高橋清隆の文書館

 当ブログでは、マスメディアが伝えない情報や事象分析を発信しています。
新聞やテレビがつくる「社会標準」から解放されれば、人類は本来の豊かな人生を送れると確信します。

【書評】『見えない不祥事——北海道の警察は、ひき逃げしてもクビにならない——』小笠原淳(リーダーズノート)

 畏友のジャーナリスト、小笠原氏が著した初の単行本である。札幌市内に住み、月刊誌『北方(ほっぽう)ジャーナル』を中心に取材記事を書き続ける彼が、北海道警察による身内の不祥事隠蔽(いんぺい)に切り込んだ傑作である。


 小笠原氏は情報公開制度を使い、公にされない警察の不祥事を明らかにしてきた。極寒の地で地道な取材活動を続けてきた1つの成果が同書である。行政文書の行間を読み、警察関係者に食い下がる姿には、同業者として頭の下がる思いだ。

 面白いのは、北海道新聞をはじめとしたクラブ記者との微妙な位置関係である。彼らは日常的に、フリー・雑誌記者を排除している。そのまなざしは軽蔑的である一方、われわれの側も彼らを敵視しているのが普通だ。

 ところが、前例のない暴露については、様相が異なる。ネタの取り合いが起きる一方で、援護射撃となる続報を一般紙が掲載することがあるのだ。口も利かない間柄の記者同士が同じ行政文書を請求し、不思議な「連帯」を見せている。

 警察特権の問題は、中央政界を揺るがせている「モリカケ問題」同様、今の日本を象徴しているのではあるまいか。全体の奉仕者である公務員が、一部の奉仕者になっている証左だから。

 米ワシントンDCにあるホロコースト記念博物館に「ファシズムの初期兆候」として14項目が掲げられている。その中に、「身びいきや汚職のまん延」というのがある。一見小さな不祥事を問題にすることは、軍事国家化を阻止する大きな仕事かもしれない。

 堅い主題を追った著作だが、小笠原氏の私生活がちりばめられている。別の事件取材との兼ね合いや、奥さんの顔色をうかがいながらの飲酒、警察情報センター職員との温かいやり取りなど、味わい深く面白い。一冊のノンフィクション小説ともいえる。

 日本の警察権力の実態を知り、国家について考えるには、格好のドキュメンタリーである。権力の闇に興味のある方にお薦めする。

見えない不祥事 北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない [ 小笠原淳 ]
見えない不祥事 北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない [ 小笠原淳 ]

黒川氏が支持者に感謝、昭恵夫人とも遭遇 選挙戦終了

 山口4区で立候補している黒川敦彦氏(39、無所属)は21日夜、自身の選挙事務所前で最後の街頭演説をし、支持者らに「本当にありがとう」と謝意を伝えた。一水会元最高顧問の鈴木邦男氏や浅野健一同志社大学教授(地位係争中)も応援に駆け付け、首相夫人の安倍昭恵氏の乗った街宣車が前を通るハプニングもあった。

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黒川氏の勇気を評価する鈴木氏(右、2017.10.21筆者撮影)

 午後7時40分すぎ、事務所前にはボランティアを務めたスタッフや支持者約60人が集まった。ここでの演説は初めて。

 鈴木氏は昼すぎ、東京から急きょ駆け付けた。マイクを取ると開口一番、「安倍さんの本拠に殴り込んで選挙に出る、そんな無謀なことができる黒川さんは偉い」と持ち上げた。「僕にもそれだけの勇気はない。それだけのことをやれる男は日本にもたぶんいないだろう。その勇気に感動して来た」と打ち明けた。

 50年にわたり右翼運動をしてきた立場から、「同じ仲間だけ集まっていると楽しいが、それ以外を許さなくなる。疑問を持った人を排除する恐さがある。その点、黒川さんは物事を客観的に見ることができる。それは安倍さんに対しても薬になっている」と役割の重要性を強調した。

 その上で、「黒川さんに逆転勝利を」と呼び掛けた。

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元気で明るく戦い抜いた黒川氏をたたえる浅野氏(右、2017.10.21筆者撮影)

 浅野氏は、黒川氏が3月以来加計疑惑に関する重要文書を旧民進党加計疑惑調査チームやマスコミに提供してきた功績を紹介し、「日本のジャーナリズムを活気付けた」とたたえた。

 安倍氏について「絶対に総理をやってはいけない男が2回も総理をやっている。これを止めたい人は日本中、無数にいる。その意味で黒川さんは、日本に民主主義と人権を確立する運動の中心にいる。絶対に勝たせなければ」と訴えた。

 浅野氏が「昭恵さんを国会で証言させる。男たちの悪巧みを暴く闘いを続けていっていただきたい……」と話していると、「安倍晋三をよろしくお願いします」の拡声音が大きくなる。昭恵夫人の声だ。安倍候補の街宣車が事務所前を足早に過ぎようとする。車に大きなコールが投げ付けられた。

 「税金泥棒、金返せ」「税金泥棒、金返せ」

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昭恵氏の車に向かって「税金泥棒」を唱和する(2017.10.21筆者撮影)

 マイクを渡された黒川氏は、「いつも逃げていく昭恵さんに、事務所前を通っていただいて、逆にうれしかった。最後に『安倍晋三をよろしく』の連呼が聞けて」と応じた。

 自身を「総理のお膝元の山口4区で、こんなに安倍晋三さんを正当に批判した人間はいないと思う」と語り、初めて矜持(きょうじ)を見せた。

 地元有権者の反応について、「もっとこっそり、目を伏せてくると思ったら、違った。今日の最終日は車の4台に1台くらいが手を振ってくれた。多くの方が人目をはばからずに。『私も絶対おかしいと思う』『自民党なので表立ってはできないが、昨日1人で20人集めた。今日は30人集める』と言ってくれた人もいた」と報告した。

 得票については「全く分からない」と分析。「地元、下関のボランティアの方や支持者の方が背中を押してくれたおかげで、かなりまともな選挙を戦うことができた」と感謝の意を伝えた。

 その上で、「今までなら、まともな選挙を戦って2万票。普通にやって安倍さんが10万票のところ、8万票くらいに落とせるくらい。それを黒川陣営がいくら伸び、安倍陣営を落とせるか、楽しみ」と笑みを浮かべた。「勝つ可能性はある」と言い添えて。

 黒川氏は10月6日に下関に来たとき、孤立無援で事務所も決まっていなかった状態だったことを振り返り、「下関で皆さんが『頑張れ』と声を掛けてくれ、ここまで来られた」と目を潤ませた。そうして「私は安倍さんのように逃げ回ったりしない」と語気を強めた。

 気が付くと、明かりの付いた近所のマンションや住宅の窓から拍手を送る人の姿があった。黒川氏は四方に頭を下げ、「本当にありがとう、本当にありがとう」と繰り返した。

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謝意を述べ、信念の力を強調する黒川氏(2017.10.21筆者撮影)

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人だかりのできた事務所前(2017.10.21筆者撮影)

「悪いのは安倍総理」、黒川氏が庶民のための政治訴え

 山口4区で立候補している黒川敦彦氏(39、無所属)は選挙戦最終日の正午から下関市の観光地、唐戸町(からとちょう)で演説し、アベノミクスが経済を破壊していることを指摘し、庶民のための政治を訴えた。

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声を掛けながらボードウォークを行く黒川氏(2017.10.21筆者撮影)

 下関港の東港地区にある海鮮ショッピングモール「カモンワーフ」前のボードウォークに立った黒川氏は曇り空の下、散策する市民に経済問題を語った。

 「安倍総理はアベノミクスがうまくいっている、景気はよくなっていると言うが、実際は違う。アベノミクスの結果、実質賃金つまり皆さんの給与が5%減っている。一方で、安倍総理のお友達や超お金持ちばかりに利益が集まる仕組みをつくった」と批判した。

 加計(かけ)学園問題を告発してきた黒川氏は、「加計孝太郎氏は建設費の水増しで補助金50億円を詐取しようとした。これに安倍総理が関わっている可能性が高い。総理の友達なら、犯罪をもみ消ししてもらえる現実が起きている。皆さんの税金が知らない所で、盗まれているんです」と重ねた。

 さらに消費税について、「消費税ゼロで景気回復をと言うと、できるのかと聞かれる。しかし、消費税は28年前までなかった。1989年の税収は今とほぼ同じ55兆円。減ったのは大企業の法人税と、超富裕層の所得税。つまり、お金のある人への税金を減らし、ない人の税金を上げている」と指摘。

 「そんなの不公平だと思いませんか。何でそうなっているのか。皆さんが選挙に行って、はっきり言えばいい。『ゼロにしろ』と。そうすればゼロになるんです」と提唱した。

 財源について「アベノミクスで超大金持ちや大企業は300兆円以上もうかっている。そこからちょっと取れば、皆さんの暮らしをいじめる消費税引き上げなど、必要ない」と述べ、超富裕層の金融資産や企業の内部留保への課税、金融所得の分離課税を廃止して総合課税に戻すことなどを主張した。

 その上で、「皆さんの心のどこかで、世の中は不公平で、お金を持っている人ばかりがさらにもうけている。なんで私たちは苦しいのか、と思っていませんか。厚労省の国民生活基礎調査にも表れているように、実際そうなんです」と向けた。

 生活苦の原因について、「皆さんが怠けて働かないからでしょうか。月曜から金曜土曜まで一生懸命働いて、休日をこの港でささやかに楽しんで暮らす皆さんが悪いのか。そうじゃない。じゃあ、誰が悪い。安倍総理ではないか」と声を張り上げると、小さな拍手があちらこちらから起きた。

 安倍首相はこの選挙期間中、1度も選挙区に入っていない。「代役を務めます」と宣言した昭恵夫人は黒川氏の提案した合同演説会を拒否し、全ての個人演説会へのマスコミ取材も断っている。そもそも、3カ月も国会開催に応じず、冒頭解散したのは、森加計問題から逃れるためだ。

 最後に黒川氏は「安倍総理が庶民のために仕事をしてくれたら、自分の選挙区である下関に戻ってきて皆さんの声を聞いてしっかり仕事をしたら、絶対に皆さんの暮らしが苦しいなんてことはないはず。安倍総理は下関の暮らしを見ているのか、庶民の暮らしを見ているのか」と問い掛けた。

 「私たちの気持ちを分かっているわけがない。そんな人たちが政治をしているから、暮らしがよくならないんです」と断言。「でも、期待しても無駄だとあきらめないでください。選挙に行けば変わるんです」と本心に基づく投票を呼び掛けた。

黒川氏が奮闘、「誰も安倍さんに期待しとらん」の声も=山口4区

 逃げまくる安倍晋三首相を直接倒そうと山口4区から出馬した黒川敦彦氏(39、無所属)が奮闘している。20日も下関市内の住宅地を丹念に回り、「泥棒政治からの脱却」を訴えた。「誰も安倍さんに期待しとらん」と握手を求める人の姿もあった。

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世間のしがらみから自由な小学生に囲まれる黒川氏。「クロちゃん」と呼ばれていた(2017.10.20筆者撮影)

 山口4区の大票田で、現自民党総裁の牙城である下関市。そこに「今治加計(かけ)獣医学部問題を考える会」で加計疑惑を追及してきた黒川氏が乗り込んだ。公示直後は、街中で演説しても近寄る人はまれだった。住民が本音を表明できない空気が支配しているようだ。

 しかし、毎朝の辻立ちと選挙区内を縦横に動いての訴えに、住民の反応に変化が見られるようになった。スピーカーの声を聞き、ベランダのカーテンを開ける人や戸口からのぞき込む人、庭先でじっと聞いている人が行く先々にいる。「黒川氏急迫」の最新情報も出た。

 この日も市内の住宅地を回り、出て来た住民にチラシを渡しながら「安倍総理に投票しても、何もいいことはありませんよ」と説いた。午後3時すぎ、市営長府前八幡団地の中庭に車を止めてマイクを取ると、各棟のベランダに人影が見えた。

 「税金泥棒金返せのポスターでおなじみの黒川敦彦です。消費税ゼロで景気回復を訴えています」

 ピンクのたすきを巻いた若い挑戦者を見ようと、建物から出て来る人、人、人…。黒川候補はかまってほしい小学生に囲まれた。

 「財源はあります。アベノミクスで大企業は300兆円の内部留保をつくり、一部の超大金持ちの資産は増えている。もうかっている人からちょっとだけ取れば、消費税を上げる必要はない」

 一方、「アベノミクスで、皆さんの給料は上がっていますか。下がっているのに、景気回復があり得ますか。厚生労働省の統計では56%の人が生活が苦しいと言い、母子家庭では82%に上ります。誰のせいか。黙って働いている皆さんが悪いのか、そうじゃない。安倍総理のやっている今の政治が間違ってるんです」

 増えてきた聴衆に黒川氏は言い放つ。

 「庶民の暮らしがよくなるように税金の使い方、取り方を変えましょう。それが政治の仕事です。皆さんからの税金を上げ、年金を下げ、お友達の所にばかり回す安倍政治を終わらせましょう」

 拍手が起きた。紛れもない、山口4区の住民からの拍手である。

 各棟の出入り口に立つ人々に向かって、黒川氏は走り出す。握手をして回った。離れた棟の1階ベランダから手を振る年配の女性は、黒川氏が駆け寄ると一気にまくし立てた。

 「プーチンなんか招待してお金使って、どうするの。(結末は)最初から分かってたわ」

 昨年12月の長門市での不毛な日露首脳会談への不満をぶつけ、「頑張れよう」と励ました。

 女性は82歳。周囲の安倍評について「誰も期待しとらん。漁協や会社を押さえ、安倍さんが出たらほかに人が出られないようにしている。組織で」とうっ積した思いを明かした。

 〈黒川氏は信用できるか〉と筆者が問うと、「うん。人物見たから」と破顔した。下関は革命前夜かもしれない。

立憲民主は「最後の弾」か 菅原文太の予言

 江崎孝(えさき・たかし)参院議員は19日夜、国会議員会館前で開かれた市民集会で、立憲民主党に俳優の故・菅原文太さんの未亡人、文子さんから花が届いたことを明かし、名ぜりふ「まだ一発残っとる」弾が同党ではないかとの思いを吐露した。

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雨の中、集まった約1200人の市民に立憲主義の尊さを説く江崎氏(2017.10.19筆者撮影)

 江崎氏は、憲法改正に道を開く同96条改正に反対する立憲フォーラム事務局長で、立憲民主党の設立にも関わる。この日、「市民と野党の共闘で、総選挙で改憲推進勢力に審判を」と題された集会(主催・全国市民アクションなど)に山添拓参院議員(共産)とともに参加した。

 マイクを取った江崎氏は、東京・港区新橋にある立憲民主党の選対本部に「いのちの党・菅原文子」と書かれた花が贈られたことを報告。文太さんが亡くなる直前の14年11月1日、沖縄知事選に立候補している翁長雄志(おなが・たけし)現沖縄知事の「1万人集会」に駆け付けたときの演説を回想した。

 文太さんはそこで、対立候補の仲井眞弘多(なかいま・ひろかず)氏(当時自民推薦・現)に向け「仲井眞さん、弾はまだ一発残っとるがよ」とけん制した。自身が出演した映画『仁義なき戦い』の最後で、「山守さん、弾はまだ残っとるがよ。一発残っとるがよ」との名ぜりふを吐いている。

 江崎氏はこのエピソードを紹介し、文太さんが国民を飢えさせないことと戦争をしないことを政治の役割だと訴えていたことを強調。「贈られた花はまるで、天国から『ほら見ろ、弾は残っとったろうが』と言っているように見えた」と語り、文太さんが予言した「最後の弾」が立憲民主党ではないかとの思いを吐露した。

 その上で、「立憲民主党は国民一人ひとりの心の中にある勇気、希望と知恵、魂が最後の最後に推し上げて頂いた新しい党だと思う」と述べ、改憲勢力の暴挙によって一時そがれた野党共闘の発展に期待をかけた。


黒川候補らが安倍首相を刑事告発 山口地検

 衆院選に山口4区から無所属で立候補している黒川敦彦氏(39)らが16日、山口地方検察庁に安倍晋三首相(63)を詐欺幇助(ほうじょ)罪で刑事告発した。首相が刑事告発されるのは前代未聞。しかも、選挙中、同じ選挙区の対立候補から提出された。

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告発状を手に山口地検に入る木村氏(左)と黒川氏(2017.10.16筆者撮影)

 黒川氏は愛媛県今治市で「今治加計(かけ)獣医学部問題を考える会」を3月に結成し、国家戦略特区による同市での獣医学部設置に関する行政文書1万4000枚を情報公開請求で入手。野党議員やマスコミに提供してきた。

 告発状は安倍首相を被告発人とし、告発人に黒川氏と「森友学園問題を考える会」の木村真・豊中市議が名を連ねる。両氏は9月26日、森友・加計の両疑惑の幕引きを阻止するため、モリカケ共同追及プロジェクトを発足させている。

 両氏は「森友・加計告発プロジェクト」の田中正道共同代表とともに、山口地検を訪れ、告発状を提出した。形式に問題はなく、受け付けられた。受理された場合には、後日連絡がある。

 告発状によれば、安倍首相は加計孝太郎理事長の犯罪行為を知りながら、幇助したとしている。主要な犯罪の1つは、大学施設の建設費水増しによる今治市への補助金詐欺である。

 学園側が同市に提出した開設計画は建設費を坪当たり約150万円としているが、建築確認申請では坪88万円となっている。内部告発によって入手した図面を見た専門家の意見を勘案すると、約倍の金額で、同市が負担する補助金96億円の半額、約50億円が略取されたことになる。

 この時機に告発した理由について黒川氏は、「今回の選挙の争点は、本当は森友・加計学園問題のはず。特に山口4区の場合は。しかし、安倍総理は全く説明責任を果たしていない」と説明する。

 木村氏も「この問題の追及を避けて国会を閉じた安倍総理は、『選挙が最大の論戦の場』と主張してきた。ところが選挙期間中に全く語らず、党首討論では『国会を開いたらそのとき』などと言っている。アホかと言いたい」と重ねた。

 黒川氏は公示日の10日、安倍昭恵夫人に公開討論の場を設けることを直接申し出た。この提案は13日、事務所を通じ正式に断られている。このことが、選挙期間中に説明がなされないことを黒川氏に確信させた。

 今後について黒川氏は「選挙の結果にかかわらず、森・加計の両問題はちゃんと真相が究明されるまで追及を続けていく」と話す。告発の賛同人が現在200人を超え、年末から春をめどに1万人まで増やす予定だという。

ニュース研究 安倍陣営取材拒否報道の真意

 山口4区から立候補している安倍晋三首相(63、自民)の事務所(山口県下関市)が昭恵夫人の安全確保を理由に地元で開かれる個人演説会の取材を拒否したとの報道が12日夜から各紙で流されている。この報道の目的は言うまでもなく、同区から立候補している黒川敦彦氏(39、無所属)を悪者にして公開討論の場をつくらせないためである。

読売記事

 この報道は12日、安倍事務所が個人演説会の取材を拒否する方針を下関市政記者クラブに伝えたとする内容。読売新聞は見出しに「『昭恵夫人に危害の恐れ』安倍首相の事務所」を掲げ、産経新聞は拒否の理由として「山口4区では、無所属新人の候補が『一人でも多く山口4区に来て、安倍あきえを取り囲みましょう』などと、ツイッターに書き込んでいる」を挙げている。

 「昭恵夫人の安全を確保するため」が口実であるのは明白だ。黒川氏は安倍首相に加計(かけ)学園の獣医学部設置への関与を直接ただそうと、同区での立候補を決めた。これに対し、安倍首相は選挙期間中、1度も選挙区内に入らない意向を示している。

 黒川氏は10日の出陣式に代理出席した昭恵夫人に、安倍氏本人との公開討論を直接求めた。黒川氏は「最悪、昭恵氏でも構わない」と譲歩も見せているが、安倍陣営はいずれも嫌なのだろう。

 「取り囲みましょう」が言葉の遊びなのは皆、分かっていることである。出陣式の会場で衆人環視の下、黒川氏は山本太郎参院議員と共に昭恵夫人に笑顔で握手していた。「囲みましょう」は少しでも多くの応援者の参加を募るためで、実際は安倍首相の圧倒的な数の後援者や動員を掛けられた利害関係者、公安関係者に取り囲まれていた。

 現政権に盾突くものは、取り囲まれるのが常である。国会前や国会議員会館前の抗議集会では、いつもイヤホンをした黒背広の男たちに一挙手一投足を監視されている。市民の側が囲むなど、ほど遠いのが現実だ。

 今回の「取材拒否」報道が悪意に基づくことは、産経新聞が13日に報じた「首相夫人を『囲め』 ツイッターに非常識な書き込み、荒れる山口4区」と題する記事を見れば分かるだろう。今回のものはこの続編にすぎない。

 マスコミ批判をするとよく、メディアリテラシー(媒体読解力)の問題にされ、「だから俺は朝日も産経もいろいろ読むことにしている」と返されることがある。しかし、私に言わせれば、肝心な部分では、朝日も産経も同じである。

 例えば、植草一秀氏が巻き込まれた条例違反事件や林眞須美死刑囚の和歌山毒物カレー事件について、A紙はクロだが、B紙はシロを主張しているなどということはない。警察・検察発表を垂れ流すことが、マスメディアの存立条件だからである。

 今回の取材拒否の一件は、私の確認し得る限り、産経、読売、朝日、毎日、スポニチの各紙が報じた。見出しを昭恵氏への危害でなく、「個人演説会の取材拒否」とした朝日は、読売より良質と捉える向きもあるかもしれない。しかし、行数が幾分多いせいか、次の一文を最後に加え、余計悪質になっている。

 「公示日に下関市で開かれた首相の出陣式会場に、山本太郎参院議員と同区の新人候補が現れ、終了後に握手を求めるなどしていた」

 安全確保を主張する事務所の見解を紹介した後に記されたこの末文は、読者に一層の危機感を植え付けている。

 スポニチは各紙の中で最もましな報じ方をした。「昭恵夫人、取材拒否に反発の声 逃げ回る夫婦…方針撤回求める」の見出しで、首相夫婦がそろって逃げ回っている姿勢を批判する趣旨になっている。ただし、黒川氏の行動について「昭恵氏を取り囲み、威圧を促すような書き込みは問題だが」と前置きしている。出陣式を取材したりツイッターの書き込みを確認したのか怪しく、一般紙とそろって敵陣営を悪者にしている。

 全紙に共通するのは、々川氏が安倍氏に討論の場を求めたことに触れない安倍事務所が取材拒否したことを明記——である。,禄斗廚別簑蠅任△襦3道罎△鬚笋蟠未傍鵑欧襪里蓮飯の種が欲しいからと解す。安倍氏そのものを批判したいわけでないことは、これまでの報道を見れば分かる通りである。

 それでも「取材拒否」が前面に出てくるのは、現役首相の選挙を1度も取材できない異常さを告白している。加計学園疑惑が真実である証左ではないか。

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黒川氏が昭恵夫人に首相との討論を要求 山口4区

篠原孝「総理は危機を解散の道具に」と批判 リベラル再編に意欲

 衆院選に長野1区から無所属で立候補している前職、篠原孝元農林水産副大臣(69)は15日、長野市内で集会を開き、「北朝鮮の危機を解散の道具に使っている」と安倍政権を批判するとともに、当選後は「中道リベラルの政党をつくることに力を尽くしたい」との意向を示した。

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地元有権者に自身の立ち位置を説明する篠原氏(2017.10.15筆者撮影)

 民進党所属だった篠原氏は、小池百合子東京都知事が代表を務める希望の党から公認を発表されながら、安全保障関連法への支持など10項目の順守を定めた「政策協定書」への署名を拒み、無所属での立候補を選んでいる。

 この日は長野市内8カ所の公民館を回り、有権者との対話を続けた。午後6時から安茂里(あもり)公民館で開かれた集会には、民進党の杉尾秀哉参院議員のほか、長野市長や同市会議員も応援に駆け付けた。

 社民党市議は、同党が篠原氏に初めて推薦を出したことを報告。「小池新党が突き付けた10カ条の協定書を蹴飛ばして無所属での出馬を決めたのには、男ぼれした」とたたえると、参加者から拍手が起きた。

 杉尾氏は、自身が初当選した昨年の選挙を振り返り、「共産党と社民党、市民との共闘によって果たされた。今回の総選挙も、本当は共闘でやりたかった」と希望の党乱入による野党分裂を批判。一方で「自民党が300議席を取れば、森加計問題がうやむやにされる」と警告した。

 その上で、「篠原先生には今後、野党再編のキープレーヤーになってもらいたい」と期待を託した。

 登壇した篠原氏は、希望の党を蹴った基となる安全保障政策にまず言及した。自身は憲法改正に賛成であることを明かし、「自衛隊をわが国を守る軍と位置付けるべきだが、絶対に海外に行って戦争させるようなことは認めるべきでない。自衛隊を歓迎する国などないから」と説明した。

 さらに「安倍総理を見下げ果てた」と切り出した。「散々危機をあおっている。北朝鮮のミサイル発射を国家存立の危機だと言っているが、金正恩は米国の攻撃を恐れて強がっているだけ。それを安倍総理は米国の傘の下、トランプ大統領の陰に隠れながら、もっと強行なことを言っている」と批判した。

 今回の解散については「大義なき解散」とばっさり。「安倍政権は大義ある解散をやったことがない。議席を減らしてでもやりたいのは、2020年の東京五輪を総理として迎えたいから。それで一番いい時期を探っていた。極めて幼稚な発想」とこき下ろした。

 希望の党への「選別」を伴う合流に触れ、「私は野党再編の必要性をずっと訴えてきた。前原さんはその気があって、評価していた」と述べる一方、「ところが共産党嫌いで、4党でやることに難色を示した。それで最後、共産と社民を抜かしてきた」と嘆いた。

 衆院選後について篠原氏は、「当選したら当面、政策をやっていられない。野党を再編しないと。日本人が求めている政治は、中道リベラルや中道保守。安倍さんは右過ぎる」と再編に意欲を見せた。

 「安倍政権を倒すには、左寄りの攻撃でと思っていたが、なかなかうまくいかず、こんなことになった。もう1回やり直す必要がある」と吐露。

 岡田克也元民進党代表が提唱する無所属候補による選挙支援のネットワークについて、「選挙が終わってからやればいい。折角、(自由な)無所属で戦っているのに」と距離を置く考えを示した。

 「政党の統合をやれるのは、小沢(一郎)さんや亀井(静香)さんみたいな人。旧民進党の中にはいない」と評じながら、「私は得意でないが、やっていかないと。中道リベラルの政党をつくることに力を尽くしたい」と重ねた。

ニュース研究 「改憲必要なくなった」報道の真意

 時事通信は13日、「安倍首相『改憲必要なくなった』=昨年、田原氏に明かす」と題する記事を配信した。これはずばり、22日投開票の衆院選で改憲に固執する安倍政権の印象を好転させ、自民党をはじめとした改憲勢力拡大を促すための宣伝と確信する。

 この記事は、ジャーナリストの田原総一郎氏が13日、東京都内の外国人特派員協会で講演した内容を紹介したもの。昨年夏、田原氏が安倍晋三首相と面会した際、集団的自衛権の行使を可能にするための憲法改正の必要が「全くなくなった」と説明されたという。

 この記事が改憲に突き進む自民党に対する国民の警戒感を和らげることは間違いない。しかし、もし本当なら、5月3日の憲法記念日に安倍首相が発表したビデオメッセージはどうなるのか。2020年施行を目指して自衛隊を明記する「加憲」に意欲を見せている。

 この手法は日本会議常任理事で政策委員の伊藤哲夫氏が、自身が代表を務めるシンクタンク、日本政策研究センターの機関誌『明日への選択』16年9月号に発表したもので、9条2項の戦力保持と交戦権否認を空文化させるとともに、護憲派を分断させる狙いがあると明かされている。

 すでに不要だと思っていることを、批判を浴びる危険を冒して宣言するだろうか。田原氏が安倍氏の機嫌を取っていることは、外人特派員協会での講演の別の部分にも表れている。安倍首相が解散に踏み切ったのは、年末から来年にかけて米国が北朝鮮に武力行使する可能性があり、両国間で火を噴く危険性があったからだという。日本としてはそのための態勢をつくらなければならず、できるだけ早く選挙を考えたとしている。

 田原氏は「そしたら安倍さんの側近の1人が、それを言うと国民が非常に危険視する。全く触れない方がいいと言ったそうだ。それで消費税を2%上げるというくだらないことを理由にした。そのため野党は大義なき解散、森友・加計疑惑隠し解散だとののしった。国民の生命を守るのは与党の仕事で俺たちは関係ないという姿勢だ」と野党やマスコミを批判している。

 こんな話をされれば、安倍首相は喜ぶだろう。国民に真相を明かさず「大義なき解散」とののしられたのは、ひとえに国民の心中をおもんぱかってのことだったと擁護した形だ。しかし、朝鮮半島の緊張に対応できる態勢をつくるために、なぜ総選挙する必要があるのか。

 私は田原氏など、全く信用していない。ジャーナリストとはテレビや新聞で、支配権力の意向に沿って民衆を手なずける言説を振りまく職業人のことだと思っている。だから、私は肩書きを自己申告できるときは「反ジャーナリスト」と名乗っている。

 田原氏は、郵政民営化の必要性をテレビであおりまくった1人である。ご存じの通り、郵政民営化は米国が郵貯・簡保両資金を国際金融資本に収奪させるため『年次改革要望書』などを通じ長年求め、竹中平蔵氏が旗振り役を務めたもの。

 評論家の東谷暁(ひがしだに・さとし)氏が『郵政崩壊とTPP』(文春新書)で紹介しているが、小泉純一郎首相は郵貯資金が財政投融資によって官僚の無駄遣いの資金になっていることを問題視して民営化を打ち出した。しかし、01年には財投改革によって資金運用部への預託義務は廃止されている。田原氏はこの実情を竹中氏から聞いて知っていたと週刊誌で明かしている。「田原氏は郵政民営化をあおって、日本国民を混乱にたたき込んだことになるが、その責任はどうなるのだろうか」と問題視している。

 田原氏は1976年7月号『中央公論』に「アメリカの虎の尾を踏んだ田中角栄」と題する論考を載せている。私見では、この後、米国のキッシンジャーあたりに呼び付けられ、焼きを入れられ転向したと思っている。『NOと言える日本』を書いてから米国批判を封じ、反共パラノイアに堕した石原慎太郎氏と同様に。

 時事通信は7月28日、「『政治生命懸け冒険を』=安倍首相に田原氏提案」という記事を載せている。同日、田原氏は安倍氏と首相官邸で会い、「政治生命を懸けた冒険をしないか」と提案し、首相が関心を示したとする内容。田原氏は「(衆院)解散ではない。そのうち分かる」などと語ったとしている。

 解散の話でないというのが本当なら、ほかに何があるのか。小池新党の登場で、シナリオが狂ったのか。いや、安倍晋三も小池百合子も、支配権力の植民地総督としてポジション争いをしているにすぎない立場であり、大きな進路が変わることはないはず。それとも、今回の講演で「明かされた」、米朝衝突に備えた態勢づくりを安倍政権延命の口実にせよとの助言が、7月の田原氏の提案だったのか。

 ジャーナリストは「電波芸者」とも言われ、お金をもらってしゃべったり書いたりするのをなりわいにする。田原氏と安倍首相の密約が何であったか、確証するすべはない。しかし、軍産複合体が自衛隊の戦闘化を望む中、これと関わる何かの工作で手を結んだことだけは間違いない。

「自民も希望も対米追従」と小林よしのり 立憲民主を応援

 漫画家の小林よしのり氏が14日、東京・新宿駅東南口で開かれた立憲民主党の街頭演説で応援弁士を務め、「自民党も希望の党も対米追従勢力」などと批判するとともに「圧倒的勝利を立憲民主党に」と訴えた。

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「よしりん」の声援が飛ぶ中、えせ保守を糾弾する小林氏(2017.10.14筆者撮影)

 演説会では、長妻昭氏(57、東京7区)と海江田万里氏(68、東京1区)、枝野幸男代表(53、埼玉5区)が有権者に政策を訴えた。同党の支持者に加え、声を聞いて立ち止まる通行人が増え続け、聴衆は周囲の路上や立体交差する甲州街道の歩道にもあふれた。

 右翼団体、一水会元代表の鈴木邦男氏に続いて小林氏の登壇が伝えられると、聴衆からドッと歓声が上がった。マイクを取った小林氏は冒頭、希望の党が入党時に行った「選別」に言及した。

 「聞いたとき、何だと思った。自民党の中にもリベラルはいる。全部排除じゃ、極右政党じゃないか。枝野さんは昔の民主党の仲間だから遠慮があって言えないが、私は一国民。その感覚から言えば、希望に未来はない」と両断した。

 「選別」が発表された際、小林氏は辻元清美氏(57、大阪10区)から電話で相談を受け、枝野氏を代表にして新党を創るべきだと提案したことを明かした。

 「立憲民主という党名がいい。民主主義は暴走するもので、安倍政権もヒトラーも一応、民主主義で生まれた。これを防ぐのが立憲主義。素晴らしい名前で、もう成功している」とたたえた。

 保守論客に数えられる小林氏は、「私がなぜリベラルを応援するのかと聞かれる。自民党は保守じゃないから。安倍政権は単なる対米追従勢力。アメリカに付いて行って戦争しろ、それだけ」と突き放した。

 一方、「枝野さんは国会の議論でも、個別的自衛権の強化をと言った。これは保守の考え方。わが国をわが国で守るが個別的自衛権。それが、希望の党は集団的自衛権を認めないと入れないと脅している。(自民と)どちらも対米追従じゃないか」と批判した。

 立憲民主党の経済政策についても小林氏は「公約にほとんど賛成」と表明。アベノミクスが格差を拡大し、貧困層を増やしたことを挙げ、「資本主義を健全に運営していくためには、格差を是正しなければならない。枝野さんの方がはるかに保守だ」と持ち上げた。

 小泉政権下でのイラク戦争にも触れ、「わしはこれは侵略戦争だ。必ず失敗すると言った。ところが、保守と称する人たちは、これはアメリカの侵略ではない。すぐ終わって成功すると言い張った。全部うそじゃないか。俺の前で土下座しろ。保守勢力は全く反省がない」とやり玉に挙げた。

 22日投開票の衆院選について新聞各紙が「自民圧勝」を伝えていることを念頭に、「残念ながら、今回は政権交代にはならない。(選挙が終わったら)小池百合子と前原誠司は腹を切れ」と枝野氏らの胸中を「代弁」した。

 その上で、「われわれは何をやるべきか。安倍一強体制を食い止める政治家を選ぶしかない。圧倒的勝利を立憲民主党に捧げなければ」と訴えた。

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階段まで聴衆であふれた駅前広場(2017.10.14筆者撮影)

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甲州街道から声援を送る人々(2017.10.14筆者撮影)

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「一緒に新しい民主主義をつくろう」と呼び掛ける枝野氏(2017.10.14筆者撮影)

私も大衆

 先日、近所のそば屋に行った。そばは好きだが、ここはいつもたばこ臭い上、テレビがついているので、よほどのことがないと足を運ばない。入ると、店の主人とニッカーボッカー姿の作業員がテレビに見入っていた。

 夕方で、報道ともバラエティーともつかない民放番組が流れている。福岡市内での現金強奪事件が伝えられると、初老の店主は「日本も物騒になったねえ」と客に同調を促した。私は持参した本に目を落とす。こんなのは、現金廃止に向けた宣伝に決まっているからだ。作業員は「全く」などとうなずいている。

 今度は、北朝鮮の特集になった。日本に向けミサイルを配備している映像がアップで登場し、不穏な音楽が流れる。映像の左下には「CSIS提供」とあるのに。平壌市内の子供たちがガスマスクを着けて避難訓練する様子も映し出される。

 「本当に怖い国だね」

 店主は吐き捨てながら、終わると別チャンネルを行ったり来たりして、北朝鮮ネタを探している。日米敵視のスローガンを唱和する映像に出くわし、「ひどいねえ」と満面の笑みを浮かべている。緊張を名目に国民からの収奪と弾圧強化を図るために流されているのに。大衆に救いはなさそうだ。

 かく言う私も、彼らと大差ないかもしれない。テレビこそ四年前に捨てたが、夜中にビール片手にネット動画をあちこちつまみ食いして楽しんでいる。昨年は民放ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』にはまり、今のILDKに引っ越した。このドラマは国家戦略特区諮問会議で竹中平蔵氏が提言した外国人家事代行事業の宣伝と承知しているが、私の行動に影響を及ぼしたことも確かだ。

 社会学者の宮台真司氏によれば、フェイスブック社は「いいね」ボタンを押した記録によって人間を二十四の類型に分け、各人にふさわしい広告や記事を選び出している。私がどうにもならない現実から『逃げ恥』に逃げたのは、綿密な計算の上での誘導によるのかもしれない。動画サイトの右側には「あなたにお薦めの動画」が並ぶ。年齢や性別、所得や思想傾向、趣味などから、新垣結衣のほほ笑む画像を送り込んだのが、まんまと的中しただけではないか。

 われわれは盛り場でポン引きに客引きされているカモと変わりないかもしれない。支持政党も、お気に入りの洋服やお店も、主体的に選んでいると思っているのは、本人だけの可能性も。私が読んでいる本や映画、行きたいと思っている外国の場所は、そもそもどこから来たのか。ビッグデータで見れば、支配者にとって想定通りの振る舞いとして観察されているのだろう。

 私は〇八年に『偽装報道を見抜け』を上梓して以来、「テレビは捨てよ、新聞は読むな」と主張してきた。人間が現実環境だけに生きれば、権力による支配は機能不全に陥ると考えたからである。内外情勢や経済指標などメディアで伝えられなくても、この目で見たものだけを信じ、考えれば、解決もはるかに直接的になるはずである。

 しかし、今どきパソコンも使わずに仕事をするのは難しい。河原を散歩し、俳句を詠み、友人と縁側で戯れたいが、これではお嫁さんどころか友達も来ないだろう。私にその勇気はまだない。

 私は紛れもなく大衆の一人のようだ。
 
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外の恐怖

 家の外へ一歩出れば、誰かに責められている気がしてならない。私が酒をやめられない原因もここにある気がする。

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 先日、山口県へ行くため、飛行機に乗った。左右三列ずつの客室で、私の座席は右側の真ん中だった。搭乗者は列をつくり、順番に座っていく。私の左右はすでに人がいた。格安便のせいか、通路は狭い。カバンから読もうと思っている本やペン、手帳を取り出して荷物を天井に据え付けられた棚に収めたいが、棚はいっぱいだった。

 数珠つなぎの人々に、重圧を感じる。別の棚を開いたり、出す物を制限したりと、大急ぎで判断しなければならない。無数の白い目で、心身が焼かれそうだ。私は洗面所で手を洗っているときでさえ、後ろに人が待っていると思うと、死ぬほど苦しむ。洗わずに「どうぞ」と追い越させることもしばしば。動揺して視界が真っ白になる中、客室乗務員の声が襲った。

 「一旦、座席に入っていただけますか。荷物はこちらで収納いたしますので」

 私は全員の悪者になったと悟った。急がなければならないことは、私自身が一番意識している。幸い、周りは状況を理解して黙って見守ってくれていた。乗務員が何も言わなければ程なく解決したのにと思った。私は「こっちが何か悪いことしましたか」と抗議したい気持ちを抑え、飛行中は終始不快だった。

 人はといえば、狭い肘掛けを平気で占領してくる。こちらが身を細めて耐えていると、靴を脱いで、足を組む。汚い靴下がこちらに向いている。駅や町でも、イヤホンで耳をふさぎ、携帯玩具をいじりながらふらふらさまよう。こちらがよけなくてはならない。地獄の思いで手を洗っていても、「遅え」と舌打ちが聞こえてきそうだ。

 本を広げながら、納得のいかない気持ちを反すうしていると、「テーブルをしまってください」と注意された。着陸態勢に入るのだ。またもや、悪者にされた。もはや、生きざまをさらせない。着陸失敗で、皆平等に灰になるなら結構だと思った。

 ふて腐れて宇部空港に降り立ち、リムジンバスの券を買う。と、自販機の上に張り紙がしてある。

 「このバスはJAL291(定刻九時三十五分)の到着後出発予定です」

 「このバス」は九時五十五分発である。あと五十分以上、待合室で原稿でも書いていようと思ったが、バス停で待たなければならないのか。総合受付の女性に尋ねると、「291便が到着してからの発車となります」と繰り返すだけ。「五十五分より前に発車することはあるのか、ないのか」と明快な答弁を求めるが、かなわなかった。

 去り際、横に突っ立っていたほとんど仕事のなさそうな男が、「大丈夫か」と女に気使っていた。私は日本一の悪者になったようだ。早く独りの部屋に逃れたい。いよいよ酒が手放せなくなった。

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       高橋清隆

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【番号】10900411

銀行からのお振り込み
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【口座番号】 1090041 
【口座名】盒鏡粁粥  

著者プロフィール


反ジャーナリスト。金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了。ローカル新聞記者、公益法人職員などを経て、2005年から現職。『週刊金曜日』『ZAITEN』『月刊THEMIS(テーミス)』などに記事を掲載。  著書に『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)『亀井静香が吠える』(K&Kプレス)『亀井静香—最後の戦いだ。』(同)『新聞に載らなかったトンデモ投稿』(パブラボ)。           

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