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「臨死体験」のイメージ画像。 (Credit: c petarpaunchev / Fotolia)

ベルギーのLiege大学所属の研究者らは27日、「臨死体験」の最中に誘発される生理学的なメカニズムが、個人史における「架空の」出来事についての知覚をよりまざまざとしたものにするだけでなく、人生のなかで「実際に起こった出来事」の知覚についても同様にそれを生き生きと鮮明にしたものにするということを実証したとPLOS ONEに発表した。

臨死体験(Near-Death Experiences, NDE)として報告されている事例でよく知られた特徴には例えば、とりわけ死に接近したその最中、眩い光を浴びながらトンネルを通過していく過程でこれから今までの現実とは違う「もう一つの現実」に落ち着くことになるのだという感覚を抱いたり、あるいは自身の肉体を去ってゆく体外離脱(OBE)を体験する、というものがある。

この現象はメディアでも広く取り上げられてきて、「精神の産物」「脳内麻薬」「生理学的な防衛機構」「幻覚」といったような、実に数多くの説を生み出すこととなっているが、未だにその真相は謎のままである。

科学的な見地から言えば、この種の体験はリアルタイムでの研究をほとんど不可能なものにする「混沌とした」状況において生起するという点で、一層理解しがたいものになっているのが現状だ。

そういうわけで同大学所属のSerge Bredart氏らは今回、これまでなされてきたのとは少し異なるアプローチをとった。

彼らは臨死体験の「記憶」を調べたのだが、もし臨死体験の記憶が脳による生理学的な「純粋な想像力の産物」であるならば、その感覚・感情・自己言及的なディテールといった「体験的・主観的・現象学的な性質」は、架空の記憶がもつ性質により近くなるはずだというのが彼らの立てた仮説で、今回はその仮説が正しいものであるのかが検証された。

逆にもし臨死体験が現実に似たように体験されるのであれば、その性質は実際の出来事についての記憶に近くなるだろうという計らいだ。

今回Serge Bredart教授らは、4つのグループによって報告された反応を比較。4つのグループというのは、

・昏睡状態から生還し、臨死体験を経験したといわれる患者8名

・臨死体験を体験してはいないが昏睡状態についての記憶をもつ6名

・昏睡状態のときのいかなる記憶ももたない7名

・上記参加者の年齢に対応したボランティア18名


であり、彼らが抱く5種類の記憶が評価された。ちなみに5種類というのは、

・「ターゲットとなっている」記憶(臨死体験をした者にとっては臨死体験。昏睡状態時の記憶をもつ者にとっては昏睡状態時の記憶。残り二つのグループにとっては幼少期の頃の初めの記憶)

・最近起きた実際の出来事についての記憶

・昔に起きた実際の出来事についての記憶

・最近想像された架空の記憶

・昔に想像された架空の記憶

の5種類の記憶についてそれぞれ、当人がもつ体験的な性質がアンケート調査で調べられ、評価された。

結果わかったのは、臨死体験は架空の出来事についての記憶に酷似しているだけでなく、実際に起こった出来事についての記憶に本来固有であるような体験的な性質が、実際の出来事についての記憶よりも、臨死体験についての記憶においては遥かに数多くみられたということであった。

臨死体験についての記憶には、実際に起きた出来事についての記憶や昏睡状態時の記憶などよりもより多くの特徴が含まれていたことから、臨死体験についての記憶は脳によってでっちあげられた架空の出来事についての記憶とは考えられないということが示唆されるという。

むしろそれに反して、その生理学的な起源は本当に「知覚」されたものである可能性があるとしている。

もちろん「臨死体験について理解を深めるためには更なる研究が必要である」と彼らの論文の要旨には締めくくられてはいるのだが。

今回発表された研究は臨死体験について別段ユニークな説明を与えるわけではないが、研究の際には生理学的な現象と結びついた要素として心理学的な現象もまた考慮される必要があることを指し示していると言える。


University of Liege. "Memories of near death experiences: More real than reality?." ScienceDaily, 27 Mar. 2013.
http://www.sciencedaily.com/releases/2013/03/130327190359.htm