イスラム国ハイル州が「ハイル州における市場監督調査局」と題する動画を公開しました。

CHpW2aPUsAI2lAI

市場監督調査局はイスラム国の行政当局のひとつで、ヒスバ省に所属しています。

ヒスバ省というのは宗教警察、倫理警察のようなもので、イスラム教の掟(イスラム法)で禁じられている酒やタバコを摘発したりもするのですが、市場監督調査局は特に市場に出回っている食品やレストラン等の外食産業で提供される食品の調査・監督を行っています。

イスラム国というのはそれ自体が、イスラム法を文字通り実践したらどうなるかという壮大な実験のようなものだと私は思っているのですが、ヒスバの実践というのは中でも最も興味深い側面のひとつです。

イスラム法では「善を勧め悪を禁じる」ことが義務とされており、ヒスバという語はそれを実社会において徹底させる仕事の意味で用いられてきました。

もちろんイスラム法的に善とされる行為を勧め、悪とされる行為を取り締まるのが仕事なので、その担当者(ムフタスィブ/ムフタシブ)にはイスラム法の知識が要請され、市場で重さをはかる秤に細工をしてズルをしていないかとか、貨幣に勝手に混ぜ物をして偽貨幣を流通させていないかとか、納税額をごまかしていないかなど、特に市場監督官的役割を果たしていたとされます。

しかしこうしたヒスバ認識は主に歴史研究から得られたもので、19世紀以降イスラム諸国の西欧化の一環でヒスバは実践されなくなってしまったため(イランやサウジには今も一応ヒスバがありますが・・・)、イスラム国からヒスバ関連の映像や画像が公開されるたびに、非常に興味深く見入ってしまう自分がいます。

今回の映像で紹介されていたのは例えばこんなように・・・
56

悪い肉を販売していた肉屋を営業停止にしたり、
49
腐った肉を調理して提供していたレストランを営業停止にしたりしていました。

でも調査のやり方としてはこんなふうに・・・
55
主に匂いを嗅いでこれは大丈夫とか腐ってるとか判断しているようで、イスラム法はあんまり関係なさそうでした・・・。

また食品店では、
25
製造年月日と消費期限をチェックして回っており、消費期限が過ぎている食品や容器が破損しているものなどは不正品として回収していました。

回収された不正なる食品は一箇所に集められ、焼却処分されていました。

あとは動物の屠殺場で、イスラム法的に正しいやりかたで屠殺や食肉処理が行われているかなどもチェックしていました。

いろいろ興味深かったですね・・・。

これが町中できちんと実践されているなら、私の住んでいるカイロよりずっといいな・・・というのが正直な感想です。

カイロでは店で売られている食品の蓋やパックがなぜか開いていたり、箱が破損しているのはザラで、そこから中身が飛び出していようとお構いなく売られているのが実情です。消費期限等はもちろん、自分でチェックするしかありません。

またカイロだけではなく、エジプト各地ではしょっちゅう食中毒・水中毒事件が発生し、多数の被害者を出しています。腐った肉を食堂で食べた大学生が数百人病院に搬送とか、水道水を飲んだ住民数百人が病院に搬送とか、頻繁にある事態です。

こういったチェックをすべきがヒスバなのかどうかはさておくとして、こういうところに行政サービスの良し悪しが顕著に出るな、とは思います。

イスラム国が単なる武装組織ではなく、国家としての運営を行っていることはある程度知られているとは思いますが、彼らの提供している行政サービスは一部においてはかなりいい線までいっており、それは中東諸国のそれを凌駕するほどであるというのはある意味、驚愕すべき側面です。