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書評

【書評】『低金利時代、低迷経済を打破する 最強の資産倍増術』植草一秀(コスミック出版)

 政治経済学者の植草氏による最新の投資指南書である。困難な時代を生き残るための資産運用技術の習得を通じ、内外政治経済情勢に明るくなるきっかけを与えてくれる良書だ。


 同書は植草氏が月2回発行する会員制レポート『金利・為替・株価特報』(TRIレポート)の年次版で、2013年から出版されている(当初はビジネス社刊)。年間8%の利殖によって、9年で資産を倍にすることを目標にする。堅実な手法を旨とし、一攫千金(いっかくせんきん)を餌にする投資本と一線を画す。

 構成は「老後資金が2000万円足りない!?」「低迷する日本経済」「老後に備える資産倍増術」「資産家になるため極意」「2020年の世界と日本」の5章と付章「厳選 日本株25銘柄」から成る。付章の参考銘柄の的中率には、TRIレポートの毎3銘柄や「TRI政経塾」の毎8銘柄同様、目を見張るものがある。

 第1章「老後資金が2000万円足りない!?」の最終節に「5つの資産倍増コース」が示されている。すなわち、。蕋庁紕達錙淵ぅ妊魁砲叛冦NISA(ニーサ)の堅実コース株主優待銘柄の有効活用資産分散と個別株式投資こ価指数先物取引の活用ズ跳堯金、FX、商品等の先物取引である。

 は投資運用戦略上の中核であり、第4章「資産家になるため極意」中の「最強・常勝五箇条の極意」が心強い手引きになる。「五箇条」とは「損切り」「逆張り」「利食い」「潮流」「波動」のこと。これを意識するだけで、成果はだいぶ違うのではないか。

 同書の内容は、2つに大別できる。すなわち、国内外の政治経済分析と、投資技術の解説である。前者では、グローバル資本が世界各国の政治を牛耳り、戦争と弱肉強食路線の政策を国民に押し付けている現状を冷ややかに描く。

 「今の日本政治の支配者は巨大資本だ。米国を支配する巨大資本が日本政治をも支配している」「米国の支配者は日本において、官僚機構、日本の大資本、利権政治勢力、メディアを支配下に置いて、彼らに都合のいい政治体制を生み出し、維持し続けてきた」(p.107)

 その上で、「私たち主権者のための政治を実現するには、この壁を乗り越えるしかない。(中略)この方向を目指しつつ、足元では悪政、暴政の継続を前提に、我が身を守る方策を模索するしかない」との立場を明確にしている。私はこのくだりを読み、麻生太郎財務相の「老後の資金を考えたことあるか」発言をやゆするツイートを連想した。

 「2000万円貯めるより、政権交代した方が早い」

 投資術を一から覚えるより、倒閣運動に尽くした方が気が楽だが、私の生来の勉強嫌いからの逃避かもしれない。

 気になったことが幾つかある。iDeCoとNISAの活用は著者の指摘するように「典型的な官と業の癒着」(p.38)だから、私は絶対に活用するものかと思っていた。政府の社会保障政策の失敗の尻ぬぐいのため、なぜわれわれのわずかな資産を金融賭場に供出しなければならないのかと。植草氏の答えは次の通りだ。

 「しかし、私たちの老後の生活を守るためには、こうした背景を持つ制度であっても税制上の恩典がある以上、利用を検討せざるを得ない。『白いネコでも黒いネコでもネズミを取ってくるのがいいネコだ』という言葉が知られるが、この感覚で考える必要がある」(p.39)

 いまひとつの懸念は、コロナウイルス禍(か)とそれによる経済損失が広がっても、「堅実コース」が損失を生むことはないかという点である。今後詳しく勉強していきたい。ただし、本書は多様な投資方法の活用を説いており、先物指数取引もその一つ。「相場の上昇だけでなく、相場の下落局面でも利益を確保することが可能になる」(p.133)と記す。

 上海総合指数の動きは奇妙だ。2019年1月以降、中国株価は米中関係の動向に左右される。しかし、同5月5日のトランプの強硬発言(トランプショック1)や同8月1日のトランプショック2による下落、同12月13日の米中第1段階合意による上昇の少し前に指数が動いているのが確認できる。

 著者は「上海市場の先見能力が高いか、上海市場に機密情報が流入している可能性がある」(p.204)と指摘する。

 後書きにある「知的な活動としての資金管理のための防衛術」(p.222)の語句は考えさせられた。私は植草氏が毎年出す投資本を読んだり、「TRI政経塾」に参加するたび投資の必要性を認識しながら、二の足を踏んできた。恐らく、金もうけを心のどこかで反知性主義的行為と見下していたのかもしれない。第4章の終わりに、次の記述がある。

 「個別株式投資においては、個人のベースでアクティブ運用を試みる。適切な運用手法を用いれば、アクティブ運用を行う投資信託商品よりも高いリターンを得ることも可能になる。ここに資金運用戦略の醍醐味(だいごみ)があるとも言える。投資資金運用は優れて知的創造的な活動なのである」(p.135)

 実際、同書に教えられたことも多い。米軍によるイランのソレイマニ司令官殺害と中東の近代史や、米国民主党内の勢力図、香港暴動と台湾総統選挙の関係など。

 2020年は庚子(かのえね)の年。算命学の研究者でもある著者は、「激動のなかにも、これまでの流れが新しい流れに転換する、大きな第一歩を印(しる)す年になる空気が感じられ始めている」(p.4)と展望する。同書の理念を胸に、投資を通じ、見聞を深める年にしたい。

山本太郎がほえる〜野良犬の闘いが始まった
高橋清隆
NextPublishing Authors Press
2020-01-20

【書評】『ネット右翼vs.反差別カウンター −愛国とは日本の負の歴史を背負うことだ!』山口祐二郎(モナド新書)

Net IB News https://www.data-max.co.jp/article/32927

 東京・新大久保や川崎などでヘイトスピーチに対するカウンター活動を展開してきた著者が、自身の壮絶な体験を明かすとともに、ヘイトが生まれた背景や右翼団体の現状、民族運動の在り方などについて語っている。巻末には、ジャーナリスト安田浩一氏および版元代表で部落解放運動家の小林健治氏との対談を収める。


 著者の山口氏は現在、右翼・左翼の混合集団「憂国我道会」の会長。米軍横田基地や米国大使館前での日本の自主・独立を求めるデモで知己を得て、6月に「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の高田誠(通称・桜井誠)会長(当時)らを相手に起こした民事裁判でその勇姿を見たことがあった。

 在特会が新大久保で頻繁にヘイトデモを行うようになったのは、2012年ごろ。「お散歩」と称してコリアンタウンを練り歩き、韓国人店員に暴言を吐き、唾を飛ばし、看板を壊す。

 「ウジ虫、ゴキブリ、朝鮮人」
 「朝鮮ババア! ブスブスブス!」
 「死ね死ね死ね!朝鮮人!」(p.67)

 怒りに震え、涙を流す若い女性もいたという。

 民族運動に関わってきた山口氏だが、何とかしたい気持ちが抑えられず、翌年2月に結成された「レイシストをしばき隊」に参加。思想や政治的立場を超え、差別を許さないという一点で集まった集団である。

 ヘイトスピーチが生まれた背景には、ネトウヨの台頭があるという。そこに、既存の右翼が武力装置としてそこに荷担したと山口氏は分析する。「スピーチ」と言っても、実態は差別的憎悪扇動であり、ヘイトクライムの一形態にすぎない。

 巻末の対談で安田氏が述べるよう、そもそも「日本の戦後右翼は体制の補完者であり、本当の意味での反体制としてあったことは一度もない」(p.251)のかもしれない。同書は児玉誉士夫・岸信介・笹川良一の巣鴨釈放トリオが暴力団を従米体制維持に使ってきた経緯も紹介する。

 左翼は生来の警察不信から、ヘイト集団から暴行を受けても届けを出さない。「憂国我道会」という名称を採用したのは警察を意識した面もある。しかし、普通の人がカウンター活動の現場を見たら、混乱するだろう。自ら被差別部落出身と称する作家・宮崎学氏さえ、「誰が、どういう意志で闘ってくれとるんか」(p.286)と感嘆したとのこと。

 本来、右翼は「一君万民」の下、日本人は全て平等と考えるはず。さらに山口氏は、「西洋列強の植民地主義に抑圧されているアジア各国の民族を尊重する一面があったのは、紛れもない事実だ」(p.94)と強調する。

 「カウンターの人たちを見て、カタギでもここまでやるんだと勇気をもらった。弱き者を助ける任侠の世界は、ここにあると思ったんだ」(p.79)

 反差別の武闘派集団「男組」の組長、高橋直輝氏の言葉だ。

 山口らは2014年8月の終戦記念日、靖国参拝後に東京・飯田橋の居酒屋で在特会やその友好関係にある「純心同盟本部」らのメンバーと鉢合わせし、悲惨な集団暴行を受ける。カウンターたちは荒ぶる気持ちを抑え、一切手を出さなかった。これが高田会長の辞任や「純心同盟」の解散、2016年のヘイトスピーチ解消法の制定につながった。

 山口氏の影響で、ヘイトから足を洗って友人となった青年の話も紹介されている。高橋氏はその後、沖縄に渡り、米軍基地反対運動に身を置く。対米従属と沖縄差別が集約されているからだ。7カ月近い長期拘留の果て、ぼろぼろになって帰らぬ人となる。

 共に獄中生活を繰った沖縄平和運動センタの山城博治議長の言葉が泣かせる。

 「権力に目を付けられ、つぶされた。彼が愛した弱き者、差別される者に未来があるよう、私たちが頑張ることが遺志に応えることになる」(p.207)

 同書を通して心打たれたのは、カウンター活動家たちの共感力である。当事者でないのに、目の前に起きている理不尽に耐えきれないという感情が行動に導いた。読み終わって、同志たちの関係をうらやましく思えた。

 私には彼らのように面と向かって闘う勇気がない。しかし、大切なものを守ることでつながる美しい心があることを教えてくれた貴重な一冊である。皆がこの心に気付けば、世界はどんなに平和になるだろうか。

■関連記事


◆◆ネット右翼vs.反差別カウンター 愛国とは日本の負の歴史を背負うことだ! / 山口祐二郎/著 / にんげん出版
◆◆ネット右翼vs.反差別カウンター 愛国とは日本の負の歴史を背負うことだ! / 山口祐二郎/著 / にんげん出版

【書評】『25%の人が政治を私物化する国〜消費税ゼロ・最低賃金1500円で日本が変わる〜』植草一秀(詩想社)

Net IB News https://www.data-max.co.jp/article/30680?rct=nation

 第2次安倍内閣が進める政策の真相を暴いた植草氏の新著である。国の壊れる速度を追い越すため、主権者である国民に一刻も早い覚醒と適切な投票行動を求めている。


 同書は3部構成になっている。すなわち、メディアと教育の問題を扱う第1章「あなたもすでに騙(だま)されている」、国民生活を破壊する政治への処方箋を書いた第2章「『私物化された政治』を止める5つの改革」、占領体制の続く戦後のわが国を分析した第3章「日本を蝕(むしば)む5つの深層構造」である。

 安倍首相は自身の経済政策について、有効求人倍率の上昇や雇用の増加などの実績を強調し、マスメディアはこれを「アベノミクス」ともてはやす。しかし、第2次安倍内閣発足後の7年間に増加した雇用の4分の3は非正規労働者である。

 経済を評価する最重要指標は実質国内総生産(GDP)成長率である。第2次安倍内閣発足後の実質GDP成長率平均値は+1.3%。一方、「悪夢の民主党政権」(安倍首相)のそれは+1.7%。東日本大震災による低迷を含めての値である。

 経済全体が低迷している中で雇用者の数が増えれば、労働者の取り分、つまり労働分配率は低下する。実際、6年半の間に日本の労働者の1人当たり実質賃金は5%も減った。

 2016年、実質賃金が小幅プラスを記録したが、これはデフレに回帰したおかげである。デフレからの脱却を目指す安倍内閣がインフレ誘導に失敗したことが幸いしたにすぎない。

 政府は2018年1月、実質賃金の算出方法を変えた。参院選をにらみ、従来より数値が高く表示されるようにしたためである。

 破壊的状況への処方箋として、著者の植草氏は5つの改革を示す。すなわち、〆把汰換餔賣В隠毅娃葦澆亮存宗↓⊂暖饑杷兒漾↓L臼腸修鬚笋瓩襦↓TPPプラス交渉をやめる、ゥ廛蹈哀薀犹拿个陵住司埓に——である。

 とイ亡悗錣襪、植草氏によれば「小さな政府」には3つの類型がある。1.民営化、2.社会保障支出の排除・圧縮、3.利権支出の排除、である。現在、わが国で進められている小さな政府は1と2の政策であるとした上で、次のように分析する。

 「極めて不可解に思われるのは、公的事業の営業権、独占事業の利権を民間に供与する意味での小さな政府に賛同し、同時に、社会保障を切り込むという意味の小さな政府に賛同する者が、政府の利権支出を切り込むという意味の小さな政府には、強く反対するケースが非常に多いことだ」(p.87)

 国からの財政支出は、一般会計と特別会計を合わせ重複分を差し引くと約139兆円。うち90兆円が社会保障関係の支出、それ以外の政策支出が50兆円である。前者を「プログラム支出」と呼ぶ。後者の「利権支出」の排除こそ、日本の財政構造改革の究極の課題だと指摘する。

 「プログラム支出」については、年金や高齢者医療、介護のほか、子育てや教育、生活保障、障害者保護に支出のウエートを移すべきだと説く。

 ,筬◆↓い覆匹鮓た読者諸賢は、山本太郎氏率いる「れいわ新選組」の緊急政策と重なることにお気付きかもしれない。山本氏は植草氏に少なからぬ影響を受けていると思われる。
2018年4月19日の「オールジャパン平和と共生」学習会でこれら政策を「シェアノミクス」と名付け、発表している。

 同書は参院選前の6月までに書かれたが、前書きに次の表現で期待を寄せている。

 「山本太郎参議院議員が新しい党をつくる試みに動き始めた。日本政治に大きな嵐を呼び込むチョウの羽ばたきになるかもしれない」(p.15)

 消費税に代わる財源として所得・法人の両税再強化のほかに、株式の配当による分離課税の税率を20%から40%に引き上げることや「利権支出」の2割カットで各10兆円が捻出できると提言している。

 山本氏が今回の選挙演説で連呼した語句に、「今の日本に欠けているのは愛と金」というものがある。植草氏は世の中に重要な要素として、かねて「愛と誠」を口にしていた。その一端が、いじめ問題への対処に見られる。

 「憲法が定めているのは子女に普通教育を受けさせる義務であって、子女に学校教育を受けさせる義務ではない」(p.209)
 「普通教育を実践する場として、家庭やフリースクールなどを明確に位置づけることが必要だ」(p.211)

 全ての国民が愛に裏打ちされた同書を読めば、国民生活が破壊される速度を追い越せるだろう。

25%の人が政治を私物化する国 消費税ゼロ・最低賃金1500円で日本が変わる (詩想社新書) [ 植草一秀 ]
25%の人が政治を私物化する国 消費税ゼロ・最低賃金1500円で日本が変わる (詩想社新書) [ 植草一秀 ]

【書評】『国家はいつも嘘をつく−日本国民を欺く9のペテン−』植草一秀(祥伝社新書)

 安倍晋三内閣という現犯罪政権からの護身術を伝授した新刊書である。「平和・安全法制」「テロ等準備罪」「働き方改革」など、甘い言葉と裏腹に、どれだけの悪法が作られてきたか。身を守るとは、真実を知ることにほかならない。


 前書きで著者は、「国家はいつも嘘(うそ)をつくことを、肝に銘じなければならない」と説く。そうして公然と吐かれたうその事例を挙げていく。具体的には「アベノミクス」「民営化」「働き方改革」「2020東京五輪」「日航ジャンボ機123便」「平和安全法制」「刑事司法」「TPPプラス」「消費税で社会保障」の9つを解説する。

 「騙(だま)されないためには、騙しの手口を十分に知ることが必要だ。国家はどのような手口で私たちを騙してきたのか。その事実をしっかり検証することが、国家権力による詐欺被害から身を守る術(すべ)になる」(p.10)からである。

 ここでは、「TPPプラス」についてだけ触れておきたい。著者は「TPP交渉差止・違憲訴訟の会」の呼びかけ人の一人でもあり、法廷で国を相手に違憲性を証言してきた。

 皆さまご存じ、「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない。日本を耕す!! 自民党」の2012年総選挙用ポスターや公約6項目を触れ回っての政権横領を告発。重要5品目のうち「聖域として、関税引き下げの対象から除外された品目」もゼロだった。

 続いて、参加で唯一メリットが想定された日本車の対米輸出関税率も、日米並行協議で乗用車が2.5%を14年間、トラックは25%を29年間一切下げられないことが決まった。「このようなふざけた条件を受け入れてTPP交渉への参加を決めた安倍内閣は、一体何を考えていたのか」(p.204)と酷評する。

 山田正彦元農水相も『タネはどうなる?!−種子法廃止と種苗法運用で−』(サイゾー)で指摘しているが、米国が離脱したら無効になるとしていたこの付属文書は、今も生きている。2017年12月9日の国会で、河野太郎外相が「日本が自主的に決めたことの確認なので、TPPの発効にかかわらず自主的に実行する」と答弁している。

 著者は、「日本の国益、日本の主権者の利益を完全に放棄していることが鮮明に浮かび上がる」と嘆き、この推進は「主権者に対する背信行為」と指弾する。

 「TPPプラス」とは、TPPおよび類似するメガFTAの総称で、グローバル資本の利益を極大化するために推進されている。その象徴がISD(投資家対国家間の紛争解決条項)であるという。「一国の法体系を破壊するもの」(p.210)で、「日本は主権を喪失する」(p.207)と。

 それにしても、安倍政権誕生後、悪法のオンパレードが続く。安保法制や秘密保護法、憲法改正、種子法廃止、水道法改正も根っ子は同じなのではないか。すなわち、同書でも頻繁に登場する「グローバル資本」による独裁である。種子企業や水道屋の向こうには、戦争屋と金貸しが控える。

 終章は「何が国家の嘘を許しているのか」と題し、「刑事司法の不正支配」「メディアの不正支配」「主権者の緩さ」を挙げる。刑事司法の不正支配に関しては、著者の植草氏自身が2度のでっち上げ逮捕で表舞台から抹殺されていて、説得力を感じる。

 メディアの不正支配では、巨大資本が牛耳る大新聞とその系列の民放、時の内閣が実効支配するNHKによって構成される16社体制を挙げ、そのゆがみを指摘する。同書を出したのは、まさにこれに阻まれた情報を国民に届けるためと考える。

 電通過労死報道が「働き方改悪を強制制定するための手段」(p.259)で、「消費増税では財政再建と社会保障制度維持のための施策という真っ赤な嘘」(同)との記述を見て、多くの事例を連想した。私はあらゆるマスコミ報道は政治宣伝だと考え、都度のニュースが何のために見せられているのかを記事や動画で解説してきた。

 山田氏は前掲の書で、2017年3月に種子法廃止法案が審議されていた時期、テレビはモリカケ報道一色に染まっていたことに触れ、スピン疑惑を示唆している。目下のゴーン・日産会長逮捕報道も宣伝ではないのか。GHQが創り、田中角栄や小沢一郎、植草氏を起訴してきた東京地検特捜部が善良な機関であるはずがない。高い利潤を貢ぎ続ける日産をルノーから取り上げようとする別の巨大資本(ビッグスリー?)の策動か。もっと大きな視点では、株主利益をさらに拡大する(経営者・労働者利益を最小化する)法整備を推進するためではないのか。

 緩い主権者を覚醒するため、著者は「全てを疑え」と呼び掛ける。安倍首相が「共産党と共闘するんですか!」「民共共闘に投票するんですか!」と挑発するのはなぜか。それは反安倍陣営を2つに割るためである。過去2回の総選挙は、いずれも反自公の得票数の方が多い。自民党は17%台の得票しかなかった。

 共産党を含めなければ、反自公は勝てない。それ故、著者は「オールジャパン・平和と共生」をウェブ上に立ち上げ、25%運動を展開する。「主権者と、基本政策を共有する政治勢力が大きな連帯を形成して、候補者の一本化を実現すれば、必ず日本政治を刷新できる。これが『国家の嘘』を打破する決定打になるはずだ」(p.257)と。

 犯罪政権のプロパガンダに乗せられて身ぐるみはがされたくなければ、同書を一読することを勧める。

■関連サイト
植草一秀の『知られざる真実』
「オールジャパン平和と共生」公式サイト

国家はいつも嘘をつく --日本国民を欺く9のペテン [ 植草 一秀 ]
国家はいつも嘘をつく --日本国民を欺く9のペテン [ 植草 一秀 ]

【書評】『タネはどうなる?!−種子法廃止と種苗法運用で−』山田正彦(サイゾー)

 山田正彦・元農水相による食と安全の警告書。4月に主要農産物種子法(種子法)が廃止され、種苗法の運用も変わりつつある。このままでは農民はグローバル種子企業の奴隷になり、国民はモルモットにされるだろう。


 山田氏は2010年に菅直人首相が環太平洋経済協定(TPP)参加を表明して以来、その阻止運動の先頭に立ってきた。各国で行われる閣僚会議にも毎回足を運び、 NGOや首席交渉官とも接触を続け、秘密交渉の情報を収集してきた。

 2009年の鳩山由紀夫政権で農林水産行政の長を務めた山田氏は地元、長崎県の五島列島で酪農を営んだ実際家であり、弁護士でもある。法律の裏表を知っている著者が最大の危機要因に挙げるのが、副題にある種子法廃止と種苗法運用である。

 種子法はコメや麦、大豆の種子について国の管理の下で各都道府県に優良な品種を選び増殖させ、安定して農家に供給することと、それら原種・原原種の維持を義務付けてきた。それにより、消費者はおいしく安全で安価な穀物を、当たり前のように食べることができた。

 種苗法は知的財産権を保障するUPOV条約の締結を受け1998年に改定されたもので、第21条で育成者権の効力を定めている。この1、2項は登録品種の種子についても農家の自家採取を認めているが、3項は農水省令で例外を設定できるとしている。2017年に省令つまり運用で例外が乱発され、82種類から289種類に激増した。同省内では、原則禁止にしようとする動きがある。

 これら法令の改正を促しているのがTPPだと山田氏は指摘する。山田氏は原中勝征・前日本医師会長らとともにTPP交渉差止・違憲訴訟を起こし、敗訴したが、2018年1月の高裁判決は「種子法の廃止はTPP協定が背景にあることは否定できない」と認めた。もう一つの証拠として、2016年2月の署名時に交わした日米並行協議の交換文書がある。

 「日本国政府は2020年までに外国からの対内直接投資残高を少なくとも倍増させることを目指す成長戦略に沿って…(略)…外国投資家その他利害関係者から意見及び提言を求め…(略)…規制改革会議の提言に従って必要な措置をとる」(p.126)

 温厚な著者も「これは独立国ではない」と憤りを隠さない。

 法改正が生産現場をどう追い詰めているかについては、同書をじっくり読んでいただきたい。ここでは、消費者として抱いた健康不安について挙げておく。

 わが国の野菜はすでにF1(1代交配種)が90%を占めているが、これが少子化と関係があるかもしれない。欧州のミツバチ減少はF1種子によるヒマワリやナタネなどの栽培地域に見られることを紹介し、男性の精子が70年間に4分の1に減っていることと関係づけている。さらに、モンサントが遺伝子組み換え(GM)種子とセット販売する農薬ラウンドアップに使われるグリホサートやネオニコチノイドが精子を減らすとの研究論文もある。

 主食であるコメも、三井化学アグロのF1品種「みつひかり」がすでに1%を占めている。われわれは知らない間に、どこかでそれを食べている。

 GM食品はさらに懸念が大きい。GMトウモロコシを食べ続けたマウスが、頭より大きい腫瘍をぶら下げている写真を皆さんも見たことがあるだろう。GMコーンを餌に与えたブタの繁殖実験では、80%が妊娠しないか、疑似妊娠だったとの米国内の報告もある。

 実は、わが国ではすでに、70種類のGMイネの栽培が承認されている。山田氏によれば、モンサントは20年かけ、日本のコメ市場を調べ上げ、政府に参入を働き掛けてきた。まずは、飼料用米として作付けさせる思惑とみられる。消費者庁が3月に出した遺伝子組み換え表示に関する報告は、「遺伝子組み換えでない」との表示を事実上認めない内容になっている。

 同書で衝撃的だった部分を幾つか挙げておく。わが国で主食のコメにGM品種が使われていないのと同様、米国でもGM種は飼料用にとどまっている。しかし、最初の食用GM小麦を日本人に食べさせようと全米小麦協会が明言している。正直というより、厚顔さにあきれる。

 山田氏は2017年8月、日本モンサントの「遺伝子組み換え作物の圃場(ほじょう)見学会」に参加したが、内容は同社の承諾がないと発表できないとの覚え書きに署名させられた。「そこで、私は意外なことを聞いたが詳細を書くことは許されない」(p.78)と筆を止めている。

 消費者庁の遺伝子組み換え表示に関する審議会に「日本の種子(たね)を守る会」事務局の女性が傍聴に入ったら、写真を撮っている人がいるので「肖像権の侵害ではないか、名刺を出しなさい」と詰め寄った。しぶしぶ出された名刺を見ると、米国大使館の職員だったという。「そこまで米国の圧力は安倍政権の中枢に深く入り込んでいる」(p.206)と驚嘆する。

 ある研究者の試算によると、わが国のコメ農家の時給は109円にすぎないとのこと。私は、わざとそのような政策にしているのではと疑う。GM種を扱う四大多国籍種子企業が買取保証や収量の多さ、栽培の楽さ、初年度無料サービスなどをちらつかせて農家に売り込むために。

 種子法廃止法案の審議は全く報道されず、衆参両院でわずか12時間足らずの審議で成立した。「当時、テレビをつければ森友学園、加計学園の報道であふれていて…」(p.137)との記述に触れ、ハッとした。マスメディアは国民をだますためにあるというのが私の解釈だが、両疑惑報道はスピンだったのだろうか。

 TPP訴訟や「種子の会」でご一緒させていただき、いつも感服するのは、山田氏の行動力と楽天的な態度である。私など、事実を知れば絶望だけが増すが、山田氏は「食糧安全保障法案の制定」を掲げ、イタリアの五つ星運動に倣い「直接投票で地方から日本を変えよう」と唱え、「種子法廃止違憲訴訟」を準備する。

 世界は心の投影だとの説がある。嫌なことを考えれば嫌な現実が、楽しいことを考えれば楽しい現実が再生されるとの考え方である。ならば、「消して夢ではない。イタリアにできて日本にできないはずはない」(p.252)と言い切る山田氏には、瑞穂の国の田園風景が残されるのかもしれない。現に、議員立法で種子法復活法案が提出されたではないか。

 同書は困難を乗り越えるための知識と希望を伝授してくれる。

タネはどうなる?! 種子法廃止と種苗法運用で [ 山田正彦 ]
タネはどうなる?! 種子法廃止と種苗法運用で [ 山田正彦 ]
山本太郎氏への拙著贈呈式
山本太郎がほえる〜野良犬の闘いが始まった
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亀井静香が吠える 痛快言行録
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       高橋清隆

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著者プロフィール


反ジャーナリスト。金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了。ローカル新聞記者、公益法人職員などを経て、2005年から現職。『週刊金曜日』『ZAITEN』『月刊THEMIS(テーミス)』などに記事を掲載。  著書に『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)『亀井静香が吠える』(K&Kプレス)『亀井静香—最後の戦いだ。』(同)『新聞に載らなかったトンデモ投稿』(パブラボ)。           

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