高橋清隆の文書館

 当ブログでは、マスメディアが伝えない情報や事象分析を発信しています。
新聞やテレビがつくる「社会標準」から解放されれば、人類は本来の豊かな人生を送れると確信します。

2015年04月

本紹介『積極財政宣言—なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか—』島倉原(新評論)



 日本経済復活の会でお世話になっている畏友、島倉原(しまくら・はじめ)さんが本を出しました。積極財政論の立場から、経済の長期停滞の原因と巨大金融危機の発生メカニズムを解明。アベノミクスが新自由主義に基づく誤った経済政策であることを論証しています。

 「失われた20年」から脱する経済財政政策運営の処方箋として採用する内閣の登場が待たれます。

積極財政宣言 [ 島倉原 ]
積極財政宣言 [ 島倉原 ]

【書評】『33年後のなんとなく、クリスタル』田中康夫(河出書房新社)——斜陽国家日本に差す一筋の光——

 1980年に「文藝賞」を受賞した『なんとなく、クリスタル』(通称『もとくり』)の続編で、昨年末発表された。主人公は女子大生「吉野由利」から、長野県知事や参・衆院議員を務めた「ヤスオ」に変わっている。著者とまがう主人公が50代になった「由利」たちと再会する私小説で、処女作の種明かしになっている。



 『もとクリ』同様、小じゃれたお店や料理、ワイン、音楽が作品中にちりばめられ、「なんとなく気分のいい生き方」が描かれている。ただし、著者の政治家経験が社会への一層鋭い視点を与えている。例えば、子宮頸がんワクチンや消費税増税、TPP参加への批判的記述がある。浚渫(しゅんせつ)を行わない砂防事業や大量の移民政策に異を唱え、放射能汚染の深刻な実態を告発する。

 作品の最大の特徴は、『もとクリ』同様の膨大な注にある。政治・社会問題に関する主張は、ここで語られている。消費税と放射能汚染の注は各1ページ強、「述べる人たち」に付された移民政策に関する注は約2ページを割く。

 郵政事業への言及もある。「ヤスオ」が応募作品の投函を回想する場面で、次のようにつづる。

 「ちなみに三公社五現業(*)と呼ばれていた当時、民営化後の今とは違って非集配局でも土曜日は“半ドン”(*)営業で窓口が開いていて、近隣住民から重宝がられていたのだった」

 注“半ドン”には、「実は郵政民営化前の方が consumer orientedだった一例」とある。

 驚いたのは、物語の終盤、私の敬愛するK衆院議員が登場すること。東北で大地震が起き、「与党会派を組んでいた老練な政治家」に連絡を試みる。「『自分はハトを守るタカだ』と語り、エルネスト・チェ・ゲバラ(*)の写真を事務所に掲げていることでも知られる元警察官僚の彼」と表現しているではないか。

 東日本大震災直後、国民新党は官邸に「ヘリコプターによる支援物資投下」など「4項目の緊急提言」を申し入れている。発案したのは田中氏かもしれない。菅政権は採用せず、マスコミも一切報じなかったが。

 『もとクリ』の最後は、未来に対する暗い予感で終わっていた。「私は、まだモデルを続けているのだろうか。30代になっても、仕事のできるモデルになっていたい」と「由利」に語らせているからだ。巻末の「人口問題審議会『出生率動向に関する特別委員会報告』」が追い打ちを掛ける。

 しかし、今作品、通称『いまクリ』の最後は違う。少子化は予測以上となり、構造改革による貧困化が国民を苦しめている。それでも登場する女性たちは心地よい暮らしを楽しみながら、隣人や世界に対して「出来る事を出来る限り」やっている。これこそクリスタルな生き方ではないか。

 「僕もまた、その光に向かって歩み出す」

 末文である。目の前の薄暗がりを夜明けにするか、夕暮れにするか。われわれ一人ひとりの態度にかかる。閉塞感が覆う時代に、一筋の希望を抱かせる小説である。



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       高橋清隆

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著者プロフィール


反ジャーナリスト。金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了。ローカル新聞記者、公益法人職員などを経て、2005年から現職。『週刊金曜日』『ZAITEN』『月刊THEMIS(テーミス)』などに記事を掲載。  著書に『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)『亀井静香が吠える』(K&Kプレス)『亀井静香—最後の戦いだ。』(同)『新聞に載らなかったトンデモ投稿』(パブラボ)。           

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