令和五冊目。
漫画の新人アシスタントが、「うしおととら」の藤田和日郎氏と編集の武者氏からのアドバイスを受けて、漫画家デビューを目指す、というストーリーのフィクションで、それを通じて漫画を書く上での心得を学ぶ。
理論的ではないし網羅的ではないけど、漫画を書くときに新人が陥りそうな罠だな、と思うようなエピソードが満載。いや、私は漫画は描けないけど、これはあらゆる表現に通じるもので、それこそ仕事のプレゼンにも活かせるな、と思いながら読んでいた。
さて、本書の本質は、インプットを受ける若手への指南書だと思う。
実際もそんなんじゃないかと思うのだけど、とにかく先生と編集からのインプットが猛烈。そこに愛はあるのだけど、ロジックがなかったり矛盾があったり。こんなん付き合いきれないだろう、と思うような感じだが、そうしたインプットを咀嚼して漫画家デビューを果たしている人が山ほどいる。つまり、本書から学ぶべきは、猛烈なインプットの嵐にいかに立ち向かうか、という姿勢ではないだろうかと思う。
その点での金言として、
作品について言われたことを自分自身に対する攻撃だと混同しちゃう。それはわかるよ。だってキミの作った作品は、キミが自分の全人格を乗っけて描いたものだもの。だけど、それを分けて考えられるようにしないと、いつまで経ってもキミは、キミの作品についての意見を受け入れて、直していくことができないんだよ。
とか
頭のいいひとによくいるんだ。自分を認めてもらいたくてしかたなくて、どんなところでも、誰が話していても割って入って「それってこうですよね」「いや、ボクはそう思いません」とかってやっちゃうひと。いつも自分が思ってるよりもまわりからの評価が低い人間に多いのよ。
とか、ちょっとインプット貰っただけでフラストレーションを溜めてる若手に飲み込ませたいくらい。何事も本質は同じだ。
そんなわけで、漫画家を目指す人はもちろんのこと、そうでなくともインプットの受け方を学ぶという意味で学びのある一冊。本の厚さに対しては内容が薄めなのだけど、そこはご愛嬌。