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郵政人事の激しい綱引き

 松下大臣の死が他殺によるとしたら、何が背景か。彼の死によって恩恵を得るものは誰だろう。真っ先に頭に浮かぶのは、郵政民営化見直しの動きである。

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日本郵政本社(2012.9.14、高橋清隆撮影)

 10月1日から、改正郵政民営化法が施行される。これは小泉内閣時代に成立した郵政民営化を見直すもので、6月に可決・成立した。国民新党の代表だった亀井静香氏が水面下で公明党を抱き込んで実らせた努力のたまものである。ただし、自民・公明両党を説得するため大幅に譲歩した内容になっている。

 この法律は郵便局会社と郵便事業会社を統合し、5社体制から4社体制に移行することを定めている。ユニバーサルサービスを義務付け、配達員が郵貯や簡保の現金を扱えるようになっている。簡易郵便局の存続も盛り込み、グループ職員と利用者にとって好ましい内容だ。しかし、金融2社の株式は経営者の判断ですべて売ることも可能で、約300兆円の金融資産をハゲタカに譲る道が開けている。

 郵便局会社と郵便事業会社を統合する新会社「日本郵便」の経営陣が9月5日に発表された。顔ぶれは総じて、両社の役員を足しただけのもの。会長には古川洽次郵便局会社社長、社長に鍋倉眞一郵便事業会社社長が就く。古川氏は旧長銀のリップルウッドホールディングス譲渡への関与が取りざたされてきた。同行は約8兆円の国費が投じられ、10億円で売却されている。

 鍋倉氏は旧郵政省出身だが、小泉政権下で郵政民営化推進室副室長に抜てきされ、竹中平蔵郵政民営化担当相の片腕として民営化を推進してきた。

 今回の人事でただ1人異彩を放つのが、副会長に就任する稲村公望氏だ。鍋倉氏と同じ東大法卒で旧郵政省出身だが、小泉氏の描く民営化に一貫して反対。総務省統括審議官として民営化準備室への出向人事で決裁書類にはんこを押さず、任を追われた。

 金融2社の株式は、稲村氏のような経営者がいなければすんなり売られてしまうだろう。そうなれば国民の預けた郵貯・簡保資金は外国のために好き放題に使われる。彼の起用は下地幹郎国民新党幹事長や同党の前参議院議員で全国郵便局長会(全特)顧問の長谷川憲正氏に猛反対された。押し込んだのは亀井静香元代表だ。

 稲村氏の復職に対する妨害は、これまでもあった。亀井氏が国民新党を追われてから、稲村氏が長谷川氏側に寝返ったとのうわさが郵政グループ内外に流された。亀井氏の耳に入れるためで、発信源は日本郵政の経営陣だった。齋藤次郎社長は自らを抜てきした亀井氏の意向ならくむ。現職担当大臣の不可解な死は、この人事への痛烈なけん制のつもりかもしれない。

フォローアップ会議は流産?

 もう一つ、担当大臣の死が「待った」をかけそうなのが「政府・与党郵政フォローアップ会議」である。10月1日の改正法施行に向け、政権与党として郵政事業の見直しを進めるもので、9月5日に官邸で初会合を開いている。構成メンバーは藤村修官房長官や川端達夫総務相、安積淳財務相などで、座長は松下大臣だった。

 同会議では、金融2社の新規事業や会社間窓口手数料の消費税減免措置などについて方向が固められる。米国がやめるよう、一貫して要求している部分だ。

 一方、小泉政権下で発足した郵政民営化委員会(西室泰三委員長)が息を吹き返し、新規事業について内閣への提言をまとめている。8月29日には全国信用金庫協会や全国地方銀行協会にヒアリングを実施し、「ゆうちょ銀行を完全民営化する期限を明示すべき」「間接的な政府出資が残る間は、民間事業者の圧迫につながる恐れが強い」などの意見を集めた。改正法が施行されても、小泉民営化を軌道修正できるかどうか予断を許さない状況になっている。

 松下氏の訃報を受け、野田首相は安住財務相に金融相の兼任を指示した。郵政民営化担当の命は受けておらず、大臣は空席となる。新しい大臣の着任は民主党代表選後の改造を待つことになりそうだ。安住氏が勝手に日本郵政株の3分の2を売却することはできない(親会社株については政府が3分の1超保有することが義務づけられている)。

 しかし、この間「フォローアップ会議」に新たな座長が据えられる可能性がある。私見では、国民新党の森田高政務官以外の人物では、改正法の実効性が骨抜きになるのは避けられない。郵政民営化は国内的には財務官僚による省益拡大の側面もある。安住氏が事業の方向性を固めるに当たってイニシアティブを執るようなことになれば、小泉政権の描いたものとほとんど変わらないものになるだろう。

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副会長に就任する稲村公望中央大学客員教授(2009.8、外国人特派員協会で高橋清隆撮影)

「主権国家」の闇と国民の幸せ

 他殺だとしたら、週刊誌の記事掲載は犯行と連動していることになる。これはロッキード事件と立花隆『田中角栄研究〜その金脈と人脈』の文藝春秋掲載や、三浦和義氏の被弾事件と『週刊文春』などによる保険金目当てとする記事掲載の関係と似ている。いずれも事件を仕掛けた者が記事を書かせたと確信する。

 植草一秀元教授が04年に巻き込まれたえん罪事件では、『フライデー』誌がねつ造記事を載せた。08年に損害賠償請求訴訟を起こした際、記者を法廷に呼び出すことに成功している。しかし、虚偽情報を流した「警察関係者」は姿を見せず、根源的な解明には至らなかった。

 今回の大臣の死が他殺なら、誰かにそそのかされて書いたか、記事掲載の情報を入手した者かそれを直接・間接に聞いた者が犯行に及んだことになる。

 マスコミと物的暴力の保持者が疎遠でないことは確かだ。世界最大の通信社、ロイターはロスチャイルド家に雇われていたシャルル=ルイ・アヴァスが作った仏国のアヴァス社からのれん分けされたもの。最初の顧客はライオネル・ロスチャイルドで、ここからMI6やCIA、モサドが誕生した。

 有賀裕二氏の書いた『悪魔が日本を嘲笑っている』(第一企画出版)によれば、占領軍の家族を守るために警察予備隊として発足した自衛隊内の特別組織が戦後の数々の暴力事件を起こしてきたとされる。一方、筆者の国際通の友人は豪州滞在中、バーで米国の軍人から暗殺出張に出向くことがあると漏らされたという。

 戦後の鉄道を舞台にした怪事件は迷宮入りしたし、児童連続殺害事件や神戸少年事件、毒物カレー事件、秋田児童連続殺害事件などはえん罪だと思っている。日本の警察は真犯人を逮捕できないのだ。

 事件に関する情報を一切公開せず、住民と話しもさせない国家に安寧などあるだろうか。大臣の不可解な死にほおかむりする体制の下で、国民生活の先行きは暗くなるばかりだ。