マスで見たときに「こうあるべきだ」という指摘と、個を見たときに「どういう戦略が失敗が少ないか」という考慮とは、多くの場合相容れないでしょう。そして、前者はそれほど重要な問題ではありません。
いくつかの分野では世界との距離は目に見えて近づいていることがわかります。サッカー(個人として活躍する男子とチームとしての女子)、ラグビー、テニス(男女共)、そして最も最近の女子ゴルフ。私が渡米した約18年前、絶対この国で成功しようと、よりすがる拠り所の様に見ていた野茂、という状況とは隔世の感があります。
にも関わらず日本全体を見ると、若い層も含めて内向志向が進んでいるように見受けます。自分は所詮彼らとは違う、とやる前から諦める空気があるように見受けます。まあもちろん私も同様に「彼らは自分と違う」と思いますが、諦めるというのは違うかもしれません。もちろん今後も、驚く様な世界の舞台での日本人の活躍が出てくるでしょう。個々の能力のみで勝負できる分野においては、混血であれ純血であれ若い日本人、特にスポーツ選手たちが、世界の舞台におけるプレゼンスとして見劣りする点はほぼなくなっています。しかし、なぜほとんどの人にとっては、今だに世界はどこかにある遠い地に見えてしまうのでしょうか。
こういった問題に対処することにおいて最も適さないのは、日本にずっと留まることがインセンティブになる人たちに任せることです。例えば役人がそうだし、日本語のメディアもそう、高齢者もそうでしょう。日本がある程度、自分たちがいる間だけでいいから、もってくれと。勝ち逃げ狙いですね。積み上がり続ける国の借金のことはひとまず(自分がいる間だけ)横に置いておき、さらにこれからも積み上げていかせてくれと。そういう状況の中で、個人としてできることは、というかすべきことは、そういった人たちの言うことと反対のことをすることです。公務員になるなんて、その意味でもってのほかです。「安定」と考えているのかもしれませんが、そして「公務員」というカテゴリーがなくなることはないでしょうが、これから10年以内に始まるであろう市町村合併、限界村落消滅、地方の人口の急激な高齢化と減少は、公務員の大幅削減に必ずつながります。やっと公務員になれた、これでこの先40年以上安泰だと思った5年後に「君悪いけどやめてくれ」と言われる人たちが大量に出るでしょう。沈みゆく泥舟です。
日本がチープになっていく中で、おそらく10年ぐらいの間には東南アジアのなかで真ん中より下の豊かさの国になっていくでしょう。今の10代とか20代は、そこを見通しつつ今から個人戦略を練っていく必要があります。