081018ジョインベスト証券の問題(上)
ジョインベスト証券の問題(中)
ジョインベスト証券の問題(下)part1



 これまで述べてきたことは、あくまで疑惑であるものの、このような悪事が実際行われた可能性は高いであろう。そんなバカな、こんな突拍子も無いこと、あり得るはずが無いと私も思いたいが、実際ひと昔、インターネットでの取引も無かったような時代、このような損失の付け替え行為はザラにあったという。顧客に売買した覚えの無い株(しかも大きな損失を抱えたもの)を口座に入れ、お前100万円の株を買ったという記録があるが、代金が入っていない。今すぐ100万円払え、などといったものもあったようである。詐欺以外の何物でもない。

 この事例とは違うが、似ている悪質なものとして、仕切り玉と呼ばれるものがある。ちなみに仕切り(仕切り売買)とは、証券会社が投資家からの注文を取引所を通さず店頭で売買することであり、証券会社が顧客に代わり時価に見合った適当な価格で在庫の有価証券を売買することである。
 そして仕切り玉、簡単に説明すると、顧客からの注文が無いのに株を勝手に注文を出して買い、下がってしまった株のことであり、この仕切り玉を顧客に嵌めるわけである。仕切りをするメリットは、もし株が上がった場合、利益がのっているわけであるから、勝手に売買したお詫びとして使うことができ、また新規開拓のツールに使えるというものである。どちらにしても仕切りをすることによって手数料の計算ができるのだ。ちなみに下がった場合でもあの手この手で無理矢理顧客に損失を負わせる。
 こんなことは当然違法行為であり、上場株式の仕切り売買自体禁止されている。裁判沙汰になれば当然負ける。だが、これは野村證券で過去に実際日常的にあったことだ。詳しくはノムラ残酷物語、仕切り玉の記事にて

 当然このようなことは許されない。一度失効した注文を復活して約定させ、正当化する。前代未聞である。こんなことが許されるのは世界を見ても日本だけである。
 現在でもこのような行為が日常的であるとは考えにくい(そう考えたくは無い)。おそらく、火曜日の比例配分の遅延、システムのトラブルは偶然であり、たまたまこれを利用して、悪意を持って配分し、顧客にとっては最もわからない方法で仕切りと同様な一連の行為を行ったのではないか。
 
  もし、こんなことがあれば、顧客にとって恐ろしいことである。例えば、一度でも過去にストップ高で比例配分狙いの注文を出したことさえあれば、あの日の比例配分、実は約定してました。株価は注文した日から半分になっていますけど、当然あの日の株価相当の代金を支払ってくださいね。などと言われてしまうかもしれない。もう何でもありの世界である。
 
 これが大々的に問題とならない理由は二つある。一つはこれで被害を受けた投資家は小口であることであり、件数、金額共に大きくないからではないかと思われる。ジョインベスト証券の口座数は約28万ある。数字上は多いようではあるが、実際稼動している口座、売買が行われている口座はそれ程多くないであろう。
 だが、比例配分は各証券会社に割り当てられる。より比例配分の確率を上げるために、ジョインベストに口座を持っているものの、普段は他の証券会社で売買しているという人でも、ジョインベスト証券で比例配分狙いの買い注文を入れていたことも考えられなくはない。IPO抽選狙いなどにおいては当然の如く複数の証券会社に口座を持ち、申込みをする人もいるぐらいであるから、普段よりも買いが入っていた可能性もある。
 また、小口投資家に押し付けるメリットは大口を助ける側面と同時に、小口であれば裁判沙汰にならない、という公算がある。
 これも昔の仕切り玉に通じる点があり、仕切り玉の嵌め込みも、あまり文句を言わない顧客、損を押し付けられても上手く丸めこめる顧客、脅しで大人しくさせられる顧客がターゲットであったという。

 また、二つ目は報道である。この問題はトップニュースで大きく報道されてもおかしくない。トップでなくてもどこかで触れられてもおかしくない。だが、どの新聞、テレビ局でも一切取り扱っていない理由は言うまでもなく、お金であり、利権である。野村證券はどれだけのお金を広告料として支払っているか。お得意様のトヨタ自動車の都合の悪いことを報道しないのと同じように、野村證券を悪く言う報道は慎まれている。
 日興コーディアル証券の時を思い出すが、ライブドアとは比較にならないほどの巨額な違法行為を行ったにも関わらず、扱いは軽かった。マスコミのタブーを今更言っても仕方がないのだが。

 おそらく、今回の問題で、ジョインベスト証券の責任及び野村證券の行為を明確に証明するのは難しいのかもしれない。個別にジョインベスト証券の不誠実な対応を訴えることは可能であるとしても、犯罪行為として処罰を求めることはできないのではないだろうか。

 もしこのことが明らかになれば、ジョインベスト証券は軽くても業務改善命令が下され、下手すれば業務停止になるだろう。ただ、この事態でさえ、野村グループとして大した痛手ではない。元々、野村本体は小口投資家を取り込むつもりでこの子会社を作ったものの、思ったほど口座数は伸びず、84億円の赤字となり、事業として必ずしも成功しているとは言えない。仮にジョインベスト証券がこの問題で口座数が減少し、収益が減少すれば、ネット証券事業から撤退することも考えられる。むしろ赤字事業を一掃する良い機会と考えているかもしれない。

 株式投資はこの10年間で本当に身近なものとなった。手数料が自由化され、誰でも株式投資ができるようになった。同時に、ライブドア、村上ファンド等の問題から、インサイダー取引の規制強化、金融商品取引法の施行など、ルールの厳格化も行われてきた。証券業界、金融業界はどんなことよりもまず第一に信頼が重要なのである。
 今回のことで、証券会社への信頼は多かれ少なかれ揺らぐことになるだろう。こんなことが続けば、証券会社の信用失墜に繋がり、ネット証券の口座解約どころか、証券会社を通じて個人投資家は誰も株を買わなくなる。ただでさえ市況は不安定であり、経済も先行き不透明であるというのに。対応を誤れば自分で自分の首を絞めることになることを、果たして野村は想定しているのであろうか。

 ジョインベスト証券ではHP上に今回のことを一切載せておらず、発表もしていない。あくまで何事も無かったかのようにもみ消すつもりなのである。仕切り玉の例を見るように、インターネットなど無く、情報がなかなか得られなかった時代、証券会社の顧客に対する扱いは酷いものであった。顧客の資産をいかに吸い取っていくか、どうやって殺していくかを考えているのである。もしかしたら野村證券グループの中に未だそのような考えを持つ人間がいるのかもしれないが、今はもう許される時代ではない。

 私たちの防衛できる策としては、少しでも信頼できないと思った証券会社とは付き合いを止める事である。今回の問題はたとえ表面化されないとしても、重大な出来事として記録されることであろう。