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(Credit: Image courtesy of Weizmann Institute of Science)

量子力学の最も基本的な法則の一つは「ある一つの系は同時に一つ以上の状態をとり得る」という、「重ね合わせ」として知られている現象で、これは系がいかなる方法によっても観測されていない限りにおいて存在する。

ところが、そのような系が観測されるや否や、その「重ね合わせ」の状態は単一の状態に「崩壊」してしまうのだ。

そういうわけで、マクロの世界で私たちはいつも観察・観測をしているわけだが、まさにその観測行為によって、私たちが体験する「世界」というのは「単一の現実のなかに存在する私たち」として体験される。

ところで、重ね合わせの法則が最初に実証されたのは1922年のことで、ドイツのOtto SternとWalther Gerlachらは銀原子のスピンにおける現象を観測した。

スピンは量子的な粒子に自然に備わった磁石のようなもので、粒子のスピンが重ね合わせの状態にあるとき、スピンは一つ以上の方向を「同時に」とる※。

※スピンの向きは「上向き」か「下向き」といった具合に示されますが、重ね合わせの状態にあるときは「上向きでもあり下向きでもあるような状態」になるということです。はい、不思議ですね。

さて、この度イスラエルのWeizmann Institute of Science所属のRoee Ozeri 博士率いる研究チームによって調べられたのは「単体の原子がもつスピンは光で観測されたときに、重ね合わせの状態から一つの状態へどのように崩壊するか」ということだが、今回はレーザー光を当てることで原子が「観測」された。

私たちの眼が物体によって私たちのいる方向に「撒き散らされてくる(scattered)」光子を吸収することで世界を観測するのとまさに同じように、博士らは撒き散らされた光子を観測することで原子におけるスピン崩壊プロセスを観測しようとした。

結果、光子が原子を離れるときにとる方向は、重ね合わせが崩壊したときにスピンが「適応」する方向と同じである、ということが示された。

さらに博士らは、放出された光子の分極化を観測。結果、観測された分極化はスピンに与える観測の影響を決定づけるということが示された。

これらが示唆しているのは「観測者は、光子分極計測装置の方向を調整することで、重ね合わせの崩壊に影響を及ぼすことができる」ということだ。

観測された原子のスピンと放出された光子のスピンとがそれぞれ「絡み合っていた」とすることで、この「遠隔作用(action-at-a-distance)」の説明がつく。

つまり、お互いが離されたあとでさえ、片方の計測はもう片方の計測に「即座に」影響を及ぼすことになるのだという。

今回の実験は量子系における観測プロセスを理解する上で重要な一歩だと言えそうだ。

研究はScienceに発表された。


Weizmann Institute of Science. "Causing collapse: Can one affect an atom's spin just by adjusting the way it is measured?." ScienceDaily, 18 Mar. 2013.
http://www.sciencedaily.com/releases/2013/03/130318133026.htm