高橋清隆の文書館

 当ブログでは、マスメディアが伝えない情報や事象分析を発信しています。
新聞やテレビがつくる「社会標準」から解放されれば、人類は本来の豊かな人生を送れると確信します。

2015年08月

【書評】『黒潮文明論−民族の基層と源流を想う−』稲村公望(彩流社)

 「文明地政学協会」が発行する旬刊誌『道』に連載中の「黒潮文明論」を第135回分までまとめた本である。元日本郵便副会長の稲村公望中央大学客員教授が黒潮の流れを手がかりに、日本列島各地の習俗・文化の淵源を探求する。



 1編の分量は2200字程度だが、扱う領域は広く、考察は深い。随筆にも見えるが、民俗学であり、紀行文であり、政治学でもある。第66回までまとめた『黒潮文明論−ふるさとは心も姿も美しく−』(郵研社)が2012年に出ているが、今回の本はそれを含む。

 著者の行動力は、増すばかりだ。第67回以降、クスノキやタブノキの北限を東北に訪ね、縄文の痕跡を追って北海道の礼文島にまで足を運ぶ。クスノキは福島県いわき市の小学校の校庭にあった。

 「神社仏閣ならいざ知らず、学校の庭に残っているのは珍しいが、校庭の南の角に、占領軍の言いつけを無視して二宮金次郎の銅像も残っていたから、神様の依り代になるクスノキを切らずに残した心意気の人々が地元にいたようだ」

 タブノキの北限は三陸沿岸だったが、情報を頼りに新潟県村上市まで訪ね、タブノキの匂いを求めサケが海から帰ってくるとの伝承や、林道に「魚つき保安指定林」と書かれた明治時代の看板があることを紹介している。

 埼玉県越谷市の久伊豆(ひだいづ)神社の境内に立派なタブノキがある。同市内で整形外科を営む徳之島出身の親戚筋に病棟の落成式に呼ばれ、著者は「タブノキのように地域社会に深く根を下ろし、仁術満堂となることを祈る」とあいさつした。

 「越谷市相模町にある大聖寺の境内にもタブノキの大木があり、市の天然記念物になっている。越谷は外来者を余所者と排除しないで歓迎する気風に富んでいると、地元ロータリークラブの会員から聞いた。タブノキは黒潮文明の南方から出発して、関東平野に根付くべく元荒川を遡(さかのぼ)り、久伊豆神社の森に根を下ろした」

 礼文島では、広大な文化圏の存在に気付かされる。日本列島最北端の縄文遺跡として知られる船泊遺跡には、墓抗が24基見つかっており、宝貝や枕貝の装飾品、翡翠(ひすい)や鳥骨菅玉(くだたま)などが葬時に遺体に装着された状態で出土している。

 「イモガイや宝貝、そして枕貝は、北海道にはむろん生息していないし、翡翠も新潟産のものであることが分かり、更には礼文島の土でつくられた土器などが道南の奥尻島で見つかったことなどを考えると、黒潮にのって交易が広範に行われていたことの証拠」

 アイヌの織機は八丈島や沖縄本島のそれと同じだという。与那国島や西表島にもアイヌ語につながる地名があり、徳之島ではフクロウのことを「チクフ」と言うが、これはアイヌ語と全く同じだと指摘する。

 奄美や八丈島に見られる高倉の穀物倉庫がアイヌの集落にもあったことに驚かされた著者は、次のように続ける。

 「アイヌは北海道や樺太から八丈に、そして奄美から沖縄、与那国に連なり、遙か南の今のインドネシアの多島海の海底に沈んでいるに違いないスンダランドに繋(つな)がる黒潮の民の一員ではないか」

 
 日本文化の底流を見詰める旅は、奄美群島の徳之島出身の稲村氏にとって自身のアイデンティティーを確認する旅なのだろう。「ヤマトンチュ」の私とて、蝦夷や朝鮮半島、海洋族の混血かもしれない。ただし、黒潮の民であることだけは確かだ。

 「田端義夫の歌う『島育ち』に朝はにし風、夜は南風とあるが、そのにし風は北風のことで、はえの吹く夜は眠られぬともある。(略)浜辺で潮騒を聞きながら、月が昇るのを待って夕涼みをする時の三味線の音は月影に吸い込まれるかのようだ」

 田端義夫ばりに「オーッス!」とあいさつしてくれる稲村氏に親近感を抱くのは、同じ社交性の遺伝子を持つからに違いない。

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【書評】『黒潮文明論』稲村公望(郵研社)

和解ブログを立ち上げました

 当ブログ別館としてブログ「和解の部屋」を立ち上げました。和解体験を1人でも多くの人と共有したいと思ったからです。きっかけは昨年大きな和解体験があったことと、社会を本当に変えるには、精神が変わらなければならないとの思いが強まっていたからです。

 和解体験をお持ちの方は、ぜひ情報提供をお願いします。併せて別館ブログの紹介およびリンクを頂ければ光栄に存じます。

「和解の部屋」
http://blog.livedoor.jp/wakaidego/

討論Bar‘シチズン’での発表・討論動画

 9日、大阪の「討論Bar‘シチズン’」で開かれた天野統康さんの講演に飛び入り出演した際の動画がアップされました。01:32:56あたりから私が登壇し、「民主主義を疑え」の題で講釈しています。安保法案自動可決にもどかしさを感じる人にぜひ、ご覧いただきたいと思います。

http://www.ustream.tv/recorded/70433244


郵政民営化の本質とは何か〜ハゲタカによる国民資産略奪を前に〜

 ブログ『東京義塾』に郵政民営化の真相を暴露する秀逸な論考が掲載されていたので、紹介する。世界各国の郵政事業の現況を紹介するとともに、10月にも控える日本郵政グループ3社の株式上場を批判している。

http://tokyonotes.cocolog-nifty.com/blog/2015/08/postal-restorat.html

 中でも目を引くのが、大失敗したニュージーランドの民営化をわが国のマスコミはいまだに成功例として賛美していることや、同国の民営化を推進したマッキンゼー社は民営化の仕掛け屋として世界中で暗躍していること、欧州で民営化したのは少数で、株式公開しても国が最後の拒否権を担保していることである。

 わが国に民営化を押し付けた米国は国営政府機関として存続している。まさに二重基準であると指摘する。日本郵便は春、豪州の物流企業を49%のプレミアを付けて買わされた。

 郵政事業を取り巻く内外の状況とわが国における民営化論議の経緯を踏まえた上で、日本郵政グループの民営化を「日本国民が営々と蓄積した資産の支配を、タチの悪い外国勢力の虚偽宣伝の圧力と恫喝に屈して譲り渡すことでしかなかった」と総括している。

 戦後日本人の汗の結晶である郵貯・簡保資金の行方を左右する民営化。マスコミが全く取り上げない上場問題の本質を知るために、ぜひ同論考をご一読あれ。

討論Bar‘シチズン’に出演します

 8月9日15時から(18時まで)大阪の「討論Bar‘シチズン’」で開かれる天野統康氏の講演会に飛び入り出演します。後半、「民主主義を疑え」の題で発表と討論を行う予定です。関西在住でお時間のある方はぜひ、お越しください。

http://ameblo.jp/griripon/entry-12054437398.html
新聞に載らなかったトンデモ投稿
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亀井静香が吠える 痛快言行録
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       高橋清隆

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反ジャーナリスト。金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了。ローカル新聞記者、公益法人職員などを経て、2005年から現職。『週刊金曜日』『ZAITEN』『月刊THEMIS(テーミス)』などに記事を掲載。  著書に『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)『亀井静香が吠える』(K&Kプレス)『亀井静香—最後の戦いだ。』(同)『新聞に載らなかったトンデモ投稿』(パブラボ)。           

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