高橋清隆の文書館

 当ブログでは、マスメディアが伝えない情報や事象分析を発信しています。
新聞やテレビがつくる「社会標準」から解放されれば、人類は本来の豊かな人生を送れると確信します。

植草一秀

「消費税は諸悪の根源」と湖東氏、オールジャパン平和と共生院内集会で

Net IB News https://www.data-max.co.jp/article/32598?rct=nation

 オールジャパン平和と共生(政策連合)15日、衆議院第二議員会館内で「いま消費税を問う!」と題する専門家・国会議員・市民による集会を開き、「不公平な税制をただす会」の湖東京至(ことう・きょうじ、元静岡大学教授・税理士)・荒川俊之(税理士)の両氏から話を聞いた。湖東氏は消費税が物価高や給与削減、格差拡大、貿易戦争などを促しているとして「諸悪の根源」と両断した。

消費税のからくりを明かす湖東氏(2019.11.15筆者撮影)

 集会には国民民主党の篠原孝・小宮山泰子両衆議院議員、共産党の笠井亮(あきら)衆議院議員、会派「碧水会(へきすいかい)」の嘉田由紀子参院議員、福島伸亨(のぶゆき)前衆院議員、政策連合顧問の山田正彦元農水相のほか、7月の参院選にれいわ新選組から立候補した渡辺照子氏が参加。地方遊説中の山本太郎・れいわ代表からのメッセージが読み上げられた。

 冒頭、最高顧問の原中勝征(かつゆき)元日本医師会会長が原発問題に触れ、「政府は国民を大事にしているのか。消費税もこの流の中にある。専門の先生方から話を聞き、子や孫の時代、日本がいい国になっているようにしなければ」とあいさつした。

 2人の専門家からの問題提起と国会議員らの意見表明の後、参加者からの質問を受けた。運営委員の斉藤まさし氏から消費税廃止を求める国民運動の提言があり、同じく運営委員で経済学者の植草一秀氏が「自公に対峙(たいじ)するためにはみんなの連帯が必要」と、「ガーベラ革命」への参加を呼び掛けた。

 湖東氏の講話の骨子は次の通り、

 消費税は私たちが払っていると思う方がほとんどだが、皆さんが払っているのは、消費税に名を借りた得体の知れない物価。値段を決めるのは企業。自由に上げても下げても、そのままでもいい。Suicaと切符で対応が違ったり、新聞によっても価格変更がまちまちなのはそのため。政府が「上げる」と発表すると、力のある事業者は上げるだけ。これは便乗値上げだ。

 消費税を納めるのは事業者で、一つ一つに掛かる税金ではない。皆さんが払っている分がそっくりそのまま税務署に行かない、極めて不透明で不愉快な制度。

 事業者のことが分からないと、この税金が何で悪いのかは分からない。消費税の本当の名前は「付加価値税」。1950年、「シャウプ勧告」のシャウプ博士が来日して、世界で初めて導入を提案した。目的は、赤字の事業者にも税を負担させること。反対が多く、1954年に廃案になった。

 同じ1954年、フランスが入れた。直接税の事業税に代わり、同じ形なのに間接税と位置付けた。ここに陰謀がある。仏国は輸出が弱く、輸出企業は補助金が欲しい。しかし、政府が直接予算を組み輸出を奨励することは、GATT(関税及び貿易に関する一般協定)に反する。そこで見付けたのが、付加価値税を事業者が納めるやり方。

 「仕入れ税額控除方式」と呼ばれる方法で、消費税・付加価値税の根幹をなす。事業者が納めるのは

売上高×10%(税率)−仕入れにかかった経費×10%(税率)

 輸出企業の税率は0%で、仕入れにかかった経費×10%が還付金として戻る。これをやりたいために、今では世界130カ国以上が導入している。トヨタ自動車は毎年約3600億円が還付され、所管の豊田税務署(愛知)は赤字。日産自動車のある神奈川税務署(神奈川)やマツダのある海田税務署(広島)も赤字。

 法人3税と違い、赤字でも納めなければならず、国税の滞納率の1位。課税事業者の2割弱が滞納し、税金の全滞納額の6割を占める。これが景気の足を引っ張る。消費者にとっては、物価が上がる。事業者にとってはさらに景気を悪化させ、給料を上げられない。人件費は経費に入らないが、派遣だと計上できる。それで、正社員を雇わなくなり、給料も上がらない。

 一方は納税で苦しみ、一方は還付金を受ける。格差社会が生まれる。税率を上げるほど還付が増えるから、経団連は大賛成。だから、「早く欧州並みの20%にせよ」と言っている。仮に下請けから請求が来ても、元の単価を値切ればいい。

 米国に消費税・付加価値税はない。メキシコ国境に壁を造ったり、中国に貿易戦争を仕掛けているのはそのため。日本の農産品や自動車の関税を上げると言っているが、諸悪の根源は全て消費税・付加価値税。これがなければ、農家は苦しまない。これからさらにひどくなる。

 マレーシアは2015年に6%の付加価値税を入れたが、廃止を野党統一のスローガンにして実現した。財源はある。日本はまず5%にして、やがて廃止を展望しなければ、この国で中小企業はやっていけない。1日も早く、この税をなくそう。

『税制研究』No.75「わが国消費税30年と韓国付加価値税42年を比較して」(湖東京至)より

熱心に話を聞く参加者(2019.11.15筆者撮影)

【書評】『25%の人が政治を私物化する国〜消費税ゼロ・最低賃金1500円で日本が変わる〜』植草一秀(詩想社)

Net IB News https://www.data-max.co.jp/article/30680?rct=nation

 第2次安倍内閣が進める政策の真相を暴いた植草氏の新著である。国の壊れる速度を追い越すため、主権者である国民に一刻も早い覚醒と適切な投票行動を求めている。


 同書は3部構成になっている。すなわち、メディアと教育の問題を扱う第1章「あなたもすでに騙(だま)されている」、国民生活を破壊する政治への処方箋を書いた第2章「『私物化された政治』を止める5つの改革」、占領体制の続く戦後のわが国を分析した第3章「日本を蝕(むしば)む5つの深層構造」である。

 安倍首相は自身の経済政策について、有効求人倍率の上昇や雇用の増加などの実績を強調し、マスメディアはこれを「アベノミクス」ともてはやす。しかし、第2次安倍内閣発足後の7年間に増加した雇用の4分の3は非正規労働者である。

 経済を評価する最重要指標は実質国内総生産(GDP)成長率である。第2次安倍内閣発足後の実質GDP成長率平均値は+1.3%。一方、「悪夢の民主党政権」(安倍首相)のそれは+1.7%。東日本大震災による低迷を含めての値である。

 経済全体が低迷している中で雇用者の数が増えれば、労働者の取り分、つまり労働分配率は低下する。実際、6年半の間に日本の労働者の1人当たり実質賃金は5%も減った。

 2016年、実質賃金が小幅プラスを記録したが、これはデフレに回帰したおかげである。デフレからの脱却を目指す安倍内閣がインフレ誘導に失敗したことが幸いしたにすぎない。

 政府は2018年1月、実質賃金の算出方法を変えた。参院選をにらみ、従来より数値が高く表示されるようにしたためである。

 破壊的状況への処方箋として、著者の植草氏は5つの改革を示す。すなわち、〆把汰換餔賣В隠毅娃葦澆亮存宗↓⊂暖饑杷兒漾↓L臼腸修鬚笋瓩襦↓TPPプラス交渉をやめる、ゥ廛蹈哀薀犹拿个陵住司埓に——である。

 とイ亡悗錣襪、植草氏によれば「小さな政府」には3つの類型がある。1.民営化、2.社会保障支出の排除・圧縮、3.利権支出の排除、である。現在、わが国で進められている小さな政府は1と2の政策であるとした上で、次のように分析する。

 「極めて不可解に思われるのは、公的事業の営業権、独占事業の利権を民間に供与する意味での小さな政府に賛同し、同時に、社会保障を切り込むという意味の小さな政府に賛同する者が、政府の利権支出を切り込むという意味の小さな政府には、強く反対するケースが非常に多いことだ」(p.87)

 国からの財政支出は、一般会計と特別会計を合わせ重複分を差し引くと約139兆円。うち90兆円が社会保障関係の支出、それ以外の政策支出が50兆円である。前者を「プログラム支出」と呼ぶ。後者の「利権支出」の排除こそ、日本の財政構造改革の究極の課題だと指摘する。

 「プログラム支出」については、年金や高齢者医療、介護のほか、子育てや教育、生活保障、障害者保護に支出のウエートを移すべきだと説く。

 ,筬◆↓い覆匹鮓た読者諸賢は、山本太郎氏率いる「れいわ新選組」の緊急政策と重なることにお気付きかもしれない。山本氏は植草氏に少なからぬ影響を受けていると思われる。
2018年4月19日の「オールジャパン平和と共生」学習会でこれら政策を「シェアノミクス」と名付け、発表している。

 同書は参院選前の6月までに書かれたが、前書きに次の表現で期待を寄せている。

 「山本太郎参議院議員が新しい党をつくる試みに動き始めた。日本政治に大きな嵐を呼び込むチョウの羽ばたきになるかもしれない」(p.15)

 消費税に代わる財源として所得・法人の両税再強化のほかに、株式の配当による分離課税の税率を20%から40%に引き上げることや「利権支出」の2割カットで各10兆円が捻出できると提言している。

 山本氏が今回の選挙演説で連呼した語句に、「今の日本に欠けているのは愛と金」というものがある。植草氏は世の中に重要な要素として、かねて「愛と誠」を口にしていた。その一端が、いじめ問題への対処に見られる。

 「憲法が定めているのは子女に普通教育を受けさせる義務であって、子女に学校教育を受けさせる義務ではない」(p.209)
 「普通教育を実践する場として、家庭やフリースクールなどを明確に位置づけることが必要だ」(p.211)

 全ての国民が愛に裏打ちされた同書を読めば、国民生活が破壊される速度を追い越せるだろう。

25%の人が政治を私物化する国 消費税ゼロ・最低賃金1500円で日本が変わる (詩想社新書) [ 植草一秀 ]
25%の人が政治を私物化する国 消費税ゼロ・最低賃金1500円で日本が変わる (詩想社新書) [ 植草一秀 ]

「ガーベラ革命で共生社会を」、オールジャパン平和と共生が決起集会

 「オールジャパン平和と共生」が3月2日、東京都千代田区の日本教育会館・一ツ橋ホールで「2019年政治決戦必勝! 総決起集会」を開き、経済学者の植草一秀氏が消費税廃止など「シェアノミクス」によるガーベラ革命を説くとともに、野党各党の政治家が候補の一本化を主張。玉城デニー沖縄県知事も応援メッセージを寄せた。

 「オールジャパン」は戦争と弱肉強食の政治からの脱却を目指し、2014年に結成された。今回は3月の統一地方選、7月の参院選と衆参同日選の可能性も視野に野党各党に参加を呼び掛け、第三部で「地方から日本政治を変える!」の主題の下、各取り組みが紹介された。

 集会には市民約500人が参加。ガーベラが多様性の象徴であり、希望・前進・限りなき挑戦の花言葉を持つことから、「ガーベラ革命で共生社会を実現しよう!」を副題に、政治の年である今年の勝利を期した。

スクリーンショット 2019-03-04 4.53.01
 原中氏(UPLAN様より拝借)

 あいさつに立った同会最高顧問の原中勝征(かつゆき)・前日本医師会会長は、子供の6人に1人が生活苦であることや、健康保険料の引き上げや年金給付の引き下げなどで高齢者が老人ホームにも入れなくなった現状を紹介し、「お金を稼がない人は、早く死ねということ。弱い人を守るのが政治ではないか」と提起。

 米国の突き付ける『年次改革要望書』に沿って、国富を外資に献上してきた自民党政治を批判し、「今度の選挙では少なくとも、野党連合が過半数を取って政権交代しない限り、日本は取り返しのつかない貧乏な国になる」と警告した。

IMG_4542
 鳩山氏(2019.3.2一ツ橋ホールで筆者撮影)

 同会最高顧問の鳩山友紀夫元首相は、前日の玉城デニー沖縄県知事による県民投票結果の安倍首相への報告に触れ、「米国と日本政府、沖縄県の三者でしっかり議論して進めようというのは正当な要求だが、安倍首相はそれを認めようとしないだろう」とけん制するとともに、「日本の国土の中に、海兵隊は要らないのではないか」と疑問を呈した。

 「今まで米軍基地があったことは認めるが、これからもずっと米軍が駐留しているのは、独立した国ではないと言わざるを得ない。安倍首相がトランプ米大統領をノーベル平和賞に推薦した。今まで危険だった日本の空にミサイルが飛ばなくなったからというなら、なぜF35戦闘機を100機以上買うために1兆2600億円も費やす意味があるのか」と批判した。

IMG_4558
 玉城氏のメッセージ動画(2019.3.2一ツ橋ホールで筆者撮影)

 玉城知事はビデオメッセージで、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古への移設をめぐる2月24日の県民投票の結果に言及。反対が43.4万人(71.7%)だった結果を示し、「中でも意義深いのは、18、19の10代の人たちが投票に参加してその意思を示したこと。普段、あまり関心がないと思われる身近なこと、特に米軍基地のことを考えてくれていたことに感謝したい」と述べた。

 その上で、「一人ひとりは普段政治とあまり関わりがあると思ってないかもしれないが、政治と生活は密接不可分な関係にある。ぜひ、皆さんの思いを多くの方々とつなげていただき、今年の政治決戦で皆さんの1票1票が必ず未来の政治につながりますように」とエールを送った。

IMG_4582
 植草氏(2019.3.2一ツ橋ホールで筆者撮影)

 第一部は、運営委員でもある植草氏が「ガーベラ革命で共生社会を実現しようと!」と題し、経済政策の分析と提言をした。経済成長率について「民主党政権の平均値は+1.7%だったのに対し、第2次安倍政権平均値は+1.2%。偽装してもこの数字」と解説。

 政権発足以降、72カ月の景気拡大と触れ回っている件について鉱工業生産指数を示し、「2014年1月から2016年4月まで不況だったことを隠蔽(いんぺい)している。安倍政権の三種の神器は、隠蔽、偽装、捏造(ねつぞう)だ」と両断した。

 消費税が法人税と所得税の穴埋めに使われてきた実態を示し、「むしり取る経済政策から分かち合う経済政策へ」と、消費税廃止や最低賃金全国一律1500円など5つからなる「シェアノミクス」を提言。「25%が連帯すれば、市民政権樹立はできる。みんなで手を取り合って、ガーベラ革命を成就させよう」と訴えた。

 第二部では、川内博史(立憲)・宮本徹(とおる・共産)の両衆院議員と山本太郎参院議員(自由)が決意表明をしたほか、原口一博衆院議員(国民)と吉田忠智元参院議員(社民)がメッセージを寄せた。

IMG_4604
 川内氏(2019.3.2一ツ橋ホールで筆者撮影)

 川内氏は同日未明に衆院を通過した総額101兆円超の2019年度予算案に言及し、「鳩山政権が唯一のプラス成長で実質賃金も上がっていたのは、再分配を優先したから。一方、安倍政権は全く逆で、みんなの懐に手を突っ込んで1人当たり100万円ひったくり、トランプさんに言われた物を買っている」と皮肉った。

 「社会保障を考えていると言うが、月4万円で暮らす高齢者が200万人いて、うち女性160万人に2年間5000円を毎月支給すると威張っている。年間48万円が54万円になって、一体生活が楽になるか。そんな政治は、政治ではない」と糾弾。各選挙区で反自公候補を一本化する提案をし、「みんなで力を合わせて闘いましょう」と呼び掛けた。

IMG_4615
 宮本氏(2019.3.2一ツ橋ホールで筆者撮影)

 宮本氏は、「消費税を導入してから30年、国民の所得は増えていない。一方、税負担が軽くなった企業は法人企業統計によれば、内部留保を446兆円に増やしている。庶民から吸い上げた富が大企業に回されただけ」と指摘した。

 税金の使い方についても、「トランプさんに言われ米国製の兵器をどんどん爆買いしているだけ」とF35の購入に言及。一機116億円もの血税を投入する上、米政府監査院(GAO)によれば月に20件もの欠陥が発見されている。アメリカファーストのトランプさんは雇用を守るため、ロッキードマーチン社の製品があまりに高くなって米国の取得数が減ったから、その肩代わりを日本に求め、安倍政権がそれにほいほい従っている。ノーベル平和賞の推薦までして、日本国民を代表する資格はない」とやり玉に挙げた。

IMG_4645
 山本氏(2019.3.2一ツ橋ホールで筆者撮影)

 山本氏は厚労省の国民生活基礎調査で「生活が苦しい」「やや苦しい」と感じると答えた世帯が56.5%、母子世帯では82.7%に上ることや、日銀の調査で年代別貯蓄ゼロが20代で61.0%であることを示し、「増えたのは2014年、つまり消費税が増えてから」と指摘した。

 「消費に関わる全てを冷え込ませるのが消費税だから、落ち込むに決まっている。ところが、どの政党も凍結か上げるかだけ。ゼロを目指して、まずは5%に下げるのを野党統一の政策にしてはどうか。『凍結』では、自民党も『凍結』と言ったら野党はぼろ負け。人々の生活を考えても、消費税はなくす方がいい」と述べ、野党各党への働きかけを呼び掛けた。

 第三部では、同会顧問の山田正彦元農水相や2017年の宮城県知事選に立候補した「みんなで決める会」代表の多々良哲(たたら・さとし)氏、埼玉県で野党候補者一本化に取り組む田中重仁(しげひと)・弁護士、共生革命家のソーヤー海(かい)氏が講話した。

IMG_4626
 山田氏(2019.3.2一ツ橋ホールで筆者撮影)

 山田氏は「安倍政権はTPP(環太平洋経済連携協定)締結以来、種子法廃止や農業競争力強化支援法、水道法改正、漁業法改正をやった。いわゆる多国籍企業・大企業のために私たち庶民や中小企業、漁業者、農業者がやって来た仕事を全部取り上げてしまう」と今の政治状況を説明。

 その上で、「そんな中、地方に動きが出て来た」と、新潟・兵庫・埼玉など10の道県が3月までに種子法に代わる条例を制定し、さらに10の県で制定の動きが出て来たことを紹介。「住民が市町村に意見書を提出すれば、審議しなければならない。それがどんどん上がってくれば、県議会も意見書を作らざるを得なくなる。こうした動きが国を動かした」と、議員立法による種子法復活法案の国会提出が実ったことを報告。「私たちは地方から中央政治を変えていこう」と鼓舞した。

スクリーンショット 2019-03-04 4.59.48
 多々良氏(UPLAN様より拝借)

 多々良氏は、女川(おながわ)原発2号機再稼働阻止に向けての宮城県の取り組みについて報告した。この再稼働の是非を問う県民投票条例の制定を求め、住民直接請求運動を起こした。

 「地方自治法第74条に基づいて有権者の50分の1の署名を添え知事に提出すると、住民が自ら作った条例案を直接議会に提出できる。3万9000人の署名を、2カ月間で集めなければならず、ハードルの高いものだった」と振り返った。

 結果は法定数の約3倍の11万1743人分を集め2月21日、県議会に提案された。「草の根民主主義後からが慣例や前例主義で動く議会の予定調和を次々と打ち破った」と吐露した。条例案は3月14日に集中審議され、15日に採択される。

スクリーンショット 2019-03-04 5.04.14
 田中氏(UPLAN様より拝借)

 田中氏は、3月14日に設立総会を開く「市民が野党をつなぐ埼玉の会」を立ち上げた経緯を紹介した。母体となったのは「オール埼玉総行動実行委員会」。「2014年に集団的自衛権の閣議決定と戦争法廃止を求め団結し、過去7回、1万人規模の集会とパレードを行っている」と説明。

 「県内15の小選挙区全てに『市民の会』ができて、野党共闘をやってきた。2017年の衆院選は、もし希望の党の件がなければ、ほぼ全てで野党共闘が実現して結果は変わっていたはず」と分析する一方、「『市民の会』はできたが、横の連絡がなかったので、何とかしようと『つなぐ会』をつくった。4月7日の県議会選挙まで時間は短いが、第一歩として次の選挙を視野に入れ、立憲野党の共闘を進めたい」と抱負を述べた。

スクリーンショット 2019-03-04 5.07.13
 ソーヤー氏(UPLAN様より拝借)
 
 ソーヤー氏は自身が日米のハーフであることを明かし、「米国の代表がトランプ、日本の代表が安倍で、受け入れ難い」と笑い取るも、「安倍を倒しても、私たちが目指している平和と共生にはならない。ブラジルでは(極右の)ボルソナロ大統領が誕生したが、彼も(旧)左翼政府も同じ多国籍企業のお金をもらって政権を取っている。グローバル経済システムや多国籍企業のパワー、人以上の仕組みの問題を見詰め、どうしたら根本的に変えるのかを皆さんと一緒に考えていきたい」と述べた。

 「皆さん、周りにいる観客を見てください。ここにいない人たち、女性や若い人たちにどう話すかを考えてほしい。ガンジーはインドを英国から独立させるため15年間、毎日78人と準備をした。そのくらいの気持ちでやっていきたい。皆さん、一緒に盛り上げて楽しくやっていきましょう」と呼び掛けた。

 最後に、消費税廃止と最低賃金全国一律1500円への引き上げの方向を明示する候補者に支援と投票を一本化する行動を提案する「集会宣言」を採択した。

【書評】『国家はいつも嘘をつく−日本国民を欺く9のペテン−』植草一秀(祥伝社新書)

 安倍晋三内閣という現犯罪政権からの護身術を伝授した新刊書である。「平和・安全法制」「テロ等準備罪」「働き方改革」など、甘い言葉と裏腹に、どれだけの悪法が作られてきたか。身を守るとは、真実を知ることにほかならない。


 前書きで著者は、「国家はいつも嘘(うそ)をつくことを、肝に銘じなければならない」と説く。そうして公然と吐かれたうその事例を挙げていく。具体的には「アベノミクス」「民営化」「働き方改革」「2020東京五輪」「日航ジャンボ機123便」「平和安全法制」「刑事司法」「TPPプラス」「消費税で社会保障」の9つを解説する。

 「騙(だま)されないためには、騙しの手口を十分に知ることが必要だ。国家はどのような手口で私たちを騙してきたのか。その事実をしっかり検証することが、国家権力による詐欺被害から身を守る術(すべ)になる」(p.10)からである。

 ここでは、「TPPプラス」についてだけ触れておきたい。著者は「TPP交渉差止・違憲訴訟の会」の呼びかけ人の一人でもあり、法廷で国を相手に違憲性を証言してきた。

 皆さまご存じ、「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない。日本を耕す!! 自民党」の2012年総選挙用ポスターや公約6項目を触れ回っての政権横領を告発。重要5品目のうち「聖域として、関税引き下げの対象から除外された品目」もゼロだった。

 続いて、参加で唯一メリットが想定された日本車の対米輸出関税率も、日米並行協議で乗用車が2.5%を14年間、トラックは25%を29年間一切下げられないことが決まった。「このようなふざけた条件を受け入れてTPP交渉への参加を決めた安倍内閣は、一体何を考えていたのか」(p.204)と酷評する。

 山田正彦元農水相も『タネはどうなる?!−種子法廃止と種苗法運用で−』(サイゾー)で指摘しているが、米国が離脱したら無効になるとしていたこの付属文書は、今も生きている。2017年12月9日の国会で、河野太郎外相が「日本が自主的に決めたことの確認なので、TPPの発効にかかわらず自主的に実行する」と答弁している。

 著者は、「日本の国益、日本の主権者の利益を完全に放棄していることが鮮明に浮かび上がる」と嘆き、この推進は「主権者に対する背信行為」と指弾する。

 「TPPプラス」とは、TPPおよび類似するメガFTAの総称で、グローバル資本の利益を極大化するために推進されている。その象徴がISD(投資家対国家間の紛争解決条項)であるという。「一国の法体系を破壊するもの」(p.210)で、「日本は主権を喪失する」(p.207)と。

 それにしても、安倍政権誕生後、悪法のオンパレードが続く。安保法制や秘密保護法、憲法改正、種子法廃止、水道法改正も根っ子は同じなのではないか。すなわち、同書でも頻繁に登場する「グローバル資本」による独裁である。種子企業や水道屋の向こうには、戦争屋と金貸しが控える。

 終章は「何が国家の嘘を許しているのか」と題し、「刑事司法の不正支配」「メディアの不正支配」「主権者の緩さ」を挙げる。刑事司法の不正支配に関しては、著者の植草氏自身が2度のでっち上げ逮捕で表舞台から抹殺されていて、説得力を感じる。

 メディアの不正支配では、巨大資本が牛耳る大新聞とその系列の民放、時の内閣が実効支配するNHKによって構成される16社体制を挙げ、そのゆがみを指摘する。同書を出したのは、まさにこれに阻まれた情報を国民に届けるためと考える。

 電通過労死報道が「働き方改悪を強制制定するための手段」(p.259)で、「消費増税では財政再建と社会保障制度維持のための施策という真っ赤な嘘」(同)との記述を見て、多くの事例を連想した。私はあらゆるマスコミ報道は政治宣伝だと考え、都度のニュースが何のために見せられているのかを記事や動画で解説してきた。

 山田氏は前掲の書で、2017年3月に種子法廃止法案が審議されていた時期、テレビはモリカケ報道一色に染まっていたことに触れ、スピン疑惑を示唆している。目下のゴーン・日産会長逮捕報道も宣伝ではないのか。GHQが創り、田中角栄や小沢一郎、植草氏を起訴してきた東京地検特捜部が善良な機関であるはずがない。高い利潤を貢ぎ続ける日産をルノーから取り上げようとする別の巨大資本(ビッグスリー?)の策動か。もっと大きな視点では、株主利益をさらに拡大する(経営者・労働者利益を最小化する)法整備を推進するためではないのか。

 緩い主権者を覚醒するため、著者は「全てを疑え」と呼び掛ける。安倍首相が「共産党と共闘するんですか!」「民共共闘に投票するんですか!」と挑発するのはなぜか。それは反安倍陣営を2つに割るためである。過去2回の総選挙は、いずれも反自公の得票数の方が多い。自民党は17%台の得票しかなかった。

 共産党を含めなければ、反自公は勝てない。それ故、著者は「オールジャパン・平和と共生」をウェブ上に立ち上げ、25%運動を展開する。「主権者と、基本政策を共有する政治勢力が大きな連帯を形成して、候補者の一本化を実現すれば、必ず日本政治を刷新できる。これが『国家の嘘』を打破する決定打になるはずだ」(p.257)と。

 犯罪政権のプロパガンダに乗せられて身ぐるみはがされたくなければ、同書を一読することを勧める。

■関連サイト
植草一秀の『知られざる真実』
「オールジャパン平和と共生」公式サイト

国家はいつも嘘をつく --日本国民を欺く9のペテン [ 植草 一秀 ]
国家はいつも嘘をつく --日本国民を欺く9のペテン [ 植草 一秀 ]

国民の水や種を売る政治を告発 オールジャパン学習会[詳報]

 国民25%の団結でグローバル資本追従政治からの脱却を目指す「オールジャパン・平和と共生(AJPC)」が10月15日、国会議員会館内で学習会を開き、市民170人が関良基(せき・よしき)・拓殖大学教授や三雲崇正・新宿区議(弁護士)、山田正彦・元農水相(弁護士)から水道民営化や種子法廃止の問題点について話を聞いた。

IMG_4113
  原中氏(2018.10.15筆者撮影)

 AJPC最高顧問を務める原中勝征・前日本医師会会長は「今、私たちがこういう題名で学習会を開かなければならないことは残念なこと。このままでいけば、われわれが目指す平和と共生の日本が残るか甚だ疑問だ」と警告。

 問題の一つに憲法改正を挙げ、「長い日本の歴史の中で、わずか数年しか務めない総理大臣が日本の将来まで勝手に変えてしまう専制政治を、1日も早くやめさせなければ」と訴えた。

IMG_4117
  川内氏(2018.10.15筆者撮影)

 来賓として出席した川内博史衆院議員(立憲)は「森友・加計だけでなく、すべての政治行政の分野でうそ、ごまかしが横行している。TPP(環太平洋連携協定)や水道民営化もその一つ。規制緩和は良いことであるというイメージを刷り込み、私たちから富を搾取している」と糾弾した。

 一方、9月30日の沖縄知事選での玉城デニー候補の勝利に触れ、「日本国民全体に良い影響を与えている。沖縄は日本政治のうそ、ごまかしの象徴だった。憲法を無視して戦争国家、米国に基地を押し付け本土も見て見ぬふりをしてきた」と指摘。安倍晋三内閣が来年7月には憲政史上最長になることを挙げ、「教科書にこんな恥ずかしいことを書かせてはならない。次期参院選で引導を渡そう」と訴えた。

水道事業は市民参加の新しい公営で

 関氏は「社会的共通資本としての『水』」の題で、継続審議になっている水道法改正の問題点を解説した。

IMG_4127
 関氏(2018.10.15筆者撮影)

 『社会的共通資本としての森』(東京大学出版会)を共に著した故宇沢弘文・東大名誉教授を師と仰ぐ関氏は、「宇沢先生の生涯の敵がミルトン・フリードマンだった。新自由主義者のフリードマンは、万物を商品化できるという幻想を抱いている」と批判した。

 「民営化してよい財と悪い財がある」として、「主流派経済学」のポール・サミュエルソンによる公共財の条件を紹介した。すなわち、“麈喀性(特定の利用者を排除できないという特質)非競合性(多数が一斉に利用しても混雑しない)自然独占(初期コストが大きく規模の経済効果が働く)である。

 「しかし、水道の場合,脇団衢用者に給水停止できるし△和真瑤凌諭垢使用すれば水が足りなくなる。従って民営化が許されることに。こんなおかしな話があるかと、宇沢先生は社会的共通資本という概念をつくった」と披歴した。

 サミュエルソンはを、初期費用は膨大だが、供給拡大による規模の経済効果で、次第に費用が低減する。後発企業が参入不可能なため、独占になる。独占価格による消費者の不利益を抑制するための公営事業と定義。唯一、これだけが水道にも当てはまる。

 「これを民営化すれば、独占価格を設定しようとする誘因は増大し、価格が上昇する。独占なら、サービス改善の誘因も働かないので、政府がやった方がいい。だから民営化は間違い」と両断した。

図1
   図1

 公共性と効率性が両立可能であるとする新自由主義者の主張を紹介。投資したお金当たりの価値(Value for Money:VFM)を縦軸、官から民へのリスク移転を横軸に取ると、中央で山なりになる放物線を描くグラフができる(図1)。VFMが最大化する位置があるはずとの考え方で、その場所がすなわちPFI(※1)やPPP(※2)のコンセッション方式(※3)との理屈だ。

 関氏は、「可能であることと、実際に履行されることとは別問題」として、英国イングランドの水道民営化の事例を示した。サッチャー政権下の1989年、水質や料金などを審査する3つの規制機関、すなわちDWI(水質基準の監視機関)、Ofwat(サービス水準のモニタリングや料金の規制)、CCWater(水道顧客審議会)を創って民営化した。

 「日本の水道法改正案には、このような価格規制も盛り込まれず、イングランド以下」と皮肉る一方、「厳しい規制のあるイングランドでも、理論通りにはならなかった」と経緯を説明した。

 労働党のトニー・ブレア政権の2000−2001年にOfwatの審査で水道料金を12%値下げするも、再び急上昇。25年間で料金はインフレ率を差し引いた実質で1.5倍に高騰した。もうけた金で水道施設を更新する計画だったが、事業を請け負ったテムズウォーター社は収益をケイマン諸島の租税回避地に逃して会計に負債を膨らませ、老朽施設の更新のための投資を怠った。その結果、施設は朽ちるに任せ、漏水も増えた。

 関氏は「監督機関も結局、不正を見抜けなかった。消費者にとっては損ばかり」と酷評。2017年5月、イギリスの世論調査では国民の59%が水道国営化を望み、本家のPPPやPFIに対する信頼は失墜した。

 2018年1月の英国会計検査院(NAO)のレポートは「PFIが公的な財政にプラスであるという証拠は乏しい。総じて公的に資金調達されたプロジェクトより、PFIスキームは高くつく。学校建設の分析では、政府が直接ファイナンスするよりも40%割高」との結論に至る。「日本の検査院と違って、ちゃんと仕事している」とやゆした。

 2017年9月のイギリス労働党大会でも、「PFI事業は納税者に長期間にわたり莫大なコストを負担させ、民間事業者に巨大な利益をもたらした」と総括し、新規PFIを一切認めないことと、関係職員をすべて公務員に戻すことを宣言した。

 こうした経緯を踏まえ、欧州会計検査院も「PPP/PFIは潜在的な経済的利益を得る手段としては非効率」との結論を出さざるを得なかった。

 上下分離式による民営化の妥当性について、関氏は「電力では自由化すると価格が下がるので適している。各発電会社の作った電気が同じ送電網を共有できるから。しかし、水道は複数の会社が同じ水道管を共有することは不可能。水供給は必然的に地域独占になり、価格はほぼ確実に上がるので、自由化の意味がない」と指摘する。

 関氏は、水という財についての新自由主義者と宇沢弘文氏の捉え方の違いを明示した。新自由主義者の主張として、ロジャー・ミラー氏らの「需要と供給の法則は貫徹する」「水の価格が上昇すると、水の供給者は消費財への供給を増やす。方法には、河川の流れる方向を変えるなどがある」などを紹介。
 
 関氏は「川の流れを変えると簡単に言って、生態系のことなど一切考えない。これがノーベル経済学賞のレベル」と皮肉った。

図2
   図2

 一方、一般財と社会的共通資本が生む財の需要供給線の対比を示し、「水は価格が高くても低くても買う。需要量はあまり動かず、価格弾力性が低い」との宇沢氏の説を紹介。「弾力性が高いと供給が少し減っても価格はあまり変化しないが、弾力性が低いと、ちょっと供給が減っただけで価格がぐんと上がる(図2)。消費者が安定して生活することが不可能。水やコメの値段が2倍になったら、毎年の家計は持たない」と生活必需性の高い財を市場に委ねる危険性を指摘した。

 その上で、「生活者の権利は、憲法25条が規程した通り守らなければならない。だから、宇沢先生はTPPに反対した。WTO(世界貿易機関)が例外なき関税化、貿易の原則自由化を言い始めてから、穀物の実質価格がジェットコースターのように乱高下して、暮らせなくなって中東の争乱が起きた。『アラブの春』の裏で、貧困にあえぐ人たちが暴動を起こしたのが真相」と看破した。

図3
   図3

 水道民営化の国内例として、当時の橋下徹市長が進めた大阪市の例を挙げた。
同市の主張はこうだ。/綣要は水道施設の給水能力に対し54%にまで落ち込んでいるので、ダウンサイジングが必要(図3)。∀卦犹楡澆鮟ど・更新する必要。,鉢△鯔たすためには上下分離・コンセッション方式の民営化が必要である−−というもの。

 「しかし、民営化しなくとも,鉢△浪椎宗所有と経営が分離するコンセッション方式は、かえって無責任になりやすい」と指摘。「公営を維持しつつ、不要な事業を削って,鉢△謀祥僂垢譴个いぁ廚伴臘イ靴拭

 長崎県と佐世保市が計画する石木(いしき)ダムや群馬県の八ッ場(やんば)ダム建設が水需要の高まりを想定している一方、水道民営化は水需要の低下を理由にしている矛盾を指摘。「年間2300億円のダム予算を、老朽化した水道施設の修繕に当てれば、十分な費用が捻出できる」と指摘した。

 フランス、パリ市の再公営化例を挙げ、「元の公営化ではなく、市民が監督し、予算をチェックする体制を講じた。ダム計画に象徴される社会主義的官僚経営と、水道民営化に象徴される新自由主義的民営化の両失敗を乗り越えている」と紹介。

 「市民参加の新しい公営が、宇沢先生の目指した社会的共通資本のあるべき姿」と強調した。

※1 PFI……Private Finance Initiative:公共施設等の建設や維持管理、運営などを民間の資金や経営・技術能力を活用して行う新たな手法
※2 PPP……Public Private Partnership:公共サービスの提供において何らかの形で民間が参画する方法を幅広く捉えた概念
※3 コンセッション方式……利用料金の徴収を行う公共施設について、施設の所有権を公共主体が有したまま、施設の運営権を民間事業者に設定する方式

世界の潮流は再公営化、あなたの自治体は大丈夫?

 三雲氏は「法的見地からの水道民営化諸問題」の演題で話した。

IMG_4135
  三雲氏(2018.10.15筆者撮影)

 PPP/PFIについて7つの累計を示し、「今回の水道法改正によって政府がやろうとしているのは、コンセッション方式と呼ばれるもの。公共施設等の運営権を設定し、民間事業者が運営できるようにする」と切り出し、その根拠がPFI法にあることを説明した。

図4
   図4

 「PFIの下では、民間事業者に一括して公共施設等の設計や建設、維持管理、運営まで委託する。コンソーシアムを組み、その中心に設けられるのがSPCと呼ばれる民間事業者。ただし、これはお金が集まったただの箱で、従業員は雇っていない。金融機関から資金調達をし、建設会社や不動産会社などに発注を掛けていく(図4)」

図5
   図5

 公共事業における従来方式とPFI方式の事業費の内訳を対照し、後者では会計士や法律家、アドバイザーなどへの「提案経費」を利益から払わなければならない上、民間の借入金利は公債発行より割高なことを挙げ、「PFIが成立するには、これらの合計以上のコスト圧縮ができなければならない」と指摘した(図5)。

 政府のPPP/PFI推進施策として、2013年度の「推進アクションプラン」(総務省)を紹介。ここでは今後10年間で12兆円のPPP/PFI事業規模の達成を掲げ、数カ月後には目標を21兆円に変更している。翌年には、インフラ老朽化への対応のため、自治体に対して固定資産台帳および公共施設等総合管理計画の2016年度末までの策定を要請した。

 2017年の内閣府「多様なPPP/PFI手法導入を優先的に検討するための指針」はさらに一歩踏み込み、「10億円以上の建設を伴うか、単年度事業費が1億円以上の運営・維持管理事業はPPP/PFI手法の導入が適切か否かの検討を優先して行うべき」としている。

 「推進アクションプラン」の2018年改訂版「公的不動産における官民連携の推進」には、「新たな投資ビジネス機会を創出」「公的不動産の活用への民間事業者の参入を促す」などの文言が躍った。

 三雲氏は「固定資産台帳や公共施設等総合管理計画は、いつごろ造ったどの施設でいつ更新時期が来るか、いつ改修を行うかを明示するもの。新宿区もばか真面目に作った。ところが老朽化への対応のためとする当初の目的と、ビジネスの種になるようにというのは二枚舌だ」と顔をしかめる。

 今回の水道法改正案の趣旨には、「人口減少に伴う水の需要の減少、水道施設の老朽化、深刻化する人材不足等の水道の直面する課題に対応し、水道の基盤の強化を図るため、所要の措置を講ずる」とある。

 「ダウンサイジングや基盤強化が必要との考え方は基本的に間違っていない。公共の努力が一層求められるのに、民間に渡すことによって解決しようという発想が全く理解できない」と突き放す。

 その上で、再度(図5)のグラフを示し、「どうしてコンセッション方式だとコストの低い水道事業の運営ができると言えるのか」と、経費圧縮の論拠がないことを強調した。

 改正案が基盤強化策の一つとして盛り込んでいるのが市町村の広域連携で、都道府県の積極的な関与を促す。水道事業は市町村が原則として主体になっているからだ。三雲氏は「事業の体制や料金の違いなどがあり、なかなか進まない。議会のコントロールもできず、反対している所も多い」と理解を示す一方、「でも、なぜ解決策が官民連携の推進なのか。なぜ運営権に抵当権を付け、割高な融資を受けるのか。やっぱり分からない」と首をかしげた。

 「この疑問の元をたどると、麻生発言に行き着く」と述べ、2013年4月19日の米国のCSIS(戦略国際問題研究所)での演説を紹介した。

 世界中ほとんどの国ではプライベートの会社が水道を運営しているが、日本では自治省以外ではこの水道を扱うことはできません。しかし水道の料金を回収する99.9%というようなシステムを持っている国は日本の水道会社以外にありませんけれども、この水道は全て国営もしくは市営・町営でできていて、こういったものを全て民営化します


 「日本がTPP交渉に参加するかしないかというとき。この話の後、米国から許可をもらった。ある意味、入場料として払っていると思う」と分析するとともに、竹中平蔵・パソナグループ会長の発言も紹介。

 公共施設等の運営権、コンセッション方式は、建設業等インフラ関連企業や投資家にとって大きな新規のビジネスチャンスとなる成長戦略の柱の一つである(2014年5月19日産業競争力会議フォローアップ分科会)

 「皆さまが税金で一生懸命造ってきた公共施設は、竹中先制のビジネスチャンスですということが今、政府の中で言われている。こういう議論をしている人たちが自治体に対し、PPP/PFIを優先的に検討しろと押し付けている。自治体は跳ね返さなければ」と訴えた。

 今年5月、水道法改正案の提出と平仄(ひょうそく)を合わせるかのように改正PFI法が成立した。三雲氏は、国の支援機能を強化する項目に注目する。

 公共施設等の管理者やPPP/PFI事業を行い、または行おうとする民間事業者は内閣総理大臣に対し、PPP/PFI事業に関する国等の支援措置の内容や規制法等について問い合わせることができ、問い合わせ受けた総理大臣は回答、さらに助言も行うことができる(15条の2)

 「これはそのまま、森友や加計学園に使える。『おたくが持っている新宿庁舎いいね。更新時期になったらうちにやらせてよ』と迫られ、区が『嫌です』と返すと、民間事業者が総理に『あいつらこんなことを言っている。けしからん』と通報する。総理は『よし、分かった』と紹介していくことに」

 改正法では『特定の民間事業者への誘導や、地方公共団体の判断への介入を疑われることのないよう、適正かつ公正な運用が必要』との付帯決議が設けられたが、「今の政権にできるのか」といぶかる。

 「PPP/PFIを優先的に検討しろという圧力の高まりの中、民営化に舵を切らざるを得ない自治体も出てくる」と表現し、静岡県浜松市が今年4月から下水道事業をフランスのヴェオリアらのグループとコンセッション方式の契約を結んだ事例を紹介。同市は上水道の民営化も検討中とのこと。

 「欧州・英国での水道民営化に悲惨な評価が下されている。PFIによる効率化には、大きな疑問符が付く」とイングランドの水道事業の決算報告を紹介。年間約2719億円の配当金が投資家に払われ、2197億円の利息が金融機関に払われている。収益はタックスヘイブンに逃れ、課税されずに回っていく。再公営化した場合、一世帯当たりの水道料金が約1万6690円節約できるとの試算も。

 NAOが2018年1月に出した報告書によれば、PFIは公共による資金調達より2〜4%金利が高く、さらに多額の付加的費用(資金調達のアレンジメント報酬が元本の1%程度、マネージメント報酬が事業総額の1〜2%など)がかかるとしている。

 三雲氏が現地を訪ね、労働党関係者に導入の理由を聞いたところ、一時的にであれ、公債発行を抑えるのに有利に見えたからだという。VFM(投資したお金当たりの価値)が高く見積もることができたのである。

 英国でのPFI事業は2007年〜08年をピークに減少し、現在では1990年代初頭よりも案件の額が少ない。当時の関係者は「財政規律の下、公共事業はPFIに頼らざるを得なかった。もう一つは、金融屋に取り込まれたこと。彼らが主導していた」と明かしたという。

 世界では、パリ市水道やバルセロナ市水道、アトランタ市水道など267の水道事業が再公営化した。公共サービス全体では、ごみ処理やエネルギーなど、835の再公営化事例が存在する。

 三雲氏は「これが世界の潮流」と強調しながら、「なぜ公共サービスとされているのか、もう1度考え直さなければ。「皆さんの自治体ではPPP/PFI優先的検討規程を導入しているか調べ、地域の議員さんに再公営化が世界の潮流であることを伝え、考えてもらおう」と呼び掛けた。

種の独占でコシヒカリが食べられなくなる?

 山田氏は「TPPと私たちの暮らし〜水、種子、食〜」の題で種子法廃止の影響とこれに対抗する動きを説明した。

IMG_4146
  山田氏(2018.10.15筆者撮影)

 8年間にわたって反TPP運動の先頭に立ってきた山田氏は、「30章8000ページからなる同協定文書の中に、総額70兆円を超える公共サービスを狙っている記述が見受けられる」と切り出した。

 米韓FTAが韓国に200本の国内法を整備させたことを引き合いに、「
日本では種子法廃止や産業競争力強化支援法、水道法改正、漁協法改正など少なくとも8つの法律が変更されようとしている」と指摘。

 「2016年2月4日、ニュージーランドで協定に署名したとき、米国と交わした文書に重要な記述がある」と述べ、「保険などの関税措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の書簡」の一部を紹介した。

 日本国政府は2020年までに外国からの対内直接投資残高を少なくとも倍増させることを目指す日本国政府の成長戦略に沿って…(略)…外国投資家その他利害関係者から意見及び提言を求め…(略)…規制改革会議の提言に従って必要な措置をとる

 山田氏は「これでは独立国といえない。国権の最高機関である国会の役割とは何なのか」と提起した。

 種子法廃止は2016年10月6日の規制改革推進会議(第4回農業ワーキング・グループ会合)で提案され、翌年3月に衆院通過、4月に参院可決・成立し、今年4月施行と短期間に実行されたことを説明。TPP違憲訴訟もけん引してきた山田氏は、1月31日の東京高裁での棄却判決のとき、杉原則彦裁判長が「種子法の廃止はTPP協定が背景にあることは否定できない」と認めたことを紹介した。

 多様性が失われる危険性もある。「種子法があることで、各都道府県はコシヒカリやササニシキをはじめとする各銘柄の原種・原原種維持のため予算を投じてきた。同法廃止とほぼ同時に成立した農業競争力強化支援法には『既存の多数の銘柄を集約する』との方向が示されている」と山田氏。

 わが国には1000種類を超えるコメの品種があり、都道府県の奨励品種はおよそ300に及ぶ。多様であることは、安定性を高める。感染症や害虫被害などが襲えば、1度で全滅する可能性もあるからだ。原種・原原種を守るには莫大な労力と高度な専門知識が必要で、農家単独でできるものではない。

 種子法廃止の理由は「民間企業の参入を阻害している」というもの。しかし、すでに民間品種を奨励品種に認定している都道府県もある。このままでは農家の経営を圧迫し、消費者である国民は安全なコメを口にするのが難しくなると警告する。

 「コシヒカリの種子は1キロ当たり500円だが、三井化学アグロ『みつひかり』は3500〜4000円と高い。業者は化学肥料と農薬とセットで農家に販売する。こうした民間種子はF1(1代雑種)で、毎年種子を購入しなくてはならない」と指摘した。同社は20012年にモンサントと提携している。

 野菜の種子については40年ほど前まで国産100%だったが、今では90%が海外生産のF1品種。価格も当時1円程度だったものが、今では40〜50円になった。

 山田氏は昨年8月、日本モンサントの「遺伝子組み換え作物の圃(ほ)場見学会」に参加した。その際見たことは同社の承諾がないと発表できないとの覚え書きに署名されたため詳細は言えないと断った上で、「日本の野菜の種子はモンサントが作っている」と聞いたことを明かした。「委託生産なので、パッケージには書いてありません」。

図6
   図6(『タネはどうなる?!−種子法廃止と種苗法運用で−』山田正彦(サイゾー)より)

 すでに、世界の種子市場の7割弱が6つの遺伝子組み換え企業(モンサント、シンジェンタ、ダウ・ケミカル、デュポン、バイエル、BASF)に占められている(図6)。わが国の主食であるコメについては今のところF1種にとどまるが、不妊の原因と指摘する学者も多い。

図7
   図7政府が種苗法廃止の説明会で配付した資料

 「みつひかりは『収量は1.2〜1.4倍。味はコシヒカリ以上』との触れ込みで農家に売り込んでいる。しかし、肥料は3〜4割高で、農薬とセットで買わされる。『みつひかり』は牛丼屋のコメ、『つくばSD』(住友化学)はセブンイレブンのおにぎりに使われている(図7)」

 山田氏はつくばSDの契約書を農家に見せてもらい、驚いたという。第13条「事故、災害の処理」は次のように記されていた。

 乙(生産者)は、生産業務に関連して損害が生じた場合はその負担と責任において一切の問題を処理解決する。ただし甲(会社)の責めに帰すべき事由の場合にはこの限りではない

 気候変動に由来する冷害や台風、ゲリラ豪雨などによって予定された収量が出荷できなくなった場合、損害賠償分を農家が負担することになる。山田氏が訪ねた農家は初年60キロ当たり1万2000円、翌年1万円、3年目に9000円になったので栽培をやめたと語った。「しかし、安いという理由で解除することも賠償責任を問われる恐れがある」と警告する。

 最後に山田氏はこう警鐘を鳴らした。「モンサントなどにロイヤルティーを払わなければコメが作れなくなるかもしれない」。NAFTA(北米自由貿易協定)を結んだメキシコや、ロックフェラー財団が化学農法を駆使する「緑の革命」の拠点にしたフィリピンの惨状を見てのこと。農業競争力強化支援法第8条4項には、次のように記されている。

 四 種子その他の種苗について、民間事業者が行う技術開発及び新品種の育成その他の種苗の生産及び供給を促進するとともに、独立行政法人の試験研究機関及び都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供を促進すること

 新潟県総合農業研究所が開発した新品種「新之助」は、育種登録したばかり。山田氏は農水省穀物課長に「無償で提供するのか」と聞くと、「有償です。契約を交わしてから提供します」と答えた。

 「農研機構(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)や都道府県から知見の提供を受けたモンサントやダウ・デュポンなど巨大種子企業がこれら新品種を基にF1品種や除草剤耐性の遺伝子組み換え品種に応用特許を申請するかもしれない。そうなれば、農家は高いロイヤルティーを払わなければ伝統的固定種も作れず、われわれ消費者はコシヒカリやあきたこまちも食べられなくなる日が来るかもしれない」

 山田氏は昨年の種子法廃止法案の成立後、「種子(たね)を守る会」を結成し、対抗措置を講じるよう、全国に呼び掛けてきた。各市町村議会に首相および衆参両議院長宛ての意見書の提出と、知事宛ての条例制定請願を促した。その結果、今年に入り新潟、兵庫、埼玉、富山で種子法に代わる種子条例が制定された。

 北海道・長野・山形・岩手の各県でも制定の動きがあることや、野党6党提出の種子法復活法案が継続審議になったことを報告し、次のように参加者を鼓舞した。

 「たった1年の運動で、ここまで押し戻した。地方からやれば変えられると確信した。市町村議会に書面で『検討してくれ』と提出すれば、必ず審議しなければならない。読めば、誰もがおかしいと思うはず。水道法改正もつぶしてやろう」と呼び掛けると、万雷の拍手を浴びた。

IMG_4152
  川田氏(2018.10.15筆者撮影)

 急きょ駆け付けた川田龍平参院議員(立憲)はマイクを受け、「わたしも薬害エイズをやってきた関係で、命の問題は無視できないテーマ」とあいさつした。「日本のあらゆる慣例が、一気に次々と国民に知らされないまま壊されていっている。そうして法律になってから知らされてく状況が、マスコミによってもつくられている」と嘆いた。

 妻、堤未果氏の新著『日本が売られる』(幻冬舎)を手に、「産毛をむしり取られるように書いた本」と紹介。水が売られ、土が売られ、種が売られ、労働者が売られ、命を守れなくなっている。もっと多くの国民に知らせていきたい。一人ひとり、地方の人たちが立ち上がることで、変えていくことが必要。私も、阻止するために頑張りたい」と誓った。

IMG_4155
  左から安田・関・三雲・山田の各氏(2018.10.15筆者撮影)

 質疑応答の時間が設けられ、AJPC運営委員で「食政策センターvision21」安田節子代表がコーディネーターを務める中、建設的な提案や活発な意見も出された。

uekusa
     植草氏(UPLAN様より拝借)

 経済学者でAJPC運営委員の植草一秀氏は閉会のあいさつで、来年3日2日、日本教育会館大ホールで開催予定の「愛・夢・希望の市民政権樹立へ−統一地方選・参院選必勝宣言! オールジャパン総決起集会」を告知。「日本を変えるため、一緒に頑張っていきましょう」と結んだ。

IMG_4112
      司会の佐久間敬子運営委員(2018.10.15筆者撮影)

IMG_4140
  熱心に話を聞く市民(2018.10.15筆者撮影)

■参考サイト
「オールジャパン平和と共生」公式ホームページ
新聞に載らなかったトンデモ投稿
亀井静香―最後の戦いだ。
亀井静香が吠える 痛快言行録
偽装報道を見抜け!世論を誘導するマスメディ…
Archives
記事検索
ご支援のお願い
 このブログでは、マスコミが伝えない社会の動きや事象分析を紹介したいと考えています。取材・執筆には時間と労力がかかります。     つきましては、当ブログの記事に賛同いただける皆さまに寄付を賜りたく、お願い申し上げます。少額でも助けと励みになりますので、ご理解とご協力をいただければ幸甚の至りです。

       高橋清隆

郵便局からのお振り込み
【記号】13160   
【番号】10900411

銀行からのお振り込み
【口座】ゆうちょ銀行  
【店名】三一八(読み:サンイチハチ)
【店番】318     
【預金種目】普通預金  
【口座番号】 1090041 
【口座名】盒鏡粁粥  

著者プロフィール


反ジャーナリスト。金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了。ローカル新聞記者、公益法人職員などを経て、2005年から現職。『週刊金曜日』『ZAITEN』『月刊THEMIS(テーミス)』などに記事を掲載。  著書に『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)『亀井静香が吠える』(K&Kプレス)『亀井静香—最後の戦いだ。』(同)『新聞に載らなかったトンデモ投稿』(パブラボ)。           

メールはこちらから
livedoor プロフィール

donnjinngannbohnn