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2014年10月

植草氏が安倍政権を両断、「弱肉強食から共生の社会へ」

 経済学者の植草一秀氏が3日、国会議員会館内で講演し、弱肉強食と戦争を推進する安倍晋三内閣の政策を批判し、対極にある平和と共生の社会を目指すべきと説いた。『月刊日本』が主催し、144人が参加した。

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膨大な資料を基に、知られざる真実を提示する植草氏。『月刊日本』のレギュラー執筆者である(2014.10.3筆者撮影)

 演題は「強欲資本の手先に成り下がる安倍政権」。憲法、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)、原発、消費税、基地という5つの重大問題を取り上げ、「主権者の意志に反することが安倍政権によって強行されている」と提起した。

 「安倍政権の政策が向かう大きな方向を一言で表せば、弱肉強食と戦争だ。日本国憲法は国民主権、基本的人権の尊重、平和主義を3本の柱に定め、今も厳然と存在する、多くの国民はこれらの理念に賛同しているはず。弱肉強食と戦争の反対側に、共生と平和という考え方がある」

戦争は憲法違反

 憲法の問題では、集団的自衛権容認の閣議決定を取り上げた。「1972年の政府見解は、外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の擁利が根底から覆されるという急迫、不正の事態に対処する場合、他に方法がない場合に必要最小限度の範囲で許されるもので、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権は認められないと明記している。1972年政府見解を用いて集団的自衛権行使容認の解釈変更を行うことにそもそもの矛盾があり、憲法改正手続きを経ずに憲法解釈を閣議決定で変更してしまう行為は立憲主義の否定そのものであり、憲法を破壊する行為だ」と批判した。

 植草氏は、「外交にも多くの国民が知らなかった真実が多く存在する」と指摘し、『日本の国境問題』孫崎享(ちくま新書)の指摘を引用。「ロシアとの北方領土、韓国との竹島、中国との尖閣諸島をめぐる領有権問題は、いずれも米国が紛争の種を埋め込んだ性格が強い。それにわれわれ国民が踊らされている」と指摘した。

 「日中国交正常化、日中平和友好条約締結時に尖閣の問題を棚上げする措置が取られた。一種の英知と呼ぶべき判断だが、日本側の発言が1996年を境に転換し、2010年の鳩山政権倒壊後に日本側が棚上げ合意を崩す形で動いてきた」と説明した。

原発は差別の構造

 原発については、責任の問題を挙げた。「原子力規制委員会が基準を定め、合格した原発を動かす。判断は電力会社と自治体に委ねる。非常に責任の所在が曖昧だ。憲法13条が定める国民の生命・自由、幸福追求の権利に対する国政上の最大尊重義務を踏まえるなら、原発事故発生の際に影響が及ぶ範囲の全ての自治体の同意を得る必要がある」と主張。安倍氏は集団的自衛権の問題で憲法13条を持ち出すのに、原発稼働では憲法13条を無視するという矛盾を示していると批判した。

 わが国の原発が地震の巣の上にあり、日本列島は地震活動期に入っているとの石橋克彦神戸大名誉教授の指摘を示すとともに、大飯原発差し止め訴訟の福井地裁判決(5月21日)を紹介した。判決はわが国既往最大の地震動が岩手・宮城内陸地震(08年)の4022ガルなのに対し、大飯原発の耐震基準が1260ガルにすぎないとして稼働停止を命令している。

 植草氏は「最後はお金でしょ」という斑目春樹元原子力安全委員長の発言と、「危険は人に押し付ける社会が許せなかった」との小出裕章京都大学原子炉実験所助教の発言を取り上げ、「原発問題には、嫌なものを押し付けて、金で解決する差別の構造がある。これがよい社会と言えるのか」と疑問を投げ掛けた。

国家主権失うTPP

 TPPについては、これまでの経緯に触れ、「日米構造協議(SII)の難航がクリントン政権時代の数値目標に引き継がれるとともに、『年次改革要望書』が登場し、郵政民営化などが推進されてきたが、これをさらに強力な枠組みに引き上げようとするもの。単なる関税交渉ではなく、米国は強制的に日本の制度を変えることを狙っている」と説明した。

 「米国が特に狙いを付けているのは農業、医療、保険の三分野。ISD(投資家対国家紛争解決)条項で日本は国家主権が失われかねない」と警告する。

 植草氏は近著『日本の真実』(飛鳥新社)で支配者による「トリック&イリュージョン(偽計と幻想)」という言葉をモチーフにした。これはTPPにも当てはまると言う。

 「2012年12月の衆院選挙のとき、自民党は『聖域なき関税撤廃を前提にする限り、交渉参加に反対する』など6つの公約を掲げた。それがいつの間にか『聖域五品目』にすり替えられた。すなわちコメ、小麦、牛肉、乳製品、砂糖である。これがトリック&イリュージョン。トラップ政治、ペテン政治だ」とやゆした。

 「ISD条項は公約6項目の1つだから、これが盛り込まれるなら日本のTPP参加はあり得ないはず」とくぎを刺す。

 日本の農業が外国資本に支配され、食糧自給率の低下や農村文化の破壊が起こると警告した。医療では混合診療の全面解禁で医療に貧富の格差が持ち込まれると危惧する。

 「安倍政権は成長戦略に医療を入れている。GDPが拡大すると言うことは、治療費が上がることを意味する。日本の国民医療費の対GDP比は米国の16%に対し、8%程度に抑えられてきた。公的医療保険外診療が拡大して米国の民間保険が猛烈な勢いでなだれ込み、金持ちしか高度な医療を受けられなくなる」

消費にとどめ刺す消費税

 消費税については、税率引き上げに反対する5つの理由を説明した。すなわち,修料阿砲笋襪戮ことがある∋続可能な社会保障制度確立の道筋が付けられてない。財政危機にあるとの財務省の説明が大うそ。し从兢況を考えていないゲ然陛床任任ない零細事業者が負担させられる——というもの。

 「野田元総理は09年8月、『シロアリ退治をしないで消費税を上げるんですか』と演説した。天下りをなくさずに増税するのはおかしいと断言したのだが、財務省は天下りを削減するどころか、全面奪還・拡張に突き進んでいる」

 「国民経済計算統計を見ると、国と地方、社会保障基金を合わせた借金は1131兆あるが、政府資産も1092兆円ある。日本の財政が倒れるような話ばっかり出てくるのは、増税をやるため。問題にすべき借金は特例国債の452兆円である」

 植草氏は、借金を放置していいと言っているわけではない。「赤字国債の発行残高はGDPの93%。高齢化が進む中、財政再建は大事なテーマだ。最終的には国民の負担も必要と思うが、まずは今ある無駄を切り、社会保障をしっかりしたものにする必要がある。弱い人だけに負担をさせない仕組みをつくることが重要だ」と持論を述べた。

 その上で、税収のいびつな構図に言及。「1990年に60兆あった税収は、09年には38.7兆に落ち込んだ。うち、法人税は3分の1、所得税は半分に減ったのに対し、消費税は3倍に増えた。それをさらに6倍に増やそうとしている。圧倒的に第1の税目になってしまう。その意味は庶民に泣いてもらうということ」と指弾した。

 法人税減税が叫ばれていることについては、「07年11月に政府税制調査会が日本の法人の負担は社会保険料負担を含めれば国際的に見て必ずしも高いとは言えないとの見解を示す文書を発表している」と指摘。一方で年金保険料や健康保険料、障害者福祉負担などが増えている事実を挙げた。

 経済状況については、今年4—6月期の実質GDP成長率が前期比年率−7.1%(改定値)と発表されたことに触れ「外需と在庫増によるかさ上げを差し引くと、年率−17.1%成長になる。売れ残りが大量発生しているからだ。見かけより実態が大きいのは例がない。まさに日本経済撃墜が発生している」と説明。

 「日本経済は年明け後、後退局面に入っている。景気が下り坂なのは、消費税増税の結果だ。問題は個人消費の低下で、前年比−5%程度、実質所得が落ちている。財布の中身が減っていて、財布のひもも開かないくらい堅くなっている。これに来年10月の消費税10%への引き上げで、さらに景気が冷え込むのは火を見るより明らか」と断罪した。

基地は埋め立て承認の撤回から

 基地問題については、沖縄県の普天間飛行場の名護市辺野古海岸への移設を取り上げた。「菅官房長官は9月10日の会見で、知事が埋め立て申請を承認した時点で決着済みと発言したのは許せない。仲井真知事も2010年の選挙で『県外に移設』と言って勝ちながら、約束を破って承認している」とやり玉に挙げた。

 「承認したのも、今年1月19日に名護市長選で稲嶺進氏が再選される直前だった。民意の判定の前に埋め立て申請を承認したこと自体がおかしい。そもそも、知事選、市長選・市議選で5回も住民はNOの意志表示をしている。原発再稼働では地元自治体の同意が必須と言いながら、基地では地元の不同意を無視するのか」と疑問視した。

 「基地はまず、仲井真知事の出した承認を撤回または取り消ししなければ始まらない。翁長雄志(おなが・たけし)さんは知事選に出馬する以上、明言する必要がある」と訴えた。「選挙公約を明示し、当選後はそれを厳守する。これが日本政治を再生させる条件だ」と植草氏。

弱食強肉と平和追求へ

 最後に、これからの最大の問題は人口減少・少子化だと指摘。予算は社会保障などに代表されるプログラム支出と財務省利権の源泉になる裁量支出に分かれるが、鳩山政権時代、子ども手当や高校授業料無償化、高速道路無料化、農家補償などのプログラム支出拡大を財務省が「ばらまき」と呼んで悪宣伝したことを紹介した。

 続いて、社会保障給付を機能別に分類した国際比較のグラフを示し、わが国の「失業」「家族」の分野が極めて低い事実を指摘。「『家族』は子育てや教育に充てられる部分。子育てや教育に対する公的支援が世界で最も貧困である。他方で安倍政権は新しい貧困問題、すなわち国民の大多数を下流に追い込む弱肉強食政策を推進している。ハゲタカに日本が食い尽くされ、中間層が没落し、37%が非正規雇用、1060万人超がワーキングプアに追い込まれる政策路線が少子化を加速しているのであり、この政策路線を維持して少子化対策というのはブラックジョークでしかない」と両断した。

 その上で、植草氏は「弱肉強食から、弱食強肉の方向に流れを変えるべきではないか。全ての国民に保障する生活水準の最低レベルを引き上げる必要がある。外交も戦争ではなく、平和追求に軸足を定めるべきである。そのためには多くの国民の賛同が必要だ」と向けると、万雷の拍手を浴びた。


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「植草事件」の記事を復元しました



『月刊日本』が街頭演説、言論封殺憂える=有楽町で

 自主独立を訴えるオピニオン誌『月刊日本』が9月29日午後、東京・有楽町駅前で街頭演説を決行した。南丘喜八郎主幹や木村三浩一水会代表らが、安倍政権やマスコミの対米従属路線を批判した。

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一番手の南丘主幹。原発事故も国民生活の疲弊も対米追従に原因があると訴える(2014.9.29筆者撮影)

 同誌の「辻説法」は4回目。安倍政権の暴走ぶりを背景に、最多となる13人の弁士が通行者に訴えた。南丘主幹、山浦嘉久論説委員、坪内隆彦編集長、編集スタッフの牧田龍、杉原悠人、小俣博照、高野アズサ、中島祥江のほか、応援として木村代表と稲村公望前日本郵便副会長、橋本久美元豊島区議、哲学者の山崎行太郎、高橋清隆がマイクを執った。司会は阿部利之元中央区議会議員。

 初めに南丘氏が、原発事故や慰安婦をめぐる朝日新聞たたきに言及。「ねつ造記事を載せた朝日新聞はとんでもない。十分な責任を取らなければならない。しかし、それを責める産経や読売など、ほかのマスコミが正しいのか。安倍政権のお先棒を担いで、わが国を戦争に巻き込もうとしているではないか」と提起。言論を封殺する風潮を危惧し、「マスコミは自ら自分たちの首を絞めている」と批判した。

 山浦氏は「近代国家には3つの自主権がある。司法裁判権の独立、通貨発行権の独立、軍の統帥権の独立である。しかし、わが国の憲法はGHQが作ったもので、本来の司法独立権に大きく逆らう。そして今度は、集団的自衛権の容認によって、自衛隊の統帥権すら米国に握られる危険性がある」と指摘。「米国が地上部隊をシリアに派遣した場合、米国がわが国の自衛隊に派遣要請する可能性はゼロでない」と、安倍政権のなし崩し的な同胞献上をけん制した。

 木村氏はロシアのプーチン大統領の来日延期に触れ、「安倍政権は米国によるシリア空爆を支持したが、これは国益を大きく損なう。クリミア半島編入直後の4月、日本は経済制裁を課した。額が少ないから影響ないという人がいるが、こうした姿勢を見せることが北方領土問題解決の糸口を封じてしまう。日本は自主外交を展開しなければならない」と訴えた。

 同誌では今後、月2回のペースで「辻説法」を実施したいとしている。次回開催日は未定。
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反ジャーナリスト。金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了。ローカル新聞記者、公益法人職員などを経て、2005年から現職。『週刊金曜日』『ZAITEN』『月刊THEMIS(テーミス)』などに記事を掲載。  著書に『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)『亀井静香が吠える』(K&Kプレス)『亀井静香—最後の戦いだ。』(同)『新聞に載らなかったトンデモ投稿』(パブラボ)。           

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