このたび、European Bioinformatics Institute(EMBL-EBI)の科学者らによると、

人工的につくられたDNAのなかにデータを記憶・保存しておく方法を開発した

とのことだ。

このDNAのなかには少なくとも1億時間分のHD動画を保存することができて、コンディションさえよければこの媒体は何万年も維持できるという。

研究は23日付で"Nature"に発表された。

画像1
Nick Goldman of EMBL-EBI, looking at synthesised DNA. (Credit: EMBL Photolab)


「DNAが情報を保存しておくのに間違いのない媒体だということは、とっくに知られていた。だってさ、何万年も前に生きていたふさふさなマンモスの骨部分から抽出してもなお、データが維持されているんだからね」

と説明するのは、EMBL-EBINick Goldmanだ。

「それに、信じられないくらい小さくて、密度が高い。おまけに保存しておくのに電気がいらないんだから、持ち運んだりするのは楽だよね」

ところで、DNAを解読するのはそんなに複雑なことではない。

しかし、情報を"書きこむ"となると話は別で、DNAストレージ(DNA strage)を実現するのは至難の技だと思われていた。

例えば、現在の手法では短い鎖のDNAしかつくることができないし、とりわけ同じ文字が繰り返されるような場合には書きこんだり解読したりするとエラーが起こりやすかった。

しかし今回、Nick Goldmanと共同研究者のEwan Birneyは、これらの障壁を打ち破るコードをつくるべく、乗り出したのだ。

「短いDNAのみを使ってコードをつくらなきゃいけないってことは百も承知だった。同じ文字のひと続きが許されないってこともね」

「だから、コードをばらばらにしてたくさんの断片にすることにしたんだ。それぞれの断片が両方向にオーバーラップしていて、めいめいの断片がコード全体
のどこに属しているかというのはインデックス情報によって示されるようにした。それから、繰り返しを許さないコードのスキームにした。そうすることで、エラーがおきるためには四つの異なる断片でおきなくちゃいけなくなった。そんなことはめったに起こらないんだよ」

この新しい手法では、エンコードされた情報からDNAを合成する。

今回エンコードされたのは、

・キング牧師(Martin Luther King Jr.)の演説「私には夢がある」(I have a dream)の音源【.mp3ファイル】

・EMBL-EBIの写真画像【.jpgファイル】

・DNAの二重螺旋構造が発表されたワトソンとクリックによる論文(Molecular structure of nucleic acids)【.PDF ファイル】

・シェイクスピアの全ソナタ作品【.txtファイル】


の四つのファイル形式だ。

結果、DNA配列をすることもできたし、エラーが起きることなくファイルをデコードすることもできたという。

「適切なコンディションであれば優に1万年は持つような分子形式を使った、エラー耐性のあるコードをつくりあげることができたんだ。コードを知っている人がいて、DNAを解読することのできる機械さえあれば、ファイルを開くことができるんだよ」

解決されなくてはいけない実際的な面はまだまだ多いが、本来備わっている密度や寿命を考慮に入れると、DNAは魅力的な記憶媒体だ。

今後は、商業的に利用可能なDNAストレージモデルに向けて、コーディングのスキームを完璧にしたてあげ、実用的な面を探求していくつもりだという。


European Molecular Biology Laboratory (EMBL). "Researchers make DNA data storage a reality: Every film and TV program ever created -- in a teacup." ScienceDaily, 23 Jan. 2013.
http://www.sciencedaily.com/releases/2013/01/130123133432.htm

Nick Goldman, Paul Bertone, Siyuan Chen, Christophe Dessimoz, Emily M. LeProust, Botond Sipos, Ewan Birney. Towards practical, high-capacity, low-maintenance information storage in synthesized DNA. Nature, 2013
http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature11875.html