2007年07月15日『ライブドアPJニュース』掲載

 痴漢の罪に問われている経済学者の植草一秀氏の裁判が7月18日に求刑が言い渡される予定である。昨年12月から始まった公判で検察側の矛盾が山ほど明らかになったが、マスコミは一切報じない。そのため国民の大多数は、彼を変質者だと思っているようだ。彼の名誉と公正な言論空間を守るため、ここで事件を疑ってみたい。

異常に素早い処理、被害者不在の法廷
 事件が起きたのは、2006年9月13日午後10時すぎ。京浜急行下り列車内で女子高校生の尻をスカートの上から触ったとして、東京都の迷惑防止条例違反で逮捕された。報道によれば、被害者が「やめてください」と声を上げたため異変に気付いた男性2人が取り押さえ、駅事務室に連行した、とされる。

 しかし、肝心の「被害者」は一度も出廷していない。植草氏は女性と話しもさせてもらえず、力づくで引き離され、ホームに引きずり出されている。1月25日の公判では、蒲田駅に到着してから蒲田署の担当巡査が出動指示を受けるまで、わずか3分しかかかってないことが、警察の記録により明かされている。これは周到な準備がなければできないことではないか。おまけに12月20日の第2回公判では、検察側目撃者が、取り押さえた男性のことを「私服」と呼んだ。これは何を意味するのだろう。

 この「私服」と呼ばれた男は、3月28日に驚くべき証言をしている。彼は一人で植草氏をホームに連れ出し、しばらくしてから別の協力者に植草氏を運ぶのを手伝ってもらった。ホームに降りてしばらくして「駅員さんを呼んでください」と周りの人に頼み、駅員に来てもらったと話している。これだけのことが3分以内にできるわけがない。逮捕者が私服警官なら、証言台に立って身分が発覚すれば大変なことになる。だから、替え玉を証言台に立たせるしかない。しかし、替え玉は事件のことを知らないから、このような「失言」をするのではないか。

公判で次々と吹き出した矛盾
 公判ではたくさんの矛盾が露呈した。現場の位置関係もその一つ。第2回公判で検察側が連れてきた目撃者は、植草氏は女子高生に体を密着させ、前かがみだった。しかし、手に傘やかばんを持っていることは確認できなかった。頭は彼女から離れていたと証言している。しかし、そんな格好は不可能である。この証人は被害者が車内の真ん中に立っていたと証言したが、裁判で計測された被害者との距離77センチを適用すると、被害者は車内進行方向右端にいたことになる。

 植草氏は事件のとき眼鏡を掛けていたことが認められているが、検察側目撃者は「眼鏡については、付けていたか付けていなかったかは覚えていません」と証言した。植草氏は逮捕からこの公判まで約10キロやせたが、この証人は事件当日と「違いはありません」と答えている。植草氏の顔をどこで覚えたかと聞かれ、「インターネットで」と答えた。具体的にyahooと植草氏の応援サイトを挙げながら、それらに「写真はありませんでした」と証言している。

 この証人は痴漢騒ぎがあったことを車内から友人にメールしたと証言。メールが表示されている携帯電話の写真が提出されたが、時間が後の方がバッテリーが多い。

 繊維鑑定では女子高生のスカートの繊維と植草氏の指に付着した繊維との鑑定を行った。結果は「類似」だったが、通常そのような項目はない。「一致」か「不一致」いずれかである。

 これだけでも何一つやった確証がない以上、無罪と見なせるだろう。そもそも被害者は、「それほど込んでいない車内」なら、少し移動すれば済むではないか。

無実を決定づけた勇気ある目撃者の証言
 さらにやってないことを決定づける証言が7月4日の公判で出された。当日電車に乗り合わせたという男性が、道徳心から名乗り出たのである。起訴状では午後10時8分から午後10時10分の間に犯行があったとしているが、彼はこの時間帯に植草氏が何もしてないことを証言した。初めから植草氏であることをはっきり認識しており、セルロイド製の眼鏡を掛け、つり革につかまってうなだれて立っていたと話した。

 この証人は青物横丁から大森海岸駅当たりまでうとうとした状態になったという。そして大森海岸駅当たりで何か騒がしい感じがして見ると、植草氏が絡まれていたと述べている。品川から青物横丁までの所要時間は2、3分。10時8分品川発の電車だから、容疑の時間帯はとらえている。

 この証人は事件報道を調べていないし、弁護人と打ち合わせも持っていないと証言。検察官が事件がどこであったか知っているだろうと繰り返し問いつめたが、「知らない」と答えた。それでも執拗に「品川から蒲田の最初の3分の1、真ん中の3分の1、最後の3分の1のどこだと思うか」としつこく聞かれると、「それだったら、最後の3分の1じゃないですか!」と腹を立てたように証言した。

 裁判官から「あなたがうとうとしている間に犯行があったのだとしたらそれは分からないのですね」と向けた際には、「はい、それは分かりません」とはっきり答えた。真実をありのままに述べていることが分かる。検察官の「弁護人から事件がどこで起きたのかを聞いているのではないか」との質問には、「全く聞いていない」と答えている。

 ところがマスコミは検察側の主張を覆すこの重大な証言を無視している。産経グループのインターネットニュース『ZAKZAK』では、「ミラーマン号泣、証人出廷に感激…も役立つ証言出ず」と題し、青物横丁駅を過ぎたあたりからうとうとしたとの証言を紹介し、「結局、犯行を直接、目撃していなかった」と断じている。「スポーツ報知」も途中、うつらうつらしていたことを取り上げ、「植草被告の潔白を証明する明確な回答はなかった」と伝える。

 裁判官にとっては、犯行時間である品川駅出発から2分の間に植草氏が痴漢をしたかどうかを知れば十分なはず。していないという証言は、無罪が成立したことを意味する。裁判官が「あなたがうとうとしている間に犯行があったのだとしたら、それは分からないのですね」と聞いたのは、裁判官が犯行時間を知らないからでなく、この証人が植草氏に雇われて被告に有利な証言をしに来たのではないことを確認するためだった。

 この証人は車内で植草氏を捕まえたのは2人だったと明かし、そのときの様子を詳細に述べた。その内容は植草氏の証言と一致しているから、極めて信頼性が高い。2人の逮捕者の一人は3月28日の公判で、車内では自分が一人で捕まえたと証言している。これは、3月28日の証人が替え玉であることを裏付ける。

マスコミによる露骨な印象操作
 マスコミは植草氏に対し、一貫して悪印象を植え付ける記事や番組を発信している。女性週刊誌『女性セブン』(集英社)は昨年「痴漢で示談7回の過去」という記事を出しているし、ABCテレビ『ムーブ』は同記事を紹介し、評論家の宮崎哲弥氏や大谷明宏氏が植草氏の性癖を酷評している。しかし、植草氏が民事訴訟を起こしているように、いずれも根拠のないことだ。

 植草氏に対する悪評の流布は、新聞も同じだ。例えばスポーツ報知は10月7日に植草氏の保釈取り消しを伝えた記事を出している。その中で、「『事件は警察のでっち上げ』『電車が揺れて手が触れ、勘違いされたのでは』などと往生際が悪い供述に終始していることが今回の逆転裁定の原因と見られる」と綴った。

 3月28日の『ZAKZAK』は、「ミラーマン植草DVDで犯行再現…コスプレも登場」と題する記事で第6回公判で弁護側が再現DVDを公開したことを紹介した。上映時間は検察側の要求により非常に短い時間しか許されなかったが、「『それでもボクはやってない』に足下も及ばないワンシーンだけの“超短編映画”」と酷評。このときの公判では、取り押さえた男性の一人(「私服」と呼ばれた男)が証言に立ち、検察側目撃者の証言に反し植草氏と会話しなかったと述べたが、記事はこのことに触れず、「『私が“突き出すからね”というとかすかにうなずき、納得したような感じだった』と、被告が犯行を認めるような行動をしていたことも新たに明かした」と結んだ。

 繊維鑑定の結果を報じた1月25日付の『ZAKZAK』は、「ミラーマン植草ピンチ…手にパンティー? 繊維」と題してスカート繊維との鑑定結果を「酷似」と報じている。「類似」からのさらなる飛躍である。パンティー素材に近い綿繊維が植草氏の手から採取されたとあるが、検察側目撃者はスカートの上からと証言している。おまけに、駅事務室で自殺を図ったことを「茶番劇を演じている」と書いている。

 「酔って覚えていない」という語句は初期報道で各紙に見られたが、植草氏はこのような言葉を使っていないという。「ミラーマン」という語句を連発すること自体が、思惑に満ちている。

日本の独立阻む「国策逮捕」?
 マスコミ報道はこれまで、わが国が独立する機運を一貫してそいできた。占領期のウオー・ギルト・インフォメーション・プログラムで国民に劣等感を植え付け、石油メージャーからの脱皮を模索した田中角栄を金脈問題で失脚に追い込み、ロシアとのパイプを構築しつつあった鈴木宗男氏を嘲笑の的にした。マスコミがキャンペーンを始めたら、米国あたりからの力が働いてる証しだと思ってまず間違いない。

 植草氏といえば、米国の要求に従った小泉構造改革を一貫して批判してきた。2004年の手鏡事件は長銀をリップルウッドホールディングス社が落札した不当性を指摘した直後。今回の事件は、りそな銀行救済時に大規模なインサイダー取引が行われたと指摘した直後であり、前回事件の警察捜査の不当性を告発する本を出版予定だったと言われている。

 賢明な国民は、こうした背景からこの事件を疑っているはずである。記事を書くマスコミがこれらのことを念頭に取材しない方がどうかしている。
 
 そもそも、迷惑防止条例違反の容疑で4カ月も勾留(こうりゅう)されるのは、誰が考えても不自然だ。証拠隠滅の可能性も、逃亡の可能性もない。自宅と会社が強制捜査を受けており、会員制レポートを書くパソコンも押収されている。支援者の一人の自宅には警察が訪ねており、別の支援者は事情聴取を求められた。2人とも勝手に応援しているだけである。このこと一つとっても、国策逮捕であることを告白しているのではないか。

 植草氏の事件については、すでに本が出され、インターネットブログで公判内容が詳しく紹介されている。これらの情報に接すれば、マスコミ報道で培われた印象が偏見だと分かるだろう。いかなる判決が出ようと、植草氏が犯行にかかわっていないことを確信した。【了】