高橋清隆の文書館

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TPP

市民10人が日欧EPA批准に抗議 雨の国会前

Net IB Newsに記事を書きました。
https://www.data-max.co.jp/article/26721

国民の水や種を売る政治を告発 オールジャパン学習会[詳報]

 国民25%の団結でグローバル資本追従政治からの脱却を目指す「オールジャパン・平和と共生(AJPC)」が10月15日、国会議員会館内で学習会を開き、市民170人が関良基(せき・よしき)・拓殖大学教授や三雲崇正・新宿区議(弁護士)、山田正彦・元農水相(弁護士)から水道民営化や種子法廃止の問題点について話を聞いた。

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  原中氏(2018.10.15筆者撮影)

 AJPC最高顧問を務める原中勝征・前日本医師会会長は「今、私たちがこういう題名で学習会を開かなければならないことは残念なこと。このままでいけば、われわれが目指す平和と共生の日本が残るか甚だ疑問だ」と警告。

 問題の一つに憲法改正を挙げ、「長い日本の歴史の中で、わずか数年しか務めない総理大臣が日本の将来まで勝手に変えてしまう専制政治を、1日も早くやめさせなければ」と訴えた。

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  川内氏(2018.10.15筆者撮影)

 来賓として出席した川内博史衆院議員(立憲)は「森友・加計だけでなく、すべての政治行政の分野でうそ、ごまかしが横行している。TPP(環太平洋連携協定)や水道民営化もその一つ。規制緩和は良いことであるというイメージを刷り込み、私たちから富を搾取している」と糾弾した。

 一方、9月30日の沖縄知事選での玉城デニー候補の勝利に触れ、「日本国民全体に良い影響を与えている。沖縄は日本政治のうそ、ごまかしの象徴だった。憲法を無視して戦争国家、米国に基地を押し付け本土も見て見ぬふりをしてきた」と指摘。安倍晋三内閣が来年7月には憲政史上最長になることを挙げ、「教科書にこんな恥ずかしいことを書かせてはならない。次期参院選で引導を渡そう」と訴えた。

水道事業は市民参加の新しい公営で

 関氏は「社会的共通資本としての『水』」の題で、継続審議になっている水道法改正の問題点を解説した。

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 関氏(2018.10.15筆者撮影)

 『社会的共通資本としての森』(東京大学出版会)を共に著した故宇沢弘文・東大名誉教授を師と仰ぐ関氏は、「宇沢先生の生涯の敵がミルトン・フリードマンだった。新自由主義者のフリードマンは、万物を商品化できるという幻想を抱いている」と批判した。

 「民営化してよい財と悪い財がある」として、「主流派経済学」のポール・サミュエルソンによる公共財の条件を紹介した。すなわち、“麈喀性(特定の利用者を排除できないという特質)非競合性(多数が一斉に利用しても混雑しない)自然独占(初期コストが大きく規模の経済効果が働く)である。

 「しかし、水道の場合,脇団衢用者に給水停止できるし△和真瑤凌諭垢使用すれば水が足りなくなる。従って民営化が許されることに。こんなおかしな話があるかと、宇沢先生は社会的共通資本という概念をつくった」と披歴した。

 サミュエルソンはを、初期費用は膨大だが、供給拡大による規模の経済効果で、次第に費用が低減する。後発企業が参入不可能なため、独占になる。独占価格による消費者の不利益を抑制するための公営事業と定義。唯一、これだけが水道にも当てはまる。

 「これを民営化すれば、独占価格を設定しようとする誘因は増大し、価格が上昇する。独占なら、サービス改善の誘因も働かないので、政府がやった方がいい。だから民営化は間違い」と両断した。

図1
   図1

 公共性と効率性が両立可能であるとする新自由主義者の主張を紹介。投資したお金当たりの価値(Value for Money:VFM)を縦軸、官から民へのリスク移転を横軸に取ると、中央で山なりになる放物線を描くグラフができる(図1)。VFMが最大化する位置があるはずとの考え方で、その場所がすなわちPFI(※1)やPPP(※2)のコンセッション方式(※3)との理屈だ。

 関氏は、「可能であることと、実際に履行されることとは別問題」として、英国イングランドの水道民営化の事例を示した。サッチャー政権下の1989年、水質や料金などを審査する3つの規制機関、すなわちDWI(水質基準の監視機関)、Ofwat(サービス水準のモニタリングや料金の規制)、CCWater(水道顧客審議会)を創って民営化した。

 「日本の水道法改正案には、このような価格規制も盛り込まれず、イングランド以下」と皮肉る一方、「厳しい規制のあるイングランドでも、理論通りにはならなかった」と経緯を説明した。

 労働党のトニー・ブレア政権の2000−2001年にOfwatの審査で水道料金を12%値下げするも、再び急上昇。25年間で料金はインフレ率を差し引いた実質で1.5倍に高騰した。もうけた金で水道施設を更新する計画だったが、事業を請け負ったテムズウォーター社は収益をケイマン諸島の租税回避地に逃して会計に負債を膨らませ、老朽施設の更新のための投資を怠った。その結果、施設は朽ちるに任せ、漏水も増えた。

 関氏は「監督機関も結局、不正を見抜けなかった。消費者にとっては損ばかり」と酷評。2017年5月、イギリスの世論調査では国民の59%が水道国営化を望み、本家のPPPやPFIに対する信頼は失墜した。

 2018年1月の英国会計検査院(NAO)のレポートは「PFIが公的な財政にプラスであるという証拠は乏しい。総じて公的に資金調達されたプロジェクトより、PFIスキームは高くつく。学校建設の分析では、政府が直接ファイナンスするよりも40%割高」との結論に至る。「日本の検査院と違って、ちゃんと仕事している」とやゆした。

 2017年9月のイギリス労働党大会でも、「PFI事業は納税者に長期間にわたり莫大なコストを負担させ、民間事業者に巨大な利益をもたらした」と総括し、新規PFIを一切認めないことと、関係職員をすべて公務員に戻すことを宣言した。

 こうした経緯を踏まえ、欧州会計検査院も「PPP/PFIは潜在的な経済的利益を得る手段としては非効率」との結論を出さざるを得なかった。

 上下分離式による民営化の妥当性について、関氏は「電力では自由化すると価格が下がるので適している。各発電会社の作った電気が同じ送電網を共有できるから。しかし、水道は複数の会社が同じ水道管を共有することは不可能。水供給は必然的に地域独占になり、価格はほぼ確実に上がるので、自由化の意味がない」と指摘する。

 関氏は、水という財についての新自由主義者と宇沢弘文氏の捉え方の違いを明示した。新自由主義者の主張として、ロジャー・ミラー氏らの「需要と供給の法則は貫徹する」「水の価格が上昇すると、水の供給者は消費財への供給を増やす。方法には、河川の流れる方向を変えるなどがある」などを紹介。
 
 関氏は「川の流れを変えると簡単に言って、生態系のことなど一切考えない。これがノーベル経済学賞のレベル」と皮肉った。

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   図2

 一方、一般財と社会的共通資本が生む財の需要供給線の対比を示し、「水は価格が高くても低くても買う。需要量はあまり動かず、価格弾力性が低い」との宇沢氏の説を紹介。「弾力性が高いと供給が少し減っても価格はあまり変化しないが、弾力性が低いと、ちょっと供給が減っただけで価格がぐんと上がる(図2)。消費者が安定して生活することが不可能。水やコメの値段が2倍になったら、毎年の家計は持たない」と生活必需性の高い財を市場に委ねる危険性を指摘した。

 その上で、「生活者の権利は、憲法25条が規程した通り守らなければならない。だから、宇沢先生はTPPに反対した。WTO(世界貿易機関)が例外なき関税化、貿易の原則自由化を言い始めてから、穀物の実質価格がジェットコースターのように乱高下して、暮らせなくなって中東の争乱が起きた。『アラブの春』の裏で、貧困にあえぐ人たちが暴動を起こしたのが真相」と看破した。

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   図3

 水道民営化の国内例として、当時の橋下徹市長が進めた大阪市の例を挙げた。
同市の主張はこうだ。/綣要は水道施設の給水能力に対し54%にまで落ち込んでいるので、ダウンサイジングが必要(図3)。∀卦犹楡澆鮟ど・更新する必要。,鉢△鯔たすためには上下分離・コンセッション方式の民営化が必要である−−というもの。

 「しかし、民営化しなくとも,鉢△浪椎宗所有と経営が分離するコンセッション方式は、かえって無責任になりやすい」と指摘。「公営を維持しつつ、不要な事業を削って,鉢△謀祥僂垢譴个いぁ廚伴臘イ靴拭

 長崎県と佐世保市が計画する石木(いしき)ダムや群馬県の八ッ場(やんば)ダム建設が水需要の高まりを想定している一方、水道民営化は水需要の低下を理由にしている矛盾を指摘。「年間2300億円のダム予算を、老朽化した水道施設の修繕に当てれば、十分な費用が捻出できる」と指摘した。

 フランス、パリ市の再公営化例を挙げ、「元の公営化ではなく、市民が監督し、予算をチェックする体制を講じた。ダム計画に象徴される社会主義的官僚経営と、水道民営化に象徴される新自由主義的民営化の両失敗を乗り越えている」と紹介。

 「市民参加の新しい公営が、宇沢先生の目指した社会的共通資本のあるべき姿」と強調した。

※1 PFI……Private Finance Initiative:公共施設等の建設や維持管理、運営などを民間の資金や経営・技術能力を活用して行う新たな手法
※2 PPP……Public Private Partnership:公共サービスの提供において何らかの形で民間が参画する方法を幅広く捉えた概念
※3 コンセッション方式……利用料金の徴収を行う公共施設について、施設の所有権を公共主体が有したまま、施設の運営権を民間事業者に設定する方式

世界の潮流は再公営化、あなたの自治体は大丈夫?

 三雲氏は「法的見地からの水道民営化諸問題」の演題で話した。

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  三雲氏(2018.10.15筆者撮影)

 PPP/PFIについて7つの累計を示し、「今回の水道法改正によって政府がやろうとしているのは、コンセッション方式と呼ばれるもの。公共施設等の運営権を設定し、民間事業者が運営できるようにする」と切り出し、その根拠がPFI法にあることを説明した。

図4
   図4

 「PFIの下では、民間事業者に一括して公共施設等の設計や建設、維持管理、運営まで委託する。コンソーシアムを組み、その中心に設けられるのがSPCと呼ばれる民間事業者。ただし、これはお金が集まったただの箱で、従業員は雇っていない。金融機関から資金調達をし、建設会社や不動産会社などに発注を掛けていく(図4)」

図5
   図5

 公共事業における従来方式とPFI方式の事業費の内訳を対照し、後者では会計士や法律家、アドバイザーなどへの「提案経費」を利益から払わなければならない上、民間の借入金利は公債発行より割高なことを挙げ、「PFIが成立するには、これらの合計以上のコスト圧縮ができなければならない」と指摘した(図5)。

 政府のPPP/PFI推進施策として、2013年度の「推進アクションプラン」(総務省)を紹介。ここでは今後10年間で12兆円のPPP/PFI事業規模の達成を掲げ、数カ月後には目標を21兆円に変更している。翌年には、インフラ老朽化への対応のため、自治体に対して固定資産台帳および公共施設等総合管理計画の2016年度末までの策定を要請した。

 2017年の内閣府「多様なPPP/PFI手法導入を優先的に検討するための指針」はさらに一歩踏み込み、「10億円以上の建設を伴うか、単年度事業費が1億円以上の運営・維持管理事業はPPP/PFI手法の導入が適切か否かの検討を優先して行うべき」としている。

 「推進アクションプラン」の2018年改訂版「公的不動産における官民連携の推進」には、「新たな投資ビジネス機会を創出」「公的不動産の活用への民間事業者の参入を促す」などの文言が躍った。

 三雲氏は「固定資産台帳や公共施設等総合管理計画は、いつごろ造ったどの施設でいつ更新時期が来るか、いつ改修を行うかを明示するもの。新宿区もばか真面目に作った。ところが老朽化への対応のためとする当初の目的と、ビジネスの種になるようにというのは二枚舌だ」と顔をしかめる。

 今回の水道法改正案の趣旨には、「人口減少に伴う水の需要の減少、水道施設の老朽化、深刻化する人材不足等の水道の直面する課題に対応し、水道の基盤の強化を図るため、所要の措置を講ずる」とある。

 「ダウンサイジングや基盤強化が必要との考え方は基本的に間違っていない。公共の努力が一層求められるのに、民間に渡すことによって解決しようという発想が全く理解できない」と突き放す。

 その上で、再度(図5)のグラフを示し、「どうしてコンセッション方式だとコストの低い水道事業の運営ができると言えるのか」と、経費圧縮の論拠がないことを強調した。

 改正案が基盤強化策の一つとして盛り込んでいるのが市町村の広域連携で、都道府県の積極的な関与を促す。水道事業は市町村が原則として主体になっているからだ。三雲氏は「事業の体制や料金の違いなどがあり、なかなか進まない。議会のコントロールもできず、反対している所も多い」と理解を示す一方、「でも、なぜ解決策が官民連携の推進なのか。なぜ運営権に抵当権を付け、割高な融資を受けるのか。やっぱり分からない」と首をかしげた。

 「この疑問の元をたどると、麻生発言に行き着く」と述べ、2013年4月19日の米国のCSIS(戦略国際問題研究所)での演説を紹介した。

 世界中ほとんどの国ではプライベートの会社が水道を運営しているが、日本では自治省以外ではこの水道を扱うことはできません。しかし水道の料金を回収する99.9%というようなシステムを持っている国は日本の水道会社以外にありませんけれども、この水道は全て国営もしくは市営・町営でできていて、こういったものを全て民営化します


 「日本がTPP交渉に参加するかしないかというとき。この話の後、米国から許可をもらった。ある意味、入場料として払っていると思う」と分析するとともに、竹中平蔵・パソナグループ会長の発言も紹介。

 公共施設等の運営権、コンセッション方式は、建設業等インフラ関連企業や投資家にとって大きな新規のビジネスチャンスとなる成長戦略の柱の一つである(2014年5月19日産業競争力会議フォローアップ分科会)

 「皆さまが税金で一生懸命造ってきた公共施設は、竹中先制のビジネスチャンスですということが今、政府の中で言われている。こういう議論をしている人たちが自治体に対し、PPP/PFIを優先的に検討しろと押し付けている。自治体は跳ね返さなければ」と訴えた。

 今年5月、水道法改正案の提出と平仄(ひょうそく)を合わせるかのように改正PFI法が成立した。三雲氏は、国の支援機能を強化する項目に注目する。

 公共施設等の管理者やPPP/PFI事業を行い、または行おうとする民間事業者は内閣総理大臣に対し、PPP/PFI事業に関する国等の支援措置の内容や規制法等について問い合わせることができ、問い合わせ受けた総理大臣は回答、さらに助言も行うことができる(15条の2)

 「これはそのまま、森友や加計学園に使える。『おたくが持っている新宿庁舎いいね。更新時期になったらうちにやらせてよ』と迫られ、区が『嫌です』と返すと、民間事業者が総理に『あいつらこんなことを言っている。けしからん』と通報する。総理は『よし、分かった』と紹介していくことに」

 改正法では『特定の民間事業者への誘導や、地方公共団体の判断への介入を疑われることのないよう、適正かつ公正な運用が必要』との付帯決議が設けられたが、「今の政権にできるのか」といぶかる。

 「PPP/PFIを優先的に検討しろという圧力の高まりの中、民営化に舵を切らざるを得ない自治体も出てくる」と表現し、静岡県浜松市が今年4月から下水道事業をフランスのヴェオリアらのグループとコンセッション方式の契約を結んだ事例を紹介。同市は上水道の民営化も検討中とのこと。

 「欧州・英国での水道民営化に悲惨な評価が下されている。PFIによる効率化には、大きな疑問符が付く」とイングランドの水道事業の決算報告を紹介。年間約2719億円の配当金が投資家に払われ、2197億円の利息が金融機関に払われている。収益はタックスヘイブンに逃れ、課税されずに回っていく。再公営化した場合、一世帯当たりの水道料金が約1万6690円節約できるとの試算も。

 NAOが2018年1月に出した報告書によれば、PFIは公共による資金調達より2〜4%金利が高く、さらに多額の付加的費用(資金調達のアレンジメント報酬が元本の1%程度、マネージメント報酬が事業総額の1〜2%など)がかかるとしている。

 三雲氏が現地を訪ね、労働党関係者に導入の理由を聞いたところ、一時的にであれ、公債発行を抑えるのに有利に見えたからだという。VFM(投資したお金当たりの価値)が高く見積もることができたのである。

 英国でのPFI事業は2007年〜08年をピークに減少し、現在では1990年代初頭よりも案件の額が少ない。当時の関係者は「財政規律の下、公共事業はPFIに頼らざるを得なかった。もう一つは、金融屋に取り込まれたこと。彼らが主導していた」と明かしたという。

 世界では、パリ市水道やバルセロナ市水道、アトランタ市水道など267の水道事業が再公営化した。公共サービス全体では、ごみ処理やエネルギーなど、835の再公営化事例が存在する。

 三雲氏は「これが世界の潮流」と強調しながら、「なぜ公共サービスとされているのか、もう1度考え直さなければ。「皆さんの自治体ではPPP/PFI優先的検討規程を導入しているか調べ、地域の議員さんに再公営化が世界の潮流であることを伝え、考えてもらおう」と呼び掛けた。

種の独占でコシヒカリが食べられなくなる?

 山田氏は「TPPと私たちの暮らし〜水、種子、食〜」の題で種子法廃止の影響とこれに対抗する動きを説明した。

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  山田氏(2018.10.15筆者撮影)

 8年間にわたって反TPP運動の先頭に立ってきた山田氏は、「30章8000ページからなる同協定文書の中に、総額70兆円を超える公共サービスを狙っている記述が見受けられる」と切り出した。

 米韓FTAが韓国に200本の国内法を整備させたことを引き合いに、「
日本では種子法廃止や産業競争力強化支援法、水道法改正、漁協法改正など少なくとも8つの法律が変更されようとしている」と指摘。

 「2016年2月4日、ニュージーランドで協定に署名したとき、米国と交わした文書に重要な記述がある」と述べ、「保険などの関税措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の書簡」の一部を紹介した。

 日本国政府は2020年までに外国からの対内直接投資残高を少なくとも倍増させることを目指す日本国政府の成長戦略に沿って…(略)…外国投資家その他利害関係者から意見及び提言を求め…(略)…規制改革会議の提言に従って必要な措置をとる

 山田氏は「これでは独立国といえない。国権の最高機関である国会の役割とは何なのか」と提起した。

 種子法廃止は2016年10月6日の規制改革推進会議(第4回農業ワーキング・グループ会合)で提案され、翌年3月に衆院通過、4月に参院可決・成立し、今年4月施行と短期間に実行されたことを説明。TPP違憲訴訟もけん引してきた山田氏は、1月31日の東京高裁での棄却判決のとき、杉原則彦裁判長が「種子法の廃止はTPP協定が背景にあることは否定できない」と認めたことを紹介した。

 多様性が失われる危険性もある。「種子法があることで、各都道府県はコシヒカリやササニシキをはじめとする各銘柄の原種・原原種維持のため予算を投じてきた。同法廃止とほぼ同時に成立した農業競争力強化支援法には『既存の多数の銘柄を集約する』との方向が示されている」と山田氏。

 わが国には1000種類を超えるコメの品種があり、都道府県の奨励品種はおよそ300に及ぶ。多様であることは、安定性を高める。感染症や害虫被害などが襲えば、1度で全滅する可能性もあるからだ。原種・原原種を守るには莫大な労力と高度な専門知識が必要で、農家単独でできるものではない。

 種子法廃止の理由は「民間企業の参入を阻害している」というもの。しかし、すでに民間品種を奨励品種に認定している都道府県もある。このままでは農家の経営を圧迫し、消費者である国民は安全なコメを口にするのが難しくなると警告する。

 「コシヒカリの種子は1キロ当たり500円だが、三井化学アグロ『みつひかり』は3500〜4000円と高い。業者は化学肥料と農薬とセットで農家に販売する。こうした民間種子はF1(1代雑種)で、毎年種子を購入しなくてはならない」と指摘した。同社は20012年にモンサントと提携している。

 野菜の種子については40年ほど前まで国産100%だったが、今では90%が海外生産のF1品種。価格も当時1円程度だったものが、今では40〜50円になった。

 山田氏は昨年8月、日本モンサントの「遺伝子組み換え作物の圃(ほ)場見学会」に参加した。その際見たことは同社の承諾がないと発表できないとの覚え書きに署名されたため詳細は言えないと断った上で、「日本の野菜の種子はモンサントが作っている」と聞いたことを明かした。「委託生産なので、パッケージには書いてありません」。

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   図6(『タネはどうなる?!−種子法廃止と種苗法運用で−』山田正彦(サイゾー)より)

 すでに、世界の種子市場の7割弱が6つの遺伝子組み換え企業(モンサント、シンジェンタ、ダウ・ケミカル、デュポン、バイエル、BASF)に占められている(図6)。わが国の主食であるコメについては今のところF1種にとどまるが、不妊の原因と指摘する学者も多い。

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   図7政府が種苗法廃止の説明会で配付した資料

 「みつひかりは『収量は1.2〜1.4倍。味はコシヒカリ以上』との触れ込みで農家に売り込んでいる。しかし、肥料は3〜4割高で、農薬とセットで買わされる。『みつひかり』は牛丼屋のコメ、『つくばSD』(住友化学)はセブンイレブンのおにぎりに使われている(図7)」

 山田氏はつくばSDの契約書を農家に見せてもらい、驚いたという。第13条「事故、災害の処理」は次のように記されていた。

 乙(生産者)は、生産業務に関連して損害が生じた場合はその負担と責任において一切の問題を処理解決する。ただし甲(会社)の責めに帰すべき事由の場合にはこの限りではない

 気候変動に由来する冷害や台風、ゲリラ豪雨などによって予定された収量が出荷できなくなった場合、損害賠償分を農家が負担することになる。山田氏が訪ねた農家は初年60キロ当たり1万2000円、翌年1万円、3年目に9000円になったので栽培をやめたと語った。「しかし、安いという理由で解除することも賠償責任を問われる恐れがある」と警告する。

 最後に山田氏はこう警鐘を鳴らした。「モンサントなどにロイヤルティーを払わなければコメが作れなくなるかもしれない」。NAFTA(北米自由貿易協定)を結んだメキシコや、ロックフェラー財団が化学農法を駆使する「緑の革命」の拠点にしたフィリピンの惨状を見てのこと。農業競争力強化支援法第8条4項には、次のように記されている。

 四 種子その他の種苗について、民間事業者が行う技術開発及び新品種の育成その他の種苗の生産及び供給を促進するとともに、独立行政法人の試験研究機関及び都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供を促進すること

 新潟県総合農業研究所が開発した新品種「新之助」は、育種登録したばかり。山田氏は農水省穀物課長に「無償で提供するのか」と聞くと、「有償です。契約を交わしてから提供します」と答えた。

 「農研機構(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)や都道府県から知見の提供を受けたモンサントやダウ・デュポンなど巨大種子企業がこれら新品種を基にF1品種や除草剤耐性の遺伝子組み換え品種に応用特許を申請するかもしれない。そうなれば、農家は高いロイヤルティーを払わなければ伝統的固定種も作れず、われわれ消費者はコシヒカリやあきたこまちも食べられなくなる日が来るかもしれない」

 山田氏は昨年の種子法廃止法案の成立後、「種子(たね)を守る会」を結成し、対抗措置を講じるよう、全国に呼び掛けてきた。各市町村議会に首相および衆参両議院長宛ての意見書の提出と、知事宛ての条例制定請願を促した。その結果、今年に入り新潟、兵庫、埼玉、富山で種子法に代わる種子条例が制定された。

 北海道・長野・山形・岩手の各県でも制定の動きがあることや、野党6党提出の種子法復活法案が継続審議になったことを報告し、次のように参加者を鼓舞した。

 「たった1年の運動で、ここまで押し戻した。地方からやれば変えられると確信した。市町村議会に書面で『検討してくれ』と提出すれば、必ず審議しなければならない。読めば、誰もがおかしいと思うはず。水道法改正もつぶしてやろう」と呼び掛けると、万雷の拍手を浴びた。

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  川田氏(2018.10.15筆者撮影)

 急きょ駆け付けた川田龍平参院議員(立憲)はマイクを受け、「わたしも薬害エイズをやってきた関係で、命の問題は無視できないテーマ」とあいさつした。「日本のあらゆる慣例が、一気に次々と国民に知らされないまま壊されていっている。そうして法律になってから知らされてく状況が、マスコミによってもつくられている」と嘆いた。

 妻、堤未果氏の新著『日本が売られる』(幻冬舎)を手に、「産毛をむしり取られるように書いた本」と紹介。水が売られ、土が売られ、種が売られ、労働者が売られ、命を守れなくなっている。もっと多くの国民に知らせていきたい。一人ひとり、地方の人たちが立ち上がることで、変えていくことが必要。私も、阻止するために頑張りたい」と誓った。

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  左から安田・関・三雲・山田の各氏(2018.10.15筆者撮影)

 質疑応答の時間が設けられ、AJPC運営委員で「食政策センターvision21」安田節子代表がコーディネーターを務める中、建設的な提案や活発な意見も出された。

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     植草氏(UPLAN様より拝借)

 経済学者でAJPC運営委員の植草一秀氏は閉会のあいさつで、来年3日2日、日本教育会館大ホールで開催予定の「愛・夢・希望の市民政権樹立へ−統一地方選・参院選必勝宣言! オールジャパン総決起集会」を告知。「日本を変えるため、一緒に頑張っていきましょう」と結んだ。

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      司会の佐久間敬子運営委員(2018.10.15筆者撮影)

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  熱心に話を聞く市民(2018.10.15筆者撮影)

■参考サイト
「オールジャパン平和と共生」公式ホームページ

【書評】『タネはどうなる?!−種子法廃止と種苗法運用で−』山田正彦(サイゾー)

 山田正彦・元農水相による食と安全の警告書。4月に主要農産物種子法(種子法)が廃止され、種苗法の運用も変わりつつある。このままでは農民はグローバル種子企業の奴隷になり、国民はモルモットにされるだろう。


 山田氏は2010年に菅直人首相が環太平洋経済協定(TPP)参加を表明して以来、その阻止運動の先頭に立ってきた。各国で行われる閣僚会議にも毎回足を運び、 NGOや首席交渉官とも接触を続け、秘密交渉の情報を収集してきた。

 2009年の鳩山由紀夫政権で農林水産行政の長を務めた山田氏は地元、長崎県の五島列島で酪農を営んだ実際家であり、弁護士でもある。法律の裏表を知っている著者が最大の危機要因に挙げるのが、副題にある種子法廃止と種苗法運用である。

 種子法はコメや麦、大豆の種子について国の管理の下で各都道府県に優良な品種を選び増殖させ、安定して農家に供給することと、それら原種・原原種の維持を義務付けてきた。それにより、消費者はおいしく安全で安価な穀物を、当たり前のように食べることができた。

 種苗法は知的財産権を保障するUPOV条約の締結を受け1998年に改定されたもので、第21条で育成者権の効力を定めている。この1、2項は登録品種の種子についても農家の自家採取を認めているが、3項は農水省令で例外を設定できるとしている。2017年に省令つまり運用で例外が乱発され、82種類から289種類に激増した。同省内では、原則禁止にしようとする動きがある。

 これら法令の改正を促しているのがTPPだと山田氏は指摘する。山田氏は原中勝征・前日本医師会長らとともにTPP交渉差止・違憲訴訟を起こし、敗訴したが、2018年1月の高裁判決は「種子法の廃止はTPP協定が背景にあることは否定できない」と認めた。もう一つの証拠として、2016年2月の署名時に交わした日米並行協議の交換文書がある。

 「日本国政府は2020年までに外国からの対内直接投資残高を少なくとも倍増させることを目指す成長戦略に沿って…(略)…外国投資家その他利害関係者から意見及び提言を求め…(略)…規制改革会議の提言に従って必要な措置をとる」(p.126)

 温厚な著者も「これは独立国ではない」と憤りを隠さない。

 法改正が生産現場をどう追い詰めているかについては、同書をじっくり読んでいただきたい。ここでは、消費者として抱いた健康不安について挙げておく。

 わが国の野菜はすでにF1(1代交配種)が90%を占めているが、これが少子化と関係があるかもしれない。欧州のミツバチ減少はF1種子によるヒマワリやナタネなどの栽培地域に見られることを紹介し、男性の精子が70年間に4分の1に減っていることと関係づけている。さらに、モンサントが遺伝子組み換え(GM)種子とセット販売する農薬ラウンドアップに使われるグリホサートやネオニコチノイドが精子を減らすとの研究論文もある。

 主食であるコメも、三井化学アグロのF1品種「みつひかり」がすでに1%を占めている。われわれは知らない間に、どこかでそれを食べている。

 GM食品はさらに懸念が大きい。GMトウモロコシを食べ続けたマウスが、頭より大きい腫瘍をぶら下げている写真を皆さんも見たことがあるだろう。GMコーンを餌に与えたブタの繁殖実験では、80%が妊娠しないか、疑似妊娠だったとの米国内の報告もある。

 実は、わが国ではすでに、70種類のGMイネの栽培が承認されている。山田氏によれば、モンサントは20年かけ、日本のコメ市場を調べ上げ、政府に参入を働き掛けてきた。まずは、飼料用米として作付けさせる思惑とみられる。消費者庁が3月に出した遺伝子組み換え表示に関する報告は、「遺伝子組み換えでない」との表示を事実上認めない内容になっている。

 同書で衝撃的だった部分を幾つか挙げておく。わが国で主食のコメにGM品種が使われていないのと同様、米国でもGM種は飼料用にとどまっている。しかし、最初の食用GM小麦を日本人に食べさせようと全米小麦協会が明言している。正直というより、厚顔さにあきれる。

 山田氏は2017年8月、日本モンサントの「遺伝子組み換え作物の圃場(ほじょう)見学会」に参加したが、内容は同社の承諾がないと発表できないとの覚え書きに署名させられた。「そこで、私は意外なことを聞いたが詳細を書くことは許されない」(p.78)と筆を止めている。

 消費者庁の遺伝子組み換え表示に関する審議会に「日本の種子(たね)を守る会」事務局の女性が傍聴に入ったら、写真を撮っている人がいるので「肖像権の侵害ではないか、名刺を出しなさい」と詰め寄った。しぶしぶ出された名刺を見ると、米国大使館の職員だったという。「そこまで米国の圧力は安倍政権の中枢に深く入り込んでいる」(p.206)と驚嘆する。

 ある研究者の試算によると、わが国のコメ農家の時給は109円にすぎないとのこと。私は、わざとそのような政策にしているのではと疑う。GM種を扱う四大多国籍種子企業が買取保証や収量の多さ、栽培の楽さ、初年度無料サービスなどをちらつかせて農家に売り込むために。

 種子法廃止法案の審議は全く報道されず、衆参両院でわずか12時間足らずの審議で成立した。「当時、テレビをつければ森友学園、加計学園の報道であふれていて…」(p.137)との記述に触れ、ハッとした。マスメディアは国民をだますためにあるというのが私の解釈だが、両疑惑報道はスピンだったのだろうか。

 TPP訴訟や「種子の会」でご一緒させていただき、いつも感服するのは、山田氏の行動力と楽天的な態度である。私など、事実を知れば絶望だけが増すが、山田氏は「食糧安全保障法案の制定」を掲げ、イタリアの五つ星運動に倣い「直接投票で地方から日本を変えよう」と唱え、「種子法廃止違憲訴訟」を準備する。

 世界は心の投影だとの説がある。嫌なことを考えれば嫌な現実が、楽しいことを考えれば楽しい現実が再生されるとの考え方である。ならば、「消して夢ではない。イタリアにできて日本にできないはずはない」(p.252)と言い切る山田氏には、瑞穂の国の田園風景が残されるのかもしれない。現に、議員立法で種子法復活法案が提出されたではないか。

 同書は困難を乗り越えるための知識と希望を伝授してくれる。

タネはどうなる?! 種子法廃止と種苗法運用で [ 山田正彦 ]
タネはどうなる?! 種子法廃止と種苗法運用で [ 山田正彦 ]

「安倍政権倒さねば大変なことに」と山田元農水相、多国籍企業支配を警告

 山田正彦元農水相が20日、参院議員会館講堂で開かれた「主権者は私たち・市民集会」で、TPP協定を通じ国民が多国籍企業への隷従を深めていることを警告。「安倍政権を倒さなければ、日本は大変なことになる」と徹底抗戦を呼び掛けた。

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食を脅かす包括的改革を批判する山田氏(2018.7.20筆者撮影)

 集会では山田氏のほか、浅野健一同志社大教授や鈴木邦男元一水会代表、経済学者の植草一秀氏ら十数人の論客に加え、初鹿明博(立憲)氏や福島瑞穂(社民)氏ら衆参の国会議員がマイクを取った。

 森友・加計告発プロジェクト共同代表の藤田高景氏のあいさつに続いて登壇した山田氏は、会期末を迎えた通常国会について「こんな国会、私も見たことがない。自民党の中ですらあり得なかったことが次々と起こり、新聞やテレビも本当のことを全く報じない」と嘆いた。

 日本が国内手続きを終えたTPP11について、「多国籍企業と日本の大企業の株主利益のために何をやってもいいという協定に国民が支配され、隷従させられるもの」と表現した。

 第10章越境サービス貿易や第17章国有企業及び指定独占企業、第18章知的財産の各項目を挙げ、「今回のカジノ実施法案や働き方改革、衆院で審議中の水道法改正、種子法廃止、農業競争力強化支援法に加え、漁業権を取り上げて多国籍企業に支配させようとする法案が次の国会で出される。元凶はこの新自由主義に基づく貿易協定にある」と指摘した。

 「しかし、世界の流れは逆にある」と向き直り、マレーシアでのマハティール首相の復帰やメキシコで新興左派のロペスオブラドール大統領の誕生、イタリアの五つ星運動の勝利などを挙げた。

 「経済万能主義に対し、自国の労働者を守るため、関税自主権を手放してはいけない。欧州の経済学者たちは、自由貿易は貧富の格差を広げるだけだと主張している。国民を守るため、われわれはあきらめてはいけない」と訴えた。

 山田氏は喫緊の課題として、種子法が3月末で失効したことと種苗法改正の動きを問題視。「民間の品種はF1(1代交配種)で、毎年買わなければいけない。野菜や果物はすでに90%が海外生産で、このままではコメもそうなる。農家はモンサントやデュポン、シンジェンタなどへ特許料を支払うことになる」と指摘した。

 遺伝子組み換え(GM)作物についても「安倍政権で309品種まで容認された。GM大国の米国ですら197種だ。早ければ、GMトマトを茨城県のつくば国際戦略総合特区で始めるのではないかと心配している」と吐露。

 種苗法の保障する育成者の知的所有権が伝統的固有種にまで際限なく及ぶ可能性を危惧した上で、「安倍政権を倒さなければ、日本は大変なことになる。われわれが主権者。今頑張れば、マレーシアやメキシコのようにできるとの思いで、頑張りましょう」と徹底抗戦を呼び掛けた。

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「種子を守る会」が総会、種子法復活と種苗法改正阻止へ

 「日本の種子(たね)を守る会」が4日、参院議員会館講堂で第2回総会を開いた。八木岡努会長は「1年間やったことを踏まえ、一歩前に出られるような会にしたい」とあいさつし、顧問の山田正彦元農水相らが主要農産物種子法(種子法)の復活や種苗法改正阻止に向けた全国的な取り組みを提唱した。

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八木岡氏の話を熱心に聞く参加者(2018.7.4筆者撮影)

 同会は昨年7月3日に結成され、マスコミがほとんど報じない種子法廃止の問題を広報するとともに、同法に代わる新法の議員立法を目指し、署名活動や地方議会への働き掛けを続けてきた。

 種子法は都道府県にイネ、麦、大豆の種子の生産・普及を義務付けるものだが、政府は「民間の種子開発意欲を阻害している」として昨年の通常国会に廃止法案を提出し、成立。今年4月1日に廃止されている。

 冒頭、八木岡氏は種子を守る活動を通じて地域や立場を超えた人々と交流できたことを振り返り、「これから一緒に仕事をしていくヒントを頂いた」とあいさつ。昨年9月、スイスが国民投票で食料安全保障の憲法への明記を決めたことや今、韓国が同じように農業の公益性を憲法に盛り込もうとしている動きに触れ、「日本も食料のことをもう1度考えなければ。1年やったことを踏まえ、1歩前に出られるような会にしていきたい」と抱負を述べた。

 続いて、事務局アドバイザーの印鑰智哉(いんやく・ともや)氏が種子法を取り巻く情勢について説明した。わが国は1991年、植物の新品種の保護に関する国際条約(UPOV条約)を批准したことで育成者の知的所有権を認めるよう種苗法が改正された。現在、政府はUPOV条約との整合性を高めるため、農家による種苗の自家採取を原則禁止する方針転換を打ち出している。一方、新潟・埼玉・兵庫の各県で種子法に代わる条例が制定されたことが報告された。

 2017年度の活動・決算報告や2018年度の予算案などが承認された後、JA埼玉県中央会地域振興部の西田秀生部長より、条例制定に向けた要請の経緯や条例の概要が説明された。同JAは優良種子を安定確保するため、自民党や公明党の県議にも種子計画の策定や予算確保の支援を訴えてきた。

 第2部では、元立教大学大学院教授の内山節(うちやま・たかし)氏が「市場に管理された社会と生命の営み」と題して講演した。群馬県上野村に居を構え、東京と往復する生活を続ける内山氏は、伝統社会では自然、労働、経済、暮らし、地域、文化、土着的信仰などの諸要素が一体化していたと説明。近代社会ではそれら諸要素がバラバラになり、労働力を含む全てが商品化した。新自由主義に象徴されるような暴走する市場経済を止めるには、半市場経済の社会を構築する試み、すなわち農の営みにとって必要な諸要素を農家、農民が取り戻すことが必要だと強調した。

 その上で内山氏は、種子法廃止や農業競争力強化支援法制定の動きを「種を守るのではなく、種の知的所有権を守ることにすぎない」と指摘。「皆が種を植えられるように、地域から始めるしかない」と主張し、埼玉県のように政党を超えた取り組みを推奨した。

 最後に、山田氏は「すでに各都道府県では種子法廃止によって、今までの制度として義務付けられていることをやめている」と危機感を示す一方、野党6党が種子法復活法案を今国会に提出していることを報告。「自民党にも賛同者がいて、継続審議になる」との見通しを示した。

 種苗法が育成者の知的所有権を保障するのは品種登録された種子のみとされるが、山田氏は「どれが伝統的固有種でどれがそうでないか決めるのは農水省の役人で、安心はできない」と警告。各都道府県議会や市議会で種子法廃止と種苗法改正への対応を求めることを提案した。

 さらに、今年1月31日、TPP違憲訴訟控訴審が東京高裁で敗訴したことを受け上告中の判決が9月にも出される見通しであることに言及。控訴審判決は「種子法の廃止については、その背景事情の一つにTPP協定に関する動向があったことは否定できない」と認めている。山田氏は「種子法廃止・種苗法違憲訴訟を現在、準備している。ぜひ皆さんに原告あるいは訴訟の会の会員になってほしい」と呼び掛けた。

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      労働と自然について考察する内山氏(2018.7.4筆者撮影)

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       高橋清隆

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著者プロフィール


反ジャーナリスト。金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了。ローカル新聞記者、公益法人職員などを経て、2005年から現職。『週刊金曜日』『ZAITEN』『月刊THEMIS(テーミス)』などに記事を掲載。  著書に『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)『亀井静香が吠える』(K&Kプレス)『亀井静香—最後の戦いだ。』(同)『新聞に載らなかったトンデモ投稿』(パブラボ)。           

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