書評:「リーダーのための伝える力」




キヤノン電子社長の酒巻さんによるリーダー論。

ドイツに行って不利な交渉を気迫で成功させたり、松下幸之助に怒りの手紙を送って支援を受けていたり、スティーブ・ジョブズと対等に仕事をしていたり、出てくるエピソードのレジェンド感がハンパない。凄すぎて一瞬事実か疑ってしまうレベルだ。

この感覚はうちの監査役の話を聞いたとき以来である。監査役は一介のサラリーマンなのに、スペインで工場を立ち上げて、アメリカで大学を立ち上げたと言っていた。監査役は、某老舗プロバイダの社長を務めた人で、昭和38年生まれ。酒巻さんは昭和40年だから、同世代である。日本の高度経済成長を支えた戦士たちの武勇伝は、凄すぎて嘘くさいらしい。

さて、そんなレジェンドの語るリーダー論。金言にあふれまくっているのと、圧倒的に正しい言葉が並んでいるので、読んでいて襟が正される。

利益を出せる強い組織へと部下とチームを成長させることがリーダーの役割だという。社員が自律的に動けるのが強い組織であり、そのためにリーダーは社員が奮い立つようなテーマを伝えていかなければいけない。

リーダーが掲げた夢と目標が達成できるように、彼らがやりやすい環境を作ると同時に、途中で挫けないように「お前ならできる。絶対に諦めるな」と鼓舞し続けることが大切である。 その際、リーダーに必要になるのが「目配り、気配り、口配り」だ。


この「目配り、気配り、口配り」は、酒巻さんではなく、帝国ホテルの会長・小林哲也氏の言葉だそうだが、マネジメントの要諦を凝縮している素晴らしいスローガンである。目配りができるから気配りができる。気づくからこそ、支援のためのアクション(口配り)ができるというわけだ。

このほか、「何かを全社的に行う場合は、そうやって一つの成功事例をまず作ること」とか「基本を忘れるな。手抜きをするな。一手間を惜しむな」とか「悪い情報が上がってきたときは、自分の想像より10倍深刻な大問題が発生していると考え、対応すべき」とか、テクニック的な考え方があふれている。

そうした手法論も当然参考になるのだけど、酒巻さんの人間への興味の強さを読み解くのが本書の良い読み方ではないかと思う。とにかく人のことを考えているし、人に優しい。社員の向こう側にいる家族への愛情が大きいし、部下を想う力がとても強い。帰り際の背中で社員の状態を把握するなんて、よほど人間に興味がないとできない。技術屋なのに営業が上手で、そしてリーダーとして結果を出せているのは、この人間への興味の強さ故ではないだろうか。

実はこの本は刊行された当時に読んだのだけど、書評を書くのを忘れていて、思い出しがてら最近読み直したもの。これが2回目なのにハッとするところがあって、あらためて本書の深みを感じた次第。またいつか3回目を読もうと思います。


February 11, 2017


dogandchopsticks at 22:39


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