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From left: Scientia Professor Andrew Dzurak, Ph.D. Student Jarryd Pla (lead experimental author) and Associate Professor Andrea Morello, University of New South Wales. All three are engineers in the School of Electrical Engineering and Telecommunications at the University of New South Wales in Sydney, Australia.
(Credit: University of New South Wales)


オーストラリアの研究チームはこの度、シリコンの原子核スピンで「量子情報(q-bit)」の書き込み及び読み出しを高い正確度で実証することができたと発表。

単体の原子核に量子情報を保存・読み出しすることができたのは初めてであり、原子核の直径は原子の直径の100万分の1という小ささなので、量子コンピュータを実現する際に必要となるデータ処理において劇的な進歩がなされたと言える。研究は18日付でNatureに発表される予定。

研究にあたったニューサウスウェールズ大学所属のAndrea Morello助教授によると、単体の原子がもつ核スピンを制御してリアルタイムで情報の読み出しをするにあたっては、化学分析やMRIスキャンに応用されていることで知られる「磁気共鳴技術」を用いたという。

今回の実験で研究チームは原子核の方向を制御したが、ある値をスピン上に「書き込み」、それからその値を「読み出す」ことで原子核を機能的な量子情報へと変えることに成功。

同大学所属のAndrew Dzurak教授が語るところによれば、「保存された情報を読み出すにあたっては99.8%の忠実度を達成することができた。これはソリッドステート型の装置における量子情報の正確度にとって新しい基準点(ベンチマーク)を設定するものだ」としている。

この核スピンの量子情報の正確度は、多くの者が今日における「ベストな量子情報」だと考えているものに匹敵する。

その「ベストな量子情報」とは真空室内に電磁気的に捉えられた単体の原子における量子情報のことであるが、この「イオントラップ」技術の発展には2012年にノーベル物理学賞が与えられた。

しかし今回は真空室内ではなく、通常の集積回路のように電気的に機能可能なシリコンチップ内で同じくらいの正確度を達成することに成功した。

「シリコンはマイクロ電子機器産業においては支配的な物質である。ということはつまり、今回の量子情報は既存の産業技術と互換性があり、大規模に実現するにあたってこれまでの量子情報より容易だ」とMorello助教授は話している。

2012年の9月に同チームは、シリコン内に埋め込まれたリン原子への電気結合に基づいた初めての機能的な量子情報をNatureに報告していた。

しかし今回、チームは遥かにずっと原子構造のなか奥深くに迫り、核スピンを操作・計測することを試みた。

原子核には原子がもつ質量の大半が含まれているが、その直径は原子自体の凡そ100万分の1。

「ということはつまり計測はより困難なものになるが、原子核は外界からの撹乱要素の影響を全くと言っていいほど受けないので、うまくいけば例外的な量子情報になる」と話すのはJarryd Pla氏。

「今回示された核スピンの量子情報にはより長時間にわたって、かつ高い正確度で情報を保存することが可能だ。これらの量子情報を集結させれば複雑な量子演算を実行する能力は大いに高まるだろう」

量子情報としての「電子のスピン」は、その他の電子と組み合わされた上で量子コンピュータにとって主要なプロセッサのビットの機能を果たすことになる可能性が高い。

しかし、量子情報としての「核スピン」もまた統合可能で、メモリの機能を果たせるかもしれないし、あるいは二つの電子量子ビット間の「論理ゲート」を実装する上で一役買う可能性があるという。

今後研究チームは、量子メモリと2量子情報間の論理ゲートを実証することに焦点を当てていくつもりだといい、またより純度の高いシリコンなどを用いることで核スピンや電子スピンの量子情報がもつ正確度を高めていく研究にとりかかっていく予定であるとしている。

University of New South Wales. "Quantum computing taps nucleus of single atom." ScienceDaily, 17 Apr. 2013.
http://www.sciencedaily.com/releases/2013/04/130417131807.htm

Jarryd J. Pla, Kuan Y. Tan, Juan P. Dehollain, Wee H. Lim, John J. L. Morton, Floris A. Zwanenburg, David N. Jamieson, Andrew S. Dzurak, Andrea Morello. High-fidelity readout and control of a nuclear spin qubit in silicon. Nature, 2013; 496 (7445): 334 DOI: 10.1038/nature12011