高橋清隆の文書館

 当ブログでは、マスメディアが伝えない情報や事象分析を発信しています。
新聞やテレビがつくる「社会標準」から解放されれば、人類は本来の豊かな人生を送れると確信します。

経済

【書評】『25%の人が政治を私物化する国〜消費税ゼロ・最低賃金1500円で日本が変わる〜』植草一秀(詩想社)

Net IB News https://www.data-max.co.jp/article/30680?rct=nation

 第2次安倍内閣が進める政策の真相を暴いた植草氏の新著である。国の壊れる速度を追い越すため、主権者である国民に一刻も早い覚醒と適切な投票行動を求めている。


 同書は3部構成になっている。すなわち、メディアと教育の問題を扱う第1章「あなたもすでに騙(だま)されている」、国民生活を破壊する政治への処方箋を書いた第2章「『私物化された政治』を止める5つの改革」、占領体制の続く戦後のわが国を分析した第3章「日本を蝕(むしば)む5つの深層構造」である。

 安倍首相は自身の経済政策について、有効求人倍率の上昇や雇用の増加などの実績を強調し、マスメディアはこれを「アベノミクス」ともてはやす。しかし、第2次安倍内閣発足後の7年間に増加した雇用の4分の3は非正規労働者である。

 経済を評価する最重要指標は実質国内総生産(GDP)成長率である。第2次安倍内閣発足後の実質GDP成長率平均値は+1.3%。一方、「悪夢の民主党政権」(安倍首相)のそれは+1.7%。東日本大震災による低迷を含めての値である。

 経済全体が低迷している中で雇用者の数が増えれば、労働者の取り分、つまり労働分配率は低下する。実際、6年半の間に日本の労働者の1人当たり実質賃金は5%も減った。

 2016年、実質賃金が小幅プラスを記録したが、これはデフレに回帰したおかげである。デフレからの脱却を目指す安倍内閣がインフレ誘導に失敗したことが幸いしたにすぎない。

 政府は2018年1月、実質賃金の算出方法を変えた。参院選をにらみ、従来より数値が高く表示されるようにしたためである。

 破壊的状況への処方箋として、著者の植草氏は5つの改革を示す。すなわち、〆把汰換餔賣В隠毅娃葦澆亮存宗↓⊂暖饑杷兒漾↓L臼腸修鬚笋瓩襦↓TPPプラス交渉をやめる、ゥ廛蹈哀薀犹拿个陵住司埓に——である。

 とイ亡悗錣襪、植草氏によれば「小さな政府」には3つの類型がある。1.民営化、2.社会保障支出の排除・圧縮、3.利権支出の排除、である。現在、わが国で進められている小さな政府は1と2の政策であるとした上で、次のように分析する。

 「極めて不可解に思われるのは、公的事業の営業権、独占事業の利権を民間に供与する意味での小さな政府に賛同し、同時に、社会保障を切り込むという意味の小さな政府に賛同する者が、政府の利権支出を切り込むという意味の小さな政府には、強く反対するケースが非常に多いことだ」(p.87)

 国からの財政支出は、一般会計と特別会計を合わせ重複分を差し引くと約139兆円。うち90兆円が社会保障関係の支出、それ以外の政策支出が50兆円である。前者を「プログラム支出」と呼ぶ。後者の「利権支出」の排除こそ、日本の財政構造改革の究極の課題だと指摘する。

 「プログラム支出」については、年金や高齢者医療、介護のほか、子育てや教育、生活保障、障害者保護に支出のウエートを移すべきだと説く。

 ,筬◆↓い覆匹鮓た読者諸賢は、山本太郎氏率いる「れいわ新選組」の緊急政策と重なることにお気付きかもしれない。山本氏は植草氏に少なからぬ影響を受けていると思われる。
2018年4月19日の「オールジャパン平和と共生」学習会でこれら政策を「シェアノミクス」と名付け、発表している。

 同書は参院選前の6月までに書かれたが、前書きに次の表現で期待を寄せている。

 「山本太郎参議院議員が新しい党をつくる試みに動き始めた。日本政治に大きな嵐を呼び込むチョウの羽ばたきになるかもしれない」(p.15)

 消費税に代わる財源として所得・法人の両税再強化のほかに、株式の配当による分離課税の税率を20%から40%に引き上げることや「利権支出」の2割カットで各10兆円が捻出できると提言している。

 山本氏が今回の選挙演説で連呼した語句に、「今の日本に欠けているのは愛と金」というものがある。植草氏は世の中に重要な要素として、かねて「愛と誠」を口にしていた。その一端が、いじめ問題への対処に見られる。

 「憲法が定めているのは子女に普通教育を受けさせる義務であって、子女に学校教育を受けさせる義務ではない」(p.209)
 「普通教育を実践する場として、家庭やフリースクールなどを明確に位置づけることが必要だ」(p.211)

 全ての国民が愛に裏打ちされた同書を読めば、国民生活が破壊される速度を追い越せるだろう。

25%の人が政治を私物化する国 消費税ゼロ・最低賃金1500円で日本が変わる (詩想社新書) [ 植草一秀 ]
25%の人が政治を私物化する国 消費税ゼロ・最低賃金1500円で日本が変わる (詩想社新書) [ 植草一秀 ]

「消費税廃止しても物価上昇率は1.67%まで」、山本太郎氏がインフレ懸念を払拭[浜松]

Net IB News https://www.data-max.co.jp/article/29937

 新党「れいわ新選組」の山本太郎参院議員は15日、静岡県浜松市内での市民との対話集会で、デフレから脱却して国民所得を増やすには消費税廃止と最低賃金1500円への引き上げが不可欠と唱えるとともに、消費税を廃止しても物価上昇率は最大1.67%にとどまるとの試算を提示してインフレ懸念を払拭(ふっしょく)した。

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緊縮財政と消費税がなければ最低賃金は1500円を超えていたと説明する山本氏(2019.6.15筆者撮影)

 集会は「山本太郎とおしゃべり会」と銘打ち、TKPアクトタワーカンファレンスセンターで開かれた。山本氏が市民約60人と質問形式で対話した。話題は軍事・防衛問題や児童相談所による児童略奪、ロスジェネ世代救済策などに及んだ。

 その中で、「障害者や母子家庭などへの救済制度とは別に、貧困が一般化していると感じる。救済策は」との質問があった。これに対し、山本氏は消費税廃止と最低賃金全国一律1500円の実現を主張した。

 消費税については、5%に下げた場合と全廃した場合の1人当たり賃金上昇率のグラフを提示。「消費税を3%上げたとき、8兆円も個人消費が落ち込んだ。8%を0%にすると物価は5%下がり、消費が活発になる」と述べ、6年後に1人当たり賃金が44万円増えると説明。

 「食べ物や飲み物といった、生きようとするたびに掛かる罰金をやめよう」と訴えた。

 最低賃金1500円については「賃金が上がっていくことが重要」と推すと同時に、教育・保育や医療、介護、住居など、生活の基礎となる分野で本人負担が減る施策を導入する必要性も説いた。

 一方で、山本氏は「本来、日本経済が成長していれば、最低賃金は1500円を超えていた」と、全国平均の最低賃金の推移のグラフを示した。最低賃金は1994年まで年率4%上昇していて、そのままなら2018年には1554円になっている計算だ。

 「経済成長できないのはデフレでお金が回らなくなったから。誰かの消費は誰かの所得。消費が増えなければ所得も増えていかない。消費が弱ったのは国が投資をコンスタントに続けられなかったから」と述べ、政府の緊縮財政を暗に批判した。

 インフレになるのではとの懸念に対し、山本氏は消費者物価指数上昇率の試算を掲げた。参議院調査情報担当室の試算でも、ピークの3年目で1.67%の上昇にとどまる。後は緩やかに下がっていく。安倍内閣の目標、2%に到底及ばない。「全然、楽勝」。

 消費税廃止による税収減20〜25兆円は大企業への租税特別措置の廃止や法人税への累進課税制導入、所得税の累進課税強化で賄うが、「国債発行という形で補填(ほてん)してもいい」とも主張する。ただし、「いつまでも発行できるわけでなく、リミットがある。インフレ率が2%になったら金融を引き締め、お金を吸収していく」と、財務省の悪宣伝を退ける。

 「国債発行という財源で、今足りない所にお金を出していくことが日本経済には必要。生活が困窮されている方々に対して何ができるか、すぐに考えないと。収入の少ない人ほど、お金が入ったらすぐに使うから、経済活動に寄与する」と強調した。

 山本氏は新宿で街頭演説した際、「ユーチューブと同じ話じゃないか」と落胆されたことを告白。「それでいいんです。ぜひ、この話を横に広げて、知っている人の数を増やさなければ。皆さん、そらで言えるようになって、近くの人にスピーカーになってください」と促した。

 最後に、同党への寄付が1億9000万円を突破し、立候補応募者も150人程度に増えたことを報告。「参院選に10人立てられる3億円が見えてきた。近々、もう1人立候補予定者を発表する」と補足した。

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消費税廃止による1人当たり賃金の変化(同党政策チラシより)

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消費税廃止に伴う悪性インフレを否定(2019.6.15筆者撮影)

「日本を取り戻すはこっちのせりふ」 山本太郎氏が経済失政を批判[金沢]

Net IB News https://www.data-max.co.jp/article/29857?rct=nation

 新党「れいわ新選組」の山本太郎参院議員は9日、JR金沢駅前で街頭記者会見を開き、「失われた20年」は財務省が刷り込んだ「財政破綻」の幻想に基づく緊縮財政が生んだことを指摘。「ぼろぼろになった世の中と人々を次の世代に引き継ぐことこそ無責任。日本を取り戻すって、こっちのせりふだ」と政府の経済政策を批判した。

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日本の再生ができることを人々に説く山本氏(2019.6.9筆者撮影)

 街頭会見は午後4時、兼六園口で始まった。小雨の降る中、300人ほどの市民が立ち止まって話を聞いていた。

 山本氏が緊急政策の一つに掲げる「消費税廃止」について、「財源は」との質問があり、山本氏は所得税の累進制強化や大企業を対象にした80以上の租税特別措置の廃止、法人税への累進制導入を挙げた。

 それを受け、「財政赤字の問題をどう解決するのか」との質問が飛んだ。山本氏は「テレビや新聞が『国の借金で財政が破綻する』と言うのは本当か」と疑問を投げ掛ける。「その見方がおかしい。1000兆円を超す借金をしているから財政出動したら大変だというのは、財務省の刷り込み」と、日本銀行資金循環統計を掲げた。

 「政府の財政赤字が拡大しているときには、民間の所得が増えている。政府の借金があなたの借金ということにはならない」と喝破した。

 「これ以上借金したら経済が破綻するって、本当か」と向ける。「普通、信用がない人に金を貸すときは金利が高い」と、20年間の日本国債の金利推移のグラフを示す。「下がっている一方だ。一体、どうやって破綻するのか。10年物国債の利回りは6月7日時点でマイナス0.12%(日経電子版)。財政健全化されていると市場が認識している」と疑念を払拭(ふっしょく)した。

 その証拠として、2002年にムーディーズなど海外の格付け機関が日本国債を格下げしたときにした財務省がした反論を紹介。「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」(2002.4.30)「ハイパーインフレの懸念はゼロに等しい」(2002.5.23)などを読み上げた。

 「財務省は知っている。お金を刷りまくったらハイパーインフレになると言うが、今の政府と日銀はそうならないようにインフレ率2%になったら引き締める上限を付けている。だから、その話自体がおかしい。金利も低く、インフレどころではない」

 山本氏は安倍政権下の大規模な金融緩和を念頭に、「お金を増やしても実体経済に回っていない。みんなの生活を良くするには、それが回るように国が財政出動をするしかない。消費増税はそれを引っこ抜くもの」と指摘し、消費税の廃止と新規国債の発行を主張した。

 「まさに衰退国家。みんなをここまで弱らせた。だまされてはいけない。消費税を5%から8%に増やした2014年には、家計消費が8兆円も落ち込んだ。リーマンショックの6.3兆より甚大だ」

 年齢別貯蓄ゼロ世帯の割合一覧を掲げ、20歳代では61.0%を占めることを挙げる。「20年のデフレを、何十年にするつもりだ。景気を良くしていくときに消費税を上げるなんて、『すっとこどっこい』『間抜け』以外の言葉があったら教えてくれ」と皮肉ると、拍手が起きた。

 「子供の7人に1人が貧困。20〜64歳の独り暮らしの女性の3分の1が貧困。この国の将来があると思うか。今、ここでみんなの底上げをしなければ、それこそ負の遺産。ぼろぼろになった世の中と人々を次の世代に引き継ぐことこそ、無責任」

 さらに「国民の生活がぼろぼろの中で財政再建のために財政カット、増税。それによって人が死ぬ。みんなで怒らなければいけないタイミングだ。奪われ続けたものに対し、取り戻しにいかなきゃいけない。日本を取り戻すって、こっちのせりふだ」と声を荒げると、「その通り」と声が飛び、駅前広場は大きな拍手に沸き立った。

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パワーポイントで示された、日本の政府と民間の収支バランス。政府の赤字化と民間の黒字化は対になっている(2019.6.9筆者撮影)

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政府総支出の伸び率。世界百四十数カ国中、日本が最低(2019.6.9筆者撮影)

「牛歩は8割、野党側への抗議」、山本太郎氏が明かす

 『Net IB News』に拙稿が載りました。
https://www.data-max.co.jp/article/27901?rct=nation

【書評】『あなたの資産が倍になる——金融動乱に打ち勝つ「常勝投資術」』植草一秀(ビジネス社)

 政治経済学者の植草氏による2018年版投資指南書である。金融経済動向は政治を含む世界情勢を知ることなしに占うことはできないとの信念から書かれているため、投資家だけでなく、世界の現状を短時間に知りたい人にとっても良書といえる。


 同書は会員制レポート『金利・為替・株価特報』の年度版で、今回が6作目に当たる。世には来る年の経済動向を予測する投資家向けの本があまた出るが、出版されたきり、結果がどうなったか検証されることはない。しかし、同シリーズとレポートが示した注目銘柄は全て大幅上昇している。

 2017年版には「日経平均株価2万3000円台、NYダウ2万ドル時代へ!」と明記されていたが、現実の推移はその通りになった。2018年は「波乱に見舞われる年になると予想される」(p.26)。その際の注目点は5つ。すなわち、)鳴鮮情勢▲肇薀鵐彑権の行方C羚饋径寮発足げそ情勢の変化テ本の対応、と指摘する。

 最も警戒すべき要因と感じたのは、△鉢い鉢イ絡むが、米国の連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締め動向である。植草氏によれば、現在、日本円は現在あるべき水準より円安に振れていると考えられる。その影響で円高に推移する可能性があるものの、米国の金融引き締め政策が加速すれば、ドル高にもなりやすく、両者の綱引き相場になることが想定される。

 日経平均株価とドル円レートはほぼ相関関係にあり、普通なら円安は歓迎されるべきかもしれない。しかし、日本銀行は量的緩和政策の結果、17年3月末時点で418兆円の国債を保有している。世界経済が拡大傾向を強め、原油価格(WTI)が1バレル60ドルを突破して上昇すれば、日本のインフレ率にも影響が生じ、日銀は直ちに量的金融緩和の縮小、さらに短期金利の引き上げに進まなくてはならなくなる。

 植草氏は米国経済とFRB、資源価格の動向を挙げ、「これらの変動によって、2018年の日銀を取り巻く環境は大きく変化し得るが、日銀が潜在的に巨大なリスクファクターを抱えていること、2018年に国内債券相場の暴落すなわち長期金利急上昇が生じる場合に、日銀信用の危機という重大な問題が顕在化する可能性が多分に存在する」(p.93)と警告する。

 同書が出されたのは17年11月で、FRBのイエレン議長の後任は未定だった。結果は、理事で「中立派」のジェローム・パウエル氏が登用された。植草氏は1月15日号のレポートで「イエレン路線を継承すると見られる。セカンドベストの人選と評価できる」としながらも、トランプ大統領のメンツだけによる変更と非難。「大統領は妥協なくベストを選択すべきで、この判断が後に微妙なダメージをトランプ政権に与える可能性がある」とつづり、状況に対応した適切な引き締めが行われるべきと強調している。

 4月で任期が切れる黒田東彦(はるひこ)日銀総裁は再任案が提示された。米国に続き欧州中央銀行(ECB)も17年6月、ドラギ総裁が「デフレ圧力は、リフレ圧力に取って代わられた」と発言し、金融緩和出口戦略に歩を進める意向を示している。安倍政権は経済の見掛けを維持するために、潜在的危機をさらに大きくしているように映る。

 同書はトランプ政権の分析について1章を割いている。「政権の趨勢(すうせい)を考察することは、資産戦略の側面からも最重要の課題であると言っても過言ではない」からである。トランプ氏はいつもメディアからたたかれているが、その理由は「米国の支配者」である強欲巨大資本が彼を歓迎していないからと指摘する。

 これは分かっている人には当然のことだが、メディアを見る際、肝に銘じてほしいことである。ニュース研究者を自認する私からすれば、メディアが攻撃する対象は支配権力(国際資本)の敵、持ち上げる対象は支配権力の手先(売国奴)にほかならない。日本のメディアが植草氏をありもしない「犯罪」でこき下ろしてきたのもこの理由からである。

 トランプ氏が支配権力を敵に回したまま地位を維持することは難しい。植草氏は彼の行動様式を「現実主義=実用主義」と捉え、その「柔軟性」の高さを認める。具体例として、〆嚢盧枷住ニール・ゴーサッチ氏の就任承認⊆鸚弊鑪官兼大統領上級顧問スティーブン・バノン氏の解任O∨政府の債務上限引き上げや暫定予算など一本化法案を成立させたこと、を挙げる。

は中東など7カ国からの入国禁止措置をめぐる裁判所側との攻防で、大統領の示した人事案が議会承認されたことを指す。水面下で議会共和党とさまざまな取引が展開されたとみられる。

バノン氏は、米国が世界の警察官の役割から撤退することを提言してきた。トランプ候補が掲げた「米国第一主義」に沿う主張である。著者は「米国の支配者は巨大軍事資本であり巨大金融資本である。この支配者は、米国が世界の警察官の役割を放棄することを許すことができない」(p.61)とし、「トランプ大統領は、徐々に米国を支配する巨大資本との間合いを詰めていると考えられる」(同)と分析する。

は、民主党とも接触を欠かしてない証左である。長いビジネス経験で培った高い交渉能力の産物だろう。

 同書を読む中で反省させられるのは、少しの経済指標の変化に過剰反応してはいけないということ。景況は数値により論理的に見なければならない。これは投資家には欠かせない資質である。

 例えば16年初め、中国経済の崩壊見通しを喧伝(けんでん)した「中国メルトダウン」と題する類いの書籍が書店に山積みされた。確かに、上海総合指数は15年6月から16年1月にかけ半値に下がったが、急騰前より30%高い水準にとどまった。止めたのは2月に上海で開かれたG20会合。著者はレポートでその可能性を記述していた。

 冒頭に紹介したように、同シリーズの17年版は多くの経済予測本と違い、同年の世界経済改善と内外株価の上昇を予測した。広がっていた懸念は、FRBが金融引き締めを加速することだった。そうなれば資金が米ドルに吸い寄せられ、資源国や新興国、資源価格が大きな打撃を受ける。しかし、米国インフレ指標が目標値を大幅に下回る状況が続くようになり、追加引き締めの必要性が大幅に後退。米国長期金利は再低下し、新興国や資源国、資源価格が大きく持ち直した。

 同シリーズも過去に、「日本経済撃墜」や「日本の奈落」など、悲観をあおるような題名が付けられた年もあった。もしもの逆説を採用した言葉だが、今回の名称を含め、出版社が付けたものだという。店頭には世界恐慌や預金封鎖が今にも始まるかと思わせるタイトルの本が毎年並ぶのも、恐怖心につけ込む商魂からと考えた方がいい。

 「最強・常勝五カ条の極意」をはじめとする資産倍増への極意と今年の「注目すべき株式銘柄」は、同書でじっくり確認してほしい。

 最後に、気付いた点を幾つか挙げたい。

 17年4月に日経平均株価が1400円以上も下がるリスクオフ(回避)相場があった。同月6日、トランプ大統領がシリアでの米軍による攻撃を命令。同軍による北朝鮮攻撃が連想され、緊迫した。「これを最も大々的にアピールしたのは日本政府である。韓国市場においては2017年4月の北朝鮮リスクが、実はあまり強く意識されていない」(p.188)と指摘し、日本による演出の可能性を示唆している。

 植草氏の言うように、韓国株価指数はこの時変化していない。私がニュース研究者としていつも強調しているのは、マスメディアは国民の見たいものを見せるのではなく、国民に見せたいものを見せるということ。4月6日は共謀罪の審議が衆議院本会議で始まった日である。つまり、法整備目的で自国民に行った宣伝が、国内相場に影響を与えたのではないか。

 経済をめぐるマスコミの無能ぶりも明かされている。ドル円レート変動に最も強い影響を与えているのは米国長期金利変動で、両指標を見れば、その関係は一目瞭然である。しかし、17年10月7日付日本経済新聞に「北朝鮮緊張で円高 なぜ?」と題する特集記事が載った。見出しには「為替の謎、3つの理屈」とある。「日本経済新聞はドル円レートが米国長期金利に連動して変動しているという重要事実を把握していないことが分かる」(p.180)と著者。その後、植草氏の見解が伝わったのだろう。認識が変更されたとのことである。

 日銀の黒田総裁が15年6月10日、「これ以上の実質実効レートベースでの円安進行は、普通に考えればありそうにない」と発言した。円安進行へのけん制である。植草氏はこの発言の裏側に米国政府の指令があったと洞察する。当時TPP交渉が進展する中、円安が米国内でTPP反対を勢いづかせる要因になると判断されたからである。これを転換点に、今度は円高ドル安が進行した。

 12年11月14日、野田佳彦首相が安倍晋三自民党総裁との党首討論で消費税増税を約束して解散に踏み切ったことは「自爆テロ解散」と呼ばれている。植草氏はこの表現は不正確だとして「自爆解散」だと主張する。「自爆テロの場合は敵に大きなダメージを与えるが、野田氏の選択は単に民主党が自滅の道を選ぶ」(p.200)だけだったからである。思わず膝を打った。ただし、本人は損傷を負っていないから、「他爆解散」でもいいかもしれない。

 同書を読めば、マスメディアに接していると分からなくなる世界の実態が見えてくる。投資をする人もしない人も、真実の中で生きたい人は手に取ってほしい一冊である。

■関連サイト
植草一秀の『知られざる真実』

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       高橋清隆

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著者プロフィール


反ジャーナリスト。金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了。ローカル新聞記者、公益法人職員などを経て、2005年から現職。『週刊金曜日』『ZAITEN』『月刊THEMIS(テーミス)』などに記事を掲載。  著書に『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)『亀井静香が吠える』(K&Kプレス)『亀井静香—最後の戦いだ。』(同)『新聞に載らなかったトンデモ投稿』(パブラボ)。           

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