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1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/01(火) 21:55:02.53 ID:pta4o7YP0

京太郎ばっかり人気なのはおかしい



2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/01(火) 22:00:20.78 ID:pta4o7YP0

大沼プロ「あー……皆様、明けまして御目出度う御座います」ペコリ

大沼プロ「謹んで新年のお喜びを申し上げます。本年もー…どうぞ、宜しくお願いします」ペコリ

局アナ「はい。大沼プロ、ありがとうございました」

司会「えー今回はですね。トリを務めていただきました大沼プロを筆頭に、シニアリーグのトッププロの面々にお越しいただきました」

局アナ「すごい!お正月らしく豪華ですね~」

司会「それでは一旦お知らせをはさみまして、今年度の抱負などを色々またお聞きして行きたいと思います。どうぞチャンネルはそのままで!」



3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/01(火) 22:06:08.70 ID:pta4o7YP0

~~~~♪  ~~♪

AD「はい、じゃあ5分休憩入りますーお茶無くなった方いませんかー。あ、はいどちらの方で、あ、ウーロンですね、はい」

大沼プロ(またひとつ年が明けて……あー2013年か……まあ、平和な時代になったもんだ)

今では数ある麻雀番組の、正月特番の収録

観客席ではやはり往年からのファンが多いのか子供連れ、孫連れの白髪混じりの頭が目立つ

ワイワイザワザワ

普段TVでしか見れないプロが間近に一堂に会する光景にキラキラした瞳で見つめている子供達の視線

大沼プロ(はぁ。思えば遠くへ来たもんだ~ってか……)



6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/01(火) 22:11:12.20 ID:pta4o7YP0

・・・

・・・・・・

20世紀

敗戦を経て迎えた高度経済成長期

日本の麻雀人口は50万人を超え

胴元の必要ない身近な賭博として市井に広く流行していた

その一方で血と暴力の世界での決め事に際する風潮も生まれ

代打ちと呼ばれる裏の雀士たちが鎬を削っていた



7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/01(火) 22:16:38.77 ID:pta4o7YP0

タンッ

「リーチ!」

バシッ

大沼「ロンだ」

パラララララララララ

大沼「24000。トビだな」

「……」ガクッ

黒服「おい、連れて行け」

ヤ○ザ「シュウよ。相変わらずいい働きだな。奴さん今日こそあいつを倒せるって息巻いてたんだが……」

大沼「興味ねえな。アガリは」



8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/01(火) 22:24:08.66 ID:pta4o7YP0

○クザ「……ホラよ」グイッ

大沼「……」スタスタ

ヤク○「また頼むぜ!」

大沼「……」

男――大沼秋一郎は右手だけを軽く挙げて応えた

大沼(……次はこんなぬるい相手じゃなきゃいいんだが)



9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/01(火) 22:34:00.99 ID:pta4o7YP0

初めて牌を握ったのが何時だったのかはもう思い出せない

中学の卒業前にいつも母を殴っていた飲んだくれの親父が人を刺して警察に捕まり

家に毎日借金取りとヤクザが押し掛けて来る心労から母が亡くなってしまった後だったのは確かだが

親父の借金から逃げ、寄る辺もなく日払いの肉体労働で食いつなぎ

荒んだ酒が喧嘩を呼び、次第に夜の街を住処とするようになった頃だったかとは思う

大沼(まるで足りねえ)

大沼秋一郎は飢えていた

勝ちにではない

いくら勝ちを積み上げてもまるで満たされないどころか飢えは逆に深まっていく

腹は膨れても心が飢えていく感覚がいつまでも消えてくれないのだ



10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/01(火) 22:42:02.33 ID:pta4o7YP0

大沼はイラつきながらも満たされない飢えの原因を常に考えていた

恐らく、もっとヒリつくような勝負で無いとダメなのだ

より莫大な金が動く場で

よりきな臭く

より危険な

もっと

もっと

もっと

……

気がついた時には、関東の裏社会では知らない者がいないほどにその名を轟かせる代打ちが完成していた

大卒商社マンの年収以上の額を己の腕一本、一晩で稼ぎ、華やかな夜の街で飲み、食い、買い。あっという間に使い倒す

傍から見れば思い切りがいいというか派手というか、豪快としか言い様がない生き様だが

大沼秋一郎は麻雀を始めてから満たされた事など一度もなかった



11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/01(火) 23:04:33.57 ID:pta4o7YP0

カランカラン

このゴミゴミした街自体が嫌いな秋一郎だが、この行きつけの雀荘だけは気に入っていた

マスター「いらっしゃいま……よお、シュウちゃん」

大沼「ビール」

短く注文を告げ、待合のソファにドカッと腰を下ろす

マスター「お待ちどう」スッ

大沼の機嫌が悪そうな時は無理に話しかけず、放っておいてくれるからだ

マスター「……」

だが、今回はビールを置いても中々離れようとはせず、何かを言い淀むような様子で佇んでいる

大沼「……どうし」

「ツモ。2000・4000です」

大沼が口を開こうとした時、その原因であろう涼やかな声が耳に響いた



18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 00:06:37.12 ID:wVK7FLoa0

タイトルと違って普通にかっこいいんだけど



19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 00:09:12.88 ID:hBG24OGC0

声のする方に視線をやると、紫煙で雲がかった景色の向こうに椅子からやっと半分だけ出ているおかっぱ頭が見える

大沼「……いつからここは中学校になったんだ?」

マスター「一応18らしいんだ。免許証見せてもらったよ」

大沼「女が麻雀すんのか?」

マスター「みんな珍しがって卓に付くけどね……強いんだよこれが」

大沼「どっかの組の娘が遊びに来てるとか」ヒソ

マスター「いや、そういう様子でもない」

マスター「どうにもシュウちゃんに用があるらしいよ。もしかしたら知り合いとか思ったんだけど、違うみたいだね」

大沼「あんなちんまい女見たこともねえ」

大沼(知らない間に孕ませた子があなたの娘です。なんて来るパターンくらいか?)

大沼(いや、俺はまだ25だ。成人しているならいくらなんでもそれはないだろう)

「ロン。7700」

「くそっ!オケラだぁ!」

「いやぁ~嬢ちゃん強いねえ」

大沼(……)



21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 00:22:55.32 ID:hBG24OGC0

マスター「まあ、別に普通に楽しんでもらう分にはいいんだけど、負け分を受け取らないんだよ」

大沼「は?」

「そういう訳にもいかないだろう?ホラ、お店の手前とかさ」チラチラ

「では、場代だけ頂きます」

「よっしゃ、じゃあこれでまた打てるな!」

「まだ負けたりないのか?」

「うっせぇ」

ジャラジャラ

大沼「……」

マスター「あの調子だよ。おかげで客の回転が鈍くてね。出来ればっ…ってシュウちゃ」

スタスタスタ

大沼「おい」

「……待ち人来る……ですかね」



22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 00:32:01.04 ID:hBG24OGC0

振り向いた女の顔には、やはり見覚えは無かった

「おお?シュウちゃんのコレだったのかい?」

「道理で強いわけだ」

「珍しいねぇ雀荘に連れてくるなんて」

大沼「黙ってろ」

冷えた声がお調子者共浮ついた気分を一瞬で凍らせる

大沼「何の用だ」

「何の用だと思います?」

大沼「……あのな、オレは今日は特に機嫌が悪いんだ。ふざけてんなら張り飛ばすぞ!」

ドカッ カランカランカラーン



23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 00:43:37.50 ID:hBG24OGC0

秋一郎が卓を殴りつけた拍子に灰皿が落ち、銀の円盤は歪に回転しながら灰を撒き散らした

女は何事も無かったかのように質問を続ける

「機嫌が悪いのは、もしかして『勝った』からですか?」

大沼「!」

一瞬、秋一郎の体が強張る

「?」

「なんだそりゃ?」ヒソヒソ

「いや知らねえよ」ヒソヒソ

周りが疑問符を浮かべる中、正鵠を射られた秋一郎だけが強い視線で女を観察していた

「大沼秋一郎さん、よかったらあたしと打ってくれませんか?」



25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 00:58:55.40 ID:hBG24OGC0

大沼「レートはテンピンでいいな?」

「いえ、賭け事はしない主義なので。場代だけ頂きます」

大沼「ふざけやがって」

大沼(大方、彼氏が代打ちで負けて港に沈められて、仇を討ちに来たとかその辺だろ)

「おい、シュウちゃんがあの女と打つってよ!」

この界隈で大沼秋一郎の名を知らない者はいない。他の卓に付いていた客までがギャラリーとして集まってくる

大沼(チッ野次馬共が…まあ関係ねぇ)

集中を欠いて卓に付いたことは一度も無い。配牌が終わる頃には秋一郎の頭は完全に冷え切っていた



26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 00:59:54.67 ID:hBG24OGC0

・・・
・・・・・・

ザワザワ

決着は早かった

ザワザワザワ

秋一郎が、南場を待たずしてハコになったからだ

マスター「う、嘘だろ……」

「シュウちゃんが……」

「女に負けた…?」



27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 01:12:15.82 ID:hBG24OGC0

自分から見てミスと呼べる打牌は無かったはずだ

カンの冴えも鈍くは無かった

事実、テンパイはきっちり読み切っていた

なのに狙い打たれてしまう。まるで牌が透けて見えるかのように

大沼「……今の有り金だ。持ってけ」

ボスン、と無造作に分厚い革の財布を卓に放り出す

「受け取りません」

大沼「オレは負けた。オレの……オレの気がすまねぇ」

秋一郎の生きてきた世界では、敗者は全てを失う事が唯一絶対のルールだった

一生働いても返せない金額、時には命そのものさえ賭けてきた勝負の中で、有り金だけ済むのは安いほうなのだ。なのに

「だ・か・ら、受け取らないんですよ」ニッコリ

大沼「は?」

「では、失礼致します。」



28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 01:27:22.99 ID:hBG24OGC0

それからしばらく間、秋一郎が裏の世界に顔を出すことは無かった

恨みを持つものに殺された、負けを苦に自殺したなど、ついには死亡説までまことしやか囁かれ始めた

・・・
・・・・・・

秋一郎は毒々しいネオンに照らされながら、酔っ払いのようにただフラフラと歩いていた

大沼(負けるってのはこんなに悔しいもんだったか?こんなに後を引くもんか?)

大沼(あいつが何も取らなかったから……見逃された、と感じたのか)

大沼(そのせいでオレの……何だ?)

大沼(誇りとか矜持とか…そんな名前のあるもんじゃねえ、あえて言葉で表すなら人生だ)

大沼(今まで勝ってきた、そしてこれからも勝ち続ける。負けたら死ぬ。負けることなどないオレの人生。その確信を……)

大沼「クソが!」

道端にはみ出たラーメン屋の看板を蹴り飛ばし、驚いて路地から飛び出てきた猫を蹴り飛ばし、

肩がぶつかったチンピラを殴り飛ばし、仲間が駆けつけ、4人目を蹴り飛ばしたところで組み付かれ、

ボコボコにされ唾を吐かれ、打撲や擦り傷の痛みを無視してそのままゴミ捨て場で朝まで眠った



30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 01:39:24.28 ID:hBG24OGC0

大沼「う……ここは?」

「おー起きた―」

「起きた―」

「臭いマンが起きたぞ―」

大沼(何だ?このガキ共は)

「はいよー」パタパタ

大沼「!お前は……痛っ」ズキッ

「やっと目が覚めたかい。いいから風呂に入っといで。あんた酷い臭いだよ」

大沼(雰囲気は違うが…確かにあの女だ)

「ほらほら、話は後、後、後」グイグイ

大沼「あ、ああわかった」



31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 01:49:29.76 ID:hBG24OGC0

「お湯、ちゃんと出たかい?」

大沼「ああ。……ここは……孤児院か?」

「そうさ。今朝、あの子らとゴミ捨てに行ったらあんたが寝てたんだよ。死んでるかと思って本当にびっくりしたよ」

大沼「お前、その話し方……あんときは猫被ってたのか」

「いや、別に、なんかお上品な感じじゃないと舐められるかと思ってね」

大沼(なんだそりゃ)

何か痛いところを付かれたのか急に女が饒舌になる

「そ、それにしても何であんなところで寝てたんだい。色々計画してたのにさ」

「マスターに連絡先渡しといて、リベンジしたかったらここに来るようにとか」

大沼「寝てたのはある意味お前のせいだけどなオレの…いや」

大沼(リベンジ…そうだ、勝てば、勝てばいいんだ)



32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 01:56:35.01 ID:hBG24OGC0

大沼(もう一度闘ってこいつに勝てば必ずこの屈辱も消えて失せる!!)

大沼「頼む、オレともう一度勝負してくれ!」

「う~んどうしようかね~」ニヤニヤ

大沼「……金なら払う」

「言っただろう?あたしは賭けない主義だって。そうだねぇ……そう、今、丁度人手が足りないんだよ」パン

「お金は宿代と生活費の分だけ貰うよ」

大沼「??」

「あんたがここで子守の手伝いをするのさ、その分だけリベンジを受けて上げるよ。一日につき半荘1回でどうだい?」

大沼「はあああああ!!??」



33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 02:10:18.24 ID:hBG24OGC0

「うおーいつもより高けー!」

「あーいいなー次オレオレ交代!」

「あたしもー」

「アタシもー」

大沼(クソ、何で鉄火場を渡り歩いて来たオレがこんなところで肩車なんぞ!)ギリギリ

・・・
・・・・・・

大沼「なんで孤児院に卓と牌があるんだよ」

「ふふふ、良い感じだったよ。あんた結構子供に好かれるねぇ」クスクス

大沼「黙れ。それよりあと2人、面子はどうするんだ?」

「もう呼んであるよ」

ドタドタドタ

「わーい」

「久しぶりの4人麻雀だー」

大沼「おい……子供に麻雀教えてんのかよ。不良になるぞ」

「そうかい?あたしはそうは思わないねぇ」



34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 02:19:04.94 ID:hBG24OGC0

大沼(なんでもいい、いざとなったらリードを守ってガキ共を飛ばして逃げ切る!)

ジャラジャラ

・・・
・・・・・・

そしてついに秋一郎はリベンジを……

大沼(果たせなかった……)

大沼(こいつ、サマも使って無えのに不自然に強過ぎる)

大沼(今まで闘って来た敵はみんなコイツ以下だったのか?)

大沼(それとも……オレに何かが足りないのか?)



35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 02:19:40.77 ID:hBG24OGC0

大沼「もう半荘だ!」

「はいはい、1日1半荘だからね、また明日ね」

「ふあー」

「眠みー」

「ちゃんと歯を磨いてから寝るんだよー」

大沼「……」

「あんたもね」

大沼「くそっ!」

ガシャ



36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 02:33:32.88 ID:hBG24OGC0

それから秋一郎は何度も闘いを挑み、負け続け、悩み続けることになる

何度も失敗して、やっとオムライスを作る秋一郎

大沼(リーチ1発の確率がやや高い気がする…流れを読む力が強いのか?)

網戸を張り替える秋一郎

大沼(空テンリーチまで確実に読むのか……一体どんな経験してきてやがるんだ)

屋外用プールに必死に空気を送り込む秋一郎

大沼(ダマは捨てて最初からツモ殺すつもりで行ったほうがいいか?)

木に引っかかったボールを取る秋一郎

大沼(順子場でもややチートイ寄りの傾向があるのは何故だ…癖か?)

川でホタルを捕る秋一郎

大沼(見つけたぞ!癖とまでは行かないが、取捨選択の好みが確実にある!)

そして秋一郎がリベンジを始めて半年が過ぎた



37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 02:39:27.31 ID:hBG24OGC0

大沼(来たぜ4000差でラス親、ここで捲くればオレの勝ちだ!)

大沼「リーチだ!」

「うーん困ったね~」

大沼(自分で気づいているのか知らんが、お前は迷った時には2枚切れより1枚切れの牌を捨てる傾向がある)

大沼(この瞬間のために少しづつ、少しづつ誘導して来た。狡い手だと笑わば笑え。勝てば……勝てればいい!)

「う~~ん。こっちかねぇ」

トン

大沼「っ!ロ、ロンだ!!」

「あらー・・・まさかこっちで待ってたとはね。キッチリ捲くられちゃったねぇ」

「すげー!」

「せんせーに勝ったー!」



38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 02:46:08.80 ID:hBG24OGC0

大沼(勝った・・・勝ったっ!!)

大沼(このクソ生意気な小娘に勝った!)

秋一郎の全身を初めての喜びが駆け巡っていた

大沼「オラァ!勝ったぞ!どうだ!見たか!ハハーッ!」

麻雀で勝てたことが嬉しいという喜び

大沼「うおおおおぉぉぉおお!やったぜーーー!」

麻雀が、楽しいという喜び

「初めて会った時は勝ったってあんなに無愛想だったのにねぇ。あんた、今はすごくいい顔してるよ」

大沼「あ……」

この時初めて秋一郎は飢餓感の正体に気付いた

大沼(穴だ)



40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 02:52:01.48 ID:hBG24OGC0

秋一郎の胸には勝った喜びを飲み込む穴が空いていた

それが満たされた瞬間に初めて穴が空いていた事に気付いたのだ

「あんた、根は優し過ぎるんだよ。多分、負けた相手の不幸がずっと引っかかって素直に喜べなかったんじゃないのかい?」

大沼「……」

一点1万の超超デカピン麻雀でも駄目だった

頭に拳銃を突き付けられながら打った麻雀でも駄目だった

焼け落ちるビルの中で打った1位だけが助かる麻雀でも駄目だった

スリルを求めるほどリスクは高まる。秋一郎が勝てば相手は死ぬか、再起不能か

一生借金生活か。それが故、勝っても喜べない

その文字通り空しいだけだった心が、初めて勝利で満たされていた

大沼(ゼニも賭けないヤクザもいない。ヤッパやチャカの気配すらない・・・)

大沼(ガキまで混ざってるただの遊びのノーレート麻雀で)

大沼(こんな・・・こんなささやかな勝利を・・・)

大沼(オレはこんなにも求めていたのか・・・)



41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 02:58:19.49 ID:+Cowos+E0

アカギのキャラですか



42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 03:01:14.68 ID:hBG24OGC0

「おじちゃんなんで泣いてるのー?」

大沼「うるせえ!泣いてねぇ!目にゴミが入っただけだ!」

「嬉しい時にも悲しい時にも涙は出てくる」

「今、そんなに涙が溢れてくるのはあんたが自分に逃げ道を作らないで本気で打ったからさ」

「負けて払ってはいおしまい、で強くなれるはずがないだろう?」

「負ける時は木っ端微塵に砕かれていい、たっぷり悔しがってそこから立ち上がるから強くなれるのさ。今のあんたみたいにね」

大沼「……」

「さ、じゃあもう半荘行こうか」

大沼「え?」

「なんだよ、アンタいつも負けたら何回だって挑戦してくるじゃないか。自分の時だけ勝ち逃げかい?」

大沼「あ・・・い、いや、もちろん受けて立つ。やろう」

ジャラジャラジャラ

勝負がついた瞬間に全てが終わるのもまた秋一郎の今までのルールだった

だがここでは何度でも闘える。負けた悔しい気持ちを次に生かせる

あの勝利の美酒と敗北の苦渋の強烈な味を何度でも味わえるのだ



43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 03:09:47.86 ID:u0wFios50

ジャラジャラ

大沼「そもそもなんでお前はオレに会いに来たんだ?」

「あたしには夢がある」

大沼「夢?」

「そのためにとびっきり麻雀が強くて、何より麻雀の楽しさを知っている人間が必要なのさ」

ジャラジャラ

大沼「……どんな夢だ?」

「いつか、老若男女すべての人が麻雀を楽しめる世界を作りたいのさ。賭け事無しで、ゲームと…いや競技としてね」

大沼「酒と煙草やらヤクザやらギャンブルのイメージが染み付いた麻雀をか?有り得ん」

「まださ、まだ今なら、日本がどんどん変わっていくこのタイミングなら間に合う」

大沼「……」

大沼(そう……か?)



44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 03:13:43.06 ID:u0wFios50

「こんなに楽しい遊びを、タバコと酒臭いおっさんだけのモノにするなんて勿体無いじゃないか」

タン

「もったいなーい」

トン

「なーい」

トン

「予言するよ、いつか一家に一台麻雀卓、家族で卓を囲んで、TVではプロ雀士の試合が全国中継される日が来るってね」

大沼「はっはっは、無いな」

パシッ

「笑えるかい?麻雀の楽しさを知った今のあんたが」

大沼「む……」



45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 03:21:07.14 ID:u0wFios50

大沼「仮に実現したとして、そんなブームがいつまで続くかわからん」

「いつまでかねえ。でも、できるだけ長いこと続いたらいいと思ってるんだけど」

大沼「とっかかりはあるのか?メガホン構えて道端でいきなり『皆さん麻雀をしましょう』じゃないんだろ?」

「それなんだけどねぇ。プロ野球みたいにチームを組んでリーグを作ったらどうかと思ってね」

「人の心を惹きつける、みんなが憧れるようなスターがいれば。あんただって野球の試合くらい見たことあるだろ?」

大沼「ガキの頃はな。近所のTVのある家にみんなで集まってブラウン管に齧り付いてたさ」

「さっきみたいなキラキラした目でね」

大沼「それは知らん」

「子供の頃の憧れってのは色褪せないもんさ。あんたをTVで見て憧れて、牌を握る子だって出てくるかもよ?」

大沼「は、有り得ねーな。何よりオレは客寄せパンダになる気は無え」

「いいと思ったんだけどねえ。長身で映えるし結構男前だし」

大沼「他を当りな」

「じゃあ、ここ1回だけ賭けようか。あたしが勝ったらあんたは計画に全面的に協力する。あんたが勝ったら何でも言う事を聞く」

大沼「……」



47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 03:26:22.64 ID:u0wFios50

大沼「なあ」

タンッ

「なあに?」

パシッ

大沼「名前、聞いてもいいかい」

タンッ

トシ「熊倉 トシ」

大沼「いいぜ、トシ。お前が勝ったら全面的に協力してやる。オレが勝ったら…」

トシ「なんだい?」

大沼「オ、オレが勝ったらだな……」コホン

大沼(クソッ、何でオレは今さらケツの青いガキみたいにドギマギしてやがる)

トシ「?」

大沼「もし、この半荘に勝ったら……お前を……」



東京で、全国初の麻雀プロリーグが発足するのはそれからおよそ6年後のことであった



49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 03:33:06.34 ID:pWbUlzAj0

トシさんかわいい



50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 03:42:22.75 ID:u0wFios50

エピローグ

司会「では大沼プロ、今年の抱負を一言、お願いします」

大沼プロ「あー…来年まで生きる」

ドッ ワハハ

局アナ「ありがとうございました。随分控え目な抱負ですねw」

司会「いやいや一年後もまた同じ様に健康で皆さんにお会いできる。大切な事ではないでしょうかw」

大沼プロ(ふん。笑わば笑え。一年あれば、どれだけの逸材がプロリーグに殴り込んで来ることか)

大沼プロ(あの時のトシの口車に乗せられたおかげで麻雀界は日進月歩で群雄割拠じゃ)

大沼プロ(世界まで巻き込んじゃあブームじゃ収まらんかったのう。まあそれでも永遠に続くものなど無いじゃろうが)

大沼プロ(ワシももう衰えた。だが、まだ牌が握れなくなったわけではない)

大沼プロ(見たこともない打ち手、打ち筋からあの時のような勝利をもぎ取りたいっちゅう思いは消えてくれんでよ)


大沼(そう……オレの中の火薬は、まだ燻っているんだ)



51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 03:43:11.25 ID:u0wFios50

21世紀

世界の麻雀競技人口は数億人を越え

プロの麻雀プレイヤーは人々の注目を集めていた

高校でも大規模な全国大会が毎年開催され

そこでは、プロに直結する成績を残すべく

高校生麻雀部員たちが覇を競っていた


                  ―――永遠に続く



52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 03:44:01.23 ID:u0wFios50

エロシーン無いよ。おやすみ



53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 03:45:33.84 ID:VLJdGO/90

おつおつ
おもしろかったよ、おやすみー



54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 03:46:00.86 ID:/jp1HKYT0

おつおつ
スレタイはトシさんとのあれなのか



56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 03:47:14.59 ID:pWbUlzAj0

乙乙
しかしこれはいいスレタイ詐欺



57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 03:49:59.00 ID:8+XMlJLV0

こりゃ面白かった乙



59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/02(水) 03:57:06.68 ID:n+OlprSc0

スレタイからでは考えもつかない綺麗な終わり方だったな
トシさんパンパンされたんかね



 
闘牌伝説アカギ DVD-BOX 羅刹の章



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健夜「あの、大沼プロですよね?」秋一郎「そうですが」
京太郎「年末の予定は埋まってる」


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