4月13日。

 高井坪を訪れる約3時間前、私は岐阜市日野の長良川畔に車を停めていた。目的は、「古津苑」の廃宗教施設・俗称「ホワイトスラム」を対岸から望むため。そしてここから千鳥橋を通って対岸に至り、古津苑入り口にある「巨大キノコ」を一目見るためである。



 小・中学生のころ、私の家庭では海津市(旧平田町)にあるお千代保稲荷に毎月出かける習慣があった。その時必ず通っていたのが古津苑のキノコがある県道94号(岐阜美濃線)だった。
 昨年、ネットで廃墟画像を手当たり次第に見ていた時に古津苑の存在を知った。あのキノコを思い出した。「そういえばそんなのもあったな、あまり気にしてなかったけど」程度の記憶だが。「ホワイトスラム」もそういえばあったかな、程度。あまり覚えていないし、あそこにあのようなものがあることを疑問に感じたこともなかった。
 例によってググってみたが大した情報は出てこない。かつては動物園や映画館(!)もあった行楽地だったとか、後にある宗教団体の管理となったがそれも放棄され、廃墟となって現在に至るとかその程度である。

 でもいつか訪れてこの目で確かめたい、そう思っていた。



 そして4月13日。今私は対岸からものすごく目立つ存在の白い建造物・ホワイトスラムを眺めている。まるで現役稼動しているかのような存在感がある。それが異様さを際立たせているとも、周囲の風景にすっかり溶け込んでいるとも言える。その斜め下にはバリバリの現役ホテルがある。

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 対岸に渡り、2・3分も走るといよいよ毒キノコが見えてくる。古津苑入り口部分には駐車スペースと呼べる場所はほとんどなく、苦労して道路脇に車を停める。その時に焦ってサイドブレーキかけたまま急発進するというミスをしでかした。何やってんだ俺。県道の交通量は予想以上に激しく、自分の車は明らかに通行の邪魔になっていた。これは長居はできない。
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 キノコ周辺は、おお昔見た光景そのままだ、と言いたいが相当荒廃している。長良川側にある店舗もすっかり廃屋となっている。以前、といっても1970年代後半から80年代前半の話だが、以前の記憶では寂れてはいたがそれなりに手入れがしてあり一応行楽地っぽい雰囲気があったように思う。60〜70年代を感じさせる懐かしい雰囲気が。まあ相当おぼろげで怪しい記憶だが。倒れている看板、破壊されているレトロな電灯もある時期までは本来の機能を果たしていたに違いない。ここがいつまで現役だったかは全く不明だが、廃墟となってそれなりの年月が経っているのだろう。
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 元々内部深くまでは侵入する気はなかったので、入り口から数十メートルあたりまで行って引き返す。ここから先は色々な意味で行くのに勇気要ります。しかしいつかはホワイトスラムまで踏破したい。
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 キノコはよく見ると「ぎふバス停」の文字が見える。そうかこれってバス停だったのか!今はバス停は道路の反対側にあり、一時間一本程度はバスが来ている。ただ付近に民家は皆無なので、このバス停で乗降客があるかは謎だが。
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こうしてる間も車は激しく往来していたので、このあたりで切り上げることにした。



 古津苑は「古津楽苑」とも表記されていたようだ。かつてはそれなりの賑わいがあったのだろう。看板から読み取れる「しゃぶしゃぶ鍋」「小宴会場」「バンガロー」といった施設には人々が集い、「三段の池」「光竜の滝」「大岩」といった景勝地は憩いの場となっただろう。文字通り楽苑だったに違いない。「40年くらい前に祖父が行ったと言っていた」とのネット上の書き込みも見たことがある(真偽は定かでないが)。それも今ゆっくりと自然に返ろうとしている。
 ただ一つ、今でも異彩を放つホワイトスラムを除いて。