2013年08月05日
治らない胃潰瘍にご用心 ~3度目の胃カメラで癌と診断~
1回目の胃カメラでは、小さな胃潰瘍がみられました。潰瘍と言うよりはびらんと言って少し荒れている胃炎程度でした。組織をつまんで病理検査を行いましたが良性(グループ1)でした。
この時ピロリ菌がいることがわかりましたので、除菌治療を行いましたが、後に不成功と判明しています。
この時ピロリ菌がいることがわかりましたので、除菌治療を行いましたが、後に不成功と判明しています。
病理検査(組織診断)は1から5までの5段階で表されます。簡単に言えば、グループ1は良性で問題なしで、グループ5は癌です。
当初の胃液が上がる症状の原因は、潰瘍やびらんではなく、逆流性食道炎が原因のようでした。胃酸を強力に抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)を処方したところ症状は改善しました。PPIは逆流性食道炎にも胃潰瘍にも効果があり、こういうときは好都合です。
この2回目の胃カメラでも前回と同じ部位にびらんが見られました。ピロリ菌の除菌が失敗しているとはいえ、強力に胃酸をおさえるPPIを飲んでいても治らないのは変です。そこで病理検査を再度行いましたところ、結果はグループ2でした。
通常病理の検査ではグループ1(良性)と3(腺腫)と5(癌)で表されることがほとんどでグループ2はあまり用いられません。グループ2は癌を強く疑うものではありませんが、病理の先生から「何か変だぞ!」という重要なシグナルなのです。
この病理検査ではグループ4でした。グループ4は、癌(グループ5)とは断定できないけれど、癌を強く疑うということです。
今回はこの経過から胃癌と診断し近隣の病院に紹介しました。幸い胃癌は早期であったため、開腹手術は不要で内視鏡で治療を行うことができました。
今回はこの経過から胃癌と診断し近隣の病院に紹介しました。幸い胃癌は早期であったため、開腹手術は不要で内視鏡で治療を行うことができました。
あらためて胃潰瘍はしっかり治るまで確認しないといけないと思いました。胃潰瘍と診断されたまま来院されなくなる方も中にはいますが、今回は患者さんが定期的に通院されたので癌の早い段階で治療にもっていくことができました。
正直に言えば、3回目の胃カメラは画質がいいハイビジョンのスコープで行いたかったのですが、嘔吐反射がとても強く、3回とも全て鼻からの内視鏡でした。経鼻内視鏡は画質や操作性はやや落ちますが、検査を受けてもらってこその胃カメラです。今回は比較的楽な経鼻内視鏡のおかげで、繰り返し検査を行えたことが早期発見につながったのかもしれません。