹痛で来院されました。下痢はありませんでしたが、何を食べても嘔吐してしまうということで、当時流行っていた急性腸炎を第一に考えて、吐き気止めの点滴を行い整腸剤などを処方して帰宅されました。
 
UV201106_01 その2週間後、それ以来空腹になると胃がピリピリと痛むと、胃カメラ希望で来院されました。下痢はたまに起こるものの吐くことはなくなったとのことでした。
なお、10年ほど前の胃カメラでは問題がなかったということで、この時点で僕は胃の病気はあまり強くは疑っていませんでした。 

 そして胃カメラの結果が右の写真です。写真中央にみえる2つの白いクレーターのようなものが胃潰瘍です。
UV201106_02 胃潰瘍は、活動期→治癒期→瘢痕期と変化しますが、この写真の潰瘍は周囲が赤く盛り上がっており、潰瘍の底が白くなっていることなどから、活動期を過ぎて治癒期に入っていると思われました。

 2枚目の写真は角度を変えたもので、胃潰瘍の周囲の胃粘膜には、年齢の割には萎縮性の変化が強く見えます。簡単に言うと慢性胃炎ですが、その中でも萎縮性胃炎という部類に入ります。UV201106_03
 3枚目の写真は十二指腸ですが、左側に潰瘍の痕跡が残っており、瘢痕期と考えられます。

 以前にも書きましたように、萎縮性胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍は、ヘリコバクター・ピロリ菌によって引き起こされます。今回もピロリ菌をチェックすると陽性でした。
(4枚目の写真の左側が患者さんのもので赤くなっています。右側は入れる前のもので黄色です)UV201106_04

 初診時から胃潰瘍があったのかは不明ですが、内視鏡所見からは何度も繰り返された跡があります。当初より胃潰瘍を疑っていればもう少し早く治療を開始できたかもしれません。患者さんには申し訳ないことをしました。

 たしかに痛みがなくても、出血性胃潰瘍まで気付かず吐血してくる患者さんもいます。主な症状が嘔気だけでも油断ならないな、と思いました。
 今後の戒めにしたい経験でした。


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