どこまでもイスラム国

イスラム国最新情報&解説をイスラム思想研究者がお届け。「どこまでもエジプト」の姉妹ブログです。

イスラム思想の観点から、イスラム国現象を読み解きます。イスラム国が消滅するその日まで、継続させるのが目標。 「どこまでもエジプト(http://nouranoiitaihoudai.blog.fc2.com/)」著者による姉妹ブログです。

非常に残念なお知らせですが、ここ数日、イラクの過激派組織「イスラム国」に復興の兆しがみえます。

イラクでイスラム国が最大拠点としてきたモスルに対する奪還作戦が開始されたのが、2016年10月17日。もうすぐ200日が経ちます。

2017年1月25日には、モスルの東岸からイスラム国戦闘員を完全に駆逐したと、イラク政府が発表しました。
ところがその東岸で今月21日、再度自爆テロが発生し、市民ら18人が死傷しました。
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つまり、東岸からはイスラム国戦闘員はまだ一掃されてはおらず、戦闘員が潜伏し、自動車爆弾による自爆テロを行う力を温存していたということです。

モスル東岸解放宣言がなされてから3ヶ月。避難していた住民も徐々に帰還し、シャワルマ(ケバブ)屋さんが営業再開とか、ヴァイオリニストが活動再開とか、明るい話題が続くさなかの自爆テロでした。

この3ヶ月間、西側から迫撃砲が飛んでくるくらいのことはありましたが、自爆テロは初めてです。

さらにこの数日間で、まだ戦闘が続いているモスル西岸でも、イスラム国が一度は奪われた地区をいくつか奪還しました。
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イスラム国は、奪還したとするバーブットウブ地区を撮影したビデオも公開しています。
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奪還した。。。とは言っても、破壊され尽くされているのでこんな感じなのですが。

奪還宣言を行う戦闘員たちです。
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手前から二番目の戦闘員。寄ってみると。。。
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たぶん、欧米人ですね。。。

イスラム国は戦闘員の多くを、モスル市民に紛れ込ませてシリア方面に脱出させたと言われていますが、見た目に明らかに「外人」だとわかる戦闘員は、モスル市民のふりをする作戦が使えないため、モスルに残留するしか道がないのです。

一方、一番奥の戦闘員に寄ってみると。。。
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たぶん、10歳くらいの子供、少年兵です。

イスラム国は建国当初より子供に対する軍事訓練を熱心に行ってきましたが、ここまで最前線に少年兵が投入されるようになったのは、モスル奪還作戦開始以降です。

このビデオの撮影中も、彼だけはずっと下を向いたままで、そこに彼の心情が垣間見える気がしてしまい、胸が苦しくなります。。。

この戦いで、イスラム国はイラク軍の装備品、武器弾薬の類もそっくりそのままいただいたとのこと。
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これがまた、イラク軍兵士を殺すのに使われるという皮肉。。。

ところでイラク軍は、モスル西部もすでに60%は奪還し、イラク全体でみても、イスラム国が支配する土地はイラク全土の7%にまで減少した、としています。

下の地図で黒く塗られた部分が、イスラム国の今の支配領域です。
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しかし、イスラム国が攻撃を実行しているのは、この黒い地域にとどまりません。

こちらは、ここ1ヶ月間にイラクで発生した主な治安事件を示した地図ですが・・・
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首都バグダードを始め、サーマッラーやディヤラでも大規模な攻撃を行っていることがわかります。

サーマッラーの東にはジャラムという砂漠地帯が広がっており、イスラム国はここの地元部族に深く食い込み、拠点を築いているとされています。このエリアは砂漠だけに、治安当局はどこにイスラム国の拠点があるのかすら掴めていないと言われています。

一方、イスラム国はモスルの戦闘員の多くをすでにシリアに移動させたのですが、シリアで最大の拠点としてきたラッカも有志連合の空爆で危険にさらされているので、ラッカの南東にあるイラク国境近くのデリゾール(Deir Al Zor) に、首都機能を移転済みだとされています。

モスルのほとんどを失いながらも、防衛戦に終始することなく一部の地域を奪還、さらに遠隔地にまで攻撃の手をのばしていること、モスルからラッカ、デリゾールへと首都機能を移転させていること、指導者であるカリフ、バグダーディーも数ヶ月前にデリゾール方面に脱出し、健在だと伝えられていること・・・これらのみを考慮しても、イスラム国が力を失ったと安心するのは時期尚早であるといえます。

アメリカの保険関連会社Aonが、テロのリスクに関する最新のリポートを発表しました。

これによると、2016年に全世界で発生したテロは4151件。2015年の3633件から、14%増加しています。
件数増加

増加率が特に高いのが西側諸国で、2015年にはテロ発生件数35件だったのが、2016年には96件。3倍近くに増えています。

そして昨年特にテロが多く発生したのが、ドイツです。

2015年のテロ発生件数は2件のみ、しかも犠牲者は出なかったのに比べ、2016年のテロ発生件数は17件、犠牲者数も12人にのぼっています。
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ヨーロッパのみに限って犠牲者数の推移をみると、2016年より2015年のほうが数は多いです。しかし波はあるものの、この7年間に非常に多くの方がテロの犠牲になっていることがわかります。
犠牲者数

テロのリスクの高低を世界地図に落とし込んだものが、こちらです。

世界地図

「テロのリスクがない」とされているのが、グリーンで示された国々。ヨーロッパではノルウェーやオーストリア、スイスなどがグリーンに分類されています・・・が、先日ノルウェーのオスロでは爆弾が発見されました。


「テロのリスクが低い」とされているのが、イエローで示された国々。我らが日本のほか、韓国やオーストラリア、アメリカ、韓国などがここに分類されています。

日本とアメリカのテロのリスクが同程度、というのは個人的には納得しかねるところもありますが、アメリカの保険会社だからでしょうかね。。。

「テロのリスクが中程度にある」とされているのが、薄いオレンジで示された国々。中国やロシアの他、ベルギーやフランスなどがここに分類されています。私がかつて留学していたモロッコも、ここです。

「テロのリスクが高い」とされているのが、濃いオレンジで示された国々。身近なところでは北朝鮮、インドネシア、他にはトルコ、インドなどもここに分類されています。

私が4年間住んでいたエジプトは、ここです。

生きて帰ってこられてよかった。。。

最後に、「テロのリスクが非常に高い」とされているのが、赤で示された国々。シリア、イラク、バングラデシュ、アフガニスタン、パキスタンの他、スーダン、リビア、マリ、ナイジェリアといったアフリカ諸国が多く含まれています。

こうして改めてみると、やはり中東アフリカ地域に最も危険な国が集中しており、そこから離れると少し危険性が低下する、という傾向が一目瞭然です。

しかし、テロのリスクがほとんどない国っていうのは、少ないものですね。

みなさーん!日本から一番近いところにある低リスク国はブータンですよー!

これから学生さんには、海外旅行先としてブータンでも勧めるか。。。

と、少し脱線しましたが。

同リポートによると、2016年に最も多くテロの標的となったのは、個人や個人の資産であり、それらを狙ったテロは1342件発生しました。次に多く標的とされたのは軍ですが、件数は799件。第3位は公共の集会で、714件。

世界中でテロが増加していることだけではなく、その刃が無辜の市民にむけられている現実を再認識させられます。

昨日4月9日、エジプト北部にある教会2カ所で立て続けに自爆テロが発生し、47人が死亡、100人以上が負傷しました。

エジプトはイスラム教徒が多数を占める国ですが、国民の1割ほどはコプト教というキリスト教の一派を信じています。エジプトのコプト教徒は、中東に存在するキリスト教コミュニティーの中では、最大の勢力です。

今回標的にされたのは、このコプト教徒の教会で、彼らが聖枝祭を祝う儀礼をとりおこなっている最中に自爆テロが発生しました。

犯行声明を出したのは過激派組織「イスラム国」で、声明文には、2人のエジプト人「同胞」(「兵士」ではありません)がタンターとアレクサンドリアにある教会でそれぞれ自爆し、190人のキリスト教徒を死傷せしめた、と記されています。
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実はアレクサンドリアの教会の入り口で自爆テロが発生した瞬間、エジプトのコプト教会のトップであるタワドロス2世はその教会の中にいました。

治安部隊員が自爆ベルトを装着した男を不審者とみて制止したため、男は入り口付近で爆発したと伝えられています。

もし教会内で自爆していたら、前代未聞の「教皇爆死」という事態が発生していたかもしれません。

イスラム国は教皇暗殺を狙っていた、と考えられます。

イスラム国は昨年12月に発生したカイロのコプト教会での自爆テロについても、犯行声明を出しています。

いみじくも先ほど彼ら自身が、「イスラム国がエジプトのキリスト教徒に対して実行した3つの攻撃」と題するグラフィックを公開しました。
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合計80人以上を殺害したとされています。

改めて確認しておきますが、エジプトにはイスラム国の支部があります。

地元の武装勢力アンサール・バイトゥルマクディスが2014年11月にイスラム国入りを宣言、それ以来シナイ半島を中心に、エジプト全土でしばしばテロ事件をおこしてきました。

エジプトに限らず、世界中のイスラム国支部や戦闘員、シンパらは、軍や治安当局者、政治家などを標的として攻撃していますが、彼らが強い敵意をむき出しにする標的のひとつが「異教徒」です。

なぜなら彼らの教義においては、「異教徒」は無条件で直ちに殺害すべき対象とされているからです。

(厳密にいえば、イスラム国の統治に服し人頭税を支払うキリスト教徒には、生存権が与えられます。)

エジプトのイスラム国も様々なテロ事件をこれまでおこしてきましたが、この半年間のコプト教会に対するテロは3件ともが自爆であり、死傷者数も非常に多いという点で際立っています。

他にもイスラム国はコプト教徒を誘拐して惨殺するという犯罪行為を繰り返しており、シナイ半島からは多くのコプト教徒がそれを恐れて移住してきてもいます。

エジプトでは古来より、イスラム教徒とキリスト教徒が互いを「当然の存在」として共存してきました。

歴史的にもほとんどの時代において、イスラム教の専門家は「異教徒」を迫害するより、うまく共存することを共同体全体の利益と考え、イスラム教の教義をその方向で解釈してきました。

イスラム国の恐ろしいところは、そうした解釈や知恵の全てを「イスラム教の歪曲」であるととらえている点です。

今回のテロを受け、エジプトのイスラム教の権威の一人であるアズハル総長は、「テロがエジプトのイスラム教徒とキリスト教徒を引き離すことはない」と述べました。

近年エジプトの国力はどんどん弱体化し、その影響力も低下の一途をたどっていますが、本当に頑張ってほしいです。いろんな意味で。

記事の更新をものすごく怠っていて、申し訳ありません。。

まずは、お知らせです。

イスラム国以外のネタについて、こちら(ホウドウキョク)でも書くことになりました。

イスラム国のことも、そのうち書くかもしれません。

私はアラビスト兼イスラム研究者で、中東やイスラムについて教えたり、書いたり、話したりするのを生業としていますが、今更のように気づいたことがあります。

それは、「世の人々の、中東やイスラムに対するアレルギーはかなり強い」ということです。

そんなことについては知りたくもない、そうした情報は不愉快である、といった反応を示されることもあります。

そうした方が少なからずいらっしゃるということを認識した上でなお、私は次のように言いたいと思います。

「2075年までに、イスラム教徒は世界最大の勢力になります。」

これは、私の妄想ではありません。

先日発表された、ピューリサーチセンターのリポートで示された予測です。

同リポートによると、2035年までにイスラム教徒の出生数はキリスト教徒の出生数を上回り、その後その差はどんどんと広がります。
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その結果、2060年までには、イスラム教徒とキリスト教徒の総数はほぼ拮抗することになります。
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同リポートは2060年までの予測をたてたものですが、これを踏まえると、2075年までにはイスラム教徒は世界最大の宗教勢力になる、と予測してもいます。

現在の世界の人口は約70億人。

うち31%がキリスト教徒、24%がイスラム教徒です。
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2015年から60年にかけて、ほぼ全ての宗教人口が増加するのですが(我ら仏教徒のみが減少します)、ぶっちぎりの増加率を示すのがイスラム教徒です。
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その結果、2075年までにはイスラム教徒が世界最大勢力になる、とされています。

ただ、イスラム教徒といっても、世界人口の多くはそもそもアジア太平洋地域に集中しているので・・・
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中東人が爆発的に増えるかというとそうではないのですが、とにかく、イスラム教徒はこれからもどんどん増えます。

唯一神に帰依し、預言者ムハンマドを信じ、『コーラン』を神の言葉そのものとする人々が、世界で最大の勢力を構成する時代がそう遠くない未来にやってくるのです。

だから、イスラムについて知ることが大切なんだ!なんて説教するつもりは全くありません。

そういう時代が一歩一歩着実に近づいてきているという、それ自体が言いたかっただけです。

イスラム国がアジアでの地盤をかためつつあることが、徐々に顕在化してきました。

先日のバングラデシュ人質事件しかり。

フィリピンの複数の武装勢力のイスラム国入りしかり。

6月28日にクアラルンプール郊外のナイトクラブに手榴弾が投げ込まれた事件についても、マレーシア政府がイスラム国の関与を認め、同国内発生した初めてのイスラム国系テロだと発表しました。

そんな中、イスラム国は例のバングラデシュ人質事件を賞賛し、これからもバングラでのジハードを継続しよう!と呼びかける新しいビデオを公開しました。
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このビデオには、ラッカで戦うバングラデシュ人戦闘員三人が登場します。

既存のイスラム国ビデオでは、バングラ人戦闘員がフィーチャーされたものを見た記憶がありません。ですから、今回のようなビデオをみるとまずは、「ほんと、イスラム国って多国籍。。。」とついつい思ってしまいます。

三人ともベンガル語でしゃべっていますが、アラビア語の字幕つきなので、意味はわかります。

まず一人目は、こんな感じの人。
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ちょっとジャイアン風なせいか、親しみがわかないこともないのですが、次のように言っています。

「バングラデシュ人は、なぜ民主主義などという反イスラム的教義を採用するのか?民主主義は人間の作った人定法に立脚するものであり、これはイスラムに反する。人間は、神の法にのみ従わなければならないのだ。」

「バングラデシュ政府よ、今日バングラデシュで行われているジハードは、これまでのものとは全く違う。今日のジハードはカリフ国傘下で行われており預言者ムハンマドに導かれている。ジハードは、バングラで神の法による統治が実現されるまで継続される。」

「キリスト教徒、ユダヤ人、十字軍とその同盟者たちよ、我々は冗談で「お前たちと戦う」などと言っているわけではない。本気で、最後まで、戦い抜く。我々は勝利するか、殉教するまで戦い続ける。この戦いで、お前たちが勝利を収めることは絶対に、決してない。先日バングラでおこったことは、序章に過ぎない。これは、お前たちが敗北するまで、何度でも繰り返される。そして我々が勝利し、神の法が世界を統治する。

こわいですね。。。200%イスラム国イデオロギーです。

やっぱり、カリフに主導されてこそ本当のジハードなんでしょうね、彼ら的には。

ちなみにこの「お前たち」の中には、私たち日本人も当然含まれていますので、他人事じゃありませんよ~。

二人目はこちら。
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覆面戦闘員です。

彼は次のように言っています。

「この世はすべて神の法によって統治されねばならないので、バングラ政府は不信仰政府だ。だからバングラ政府との戦いは、我々全イスラム教徒にとっての義務だ。カリフ国戦士たちが、ダッカのあのレストランで作戦を実行したのも、それが理由だ。」

「十字軍連合が空爆によってシリア、イラク、リビアでムスリム女性や子供を殺すので、ジハード戦士たちが立ち上がったのだ。この殺戮が続く限り、ジハード戦士たちは戦い続ける。」

バングラにおけるジハードはいわゆるファルド・アインであり、当座の攻撃対象はバングラ政府と異教徒である、という主旨です。

三人目はこんな感じ。
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うーん。。。戦闘員らしい戦闘員ですね。。。

彼は次のように言っています。

「ラマダン中にこの祝福されるべき作戦についての知らせを聞き、我々は表現できないほど喜んだ。バングラデシュで我々の兄弟たちが実行した今回の作戦は、過去に例のないものだ。神が彼らを殉教者として迎えてくださいますように。」

「兄弟たちよ、我々はもともと、ホラサーンやシリア、イラクでジハードを行いたいと願ってきた。そして今や、ジハードは我らの地元バングラデシュにまで到達した。イスラム国の傘下で神の法による統治を目指し、我々と一緒にジハードをしよう。神が我々を勝利に導き、そして神のもとへと迎えてくださる。」

ジハードの波がバングラにまで到達したことは、想定外の成果だとでも言いたそうな感じです。

つまりこの人は、自分はジハードしたくてシリアに行ったけど、今じゃシリアに行くまでもなく、地元バングラでもジハードできるいい時代になったよね、ってことでしょう。

・・・汗。

ジハード戦線、アジアで確実に拡大中です・・・。

ラマダン最後の金曜日である7月1日、バングラデシュの首都ダッカのレストランを武装勢力が襲撃、約12時間立てこもった末、人質20人を殺害するというテロ事件が発生しました。

犠牲者のうち7人は日本人でした。

イスラム国が犯行声明を出しているのですが、みなさん特にご関心があるのは、

1)「なぜバングラデシュのダッカが狙われたのか?」
2)「なぜ日本人が(日本人なのに)殺されたのか?」
3)「なぜコーラン暗唱できない人が殺されたのか?」

といった点でしょうか?

まず1)「なぜダッカが狙われたのか?」については、以下のことが言えます。

① バングラデシュにはもともとイスラム国戦闘員が一定数存在している

バングラデシュは国民のほとんどがイスラム教徒で、なかにはイスラム国イデオロギーに共感する人もおり、その一部はイスラム国支部に属しています。

彼らが活動を活発化させたのは2015年で、それ以降、日本人の星さんやイタリア人の他、ヒンズー教聖職者やLGBT活動家などを暗殺してきました。

② イスラム国戦闘員が一定数存在している場所では、この種のテロはどこでもおこる

2015年11月のパリ同時テロのときも、2016年3月のブリュッセル同時テロのときも同じことを書きましたが、イスラム国は「仲間以外は全て殺すべき敵」というイデオロギーを持っており、さらに彼らの最終目的は「世界征服」なので、条件が整いさえすれば、いつでもどこでも誰でも殺す、というのが彼らのやり方なのです。

ですから、今回特にダッカが標的とされたことについて、バングラデシュやダッカ特有の条件について考えることは、「じゃあ他の場所ではテロが起こらないのか?」と話を展開する上では何の意味もありません。

単純にいえば、テロをおこす仲間がいて武器さえあれば、今回のようなテロは世界中のどこでもおこりうるのです。

更にいえば、フロリダのゲイパーティー襲撃にみられるように、仲間がいなくてもあの程度のテロはやってのけられますし、パリの警官刺殺にみられるように、ナイフ一本あればあの程度のテロは実行可能なわけです。

次に2)「なぜ日本人が殺されたのか?」についてですが、これをお読みの方のなかにも「日本人なのにどうして?!」とお思いの方は少なからずいらっしゃると思います。

ですが残念ながら、「日本人なのに」というのが全く通用しないのがイスラム国のようないわゆる「イスラム過激派」の人々です。

「日本人なのに」とお考えの方はおそらく、日本人は反イスラムではない、イスラム教徒と戦争などしていない、イスラム教徒を殺してなどいない、日本人はイスラム教徒と同じように平和を愛している、等々とお考えの方なのだと推測しますが、イスラム過激派からみると、

「日本人=敵」

にすぎません。

「日本人=非イスラム教徒=敵」

でもありますし、

「日本人=十字軍連合の一味=敵」

でもあります。

ですから今回の場合、一説には人質となった日本人が I am Japanese!  Don't shoot! と叫んだと言われていますが、これは全く命乞いの意味をなしていないどころか、「殺してください」と言っているようなものです。

亡くなった方に落ち度があったわけでは全くなく、日本人という記号が彼らにとってはそういう意味を持つという、それだけのことです。

最後に3)「なぜコーラン暗唱できない人が殺されたか?」ですが、人質にコーラン暗唱を求めたのは、誰がイスラム教徒なのかを犯人が知りたかったからです。

人質の家族は、現地の英字紙に次のように語っています。
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バングラのイスラム国に関しては、とりあえず「非ムスリムを殺す」ことを命題に掲げており、今回もムスリムは殺したくないという思いがあったようです。

コーランの章をひとつかふたつ暗唱できた人は、ムスリムであると判断して手荒なことはせず、食事も出していたそうです。

一方それができなかった人はムスリムではないと判断して、拷問を加え、最終的には殺害したようです。

イスラム国は定期的に『ダービク』という英語の機関紙を発行しているのですが、4月に発行された号にはこんな記事が載っていました。
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「バングラのイスラム国戦士らの指導者シャイフ・アブーイブラヒーム・アルハニーフとのインタビュー」です。

既述のように、イスラム国はバングラに支部があると自認しており、そのリーダーがこのアブーイブラヒームだとされています。

彼はこのインタビューの中で、次のようなことを語っています。

  バングラデシュの人々に対するイスラム国参加への呼びかけは功を奏しており、イスラム国戦士数は順調に増えている

  戦いの標的はキリスト教徒、多神教徒、世俗主義者、ラーフィダ(シーア派)といった不信仰者

  バングラデシュでジハードを強化するにあたっての最大の障壁は、人々の多くがコーランとスンナを正しく理解していないことだ

  バングラデシュはグローバルジハードにおいて地政学的に重要

  インドをホラサン州とともに挟み撃ちにする、ムスリムが辛酸をなめているビルマにまでジハード戦線を拡大するのが目標


非イスラム教徒が攻撃対象だとはっきり述べています。

イスラム教徒であれば、コーランの章のひとつやふたつは必ず暗唱できます。

自分の子供にコーランの第一章を暗唱させられるようにすることは、イスラム教徒の親にとって、ごく当たり前の義務です。

なぜならコーランの第一章は、イスラム教徒の義務である礼拝を行うプロセスのなかで、必ず暗唱しなければいけないからです。

他にも任意の章を暗唱しなければならないため、イスラム教徒であれば必然的にいくつかの章を暗唱できるようになっているはずなのです。

私ですか?

もちろんできますよ。

・・・イスラム教徒ではありませんが。。。

私が大学で講義をしている学生たちにいつも言うのは、テロは防げないので、自分の身をテロから守るためには、

「テロはいつでも起こりうるという覚悟をしておくこと」
「勉強すること」
「不穏な気配を察知したら全力で逃げること」

という3箇条がものすごく重要なのだ、ということです。

・・・これ以上書くのはやめておきます。。。

イスタンブール空港で3連続自爆テロが発生し、41人が死亡、239人が負傷したのは、イスラム国建国2周年の前日のことでした。

イスラム国はこの件について沈黙を守っており、声明などは一切出していません。

しかしトルコ首相や警察、CIAのブレナン長官なども指摘しているように、これはおそらくイスラム国の犯行です。

理由はいろいろありますが、そのひとつとして挙げられるのが、「どこからも犯行声明がだされていない」という点です。

トルコでテロが発生した場合、そのほとんどは、

1)イスラム国
2)クルド人組織(PKKとその下部組織)
3)極左組織

のいずれかの犯行ですが、クルドと極左の場合には「自分たちがやった」と犯行声明を出します。

ところがイスラム国の場合には、なぜかトルコでのテロについて「だけ」は犯行声明を出さない、という特徴があります。

その理由についてもいろいろ考えられますが、いずれにしても憶測の域を出ません。ただ、イスラム国はトルコに対して特別な戦略をもってのぞんでいるのは確かです。

もし今回のアタチュルク空港でのテロがイスラム国の仕業だとするならば、ここから理解すべき最も重要な点は、

「イスラム国テロの脅威は世界中で高まっている」

ということです。

イスラム国は昨年来、シリアとイラクでの領土を大幅に奪われ、戦闘員数も最多時の3分の1程度にまで減少しています。

つまりシリアとイラクにおけるイスラム国は、2年前の建国宣言以来、現在最も弱体化しているのです。

しかし世界に目をむけると、イスラム国の勢いはむしろ強まっていることがわかります。

昨年11月のパリ同時テロ以降、アメリカのカリフォルニアの施設襲撃ベルギーのブリュッセル同時テロ、先日のフロリダのゲイパーティー襲撃など、欧米で世界を震撼させるテロ事件を次々と起こしています。

またイスラム国はこの2年間に、世界中に拠点を築くことに成功しました。

先日彼らが、建国2周年を記念して公開したこんな図があります。
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イスラム国は世界中に支部を持っているのですが、彼らはそれらが「どの程度の領域支配を確立させているか」によって3分類しています。

まず第一は、「広い領域支配を確立させている支部」で、これに該当するのがシリアとイラク。

第二は、「ある程度の領域支配を確立させている支部」で、これに該当するのはチェチェン、イエメン、エジプト、ナイジェリア、リビア、ダゲスタン、アフガニスタン、二ジェール、フィリピン、ソマリア。

これらの第一、第二グループに分類されている地域では、イスラム国は州の設立を宣言しています。

第三は、「領域支配は確立させていないが部隊が秘密裏に活動を展開している支部」で、これに該当するのがサウジ、トルコ、アルジェリア、フランス、チュニジア、レバノン、バングラデシュです。

トルコは第三グループに分類されています。

第三グループには、しれーっと「フランス」が含まれているのも注目点です。

世界のどこにイスラム国が「ある」、もしくは「いる」かが、おわかりいただけたでしょうか?

そしてこのイスラム国、建国当初は世界のムスリムに「みんなシリアとイラクに移住(ヒジュラ)しておいで~!」と呼びかけ、移住の暁にはみんなで盛大にパスポートを燃やしたりしていたのですが、シリアとイラクが窮地に追い込まれるに伴い、戦略を変更してきました。

今の彼らの戦略は、

1)シリアとイラクには移住してこなくていい
2)自分が今いる場所で敵を攻撃せよ(テロしろ)
3)移住するなら、「近くのイスラム国」(※既出の第二グループのどこか)に移住せよ

というものです。

これまでだったらシリア行きを目指していたであろう「潜在的イスラム国戦闘員」が、シリアに行くかわりに自国でテロするようになれば、おのずとテロの件数は増えます。

それに実際、シリアに行くより、自国でテロをするほうがよっぽど簡単です。

そのほうがお金もかからないし、ようは「やる気」と「ナイフ一本」あればできるわけですから。

テロというのは低資本でも、たった一人でも、実行できてしまうのが恐ろしいのです。

ですから、イスラム国が本拠地としているシリアとイラクで弱体化しても、たとえ彼の地で滅んだとしても、テロの脅威は減らないのです。

フィリピンのイスラム国が初めて公式ビデオを公開しました。
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これまでに、フィリピンのいくつかのイスラム系武装組織がイスラム国に忠誠を誓ってきましたが、まず登場したのは「アブーダジャーナ旅団」なるグループ。

行進の様子を見てみると・・・
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服装も装備もバラバラで、足並みも揃っておらず、単なる山賊?のよう・・・。

でもイスラム国に入りたての組織は、大概こんなような感じです。

集合した様子も、なんだかワラワラとしており・・・
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みなさんあっちこっち向いて、全く落ち着きがありません。

茶色の覆面をした人が、一応アラビア語でバグダーディーに忠誠を誓っています。
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みんなで円陣を組んでバイアする、おきまりの儀式も行っています。
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どうでもいいですが、手前の二人の被り物がバーバリー風なのが気になります。。。
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むっちゃ小さい子供戦闘員もいます。
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お次は「アブーハビーブ旅団」なる組織のバイア。
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お次は「ジュンドゥッラー旅団」。
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「アブーサドル旅団」。
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一本指ポーズでタクビールもしています。
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・・・とここまで4組織のバイア映像はかなり素人映像なのですが、ここから急に映像のクオリティーがあがります。

ラッカにいるインドネシア人戦闘員アブー・ワリードなる人物が登場。
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イスラムは何世紀にもわたって辛酸をなめてきた、神のおかげで今ようやくウンマが再興されたのだから、フィリピンやマレーシア、インドネシアのムスリムも今こそ立ち上がれ!と呼びかけています。

次にフィリピン軍と戦う映像。
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イスラム国のマークをつけた戦闘員が、「アッラーフアクバル!」と言いながら銃を撃ちまくります。

次に現れたのは、ラッカにいるアブーアブダッラーなるフィリピン人戦闘員。
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うーん。。。なんか不思議な感じ。

雰囲気は穏やかなおじさんなのですが、言っていることは「不信仰者どもを殺せ!」と大層物騒です。。。

「お前たちにはナイフがあるだろう?それで奴らの胸を突き刺すのだ!!」

・・・だそうです。

さらにもう一人、ラッカにいるアブーアブドゥッラフマーンというフィリピン人戦闘員。
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「タウスキ族、マグンダナウィ族、マラナウィ族は全員不信仰者で、我々の敵だ」とか、「シブワヌ族、イルカヌ族、イルング族はムスリムで、我々の仲間だ」とかいろいろ説明してくれています。

その後、この3人がまとめて登場。
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オレンジ服の3人は、十字軍兵士たちのスパイだそうです。

マレーシア、フィリピンなどに対し「お前たちが戦っている相手はジハード戦士ではなく、神だ」と言い、「今日ここで俺たちはこいつらを斬首するが、明日はお前たちの国でお前たちを斬首してやる!」と言っています。。。

斬首の後、またフィリピンの武装勢力。
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黒い覆面の人がアラビア語で「現世ではなく来世のために、我々と一緒にジハードしよう!」と呼びかけ、これまでに死んだ仲間の写真が映し出されて終わります。

今回のビデオは、グローバル・ジハード感が非常によく出ているなと感じました。

シリアやイラクにいる外国人戦闘員が自国の仲間にジハードとヒジュラを呼びかけるのはいつものことですが、フィリピンのように中央政府の統治の及ばない領域があると、こんな感じで普通に(日常的に)武装した人たちが「俺たちもこっちでがんばるよ!」的な名乗りをあげられる、ということがよくわかります。

シリアにいるフィリピン人も、「シリアに来るのは難しいだろうから、そっちはそっちでがんばって!」とエールを送る、という構造。。。

同じアジア人として、微妙に複雑な心境がいたします。

イスラム国の飛び地が、日本にどんどん近づいてきています。。。

6月13日パリ近郊で警官夫婦が刺殺された事件についても、イスラム国は「イスラム国戦闘員がやった」とする速報声明をうちました。
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イスラム国は6月12日のフロリダのゲイクラブ襲撃についで、二日連続で欧米での攻撃を成功させたことになります。

というわけで、昨日発行されたイスラム国機関誌も、見出しはこんな感じ。
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トップ項目は、アメリカとフランスでの攻撃成功です。

アフガニスタンでは、子供たちがこれらの攻撃成功を大喜びしているようです。
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今回、この2件のテロの成功によって明らかになった重要なことが、いくつかあります。

(1) 「ラマダン月に欧米で異教徒を殺そう」という呼びかけに即応するイスラム教徒がいる、ということが明らかになった

これまでもイスラム国は「異教徒を殺そう」という呼びかけを常にしてきましたし、それに呼応したテロは多数発生してきました。

しかし「ラマダン月にやろう!」と呼びかけられ、実際にラマダン月にやってのける人が現れたというのは、驚愕です。

シリアでリモコンのスイッチを入れた数日後に、アメリカやパリで起動したようなイメージです。

(2) 「ひとり」でもこれだけの大損害を与えることができる、ということが明らかになった

フロリダもパリも、おそらく実行者にはいくらかの仲間がいたのでしょうが、2015年11月のパリ同時テロや2016年3月のブリュッセル同時テロの犯人たちのような広範囲の仲間はいなかったでしょうし、イスラム国で実戦経験を積んだメンバーがいたわけでもなさそうです。

ですが、アメリカの場合には、アメリカ市民であるムスリムが合法的に銃の訓練を受け、合法的に銃を購入し、あのような犯行に至ることが可能だ、ということが明らかになってしまいました。

またパリの場合には、銃すら必要なく、ナイフ一本でもあのような犯行を実行することが可能だ、ということが明らかになりました。

多少語弊はありますが、「思い立ったが吉日」的な犯行でも、世界的に衝撃を与えることができると証明されてしまったのです。

(3) 誰がその「ひとり」になるのか、全くわからない時代がやってきたことが明らかになった

フロリダの実行犯は警察で聴取を受けたことがあり、パリの実行犯は戦闘員勧誘の罪で服役していたこともあったようです。

しかし重要なのは、犯行当時二人とも自由の身だった、ということです。

多少過激な思想を持っている程度では、その人物を生涯牢屋に繋ぎとめるわけにはいきませんし、罪を犯した人間も刑期を終えればシャバに戻れます。

それがアメリカ社会であり、フランス社会です。

(4) 誰が、そしてどこが、その「ひとり」に狙われるのかも、全くわからない時代がやってきたことが明らかになった

同性愛はイスラムの教義上禁じられている・・・と信じているイスラム教徒は多くいます。

実際、イスラム教徒が多数を占める国の中には、同性愛者を逮捕、投獄する国が多くあります。

しかし同性愛者を無差別に殺すイスラム教徒が出没したのは、おそらく今回が初めてです。

では同性愛者だけが気をつければいいかというと、そんなことはありません。

パリ同時テロで狙われたのは、同性愛同様にイスラムで禁じられている酒を出すレストラン、音楽と踊りに興じるライブハウス、サッカーで盛り上がるスタジアムでした。

場所はかわりますが、タリバンやボコハラムは欧米式教育がイスラム教徒をダメにしていると信じ、昔から学校を襲撃対象にしてきています。CDショップなども攻撃対象の定番です。

つまり・・・どこが狙われやすいのかと考えたら、きりがありません。

また今回パリ近郊で襲われたのは、非番の警官夫婦でした。

いくら警官とはいえ、職務を離れ、自宅で家族とくつろいでいるところを「イスラム国戦闘員」にいきなり刺し殺されるだなんて、想像だにしなかったことでしょう。

実行犯は、警官、政治家、ジャーナリストなどをどんどん殺そう!と呼びかけていました。

いったいどの範囲の人々が、どこにいるときにどの程度何に気をつければいいのか、今回の事件で全くわからなくなったわけです。

今回の2件のような犯行を治安当局があらかじめ察知し、防ぐのは、非常に難しいと言えます。

今回の2件のテロの本当の恐ろしさは、こうしたテロを防ぐために、誰が誰に対しどこでどんな手を打てばいいのかさっぱりわからなくなったという、その点にあるのです。

私は今、テロのおこったアメリカにいるわけでも、フランスにいるわけでもありません。

でもその恐ろしさをはっきりと、確かに感じます。。。

6月12日に発生したアメリカ・フロリダ州にあるゲイクラブを標的とした銃乱射事件について、イスラム国が「やったのはイスラム国戦闘員だ」とする声明文を早々に出しました。
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本文部分には、「100人以上の死傷者を出した、フロリダ州オーランドにあるゲイのためのナイトクラブを標的とした攻撃は、イスラム国戦闘員によって実行された」

とあります。

注目すべきは、「イスラム国戦闘員がやった」ではなく、「やったのはイスラム国戦闘員だ」とされている点です。

そしてより注目すべきは、青文字の部分。

「アアマーク通信筋」とあります。

これは、実行犯がイスラム国戦闘員だったということを、イスラム国側があらかじめ知っていた、ということを示唆しています。

つまり、西側諸国の報道などによって実行犯がイスラム国に忠誠を誓っていたことを知ったわけではなく、「独自筋」でそのことをすでに知っていた、ということが強調されているわけです。

同じアメリカで、昨年末にカリフォルニアで発生した銃撃事件の場合には、イスラム国は発生後数日してから「イスラム国支持者が実行した」という声明を出しました

その時と比較すると、今回事件発生から時をおかずして声明が出された理由が見えてきます。

この声明からわかるのは、イスラム国は実行犯がイスラム国に忠誠を誓っていることを知っていた、もしくはもう一歩先まで、つまりイスラム国に忠誠を誓い近々フロリダで攻撃を実行する予定だと知っていたのだろう、というところまでです。

イスラム国から「ゲイパーティーを狙え」という指示があったのかとか、武器を与えられたのかとか、そういった具体的な関係がどの程度あったかは、この速報声明からではわかりません。

実行犯の父親が、息子はゲイカップルのキスシーンを見て激昂していたことがあると話しているようなので、彼にはもともと同性愛者を嫌悪する傾向があったのだろうことは容易に推測されます。

そもそもラマダン月に先立って、イスラム国報道官アドナーニーが「ラマダン月に攻撃を激化させよう!特に欧米で!」と攻撃を呼びかける音声声明を出していました。

今回の事件がこの呼びかけに応じたものなのかはわかりませんが、状況的にはそれに近いものがあるのではないかと推定されます。

実行犯のオマル・マティーンは当局のブラックリストには載っていなかったとされていますが、やっかいなのはその点です。

つまり、アメリカには当局に目をつけられていないムスリムなんて星の数ほどいるわけでそのうちのたった1人でもイスラム国の呼びかけに応じて攻撃を実行しようと決意すれば、アメリカの場合はできてしまう、ということを明らかにしてしまったのが、今回の事件だと言えます。

また個人的には、ゲイパーティーが襲撃されたと聞いた瞬間、たぶんイスラム国系だとピンと来たのですが、それはなぜならイスラム国はゲイを処刑対象にするほど敵視しているからです。

「神が同性愛行為を禁じているから」という、もっともな理由に基づいてはいるのですが。。。

ラマダンという祝福された月に、神に禁じられた同性愛行為を働く不信仰者を50人も1人で殺したというのは、イスラム国的には最大級の賞賛に価する行為です。

2015年11月のパリ同時テロで、イスラム法が禁じる酒や音楽、サッカーなどに関わる場所が標的とされたのと同様に、イスラム法が禁じる同性愛者が標的とされたことも、単に敵である不信仰者を殺すことをはるかに上回るイデオロギー的宣伝効果を生んだと言えます。

しかも今、イスラム国は本拠地であるシリア・イラクで窮地に立たされています。だからこそ、本拠地以外での攻撃が、より一層輝かしものとして世界のムスリムに訴えかけるファクターになるのです。

カリフォルニアの時とは異なり、事件発生からそう時をおかずしてイスラム国が声明を出した理由は、そこにも求められます。

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