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 最も重要な三つ目の問題点はジョインベスト証券の顧客対応と、そしてこれは推測である部分が多いため、予め断っておくが、顧客の損失付け替え疑念の問題である。

 ジョインベスト証券は先に述べたように、野村の100%子会社である。野村證券のネット証券という位置づけであり、当然繋がりがある。例えば野村證券が引き受けた新規公開株式、IPOが、ジョインベスト証券に回される事もある。
 野村證券と言えば国内最大手の証券会社であり、最近もリーマンの一部を買収するなど、積極的な事業拡大を続けている。手数料は主要証券会社の中でも最も高額であり、顧客層も数億円以上の富裕層の割合が多い。ジョインベスト証券は、主に手数料の面において野村グループで取引することを敬遠する小口投資家を取り込むため、という側面もある。

 基本的に金融機関というのは少額の顧客は歓迎せず、相手にしない。収益性は低く、事務処理も煩雑になる。また小口の顧客ほどクレームも多い。コストパフォーマンスが悪いのである。銀行は何億円以下の顧客をゴミと称しているように、野村證券においても2億円以下の顧客をゴキブリを呼んでいるという話がある。うちでさえ、ゴキブリなどとは言わないが、無意味な客、むしろ邪魔な客という認識がある。特に上司に存在し、証券業界の劣悪な環境の名残が感じられる。詳しくは元野村證券社員の書いたというノムラ残酷物語にて。

 前置きが長くなったが、今回の問題において、ジョインベスト証券の対応を見てみる。実際損失を被った顧客の話によれば、遅延による補填は当然しない。手数料もしっかり取り、さらに信用取引の場合は金利を遅延した分二日分取る、というものである。しかも、今回のトラブルについての問い合わせ対応は金曜日の正午までに限られ、それ以降は受け付けないという顧客サービスとしては考えられない対応である。
 
 確かに、一般的に考えられる遅延では補填はされないであろう。だが今回は36時間の遅延、およそ二日後に注文が約定するという前代未聞の事態である。さらに売買手数料はまだしも、遅延した分の金利まで取るというのは、顧客を舐めているとしか言いようが無い。
 しかも、ジョインベスト側は私たちに遅延の責任はないと言う。理由は注文委託会社が遅延したからであり、私たちが遅延したからではないということだ。実はジョインベスト証券のシステムは外注している。野村證券本体のシステムとは別なのである。
 野村のシステムがおかしくなったわけではないから、責任がないと言うのは間違っているとは言えないが、顧客に対しては不誠実であり、外注だからと言って許されるべきではない。

 そして、ここが重要なのだが、このシステムは他の中小証券会社と共有している。それにも関わらず、他の証券会社でこのようなトラブルが起こったという話は全く無いのである。つまり、36時間にも及ぶ遅延を引き起こしたシステムトラブル自体、元々無かったのではないかという推測も容易にできるのだ。

 この間何をしていたのか。最も考えられるべきことは、この野村證券の自己売買部門での株式を、または野村證券の富裕層の上客やお得意様の株式を、このジョインベスト証券の小口投資家に悪意を持って付け替えたのではないか、という疑惑があるのだ。
 歴史的な上昇を記録した火曜日は、ストップ高に張り付いた銘柄が続出。それまで急落し続けてきた所からの劇的な反発に対し、ここが底だ、買いだ、と思った人、もしくは買い戻しの人が大勢いた。おそらく反発が続くことを予想した人も多いのだろう。(余談だが、比例配分目当てでストップ高で買いを入れる投資法は個人的にお勧めしない。)
 また、買いを入れた人々は当然小口投資家だけでなく、機関投資家など大口も沢山いたと思われる。時価総額上位20社のうち6割の12社がストップ高というのは歴史的記録である。火曜日、大引け後の比例配分が遅れたのも納得できる。

 わかりやすく例を挙げよう。火曜日、ジョインベスト証券に口座を持っているある小口投資家Aさんはコマツ株を100株、14万円分ストップ高で買い注文した。一方、機関投資家である野村證券の自己売買部門はコマツ株を1万株、1400万円分ストップ高で買い注文した。そのままコマツは引け後、比例配分となった。
 各証券会社に配分された後は先に述べたように、顧客にどう配分するかはそれぞれ違う。一般的には数量に応じてだったり、注文時間の早い順だったりする。最大手の野村證券は、比例配分でかなりの株を入手したであろう。この時点でジョインベスト証券のAさんの口座には、比例配分はされなかったことを意味する失効の表示が出る。株を買えなかったのでコマツ株の注文で拘束されていた資金余力も回復した。
 水曜日、株価は軟調に始まるものの、引けにかけて上昇、小幅高。コマツ株は下げるものの、小幅安で済む。
 日本時間で水曜日の夜。NY市場は大幅安で始まり、歴代2位の下落率を記録。当然、次の日の日本の株式市場は大幅安であることは容易に想像できる。そしてNY市場も終盤という日本時間で午前3時という真夜中、Aさんのジョインベスト証券口座のコマツ100株の買い注文は失効から約定に変わる。野村證券が持っていた比例配分のコマツ株を、ジョインベスト証券で口座を持つAさんに押し付けたのである。コマツ株は木曜日、大幅安で寄り付き、ストップ安まで売られた。
 これはたまたま下がったからであって、もし水曜日、木曜日と株価が上昇していれば比例配分が貰えていてラッキーだったのではないか、という見方もあるが、実際それは考えにくい。もしコマツ株が上昇していれば、Aさんに株は渡らず(何事も無く買い注文は失効のまま)、野村證券が持っていた可能性が高い。野村證券としては株が下落すれば顧客に押し付ければ良いし、上昇すれば自分で持っていれば良い。リスクをほとんど持たなくて済む。
 これは野村證券の自己売買部門の話をしたが、もしかしたら野村證券で売買する大口投資家である富裕層、上客、お得意様の株を、同じようにジョインベスト証券に押し付けた可能性も考えられるのだ。(続く)

ジョインベスト証券の問題(下)part2