書評:「採用学」

採用学 (新潮選書)
服部 泰宏
新潮社
2016-05-27



企業の「採用」という活動を科学的アプローチで分析して説いた一冊。

結論から行くと学びはあったのだが、期待していたのと違っていたのが、本書のメインフォーカスが新卒採用に当たっていたことだ。中途採用に対する気づきが得られれば良いなと考えて読んだので、ちょっと肩透かしを食らってしまった。書名は「新卒採用学」の方が、適切かもしれない。

近年の新卒採用を取り巻く環境変化の解説に始まり、採用の目的であったり、最新のイノベーティブな選考手法(三幸製菓のカフェテリア採用とか)の紹介まで、内容は網羅的である。新卒採用に関わる人は、熟読すると良いだろう。

そんな新卒採用の書から、中途採用に活きる学びはあったのか。ありました。

IQに代表される知能、創造性、ものごとを概念的にとらえる概念的能力、また、 その人がそもそも持っているエネルギーの高さや、部下を鼓舞し、部下に対して仕事へのエネルギーを充塡する能力などは、非常に変わりにくいとされる。

研究によれば、コミュニケーション能力やリスクに対する志向性は、比較的簡単に変化する能力なのだそうだ。だから、選考では「変わりにくい」項目を見極めるべきだということ。また、変化するものであっても、自社内で育成機会がなければ変わらないので、そういった能力も同様に見極めポイントになる。こういう観点で見極めポイントを決めていなかったので、目から鱗だった。早速、翌日の面接からコミュニケーション能力はほとんど評価し、代わりにメンバーを鼓舞する能力を意識的に見るようにした。

最もショッキングだったのは、自分の面接スタイルが、科学的にはイマイチだったこと。

面接の中でも、標準化された(全員に同じことを聞く)質問をする構造化面接(.51)の方が、候補者ごとに違った質問をする非構造的面接(.31)よりも、将来の業績をより正確に予測するという結果は興味深い。

なかには科学を超えて正確にその後の活躍を予測できる見極め力のある人もあり、筆者も驚いていた。しかし一般的には、非構造的面接は7割の確率でエラーを起こすということ。自分が科学を超える人間洞察力があれば良いのだが、そうでないなら面接スタイルは変えなければならない。

内容が期待していた方向と違い、得られた気づきは多くなかったもののの、少ない気づきのそれぞれが自分にとってディープだったので、非常に役立つ一冊になりました。


July 15, 2017


dogandchopsticks at 20:15



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