書評:「N字回復」

N字回復
飯田 元輔
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2013-08-13



本書のタイトルを見て、「V字回復ではなくN字回復とは視点が新しい。どういう分析と理論だろうか」と興味を惹かれて読んだのだが、想像していたのとはまるで逆の内容だった。理論ではなく実践、知ではなく力。期待していたものとは違ったが、それはそれで感じるものがあった。

「N字回復」というのは、企業のライフサイクルにおいて「第二創業期」に至るプロセスを表した言葉だという。創業期から成長期、成熟期を経て衰退期に至り、そこから再び伸びていく変革のプロセスを線で描くとN字形になる。

読む前は「N字回復する企業とそうでない企業の差はどこにあるのか」という観点で、分析結果と一般化された理論が書かれているものを期待していた。しかし本書に書かれているのは、第二創業期を自らくぐりぬけ、またコンサルタントとして中小企業の第二創業期を泥臭く支えてきた、著者の実体験に基づく生の声だった。

自分は変わらなければと覚悟し、自分と二人三脚でやっていく右腕的人物(幹部)の必要性を認識できた経営者だけが第二創業を迎えることができる。

ワンマン経営から脱却できるかどうか、任せられる幹部を立てられるかどうか、これが第二創業期を迎えられるか否かの分かれ目だという。経営者が自らの仕事を幹部に任せることでできた時間は全て、次なる未来戦略を立てることに充てることができ、それが第二創業期を加速するのだという。また、変革時には古参の守旧派のベテラン社員や幹部が辞めていくことがあるが、そこで怯まずに改革を断行することができなければいけないと説く。

見てきた事実から導かれた結論。このあたりの生の迫力こそ、本書の価値だろう。

一方、本書に書かれている内容は、筆者が体験してきた中小企業にのみ当てはまる話だと思う。昨今、家電メーカーなどで衰退期に入っている大企業も多いが、そうした企業にこの手の話が当てはまるようには思わない。

前職時代は自分も顧客も中小企業のみで、本書にある世界観のなかだけで生きていた。だから読後は凄く懐かしく甘酸っぱい気持ちだった。逆に今ではそうした世界とほとんど関わることがない。別に中小企業と関わらなくなったわけではないので、本書にあるような中小企業ネットワークとは別のところにいる感じなのかもしれないが。

ということで、個人的には若い頃を思い出して感傷的になれる要素があってポイントが高かったが、様々なケースに応用がきく一般理論ではなく、ビジネス書としてはイマイチという印象。関西のリクルートのノリが好きな人には良いのかも。



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