7月の参院選で敗北した「みどりの風」用心棒、亀井静香衆議院議員に9月12日、郵政関係業界紙の田村(仮名)記者とともに話を聞いた。亀井氏は生体反応をなくした国民の精神状態を嘆くとともに、日本人にもともとあった土着思想を世界に発信することで地球規模の危機を救う道を訴えた。

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日本の用心棒として警鐘を鳴らす亀井氏(2013.09.12、高橋清隆撮影)

今も続く薩長の天皇利用

田村)今日は亀井ゼミの聴講生として来ました。
亀井)笛吹いたって踊らないから、国民もマスコミも。吹いたってしょうがない。
高橋)『月刊日本』9月号でおっしゃっていたように、国民はもはや生体反応を失っていると。
亀井)あそこに書いた通り、もうジャーナリストもいかれて生体反応が起きない。この原因は土着の思想をわれわれが明治維新のときに忘れてきたこと。それが現在まで続いている。戊辰戦争で勝った薩長は天皇の権威を自分たちの統治のための道具に使って明治憲法を作り、挙げ句の果ては大東亜戦争を起こした。彼らの都合のいいようにしてたから、天皇の大権も行使できない。「朕(ちん)が意志にあらず」で、やりたくなくても止められなかった。
 実質的な政治権力は薩長の延長線上で官軍がずっと握ったまま、天皇が利用されるという状況で来た。そして戦争に負け、米国の支配が及んできた。それに対する抵抗は、マルクス・レーニン主義者か『世界』の岩波に陣取られ、輸入品のいわゆる思想家やジャーナリストによっての抵抗だった。明治維新をやろうとしたときに日本民族が持っていた土着の思想「一君万民」に基づいての抵抗じゃなかった。だから米国の好きなようにやられている。
 首相の安倍晋三ももう少しましだと思ってかわいがっていたが。彼のおじいさんが岸信介だから言う訳じゃないが、維新以来の靖国神社の問題、今のトップの徳川(康久)宮司に私が申し上げてるが「おかしい」と。大村益次郎の像が上野の山をにらみつけているだろう、彰義隊が立てこもった。ところが、やられた連中の子孫の政治家まで、靖国神社にお参りしている。西郷など、自分たちの祖先は祭られていないのに。そういう精神状況が、今日の日本をつくっている。
 しかし、そこから脱却するのは別に難しいことではない。自然や神々に対する畏れや共生の思想。これが日本の土着思想だ。そういうものにのっとって維新を開花させていくべきなのに、その逆をやっている。それにどう立ち向かうか。その系譜をたどる思想家がいない。葦津珍彦(あしづ・うずひこ、神道思想家)先生はもう亡くなられたが、私も学生時代、教えを請いに鎌倉まで通っていた。ああいう系譜がなくなった。もう一つは明治に起こった自由民権運動。「一君万民」の思想だが、そういうのも消えた。それで米国や先進帝国主義のまねをした。これが日本の悲劇の根源。
 「日清戦争、朕の戦争にあらず」と明治大帝がおっしゃった。この間の対東亜戦争だって、昭和天皇はやりたくなかった。だけどやらされ、そうして負けた。その意味で、長い一つの負の歴史をわれわれは背負っている。そこから脱しない限り、日本は日本にならない。西洋と同じように文明の反逆をもろに受けて、日本も沈んでいく。
 皮肉なことに、文明の反逆を象徴的に福島の原発が受けているのに、日本は原発の輸出までしている。オリンピックを招致すると総理はうそぶく。私はやればいいと思いが、今のオリンピックは商業主義に走り、アマチュアリズムがなくなっている。大きな流れの中で人類が死に絶えようとしているが、それをどう阻止するかが日本の役割。畏れと共生という土着思想で社会政策を展開しなければ。

デモも政党も無力、テロの時代へ

高橋)今はもう用心棒はやっていないのか。
亀井)用心棒をやっていたが、相手がいなくなった。おれは最後まで「誇りと責任を忘れるな、負けたりといえども」と言っていた。勝ち負けは常にあること。そんなことで誇りを捨てちゃあ駄目だ。
高橋)結局、国会議員2人ということで政党要件を満たさなくなった。
亀井)政党として満たさないから、今は政治団体だ。それにはまだ所属している。
高橋)社民党も壊滅状態で、生体反応のあるわずかな国民にとっては頼る所が見当たらない。
亀井)そうだね。だから俺は警察庁の幹部に「今のままでいったらテロの時代に入るぞ」と言ってる。頼るものがない。大衆運動でデモをやったって、政治に影響を与えられない。「反原発・脱原発」を叫んでいくら国会を包囲しても意味がない。政党も全然、意味がない。そうして自分の思いだけ沸々としてくれば、個人として行動しなければならなくなる。警察庁の幹部に「おまえたち、もうすぐ仕事がなくなるぞ。手の施しようがないから。あとは責任を取るだけだ」と。高橋清隆君あたりがテロリストにならないことを祈ってるよ。
高橋)私も何度、腹にダイナマイトを巻いて米国大使館に突っ込もうかと思ったことか。
亀井)そういう思いを持ってくるんだよ。だから怖い時代に入った。
田村)ロシアでレーニンの兄たちが似通ったことを起こした時代があったが、あのようなことになるとの予測か。
亀井)当時は衆を頼んだが、今度は衆を頼んでも事にならない。徒党を組んだって駄目だし、組めない。個人犯罪が起きて、現に起きている。家庭の中で殺し合いになっているじゃないか。「気に食わねえ、あんなの」と言って。解決策としてぶっ殺す。話し合って解決という空気でなくなっている。政治と別の次元だが、政治的にもそうなる危険性がある。大変な時代だ。
高橋)なぜ政治は悪くなる一方なのか。
亀井)文明の反逆に対して、立ち向かおうという気力を失っているから。
高橋)私は「陰謀論者」と言われるかもしれないが、そういうアジェンダが用意されているのではないかと思っている。少なくとも400年くらいのスパンで。世界のエスタブリッシュメントが欧州や米国のトップたちに命令して決めているんじゃないか。そのロボットの一人が植民地総督みたいに日本の首相になってきたのでは。だから所得が低くなっているのも日本だけじゃなく、世界的にそう。それから、どの地域も自由貿易推進。関税の壁を取り払おう、非関税障壁の言語や習慣もなくそうというのもアジェンダに入っているのでは。
亀井)アジェンダになっているというのは比喩で言ってるんだろうけど、結局、人間の欲望が進んでくると制御をなくす。畏れを失う。畏れを失うと欲望がどんどん突っ走る。そうなると、自然と弱肉強食になる。今の時代がそう。
高橋)それはトップ1%の人たちの欲望ということか。
亀井)そう。それがあとの連中をはんでいる。今、中東で起きているのが、一つの反撃だ。それも成功しにくくなっている。それぞれの地域でいわゆる反逆して指導者を倒しても、それに代わる権力をきちっと構築する力がないから混乱が続いていく。ひどい時代だ。

文明の反逆は日本が先頭に立ってかわせ

亀井)日本と欧州の違いも1つある。欧州の王は、王の末裔(まつえい)、貴族の末裔が今もいるが、発生学的には用心棒だった。これは民衆がつくった。民族と民族が攻め合いばかりやっていた。略奪し、皆殺しをやり、収奪し、お互いを奴隷化する。そうなりたくないから防衛しなければならない。その用心棒係が王だった。ところが逆に用心棒に支配されていった。民衆は強い用心棒を望み、用心棒は宗教的権威で支配していく。これが欧州の王族との支配関係だ。
 日本の場合は違う。農耕民族で、部落と部落が攻め合いはしない。だから用心棒をつくる必要もなかった。天孫降臨の神話があり、上から支配が及んだ、これが制度として、いろいろな形になった。それが天皇。最初は宗教的な権威と政治的権力と結びついた形で人民を支配していた。途中の早い時期から、政治的権力が離れた。その象徴的権威、宗教的権威だけが別になったのが日本だ。皇室は欧州の王室とは違う。
 いずれにしても両方、人間の欲望を制御できなくなり、文明の大反逆を受けている。原発だけでなく、薬害や地球温暖化など、いろんな方面で噴出し、地球そのものが壊れている。そういう現象に対して、人間の心も弱っている。今の欧州も日本と同様に、職人制度が壊れている。靴職人から手芸職人に至るまで。メイド・イン・チャイナ、メイド・イン・コリアが氾濫して。
高橋)その中国や韓国にしても、職人でなく機械が作っている。
亀井)それはそうだ。結局、あの辺りの階層は一部が上昇するが、大上昇はしない。それがある面で手厚い社会保障制度が敷かれ、働かなくてもバカンスがもらえて、ある程度の生活ができる。しかし、ある面では自立心を失っている。生きている人のプライドはどうでもいいという。生活費を国からもらえるのはフランスでもイタリアでもどの王国でもそうで、日本だけの象徴ではない。人間の尊厳や自負心を大事にするというものではなくなってきている。そういう中で、社会の活力を失っていく。機械に支配されて。だから、欧州の経済は力を失ってきている。物作りが駄目になって。
高橋)日本ではその社会保障もどんどん切り詰められていて、ひもじい思いをしている。全世界的にそうなっているのではないか。
亀井)弱者が反乱を起こさなくなっている。
高橋)起こせなくなっている?
亀井)起こしても成功しなくなっている。一時、マルクス・レーニン主義でロシアの革命が起きたし、フランスだって革命が起きた。が、結局、こうなっている。私は悲観主義者じゃない。ひっくり返すには日本の土着思想をもって世界がそういう方向で生きていけるように日本がリーダーにならなければ。リーダーにならなければいけないのに、その道を捨てて逆に奴隷になっている。
高橋)そういう思想をわれわれはもり立てて育んでいかないと。
亀井)そう、土着の。鎮守の森に集まるのは、浄土真宗の者もいれば、禅宗の者もいる。いろんな人間が集まって祭りをする、1つの自然崇拝。そういう文化が見直されなければ。世界にはさまざまな宗教支配があって殺しをやる。キリスト教とイスラムもそうだし、キリスト教の中だってプロテスタントとカトリックの間で。そうでなく、お互い、生けとし生ける者として認め合って生きていく日本の思想を世界に及ぼしていかなければ。それをやらないで、逆に世界を滅ぼしている思想にひれ伏している。安倍晋三まで。鳩山(由起夫)はそうでなくなる期待感を持っていたが、途中から変わった。
高橋)悪い方向から田中角栄以来の反転が起きるのではという期待があった。亀井さんが引っ張って。
亀井)ところが、亀井静香は笛吹けど誰も踊ってくれない存在になっているからしょうがない。
高橋)新聞が取り上げないし、テレビも出演させないから。

家族制や郵政など

高橋)最高裁が婚外子の相続に差が付いていることに違憲の判決を出した。
亀井)それは当たり前の話。生まれたときに差があるわけじゃない。
高橋)ただ、伝統的な家族制度崩壊への懸念はないか。
亀井)家族制度崩壊と言ったって、その前提として、「一君万民」だ。
高橋)法制審議会は相続差別の撤廃と夫婦別姓制度をセットで答申し、民法改正の機会をうかがってきた。
亀井)夫婦別姓は別の話で、反対だ。名前が一緒になるのが嫌なら結婚するなと言っている。アパートみたいに表札が幾つもぶら下がって。子供が選んだわけじゃないのに。
田村)安倍政権では自公が圧倒的な数になったが、野党が受け皿として持ってくるにはどうしたらいいか。
亀井)そんな力はない、どの野党にも。ないものはない。しょうがない。
田村)日本政治にとって、政治家として今一番やらなければならないものは何か。
亀井)土着の思想に戻ること。
田村)活動も土着思想に基づいた活動をということか。
亀井)だから、安倍総理も、土着の思想に基づいて世界を指導しなければ駄目。今のような米国の機嫌取りになっていては駄目だ。
田村)いよいよ10月には増税するかどうか決断される。
亀井)こんな土砂降りの、傘を差さないといけないときに傘を取り上げて裸になれというのは政治じゃない。経済がガタガタになる、今もなっているが。
田村)今の若い人に望むことは。
亀井)若い人ったって、いずれ年を取る。生意気言うなって。年寄りを年寄り扱いするなって。テメーらもいずれ年取るんだから。
田村)亀井先生には郵政改革の先頭に立ってご尽力いただいた。新しい組織になって簡易局も含めた局長、労組、現場の職員にメッセージを。
亀井)俺は柘植(芳文、前全特会長で自民党所属の参議院議員)にも言った。「申し訳ない」みたいなこと言うから、「俺は7年前に言ったろ。わずか5名の党で野党で、『必ずひっくり返すぞ、郵政見直しをやるぞ』と。『しかし、その暁に君たちの亀井静香や国民新党に対する態度はどうなるか、それも俺には分かっているよ』と言ったろ、覚えているか。大会でも言ったろ、何回も。『七人の侍』という映画を見たかと。村を救った侍が村人たちから冷たい目をして追われた。そういう運命をたどると俺は大会で言ったろ。だから、今の俺は異存はない。好きなようにやりなはれ」と。分かるだろう。その通りになった。

亀井静香―最後の戦いだ。
高橋 清隆
ケイアンドケイプレス
2012-06-20