ひげ太夫次回公演のチラシを昨日入稿した。
あすには刷り上る予定だ。
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撮影は先月末。
出し物師たちの都合がなかなか合わずに、
日が暮れてからの屋外での撮影となった。
わずかながら人通りのある場所なので、
「ひげをかいた怪しい人物たちがたむろしている」などと通報されぬよう
最短の時間で撮らねばならない。
いつもは当方がいろいろと風変わりな指示を出し、それに沿って出し物師たちに動いてもらって撮るのだが
今回はより短時間で動きを面白く表現できるように、
それぞれお気に入りの小物を持参してもらった。
こうして準備のできた者から人目を避けてすばやく写真を撮る。
夜間なので光は当然足りない。
撮影用LEDライトを用意していたが、それではまず光量が足りなかろうと、
参加者全員に懐中電灯を持参してきてもらい
手のあいた出し物師たちに方々から光を当ててもらうという実に原始的な照明での撮影だ。
なかには二丁拳銃のように両手に懐中電灯を持つものあり、
レフ板持ちと二人一組になって反射させた光を全身にあたるよう工夫してくれるものあり、
全員参加で声をひそめながらの撮影となる。
(感度はISO6400あたりで撮影。最近のカメラの進歩に感謝だ)
こうして一時間半ほどで無事に全員の撮影を終え
最後にチラシ裏面に使う集合写真を撮る。
集合写真にしては背景があんまりだが、
チラシでは切り抜いて使する予定なので気にしない。ともかく急いでさっさと撮る。
座長のたっての希望で、80年代の某男性アイドルグループ風なつもりで撮る。
あくまで「つもり」だ。
こんな服を着たアイドルは いくら80年代とはいえいなかった。
このあたりになると周囲に若干の見学者が集まりだし、一同気が気ではない。
そこへ、前方から自転車に乗った警官がやってきた。
一同、慌てて動きをとめたが、
警官は何も注意することなく、きーこきーことのんびり自転車をこいで我々の横を通り過ぎて行ってしまった。
よかった。我々の存在は、心配するほど反社会的な印象を周囲に与えているわけではなかったようだ。
こうして無事に全員の写真を撮り終え、安堵の表情で天を仰ぐ座長だった。
***
さて、写真を持ち帰って、当方はチラシの作成に入る。
せっかく頑張ってくれた出し物師たちを出来るだけ大きく載せたい気持ちはつのれども、
物語の舞台として背景をドラマチックで立体的に作りこんでいきたい気持ちもある。
そうするためには、ある程度人物を遠くに配置して遠近感を強調しなければならない。
葛藤しつつも、今回は敢えて人物を小さめに、
そして、遠景らしくするために少しぼかし気味に合成することにする。
そんなわけで、チラシ上では小さく載せざるをえなかった出し物師たちを
少しでも大きく紹介したく、個別に拡大をしてみることにする。
まず、一番後方に配置した、つまり画像上でサイズが特に小さい成田とともい。
チラシ上でのサイズは、身長二センチほど。
合成した舟が浮いているらしく見せるために、水面の反射や影などに無駄に時間をかける。
成田は実際には持参した魚の置物を肩に乗せて撮った。
ヒレで自立する、不思議な形をした体長30センチほどの魚だ。
このたくましいヒレと牧歌的な表情は、なかなか魅力的で捨てがたいが、
しかし遠方に配置するとなると何を肩に乗せているのか見た人にはさっぱりわからないだろうと思い、
別に撮ったアヒルの入ったカゴに差し替えた。(成田にはまだそのことを伝えていない)
納得してくれるといいのだが。
一方その隣で荷物の上に腰を下ろしているのは、普段の舞台上でのほんわかした雰囲気とがらりと違う
ワイルドなともいだ。(しまった、うっかりファンになってしまいそうだ)
撮影時にはイチジクと青いハトの置物を持参。どちらもユニークでよい動きを演出してくれたが、
迷った末、結局何も持っていない写真を使うことにする。
手元に何もないのも寂しいので、博物館で撮った古びたカギを合成してみたが、
小さすぎて多分誰にも見えないだろう。
自分で合成しておきながら、当方にも小さすぎてちっとも見えやなかった。
さて、次は水の中を怒りながら歩いている鈴木だ。
鈴木はヘッドフォンを持参。
そして、怒ったような、動揺しているような、非常に暑苦しい動きをカメラの前でノンストップで展開。
ちょっとたじたじとなる。
ただならぬ雰囲気だったので、これをチラシに配置するには状況もただならぬものにしてみる他はあるまい。
そこで、水中を歩くことを余儀なくされている風にしてみた。(それで怒っているのだ。きっと)
そしてヘッドフォンからは激しくモクモクと煙を出してみた。(故障しているのだ。きっと)
おそらく煙がでるような原始的な故障をするヘッドフォンはまずないが、
表情に見合うような状況を考えたら最低でもこのくらいはやらないといけない気がしてくる。
成田たちの舟同様、指先のしぶきや水面への映りこみや揺らぎの加工に無駄に(4~5時間)時間をかけてしまった。
扇子を持参した永井は、軽やかで若々しい雰囲気。
木の枝の上にふわりと飛び乗りすんなり立てそうな身軽さだったので、
たくさんのインコと共に細い枝の上に乗ってもらう感じで合成してみた。
インコの集団は、掛川花鳥園にいたコガネメキシコインコ。
永井もインコとあわせて「保護色」気味の色にしてみたが……大丈夫だろうか。
「私の顔色はこんなじゃありません」と怒られないかちょっと心配だ。
紅葉が顔にうつりこんでいるのだということで納得してもらえると嬉しいのだが。
中村は、本を持参していた。「昔恋人と一緒に読んだ、すごく思い入れのある本」という設定で、
そこにまつわるちょっといい物語を、すでにつくりあげてきてくれていたので
その雰囲気で自由に且つ抑制をきかせた雰囲気で動いてもらって撮る。
こちらを向いて大きく表情を動かしているものもあったが、
この感情を抑えた感じがひげ太夫のチラシではあまりなく新鮮だったので、
この雰囲気で木道の隣に合成してみた。
平石はボールを持参。
投げたり受け取ったり、手に乗せてぐるぐるまわしたり実に自在に体がよく動く。
夜間のため動きの速い場面での高速シャッターは切れないので、ふと動きを止めた瞬間を撮る。
チラシ上では平石の左半身は座長の顔と重なっているが、
せっかくなので、座長の顔をどけて拡大してみた。
最後に座長。
座長は小物を何も持参せず、「あ、衣裳に夢中で小物持ってくるの忘れた」
どうせそんなことだろうと思っていたよ。予感は的中だ。
そこで、落ちていた棒を拾って撮影。
以前に座長が別の劇団で演じた極悪人の感じで、と頼んでみると、いつになく生き生きとした動きを見せてくれた。
この写真では本当は拾った棒を手に持っているのだが、
「それがあるとヤギを刺している悪い人のように見えるからイヤダ」と座長が強く主張するので、
合成する段になって、棒は消した。
悪人に見えるのはイヤらしい。特に動物をいじめているというのは座長的には最大NGなのだ。
(当方だってそんなのはいやだが)
***
こんなふうにして、ようやくできあがったチラシです。
もしチラシをお手にとって見ていただく機会がありましたら、お顔を近づけて出し物師たちひとりひとりの姿をじっくり眺めてみていただければ幸いです。
(下の方で、ヤギとフクロウも頑張っております)
[表 拡大]
[裏 拡大]
ひげ太夫 次回 第35回公演 ゾロ目羅漢(ぞろめらかん)
11月20日(水) ~24日(日) 日暮里 d-倉庫
奴は探さなくても、向こうからやってくる。
ゾロ目羅漢。雲を燃やし、湖を凍らせる不思議な力を持つという。
その正体は謎。人か狐か、あるいは……。
はてさて、ここは大都会・ジャスミン街。
カジノのバーじゃ、ウイスキー片手に一億二億の商談。
ぼわわわっ。突如、空が明るくなる。「おい!雲が燃えてるぞ!」
すると突如、あたりに広がるよい香り。
「炎の上に誰かいる!」
「あいつ、焼き鳥焼いてやがる!」
欲望渦巻くこの街で、タレか塩かで一悶着!
組み体操で綴る冒険物語。観るべし、体感すべし!
公演詳細
皆様のお越しを、一同心よりお待ちしております。