高橋清隆の文書館

 当ブログでは、マスメディアが伝えない情報や事象分析を発信しています。
新聞やテレビがつくる「社会標準」から解放されれば、人類は本来の豊かな人生を送れると確信します。

2008年02月

チャップリン劇のような不祥事報道

 喜劇王チャップリンの映画に、ガラス修理の親子の物語がある。子供が石を投げて民家や商店のガラスを割り、程なくガラス工の父親が通りかかる。「これはひどいねえ」と修理を始め、代金をもらう。年がら年中伝えられる企業不祥事のニュースは、この喜劇を連想させる。

 流通大手だったダイエーはバブル崩壊後に業績が悪化すると、中内功会長のワンマンさがたたかれた。マスコミは代わった鳥羽董(ただす)社長のインサイダー取引疑惑やダイエー球団のスパイ疑惑なども宣伝。福岡ドームとホテルは米コロニーキャピタル社に、球団のホークスはソフトバンクに渡る。会社本体は産業再生機構の管理の下、丸紅とアドバンテッジ・パートナーズ引き渡され、アドバンテッジの推す林文子氏がCEOに就任した。

 財務内容の悪化は、政府がバブル崩壊後に緊縮財政で資金の流れを止め、日米の株価差が1:15に開いたところで外資参入を認める規制緩和を行った結果である。しかし、マスコミはこれらが米国の要求であったことも報じない

 カネボウは昭和初期までわが国最大の売上高を誇ったが、2001年に時価評価と連結決算を原則とする国際会計基準が導入されると苦況に立たせる。マスコミが粉飾決算を大々的に報じたため、産業再生機構の下でアドバンテッジ・パートナーズなど3ファンドからなる投資グループに引き渡された。

 四大証券の一角、日興コーディアルグループは、2006年末、前年度の有価証券報告書の虚偽記載が発覚。孫会社NPIホールディングスの株式を連結範囲に含めない「不正会計」があったとして証券取引委員会に5億円の課徴金を求められ、管理ポストへ。マスコミがこれを宣伝すると米シティーグループが買いあさり、2007年10月にはわが国初の三角合併で完全子会社に。年明け、上場廃止になった。

 「日本の企業が悪いことをしたからではないか」という人がいるかもしれない。しかし、どんな環境下でも、企業が自己の存続を図ろうとするのは自然である。米国が収奪のために改革を強要した事実から目をそらし、国内企業の粉飾決算や報告書の虚偽記載を騒ぎ立てるのは偽善ではあるまいか。

 ライブドア事件の起訴要件は、架空売り上げ(偽計および風説の流布)と有価証券報告書の虚偽記載だった。堀江貴文社長を「時代の寵児(ちょうじ)」ともてはやしていたマスコミは一転、堀江氏を「虚業」「拝金主義者」とののしる。値下がりした同社株をフジテレビから引き受けたUSENの宇野康秀社長を温情ある青年実業家として一斉に祭り上げた。しかし、宇野氏は半年もたたないうちにこれらをモルガン・スタンレー証券関連会社に譲渡した。

 西武グループのドタバタも有価証券報告書の虚偽記載が発端だが、株主構成が違っただけである。2006年11月、西武鉄道が会見で事実を明かすと、その日の内に東京証券取引所は西武鉄道株を管理ポストに置き、マスコミはバッシングを始めた。東京地検が堤義明コクド前会長の逮捕に動き、西武グループは外資の餌食(えじき)に。12のリゾート施設は米シティーグループに売却され、西武グループの筆頭株主は米ファンド、サーベラスになった。

 三菱自動車は2000年7月、内部告発によりリコール隠しが発覚。マスコミがこれを大々的に報じたため、ダイムラー・クライスラーは投下金額を200億円以上節約して三菱自動車を傘下に収め、COOを含む4人の役員を送り込むことができた。三菱ふそうを分社化した翌2004年、2年前のトレーラーのタイヤ脱落による母子3人の死傷事故がニュースに登場し、ダイムラー社は支援打ち切りを発表。三菱自が保有する三菱ふそう株22%が520億円の廉価でダイムラー社に売却され、ふそうは日本の自動車メーカーとして初めて外資の完全な子会社になった。

 危険性を宣伝することで企業を外資に引き渡す手口は、航空市場でも行われている。日本航空は運行トラブルの宣伝が2年強続けられたが、負傷した乗客はいない。労使双方の内部対立も報じられたため、株価は低迷の一途をたどる。乗客離れも進み、増資の引受先を国内に見つけられなくなり、海外での資金調達を探った結果、筆頭株主は米ステートストリートバンクアンドトラストになった。しかもこの間、モルガン・スタンレー証券が大量の空売りをした形跡が大量保有報告書からうかがわれる。そもそも運行トラブルは、航空市場の自由化による過密運行によって増えた。運行トラブル報道で投資ファンドが権限を増せば、合理化でさらに安全が損なわれるのは明白である。

 2006年、パロマ製湯沸器の一酸化炭素中毒事故が大きく報道された。10年前東京都内で長男を亡くした遺族が警察に再捜査を要望すると、NHKがニュース番組で特集を組み、テレビ・新聞が一斉にパロマをバッシングし始めた。同年12月の東京地検による起訴までの間、パロマは国内生産を3割減らした。パロマは非上場のため乗っ取られることはなかったが、その陰でライバルのリンナイ、ノーリツが売り上げを伸ばした。リンナイは確認できるだけで株式の34・3%を外国人が保有。ノーリツの筆頭株主はスティールパートナーズ(17.87%)で、0・9%を保有するフルサ・オルタナティブ・ストラテジーズは昨年、配当を10倍強にするよう迫っている。

 不祥事報道の先には、外資系企業が利益を得るというお決まりの展開が待つ。相も変わらず流される自滅ニュースになすすべがないのは、チャップリン劇と違って笑えぬ悲劇ではあるまいか。

偽装事件という偽装報道

 近年、偽装事件が騒がれている。昨年は食品偽装事件が相次いだことから、日本漢字能力検定協会は一年を表す漢字に「偽」を挙げた。的を射た表現として各マスコミが紹介したが、わたしには事件を宣伝するマスコミ報道こそ最大の偽装行為に見える。

 食品偽装騒ぎの始まりは2007年1月、不二家で期限切れ牛乳の使用が発覚したことだった。マスコミの大報道により工場は操業を停止、全国の店舗は休業を余儀なくされた。事件発覚前、ゴールドマンサックス証券が不二家株を大量取得したことが有価証券報告書で分かっており、空売りで莫大な利益を上げたことが指摘されている。不二家本社のあった銀座の土地と建物は米シティーグループのものになった。

 同年8月には「白い恋人」で賞味期限の改ざんが見つかり、マスコミが一斉にバッシング。これを受け、製造・販売元の石屋製菓は創業家一族が会社を明け渡し、北洋銀行の常務が社長に就任した。持ち株会社の札幌北洋ホールディングスをめぐっては2007年初め、バークレイズ・グローバル・インベスターズ信託銀行ら8人の共同保有者が大量保有報告書を提出している。

 同年10月には赤福で製造日の改ざんが見つかり、連日のニュースで悪者にされた。そのため、社長以外の創業家出身役員は退任し、会長にはゴールドマン・サックス系列の元住友銀行副頭取が就任した。それでもマスコミはまだ一族の社長が控えていることを許さず、「企業体質刷新の印象とはほど遠い」(読売新聞中部版)などと手ぬるさを批判する。

 冷凍食品最大手の加ト吉は、架空売り上げと北海道加ト吉がミートホープ社の偽装ミンチを使用していたことが発覚。大きく報じられたため、上場を廃止し、提携先の日本たばこ産業(JT)が株式の49%を日清食品に譲渡する計画が浮上。1月末に毒ギョーザ事件でJTがたたかれると、日清側は全株の取得を要求した。JTがこれを認めなかったため提携は解消されたが、JTが打撃を食らうことで食品産業への外資参入の余地が広がった。日清食品の筆頭株主はスティール・パートナーズである。

 そもそも食品偽装事件も、毒ギョーザ事件も、米国の農産物や食品の一層の輸入を促す布石になっている。単に中国製品への風評被害という意味だけではない。2007年10月に突き付けられた『年次改革要望書』には、輸入食品の添加物審査の軽減や、残留農薬政策の修正が明記されている。いずれも「消費者保護」の観点から国際基準の採用を求めているが、要求の目的は「貿易の促進」である。わが国の安全基準の方が厳しく、複雑だからである。

 ところが新聞は、わが国の食品行政には日本農林規格(JAS)法や食品衛生法などがあり、監督官庁も農林水産省や厚生労働省などに別れていることや、三重県の保健所がJAS法違反を見抜けなかったことなどを挙げ、縦割り行政を批判。既存の規制体系もろとも吹き飛ばすのを後押ししている。

 毒ギョーザ事件報道の挙げ句に活発化したのが、消費者行政一元化の動きである。福田首相が施政方針演説で掲げたもので、消費者行政の窓口を一元化し、各省庁への「司令塔」的役割を持たせる。食品の成分をまじめに審査する厚生労働省では、米国が輸入を求める危険な食品化学物質を迅速に認可できないと考えたのだろう。ところがマスコミは「皮肉にも『消費者行政の一元化』を掲げた福田康夫首相の着眼点の正しさを裏付けた」(毎日新聞)などと称賛している。

 「偽装」という言葉が使われ始めたきっかけは、2005年秋の耐震偽装事件である。マスコミは偽装物件を担当した設計士やマンション販売会社などをやり玉に挙げたが、問題の根本にある1998年の建築基準法改正の経緯に触れることはない。米国は自国製の建材を売りつけるため、使用規定から性能規定への変更を求めてきた。検査の民間開放もその一環として始まった。ところが、マスコミはこの事態から目を背け、国内の悪者さらしに徹する。

 偽装事件を大々的に取り上げたため、2007年6月20日の同法改正では、建築確認・検査の厳格化や監督の強化が盛り込まれ、建築許可が下りにくくなった。新設住宅着工戸数は激減し、昨年は40年ぶりに110万戸を下回る見通し。住宅販売会社や建設業の倒産も始まっており、アパート建築請負最大手の大東建託も収益が悪化。米大手証券のゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーとリーマンブラザーズの2社連合、米ファンドのエートスキャピタルを中心とする連合が同社株の買収に名乗り出ている。

 今年に入ってから、製紙業界の「環境偽装」や溶融亜鉛メッキ鋼板の品質偽装事件が報道されている。これらの宣伝もどのみち、外資に利益をもたらすだろう。「偽装」が発覚した大手製紙メーカーの製品納入を拒否する声明を最初に出した複写機大手5社はいずれも大株主が外資だし、カルテルの排除は『年次改革要望書』のレギュラー項目である。

 ニュースはいつも事件の背景にある真相を隠し、国民生活を守る秩序の一角を攻撃する。「消費者の利益」をかたって外国の侵略を後押しするマスコミこそ、最大の偽装集団ではないか。マスコミを表す漢字は、毎年「偽」である。
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       高橋清隆

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著者プロフィール


反ジャーナリスト。金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了。ローカル新聞記者、公益法人職員などを経て、2005年から現職。『週刊金曜日』『ZAITEN』『月刊THEMIS(テーミス)』などに記事を掲載。  著書に『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)『亀井静香が吠える』(K&Kプレス)『亀井静香—最後の戦いだ。』(同)『新聞に載らなかったトンデモ投稿』(パブラボ)。           

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