転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1439356084/l50

1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:08:04.51 ID:ceA/8Lf4o

♯1


理事長「音ノ木坂を廃校にします」


廃校 廃校 廃校 廃校


\廃校/


穂乃果「そんなぁ~!」


~~~~~


穂乃果「ってことで!穂乃果たちで音ノ木坂の廃校を阻止しよう!海未ちゃん、ことりちゃん、なんかいいアイデアないかなぁ?」

海未「アイデア、ですか。そうですね…生徒の手で学校の知名度を上げるには、やはり部活動で好成績を残すのが一番、だと思いますが…」

ことり「えーっと、音ノ木坂で最近活躍した部活は珠算部に合唱部に…」

穂乃果「う、うーん……微妙?」

海未「どちらも全国優勝、というわけでもありませんし…正直、強く注目を集められるタイプの部活動ではないですね」

穂乃果「あっ、じゃあこんなのどうかな!私たち3人でアイドルやるの。現役女子高生スクールアイドルですー!とか言ってさ!♪だって~可能性」

海未「ダメです」

穂乃果「えーっ」

海未「学生の本分は勉学。アイドルだなんて、そんな浮ついたものが部活動として認めてもらえるはずがありません」

ことり「うーん…ことりも無理だと思うなぁ。楽しそうだけどね?穂乃果ちゃんと海未ちゃんがかわい~い衣装を着てるのも見てみたいし!」

海未「き、着ません!そんなものは天地がひっくり返っても着るつもりはありません!」

穂乃果「やっぱ無理かぁ…だと思ったけどさー。あーあ、スクールアイドル!なんてのが存在する世界だったらなぁ… 」






2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:09:18.71 ID:ceA/8Lf4o

~~~~~


穂乃果「っダメだぁ~!一日ずっと色々考えてみたけど全然いい案が浮かばないよー!」

ことり「うーん、やっぱり…いきなり始めた部活動でアピールするのは無理かなぁ?」

海未「運動部が華々しい成績を残せれば一番なのですが…。私も弓道で努力してみます。けれど、世間へのアピール力で言えば、本当は団体競技の方が好ましいですね…」

ことり「でも、団体スポーツでってなると私たちじゃどうしようもない話になっちゃうね。そういうスポーツの経験なんてほとんどないし」

穂乃果「ううーん…今から始めても勝てる可能性があって、世間から知られてる有名なスポーツかあ。うーんうーん……うん?」

海未「……はぁ、いいですか穂乃果、そ のような都合のいい競技、あるはずがないでしょう」

穂乃果「……」

穂乃果「いや、あるよ」

海未、ことり「「えっ?」」


穂乃果「野球……野球だよ!」


海未「野球…ですか?」

ことり「確かに野球はとっても人気のあるスポーツだけど、でも私たち、女子だよ?」

海未「いえ、案外…悪い考えではないかもしれません。実は、女子の高校野球にも全国大会があるんです」

穂乃果「そう!最近ね、雑誌で見たの!前までは女子野球って全国で20校もやってないぐらいのマイナー競技だったんだけど、ここ数年で一気に加盟校が増えて人気が高まってきてるんだって!」

ことり「へぇ~!そうなんだね!……で、でもことり、野球なんてルールもちゃんと知らないし、やれる自信 ないなぁ…」

海未「もちろん、いきなり始めて勝つのは簡単な事ではないでしょう。ですが競技の知名度、加盟校の少なさ…わずかな可能性ですが、賭けてみる価値はあるかもしれません…!」

穂乃果「よーし、決めたよ!私たちで野球部を立ち上げよう!そして全国大会で優勝する!やるったらやる!」



3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:10:09.90 ID:ceA/8Lf4o

穂乃果「ええと……で、野球部を始めるには何からすればいいのかな?」

海未「そうですね、練習をしないことには話になりませんから、まずは練習場所の確保でしょう。バットやグラブ、ボールも用意しなくてはいけません」

穂乃果「そ、そういえば、バットとかって結構高かったよね?うわぁ、どうしよう…穂乃果、今月のお小遣いほとんど残ってないよ …!」

海未「もうお小遣いがないのですか!?今月はまだ半ばですよ?」

穂乃果「あ、あはは…今日もパンが美味いっ!」

海未「そのパンが原因です!買い食いをしすぎなのです!」クワッ!

穂乃果「ひいっ!」

ことり「うーん、道具だけど、体育倉庫に古いやつが一式あったはずだよ。お母さんに使っていいか聞いてみるね」

穂乃果「本当!?ことりちゃん大好きっ!」

ことり「えへへ~、私も穂乃果ちゃん大好き!」チュンチュン

海未「ふむ、とりあえず道具は大丈夫ですかね。あとは練習場所…それと何よりも、野球ですから最低でも9人の部員を確保しなくてはいけませんね」

穂乃果「よーしっ、私ヒデコたちとかに声かけてくるね!善は急げ!行ってきますっ!」ダダダダ…

海未「あっ、穂乃果!もう行ってしまいました…夢中になると人の話を聞かなくなるんですから…」

ことり「そうだね~。でも海未ちゃん、なんだかワクワクするよね?」

海未「ふふ、そうですね。ああなった穂乃果は、いつも私たちを強引に引っ張って、新しい景色を見せてくれますから…」

ことり「ねっ!」



4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:11:38.09 ID:ceA/8Lf4o

ことり「それで穂乃果ちゃん、勧誘はどうだった?」

穂乃果「ダメでした…全滅だったよ~。ヒデコとフミコとミカも、試合の時に人数埋めでベンチに入るぐらいはしてもいいけど、正式な部員になるのはなしかなー…だって。みんなもっと野球に興味持ってくれてもいいのに!」

海未「まあ、女子校ですからね。私はよく父のテレビ観戦を横で見ていたので、かなり野球好きな方ですが」

ことり「日焼けもしちゃうしね…、部員集めは、知り合いに声を掛けるよりはポスターとかを貼って野球好きの生徒に見てもらった方が早いかもしれないね~」

穂乃果「ことりちゃんナイスアイデア!よーしポスター作ろう!」

海未「穂乃果、ポスターは勝手には貼れませんよ。生徒会に許可を貰わなくてはいけないんです」

穂乃果「げっ、生徒会に!?」

ことり「あー…生徒会長、ちょっと怖い印象あるよね…?」

海未「気持ちはわからないではないですが…どの道グラウンドの使用申請もしなければいけませんからね。丁寧に話せばきっとわかってくれるはずですよ…多分」



5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:13:28.87 ID:ceA/8Lf4o

【生徒会室】


絵里「それで?部活動の勧誘ポスターを貼りたいのと、グラウンドを使わせて欲しいですって?」

穂乃果「はい!えっと、グラウンドを…」


絵里「…………」ジトッ


穂乃果(ち、沈黙が痛い…!)

ことり「は、端っこの方とか、すみっこの方で、全然大丈夫です…」

海未「ことり…!そ、そうもいかないでしょう。その、野球ですので、可能な限り広めにスペースを頂ければと…」

穂乃果「お、お願いしますっ!」


絵里「…………」ギロリ


穂乃果(ヒイッ睨まれたぁっ!)

絵里「……野球部ってね、学校にとっては意外と色々面倒なの。バットの打球音が響いたり、ボールが校外に出たりするでしょう?近隣住民から苦情が出やすい競技なのよ」

海未「うっ……。そ、それでは…駄目、ということですか…?」

絵里「はいそうですか、と許可を出せるものではないわね」

穂乃果「でも…でも!私たちは野球をしなきゃいけないんです!」


絵里「………それは何のために?」


穂乃果「全国大会で優勝するため!優勝して、廃校を阻止するためです!」


海未(穂乃果…!)
ことり(ホノカチャン…!)

絵里「即答、ね」

絵里「……女子高校野球の現在の加盟校はおよそ150校ほど。ここ数年で大幅に増加したとはいえ、確かにまだ少ない」

ことり(生徒会長、詳しい…?)

絵里「優勝できる可能性、決してゼロではないわね」

穂乃果「はい!優勝、してみせます!」

海未・ことり「「お願いしますっ!」」



7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:15:38.12 ID:ceA/8Lf4o

絵里「……ハラショー」

穂乃果「え、はら…?」

絵里「素晴らしい、と言ったの。私もね、生徒会長として、廃校を食い止めるための手段を色々考えていたわ。だけど、あなたたちのこの案が一番現実的かもしれない」

海未「そ、それじゃあ…!」

絵里「部員は三人だけ?」

ことり「あ、はいっ、今はまだ三人です」

絵里「いいわ、私が四人目になります」

穂乃果「よに…え、ええっ!?」

絵里「入れてもらえるかしら?」

穂乃果「入ってくれるんですか?!わあ っ、ありがとうございます!絢瀬先輩!!」

絵里「絢瀬絵里よ。絢瀬先輩、じゃなんだか堅いし、下の名前でいいわ」

穂乃果「はい!よろしくお願いしますっ!絵里先輩!」

絵里「うん、よろしくね。ポスターは明日から貼って構わないわ。練習はサブグラウンドに空きスペースがあるからそこを使いましょう……。それと、今から五人目の勧誘に行きましょうか」

海未「五人目…心当たりがあるのですか?」

絵里「ええ、とびっきりのがいるわよ。素直に参加してくれるかはわからないけど、ね」



8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:16:51.38 ID:ceA/8Lf4o

【神田明神】


希「お、来た来た。放課後にここで会うのはなんだか新鮮やね、絵里ち」

絵里「希、生徒会をサボってこんな所にいたの?それもご丁寧に、ジャージ姿にバットを持って」

希「うん、放課後に絵里ちが会いに来るんはカードが教えてくれとったんよ。後ろの三人と一緒に来ることもね」

ことり「えっ、どうして…?」

希「不思議?ふふ、ウチはスピリチュアルやからね」

海未(雰囲気は穏やかですが…どことなく凄みのようなものを感じさせる方ですね)

穂乃果「あの、東條先輩!野球部に入ってもらえませんか?お願いしますっ」

希「おっ、いきなり本題?ふふ、穂乃果ちゃんはせっかちさんやね。うん、ウチは野球は大好きよ」

穂乃果「わぁ!それじゃあ!」

希「でもなぁ、トントン拍子に五人目加入…ってのも、なんだか面白みがないやん?だから、ちょっとしたイベント」

希「一打席勝負。ウチが打者、そっちが投手。誰が投げてもいいよ。ウチを打ち取れたら野球部に入ってあげる」

絵里「そう来ると思ったわ。穂乃果、海未、ことり、あなたたちは投手ってできる?」

穂乃果「えーっと、ま、まだ練習とかしてないから全然…」

ことり「ことりには無理だと思います…」

海未「私も、キャッチボールくらいしかした事がないですね」

絵里「ふう…そうだとは思ったけど、初心者三人でよく全国優勝を目指すつもりになったわね…。いいわ、私が投げる」

ことり「絵里先輩、ピッチャーできるんですか?」

絵里「ええ、一時期だけど、野球を齧ってたの。そこの希もね」

希「ふふ、やっぱり絵里ちが投げるん?ゆっくり決めていいよ」

絵里「捕手は…海未、やってもらってもいいかしら。なんとなく一番投げやすそうだわ」

海未「わ、私ですか…?わかりました」

穂乃果「海未ちゃん!ファイトだよっ!」

ことり「頑張ってねっ!」

海未「が、頑張ります」

希「ほな、ちょっと近くの広場まで行こっか」



9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:17:42.35 ID:ceA/8Lf4o

【公園に隣接した広場】


絵里「ちょっとだけ肩慣らしさせてもらうわよ?」

希「うん、急がんでええよー」

絵里「じゃあ海未、何球か投げるわよ。適当に構えててくれればいいわ」

海未「わかりました!」

絵里「久々に投げるわね…。こう、握って…振りかぶって…放る!」ビュッ!

スパァーン!!

ことり「えっ、すごい!」

穂乃果「速っ!絵里先輩のボールすごい速いよ!?」

海未(う、手がヒリヒリします!)

希「絵里ち、すごいやん。久々なのに球が速くなってるんやない?」

絵里「そう、かしら。うん、肩は軽いわね」

希「120キロ近く出てたんやないかな。やっぱり女子では相当イケてると思うよ」

海未「絵里先輩、返球します」

絵里「海未、ナイスキャッチよ。よく目を瞑らずに取ったわね。あなたはやっぱり捕手向きかも」

穂乃果「海未ちゃんすごいよー!」
ことり「海未ちゃん素敵ー!」

海未「穂乃果、ことり…あまり褒めないでください、照れてしまいます…」

希「さて、そろそろ勝負やね。絵里ち、海未ちゃん、よろしく」

海未「よろしくお願いします、東條先輩」



10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:18:41.92 ID:ceA/8Lf4o

希「さぁて、この打席のカードの暗示は…」

海未(タロットカード、ですか?)

希「『力』か。じゃあここは…『ベブちゃん』で行こか?」

海未(ベブちゃん、ベブちゃん…?とはなんでしょうか。なんだか見慣れない構えですね…クローズドに構えて …まるで外人選手のよ うな…)

絵里「よしっ行くわよ!」
海未「あっ、はい!」

絵里(ワインドアップからの…受けてみなさい希!渾身のストレートよ!)シュッ!

希「……うん、これくらいなら」ブンッ!!


カッキィーン!!!!


絵里「っ!?」

穂乃果「ホームラン!?」

ことり「わぁ…野球ボールってあんなに飛ぶんだね…」

海未(東條先輩のフォーム…現代の選手たちの打撃フォームとは明らかに違います…ベブちゃんとはおそらく、ベーブルース…!かの伝説のメジャーリーガーを模倣してみせたのですか…!)

絵里「く、くうっ…希…!」

希「ふふ、今日はウチの完勝やね、絵里ち」

絵里「そうね…完敗だわ」

穂乃果「あのっ、東條先輩…!すごいバッティングでした!お願いします!野球に入ってもらえませんか?」

希「希でええよ、穂乃果ちゃん。けどね、今日はもう帰り。まだウチが入る時やないってカードも言ってるんよ 」

穂乃果「希先輩…」

希「でも、そうやね…野球部の名簿に名前は使ってもらっていいよ。そしたらとりあえず部活申請通すための5人にはなるやろ?ふふ、楽しかったよ。また誘ってな」



11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:19:29.20 ID:ceA/8Lf4o

♯2


【音ノ木坂校内 廊下】


花陽「…………」

凛「かーよちんっ!」ぎゅっ

花陽「わっ、凛ちゃん!」

凛「何見てるの?ポスター?」

花陽「う、うん…部活動のやつ」

凛「凛たちも早く何部に入るか決めないとだよねー」

花陽「あれ、凛ちゃんは陸上部に入るんじゃなかったの?」

凛「うん…走るのは楽しいよ?楽しいんだけどね…最近、ただ走るだけじゃなくてプラス、他の要素を求めたい自分に気付いてしまったにゃー」

花陽「走りにプラス…バスケとか?」

凛「うーん、やったら楽しいのかもだけど、バスケ部はほとんどの子が中学からやってるから…」

花陽「そうだよねぇ…うーん、私はどうしよう…」

凛「かよちんもなんかスポーツやろうよー。そしたら凛もそれに入ろっかなー」

花陽「え、ええっ!私こそ高校からいきなりスポーツは無理だよぉ」

凛「あ、かよちんの好きな野球部もあるみたいだよ?」

花陽「え、野球ッッ!?!?嘘っ、音ノ木坂に野球部はないはず!調べてすごく残念だったんだよぉ!!?」

凛「かよちんはお米と野球をこよなく愛してるもんね。きっと最近できたんじゃないかな?」

花陽「凛ちゃん!野球やろう!私もマネージャーやる!凛ちゃんをすぐそばで応援するから!!」

凛「かよちん、いつになく圧が強いよ!でもかよちんマネージャーと一緒なら野球も楽しそう。見学行ってみよっか!」

花陽「うんっ!」



12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:20:39.17 ID:ceA/8Lf4o

【グラウンド】


海未「ほら穂乃果、ボールから視線を切らない!」カキンッ

穂乃果「う、海未ちゃんの鬼!練習初日から地獄の千本ノックなんて厳しすぎるよ!」バシィ

海未「仕方ないでしょう、私たちは短期間で仕上げないといけないんです!ほら行きますよ!」カキンッ

穂乃果「休憩しようよぉ!!」バシィ

ことり「わぁ、二人とも上手だなぁ…」

絵里「焦らなくていいわよ、ことりは私とキャッチボールからゆっくり慣れていきましょ?」

ことり「はぁい、絵里先輩!」

絵里「ふふ、少しずつ指にかかったボールを投げられるようになってきてるわよ」

海未「穂乃果ァ!」カァン!

穂乃果「う、海未ちゃん!これ、穂乃果そろそろ死んじゃうよ!?」バシッ!

絵里(穂乃果はなんだかんだ言いながら打球を後ろに逸らさないわね…肩もまずまず強いみたいだし、三塁手にいいかもね)

海未「穂乃果ァッ!!」カキィ!

穂乃果「ねえ聞いてる?!もし死んだら枕元にバット持って化けて出るからね!?あっほら天国見えた!天国見えたよ!?」

絵里「えっ、化けて……?ね、ねえ海未、そろそろ少し休憩を入れてもいいんじゃないかしら?」

海未「ふむ。絵里先輩がそう言うなら、ここで一息入れましょうか」

穂乃果「た、助かったぁ…ありがとう絵里先輩!」

絵里「え、ええ。適度な休憩は大切だものね…。だから、化けて出ちゃダメよ?」

穂乃果「え?」

ことり「穂乃果ちゃん海未ちゃんお疲れ様!はいっ、飲み物とタオルだよ!」

海未「ことり、ありがとうございます」

穂乃果「うぉぉ…こんなにアクエリを美味しく感じた事はないよ…」グビグビ…

ことり「ふふっ、糖分とかを摂りすぎないように、粉末のをかなり薄めに作ったやつなんだけどね」

海未「絵里先輩、後で捕球の練習をしたいのですが」

絵里「ええ、私も投げ込みたいからちょうどいいわ。休憩の後にやりましょう。なんとかして希を打ち取れるようにならないと…」



13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:21:33.17 ID:ceA/8Lf4o

凛「あのーすいませーん!部活の見学がしたいんですけど」


絵里「あら、一年生が来てくれたみたいね」

穂乃果「えっ、やった!海未ちゃんことりちゃん!獲物を逃がすな!フォーメーションデルタ!」

ことり「ラジャー!」シュバッ!
海未「了解です!」バババッ!

絵里「ちょ、ちょっと三人とも…あんまりガツガツ行って引かれないようにね?」

穂乃果「へいらっしゃい!ようこそ野球部へ!お客様は二名様ですか!」

凛「あっ、はい!一年の星空凛です。あの、凛は今まではずっと陸上部で、野球はやったことないんだけど…大丈夫ですか?」

穂乃果「もっちろん!私もまともに野球するのは今日が初めてだよ!」

凛「ええっ?今日初めて!?」

穂乃果「そう!私、高坂穂乃果!よろしくね!」

凛「よ、よろしくお願いします」

海未「園田海未です。よろしくお願いしますね。そちらの方も野球は初めてで すか?」

花陽「……野球力測定」メガネ装着 ピピピ…

海未「あの…どうしました?」

花陽(トサカは5、サイドテールは71、黒髪は107…)

ことり「んー、私の顔に何かついてるかな?」

花陽(野球力たったの5…ゴミめ)

凛「あ、気にしないでください!かよちんは野球の事になるとスカウター眼鏡ちんモードに入っちゃうんです」

穂乃果「すかうたー…?」



14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:22:44.68 ID:ceA/8Lf4o

凛「ほらかよちんかよちん、挨拶しなきゃ」

花陽「えっ?あっ!ご、ごめんなさい!凛ちゃんと同じ一年の小泉花陽です…えっと、私は野球は大好きだけどやったことはなくて…あ、じゃなくて!私はマネージャー志望なんですけど…」

ことり「わぁ!花陽ちゃんはマネージャー志望なの?花陽ちゃんは可愛いね!もう今すぐ即戦力だよぉ!南ことりです、よろしくね!」チュンチュン

花陽「わ、私!そんな可愛いだなんて!あの、私野球が大好きで、メガネだし、運動神経は悪いんですけど、傍で見ていたいなぁって思って…だから、マネージャーさせてもらえたら嬉しいですっ…!」(このトサカの人優しそうだなぁ…野球力は雑魚だけど…)

穂乃果「もちろん大歓迎だよ!マネージャーかぁ、なんだか野球部らしくなってきたんじゃないかな!」

凛「かよちんかよちん、なんだか優しそうな先輩たちだね」

花陽「うん!人数はまだ足りてないみたいだけど、すごく楽しそうだね」(野球力は軒並み低いけどね…まぁ、今日が初日ならこんなもんか…)

絵里「星空さんと小泉さんね。絢瀬絵里よ、よろしくね?」

花陽「よ、よろしくお願いします」スチャ ピピピ(野球力は…548!この人、出来る)

凛「凛はもう部活ここに決めちゃうにゃー。陸上より楽しいかも!」

花陽「良かった!えへへ、一緒に…って言っても私は応援とお手伝いだけど、頑張ろうねっ」

凛「うんっ!」

凛(でも、かよちん、ほんとはマネージャーじゃなくて参加したいんじゃないかなぁ…?)



15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:24:10.76 ID:ceA/8Lf4o

♯3


【グラウンド】


花陽「う、うああっ!もう!最悪だよぉ!!!」

絵里「ひっ!す、スマホを見ていたと思ったらいきなり叫んで…。花陽、どうしたの?ちょっとビックリしたじゃない…」

花陽「聞いてください絵里先輩!私、ネットで女子高校野球について語る掲示板を閲覧してたんです!穏やかな流れで良スレとして機能していました!
それが!いきなり湧いて出た対立煽りのせいで荒れに荒れて機能しなくなっちゃったんですッッ!!そしてその流れを即刻まとめたアフィブログがあるんです!
このザ・ベースボールBBSは2chとかよりは規模の小さい野球専門の中堅掲示板でアフィブログに目を付けられてない通好みのオアシスだったのに !
きっとここの管理人が煽ったんです!この2525速報とかいうブログの管理人の向こう脛をバットでフルスイングしてやりたいです!!」

絵里「ハ、ハラショー…。よ、よくわからないけど、落ち着いて花陽……ね?」

ことり「そのサイト、にこにこ速報って読むのかな?なんだか可愛い名前だね~」

花陽「うう、クソアフィめ…なんjでもまとめてればいいのに私のオアシスを侵犯するなんて…ああっ、憤懣遣る方無いです…!」

絵里(どうしよう、花陽が怖いわ)

穂乃果「ネットで女子高校野球について語ってるとこなんてあるんだねー。やっぱり結構人気出てきてるのかな?」

花陽「はい!もうネットでは大人気なんですっ!特に今はUTX高校が熱いんです。
昨年度の夏を制覇し た主力トリオ、投の綺羅、守の統堂、打の優木が今年は最上級生に!実力は男子にも匹敵していて、しかもルックスがアイドル並みなんです!人気が出ない理由がないんですよぉ!!」

穂乃果「お、おおー…、花陽ちゃんの熱がすごいよ」

花陽「穂乃果先輩もルックス可愛いし、たった一週間の練習で野球力もメキメキ伸びて140!どうやらセンスがあるみたいです!もし勝ち上がれれば絶対人気が出るはずですっ!」

穂乃果「ほ、褒められてるのは嬉しいけど圧がすごいよ花陽ちゃん…あと野球力って何!?」

海未「行きますよ凛!!」カァン!

凛「ヘイヘーイ海未先輩!このくらい余裕だよ!」パシッ!

海未「いい根性です!次!」カキッ!

凛「バッチコーイにゃ!」バシ ッ

希「凛ちゃんは身体のバネが凄いなぁ。遊撃手やってもらったらいいんやないかな?」

花陽(希先輩の野球力は、っと…1403!!??えっ、えっ!全国トップクラスなのぉ!?)

絵里「脚も速いのよね、センターもいいんじゃないかしら?」

希「うーん…女子の、それもアマチュア野球やからねぇ、外野に大飛球ってパターンは男子よりかは少なめやし、内野を固めた方が堅実なんやない?」

花陽「の、希先輩が言うなら…私もそう思いますっ」(凛ちゃんの野球力は88…うん、頑張ればきっとすごく伸びるよ凛ちゃん)

絵里「そっか、二人が言うならそれがいいのかもね。それじゃあとりあえずショートは凛で決まりかしら」



16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:25:41.91 ID:ceA/8Lf4o

穂乃果「おー、じゃあ穂乃果と凛ちゃんで三遊間だね!」

ことり「穂乃果ちゃんと凛ちゃんが内野で並んでたらチームが明るくなりそうでいいね~」

希「元気印コンビでいい感じやんなぁ」

絵里「ところで希、あなたしれっと混ざってるけど、もしかして参加してくれる気になったのかしら?」

希「いやぁ、打ち取られたらってのは変わってないよ。でも一応、ウチも書類上の部員ではあるからね。様子見に来たんよ」

絵里「もう…変にこだわってないで一緒にやらない?楽しいわよ?」

穂乃果「そうだよ希先輩。穂乃果にあのホームランの打ち方教えてよー」

希「うーん、混ざりたい気持ちも山々なんやけどね?今ウチが加わらないのはチームのために必要な事だ…ってカードが告げとるんよ」

ことり「スピリチュアルですか?」

希「そ、スピリチュアルやんな」

絵里「仕方ないわね…また後で勝負しなさい、希。ところで、向こうの方で遠巻きに見てる子…うちに興味あるのかしら?」

希「うん?どの子?」

絵里「ほら、あの物陰になってるとこ。半身隠してこっちを見てるわ」


希「……えっ?」
絵里「えっ?」


希「…絵里ち、そんな子、、どこにもおらんよ?」

絵里「ち、ちょっと希…からかわないでよ。ほら見てことり、私が指差してる方。あの子よあの子」

ことり「……んー。……あのね、絵里先輩?誰も、いないよ?」

絵里「えっ、ちょっ」

希「絵里ちにだけ見えとる…って事?」

穂乃果「なになに!怖い話してるの!?」

絵里「ひ っ!や、やだ…嘘でしょ…!?やめてよ!こ、こっちに向かって歩いてきてるあの子よ!?赤っぽい毛で巻き髪の女の子!!ほら!指で毛先をクルクルって!」

希「……聞いた事ない?…音ノ木坂七不思議、夕暮れのグラウンドに現れる少女の亡霊。…スピリチュアルやねぇ!!!」

絵里「音ノ木坂七不思議ぃ!?」

真姫「ねえちょっと」髪の毛クルクル

絵里「ひいいいっ!!亡霊っ!?」

真姫「う゛ぇえっ!?だ、誰が亡霊よ!!」

ことり「あはは、ごめんね?なんでもないのよなんでも」

絵里「えっ…?ちょっと、ことり、あなた普通に会話して…」

希「ごめん絵里ち、からかっただけなんよ。いやー思いの外ことりちゃんのノリが良くって」

絵里「か、か、勘弁 してよねぇ……?」



17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:27:50.95 ID:ceA/8Lf4o

ことり「それで、何か用かな?もしかして見学?」

真姫「ん…違うけど。ねえ、そこのノックしてる人」

海未「え、私ですか?」

真姫「そう。ちょっと右腕出してくれない?」

海未「右腕を?」

真姫「ハヤクシナサイヨ」

海未「は、はい」

真姫「……」ギュッ

海未「!?い、痛いですっ!?いきなり肘を捻って…何をするんですか!」

真姫「…あのね、ノックのフォームが少しおかしいのよ。右肘の腱に負担がかかってる。故障しないうちに少し休んだ方がいいわ。あなた、小泉さんよね。救急箱ってあるかしら」

花陽「あ、う、うん!」

真姫「……固定して……これでよし。簡単にだけど、湿布とテーピングをしておいたから。明日ぐらいまではあまり激しく動かさずに安静にしておく事ね」

海未「ありがとうございます。あなたは?」

真姫「お礼はいいのよ、勝手にした事だし。私は一年の西木野真姫。スイングする時はもう少し引き手を意識して振るのをお勧めするわ。それじゃあね」


ことり「行っちゃった…」

穂乃果「か、かっこいい」

花陽「西木野さん、すごいなぁ…。ごめんなさい海未先輩、怪我しそうになってたのはマネージャーの私が気付かなきゃいけなかったのに…」

海未「いえ、気にしないでください花陽。私も少しフォームを見直してみます。それにしても凄いですね…あの西木野さんという方は」

凛「西木野さんは凛たちのクラスメイトだよ。家がお医者さんでね、西木野さんはスポーツドクターを目指してるんだって」

穂乃果「へえー!欲しい!西木野真姫ちゃん、うちのチームに欲しい!」

希「ふふ、必要なピースがまた一枚…やね」



18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:28:55.00 ID:ceA/8Lf4o

~~~~~


花陽「お疲れ様でしたー!」

凛「穂乃果先輩たちまた明日にゃー!」

穂乃果「ばいばーい!」

希「じゃあ帰ろっか、絵里ち」

絵里「悔しいわ…また希にホームランを打たれるなんて…」

ことり「はぁ~、今日も疲れたねえ」

穂乃果「ホントだよ。素振りのせいでまた手にマメができちゃった」

ことり「日に日に女の子の手じゃなくなっていくよぉ…」

海未「ふふ、いいじゃないですか。努力の証ですよ」

穂乃果「熱血だなぁ海未ちゃんは。あ、でも打つのは楽しいよねっ!」

海未「そうですね…こう、カッと芯で捉えた時の力感はちょっと癖になりますよね」

ことり「穂乃果と海未ちゃんはバッティング得意だよね~!もう絵里先輩の速球についていけるようになったなんですごいよ。ことりはまだまだ…」

海未「ふふ、ことりもそのうち慣れますよ。私も変化球への対応に早く慣れなくては…」

穂乃果「あ、そういえばあっちの通りにバッティングセンターがあるよ!ちょっとだけ寄ってかない?」

海未「いいですね、私は今日は腕を動かせませんが付き合いますよ」

ことり「ことりもあとちょっと練習していきたいかも!」



19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:29:53.54 ID:ceA/8Lf4o

ガシャン!カァーン!
…ガシャンっ!カキーン!


穂乃果「わぁ、中はこんな感じな んだねー。なんだかレトロな雰囲気でいい感じだね」

海未「屋内で響く打球音はなんだか新鮮に感じますね」

ことり「カウンターで専用メダル買ってきたよ。ことりが先に打ってもいいかな?二人にフォームとか見てほしいんだ」

海未「はい、いいですよ。あ、右打者用の110キロのケージが空きましたね」

ことり「よーし、ヘルメットを被って手袋をして…メダルを入れて…スタート!」チュンチュン

穂乃果「ことりちゃん!ファイトだよ!」


ガチャン…ビュッ!


ことり「きゃあっ!速い!?」

海未「ことり、落ち着いてしっかりボールを見ましょう!大丈夫、打てますよ」

ことり「う、うん!」


にこ「……」


ガチャン…ビュッ!ガキン!

ことり「やった、当たった!な、なんだか手が痺れるけど…」

穂乃果「バットの根っこだったねー、でもタイミングは良かったよ!ファイトファイト!」


にこ「……」

ことり「もう一球…よく見て、えいっ!」
カーン!

穂乃果「おー!前に飛んだ!」

海未「今の打球なら外野の前に落ちたかもしれません!いいですよことり!」

ことり「うふふ、ちょっと楽しいね!」


にこ「全ッッ然、駄目ね!!」



20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:31:10.11 ID:ceA/8Lf4o

穂乃果「うぇっ?誰?」

にこ「重心が高い!軸がぶれてスイングが泳いでる!腰を落としなさい腰を!脇もキュッと締める!」

ことり「えっ、は、はい」

にこ「顎を引いてボールをよく見る!インパクトの瞬間まで一瞬たりと目を離さない!」

ことり「こ、こうかな?」
カァーン!

穂乃果「おお、いい当たり!」
海未「一二塁間をライナーで抜ける打球です!」

にこ「駄目よ!今のは振り遅れて右に飛んだだけ!自分のタイミングで打ててない!非力でヘッドスピードが遅いのを自覚して、今よりも気持ち早めにバットを出しなさい!」

ことり「チュンチュン!」
パキン!

海未「鋭い打球!」
穂乃果「クリーンヒットだね!」

にこ「それが打撃の基本にして王道!センター返しよ!今の感覚を身体に染み込ませなさい!!」

ことり「すごい、なんとなく打てるようになっちゃったかも!ありがとうございます」

にこ「ふん、ちょっと熱くなっちゃったわ。アンタらが最近音ノ木坂に野球部を作ったっていう二年生?」

穂乃果「うん、そうだよ!あなたも音ノ木坂生?」

にこ「にっこにっこにー!あなたのハートににこにっこにー!笑顔届ける矢澤にこにこー!にこにーって覚えてラブにこっ!」

穂乃果「えっ」
海未「えっ」
ことり(にこにこ…?最近どこかで聞いたような…)

にこ「……私は矢澤にこ。ここのバッティングセンターでバイトしてんの」

穂乃果「そ、そうなんだ!よろしくねにこちゃん!」(最初のは何だったんだろ?)

にこ「ふんっ」



21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:32:42.94 ID:ceA/8Lf4o

穂乃果「にこちゃんは野球に詳しいんだね。教え方もすごく上手だったし、ねえ、良かったら穂乃果たちと一緒に野球やらない?」

海未「ええ、あなたが入ってくれたらとても心強いのですが…」

にこ「楽しそうだけど、パスよ。ここのバイトがあるし、副業の時間もあるから」

穂乃果「ええ~っ、そんな事言わずに一緒にやろうよにこちゃん!楽しいよ!やろう!」

ことり(副業ってなんだろ…?)

にこ「しつこいわね~。家庭の事情ってもんがあるのよ。あとにこは三年!アンタたちより上級生だから!」

穂乃果「えぇ!嘘でしょ!?」

にこ「なによ!ムカつく反応ね!底抜けに失礼な奴……ま、でも、にこは野球は好きだから許すわ。応援はしててあげるわよ」

ことり「応援、かぁ…」

穂乃果「うーん…にこ先輩、どうしても駄目ですか?」

にこ「無理よ。はい、メダル1枚サービスしてあげるから、この話はおしまい。仕事に戻らなきゃだから、じゃあね」



穂乃果「駄目かぁ…」

海未「どうにか参加してもらえないでしょうか…」

ことり「アルバイト、副業…お金で困ってるのかな?」

穂乃果「うーん……なんとかならないかなー」



22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:34:23.40 ID:ceA/8Lf4o

♯5 


【グラウンド】


凛「にゃにゃにゃ…にゃあっ!」ぶぅんっ

絵里「凛、大振りしすぎよ。しっかりボールを見て、まずは当てないと」

凛「うう、全然当たんないよ!守備の方が楽しいよー」

希「意外やねぇ、運動神経の塊みたいな凛ちゃんがこんなに打撃が苦手だなんて」

ことり「なんだかスイングがぎこちないかな?」

穂乃果「へへ、ボールが飛んでこないから守備も楽でいいね…ふぁあ…」

海未「穂乃果ァ!守備中に打者から視線を切って欠伸だなんてたるんでます!打球が飛んできたら大怪我をしますよ!目覚ましにグラウンドを10周してきなさい!」ビシィ!

穂乃果「ひいっ!海未ちゃんの鬼ィ!ま、真面目にやるから!」

海未「次に目を切ったら走らせますからね!」

絵里「もう一球行くわよー」

凛「よーし、今度こそ花火を打ち上げてやるにゃ!」


絵里「えいっ!」シュッ

凛「やあっ!」ぶんっ!


海未「うーん…空振りですか」

凛「うう、海未先輩…凛、センスないのかな…?」

海未「いえ、なにかきっかけがあれば…感覚を掴めば凛なら必ず打てるはずです。でもどうすれば…」

凛「かよちーん全然打てないよー!」

花陽「がんばって!凛ちゃんなら打てるようになるよ!」

凛「あっ、ちなみに凛の野球力ってどれくらい?」

花陽「えっとね…(ピピピ)」

花陽「野球力95。うん、全然伸びてないね。一言で言えばフリースインガーの雑魚だよ凛ちゃん。運良く当たったところでポップフライが関の山だね」

海未「し、辛辣ですね…」

絵里「そこまで言わなくても…」

凛「り、凛は慣れてるから…かよちんは昔から野球に関してだけはあんな感じなの。凛はこっちのかよちんも好きだよ?」



23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:36:25.21 ID:ceA/8Lf4o

穂乃果「ねえ花陽ちゃん、野球力ってどれくらいあればすごいの?」

花陽「うーん、すっごくおおまかにですけど、女子では100ぐらいまでが初心者、350ぐらいから試合に出られる程度、1000ぐらいから全国クラス…って感じかな?
ちなみにプロ野球の選手は2軍でも最低で10000ぐらいはある感じです。プロの上の方は青天井かなぁ」

穂乃果「へぇ~!プロってやっぱり凄いんだね!」

海未「その手の強さの数値化みたいなのって結構好きです。ワクワクしますね」

ことり(それを測れる花陽ちゃんの眼鏡って一体どこで売ってるんだろう…)

凛「ええ…凛の95ってクソザコだよね…テンション下がるにゃ~」

花陽「うーん……あのね凛ちゃん、反対側の打席に立ってみたらどうかな?」

凛「えっ、左打席?でも凛は右利きだよ?」

花陽「ううん凛ちゃん、野球の打席に利き手は関係ないんだよ。試しにちょっと立ってみて?」

凛「うん…ええと、グリップは逆だよね…こう?」

花陽「そう、そんな感じだよ凛ちゃん!それでね、何か、さっきまでとの違いに気付かない?」

凛「違い、違い?かよちんが背中側になって見えなくなっちゃって寂しいよ」

花陽「えへへ、凛ちゃんってば……あ、そうじゃなくってね…一塁を見てみて?」

凛「一塁を?……あっ、なんだか、一塁が近い?」

花陽「そう!そうなの凛ちゃん!左打者は一塁が数歩ぶん近くなって有利なんだよ!だから上手な人でもわざわざ左打者になる人がいたりするんだよ!」

凛「そっか、近くなった…これなら…凛の脚なら…」

海未「…!それじゃあ絵里、もう一球お願いします!」

絵里「オーケーよ。行くわよ凛!」

凛「えっ、あ、まだ準備が」


絵里「食らえ!ハラショーストレート!」シュッ

凛「に、にゃにゃっ!」カキッ


海未「当たった!」

凛「でも三塁線、ボテボテのゴロ…」

穂乃果「私が取るよ!」

花陽「一塁に走って凛ちゃん!全力で!」

凛「う、うんっ」ダッ!

穂乃果「焦らず取って…一塁の希先輩に送球!」 シュッ

凛「全力で駆け抜けるにゃー!」ダダダッ!

パシッ



24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:37:42.56 ID:ceA/8Lf4o

希「穂乃果ちゃん、良い肩してる。鋭い送球やったよ。…けど、これは悠々セーフやね」

花陽「やったやった!凛ちゃんすごいよ!内野安打だよ!ヒットだよっ!」

凛「うう、でも全然当たり良くなかったよ…?」

花陽「違うの凛ちゃん!綺麗なヒットも、ボテボテの内野安打も同じ価値なのが野球の一番いいところなんだよ!だから今の凛ちゃんのバッティングは、最高だったんだよ!」

絵里「その通り。ハラショーなバッティングよ、凛」

希「女子野球でそのレベルの脚で走り回られたら、対応できるチームは少ないんやないかな。ウチも最高のバッティングやったと思うよ、凛ちゃん」

ピピピ
花陽「あっ、野球力も一気に210まで上昇してる…!凛ちゃんっすごいよぉ!」

凛「え、えへへ…あんまり褒められると凛、照れちゃうよ… 」

穂乃果「よかったよかった。凛ちゃんの表情から硬さがなくなったね」

ことり「うん、打席ですごい力んでたもんね。綺麗なヒットとかホームランを打たなきゃと思いすぎてたんだね」

海未「ふふ、花陽は凛の事をよく見ているんですね…私たちが何を言うよりよっぽど効果的でした」

凛「よーし!絵里先輩もう一打席お願いしますにゃ!!」

絵里「その闘志ハラショーよ!次は打たせないわ!」

花陽「よかったね凛ちゃん…!」


花陽(……私も…)


穂乃果(ふふふ、そろそろ花陽ちゃんも、混ざりたいんじゃないかな?)



25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:43:50.81 ID:ceA/8Lf4o

【バッティングセンター】


キィーン  ガシャッ
  カキーン


にこ「はい、メダル10枚で2700円でーす!お釣りのお渡しが300円ですっ!ヘルメットはちゃんと着けてくださいね~、にこっ!」

店長「矢澤さん矢澤さん、そろそろ時間だから上がっていいよ」

にこ「あ、はーい!……ふう、疲れた。さーて、更衣室でブログの更新でも…って、140キロのケージに女の子?しかも音ノ木坂の制服?野球部の子かしら…ちょっと見てみようかな…」


ガシャン シュッ
真姫「……ブツブツ」


ガシャン シュッ
真姫「………ブツブツ」


ガシャン シュッ
真姫「ブツブツ……」


にこ(ええ…なによあれ…?バットを持って打席に棒立ち…ずっとボールを見てるだけ…?しかもなんかブツブツ言ってるし…危ない子?)

真姫「……」 かちゃん。


にこ(あ、またメダル入れた…で、また見てるだけ…?ウッソ、あれバラ買いだと300円よ?10枚買いだと1枚分は値引きされるけど…とりあえず、もったいない…)


真姫「……!ちょっと、あなた誰?ジロジロ見ないで!」

にこ「あっごめ……だ、だって気になるじゃない!どう見たってもったいないわよそれ!」

真姫「関係ないでしょー? あのね、私は西木野真姫。天才よ。こうやって日々球筋を見極める事で理想の打撃を追い求めてるの。ま、説明したところでどうせ理解できないでしょうけど」フフン

にこ「いやいや理解できるわけないでしょ! …ええと、真姫ちゃん?今のアンタはハタから見るとちょっと危ない子よ?」

真姫「う゛ぇえ!?なによ危ない子ってイミワカンナイ!えっと…」

にこ「私はにこ、矢澤にこよ。にこも野球好きだから言わせて貰うけどね、振らずに理想の打撃に到達できるわけないでしょ!頭の中でどんなに考えたって再現できなきゃ無意味よ」

真姫「にこ、にこちゃんね。そんなの私の勝手でしょ?」

にこ「ねえ、三年なんだけど」

真姫「え…一年じゃ?そういえばうちのクラスでは見ない顔……べ、別にいいでしょにこちゃんで。見た目的に幼いし。と、とにかく私は大丈夫なの!」



26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:46:22.28 ID:ceA/8Lf4o

にこ「あーもう、いいからちょっと振りなさいよ!ブンッて!完成してなくていいから現段階の理想の打撃見せてほしいなー!天才の打撃見てみたいなー!」

真姫「ちょ、ちょっとにこちゃん!?ケージにハイッテコナイデ!マナー違反!」

にこ「にこは店員だからいいの。ほらボール来るわよ!あっ、真姫ちゃんってばもしかして、バットも振れないぐらい非力なわけ?」

真姫「なっ、そんなわけないでしょ!振れるわよバットぐらい…見てなさい…!」


ガシャン シュッ ぶんっ


にこ(…ん?)


真姫「い、今のはなしよ。自分のタイミングじゃなかったから」

にこ「う、うん」

真姫(よし…落ち着いてマッキー。あなたは天才、天才よ。知的でクールで可愛くってオマケに野球の才能があるの。真姫ちゃん天才たちつてと!
思い出して、脳内に描いた、理想の、最も効率的な打撃フォームを。バット入射角は…体重移動のタイミングは…腰の回転で…)


ガシャン シュッ


真姫「えいっ!」 ぶんっ

真姫「ちっ、惜しかったわね…やあっ!」
ぶん!

にこ「こ、これは…」

ぶーんっ!

にこ(運動音痴だ…!ネタにするのが申し訳ないくらいの…!)
ぶん!


真姫「……」


真姫「…………運動音痴じゃないから」

にこ「あ、うん…」

真姫「…こう見えてもね、ダンスとかはできるの!球技、球技が苦手なだけなの!だからその気まずそうな顔とノーコメントはやめなさいよ!」

にこ「う、うん…理想の打撃探し、頑張って欲しいにこー。じゃっ、私はこれで」

真姫「うぁぁバカにしないで!あーもう!だからスイングしたくなかったのよ!ヘタクソが野球好きじゃダメなの?私だって野球したい!だけど出来ない!自分でビックリするくらいセンスがないんだもの!私は天才なはずなのに!もうやだ!うう…っ!」

にこ「え?!ちょ、真 姫ちゃん…泣かないでよ…!他のお客さん見てるから、立ってほら、にっこにっこにー!ね?笑って笑って!にこっ!」

真姫「なによそれ…グスッ、キモチワルイ…」



27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:47:54.41 ID:ceA/8Lf4o

にこ「くっ…慰めてやってるのに、この一年は……ほら、とりあえずケージ出るわよ!外で人待ってるから!すっ、すみませーん、お待たせしちゃってぇ…」


???「おや、まだボールが出ているようだが。次の私がケージに入ってしまってもいいのか?」


にこ「あ、はい!どうぞどうぞ!ちょっとボール散らばってますけど、それでも良ければ残りの球も打っちゃっていいですから」

真姫「……ぐすっ」


???「ふむ、それでは遠慮なく打たせてもらうとしようか」


ガシャン シュッ カキィィーン!!!
テッテレッテレッテー♪

真姫「な、なに?この音…」

にこ「ホームランパネルに当たった音よ。今の人かしら」

カキィィーン!!!
テッテレッテレッテー♪

カキィィーン!!!
テッテレッテレッテー♪

真姫「な、なによあの人…連続でホームランパネルに当ててる……まるで、ロボットみたいに…」

にこ「……ああっ!…焦ってて気付かなかったけど、あれは!UTX高校の五番キャッチャー 『精密機械』 統堂英玲奈じゃない!!すごい!にこファンなのよ!!」


英玲奈「……よし、順に打とう」


カキィィーン!!!
真姫「三遊間!」

カキィィーン!!!
にこ「一二塁間!」

カキィィーン!!!
真姫「センター返し!」

カキィィーン!!!
にこ「左中間!」

カキィィーン!!!
真姫「右中間!」

カキィィーン!!!
にこ「センターオーバー!」


真姫「す、凄い…間違いなくヒットコースごとに狙って打ち分けてる。140キロを…」

にこ「これが女子高校野球の最高峰、UTX高校の主軸…!あの機械みたいな眼光…噂通り…かっこいい!!」

カキィィーン!!!
テッテレッテレッテー♪



28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:48:54.50 ID:ceA/8Lf4o

英玲奈「よし、今日はこんなところだろうか」

真姫「あ、出てくるわよ」


英玲奈「おかげで少し余分に打つことが出来た。感謝する」


真姫(なんか機械っぽいのよね。試合中ピンチになったら『バカな!データにないぞ!』とか言っちゃうんでしょ、どうせ)


にこ「あ、いえ!あのー …矢澤にこって言います!ファンです!握手してください!あと良かったらサインも…」

英玲奈「おや、嬉しいな。応援してくれてありがとう」キュキュキュ

にこ「う、うわぁ直筆サイン…! 家宝にしますぅ!」

英玲奈「フフ、そんなに喜んでもらえると嬉しいな。それじゃあ私はこれで…」


真姫「ま、待ちなさい!」


にこ「え?」
英玲奈「うん?」


真姫「私は西木野真姫!音ノ木坂学院の天才1年生、西木野真姫よ!覚えておいて、今年あなたたちUTXを倒すのは、この天才マッキー率いる音ノ木坂学院だから!」

にこ「は、はああっ!!??ちょ、真姫ちゃんいきなり何を言ってんのよ!?」

英玲奈「ほう、フフフ…音ノ木坂学院、西木野真姫か。いいだろう、覚えておくよ。そちらの矢澤にこさんと一緒にね」

にこ「えっ、ちょ、にこは違っ」

英玲奈「うちのチームメイトにも教えておこう。宣戦布告…か。あんじゅが喜びそうだ」

真姫「首を洗って待ってなさい!」

にこ「真姫!黙って!シャラップ!!」

英玲奈「それじゃあ失礼するよ、にこさん、真姫さん」

にこ「お、お疲れ様でしたぁっ!!!」



29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:51:54.87 ID:ceA/8Lf4o

真姫「ちょっとにこちゃん、あなた同じ三年でしょ?そんな畏まらなくたっていいじゃない」
 
にこ「ばっか!相手は超高校級のスターよ!? しかも、ああ~なんかにこまでセットで宣戦布告したみたいになっちゃったじゃない!? そもそも!アンタもにこも野球部じゃないのに!」

真姫「統堂英玲奈を見て思ったの。あれを超える最適化されたフォームを体現してみたいって。
それにはやっぱり実戦を経ないとダメだって事もわかったわ。だから私は明日野球部に入るの。にこちゃんも一緒に入りなさい」

にこ「はあ!?なぁんでにこを巻き込むのよ!一人で入りなさいよ!」

真姫「……それは無理。にこちゃんも入って、お願い」

にこ「意味わかんない!」

真姫「トラナイデ!」

にこ「は!?って、いや、ホントにね…うちはにこがバイト頑張って家計を支えなきゃいけないの!家庭の事情なんだから無茶言われても困るのよ!」

真姫「なによ、お金の問題なの?じゃあこうしましょう。にこちゃんが野球部に来てくれたら一日ごとに私がバイト代をあげるわ。相場がわからないけど…、一日に一万円ぐらいでいいのかしら」

にこ「は、はぁっ!? いやいや額的にもちょっと多すぎだし、そもそも学生同士で一緒に部活に行くだけで給料って何!? 真姫ちゃん、あんた本気で変よ!?」

真姫「にこちゃんだって野球好きなんでしょ!一緒に来てよ!知らない人だらけの野球部に一人で入るなんて嫌なの!へ、ヘタクソだし!!笑われるかもだし…」

にこ「……なによ、言っとくけど、にこだって人と仲良くするのは苦手よ。大体あんたとも今日会ったばかりじゃない」

真姫「……私の運動能力が、その…ほんの少し劣っているところを見られたんだから、もう他人面はさせないわ。それに…なんか、にこちゃんって喋りやすいから……と、と、トモダチ…に、なりなさい」

にこ「と、友達……?にこと?友達か…友 達……そ、それはいいけど、ここのバイトだってそんな急に辞められるものじゃ」

真姫「大丈夫よ。ここのバッティングセンター、西木野グループの持ち物だから。シフトなんてどうとでもなるわ」

にこ「え…西木野グループ?病院とか、色んな施設を多角経営してるっていう大企業の?アンタそんな金持ちなの!?」

真姫「ほら、問題ないでしょ!二人で野球しましょうよ!」


ウィーン


穂乃果「いやー練習疲れたー!でも今日も打ってから帰るぞっ!」

真姫「あ、野球部の人!ねえちょっと!私とにこちゃんの二人、野球部に入るから!よろしく!」

にこ「ああもう勝手な事を!いいわよ!やってやるわよ!バイト代はしっかりもらうからね!?一日一万は多すぎだけど! 」

穂乃果「う、えぁ!?あ、この前の西木野真姫ちゃんと、にこちゃん?なんかよくわかんないけど、もちろん大歓迎だよ!よろしくね!!」



30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:54:04.49 ID:ceA/8Lf4o

【グラウンド】


穂乃果「と、いうわけで今日から加入した矢澤にこ先輩と西木野真姫ちゃんです!はい拍手~」

ことり「ぱちぱちぱち~」

真姫「…よろしく」

にこ「先に言っとくけど、三!年!だから」

海未「二人とも知らない顔ではありませんし、とても心強いですね!ところで…さっきからグラウンドに豪華な練習機材が続々と運び込まれているのですが、あれは…?」

真姫「ああ、それはうちのパパが。どうせやるなら最高の環境でやりなさいって」クルクル

海未「そ、そんな、真姫のお父様に申し訳ないです!」

真姫「別にいいのよ。大して高い物でもないんだし」

ことり(えー…、ああいうのって全部で何百万かするんじゃ…?)


スチャ ピピピ
花陽「矢澤先輩は野球力410で即戦力!西木野さんは…野球力3?ふーん、そっかぁ…ふーん…」

凛「あれ、西木野さんにはいつもみたいに辛辣なこと言わないんだね」

花陽「うん、西木野さんはスポーツドクターのスキル持ちだし、現状だと数合わせとしても存在価値はあるから」

凛「財布とか言わなかった事に安堵しちゃうにゃー」


絵里「西木野さんに矢澤さん、よろしくね」

にこ「………」

絵里「…?」

にこ「ふん、にこはアンタの事、あまり好きじゃないけど…ま、よろしくお願いするわ」

絵里「あら…好かれてないのね」

真姫「ちょっとにこちゃん、そんなトゲトゲしたら私まで気まずいじゃない」



31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:55:23.28 ID:ceA/8Lf4o

花陽「あれ…西木野さんは矢澤先輩の事 、にこちゃんって呼んでるの?」

凛「いいなぁ、じゃあ凛もにこちゃんって呼ぶにゃ!いいよねっ真姫ちゃん!」

にこ「あっ、ちょっと待ちなさいよ!」

花陽「じ、じゃあ私も…真姫ちゃんと、にこちゃんって呼ぶね?」

穂乃果「いいね!真姫ちゃんとにこちゃん!穂乃果もそれでいくね!」

にこ「か、勝手に…」

海未「わ、私はどうにも、ちゃんを付けて呼ぶのが苦手で…真姫と、にこ、と呼んでも構わないでしょうか…?」

にこ「呼び捨てまで来ちゃった!?ああもう、先輩の威厳が…しょーがないわねー!全員好きに呼びなさいよ!」

凛「にこちゃん真姫ちゃんにこちゃん真姫ちゃ~ん!」ギューッ!

真姫「ヴェエッ…!」
にこ「ちょっ、アンタ汗かいてんじゃない!そんなんでベタベタすんじゃないわよ!」

花陽「ふふ、凛ちゃん嬉しそう」

ことり「うふふ、賑やかになって楽しいね~」

穂乃果「さっ、それじゃ練習始めよっか!」

海未「まずはランニングですね!それでは、絵里先輩!号令をお願いします!」



絵里「……るい」


花陽「えっ?」


絵里「……ずるいわ」


ことり「絵里、先輩…?」



32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:56:21.92 ID:ceA/8Lf4o

絵里「ずるい!どうして!?なんで入って初日の矢澤さんだけが親しげににこちゃんって呼ばれて!私だけちょっと距離を感じる絵里先輩なの!?嫌よ!私だって絵里ちゃんって呼ばれたい!!」

穂乃果「ぅ絵里ちゃん!」

絵里「そう!それよ穂乃果ぁ!」

ことり「絵里ちゃん!」

絵里「はぁあんっ!」

海未「え…、絵里?」

絵里「チカァッ!」


真姫「…イミワカンナイ」クルクル

凛「ちょっとイメージ崩れるにゃー」

花陽「絵里せんぱ…じゃなくて絵里ちゃん、距離を感じてたんだね…気付いてあげればよかった」

にこ「なによあれ、バカバカしい…… あいつにツッパる気も失せたわ…」

真姫「ちゃんと仲良くするのよにこちゃん」

穂乃果「もうこの際だから穂乃果たちのことも先輩って付けなくていいからねー」

凛「了解にゃ!穂乃果ちゃん!」

花陽「えへへ、わかったよ穂乃果ちゃん♪」



33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 14:57:10.33 ID:ceA/8Lf4o

♯6


【部室】


にこ「さて、それじゃちょっと部の現状を整理させてもらうわよ。ポジションが決まってる部分から書き出していくから」


投手 絵里 744
捕手 海未 382
一塁
二塁
三塁 穂乃果 339
遊撃 凛 270
左翼
中堅
右翼

未定
ことり 262
真姫 12
にこ 410


にこ「名前の脇の数字は花陽計測の野球力よ。そこそこ信頼できる指標っぽいから書いておいたわ」


真姫「ねえ花陽。私の野球力の桁が間違ってるわよ」

花陽「えっと、真姫ちゃん。とりあえず、キャッチボールをまともにできるようになってから苦情を受け付けるね?」

真姫「う゛ぇえ…」

凛「辛辣モードを解除したい時はお米を食べさせてあげるといいんだよ。はいかよちん、おにぎりあげるね」

花陽「ごはん美味しいよお」mgmg



34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:00:19.14 ID:ceA/8Lf4o

にこ「絵里、ポジションはこれで合ってるわよね?」

絵里「ええ、大丈夫よ.、にこ。それと、一塁は希がいる日は希、いない日は主にことりにやってもらってるわ」

ことり「だけど、正直ことり一塁はあんまり自信ないなぁ…こぼす事が結構多くて」

にこ「ふぅん、それはまずいわね。プロはともかく、アマチュア野球では一塁守備の重要度が高いのよね。どうしたって内野の送球ミスが出るから、それをカバーできるように安定した捕球能力が欲しいわ」

花陽「横から見てて、希先輩はやっぱり上手だなぁって思います…。送球が逸れても慌てないし、ショートバウンドも柔らかく捌くし…」

絵里「その希だけど、私やにこと同じ感じで呼んでもらって構わないそうよ」

花陽「あ、そうなんだ。じゃあ希ちゃんだね」

にこ「東條希……オカルト打法の東條、か」

穂乃果「え、なにそれ?」


花陽「オカルト打法の東條…?ああっ!聞いた事がありますっ!!
女子中学野球で猛威を奮い、中学2年の頃はあの優木あんじゅと双璧とも称され、にも関わらず野球界から忽然と姿を消してしまったというあのオカルト打法の東條ですか!?」


絵里「そう、それは希の事よ。彼女は元々は全日本級の打者だったの。ご両親の転勤が理由でやめてしまったらしいのだけど…きっと今でも野球に未練はあるはずよ」

海未「そうだったのですね…あの打棒にようやく得心がいきました」

ことり「でもそれなら余計に、どうして参加してくれないんだろう…」

絵里「……人数も増えた事だし、ちょうどいい機会かしら。あのねみんな、私はピッチャーをやめます」

凛「えっ?絵里ちゃんどうしたの?まさか肩とか肘を痛めたとか!」

真姫「慌てないで凛。私の見立てでは絵里の身体に故障はないわ」

海未「それでしたら、何故…?」



35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:02:39.18 ID:ceA/8Lf4o

絵里「えっと、ごめんなさい、ややこしい言い方しちゃったわね。完全に辞めるわけじゃないわ。ただね…私がエースでは優勝は絶対に出来ない」

凛「それってどういう事…? 絵里ちゃんのボールは女子野球ではかなり凄い方だって…」

絵里「うーん…花陽なら理由、わかるかしら?」

花陽「UTX高校…、ですよね」

絵里「その通りよ、花陽。私の持ち球は120キロ前後のストレートとスライダーだけ。私が何度挑んでも希を打ち取れなかったのは、みんな見ていたわよね?」

穂乃果「うん。希ちゃんには、絵里ちゃんのボールは全然通用してなかった…」

にこ「……UTXにはね、あの希と同格の打者が3人もいる」

海未「綺羅、統堂、優木の3人ですね…」

絵里「そう。だから私じゃダメなの。そして希は言っていたわ。近いうちに必ず、私以上の才能の持ち主が見つかると。
だからね…今日ここで全員!投手としてのテストを受けてもらうわぁ!!」ババッ!


全員『投手テストぉ!!?』


穂乃果「なにそれ楽しそう!穂乃果からやる!マウンド一番乗り!」

海未「こら穂乃果!いきなり投げては怪我をします!まずは念入りにストレッチを」

穂乃果「行くよ海未ちゃん!でやあっ!必殺ナックルボール!」ピョーイ

海未「う、うぁあ!単なる大暴投じゃないですか!」

穂乃果「おっとっと、ごめんごめん~。じゃあ真面目にストレート!160キロでズドーン!」シュッ

海未「あっ、ちょっと!また暴投を!力みすぎです!」

にこ「うん、とりあえず穂乃果はダメそうね」

花陽「投手適性0…時間の無駄ですね」スチャ

真姫(また辛辣ちんになってる…)



36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:04:06.65 ID:ceA/8Lf4o

~~~~~


真姫「受けなさい海未!この大天才マッキーの魔球を!」ヘロッ


海未「………はい」ポスン

穂乃果「肩弱ぁっ!」

ことり「アイドルの始球式みたいでカワイイっ!」

花陽「おにぎり美味しいね、凛ちゃんっ」

凛(真姫ちゃんがメンタルダメージを負わないようにかよちんはおにぎりタイムだよ)


にこ「はい、真姫ちゃんは失格ねー。次は凛よ」

凛「ほらほら真姫ちゃん、さっさとボールを寄越すにゃ」

真姫「トラナイデ!」


絵里「うーん……今のところ全員ダメねえ」

花陽「穂乃果ちゃん、ことりちゃん、真姫ちゃん、にこちゃんがダメだったね」

絵里「にこは器用に制球できてるんだけど、体格もないしやっぱり球速が足りてないのよね…」

にこ「……まあ、にこよりはアンタが投げた方がまだ打たれないと思うわよ」

凛「超高速ストレートぉ!!」

海未「だああっ!何球投げても大暴投じゃないですか!凛も失格です!」


花陽「ピッチャーでも力んじゃう凛ちゃん可愛いなぁ」mgmg

真姫「花陽、お茶飲む?」

花陽「うんっ、ありがとう真姫ちゃん」

にこ「海未!次はアンタが投げなさい!にこが捕手をやったげるから」

海未「わかりました!」

穂乃果「お、海未ちゃんが投げるの?ファイトだよっ!」

ことり「頑張って~!」

海未「ふふ、お手本を見せてあげますよ、穂乃果!ことり!」



37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:05:12.19 ID:ceA/8Lf4o

にこ(さ、ここよ)スス

海未「む…いきますよ、にこ」


絵里(地肩の強そうな海未は本命よね…さあ、どうかしら?)


海未「ええいっ!(キャッチャーミットを撃ち抜くぞぉ~!ラブアローシュート!バァン☆)」シュッ!

スパーン!

にこ「おっ、なかなか…いいんじゃ?」

穂乃果「海未ちゃーん!いい感じだよ!」

真姫「さすが強肩。120キロ以上出てたわ」

ことり「キレもあったよ!」

海未「もう一球行きます!」

スパーン!

穂乃果「さっきより速いよ!」

真姫「すごいわね、練習すればプロ並みのスピードボールを投げられるんじゃない?」

にこ「うん、うん……、もう一球!」

海未「やっ!」シュッ!
スパーン!

にこ「んー、ううーん…?」

絵里「これは…」

花陽「はい、駄目ですね」スチャ



38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:07:47.68 ID:ceA/8Lf4o

穂乃果「えー!海未ちゃん駄目なの?よさそうじゃない?」

凛「かよちん、なんで?凛にはすごくいい球に見えるんだけど」

にこ「肩が強いし、ゾーンにもある程度は正確に投げ込めてるんだけど…問題はシュート回転。そうよね、花陽?」

花陽「うん、にこちゃんの言う通りだよ」

海未「シュート回転…ですか」

花陽「シュート回転が絶対に駄目という訳ではないんだけど、傾向としては、甘く入って痛打を浴びやすい球質なんです…」

絵里「せっかく慣れた捕手から動かしてまで短期間で投手になってもらって、回転の癖を矯正して…ってのは、負担も大きくなるし…あまり賢くないわね」

海未「うーん、力になれず残念です…」(シュート回転…ラブアローシュートとか考えてたせいでしょうか…)

凛「海未ちゃんは捕手が似合ってるし気にすることないよ。信頼できる壁って感じにゃ」

海未「ん、壁?凛…今、私の胸元を見ながら壁と言いましたか?」

凛「え?いや、そういう意図はなかったよ!本当にゃ本当にゃ! 
あ、でも今マスク被ってるにこちゃんも海未ちゃんと一緒で壁っぽいね、ふふっ……ああ!ごめんなさい!二人で追ってこないで!バットは人を殴る道具じゃないよ!怖い!助けて真姫ちゃん」

真姫「う゛ぇえ!こ、こっちに来ないで!大体凛!あんたも壁組じゃない!」

凛「くうっ!言われて初めて痛みがわかる!不本意にゃ…!」

海未「私は並です!盛ってもいません!成敗!」


~~~~~


凛「に゛ゃ゛っ゛!に゛に゛ゃ゛あ゛!」ガッシボカッ

希「やぁやぁ諸君、なんや楽しそうな雰囲気やね」

にこ「あ、出たわねオカルト東條!こちとらアンタを打倒する大エース探しの真っ最中よ!」

希「えー、にこっちと絵里ち、ウチの中学時代の話しちゃったん?」

絵里「そりゃ、ねえ。説明が必要だったし」

希「んー、ウチ、過去の話されるのってあんま好きじゃないんよ。これは腹いせにどらちかにわしわしMAXもやむなしやね…」

絵里「ちょ、希!に、にこよ!私よりにこが会話をリードしてたから!」

にこ「途中からは大体あんたが話してたでしょうが!」

希「うーん…位置が近かったし、にこっちの貧相なので我慢しとくわ」
にこ「ちょ!やめ…アンタみたいな強打者の握力でそれは…! 洒落にならないって!! ひぎい゛っ゛!!」ワシィ!



39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:10:16.06 ID:ceA/8Lf4o

~~~~~


希「やっぱにこっちの反応はいいわぁ…癒される」

にこ「ひ、ひしゃげる…胸揉みとか、そんなチャチなもんじゃあ決して……!く、くうっ、勘弁してよね!……あ、ねえ花陽。あんたも投げてみなさいよ」

花陽「え゛え゛っ!?私っ!?」

絵里「そうね、他は全滅。花陽の実力は未知数。これは明らかに花陽の覚醒ルートに入ってるわ。私はかしこいからわかるのよ」

希「なぁ絵里ち、なんだか発言のネジが緩んどるよ。語尾にチカとか付かんように気をつけんといかんよ?」

絵里「?よくわからないけど…うん、気をつけるわ」


花陽「でも、わ、私は…マネージャーだから…」

凛「ねえかよちん、凛知ってるよ。かよちんが部室でボール磨きをしてる時、楽しそうに変化球の握りを試したりしてるのを。
野球力を測って毒を吐いてる時だって、いっつも楽しそうに笑顔だよね。かよちんは本当に、心の底から野球が好きなんだよね」

真姫(毒吐きながら楽しそうってのは人格的にどうなのかしら)

花陽「り、凛ちゃん…でも…」

真姫「…なにを躊躇う事があるのよ。私なんて正直ド下手だけど楽しめてるし、UTX高校にも宣戦布告済みよ。いい?人間その気になればなんだってできるんだから」

凛「そうにゃそうにゃ!真姫ちゃんなんて最初は強キャラっぽかったのに結局ただの運動音痴だよ?それでも元気に頑張ってるんだから!」

真姫「あら凛…脳を捌かれたいのかしら?」

花陽「ふふっ…。二人とも…」


穂乃果「ねえ花陽ちゃん、穂乃果も花陽ちゃんが野球してるところ、見てみたいなっ!」

ことり「大丈夫、花陽ちゃんならやれるよ♪」

海未「さあ花陽!このミットにあなたの全力をぶつけてきてください!」


花陽「みんな…!うん!いくよ!構えて…やあっ!」シュッ


スパン!


ことり「……ストライクだね!」

穂乃果「うん!いいコントロールだったよ!」

凛「かよちーん!!!輝いてるにゃー!!!」

海未「さあ、もう一球です!花陽!」

花陽「え、えへへ…楽しいね…!」シュッ
パシン!

絵里「ふふ、ハラショーね」


にこ「…………けどさ……ぶっちゃけ、普通よねえ…。絵里の代わりって感じにはならないわよ」


希「ええ、にこっち~、このタイミングでそういう事を言っちゃうん?引くわぁ」

凛「ドン引きにゃ~」



40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:12:59.95 ID:ceA/8Lf4o

にこ「な、なによ!事実でしょ!花陽には野手として活躍してもらえばいいわ!投手としては私とそんなに変わんないわよ、制球まともだけどスピード不足!打ちごろストレートのバッピよ!バッピ!」

花陽「うん、私もそうだと思うよ。変化球もちょっとだけスローカーブが投げられるだけで、ピッチャーとしての力は全然ないよ。いつも偉そうな事を言ってるけど、野球力も多分200ないぐらい」


花陽「でも……穂乃果ちゃん、みんな。こんな私だけど、一緒に野球させてもらってもいいかな…?」


穂乃果「もっちろんだよ!!改めてよろしくね、花陽ちゃん!」

凛「やったぁ!かよちんがそう言うのが待ち遠しかったよー!かよちんかよちん!凛と二遊間組もうね!」

花陽「れ、練習してみないとわかんないよぉ…。でも、組めたらいいねっ!
私は身体能力が全然だけど野球脳はあるつもりだから、野球脳がなくて身体能力だけで野球やってる凛ちゃんとはいいコンビになれるかも…!」

凛「うんうんっ!今はその毒っ気も心地よいにゃー!」

希「これでついに八人やね」

穂乃果「控え要員ではヒデコたちがベンチ入りしてくれるから…あとは希ちゃんと監督だけ!」

ことり「監督はね、お母さんにお願いしてみてるの。スケジュールを調整してくれるって言ってたよ。忙しいから普段の練習に顔を出したりはできないけど、って」

海未「それはありがたいですね!」

真姫「ふーん…短期間でチームの体になったわね」

凛「よーしっ!誰か早いとこラスボスの希ちゃんを打ち取るにゃ!」


絵里「……」

絵里「……よし。希、明日もう一度私と勝負よ。こうなったら、私が一段進化して見せるわ」

海未「絵里…しかし、一日で何かを変えられるとは…」

絵里「安心して海未。実は、みんなに秘密で新しい球種を練習しててね、あと少しの調整で実戦投入できそうなの。…希、目に物見せてあげるわ」

希「へえ、いいやん。楽しみにしとるよ…絵里ち」



42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:15:10.76 ID:ceA/8Lf4o

♯7


【帰宅中】


穂乃果「いやー練習後のパンとからあげ君がウマいっ!最近海未ちゃんが食事に関して優しくなったから余計に美味いよー!」

海未「カロリーは練習で嫌でも消費してますからね。体作りも大事ですし、ある程度の食事量は必要です。
ただパンばかりではいけませんよ?家ではしっかり野菜なども摂取してくださいね?」

穂乃果「大丈夫大丈夫!もうお腹が減って減って何食べても最高に美味しいんだー!ピーマンとあんこはともかく、大抵のものはバクバク食べてるよ。
好き嫌いを言うなら海未ちゃんだって炭酸飲めるようになろうよ」

海未「た、炭酸は別に飲まなくてもいい嗜好品ですから!…でも、食事が美味しいのには同感です。花陽なんて夕食時は 自分用の炊飯器を脇に置いて平らげているそうですよ」

穂乃果「おぉー…花陽ちゃんは流石だなぁ」


ことり「……、穂乃果ちゃんも海未ちゃんも、なんとなく体がガッシリしてきたよね…」


海未「私と絵里で色々と調べながら組んだ、高負荷高効率のメニューをしっかりこなしていますからね、努力の成果です。 そういうことりだってほら、上腕二頭筋の張りが美しいですよ」

ことり「うぅ、筋繊維が乳酸でパンパン…」

穂乃果「あっ、二人ともちょっとだけ待ってて!そこのお店でプロテイン買い足してくるから!」

ことり「ハノケチェン…うぅ…な、なんだかことりのイメージしてた学生生活と違うよぉ。理想はカラフルなマカロンとかクレープとかをみんなでチュンチュンっ!でも現実は揚げ物とコーラ…プロテイン…」

海未「ふふ、いいじゃないですか。夕暮れと汗と白球。これ以上の青春はありませんよ」

ことり「うん、楽しいんだけどねっ!」



44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:18:42.59 ID:ceA/8Lf4o

【南家】


ことり「わぁ…穂乃果ちゃんたちとお喋りしてたらちょっと遅くなっちゃったな…お母さんただいまぁ」

ことり「……あ、お母さん、こんなところで寝てる。やっぱり、廃校とかで疲れてるのかな…。ブランケット、かけてあげよう」

ことり「…んー、何か読んでたのかな?ええと、ドカベン…?あ、確か野球の漫画だよね。…わぁ、古本屋で全巻セットで買ってきたんだ」

ことり「もしかして、野球を覚えようとして…?…期待してくれてるのかな、お母さん。…頑張らなくっちゃ」

こと り「ことりはこういうのって普段は読まないけど、勉強と思って読んでみようかな?」

ことり「ええと、1巻が…これだね」

ことり「………」ペラ…ペラ…

ことり「……2巻…」ペラ…ペラペラ

ことり「…………」ペラペラ…

ことり「……4巻まで読んだけど、柔道しかしてないなぁ…?意外と面白いけど…」

ことり「お風呂入って、ご飯食べてから続きを読もうっと」


【学校】


海未「で、結局一晩かけて読破してしまったのですか…」

穂乃果「ふぇー、ことりちゃんが男の子向けの漫画に熱中するのって珍しいねー」

ことり「うん…普段読まないからかな、すごい面白くって……でね、殿馬の秘打では円舞曲『別れ』のシーンが最高なの。 うぅー…でも眠いよ穂乃果ちゃ~ん」

穂乃果「よーしよしことりちゃん。今日は穂乃果と一緒に爆睡しようね。授業中、みんなで眠れば怖くない。だよ」

海未「なんですか、その自堕落な標語は…。穂乃果は昨日しっかり寝たでしょう、真面目に起きてなさい!
ことり、あまり辛いようなら保健室に行ってもいいと思いますよ?普段は真面目に受けているのですし」

穂乃果「海未ちゃんの鬼!差別主義者!」

ことり「あはは…うん、一時間だけ寝てくるかも~」



45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:19:46.07 ID:ceA/8Lf4o

【放課後 グラウンド】


ことり「うう、結局保健室から戻ってからもほとんど寝ちゃってたよぉ…」

穂乃果「仕方ないよー、今日は古典とか眠くなる授業ばっかりだったし。いやぁ、最高の仮眠日和だったね!」

花陽「ドカベン面白いよね。ことりちゃんが夢中で読んじゃうのもわかるなぁ……私は三太郎が好きだよ。あと、土井垣と絵里ちゃんってなんだかちょっと通ずるものを感じるよね」

凛「そんなに面白いなら凛も読んでみたいなー」

花陽「うちで読む?それか貸してもいいよぉ」

真姫「あ、絵里と希が来たわよ」



希「絵里ち、準備はバッチリ?」

絵里「ええ、がっかりはさせないつもりよ。今、海未にも捕球の練習がてら新球を見てもらったわ」

海未 「……絵里の新球の完成度は高いです。希、たとえあなたであっても、初見で捉えられるほどは甘くないはずですよ」

希「ふっふっふ、それは楽しみやん。 さーて、カードの暗示はなんやろね? …『恋人』かぁ、それじゃ、軽やかにディマジオで行こか」

ことり「あっ、希ちゃんの動作がなんだか優雅に」


スチャ ピピピ

花陽「野球力1520…!コンディションも抜群…足元を均してるだけなのに…気品が溢れてますっ…!
そう、まるで往年の名選手、あのマリリン・モンローの恋人、ジョー・ディマジオのように!」


にこ「あれが希の『オカルト打法』よ。タロットを引いて、絵柄に併せた往年の名選手を降霊させて打つ…」

希「そう、今のウチにはディマジオの魂が宿っとるんよ。故人しか呼べないのが欠点やけどね」

真姫「なにそれ!非科学的よ!」

希「けど事実やからね。スピリチュアルやろ?」

真姫「魂って…じゃあ英語もネイティブみたいに喋れるの?」

希「それはダメなんよ。貸してもらえるのは野球の力だけ。もっと英語のテストで楽したいんやけどね?TOEICとか」

真姫「 ほらほら!絶対降霊はウソよ!」

希「ふふ、信じるも自由、疑うも自由。どっちにしてもスピリチュアルやろ?」

真姫「もう、また煙に巻いちゃって…エリー!オカルトだか霊魂だかなんだか知らないけどきっちり抑えなさいよ!」

絵里「うう…、降霊だとかなんとか、改めて説明されると怖いわね…」

希「ま、細い事は気にせんと勝負勝負!さ、いつでもええよ!」

にこ「それじゃ、審判はにこがやるわ。別に贔屓はしないから安心して」



46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:22:43.21 ID:ceA/8Lf4o

海未(絵里、初球は打ち気を逸らしましょう。外角のボールになるスライダーで。色気は出さず、腕を伸ばしても届かない位置に外してもらって構わないですよ)

絵里(む、オーケーよ、海未)シュッ!

ククッ、パシッ!

にこ 「ボールよ」


海未(キレは良し…)

希「ふぅん。慎重な入り方やね、海未ちゃん」

海未「何度も何度も初球を叩かれましたからね、慎重にもなります」

穂乃果「花陽ちゃん花陽ちゃん、絵里ちゃんの野球力は今どれぐらいなの?」

ピピピ
花陽「えーっと、絵里ちゃんは…野球力1061!全国レベルの水準まで引き上げてきてます!」

にこ(なるほど確かに全国水準の球よ。だけど対する希は全国トップレベル。さて、どこまで通用するのかしらね…)

ピピピ
花陽「え、あれ…っ、こ、ことりちゃん…?」

ことり「? 花陽ちゃん、どうかしたの?」

花陽「うっ、ううん、なんでもない…よ?あれぇ、おかしいなぁ…何度測っても……スカウターが壊れちゃったの…?」

真姫「花陽、静かに。そろそろ二球目よ」



47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:24:00.49 ID:ceA/8Lf4o

海未(さて、外角一辺倒という訳にもいきません。二球目は希のスイングが窮屈になりがちな内角低め、直球でどうでしょうか?)

絵里(ええ、それで問題ないわ)シュッ!

希「……ここでウチの苦手コース、読み通りやん!」


パカァン!!!


海未「しまっ…!!」

絵里「っと……危ない、危ない。左に切れて大ファールね」

希「あー惜しい…でも、また今みたいな半端な球やったら…次で仕留めるよ」

穂乃果「はぁー、すっごい飛んでったね」


真姫(希のフォームも、かなり古臭いけど綺麗で、力学的な無駄が少ない……。 悔しい、私もあんな風に打てたら…)


海未(どうしましょうか、絵里)

絵里(よし、低めに新球、行くわよ。振りかぶって…行けっ!)シュッ!

希(低め、打ち頃のストレート…!? いや違う!)
「ここは見送りや」

ズバン!

にこ「ストライク!」


海未「……追い込みましたよ」

希「なるほど…今の変化球、カットボールが絵里ちの新球なんやね…」

絵里「そうよ!キレキレカットのエリーチカ!略してKKE!見てなさい、このボールで!このカットボールであなたを抑えてみせる!」チカァ!


穂乃果「絵里ちゃんかっくいー!」

真姫(カットの綴りってKじゃなくてCよね…?ま、どうでも いいけど…)クルクル


希「うん、いいボールやね。直球と大差ないスピードで小さく変化。振ってれば多分引っ掛けて凡打やった。でも、ウチに二度通用すると思わん方がいいよ」

海未(そう、その通り。できれば今の球をそのままスイングして打ち取られて欲しかった…!ですが、結果として追い込んでいます。カウント1-2。こちらの圧倒的優位!)



48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:25:58.61 ID:ceA/8Lf4o

絵里(次、行くわよ海未!遊び球はいらない。これが私の…!本気!!)


絵里「カットボール!希!カットボール行くわよー!くらえっ!」シュッ!

希(さっきと同速度の半速球…、続けてカットボール…? そんなん甘いよ絵里ち!)


海未(手を出した…!これで、決まりです!)
絵里(ダスヴィダーニャ!希!)


希「と、思うやん…?」ググ…

海未(重心を低くした…!?)


希「カットボールと見せかけて…これは落ちる球や!スピリチュアルっ!!」
海未「ああっ…!!」


パッキィーン!!!


穂乃果「あーっこれ行った!」

凛「うわ、綺麗なホームランだにゃー」

海未「そっ、、そんなぁ…」

希「これが絵里ちの秘策、新たな変化球は二つあった。…スプリットやね」

絵里「二つ変化球を用意して、これでも…ダメなの…?」

海未「通用…しなかった…」

希「ほぼ同速度の二種の変化球。うん…絵里ちの狙いは良かったと思う。でも所詮は付け焼き刃。ウチや、UTXには通用せんやろね…」

にこ(っていうか、こいつ本当に化け物なんじゃないの…?プロでもここまで毎打席ホームラン打たないわよ…?)

希(って、絵里ちが直前にわざとらしくカットボールカットボール連呼してなかったら多分普通に引っかかってたけどね…大根役者にもほどがあるよ…。
とはいえ、それでも単なる初見殺し。UTXに通用しないのは事実)

希「残念やけど…ウチを抑えられる投手を見つけるのは無理やったみたいやね…」

真姫「これじゃUTXに勝てない…? ちょっと、それ困るわよ!宣戦布告しちゃったのに!」



49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:27:22.96 ID:ceA/8Lf4o

ことり「あ、あのー…ことり、もう一回投げてみたいんだけど、ダメかなぁ?」

花陽「ことりちゃん…」

海未「ことり…、どうにかしたいという気持ちはわかりますが、あなたはマウンドに立つと壊滅的なノーコンで…」

ことり「違うの、前とは違うの 。ちょっとだけ、ちょっとだけ試してみたいの!」

海未「しかし…制球が改善されたとしても、とても通用するとは…」


花陽「……海未ちゃん、ことりちゃんを投げさせてあげて」


海未「花陽…?」

ことり「海未ちゃんっ、おねがぁい!」

海未「ううっ…!わ、わかりましたよ…」

穂乃果「なんだかよくわかんないけど!ことりちゃんファイトだよっ!」

ことり「うんっ!見ててね穂乃果ちゃんっ!」


絵里「はいことり、ボールよ。何か考えがあるんでしょう?頑張ってね」

ことり「ありがとう絵里ちゃん!……それじゃ、海未ちゃん投げるよ~」

海未「ええ、いつでもどうぞ!」


花陽(スカウターが間違いじゃなければ…)


ことり「えーっと、ボールをこうやって握って…体を屈めて、腕を引く…!」ガバァッ!


絵里「ええっ、あれは!!」
穂乃果「フォームが変だよ!?」
花陽「まさかっ!アンダースロー!?」


ことり「全身の力を乗せて…指で弾くように押し出すっ!」ピシュッ!


スパーンッ!


海未「!?」
希「…!」



50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:28:48.54 ID:ceA/8Lf4o

にこ「すっ、ストライクね…しかも、いい球」

ピピピ

花陽「やっぱり…計測は間違いじゃなかった…ことりちゃんの今の野球力は、2069…!!」

絵里「にっ、2069ですって!?」

真姫「すごい…、体の柔軟性をフルに活かしたフォームだわ。男性のアンダースローとはまた違う、独自の投法…! ことり、あなたも天才だったのね…(私と同じように…)」

凛「あなたも?それってまさか真姫ちゃん、自分も勘定に入れてたりする?それはちょっと寒くないかにゃー?」

真姫「う゛ぇぇ…!違うわよ!の、希のことだから!」

希「ついに見つけた…!絵里ちを上回る素材や…!」

穂乃果「すごい!すごいかっこいいよ!ことりちゃん!漫画みたい!」

ことり「えへへっ、褒められちゃった♪ドカベンの里中くんを見ててね、こういう投げ方ならことりにもできるかもって思ったの!」

絵里「ま、漫画で?それはまた、随分とハラショーね…」

希「あれなら、あれなら鍛えればイケる…! ……ねえ穂乃果ちゃん、ウチも野球部に参加させてもらってもいいかな?」

穂乃果「希ちゃん!もう勝負はいいの?」

希「うん、もういいんよ。ピッチャーを見つけるためだけの勝負で、それ以上の意味はなかったの。……それよりもね、早くウチもみんなに混ざりたくって…ちょっと、寂しかったんよ」

穂乃果「希ちゃん…!うんっ!よろしくお願いします!」

希「えへへっ、これでウチを入れて九人や!やっとメンバーが揃ったね!」

凛「テンション上がってきたにゃー!」

穂乃果「よーしっみんなっ!ここからだよ!ここから、この九人で全国優勝を目指すんだ!!」



51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:30:33.62 ID:ceA/8Lf4o

♯8


【昼休みの部室】


海未「9人揃って一週間が経ちました。ということで、練習の様子と花陽の野球力測定、にこの意見を擦り合わせて暫定のオーダーを組んでみました。昼食を食べながらで構いませんので聞いてください」


1 遊 星空 498
2 中 矢澤 562
3 右 綾瀬 1105
4 一 東條 1590
5 三 高坂 624
6 捕 園田 711
7 投 南 2083
8 二 小泉 388
9 左 西木野 193


海未「例によって名前の横には野球力を書き添えてあります。ではにこ、一緒に説明をお願いしますね」

凛「かよちんと二遊間!これなら凛はなんにも文句ないよー!」

花陽「やったね凛ちゃん!でも私が二塁で大丈夫かなぁ…?」

にこ「アンタたち二人は連携がバツグンだからね、女子野球のレベルで安定してダブルプレーを狙えるのは大きいわ。
それと二塁はベースカバーにランナーのケアに、色々と頭を使うポジションだから、野球知識の深い花陽は適任だと思う。ま、自信持ちなさい」

花陽「えへへ、ありがとうにこちゃん」

真姫「どうでもいいけど花陽…そのバケツみたいな弁当、ご飯何合入ってるの…?」

花陽「10合だよ。持ち運びがちょっと重たいけど、筋トレだと思って持ってきてるんだぁ」

真姫「そ、そう…」

凛「今日のかよちんはごはんを食べながらだから大人しいにゃ」

絵里「凛はカップ麺だけじゃなくて野菜も食べなさい?ほら私のサラダを分けてあげるから」



52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:32:22.03 ID:ceA/8Lf4o

海未「打順に関してですが、一番に凛。これに異論のある人はいないと思います」

希「文句のつけようなしやね。凛ちゃんなら脚だけで相手にプレッシャーかけられるよ」

海未「ただ選球眼に難があり、早打ちする傾向も見られます。そこで選球眼が良く、バントなどの小技に長けたにこを二番に置いています」

にこ「バントとか四球狙いとか、そういう渋いプレーで輝いてみせるわよ、私は。あと守備位置!センターは絶対に譲らないから!センターはにこよ!」

真姫「別に誰もやりたがってないわよ。勝手にやればいいじゃない」クルクル

にこ「センターはぁ、にこにーで決まりっ!世界のセンター矢澤にこ!イェイ!」

絵里(ただの外野守備にどうしてあんなにこだわってるのかしら…?)


海未「そして三番に絵里、四番が希。この並びが音ノ木坂打線の中核ですね」

絵里「あら、核なんて言われるとちょっぴりプレッシャーね。私は基本的には大振りせず、希への繋ぎ役に徹するつもりよ」

希「気負わんでいいよ、絵里ち。ランナーの掃除はウチに任しとき!」

花陽「希ちゃんは頼もしいねぇ…」mgmg

絵里(食べてる時は可愛らしいわね、花陽は。まぁ、辛辣な花陽もあれはあれでユニークだけど…)

穂乃果「あ、絵里ちゃんの守備はライトにしたんだね」

海未「ああ、それはですね…絵里の外野守備はとてもハイレベルなのでレフトに置こうかと迷ったのですが」

花陽「アマチュア野球ではレフトの方が打球が飛びやすいもんね」mgmg

海未「そうなんです。ただ…絵里の守備と肩なら、女子野球の少し浅めの守備位置ならそこそこの率でライトゴロが取れるんですよ」

希「なるほどなぁ、確かにライト前ヒットをアウトに出来れば相当楽やね」

海未「だから、絵里はライトでお願いしたいと思っています」

絵里「ふふ、ライトってプロではスターが守ってたりするし、結構気に入ってるわ」



53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:33:51.83 ID:ceA/8Lf4o

にこ「で、希は今まで通り一塁ね。一塁は的の大きさも必要……にことかがやるよりも希の方が安定するから、そのままでよろしく頼むわ」

希「包容力ってやつやね。みんな安心して守っていいからね」

凛「凛は送球が結構ぶれるから…頼りにしてるね、希ちゃん」

希「うんうん、気楽に投げていいんよ」

穂乃果「ねえねえ希ちゃん、そのお弁当なに?」

希「ん?焼肉丼やね。今日は甘辛の韓国風に味付けしてみたんよ。ちょっと食べてみる?」

穂乃果「うん!じゃあ穂乃果のも少しあげるね。唐揚げでいい?」

希「わぁ、美味しそうやね!ありがと、穂乃果ちゃん」

絵里(正式加入は遅れちゃったけど、すっかり馴染めたみたいね、希。良かった…)

にこ「次、五番は穂乃果よ。希が歩かされるパターンも出てくるだろうからチャンスで回る事も多いと思う。だから心臓に毛が生えてそうなアンタを置くわ」

穂乃果「よーしっ全打席フルスイングでホームラン狙うよ!」

海未「ダメです。きちんと考えて打ちなさい」

穂乃果「えー、海未ちゃんのケチー」

にこ「ま、ハナから細かいプレーは期待してないから…」

真姫「ことりのお弁当はサンドイッチ?それだけで足りるの?」

ことり「大丈夫だよ、プロテインバーも食べるから!」

穂乃果「ことりちゃんも最近筋トレに対してふっ切れたよね!肩回りとかいい感じに筋肉してるよ!」

ことり「うんっ、もうかなり日焼けもしちゃったし…筋肉とかも気にしたら負けかなって…あ、真姫ちゃんにトマトとチキンのサンドイッチをおすそ分けするね」

真姫「わぁ、トマト…!あ 、ありがとう…」

ことり「どういたしましてっ」



54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:34:46.74 ID:ceA/8Lf4o

にこ「穂乃果の後は海未、ことりと続けてるわ。あんたたち三人はなんとなく並べた方が機能しそうなイメージあるのよね」

ことり「それ正解っ。ことりと穂乃果ちゃん海未ちゃんは三人揃って完全体なの」
穂乃果「うんうん!だよねっ!」
海未「ふふ、そうですね」

にこ「あっそ、仲良いわね……六番の海未はクリーンナップがランナーを一掃した後のチャンスメイク、ランナーが溜まってる状態での強打、臨機応変に打ってもらう感じになると思う。まあアンタならやれるわよね」

海未「そうですね、善処してみます」

にこ「ことりは投手だし、楽に打ってくれればいいわ。野球力は高いけど打撃はまぁまぁってとこだしね」

ことり「はぁい、了解です♪」

にこ「さて、八番は花陽ね。打撃に自信ないみたいだけど…アンタは自分で思ってるよりもセンスがある」

花陽「そ、そうかなあ?」

にこ「うん、ハマれば長打を打てる実力があるわ。あれだけご飯を食べてるし、しっかりミートできれば球威に負けたりしないはずよ。ま、下位だし変に気負わなくて大丈夫だから」

花陽「が、頑張りますっ」


真姫「……ねえ、にこちゃん。なんだか私が打順でも守備でも余り物っぽいのはなんでなの?」

にこ「九番は真姫。野球力を参照よ。以上」

真姫「ちょっと!雑!にこちゃん見る目がないのよ。私は天才よ?」

にこ「はいはい。ま、外野守備は意外と悪くないわよね。フライの目測を誤ったりもしないし、クッション処理も落ち着いてる。
ただ、肩が弱いのをちゃんと自覚しとくのよ?返球は変な色気を出さないでちゃんと内野を中継すること。わかった?」

真姫「ヴェエ…言われなくたってわかってるわよ…」

にこ「あと……真姫ちゃんはそれなりに振れるようになってきてるから、その調子で頑張りなさい。……その、練習ぐらいはいつでも付き合うから」

真姫「ん………ありがと」クルクル

希「ふふふ、仲良しやね?」

にこ「………いっ、以上よ!なんかオーダーに文句はある!?」

穂乃果「ないです!なんかすごいよ!にこちゃん!」

凛「矢澤カントク!矢澤カントク!」

絵里「さすがにこね」



55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:35:42.03 ID:ceA/8Lf4o

にこ「ふふん!矢澤ID野球に死角なし!はいっ、ご一緒に!にっこにっこに~!」

凛「海未ちゃんその卵焼き一口味見させてー」

穂乃果「あ、穂乃果も!」

海未「いいですよ、はいどうぞ」

にこ「軽く持ち上げてからのガン無視とかやめなさいよ!!」

絵里「ほんとにね」

にこ「その雑な相槌もいらないから!」

真姫「にこちゃんうるさい。カルシウム足りてないんじゃないの?」

にこ「ぐぬぬ…!どいつもこいつも…イラつくわね!」


絵里「さて、オーダーが固まったところでみんなにお知らせよ!再来週…練習試合をやるわぁ!」

花陽「し、試合っ!?」

ことり「わぁ、緊張するなぁ…」

穂乃果「やっと試合ができるんだねっ!よーし、楽しもう!で、相手はどこどこ?」

絵里「ふふっ……UTXよぉ!」ドヤチカァ

にこ「ゆっ…」
凛「ゆっ?」
穂乃果「UTXぅ!?」



56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:36:51.15 ID:ceA/8Lf4o

【試合当日、朝】


穂乃果「うー、遅刻遅刻…ことりちゃん海未ちゃんごめーん!」

海未「もう、遅いですよ穂乃果」

穂乃果「いやー試合のこと考えてたら中々眠れなくってさぁ」

ことり「うふふ、朝ごはんはちゃんと食べた?」

穂乃果「花陽ちゃんを見習ってご飯を10合!…とはいかないけど、ばっちり食べてきたよっ!二人は?」

海未「ええ、干物や卵焼きなどをいただきました。お母様が少しばかり豪勢な朝食を用意してくれましたので」

ことり「ことりはパンとサラダと、ポタージュとかを食べてきたよ♪」

穂乃果「ふっふ、準備万端だね!」

海未「それでは、まず学校に向かいましょうか。真姫が用意してくれた西木野グループのバスが待っています。それに乗ってUTX高校のグラウンドへ向かいます」

ことり「真姫ちゃんのお家って割となんでもありだよね?」

穂乃果「球場も持ってたりして…!西木野スタジアムとか言っちゃってさ」

海未「馬鹿を言ってないで、ほら行きますよ」


~~~~~


凛「それにしても、絵里ちゃんがいきなり…UTXと練習試合よぉ!って言い出した時はビックリしたにゃ~」

真姫「正しくはUTXの二軍と、だったわね。エリーったら唐突よね。でも二軍なんかと試合したって参考になるのかしら?」

花陽「あのね真姫ちゃん、UTX の二軍ってかなりすごいんだよ?あそこは四軍までチームを持ってるの」

真姫「へえ、四軍まで?ムダに多いのね」

花陽「普通、うちみたいな新興チームは試合を組んでもらえたとしても相手は四軍、良くて三軍。いきなり二軍と試合をさせてもらえるのは理事長とUTXの校長が知り合いだったからで、すっごくラッキーな事なんだよ」

凛「二軍でもかなり強いんだよね?楽しみだにゃー」

真姫「ふーん。まあ二人とも見てなさい。このマッキーが華麗な放物線を描いてみせるわ」

スチャ
花陽「失点に繋がるようなエラーだけはしないでくださいね、野球力200未満の九番レフト西木野真姫さん」

真姫「急な辛辣モードはやめなさいよ!花陽だって八番で大差ないでしょ!?」



57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:37:40.44 ID:ceA/8Lf4o

~~~~~


絵里「さて…着いたわね。UTX高校!」

にこ「噂には聞いてたけど、本当に学校の隣に専用の球場が併設されてるのね…」

希「はぁー、豪華やねえ……まるでプロのスタジアムやん」

絵里「ベンチ裏に無料のドリンクサーバーまで置いてあるんだって」

希「ベンチ内の飲食オッケーなん?」

絵里「大丈夫みたい。清掃の業者さんを雇ってるらしいわ。なんかちょっと圧倒されちゃうわね…」

にこ「た、確かに…あ、グッズまで売ってるのね。帰りに買っていかなきゃ」

希「にこっち、観光やないんよ?」

にこ「わ、わかってるわよ!」



海未「あっ、見てください。あそこにいる方々が」

穂乃果「お、UTXの二軍チームだね?」

凛「かよちん、スカウターの出番にゃ!」

スチャ ピピピ
花陽「平均野球力はおよそ1040…さすがUTX、二軍とはいえ全国と互角に戦えるレベルのチームですっ!名前は投手からポジション順に佐藤、鈴木、高橋、伊藤、山本…」

真姫「花陽、名前はもういいわ。覚えなくていいって事はわかったから」

凛「清々しいほどにモブネームだにゃ」



58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:38:36.66 ID:ceA/8Lf4o

あんじゅ「ねえ、あなたたちが音ノ木坂学院野球部の皆さんかしら?」


絵里「えっ?はい、そうです。あなたは…」

にこ「ああっ!ゆ、優木あんじゅさん!絵里!頭が高いわよ!UTX高校の一軍の四番なんだから!ファンです!大ファンです!」

スチャ
花陽「や、野球力2580…!さすがは 『怪童』 こと打の優木、圧倒的オーラ!これぞ最高峰っ…!サインください!」

にこ「あっ花陽っズルいわよ!」


あんじゅ「うふふ、サインね?いいわよ(野球力って何かしら?)」サラサラ

あんじゅ「はい、どうぞ」


花陽「はぅあぁぁあ…!感動ですっ…!」

あんじゅ「そのツインテール…矢澤にこさんよね。英玲奈から聞いてる。うちに宣戦布告したんだってね」

にこ「そ、それは違うんです!誤解で!」

真姫「違わないわ。UTXなんてケチョンケチョンにやっつけてみせるんだから、見てなさい」

凛(凛知ってるよ。弱い犬ほどよく吠えるんだよね)

あんじゅ「そして…巻き髪さんが西木野真姫さん。あら、聞いてた通り。かわいい」

真姫「かっ、かわい……?ふ、ふん。当然よね」クルクル

にこ「なに動揺してんのよ」

真姫「してない!」



59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:39:32.78 ID:ceA/8Lf4o

穂乃果「それであのー、なんで一軍のあんじゅさんがここにいるんですか?」

あんじゅ「うふふ、敵情視察?私も二軍に混ざって試合に出ようと思って」

穂乃果「ぅええっ!で、出るんですか!?」

にこ「嘘ぉ!?あんじゅと試合できるの!?うちみたいな新興チームが!?」


あんじゅ「うふふ…だって気になるんだもの。『オカルト打法の東條希』がいるチームは、ね」


希「そ、そんなん買い被りすぎです…私はブランクだって長いし…」

あんじゅ「謙遜しちゃって。お話しするのは初めてだけど、中学の頃はライバルって呼ばれてたじゃない。私たち」


花陽(そう言いつつも希ちゃんの野球力は1970… !今日に合わせてコンディションを今までのピークにまで高めて来てる。気合い入ってるね、希ちゃん…!)


あんじゅ「それじゃあ、試合で会いましょうね。うふふ」ヒラヒラ


穂乃果「行っちゃった…なんかふんわりした人だったね」

海未「そうですね、まさかいきなり対戦する事になるとは予想外でしたが…」

絵里「そうね…、優木さんが出場するとなると、多少のマスコミも入るはずよ。みんな、そういうのは気にせず、固くならずにやりましょうね」

ことり「あ、お母さんが来たよ」

理事長「みんなお待たせ。向こうの責任者の方に挨拶をしてきました。今日は私が監督としてベンチに入りますね」

絵里「理事長、ありがとうございます」

理事長「気にしなくていいのよ、絢瀬さん。作戦とかはあなたたちに任せて口出しはしないから、怪我にだけ気を付けてプレーしてくださいね」

にこ「じゃ、ベンチに入りましょ。もうすぐこっちの練習時間よ」



60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:41:42.24 ID:ceA/8Lf4o

♯9


ヒデコ「次!セカンド行くよー!」カキン!

花陽「は、はいっ!」パシっ!シュ

希「お、ナイスプレーやね」スパン

ヒデコ「よしラスト!海未ちゃんにキャッチャーフライ!」カンッ!

海未「オーライオーライ…よし、取れました!」パシッ

ヒデコ「オッケー、練習時間終わりだね。みんなお疲れ様ー」

穂乃果「ヒデコ、ノッカーやってくれてありがとねー」

ヒデコ「はは、これくらい余裕余裕。じゃ、頑張ってね。ベースコーチとか雑用は任せといて」

フミコ「試合の録画は私がしておくからね」

ミカ「怪我だけには気をつけるんだよ!」

希(内外野に完璧に打ち分ける熟練のノック技術…あの子どこで練習したんやろ?)

にこ(あの子を試合に出せば普通に主力として行けるんじゃ…ってのは、きっと気にしたら負けよね…)


絵里「さて!初試合よ!気合い入れていきましょう!それじゃあキャプテンの穂乃果!号令を!」

穂乃果「うん!絵里ちゃん!それじゃあみんな…」


穂乃果「音ノ木坂ー!!!」


全員『ベースボール…スタート!!!』


真姫(なんかしっくり来ないわね…)



61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:42:53.34 ID:ceA/8Lf4o

【一回表】


海未「さて、こちらの先攻です。トップバッターは凛!お願いしますね!」

希「リラックスしてね。あんまり力んだらあかんよ?」

花陽「が、頑張ってね凛ちゃぁん…!応援してるから…!(スチャ)相手ピッチャーの佐藤は野球力955で絵里ちゃん以下。
所詮UTXでは二軍に甘んじてるモブだから凛ちゃんでも打てないことはないよ。あ、初球ポップフライだけはやめてね、萎えるから」

絵里(花陽…怖いわ…)

ことり(ジキルとハイドかな?)

凛「かよちんの辛辣評は落ち着くなぁ。よーし!行ってくるにゃー!」


審判『プレイボール!』


佐藤「…」シュッ!

凛(初打席かぁ…緊張してたけど、かよちんのおかげでほぐれたよ)スパーン! ボールッ!

にこ「お、珍しく初球見たわね。落ち着いてるじゃない」

希「肩に力も入ってなさそうやね。いい感じに見えるよ」


凛(絵里ちゃんより少し速いかな?でも全然見えるレベルだよ)


佐藤「……」シュッ!

凛(甘め!叩くにゃッ!)パキン!

佐藤「あっ!?」


絵里「打った!いい当たり!」

海未「一塁線を破りました、長打コースです!」

絵里「見て!ライトの優木さんが打球処理にもたついてるわよ!?」

凛(あっチャンス!凛の脚なら…全力で走るよっ!)

穂乃果「二塁を蹴った!凛ちゃーん!回れ回れ!!」

凛(ヘッドスライディングにゃ!)ザザッ!

セーフ!!

花陽「やったぁ!!凛ちゃんすごいっ!いきなりスリーベース打っちゃったよぉ!」

ことり「凛ちゃんかっこいい~!」

ミカ(三塁コーチ)「ナイスバッティング凛ちゃん!」

凛「えへへ、ありがとにゃー。このまま一点取っちゃいたいね」



62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:45:00.83 ID:ceA/8Lf4o

海未「いきなりランナー三塁、理想的な展開ですね!それにしてもライトの優木さんはどうしてあんなに守備でもたついていたのでしょうか?」

花陽「ああ、あれはね、あんじゅさんは守備が…その、かなり微妙なの。絵里ちゃんのライトとは違う、下手くそのライトなの」

穂乃果「はえ~、一軍なのに苦手もあるんだね」

絵里「意外ね…UTXの一軍なんて万能プレイヤーばかりかと思ってたわ。 ふふっ、 実はUTXって大した事ないのかしら?」

花陽「絵里ちゃん馬鹿ナ゛ノ゛ォ゛!!!?!?」

絵里「ひいっ!!?ごめんなさい!!」ビビリチカ

ことり「花陽ちゃん、どういう事なの?」

花陽「うん…絵里ちゃんの言う通り、UTXの1軍は隙のない選手ばっかりだよ。そんな中であんじゅさんは守備があんなに下手なのに一軍の主力になってる。
それはつまり、守備に目を瞑ってまで起用されるほどの圧倒的な打撃力…って事なんですっ」

絵里「そ、そうだったのね、よくわかったわ。ごめんなさい花陽…ごめんね?」ビクビク

海未「なるほど…想像するだに恐ろしいですね」

穂乃果(朝ごはんもうちょっと食べてくればよかったなぁ…)グゥゥ

希「穂乃果ちゃんこれ食べる? 」

穂乃果「それなに?」

希「ヒマワリの種だよ。メジャーの外人さんはこれをようベンチで食べとるんよ」

穂乃果「うんっ!いるいる!」

海未「穂乃果!試合に集中してください!希も食べ物を与えないで!」



63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:45:49.96 ID:ceA/8Lf4o

にこ「さーて!ここはにこにーの華麗なる一打で先制点を挙げさせてもらわなきゃね!にっこにっこにー!」


ボール!
ボール!
ボール!
ボール!フォアボール!


にこ「ちょっと!振れる球が来なかったんだけど!?あのピッチャー動揺しすぎでしょ!」スタスタ

ことり「にこちゃん選球眼いいなぁ…」

海未「それなりに際どい球もあったのに、確信を持って見逃してましたね…流石です」

希「とりあえずチャンス拡大やね。ノーアウトで一、三塁。絵里ち、がんばってな」

絵里「ザ・ベースボール…今見せてあげるわ」ウフフフ

穂乃果「ぅ絵里ちゃん何言ってるの?とりあえずファイトだよ!」

海未「ご武運を祈っています、絵里」


佐藤「……!」シュッ!

絵里(この人、立ち上がりが悪いタイプなのかしらね。せっかくのチャンスなんだし、しっかり叩かせてもらわな くっちゃ…ねっ!)


カキーン!!


花陽「あっ鋭い打球!センター前に抜けましたっ」

穂乃果「おおーすごい!」

希「絵里ち!やるやん!」

凛「やったー!凛が先制のホームインだにゃ!」

希「次はウチの打席やね。さーて、絵里ちに続かんとね」



64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:47:03.68 ID:ceA/8Lf4o

―――コツ、コツ、コツ…



英玲奈(おや…もう試合は始まってしまっていたか)


英玲奈(たまにはスタンドから眺める試合というのも悪くないものだ。責任も重圧もない。気楽でいい)


ノゾミチャーン カットバスニャー! ミセツケテヤリナサイ


英玲奈(打者は東條希。先取点を取られ1-0…)


カッキイィィーン!!!!

……

コーン、コーン…コロコロ


英玲奈(外野スタンドにボールが弾んで…スリーランホームラン。4-0になったか。なかなかどうして…やるじゃないか、音ノ木坂)


ヤッタニャー スゴイヨノゾミチャーン サスガデス! ヤハリヤキュウリョクハウソヲツキマセン!
フフ、スピリチュアルヤロ?


英玲奈(全く、楽しそうに野球をする……羨ましいものだな)


英玲奈(……なあツバサ、私は少し……疲れてしまったよ)



65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:47:55.63 ID:ceA/8Lf4o

♯10


スパーン!

ストライクスリー!バッターアウト!


スリーアウトチェンジ!


ことり「あーん見逃し三振~…駄目だったよハノケチェ~ン」チュンチュン

穂乃果「おーよしよしことりちゃん。穂乃果と海未ちゃんも三振だったから気にしなくて大丈夫だよー」

海未「ううーん、初打席が三振とは…流れに乗れず申し訳ないです」

にこ「三振は別に仕方ないけど……アンタたち三人は打順を並べない方がいいかもしれないわね」

穂乃果「ええっ!なんでさにこちゃんっ!」

にこ「まず穂乃果の雑ぅ~な三振は論外として!後の海未とことりは穂乃果の結果に釣られすぎ!穂乃果が三振した時点で二人ともあからさまに集中が途切れてたわよ!」

海未「そ、それは穂乃果が …」

ことり「穂乃果ちゃんがチームの初アウトになっちゃってシュンとしてたから慰めてあげないとって思って…」

海未「そうなんです(迫真)」

穂乃果「えへへ~」

ことり「あと三振して悔しがってる海未ちゃんの写真も撮りたいなって」

穂乃果「あ、わかる!ああいう海未ちゃんは珍しくて可愛かったよね!」

海未「な、何を言いだすんですか二人とも!破廉恥です!」

穂乃果「別に破廉恥じゃないよー」

ことり「普通の事だよね~」

にこ「そのグダグダ感が駄目だっつってんの!次からアンタたちの打順はバラすわ!」

希(逆に穂乃果ちゃんが打った場合はつるべ打ちしてくれそうやけどね)



66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:48:40.56 ID:ceA/8Lf4o

真姫「ねえ、そろそろ守備についた方が良さそうよ」

絵里「さ、行きましょう?」

花陽「ことりちゃん、投球がんばってね!」

ことり「ことりの球が通用するかなぁ~…不安だよぉ」チュンチュン

凛「凛たちが守ってあげるから大丈夫!落ち着いて投げてね!」

ことり「うっ、うん…頑張るからお願いねっ?」



ことり「(・8・) 」



海未(ことり…マウンドに立つと普段のキャラが嘘のように真顔になりますね)

海未(あの表情、なんと表現すればいいのでしょうか。例えば…にこ、花陽、ことりの三人でミシンで裁縫をしている時に垣間見せる鉄面皮の表情というか…。
いやいや、どんなシチュエーションですかそれ。いけないいけない、雑念よさらば。集中ですよ園田海未)

海未「みなさん!!!締まっていきましょう!!!」

守備陣『おおーっ!!』



(・8・) ストライク!バッターアウト!

(・8・) ストライク!バッターアウト!



穂乃果「連続三振であっという間にツーアウト!すごいよことりちゃん!」

ことり「ハノケチェ~ン!もっと褒めて褒めてっ!」チュンッ


(・8・) 「……」


海未(あ、あの表情はどうも威圧感が…)

海未(しかしこれは嬉しい誤算です。ことりの球が実戦でここまで通用するとは)

海未(ことりの持ち球は現状で三種。まずストレート。110キロは出ない程度ですが、下手投げ特有の軌道で武器になっています)

海未(次にカーブ。これはまだ制球が怪しいのであまり多投したくはありません。使用は目付けを変えるための見せ球に留めておきたいですね)

海未(そして、もう一つ…)



67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:49:25.33 ID:ceA/8Lf4o

三番 佐藤「来いっ!」


海未(さてこの打者、先ほどまで投げていた投手の方ですね。出足をくじかれての4失点、からの三連続奪三振。さぞ気持ちが昂ぶっているところでしょうね。ことり、ここは…)サイン


(・8・) 「…」コクッ

(・8・) シュッ!


佐藤(…!な、なんだ…この変化球は!)ガキンッ


海未(よし!完璧です!第三の球種『ことりボール』! 打者のバランスを崩して詰まらせました!しかし、これは…!)

海未「ショーt…いやセンターッ!?」


にこ「ちょっ、この打球はにこには浅い…!」
凛「凛も追いつけないよー!」   ポトリ


穂乃果「あぁー惜しいっ!完全に打ち取ってたのにポテンヒットだよ~」

希「飛んだ場所が良くなかったね。ま、内容は勝ってたんやし気にしない気にしない!」

ことり「うん♪ どんどん打たせてくからみんな、お願いっ」

花陽「ことりちゃん気をつけて…次、来ますっ!」


あんじゅ「うふふ、私の出番みたい。南さん、園田さん、よろしくね?」


海未(『怪童』優木あんじゅ!)

(・8・) 「……」

海未(うう、打者よりもことりの顔が気になります…)



68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:50:42.35 ID:ceA/8Lf4o

あんじゅ「私にはどんな攻めでくるのかしら?園田さん」

海未「長打に警戒!外野は下がってください!」(この方は捕手と雑談を交えるタイプなのでしょうか。ペースを乱されないようにしなくては)

あんじゅ「私にはだんまりなの?寂しいわ」

海未「……ボールが来ますよ」スパーン!
ストライク!


あんじゅ「ふふ、いいストレートね。癖のある軌道が素敵」

海未「それはどうも。試合後にでも本人に言ってやってください、喜びます」

あんじゅ「そうね。でも…私が打ちたいのはそれじゃないの」

海未(低めにカーブを。浮かないように、ワンバウンドで構いませんよ)


(・8・) 「…」シュッ

パシィ ボールッ!


あんじゅ「それでもないわ。ほら、さっき投げたアレ」

海未(一度、目付けを上にずらしましょう。高め、ボールゾーンに直球です)

スパーン! ボール!

あんじゅ「園田さんは真面目なのね?配球でわかるわ」

海未「……歩かせても構わない、と思っていますから」

海未(と、言うのは嘘ですが。これはあくまで勝敗度外視の練習試合。ことりの球が全国区の打者にどれだけ通用するのか見極める絶好の機会、逃げの手はありません。仕留めさせてもらいますよ…優木あんじゅ)


花陽(……雑誌で見た。あんじゅさんは最近、打ち方を変えたらしい。フォームの細部が変わったのか、ルーチンを変えたのか、それとも心構えを変えたのか…素人目にはよくわからない。
ただ一つわかるのは、自分の打法を『フルハウス打法』と名付けているということ…!)



69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:51:56.61 ID:ceA/8Lf4o

あんじゅ「あら、私追い込まれちゃったの?」

海未「振らないからですよ」

あんじゅ「ん~…そうよねえ」

海未(ふむ…捉えどころのない方です。さてことり、勝負を掛けますよ。『ことりボール』です)サイン


(・8・) 「……!」コクリ

(・8・) シュッ!


あんじゅ(来たわ…打つ!)

海未(手を出しましたね…ですが『ことりボール』は…あなたが思っている以上に『球が来ない』!)


(・8・) 「ニヤリ」


あんじゅ(このボール、遅い…!そして、軌道がブレる…!)

海未(『ことりボール』とは遅くて揺れるシンカー!投げ方はことり曰く、深く握り込んでリリースの瞬間に指先をチュンチュンさせる…とのこと。理屈を聞かされてもよくわからない、ことり独自の変化球です!勝った!)

あんじゅ(…と、思うでしょう?まだよ…まだ溜めて…!)

あんじゅ「ここよ!」
カシィーン!!!!!


(・8・) 「!?!」

海未「あっ!そんな!?」


ヒュー… ポーン、コロコロ…

ファール!


穂乃果「うわっ、ビックリしたぁ…ホームランかと思ったよ」

凛「左の方にポールギリギリで切れていったにゃー」

真姫「ちょっと…大丈夫なの?スタンド最上段まで飛んで行ったわよ?」



70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:52:52.25 ID:ceA/8Lf4o

あんじゅ「あら~…今のタイミングでも早いの?まるで魔球ね」


海未(き、肝が冷えました…スイング始動のタイミングでは完全に打ち取ったと思ったのに、なんという粘り腰…!)


あんじゅ「やっぱり駄目ね、フルハウスじゃないと」

海未「……フルハウス。ああ、あなたの打法でしたか…?」

あんじゅ「あら、あなたから話しかけてくれたのは初めてね。嬉しい」


海未(……やはり下手に話すと煙に巻かれそうですね)
スパーン ボール!

海未(カウント3-2まで来てしまいましたか…よし、もう一度ことりボールです!)


あんじゅ「ふふっ…これでやっと、完っ全にフルハウスね」


海未(完全にフルハウス!?ど、どういうことです!)

あんじゅ「あ、そうだわ。さっき私、ちょっと恥ずかしいエラーしちゃったでしょ?だからぁ…同じライトさんに、恥ずかしいエラーをしてもらおうかしら?」


(・8・) 「…!」シュッ!


カッキィーッ!!

海未「あ、打ち上げた!やった、打ち取りましたよ!」

希「ウチと花陽ちゃん後方のフライや!」

花陽「た、高い!すごく高いフライです!意外と…外野まで流れてます!」

絵里「私が取るわ!!」

海未(む…滞空時間の異様に長いフライですね…優木あんじゅは全力疾走、もう二塁を回って…)

海未(あっ…上空の風に打球が煽られて…?打球が脇に流れて…!)


絵里「   ああ~」ポロッ


凛「あーっ!絵里ちゃん打球が逸れるのを追いきれずに落としちゃったにゃ!」

花陽「だっ、打球が外野を転々としてますっ」

にこ「アホぉ~!」パシッ

海未(ま、まずい!既に一塁走者の佐藤がホームインしています!そして優木あんじゅが三塁を蹴りました!)

海未「にこ!バックホーム!!!」

にこ「どぉりゃあああああっ!!!!」ビシュッ!



71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:53:27.73 ID:ceA/8Lf4o

ズザザッ! パシッ!


セーフ!



海未「やられた…!き、記録はヒット…ランニングホームラン…!」

あんじゅ「あら、エラーにならなかったの?残念っ」

海未「あなたは…!今の打球を狙って打ったというのですか…!?」

あんじゅ「うふふ…完全にフルハウスなら、これくらいは簡単なこと」

海未(なんて方です…これが『怪童』!あと、完全にフルハウスってなんなんですか…!)


花陽(うわぁ…つ、通天閣打法だ…生で見られるなんて…)

絵里「ご、ごめんなさい!みんなごめんなさい!私のせいで!」

希「落ち着き絵里ち…今のは難しい。ウチでも多分落としとったよ」

にこ「はは、今のはダっサいわね~」

絵里「もうやだ!エリチカベンチ帰る!」

希「か、帰ったらあかんてぇ!!」


真姫(はぁ、三塁側は暇ね…)

穂乃果(うーん、なんか空気だなぁ…)



72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:56:48.51 ID:ceA/8Lf4o

♯11


英玲奈(二回以降、試合はどこか落ち着かない展開のままで進んでいった。UTXの佐藤は三回表、調子を上げられないままに東條希との勝負から逃げてストレートの四球。
その動揺に付け込まれ、高坂、園田、南の三連打で1点を失ってしまう)

英玲奈(対して音ノ木坂の南ことり。牽制やクイックなどに粗は目立つものの、持ち前のコントロールと緩急を駆使してUTX二軍打線をかわしていく)

英玲奈(南ことりと優木あんじゅ、二度目の対戦は四回の裏、先頭打者で。あんじゅが高めの釣り球を叩いてしまう。
センターへの大飛球だったが、矢澤にこが背走キャッチの攻守を見せて南に軍配。あんじゅめ、明らかに集中を欠いていた。ムラっ気の激しいやつだ)

英玲奈(そして五回の表。試合は一つの転換点を迎えていた)


【五回表】


絵里「ことり、ナイスピッチよ。四回まで二失点は上々じゃないかしら」

ことり「えへへ、ありがと絵里ちゃんっ」

にこ「くぅ~っ!やっぱにこにーって最強ね!見たでしょさっきの背面キャッチ!ほらほらことり!遠慮なくにこにーを讃え崇めなさい!」

ことり「う、うん!ありがとね、にこちゃん!」

真姫「はぁ…そう自画自賛されたんじゃスーパープレーの価値もダダ下がりよね」クルクル

にこ「真姫ちゃん!うっさいわよ!」

ことり「あ、あはは…ホントにありがとね?」

穂乃果「いやーそれにしてもことりちゃんはすごいなー……大会前にメジャーからスカウトされても渡米しちゃダメだからね?」

ことり「ええっ、メジャーって海外?…そんなわけないよぉ。いきなりどうしたの穂乃果ちゃん」

穂乃果「えっ、いやぁー、なんとなく…」


ガッキィイイイン!!!!!


海未「希が打ちました!」

花陽「ああっ!!打席に向かう前に死神のタロットカードを引いてからなんだか悪い顔になって、スパイクを研いでヒマワリの種の殻を吐き散らしながら打席に向かい、
fuck youと暴言を吐き、球聖(球畜)ことタイ・カッブを憑依させていた希ちゃんの打球が弾丸ライナーでレフトスタンドに飛び込んだよぉ!!」

凛「凛は説明台詞役と化したかよちんも好きだよ」



73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:58:05.18 ID:ceA/8Lf4o

英玲奈(東條希、流石によく飛ばす。これで得点は6-2。ふふ、このままだと負けそうじゃないか。こちらは二軍…とはいえ、新興チームに負けてやるわけにはいかないな)
スッ


希「はい、ホームインっ!これでちょっとはことりちゃんを援護できたかな」

にこ「希!ハイタッチよ!」
穂乃果「ヘーイ!」
凛「ヘイヘーイ!」

希「穂乃果ちゃんヘーイ!凛ちゃんヘーイ!にこっちヘイヘーイ!」パシパシパシーン!

海未「希、私ともハイタッチを!……おっと、向こうのマウンド に選手が集まっていますね。投手交代でしょうか」

絵里「外野手まで集まって、なんだか慌ただしい雰囲気ね」

穂乃果「話し合ってるみたいだけど、どうしたんだろ」


~数分経過~


凛「タイム長いねー。待つのに飽きてきちゃったよ」

花陽「ほんとの試合なら審判が急かしたりするんだけど、今は練習試合だからね。凛ちゃんもおにぎり食べる?」

凛「んー、一個もらおっかなぁ」

希「お、ベンチから誰か出てきたで。一人やなくて二人?みたいやね。片方は投手っぽいね。もう一人はキャッチャー姿…。ん、あれは…」

真姫「……統堂英玲奈ね」


英玲奈「審判、選手の交代を願います。ピッチャー佐藤に代えて加藤。キャッチャー鈴木に代わり統堂」

あんじゅ「あら英玲奈。来てたのね」

英玲奈「ああ、ここからは私が出よう。それと佐藤さん、新井総監督からの通達だ。試合終了後、三軍へ移るようにと」

佐藤「……っ」ギリッ

英玲奈「ただの伝言役だ、そう睨まないでほしい。さて、捕手が私に代わるからにはもう一点も与えるつもりはない。守備陣、気を引き締めて守ってもらいたい」



74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 15:59:44.67 ID:ceA/8Lf4o

スチャ ピピ…
花陽「英玲奈さん流石だなぁ…野球力2418もあるよぉ…!かっこいいですっ!」

ことり「リリーフで出てきた加藤って人、背が高いねぇ。投球練習のフォームは普通な感じかな?」

絵里「それほど球速が出てるようにも見えないわね。花陽、加藤さんの野球力も見られるかしら?」

ピピピ…
花陽「えっと、970 だよ。さっきまでの佐藤と大差ないね。でも背が高いからそこは注意した方がいいかも…」

真姫「大したことないわね。それにしてもややこしいのよ…佐藤だの加藤だの」

ことり「でも、なんだかUTXチームの雰囲気が変わったね。 統堂さんが入ってからピリッと引き締まった感じがするなぁ」

海未「攻守ともに警戒する必要がありそうですね。リリーフ投手の出鼻を挫けるように…穂乃果、頑張ってくださいね」

穂乃果「まっかせてよ海未ちゃん!よぅし、今度は五番らしいところを見せるぞー!」ブン!ブン!


審判『プレイ!』


英玲奈「途中出場だが、よろしく頼む」

穂乃果「あ、こちらこそよろしくお願いします!」(礼儀正しい人だなー。同じキャッチャーだし、なんだかちょっとだけ海未ちゃんみたい)

穂乃果「さ、こーい!!」

英玲奈(打ち気満々、だな)サイン

加藤「……」シュッ


穂乃果(あっ、いきなり穂乃果の大好きなインロー! 逃さずに打つ!)キィン!


ことり「いい当たりっ!」


バシィッ!


穂乃果「ああっ!取られちゃったぁ!?」

絵里「惜しい!サードライナーね…」

真姫「あんな三塁線寄りの打球を取られるなんてついてないわね。抜けてれば楽々ツーベースだったのに」



75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 16:00:43.85 ID:ceA/8Lf4o

穂乃果「ごめんみんなー、塁に出られなかったよ」

希「いやー気にせんでいいよ。今のはサードのファインプレーやね」

穂乃果「だよねっ?むー、ヒット損しちゃったなぁ」

海未「穂乃果、あの投手の特徴などは何かありませんか?」

穂乃果「あ、ごめん!初球を打っちゃったからよくわかんないや」

海未「ふむ…、まあ仕方ありませんね。それでは私が見極めてきましょう」

凛「海未ちゃんガツンとかましてくるにゃー!」


花陽(……ねえにこちゃん、今の穂乃果ちゃんのって…)

にこ(花陽、気付いた? まあもう一人、海未が打つまでは様子を見ましょ)


海未「よろしくお願いします」

英玲奈「ああ、よろしく」


海未(状況は一死走者なし。敵の守備シフトは通常通り…。加藤投手に球数を投げさせることは念頭に置きつつも…、ある程度は好きに打って問題のない場面ですね)

英玲奈(園田海未、捕手か。おそらくは思考を伴って打撃をするタイプ。だが…)サイン


加藤「……」シュッ!


海未(外寄りのやや高め…打ち頃のストレート!私の最も得意とするコース、見逃す手はありません!)

英玲奈(さあ、キミ好みの球だろう?)

海未(引きつけて…逆らわずに右へ!)キーン!


絵里「打ったわ!」

希「鋭い打球や!」


パシッ!


海未「なっ…セカンドゴロですか…!?」


シュッ アウト!



77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 16:02:24.78 ID:ceA/8Lf4o

凛「ええー?今の絶対に一二塁間を抜けてライト前のコースだったよ!なんで取られちゃうの?」

海未「くっ、初球打ちで偵察も出来ずにおめおめと…申し訳ありません…」

ことり「なんだか、向こうの守備がいきなり上手になったみたいな気が…?」


にこ「……上手くなった、とは少し違うわ。あれはね、英玲奈の力なのよ」

絵里「統堂さんの?にこ、どういうことなの?打球を取ったのはサードとセカンドだけど…」

にこ「穂乃果、海未。自分の得意なコースに打ち頃の球が来たでしょ?」

穂乃果「うん。内角低めにあんまり速くないストレートが来たよ」

海未「私は中寄りのアウトハイ、穂乃果と同じく得意コースへのストレートでしたね」

穂乃果「なんでわかるの?にこちゃん」

にこ「まず、あんたたち二人が打ったのはストレートじゃないわ。手元ギリギリで小さく変化するツーシーム。芯を少しだけ外された事で打球の勢いが微妙に殺されてたのよ」

穂乃果「つぅしぃむ?」

花陽「元はメジャーリーグでよく使われてる球なんです。最近は日本でもよく投げられてるんだよ。シュートとも似てるんだけど、握りをずらして投げるファストボール系をツーシームって呼ぶ事が多いんです」

穂乃果「はぇー、そんなややこしい球があるんだね」

絵里「シュートに比べて肘への負担が少ないって聞くわよね」

花陽「うん、捻らないから肘に優しいみたい。それでね、先進野球を掲げてるUTXではツーシームの習得が推奨されてて、持ち球にしてる人がたくさんいるんです」

希「打たせて取るのがUTXの基本戦術、って事なんやね」

にこ「そこよ。それが英玲奈が得意とする仕掛けなの。英玲奈はね、あらかじめ打球の飛ぶ場所を予測して守備陣に伝えてあるの」

絵里「えっ、あらかじめ予測!?」

にこ「そうよ。投手が投げ、バッターが打つ前に英玲奈が合図を出す。打者が打つよりも前に守備陣は定位置から英玲奈から伝えられていた守備位置に動き始める。
得意コースに打ち頃のスピードの球を投げられた打者は、気持ちよくスイングして少し芯をずらされた打球を打って、守備の真正面に打球が飛んでアウトになるの」



78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 16:03:21.32 ID:ceA/8Lf4o

真姫「なによそれ…言ってる事めちゃくちゃじゃない。打つ方も投げる方も毎打席同じ動きをするわけじゃないんだから、打つ前に打球の予測なんてできるわけないでしょ?」

にこ「それが出来るから『精密機械』統堂英玲奈、なんて呼ばれてんのよ。どうやってるかなんて細かい理屈は英玲奈以外の誰にもわからないわ」

花陽「英玲奈さんはね、全国の女子チームの、ほとんど全選手のデータを記憶してるんだって。得意コ ースや苦手コース、コースや球種別の打球方向まで。それに洞察力をプラスして、独自の分析で打球予測をしてるんじゃないかな…?」

真姫「……化物ね。そんなデータどうやって集めたのよ」

海未「つまり私と穂乃果は、まんまと術中に嵌ってしまったわけですか…」

穂乃果「えっと、あんまり理解できなかったけど…とりあえずなんだか悔しいなぁ。っていうか!にこちゃんも花陽ちゃんも知ってたなら先に教えてくれればよかったのにー!」

花陽「ご、ごめんね?穂乃果ちゃん」

にこ「まあ海未はともかく、穂乃果はどうせ先に説明したってピンとこなかったでしょ!」

穂乃果「うっ…そ、それはそうだけど…」

ことり「ふっふっふ…みんな!ことりは攻略法を思いついちゃいました!」

穂乃果「えっ!すごいやことりちゃん!」

海未「本当ですか?ことり!」

ことり「論より証拠だよね?バッチリ打ってくるから見ててね~!」



79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 16:05:07.57 ID:ceA/8Lf4o

キィン! パシッ アウト!

スリーアウトチェンジ!


ことり「ふぇぇん…全然ダメだったよ穂乃果ちゃぁん…!」

穂乃果「おーよしよし」

真姫「平凡なショートゴロだったわね…」

ことり「ことりの打球はセンターから右に飛ぶ事が多いから、ちょっと強引にでも引っ張れば守備の逆を付けるかと思ったんだけどなぁ」

にこ「ま、そう考えるわよね。でも今のことりみたいに不自然な打撃をしようとしても、英玲奈は打席での仕草で見抜いてくる。その場合は英玲奈が先読み守備の合図を出さないから、守備陣は定位置通りに守るだけ」

絵里「うーん、厄介ね…頭が痛くなりそう」

希「堅牢な先読み守備との正面対決か、自分の打撃を崩してでも先読み守備を避けるか。統堂さんの対戦相手は常に理不尽な二択を迫られるってわけやね」

花陽「下手に逆を狙ったりすると、自分のフォームが崩れちゃう心配もあるんです…」


穂乃果「うへぇ、なんか難しいねえ。考えるのはみんなに任せるよ~」

凛「凛もそういう頭を使うのはパスにゃー」

希「じゃ、ウチもパス~」


海未「待ちなさい!穂乃果と凛はともかく、希はちゃんと考えてください!」クワッ!

希「ちょ、冗談やって!海未ちゃん目が怖い怖い」

凛「あれ?凛たち今ディスられたにゃ?」


絵里「とりあえず、考えるのは後回しね。守備に行かなきゃ」

海未「そうですね…気持ちを切り替えなくては」

穂乃果「んー。なんかみんなちょっと暗くないかな? 四点リードしてるんだから大丈夫! このままみんなで力を合わせて逃げ切ろう!」

絵里「うん、そうよね…穂乃果の言う通りだわ。このまま勝つのは私たちよ!」



80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 16:06:36.44 ID:ceA/8Lf4o

♯11


花陽『みんなで意気込んではみたけど、英玲奈さんの守備を破るのは簡単じゃありませんでした。
私はあえなくセカンドゴロ。真姫ちゃんは三振。色々策を出してみるものの、突破口をみつけられないままに淡白な攻撃が続きます…』


~~~~~


凛「いくら守備が堅くたって高くバウンドした打球は処理できないよね!叩きつけ打法にゃ!」

英玲奈「脚をフルに活かせる打法だが、そのフォームは極端に目付けが悪くなる。速球を高低のボールゾーンに散らせば当てるのは難しいだろう」

凛「にゃにゃっ!?」ぶぅん!

空振り三振


~~~~~


にこ「打つわよ~!スタンドにブチ込むわよ~!」

英玲奈「…」

にこ「打ち気…と見せてのセーフティバント!」

英玲奈「…」

にこ「と見せかけてのバスターよ!バットを引いて打つ!」

英玲奈「策を弄するのは結構だが、やりすぎだな。その半端なスイングでは球威に圧されてまともな打球は飛ばせないさ」

セカンドフライ


~~~~~


絵里「……私の特長は広角への打ち分け。先読み守備は通用しないわ」

英玲奈「バランスの良い一流の打者だ。確かに先読みは使えない。が、絢瀬絵里には明確な弱点がある…」

加藤「…」シュッ!

絵里「えっ!ランナーもいないのに、クイックモーションで投げてきた!?」

英玲奈「予期していない出来事への対応力が低い。少し揺さぶってやれば」

絵里「う、打たなきゃ!」ガキッ!

英玲奈「打撃を崩すのは容易だ」パシッ

絵里「し、しまった…」チカァ

キャッチャーフライ


~~~~~



81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 16:08:07.70 ID:ceA/8Lf4o

海未『こちらの攻撃時間が短くなるにつれ、UTXの打者陣の集中力が増していきます。各打者に粘られ、出塁され、ことりの体力と球威が削られていくのが目に見えてわかります。
五回、下位打線にタイムリーを浴びて一失点。さらに六回、優木あんじゅにレフトフェンス直撃の二塁打を打たれ、ツーアウトながら得点圏にランナーを置いて統堂英玲奈と対することに…』


~~~~~


英玲奈「さて、点差を縮めておかなくてはな。仕留めさせてもらう」

海未(統堂英玲奈…聞きしに勝る鉄面皮。流石の威圧感です)


(・8・)「…」


海未(が、ことりだって平静ぶりでは劣りませんよ。 幸い、走者の優木あんじゅはそれほど足の速いタイプではありません)

(・8・)(ランナーは気にせず打者に集中。だよね、海未ちゃん)


穂乃果「頑張れことりちゃん!」

海未(さあ、全力のボールを!)サイン


(・8・)(いくよ海未ちゃん…!あっ、しまった!」シュッ


英玲奈(この軌道、南ことり独自の変化球か?いや、落ちない…ならば打つまで!)カキン!

海未「ことりボールが落ちなかった!?くっ、鈍い当たりの打球が三遊間を抜けます…」

穂乃果「届かない…真姫ちゃんお願い!」

真姫「ヴぇえ…!ランナーが三塁蹴ってる!?」パシン

にこ「やばっ!真姫ちゃんの弱肩じゃ間に合わないわ!」

凛「凛が中継するよ!」パシッ
凛「海未ちゃんっ!!」

海 未「いえ凛!投げずにそのまま!これは間に合いません!」

あんじゅ「あら、冷静ね。それじゃ、遠慮なくホームインさせてもらうわ?」

英玲奈「ふふ。バックホームしてくれれば二塁を狙いたかったところだが…」


海未「統堂英玲奈、ワンヒットで帰れるように弱肩の真姫を狙ってきましたか。流石にシュアなバッティングをしますね…」

ことり「ごめんね、指に引っかかって失投しちゃった…」

穂乃果「ことりちゃんのせいじゃないよ。頑張れば穂乃果が捕れる打球だったような気がするなぁ…ごめん」

海未「いえ、二人が謝るような事ではありませんよ。野球ですから打たれもします。ここからもう一度、引き締めて行きましょう!」


~~~~~



82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 16:09:40.02 ID:ceA/8Lf4o

真姫『この真姫ちゃんを狙い打つなんて舐めたマネしてくれるわよね。ことりは統堂英玲奈に打たれて以降はランナーを出して苦しみつつも、どうにか無失点で回を進めていったわ』

にこ『スコアは6-4の二点差。……勝ってこそいるけど、正直、地力の差は感じる展開ね』

希『だったらウチが援護や。どんなに堅牢な守備を敷こうと、スタンドに放り込んでしまえば関係ないやん? そう思っとったんやけどね』

絵里『希の打席、統堂さんは迷いなく立ち上がり、二死走者なしからの敬遠を選択したわ。残念そうな希を見ているとUTXに少し腹が立ったけど、これも野球の奥深さなのかしらね…』

穂乃果『だけど久々のランナーだよ!希ちゃん、私が絶対にホームまで返すからね!』


~~~~~


穂乃果「よーし来ーい!」

英玲奈(表情、視線の揺れ、声のトーン、ルーティーンからの構えに細かな仕草。全てが平常。高坂穂乃果は細工を弄するタイプではない、か)

穂乃果(守備がなんかすごいらしいけど関係ない!思いっきり振って、捕れないぐらいの打球を打ってやるんだから!)

英玲奈(ならば、こちらも平常通りやらせてもらうまでだな)サイン

加藤「…」シュッ

穂乃果(ツーシームぅ…! )
穂乃果(じゃなくてスローカーブだったぁ!スイング停止!)

ストライク!

穂乃果「えー今のストライクかぁ…」

英玲奈(打ち気を逸らす遅い変化球。際どい位置だったが、ストライク判定は幸運だった。オーソドックスな配球だが、大きな変化の残像が目に残ったはず。さて次は)



ことり「ハノケチェ~ン頑張って~!」

真姫「ちょっとことり、ケアしてるんだから指先動かさないで!」

ことり「あっ、真姫ちゃんごめんね」

真姫「もう、気をつけてよね。爪にヒビが入ってたわよ?」

ことり「ほんとだ、気付かなかったなぁ。まだ投げても大丈夫かな?」

真姫「ヤスリを掛けて、液体絆創膏とマニキュアで補強しておいたから大丈夫よ。けど、何かおかしい感じがしたらすぐに言うのよ?」

ことり「うん、ありがと♪ 真姫ちゃんお医者さんみたいだね~」

真姫「べっ、別に!誰だってできるわよこんなの!ほら、水分でも摂ってなさい!」



83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 16:12:41.85 ID:ceA/8Lf4o

ズバンッ!

ボール!


穂乃果(外角に速いまっすぐ、ボール球。ふふーん、さすがに穂乃果でもそんな見え見えのには釣られないよ?)

英玲奈(引っ掛けてくれればと思ったが、ピクリとも動かず。存外冷静、か。平行カウントからの仕掛け…さて)サイン

加藤「…」コクリ

穂乃果(打つ…打つ…)


穂乃果(勝負だよっ!!!)


英玲奈「…!」ゾクッ


英玲奈(この雰囲気、まるでツバサ……いや、馬鹿げている。ツバサと同じ空気を纏う選手などいるはずがないだろう…)

加藤(統堂さん…?投げても大丈夫ですか?)

英玲奈(ああ、サインはそのまま。しっかり腕を振って、低めを意識だ)

加藤(了解です)


希(んー?なんだかこの打席の穂乃果ちゃん、雰囲気あるなぁ…おかげでバッテリーのウチへの警戒が薄れてる…ならここは)

希「なぁヒデコちゃん。ウチ、ちょっと仕掛けてみよかな?」ヒソヒソ

ヒデコ(一塁コーチ)「え、盗塁?うん、行けたら行っちゃっていいと思うよ」ヒソヒソ


加藤「……」シュッ!

希(行くよ!)タタッ!


海未「あ!希が走りましたよ!」

にこ「え、盗塁!?でもタイミングはバッチリだわ!」


穂乃果(来た!インローにツーシーム!)


英玲奈(ランナーが走ったか。だがここは打者との勝負に専念すべき場面。守備陣形!)サイン


穂乃果(守備が左にずれて…三塁線も三遊間もヒットコースがすごく狭まってる!でもそんなの気にしない!)


穂乃果「強く振るだけ!!!」 ッカキィーン!!! !



84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 16:13:39.69 ID:ceA/8Lf4o

凛「打ったよ!」

花陽「三塁線へ低いライナー!これだと前の打席の再現にっ…!」


英玲奈(よし、強い打球だが打ち取った……。いや、これは!?)


凛「あっ!打球がサードベースに当たって跳ね上がったにゃ!!」

花陽「そのまま逸れて…ファールゾーンを転々としてますっ!」

絵里「ハラショー!!」


英玲奈「馬鹿な!!」


真姫「こ、これってフェア扱いになるのよね?!」

にこ「れっきとしたフェアよ!しかもランエンドヒットになってる!希ー!ホーム行けるわよ!!」


ミカ(三塁コーチ)「希ちゃん回れ回れ!ホーム突入ゴー!」


英玲奈「レフト!バックホームだ!」


希(これはクロスプレーになりそうやね、こういうんは下手に躊躇するとお互いに危ない。全力で突っ込む!)

英玲奈(よし、いい返球だ。ギリギリのクロスプレーになるな…受けて立とう!)


パシィ!ズザザッ!



85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 16:14:33.60 ID:ceA/8Lf4o

………アウトォッ!!!



穂乃果「うああっ!惜っしい~!」


希「あちゃあ…間に合わんかったか」


英玲奈「レフトからの返球が完璧だったな。少しでも逸れていればセーフだっただろう。立てるか?手を貸そう」


希「あ、どうもありがとう。……あっ…」

英玲奈「?、どうかしたか」

希「い、いえ、なんでも。それじゃ、ウチは守備に行きますね」


希「……」

絵里「ドンマイ希、惜しいプレーだったわ!はい、ミットよ」

にこ「なァに浮かない顔してんの。いい走塁だったし、今のは向こうが上手かっただけよ」バシバシ

希「絵里ち、にこっち、そうやないんよ。英玲奈さんの手、マメでカチカチやった。ウチらとは積み重ねてきた練習量が違うんやろなぁ…なんて思っちゃって」

絵里「希…」

にこ「ふん、いくら練習してたって負ける時はコロリと負けるのが野球よ。にこはUTXの選手たちはリスペクトしてるけど、だからって委縮してやるつもりはないわ。
英玲奈とあんじゅはともかく、他はUTXって言ったって二軍!バシっとやっつけて帰るわよ!」

絵里「さすがにこね」

希「ふふ、にこっちが言うとなんとなく含蓄ある風に聞こえるね」

にこ「おだてたってアンタたちには何も出さないっての。さ、残りイニングも下級生どもを引っ張ってくわよ!」

絵里・希「「おーっ!」」


~~~~~


凛『希ちゃん、穂乃果ちゃん、とっても惜しいプレーだったにゃ…ここからまた、どっちも点が入らなくなったよ』

ことり『疲れはあったけど、真姫ちゃんがケアしてくれたおかげで何とか7回8回と無失点で乗り切れました!そして6-4のまま、試合は最終回を迎えます』



86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 16:15:38.78 ID:ceA/8Lf4o

♯13


【九回表】


真姫「フゥ…ロングリリーフのあなた、加藤さんだっけ?いい加減そのツーシームも見飽きたわ。この真姫ちゃんの天才的打撃で引導を渡してア・ゲ・ル」  スパン!   ぶんっ

空振り三振


凛「凛知ってたよ」

花陽「定期だね」

真姫「もう!なんで当たらないのよ!イミワカンナイ!」


~~~~~


凛(で、凛の打席だけど…どうすればいいのかイマイチわかんないにゃ~!)

英玲奈(叩きつけを狙うつもりはないか。ならば、守備を動かすまで)


ガキン! パシッ  アウト!


希「うーん、ポップフライかぁ。凛ちゃんはすっかり打撃を狂わされちゃったみたいやね」

にこ「アホなくせに考えすぎなのよ、あの子は。同じアホでも穂乃果の方が突き抜けてる分優秀ねー」

穂乃果「にこちゃんってばー、そんな褒めたら穂乃果照れちゃうよ」

真姫「……バカね」クルクル


海未「なかなかランナーを出せませんね…」

ことり「そうだね~。でも、みんな心配しないでね。ことりが次の回も抑えるから。海未ちゃん、キャッチボールの相手おねがいっ」

にこ「……」

海未「ことり…疲労は大丈夫ですか?」

ことり「うんっ!あと一回だし、大丈夫だよ」

にこ「………ことり!」

ことり「なぁに?にこちゃん」

にこ「にこは絶対に出塁するわ。だから、アンタはもうちょっと座って休んでなさい」

ことり「……うんっ、ありがとね、にこちゃん♪」


~~~~~



87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 16:17:34.18 ID:ceA/8Lf4o

英玲奈(さて、二番の矢澤にこか。情報からイメージしていたよりも優秀な打者だ。非力ではあるが、選球眼は一流)

にこ(真姫、凛が凡退ですんなりツーアウト。捕手が英玲奈に代わってから出塁できたのは敬遠の希とラッキーヒットの穂乃果だけ…。ことりの体力もそろそろ限界、テンポよく三者凡退ってのだけは避けたいところね)

英玲奈(先の打席では策を弄して自滅してくれたが、それよりも厄介なのは…)

にこ(ちょっと不格好だけど、なりふり構ってられないわ)スッ…



穂乃果「あれ、にこちゃんのフォーム変じゃない?」

真姫「本当ね。なによあれ、元々ちっちゃいくせに、さらに小さく構えちゃって」

希「なるほどなぁ…考えたやん 、にこっち」

スチャ ピピピ
花陽「……1085。すごい…にこちゃんの野球力が倍近くまで跳ね上がってます!」

穂乃果「ええ?あの構えで野球力が上がるの?」

海未「おそらく、見ていればすぐに違いがわかると思いますよ」



英玲奈(……ふむ)サイン

加藤「……」シュッ

スパン ボール!


加藤「……!」シュッ

パシィ ボール!


加藤「……くっ!」シュッ

スパーン! ボール!



88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 16:18:58.91 ID:ceA/8Lf4o

凛「あれっ、スリーボール?なんだか、あのピッチャー急にコントロールが悪くなったにゃ」

穂乃果「これって…あの構え方のせい?」

海未「その通り。ストライクゾーンはおおよそ打者の胸元から膝まで。体格によって流動的に変化するものです」

真姫「なるほど。身体の小さいにこちゃんのストライクゾーンは元々狭い。それが更に縮こまって構えたら、いくらUTXでも二軍投手のコントロールじゃ対応できないって訳ね」

希「ふふ、にこっちは見つけたんやね、自分に合ったスタイルを」

真姫(自分に合ったスタイル、か…)



英玲奈(さて、困ったな。スリーボールから二球、甘めのストライクで誘ってみたが、まるで手を出す気配はない)


加藤「………」イライラ


英玲奈(加藤さんは二軍とはいえ、決して制球力の低い投手ではない。だが、ここまで小さいゾーンに生きた球を投げ込めるかと言うと…、だ。そして…)サイン


加藤「ッ!」シュッ


にこ「…甘いわ」


カキッ コロコロ… ファール!


英玲奈(置きにいったストライクをカットされてファール。完全に出塁だけを狙っている。プラス、南ことりを休ませるための時間稼ぎか。カット狙いだが、振り切っているからバント判定にもならない…)

にこ(ふん、我ながらスーパースターとは程遠いプレースタイルね…。でも、後輩が頑張ってる。そんな時に格好つけてなんかいられないってのよ)


スパン ボール! フォアボール!


にこ「…よしっ!」



89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 16:19:47.43 ID:ceA/8Lf4o

ことり「やったぁ!にこちゃんすごーいっ!」

穂乃果「有言実行だね!にこちゃんイケメーン!」

花陽「単なる四球じゃありません!英玲奈さんが出てきて以降で初の、完全な実力でもぎ取った出塁!しかもフルカウントに持ち込んでくれたおかげでことりちゃんに少しの休息時間も生まれています!これはとっても大きいです!」

絵里「ハラショーね!さあ続かせてもらうわよ、にこ!」


英玲奈(ふむ。矢澤にこ、なかなかの好選手だ。もっとも、投手がツバサならば力でねじ伏せるのも容易だろうがな…)


絵里「さぁ、来なさい!」

英玲奈(さて、絢瀬絵里との対戦に集中しなければ)

海未「ふむ…重要な場面ですね。ここで絵里が出塁すれば希に回ります。そして、五番の穂乃果も先程の打席で結果を出しています。仮にランナーが一二塁の場面で希に回ったとすれば、そう易々と希を敬遠もできないでしょう」

凛「……」モジモジ

花陽「もし希ちゃんを敬遠したとしても、塁が埋まると先読み守備を使いにくくなるもんね。絵里ちゃん次第では大チャンスです!」


絵里「Все под богом ходим…」

英玲奈(………?)


真姫「あっ、絵里がいきなりロシアぶってるわ」

海未「おや、なにやら統堂さんが困惑しているようです!いけますよ絵里!」

凛「……が、我慢できないにゃー!穂乃果ちゃん、凛トイレ行ってくるね!」タタッ

穂乃果「ん、ちゃんと手も洗うんだよー」



90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 16:21:16.00 ID:ceA/8Lf4o

絵里「Береженого Бог бережет…」


希「絵里ち、なんて言ってるんやろ?真姫ちゃんわかる?」

真姫「ロシア語はわからないわ。でもさっき、熱心に何かをスマホで調べてたから、きっとロシア語の慣用句とかじゃない?」

ことり「あ、今覚えたんだね…」

希「なるほど、これは絵里ちがいくつ慣用句を暗記してるかが勝負やね。呟いてるロシア語が尽きたらきっとあの集中が途切れて、いつもの揺さぶりに弱い絵里ちに戻ってしまうと見たよ」

海未「ふむ、絵里に関して希が言うのなら、それで間違いないのでしょうね。であれば、長期戦は不利…という事ですか」


絵里「Хорошо…」


真姫「……ねえ、今のって」

穂乃果「今のは穂乃果でもわかるよ。ハラショー!」

希 「ウソやろ絵里ち!もうロシア語ストックなくなってもうたん!?」


カキィン!


ことり「あっ打った!」

海未「一二塁間、セカンドに打球を抑えられましたが深い位置です!これは間に合うか!」


ズザザッ!


穂乃果「ヘッドスライディングだ!………やった!セーフ!セーフ!!内野安打だ!」

真姫「ロシア語がちょうど尽きる直前に決められて良かったわね…」

花陽「ここで希ちゃん!チャンス!大チャンス到来ですっ!」

ことり「希ちゃんおねがいっ」

希「よっしゃ!ウチに任しとき!」

穂乃果「穂乃果にランナー残しておいてくれてもいいからね!」

希「ふっふー穂乃果ちゃん、それはできん相談やなぁ。綺麗に掃除してくるよ!」

穂乃果「頼れるぅー!」



91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 16:23:12.23 ID:ceA/8Lf4o

希「さてさて、カードの暗示は…『吊るされた男』…? ふぅん…、ま、とりあえずバッチリ点入れて、試合決めてくるからね!」

花陽「楽しくなってきたね凛ちゃん!って、あれ…凛ちゃん?」

穂乃果「あ、凛ちゃんトイレに行くって言ってたよー」

海未「え、トイレですか?全く、ツーアウトだと言うのに…」

真姫「この球場、ベンチからトイレまで地味に距離があったわよね。凛ったら、迷ったりしてないかしら?」

花陽「ち、ちょっと心配かも…私、迎えに行ってくるね」

真姫「私も行くわ、花陽」


~~~~~


ジャー

凛「ふんふんふ~♪にゃんにゃんにゃ~♪…ってあれ、かよちんと真姫ちゃん。二人もトイレ?」

真姫「手を洗いながら鼻歌なんて歌っちゃって呑気なもんね…凛が道に迷ってないか心配して二人で探しに来てあげたんだから」

凛「えー?凛、そんな迷ったりしないよ!トイレを出て左に戻るだけだし」

花陽「り、凛ちゃん。左に行ったらベンチと反対方向だよ?」

凛「あ、あれ?そうだったっけー?」

真姫「ハァ、まったくー…早く戻りましょ。絵里が出塁してね、今は希の打席なのよ」

凛「おー大チャンスにゃ!」


花陽「……えっ?…えええっ!?」


真姫「花陽?」

凛「かよちんどうしたの?」

花陽「希ちゃんの野球力が…消えた…!」

凛「え、ええっ?」

真姫「野球力が消える?そんなことがあるの?」

花陽「そんなはずは…スカウターの故障?でも他のみんなの野球力はちゃんと表示されて……あ…まさか、デッドボールで大怪我とか…!」

凛「かよちん真姫ちゃんっ!急いで戻ろう!」



93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 16:26:57.68 ID:ceA/8Lf4o

♯14


穂乃果「の、希ちゃん…」

ことり「嘘…こんなのって…」


タタタッ

凛「希ちゃーん!」

真姫「希!」

花陽「希ちゃん!大丈夫!?って…あれ?」

真姫「なによ、希は普通に打席に立ってるじゃない。心配して損したわ」

花陽「待って?なんだか希ちゃんの様子が…」


英玲奈「…」サイン

ピッチャー田中「…」コクリ

シュッ スパン! ストライク!


真姫「え、見逃し?」

穂乃果「ああっ!追い込まれちゃったよー!」

ことり「希ちゃ~ん…!」

凛「の、希ちゃんどうしちゃったの?今のなんて希ちゃんなら簡単にホームラン打てそうなボールだったよ?」

真姫「ピッチャーが代わってるわね。リリーフ?」

穂乃果「う、うん。あのピッチャーの田中って人に代わった途端、希ちゃんの様子がおかしくなっちゃって…」

スチャ ピピピ…
花陽「田中さんの野球力は910…そしてあの投げ方、たぶん本職の投手じゃないはずです。希ちゃんが打てないような投手には見えないのに、どうして…」



94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 16:27:28.56 ID:ceA/8Lf4o

英玲奈「カウントは0-2。振らなくていいのか?東條さん」

希「駄目…駄目や…ウチじゃ打てない…」ガタガタ

英玲奈(どうやら、投手交代の効果は覿面だったようだな)サイン


絵里「おかしい…あんな風に怯えた希なんて見た事がないわ。一体どうしちゃったの…?」

にこ「希ぃ!!振るのよ!なんでもいいから振りなさい!!」


希「そ、そうや、振らんと… 」

ブンッ  ストライクスリー! バッターアウト!!


希「うう…」ガクッ

絵里「嘘…、希がど真ん中のストレートを掠りもせずに空振りなんて…」


海未「統堂英玲奈!貴女は…希に一体何をしたのです!!!」


英玲奈「園田さん、そう怒鳴らないでくれ。少しばかりの分析と、対策をさせてもらっただけだ」

海未「分析と対策、ですか…?」



95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 16:28:33.90 ID:ceA/8Lf4o

英玲奈「オカルト打法の東條希。打席前にタロットを引き、アルカナに沿った大打者をその身に憑依させて打つ。なるほど、恐ろしい打者だ。だが、一度冷静になるべきだ。現実に、そんなオカルトが有り得るのだろうか?」


英玲奈「野球というのは運の要素も大きく絡む競技だ。故に、験を担いだり、ジンクスに従って行動する選手は少なくない。一流のプロであってもだ」


英玲奈「その一環として、打席前のルーティン動作がある。かのイチローが腕を掲げる動作を知らない者はいないだろう。
ルーティンというものは、一定の動作を行う事で自身の雑念を払い、集中力を高める目的で行われる事が多い。いわば、一種の自己暗示といったところ」


英玲奈「そこで私は考える。東條希のタロットによる憑依、オカルト打法。その実態はオカルトではなく、自身の運動能力を飛躍的に高める程に強力な自己暗示行為なのではないかと」


英玲奈「その仮説から導き出される東條希の人物像……情緒豊かでイメージ力が高く、自身への抑圧傾向。総じて、被暗示性が高い性格と見て取る事ができる」


英玲奈「で、あれば。彼女の被暗示性を逆手に取ってやればいい。東條希がオカルト、スピリチュアルを信奉し、強烈な自己暗示を施すための精神的基盤とは何か?
それはおそらく、神田明神で巫女として働くことで、神の加護を受けているという意識だろうと予想できる」


英玲奈「さて、それを崩すためにはどうすべきか。幸運なことに、UTXの二軍には田中とい う選手がいる。彼女の実家は都内有数の大きな寺だ。
かたや神社の従業員、かたや住職の実子。仏教と神道の違いはあれど、神格は後者の方が高いのではないだろうか?」


英玲奈「田中さんをマウンドへ登らせ、ユニフォーム下に数珠を覗かせる。怪訝な様子の東條希に、田中さんは寺の子供であると囁いてみせる。結果はご覧の通り。オカルト崩し、完成だ」


海未「なんと…そんな方法で希を抑えてくるとは!」

穂乃果「な、長い…何を言ってるのかわかんないよぉ…」


田中「摩訶般若波羅蜜多心経」


絵里「えっ、何?」


田中「観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度一切苦厄舎利子色不異空空不異色色即是空空即是色受想行識亦復如是舎利子是諸法空相不生不滅不垢不浄不増不減是故空中無色無受想行識無眼耳…」

英玲奈「フッフ、田中さんの徳の高さをその身に受けるがいい」


希「うあぁぁぁあウチのスピリチュアルパワーが浄化されてうぐあああぁぁぁ!!!」

絵里「ひぃいいッ…怖い!!」

凛「な、なんか怖いにゃ~!!」

にこ「浄化って何よ!あと絵里と凛までビビってんじゃないわよ!」

真姫(般若心径を唱え始めるピッチャーって普通に怖いけどね…)クルクル


~~~~~



96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 16:29:20.76 ID:ceA/8Lf4o

希「みんな、ほんとごめんな…せっかくにこっちと絵里ちが作ってくれたチャンスやったのに…ウチのせいで」

海未「気にしては駄目ですよ、希。全ての打席で打てる選手なんてプロにもいないのですから」

凛「そうにゃそうにゃ~」

希「それはそうなんやけどね…」


ことり「のーぞーみーちゃんっ♪」ワシッ


希「きゃああっ!?こ、ことりちゃんっ!?」

ことり「心配しなくたっていいんだよ?希ちゃんが四点も取ってくれたおかげで、ことりはここまで投げてこられたんだから♪」ワシッ

希「ちょっ、うぁっ!あ、あんま揉んだらダメ…って…あれ?」

ことり「ん~?どうかした?」ワシワシ


希(……ことりちゃん、右手の握力が弱くなってる。当たり前やけど、やっぱりすごく疲れてるんよね…。なのに、凡退したウチに気を遣って明るく振る舞って…)


希「ことりちゃん…ありがとな?」

ことり「…? うん、こちらこそっ♪」

穂乃果「さあっ!あとアウト三つだよ!みんな気を引きしめて守っていこうねっ!」


全員『おおーっ!』


にこ(けど正直、大会前に希のオカルト打法が崩されたってのは痛いわね…どこにでも真似できる方法じゃないけど…)



97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 16:30:24.48 ID:ceA/8Lf4o

♯15


田中「礙故無有恐怖遠離一切顛倒夢想究竟涅槃三世諸仏依般若波羅蜜多故得阿耨多羅三藐三菩提故知般若波羅蜜多是大神咒是大明咒是無上…」


スパーン! ボール フォアボール!


海未(なっ!い、今のは入っているでしょう!?)


(・8・)「ッ……」


花陽「内野安打、サードフライ、センター前ヒット、三振、そして田中さんへの四球…」

凛「ツーアウトだけど…満塁はちょっとヤバくないかにゃ?」

希(ことりちゃん、やっぱり疲れは隠せんね…ウチが打ててれば、ってのは今は言いっこなしや。守備に集中せんと!)

絵里「代わってあげたい…だけど練習試合なんだし、ことりが投げ切りたいと言った意思を優先すべきよね」

穂乃果「ことりちゃん、 あと一息!三塁に打たせていいからねっ!」

真姫(き、緊張する…出来ればこっちには打球を飛ばさないでほしいわ…)

にこ「二点リードの九回裏、ツーアウト満塁。ここで回っちゃうのね…」


海未「優木あんじゅ…。審判、タイム願います」


『タイム!』


あんじゅ「あら、私の出番なのね」

英玲奈「そうだ。おあつらえ向きの舞台だろう?」

あんじゅ「うふふ…楽しんでくるわね」



98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 16:31:15.88 ID:ceA/8Lf4o

『プレイ!』


海未(この場面…二点差…打者は優木あんじゅ)

(・8・)(これは練習試合だけど…)

海未(勝ちに行かせてもらいます!)スッ


あんじゅ「あらあら、立ちあがっちゃって」

英玲奈「ほう、敬遠か」


海未(満塁ですが、ここは敢えて敬遠の押し出しを選択しましょう。それでもまだ一点リード。今の状態で優木あんじゅと対戦するよりは賢明なはず!)


スパン ボール! スパン ボール! スパン ボール!


あんじゅ「ん~、本当に敬遠なのね。このまま歩かされるっていうのも、なんだかつまらないわ?」


海未(貴女の雑談には付き合いませんよ、優木あんじゅ。これでスリーボール。敬遠球を失投、というのもままある事。気を抜いてはいけませんよ、ことり)

(・8・)(大丈夫、わかってるよ海未ちゃん)シュッ


あんじゅ「えい」 ブンッ スパン ストライク!


海未(えっ、振った?)


あんじゅ「う~ん、当たらないわね?」


海未(なんですか、この方は…一体何を考えて)

(・8・)(ダメだよ海未ちゃん、惑わされずに。もう一球行くよ)シュッ


あんじゅ「やあっ」 ブン! スパン ストライーク!


あんじゅ「当たらないわね?うふふ…」



102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 16:52:55.74 ID:ceA/8Lf4o

海未(ふむ…勝負しろ、と言いたいのでしょうか。誘いには乗りませんよ)

穂乃果「ことりちゃん海未ちゃん!ツーストライクだよ!ラッキーラッキー!」

(・8・)(ふふ、穂乃果ちゃんかわいいなぁ)

海未(難しく考えてしまいそうな場面、穂乃果の明るさには本当に救われます…。シンプルに、シンプルに)


海未(さあことり、もう一球ボール球です!)

(・8・)(わかったよ、海未ちゃん!)


あんじゅ「ツーアウト満塁 、そしてフルカウント」


海未(優木あんじゅの動きは気にせず敬遠するまでの事。振るなら振りなさい、バットが届かず三振でゲームセット。それまでの事です!)

(・8・)「えいっ!」シュッ


あんじゅ「これ以上ないほど完っ全にフルハウス…!」


海未「な、完全にフルハウス…!?」


英玲奈「…勝ったな」




カキィィィィン!!!!!!



103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 16:53:34.09 ID:ceA/8Lf4o

海未「そんなっ!」

希「片足をラインギリギリまで踏み出して、片腕を伸ばして敬遠球を叩いた!?あ、ありえんやろ!」

花陽「ライトに打球がぐんぐん伸びて!絵里ちゃん!」

絵里「お、追い付けないっ…っていうか、これ…!」



ガツンッ 



絵里「……打球がファールポールに当たったわ。これは…」

にこ「……ホームラン。逆転満塁サヨナラホームランよ」

ことり「あ、ああ…」ガクッ

海未「や…やられ、ました…っ」ガクリ


あんじゅ「劇的ね~。嬉しいわぁ」

英玲奈「よくやったぞ、あんじゅ」


海未「ごめんなさい、ことり…私が敬遠などと言い出さなければ、こんな事には…」

ことり「……ううん、海未ちゃんのせいじゃないよ…。私も敬遠に賛成したんだから…」

タタタッ
穂乃果「海未ちゃんっ!ことりちゃんっ!」

海未「穂乃果…っ」

ことり「…ごめん、打たれちゃったよぉ」

穂乃果「二人とも……お疲れ様っ!!」ギューッ

海未「ほっ、穂乃果っ!?」

ことり「穂乃果ちゃぁん?」

穂乃果「初めての試合でこんなに頑張れるなんて二人ともすごい!すごいよ!まあ、最後は打たれちゃったけどさ?でもでも、とっても格好良かったよ!」

海未「……ありがとうございます。穂乃果にそう言ってもらえると、幾分慰められます…」グスッ

ことり「っ……悔しい…穂乃果ちゃん、悔しいよぉ…」ポロポロ

穂乃果「よしよし…青春青春!……あんまり泣くと、穂乃果まで泣きたくなっちゃうよ?」グス


絵里(良かった、穂乃果が上手にフォローしてくれたわね…。さすがキャプテンね)


にこ「ほらアンタたち、試合終わりの挨拶よ。整列行くわよ!」



104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 16:54:19.12 ID:ceA/8Lf4o

♯16


全員『ありがとうございましたっ!!!』


~~~~~


絵里「さて、挨拶も終わったし、使わせてもらった場所の片付けをしてから帰りましょうか」

海未「学校へ戻ったら反省会ですね。敗戦を糧にしなければ!」

穂乃果「うええ、海未ちゃん真面目~。今日は疲れたし明日で良くない?」

海未「駄目です。鉄は熱いうちに叩け!今胸の中にある悔しさが冷めないうちに自らを省みる事で一層の成長が得られるのです!」

穂乃果「ええ~…」

凛「かよちん真姫ちゃん、ベンチ裏のジュース美味しかったからもう一杯飲んでおこうよ」

真姫「ちょっと、今から片付けって時にゴミを増やしてどうするのよ」

花陽「あはは、すぐに片付ければ大丈夫じゃないかな」


英玲奈「ああ、どうせ掃除は業者がやってくれる。片付けなどは気にしてもらわなくて構わないぞ」


花陽「ほら、英玲奈さんもこう言って……って英玲奈さんっっ!!?」

真姫「む…なによ、敗者に慰めの言葉でも掛けに来たわけ?そんなのいらないわよ」クルクル


英玲奈「そんなつもりではないさ、西木野さん。少しばかり、君たちに話があってね」

絵里「話、ですか?」

あんじゅ「そ。あと、宣戦布告のお返事もね?」

ことり「宣戦布告って…」

希「にこっちと真姫ちゃんがしたんやったね」

にこ「生意気な口利いて申し訳ございませんっしたぁっ!!」ゲザァ

凛「出たァ!にこちゃんのフライング土下座にゃ!」

花陽「すごい速い!残像が見えたよぉ!?」

にこ「真ァ姫ちゃん!アンタも頭下げなさい!」

真姫「いッ、嫌よ!悪い事なんてしてない!っていうかにこちゃん卑屈すぎ!」



105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 16:56:19.15 ID:ceA/8Lf4o

英玲奈「頭を上げてほしい、矢澤さん。我々に対して真っ向勝負を挑んでくるその姿勢、とても嬉しかったんだ」

あんじゅ「そして、口だけのチームでもなかった。今日の試合、とっても楽しかったわ」

英玲奈「君たちチーム全員に見るべき点があった」

花陽「えっ、全員…?わ、私にもですか…?」


英玲奈「小泉花陽。見るべきは正確無比な守備時のポジショニング。自身では気付いていないかもしれないが、通常ならばヒット性の当たりを二本アウトにしていた。
難度の高いプレーをシンプルにこなしてみせている。おそらくは、その深い野球観から成せる技術なのだろう」


花陽「ほ、ほ、褒められちゃったぁ…英玲奈さんに…」

ことり「花陽ちゃん、良かったね~♪」


英玲奈「南ことり。改めて挙げつらうまでもないかもしれないが、絶対数の少ないサブマリン。それ自体が既に価値を成している。
加えて独自の変化球、あれの精度が上がれば初見で捉えられるチームは多くはないはずだ。マウンド上でのポーカーフェイスも投手としての高い資質、評価されるべき点だ」


ことり「わぁ、ありがとうございます!」

英玲奈「全員逐一挙げていたのではキリがないが、本当に、それぞれに特徴のある良いチームだと感じたよ。お世辞などではなくな」

あんじゅ「うふふ、まだまだ粗削りだったけどね?」

穂乃果「えへへ、チームを褒められて悪い気はしないね~!」

海未「それで…お話がある、というのは?」

英玲奈「ああ。私とあんじゅから、君たち音ノ木坂学院に頼みたい事がある」

真姫「私たちに頼み?」




―――カツン カツン カツン




希「ん、足音?」

あんじゅ「あら…?ベンチ裏の通路から誰か出てき……えっ?」


ツバサ「英玲奈、あんじゅ、ヤッホー♪」


希「……綺羅、ツバサ?」

にこ「え?……きっ、きゃあああああ!?ツバサ!ツバサよ!!!」

花陽「ほ、ほ、ほ、ほ、本物の生ツバサさんッ!!!??生ツバサさんの生声を拝聴させていただいてもよろしいんですかッ!??」

真姫「二人ともうるさい」

絵里(これが綺羅ツバサ…以外と小さいのね。身長…にこと同じぐらい?)

海未(『魔術師』 綺羅ツバサ、ですか…)



106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 17:00:37.65 ID:ceA/8Lf4o

ツバサ「来ちゃった!」エヘッ


あんじゅ「え…な、なんで!?」

英玲奈「つ、ツバサ…!君は完全休養日のはず…何故ここに?」

ツバサ「なによその反応はー。腐れ縁のチームメイト二人が二軍戦に出てるって言うから寮からすっ飛んできたんだから?」

英玲奈「……そうか…あ、ありがとう」


希(え、なんや…これ。英玲奈とあんじゅの二人が怯えてる…?)


ツバサ「で、で?なんとか学園とは何回コールドだったの?」

英玲奈「音ノ木坂学院、だ」

あんじゅ「あ、あのねツバサ…試合はコールドじゃなくて…」

ツバサ「えーっと、スコアボードは~……8対6…?なにこれ、大接戦じゃない。二人とも出てたのよね?」

英玲奈「……私は五回から」

あんじゅ「わ…私は最初から…でもホームランは二本打ったのよ」

ツバサ「ふーん……ま、打つ方は8点取ってるなら最低限かしら。物足りないけど。で、英玲奈が出場した五回以降は無失点、か」

あんじゅ「そ、そうなの!私と英玲奈はベストを尽くしたわ!」

ツバサ「あー初回に4点も取られちゃったのね。で、もう2失点…」

英玲奈「……佐藤さんが立ち上がりを打ち込まれてしまった。彼女には既に三軍への降格が通達されている」

佐藤「………」

ツバサ「え、佐藤さん?誰だっけ、それ」

佐藤「……ッ!?」



107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 17:01:40.00 ID:ceA/8Lf4o

英玲奈「……おいツバサ、同級生の佐藤さんだ。一年の頃から切磋琢磨してきただろう?」

ツバサ「へぇ~」

あんじゅ「つ、ツバサ…そんな、へぇ…って」

ツバサ「佐藤さんね…忘れちゃった。ま、いいわよね。三軍なんて覚えてなくっても」


佐藤(ブチッ!)


佐藤「綺羅ツバサぁぁア゛ア゛ア゛ッッッ!!!!!」


英玲奈「やめろ!佐藤!」


佐藤「死゛ね゛ェェッ!!!」シュッ!!


にこ「あっ顔面にボールを!」

あんじゅ「ツバサ!危ない!!」

ツバサ「え、何が?」パキッ!!



…………コーン、コーン…コン…



あんじゅ「……嘘ぉ」


佐藤「そ、そんな…っ…!」


英玲奈「至近距離から顔面への速球を…おもむろにボールペンで打ち返してスタンドへ、か……。相変わらず、凄まじい」


ことり(えっなにちょっとあれありえなくない?ボールペンだよ?硬球だよ??)

海未(し、信じられません…)

絵里(…なんで内ゲバの現場に居合わせちゃってるのかしら…気まずいわ)

希(この発言権のない雰囲気、苦手やなぁ…)

穂乃果(お腹減ったなぁ…)

凛(穂乃果ちゃん穂乃果ちゃん、帰りラーメン行こうよ)

穂乃果(凛ちゃん!直接脳内に!?)



108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 17:03:12.75 ID:ceA/8Lf4o

ツバサ「あっぶなー…このボールペンが金属製じゃなかったら怪我しちゃってたかも。そこの投げてきた人、あなた誰?危ないじゃない!硬球って石みたいに硬いんだから!」


佐藤「あ…ああ…あ…」ガクッ


あんじゅ(佐藤さん…心が壊れちゃったのね。可哀想だけれど…もう駄目ね)

英玲奈(…ツバサは決して嫌がらせで発言しているわけではない。本気で佐藤さんの事を記憶していないんだ)

英玲奈(自分が興味を持てないものへの記憶に脳の容量を一切割いていない。そうして、常人よりも大幅に余った脳の力の全てを野球の能力に注ぎ込んでいる)

あんじゅ(そしてそれはもちろん、私と英玲奈も対象。ツバサから取るに足らない存在だと思われてしまったその時…私たちはツバサの認識から消える)

あんじゅ(私も英玲奈もツバサの事は好き。子供みたいに楽しそうに野球に向き合うツバサをそばで見ているのが大好き。この小柄な天才がどこまで行けるのかをずっと見守っていきたい)

英玲奈(だからこそ、私たちはツバサが恐ろしい。忘れられないため、切り捨てられないために……私たちは確実に結果を残し続けなければならない)

ツバサ「もう、二人ともなんか表情硬いわよ?試合で疲れちゃった?」

あんじゅ「大丈夫、大丈夫よ…うふふ」

ツバサ「そう?ならいいけど。……ん?」


ツバサ「そこのアナタ」


英玲奈(な!?ツバサが見ず知らずの他人に興味を示した!?)

穂乃果(ねえ、穂乃果は今日はピリ辛の担々麺な気分だよ、凛ちゃん)

凛(凛は二郎でガツンと大豚W気分なんだけどなー)

穂乃果(あ、それもいいかも?)

ツバサ「ねえアナタ、サイドテールのアナタよ」

穂乃果「ふぇあ!?ごめんなさい!ラーメンの事を考えるのはやめます!!」

真姫(何言ってるのよ、穂乃果…)クルクル



109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 17:07:39.51 ID:ceA/8Lf4o

ツバサ「ねえあなたの名前は?」

穂乃果「わた、私ですか!こ、高坂穂乃果です!」

ツバサ「学年は?ポジションと打順は?打席と利き腕は?パン派?ごはん派?」

穂乃果「え、ええ!?二年で五番サードで右投右打で断然パン派です!」

ツバサ「そうなんだ!そうなのね!ね、ラーメン食べたいの?」

穂乃果「えっ食べさせてくれるの!?」

英玲奈「おいツバサ…その辺りにしておけ」

海未「こら!穂乃果!失礼はやめなさい!」

凛「い、いいなー!凛もラーメン食べたいです!」

ツバサ「私は高坂さんと話をしているの。その他は黙っててね」

凛「え…あっ…ごめんなさい…」

ムカッ
花陽「い、いくらツバサさんでも凛ちゃんに失礼な口を利いたら許しませんよ!測定してやる!(スチャ)」

ピピピ…ピピピピピ!!
花陽「野球力2000…いや2500…3000…!5000…!?13000…?!!ええっ!まだ上がっちゃうのぉ!?」パリンッ!

凛「ああっ!かよちんのスカウター眼鏡が粉々に!」

真姫「は、花陽…!?野球力13000以上って…な、なによそれ、桁が違うじゃない!」

ツバサ「穂乃果さん、お友達になりましょ?UTXのカフェテリアに美味しいラーメンがあるの。ご馳走するわ」グイッ

穂乃果「え、ええ、えっ?でもみんなが…」

ツバサ「穂乃果さん、あなたUTXに入ってよ。私が働きかければすぐに転入手続きも済むわ」グイグイ

穂乃果「つ、ツバサさん!?なにを、ほ、穂乃果…頭がついていかないんだけど…ひ、引っ張らないで…」



110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 17:08:50.59 ID:ceA/8Lf4o

ダンッ!

海未「あなた、いい加減にしてください。私の友人が困っています」ギロッ

ことり「ほ、穂乃果ちゃんから手を離してください!」

ツバサ「………」

穂乃果「海未ちゃん、ことりちゃん…なんかよくわかんないけど助けてー…」

にこ「あの、ツバサさん。このアホ、これでも音ノ木のキャプテンなんで。引き抜きとかそういうのは困るんです。うちとそちらは、敵!なんですから。おら穂乃果!こっち来なさい!」

希「お、にこっち言うやん!ほら穂乃果ちゃん、ウチの後ろに隠れとき」

穂乃果「うう、希ちゃーん…」

ツバサ「……ちょっとちょっと穂乃果さん。私は仲良くしたいだけよ?みなさん退いてもらえる?そんなバリケードみたいに立ち塞がっちゃって」

絵里「ねえ、やめてもらえますか?穂乃果は困っているわ。それ以上音ノ木坂の生徒を困らせるようなら、私は生徒会長として穂乃果を守ります」

真姫「いきなり転入とか…頭沸いてる?」クルクル

あんじゅ「ね、ねえツバサ…いきなりどうしちゃったのよ…迷惑かけちゃってるわ?」

ツバサ「…はー、めんど」



ツバサ『   全員、黙ってて   』



シィ…   ン…



絵里(な、なんなの…!この人の迫力は!?)

希(なんや…これ!気圧されて…体が痺れたような!)

真姫(ヴェエ…!なんかあいつだけ世界観違うんだけど?!)

花陽(こ、声が出ないよぉ…!)



111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 17:09:24.79 ID:ceA/8Lf4o

ツバサ「……穂乃果さん」

穂乃果「っ、つ、ツバサさん…?なんで、穂乃果の顔に手を…?」

ツバサ「クスッ…やっぱり。あなたは動けるのね、私のプレッシャーの中で」スッ


にこ(えっ?ちょ、穂乃果の顔にツバサさんの顔が近付いて…!?)

ことり(えっ!えっ?えっ!?やめてやめてやめて!!!)

海未(嘘でしょう!?嘘でしょう!!?やめてください後生ですから!!!)

あんじゅ(つ、ツバサぁ!?)

英玲奈(やめるんだ!ツバサ!)



……チュッ



穂乃果「!!??!?!??!?!」

ことり(ぴいいっ!!?!このアマっ!!やりやがった!!ビッチ!!アバズレ!!ことりのおやつにしてやろうか!!?)

海未(あああああ…このチビ女…このデコ女…!私の穂乃果になんてことを…!穂乃果がに、に、妊娠してしまいます…!!!)

凛(凛たち、野球しにきたんだけどなぁ)


穂乃果「え、あ…あ…ぅ…/////」

ツバサ「穂乃果さん。私、ようやく見つけたの。私と同じ高みに立てる人を」

穂乃果「たか…み…?」

ツバサ「試合の中で、英玲奈やあんじゅのプレーを見て、あなたも思わなかった?大したことないなって」

英玲奈・あんじゅ(ッ…!)

穂乃果「た、大した事ないとは思わないけど……同じぐらいのことなら、穂乃果もそのうち出来るよ…って」

希(そ、そうなん…!?)

ツバサ「でしょうね。あなたの潜在能力は私に匹敵するんだもの。当然よ」

絵里(穂乃果が!?そうなの!?)

ツバサ「英玲奈、あんじゅ。勘違いしないでね?決して二人を貶めているんじゃないの。二人の事は大好き。プレイヤーとしても尊敬している。……けどね、二人と私は、決して同格じゃない」

英玲奈(………その通りだ、残念だが)



112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 17:09:56.11 ID:ceA/8Lf4o

ツバサ「私はね、恒星なの。英玲奈とあんじゅ、他のチームメイトたちは私に連なる惑星。種類が違う。だけど見つけたわ、穂乃果さん。あなたも私と同じ恒星。自ら光を放てる太陽よ」


希(『太陽』…穂乃果ちゃんのタロット…)


穂乃果「……太陽とか惑星とか…よくわかんないけど…」

ツバサ「わからなくていいわ。私が言いたい事はただ一つ。一緒に来なさい、穂乃果さん」


穂乃果「………」

穂乃果「……ツバサさんの気持ちはわかりました。多分だけど…私なら、ツバサさんと高めあう存在になれる」

ツバサ「穂乃果さん!わかってくれるのね!じゃあ!」


海未「ぅ、うう!うぁあ゛!」

英玲奈(園田海未!プレッシャーを破った!?)

海未「穂乃果!!行かないでください!」

ことり 「チ゛ュ゛ン゛ッ゛!そうだよ穂乃果ちゃんっ!ダメっ!行っちゃだめ!!」

あんじゅ(南ことりも!?)


穂乃果「……私は、ツバサさんの孤独、なんとなくだけど、わかってあげられると思います」

ツバサ「そうよね穂乃果さん。あなたも本質は私と同じよ」


穂乃果「……だから!私はツバサさんを倒してみせます!音ノ木坂のみんなと一緒に!」


ツバサ「え…?は!?話の前後が繋がってないわ!ダメよ、UTXに来なさい!」

穂乃果「だって、一緒の学校じゃ、大会でツバサさんと勝負できませんから!」

ツバサ「……勝負?」



113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 17:42:43.33 ID:ceA/8Lf4o

穂乃果「多分だけどツバサさん…、野球は大好きでも、野球での勝負を楽しんだ事ってないよね?」

ツバサ「勝負を楽しむ?ええ、ないわ。負けるはずのない相手を圧倒し、ねじ伏せて、叩き潰し、勝つべくして勝つ。それが勝負よ」

穂乃果「やっぱり!それってすっごくもったいないよ!私がツバサさんに勝負の楽しさを教えてあげる!それでね、もし負けたらツバサさんの言う通り、UTXに転入します!」

絵里(穂乃果…何を…)

ツバサ「…勝負。……ねえ穂乃果さん、それじゃ大会が終わっちゃうの。一緒に野球ができないわ」

あんじゅ(そう、私たちは三年。次の夏の大会で引退…)

穂乃果「私ね、野球じゃなくたってツバサさんとは友達になれると思うんです」

ツバサ「……友達に」

穂乃果「だから、約束します!もし負けて穂乃果が転入したら、ツバサさんが卒業するまでの残りの半年を最高に楽しい時間にしてみせるって!」

ツバサ「………」

穂乃果「けど、負けません!絶対に!」

ツバサ「ふぅん…?要するに、負ける気はないってワケだ。その素人の寄せ集めチームで」

穂乃果「うん、負けません。穂乃果がいなくなったら寂しくて死んじゃうかもなあって感じの、愛が重い幼馴染みが二人もいるから」


海未「穂乃果ァァ!!」

ことり「ハノケチェェン!!」


ツバサ「ふふ…あっはははは!穂乃果さん、言ってる事はよくわからないけど、やっぱりアナタって面白い!いいわ、その条件飲んであげる」

希(なんか偉そうやけど…この子、終始めちゃくちゃな事しか言ってないなぁ…)

ツバサ「そして、約束するわ。必ず音ノ木坂を叩き潰して、貴女を迎えに行くと。それじゃあ、また大会で会いましょ」

穂乃果「勝負だよ、ツバサさん。私、負けませんから!」

ツバサ「ふふっ……あ、そうだ。参考までに教えてあげる。私の野球力は53000よ」

凛(ご、53万!?)

花陽(53,000だよ凛ちゃん。フリーザじゃないよ)



ツバサ「バイバイ」



――― スタ スタ スタ …




英玲奈「……ツバサは野球に、自身の才能に取り憑かれている。私たちから恥を忍んで頼む」

あんじゅ「ツバサを…敗北させてあげて。お願い…」



114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 17:43:44.95 ID:ceA/8Lf4o

♯17


【部室】


凛「暇だよ~…」

穂乃果「暇だね~…」バリ…ボリボリ…

ことり「雨、止まないねえ」ギッチョギッチョギッチョギッチョ


真姫「……」イライライライラ


絵里「今週はずっと雨ね…せっかくUTX戦で色々な経験が積めたのに…」カリカリ…カリ…

凛「テンション下がるにゃ~」カション

希「筋トレも今日の分は終えちゃったしなぁ。オーバーワークは逆効果やし……(パキン)あ、ホームラン」

凛「ま、またやられたにゃー!?」

穂乃果「おお~」バリボリ

ことり「希ちゃん野球盤上手だねぇ」ギッチョギッチョギッチョギッチョ


真姫「………」イライライライラ


ことり「真姫ちゃん?体調悪いの?」ギッチョ…ギッチョギッチョギッチョ

真姫「あんたたち全員うるさいのよっ!!穂乃果はせんべい!凛と希の野球盤!ことりのハンドグリッパー!絵里の宿題!」

絵里「私は宿題やってるだけなのに!?」

真姫「あ…ま、まあ、絵里の宿題はいいわ。他よ!特にことり!それうるさい!」

ことり「ご、ごめんね?でも、試合終盤に変化球のキレが落ちてたから握力を鍛えなさいって言ってこれをくれたのは真姫ちゃん…」

真姫「今はうるさいの!」



115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 17:44:28.60 ID:ceA/8Lf4o

希「あれやんな?真姫ちゃんはここ数日にこっちと全然会えてないからイラついてるんよね?」

真姫「べっ、別に !違うわよ!なんでにこちゃんなんか!」

凛「なぁんだ、いつものかにゃ。それなら凛だって、かよちんと放課後バラバラで寂しいよ~」

穂乃果「だったら穂乃果だって!海未ちゃんが視聴覚室に籠っちゃってて寂しい!」

ことり「だよね~…」

絵里「この雨で練習できないしで、野球に詳しいにこと花陽、捕手の海未の三人でずっと色んな映像とかデータをまとめてくれてるのよね」

希「ウチはさっき差し入れ持っていったけど、あの部屋には長居できないなぁ…スクリーンで試合の映像が延々と流れてて、大量のスコアシートとかが机の上に散乱してたよ」

凛「凛はあんな数字とかデータまみれの部屋にいたら一時間もしないで頭がおかしくなっちゃうよ!」

真姫「UTXのここ数年の試合データとかを全部集めたみたいね。どこから持ってきたんだか…」

絵里「作業を手伝おうとしたんだけど、OPS、IsoDとかWHIPだとか、データが細かすぎてね…にわか知識じゃかえって邪魔になりそうで退散したわ」

穂乃果「数字の海って感じだったね。ぞっとしないや…。あーもう、海未ちゃんと会いたいよ~!」


ガチャッ


海未「私がどうかしましたか?」

穂乃果「あっ、海未ちゃんっ!」

ことり「うふふ、穂乃果ちゃんは海未ちゃんが大好きって話だよ」

海未「なっ、わ、私のいないところで何の話をしているのですか!」

穂乃果「海未ちゃんっ!君を愛してるぅっ!」ギュッ

ことり「ことりも~」ギュッ

海未「は、恥ずかしいです!やめてください!」

希「と、言いつつ頬がゆるゆるやね」



116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 17:56:55.35 ID:ceA/8Lf4o

にこ「ほら、どいたどいた!ったく、アホの二年生トリオは入口でイチャついてんじゃないわよ」

花陽「みんなお待たせ~。試合データとかのまとめがやっと終わったよ!」

凛「かーよちーん!!寂しかったよぉお!」ギュウゥゥ!

花陽「り、凛ちゃぁん!ごめんねぇ!」ギューッ!

真姫「別に、毎日教室で会ってるじゃないの…」

絵里「ほら、真姫もにこに抱きつかなくっていいのかしら?」

真姫「う゛ぇぇ!?わ、私は別にっ!」

にこ「なに?真姫ちゃんったら、にこにーと会えなくて寂しがってたわけ?」

真姫「チガウワヨ!」

にこ「ふふん、可愛いとこあんじゃないの。まっ、にこにー分を摂取できなくて禁断症状を起こしちゃうのは当然っちゃ当然だし?別に驚かないっていうか?とりあえず頭撫でといてあげる。ほら真姫ちゃーん、よしよーし♪」

真姫「ヴェエ…!イ、イミワカンナイ!」

希「嬉しそうやねぇ」

にこ「さて、全員で視聴覚室に行くわよ。映像見せながら説明する事が色々あるから」


【視聴覚室】


海未「えー、ゴホン!それでは、先ほど花陽が言ったようにデータの解析が終わりました。その多くは捕手である私と、投手のことり、絵里が知っておけばいい内容なので、それについては後で二人に資料を渡そうと思います」

ことり「はーい」

絵里「了解よ」

海未「と、それは一旦置いておきまして。優木あんじゅの『フルハウス打法』 の概要が掴めましたので、全員で共有しておこうかと思います。花陽、映像をお願いします」

花陽「ええっと…じゃあみんな、スクリーンを見てね」

穂乃果「お、あんじゅさんの打席の映像だ」

希「これはこの前の試合?」

にこ「そうよ。まあ映像はイメージしやすいように流してるだけだから、しっかり見なくても大丈夫よ」



117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 17:59:03.26 ID:ceA/8Lf4o

ことり「あ、これは最初の打席だね」

にこ「絵里の落球は面白かったわよね~」

絵里「もう、にこ…からかわないでよ。あれ恥ずかしかったんだから…」

穂乃果「あはは、あの打球はしょうがないよ~」


真姫「………エラーチカ」ボソッ


希・ことり「ブフッ!」

絵里「ちょ、ちょっと真姫!希とことりも!」

真姫「ご、 ごめんエリー。思いついちゃって、つい」

希「いやぁ…ごめんごめん」

ことり「ごめんね絵里ちゃん、ついつい…」

絵里「はぁ…」


海未「さて、説明を始めますね。長々と講釈を垂れてもみんなが疲れるだけでしょうし、結論から述べます。『フルハウス打法』とは、フルカウント時、または満塁時の打率が十割となる、というものです」

真姫「ええっ!?なにそれ!嘘でしょ!」

にこ「本当よ。にこも知らなかったけど…っていうか、メディアでもまだ取り上げられてないはずよ」

花陽「あんじゅさんが新しい打法を完成させたって雑誌のインタビューで書かれて以降の試合結果を集めて、三人で調べてみたんだ。そしたら満塁の時と、フルカウントの時の打率が十割だったの」

穂乃果「十割? …って、100%でいいんだよね?すごっ!なんで有名じゃなかったんだろ」

にこ「女子高校野球の細かい指標まで見てるメディアってあんまりないから。今まで知られてなかったのはそのせいよ」

真姫「十割って、バカげてる!そんなの超能力じゃない!」



118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 17:59:59.86 ID:ceA/8Lf4o

海未「ええ、私たちも最初はそのような感想を抱きました。
……ですが、統堂英玲奈は希のオカルト打法を破った時に「そんなオカルトなどありえない」と言いました。つまりは優木あんじゅの能力もオカルトではないということ」

ことり「なるほど~。チームメイトのあんじゅさんの事はよく知ってるはずなのに、英玲奈さんがオカルトはないって言うって事はそういう事だよね」

海未「ええ、その通りです。さらに綺羅ツバサの言動、統堂英玲奈と優木あんじゅの態度。あれらを見るに、優木あんじゅは綺羅ツバサの球をあまり打てないと見て問題はないはず」

凛「なんか怖がってたもんねー」

海未「ですね。となれば、優木あんじゅの『フルハウス打法』は超能力ではなく、相手が優れていれば打てなくなる、常識の範囲内の能力だと考えられます。“女子野球レベルの球であれば”ほぼ十割打てるという事でしょう」

希「なるほどなぁ…確かにホームランを打った二打席はどっちもフルカウントとか満塁やったね。でも、フルカウントと満塁でだけめちゃくちゃ打てるようになるってのはどういう事なん?」

海未「これは野球に限っての話ではありませんが、ある特定の状況を想定したイメージトレーニングをひたすらに繰り返す、という練習方法があります。そうすることでその条件下に置かれた時の超集中を可能とするのです。
いわば、恣意的に作り出す絶好調。俗に言う『ゾーンに入った』状態でしょうか。」

凛「そういう細かいイメージトレーニングって陸上でもするよ。頭の中でゴールまでの歩数を何度も何度も考えてみたり、順風の時と逆風の時をイメージして走ってみたり」

穂乃果「はえー、そんなことするんだね」

海未「ええ、弓道でも似た事はしますよ。長々と話してしまいましたが、要約すると『フルカウント、満塁時に超集中してゾーンに入る』。おそらくは、それが『フルハウス打法』の正体です」

絵里「なるほど…超集中、ね…」



119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 18:00:34.43 ID:ceA/8Lf4o

花陽「あ、でも絵里ちゃんの『ロシア打法』もすごく集中して見えたし、ゾーンに入ってるような感じだったと思うよ」

絵里「えっなにそれ」

真姫「エリー、この前の試合でいきなりロシアぶってたじゃない。で、ヒット打ってたでしょ?あれ、私たちで勝手に『ロシア打法』って呼んでるの」

絵里「やっ、やめてよ!なんか格好悪いじゃない!」

穂乃果「嫌なの?じゃあ…ハラショー打法!」

絵里「それもなんか嫌よ!やっぱり格好悪いわ!」

ことり「そうかなぁ?絵里ちゃんらしくてかわいいと思うけどなぁ」

絵里「ね、ねえみんな、一旦冷静になりましょう?全部になんとか打法って名付けなくっていいのよ?」

海未「私はその手のキャッチフレーズって大好きなのですが…」

にこ「まあ海未はね…」

凛「とりあえず絵里ちゃんは知ってるロシア語をもっと増やすべきだと思うにゃー」

希「すぐハラショーやったもんなぁ」

絵里「もう!この話はおしまい!話を進めてちょうだい!」



120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 18:14:26.01 ID:ceA/8Lf4o

♯18


真姫「優木あんじゅの事はわかったわ。で、他にも話があるんでしょ?」

海未「ええ、ここからはにこ、お願いします」


にこ「それじゃあ~?今からぁ~にこにーがあなたたちにぃ~女子高校野球のヒ・ミ・ツをぉ~」


凛「それ寒いからさっさと進めるにゃー」

にこ「ちょっと凛!ひっぱたくわよ!ったく…えーっと、話ね。今からあんたたちに女子高校野球ってものを一から説明してやるわ」

穂乃果「え、にこちゃん何言ってるの?もうみんな野球やってるのに」

にこ「甘い!今の音ノ木坂野球部はただ野球をやってるだけ!女子高校野球のスタートラインにも立てていないわ!花陽、映像プリーズ!」

花陽「了解にこちゃん!」ポチッ


\ワーワーワー ピーッピッ ドンドンドン/


希「これもUTXの試合?でもなんか随分賑やかやね」

花陽「うん、これは春の全国大会の決勝だよ」

絵里「へえ、男子の甲子園とは違ってドーム球場で開催されてるのね」

花陽「うん、女子の大会は決勝だけがアキバドームで開催されるんだ。まだ歴史の浅い大会だから、他の試合は普通の球場でやるんだけどね」

絵里「華やかね…歓声に鳴り物の応援に、なんだか見てるとわくわくするわ」

凛「あ、綺羅ツバサが投げてるよ」


スパァン! ットライック! ワーワーワー!


真姫「131キロ…!流石に速いわね、男子レベルじゃない」

にこ「女子野球での130キロは一つの壁って言われてたの。なのにツバサは平均球速で130オーバー。完全に怪物よ」

花陽「しかも、ツバサさんの球は打席に立つともっと速く感じるんだって。左投手は5キロ増して見えるなんて話もあるし、手元が見えにくいフォームでスピン量も多いから、ストレート自体が魔球なんて言われてるんだよ」

にこ「故に、『魔術師』 綺羅ツバサってね」

ことり「ふぇ~すごいね……あ、三振。チェンジだね」

にこ「ここからよ。UTXの攻撃、よーく見ておきなさい」



121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 18:17:26.53 ID:ceA/8Lf4o

『三回の裏 UTX高校の攻撃は 三番 ピッチャー 綺羅さん』


♪ダンシンダンシンノンストップダンシン ダンシンダンシン レッミードゥ!


ことり「えっ、音楽?」

絵里「これって場内放送よね?これは…プロ野球みたいな登場曲ってこと?」

にこ「そうよ、女子高校野球では出囃子の使用が認められているの。それだけじゃないわ」


【UTX応援団】
\モット シリターイシリターイ カジョウナマインッ/


希「わぁ、応援の迫力すごいなぁ…応援も今の曲を使っとるんやね」

花陽「私はこの映像、何度も見てるんだけど…明らかに相手のピッチャーが応援に委縮しちゃってるんです」

海未「確かに、この場にいたら圧倒されてしまうでしょうね…」


キィン!


海未「あっ、ホームラン…」


にこ「……と、まあ映像を見てもらったわけだけど。男子高校野球との違い、わかってもらえたわよね」

ことり「音楽が流せるってところ?」

にこ「それは表面的な部分に過ぎないわ。大事なのは、女子高校野球は男子と比べて、興行性が強いって点」

海未「興行性、ですか?」

にこ「そ、興行性。運営の商売っ気が強くてアイドル的とでも言い換えた方がわかりやすいかしら?
プレーのレベルはどうしても男子に劣る以上、求められてるのはプレーだけじゃない、容姿もなの。その点うちはにこを筆頭に全員ルックスが悪くないから、それは大きな利点よ」

真姫「…誰を筆頭にって?」

にこ「何よ!文句ある!?」



123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 18:49:39.18 ID:ceA/8Lf4o

穂乃果「んー、でもにこちゃん、アイドルっぽく人気があってファンが多かったら試合で有利になるってわけじゃないでしょ?」

にこ「はい甘い。いい?穂乃果。私たちアマチュアのプレーってのは研鑽を重ねたプロとは違う、とても不安定なものよ。雰囲気、メンタルに大きく左右されるのなの。アンタ、男子の甲子園大会はよく見る?」

穂乃果「あんまりちゃんと見たことないなぁ。お父さんが夜に熱闘甲子園見てるのをたまに隣で見るぐらいで」

にこ「甲子園でね、沖縄代表って結構勝ち進むことが多いの。指導者がいい、温暖で冬場も練習しやすいとかの理由も大きいんだけど、試合でモノを言うのはあの応援よ」

ことり「あ、それ見たことあるよ。指笛を吹いたり民謡を演奏したり、応援が独特ですごいよね♪」

にこ「そう、それなのよ。ハイサイおじさんが演奏され始めるとガラリと流れが変わっちゃうの。魔曲なんて呼ぶ人もいるぐらいよ」

花陽「他にも智弁和歌山のジョックロック、常総の神風、龍谷大平安の怪しいボレロとか…挙げていったらキリがないぐらいあるんだよ」

にこ「にこ的には横浜高校の第5応援歌がイチオシね~!あの軽快なスネアに乗って延々攻撃が続くんじゃないかって錯覚しちゃうわ!」

花陽「ぅああぁ!横浜の第5いいよねぇっ!あのリズムを脳内再生しちゃうよぉ!うーん私は挙げるならレッツゴー習志野かなぁ!」

にこ「習志野!あれはもう純粋に演奏レベルがズバ抜けてるわよね~!統率された音の暴力って感じ?レッツゴー以外でもエスパニアカーニからのエルクンバンチェロなんかも鳥肌よ鳥肌!」

花陽「ふぁぁああ!たまらないよねえぇぇえ!あ、前橋育英の高速アルプス一万尺とかもいいよね!」

にこ「あれは攻撃力高いわよね~!!個人的にはジョックロック並にエグいんじゃないかと思ってるわ。智弁和歌山だとシロクマもかっこいいわよね~!」

花陽「わっかるなぁあぁ!!!あとあと定番シリーズだとサウスポーも外せないよね!」

にこ「もっちろんよ!ザ・王道よね!!」


真姫「二人で盛り上がってるけど、全然ピンと来ないわね…」

凛「凛は楽しそうなかよちんが好きだよ」

希「応援歌ねー。甲子園の魔物ってやつ?」

にこ「そうね、間違いなく魔物の一種よ!…で、女子に話を戻すわ。さっきの映像、花陽が言ってくれたけど、UTXの応援に相手のピッチャーが萎縮してたでしょ?
アマチュア野球ではね、観客をより多く味方に付けて大声援で相手を威嚇するのも大切な戦術の一つなのよ」



124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 18:51:49.49 ID:ceA/8Lf4o

穂乃果「なるほどー、なんとなくだけどわかったよ。あのUTXの曲とかかっこいいなぁ…って思ったもん。っていうかあれって歌ってるのツバサさんたち?」

凛「凛も思った!あれ、あの三人の声だったよね!」

にこ「正解よ。あのshocking partyって曲はツバサ、英玲奈、あんじゅの三人が歌ってるわ」

凛「どういうこと?野球の練習をして歌の練習までしてるの?」

にこ「さすがにそれは無理よ。歌は最低限の練習をして録音、あとはUTXの関係者が音声をミックスして完成版にしてるらしいわ」

穂乃果「ミックスって?」

にこ「ほら、プロの歌手でもライブだとヘタクソとかよくいるでしょ?エフェクトとか音量調整とか色々やって加工して上手な感じにする仕事のプロがいるのよ。
そんな過程を経て、shocking partyはネットで無料公開されててファンの大量獲得に繋がっているわけよ」

穂乃果「な、なるほど~」


海未「なにやら話を聞く限りはすごく大変そうですが…そこまでするメリットはあるのでしょうか?」

にこ「さっきの映像、スタンドを見た?高校生同士の試合なのに、7割以上はUTXファンよ。
出囃子にクオリティの高いオリジナル楽曲を用意、応援も洗練、完成されてて、本人たちはズバ抜けた実力と整ったルックス。これだけ揃えてるからこそUTXは最強なの」


海未「つまり、こういう事ですか?UTXと同じ土俵で対等に戦うためには、あれと同じレベルの楽曲を用意して目立ち、私たちのファンを増やす必要がある、と」


にこ「……必ずしも曲、とは言わないわ。とにかく、なんとかしてファンを増やす必要があるのよ。アキバドームのスタンドの半分を埋められるほどにね」

希「目立ってファンを増やす方法かぁ…練習風景を撮影してネットに上げてみる?」

にこ「やってみてもいいけど、UTXのインパクトには遠く及ばないわね…」

絵里「けど私たちの中に作曲をできる人なんて…」

にこ「…地力で劣ってる以上、せめて応援は同レベルにまで高めないと万に一つの勝ちも拾えないわ。応援の圧は相手への有効な攻撃手段の一つ。高校野球ってのは、スタンドまで含めた学校同士の総力戦なんだから」

海未(くっ、もし負けてしまったら…)


~~~~~

ツバサ『あはははは!私の勝ちね!約束通り穂乃果さんはいただいていくわ!』

穂乃果『海未ち ゃん!ことりちゃん!助けてぇ!』

海未『穂乃果ぁ!』
ことり『ハノケチェン!』

ツバサ『無駄よ穂乃果さん!さあ孕むのよ!綺羅の子を!』

穂乃果『嫌ぁぁあああああ!!!!』ビクンビクン

~~~~~



125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 18:53:39.73 ID:ceA/8Lf4o

海未「駄目です!!!!」バァン!

絵里「ひっ!う、海未…いきなり机を叩かないでよ…」

にこ「UTXに負けてから定期的に発作が出るわね…怖いっての…」

希「穂乃果ちゃんを連れ去られるかもしれないってショックは相当深いみたいやね…」

穂乃果「よしよし海未ちゃん、絶対に勝とうね。穂乃果はずっと一緒だからね」ナデナデ

海未「穂乃果ぁ…」

ことり(海未ちゃん…穂乃果ちゃんの事はことりも同じ気持ちだけど、海未ちゃんの頭の中はたぶん、ちょっと変な妄想になってるんだろうなぁ。覗いてみたいなぁ…)



真姫「曲、作れるけど」

にこ「は?」

真姫「作れるって言ったのよ、あれぐらいの曲」クルクル

にこ「いやいや…素人の趣味レベルじゃお話にならないわよ?」

花陽「私と凛ちゃん、真姫ちゃんの作った曲を聴かせてもらったことがあるんだけど、とっても素敵な曲だったよ」

凛「うんうん!歌もピアノも上手だったし、すごく綺麗なメロディーだったにゃー!」

真姫「でっしょー?」フフン

にこ「うーん…地味な曲じゃダメよ?試合中なんだから盛り上がる曲じゃないと」

真姫「楽勝だって言ってるの。JPOPでもレトロでもメタルでも電波でも、どんな曲調だって作ってみせるんだから。この天才マッキーに全て任せなさい?」

穂乃果(真姫ちゃんクラシックとかジャズしか聴かないって言ってたのになぁ)



126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 18:54:46.67 ID:ceA/8Lf4o

【数日後】


♪シャカシャカシャカ


凛「うぅ~ん!いい曲だにゃ~!!」

真姫「デッショー?」

絵里「驚いたわね…まさか土日だけで一曲仕上げてくるなんて」

希「クオリティもめっちゃ高いしなぁ、真姫ちゃんってば一体どんな手品を使ったん?」

真姫「そんな難しい事はしてないわよ。趣味で作りためてたメロディーが何個かあったから、その中からノリがいいのを選んでプロに依頼して編曲をしてもらっただけ」

花陽「ええっ!プロにタノンジャッタノォ!?」

真姫「何よ、別に悪い事じゃないでしょ?プロの歌手たちだって編曲は専門の人に任せてるのがほとんどなのよ」

花陽「そ、そうじゃなくて…お金かかっちゃったんじゃ…?」

真姫「お金?ああ、何万かかかったみたいだけど気にしなくていいわよ。パパが出してくれたから」

海未「そんな!それでは真姫のお父様に申し訳ありません!」

真姫「いいのよ、うちのパパ無趣味で、お金を持て余してるから。可愛い娘の助けになれて嬉しかったんじゃないかしら」

海未「そ、そうなのですか…?」

穂乃果「いやー真姫ちゃんお姫様だねえ」

にこ「親バカね」



127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 18:57:18.17 ID:ceA/8Lf4o

真姫「あとは歌詞を付けて声を入れてミックスを依頼して完成だけど、誰か歌詞は書ける?私は無理よ」

花陽「歌詞かぁ、私もあんまり得意じゃないなぁ…。 んん、絵里ちゃんとかはどう?」

絵里「えっ私?ううん、正直、全然自信がないわ…」

希「いやー絵里ちには無理やろな」

凛「そうにゃそうにゃ。絵里ちゃんなんかに書かせたらきっと校歌みたいな歌詞になっちゃうよ」

希「もしくは生徒会のスピーチみたいなんになるのが目に見えてるよね。歌なのに、本日はお日柄も良く~で始まったりとか」

絵里「凛~!希~!そんなに言うならあなたたちが書いてみなさい!」

凛「り、凛は遠慮しておきます…」


希「pipipi!スピリチュアル宇宙との交信!上位次元にアセンションプリーズ!キミの心臓キャトルミューティレーション!こんな歌詞で良ければウチが書くけど?」

花陽「心臓抉ラレチャウノォ!?」


希「識れ!畏れよ!人類のカルマ浄化の日は近いのだ!光を!もっと光をぉ~!!」

凛「きょ、教祖さまぁ!」

穂乃果「希様を崇めよ!希様を崇めよ!」


真姫「う、胡散臭い!やめてよね!怪しい団体だと思われちゃうでしょ?!」

海未「希、教団を立ち上げるなら宗教法人の認可をきちんと取らなければいけませんよ」

希「おおう…ガチなアドバイス…」



128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 18:58:59.65 ID:ceA/8Lf4o

絵里「まったく…ええと、穂乃果とことりはあんまり向いてなさそうよね。残りは…」


にこ「しょうがないわね~!ここはぁ~ラブリーにこちゃんを褒め称えつつもスーパープリティーな歌詞をぉ~」


海未「ふむ、私で良ければ書いてきてみましょうか?」

にこ「ガン無視ぃ!?」


ことり「ことりも海未ちゃん が書くのに賛成!きっといい歌詞書いてくれるよ~」

希「へぇ、海未ちゃんってそういうの得意なん?」

海未「いえ、得意というわけではないのですが…」

ことり「うふふ、海未ちゃんはね?なんとポエマーさんなの!」

海未「そ、それは昔の話です…恥ずかしいので蒸し返さないでください」
穂乃果「と、言いつつも!海未ちゃんの鍵のかかった机の中には詩を書いたノートが何冊も何冊も!今もなお増え続けているんだよねっ!」


花陽「あっ、現在進行形なんだ…」

絵里「ふふっ、海未がポエム?可愛いところあるのね」


海未「穂乃果、何故あなたがそれを知っているのです…?」ワナワナ…

穂乃果「あっ…か、勝手に見たりしてないよ?海未ちゃんの部屋に行った時に 隙あらば針金でピッキングしたりしてないからね!」

海未「穂乃果ァ!折檻の時間です覚悟なさい!」

穂乃果「ちょ、海未ちゃんごめん!ごめんってば!竹刀はなしだよ!」

ことり「ふふっ、竹刀を振り回してる海未ちゃんも叩かれてる穂乃果ちゃんもか~わいいっ♪」

花陽(ことりちゃん性癖歪んでるなぁ)


真姫「二年組がコント始めちゃったけど、とりあえずポエマー海未に任せるって事でいいのかしら」

絵里「そうね、とりあえず一旦ポエマー海未に任せてみましょうか」

海未「そっ、そのポエマー海未というのはやめてください!」

にこ「ふん、にこにー音頭にすればミリオンセラーも夢じゃなかったのに!」

凛「まあネタとしては聞いてみたかったにゃ ~」

にこ「ケツバットかますわよ」

凛「ひいっ!」



129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 19:00:39.38 ID:ceA/8Lf4o

♯19


希「さてさて、曲についてなんとなくまとまったところで。天気もいいし、そろそろ今日からまともに練習再開してかないとやね。と、その前に…絵里ちから大事な話があるんやろ?」

穂乃果「大事な話?」


絵里「ええ…みんな、ちょっと聞いてくれるかしら」


凛「なになに?」

にこ「改まってどうしたのよ」

絵里「ここ一週間、雨であまり練習ができなかったせいもあるけれど、私たちは野球以外の話をする事が多かったわよね。そんな雰囲気で、全員が意識して避けてきた話題があるわ。何だかわかる?」

真姫「……それって」

花陽「あの約束の事、だよね」


絵里「…そう。負けたら穂乃果が転校させられてしまうという約束」


穂乃果「……」


絵里「穂乃果、生徒会長としてもう一度だけ確認しておくわ。夏の大会でUTXに負ける、もしくはUTXと当たる前に敗退した場合、綺羅ツバサとの約束通りにUTXへと転校する。そういう話よね」

穂乃果「いやぁ…あらためて聞くとメチャクチャな話だよね~」

ことり「穂乃果ちゃぁん…どうしてあんな約束を受けちゃったの…?」

穂乃果「場のノリと勢いで、ついつい…」

海未「はあ、これだから穂乃果は…所詮は子供同士の口約束ですし、反故にしてしまう事はできるはずですよ」

穂乃果「えっ、待って待って!約束は約束、ちゃんと守らなくちゃ!」

海未「ですが!」

絵里「ねえ穂乃果、変に律義になる事ないのよ?綺羅さんの言い分には一理もないんだから」



130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 19:06:38.04 ID:ceA/8Lf4o

穂乃果「う~ん…ねえ、みんなさ。ツバサさんの事を、どう思った?」


凛「怖い人だなー…って」

真姫「狂人。関わるだけ損なタイプ」

にこ「にこは…やっぱりファンだから、ノーコメント」


穂乃果「あはは…。穂乃果はね、かわいそう。って思ったんだ。助けてあげなくちゃ、って」

穂乃果「私は恵まれてたんだ。家族はみんな優しくて、覚えてないくらい子供の頃からずっと海未ちゃんとことりちゃんがそばにいてくれて、こうしてみんなとも大切な友達になれた」

穂乃果「ツバサさんはどうなんだろう。家族のことはわからないよ?うちみたいに優しい親なのかもしれないし、違うのかもしれない。たぶんだけど、英玲奈さんとあんじゅさんは大切な友達なんだとも思う」

穂乃果「だけど、ツバサさんの心の大事な部分は野球が占めてて、そして野球に関しては、家族や友達…誰にも助けてもらえないぐらいにツバサさんは凄すぎて、孤独なんだよ」

穂乃果「穂乃果がどれだけやれるかは全然わかんないけど、ツバサさんは私が同じぐらいやれるはずだって言って手を差し伸べてきた。それがまるで、助けて、って言ってるみたいに見えちゃったんだ」

穂乃果「英玲奈さんとあんじゅさんが言ってたよね、ツバサを負けさせてあげてほしいって。私もね、一度でも負ければツバサさんの心は解放されるはずだと思う」

穂乃果「だから、自分を賭けて、真剣勝負する。方法は間違ってるのかもしれないけど、穂乃果は頭悪いから、これぐらいしか思いつかなくって。ごめんね、みんなを巻き込んじゃって」

穂乃果「あれ?えっと…あはは、何言ってるんだか自分でよくわかんないや…」



131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 19:09:53.44 ID:ceA/8Lf4o

海未「ええ、要領を得ませんね」


穂乃果「だ、だよね~?あはは…」


ことり「だけど、穂乃果ちゃんの気持ちは伝わったよ」

海未「ええ。絶対に、私たちが貴女を負けさせません。綺羅ツバサが敗北で解放されるというのならば好し。苦杯を舐めさせてやりますよ」


穂乃果「海未ちゃんってば言い回しが固いよ~。えへへ、二人ともありがとう」


凛「穂乃果ちゃん!海未ちゃんとことりちゃんだけじゃないよ、凛たちだって穂乃果ちゃんがいなくなったら悲しいよ!出会ってからまだ長くないけど、そんなの関係ないぐらい大好きな友達になれたのに、お別れなんて絶対嫌だ!」

花陽「そうだよ…まだ一緒に遊びに行ったりご飯食べに行ったり、全然できてない!」

にこ「……転校なんてナシよ。野球部の発起人が一抜けなんて許されないんだから。アンタたちいい?UTXを蹴散らすわよ!」

真姫「それに、そもそもの目的の廃校阻止のためには全国優勝ぐらいしなきゃインパクトないわよ。だったらどうせ、UTXに勝つのは絶対条件じゃない。穂乃果が景品にされたぐらいで怖気付いてちゃ論外よ」

希「やっぱりあれやねぇ、元からUTXに喧嘩売ってた組のお二人さんは気合いが違うやん?」

にこ「ふん!いい加減開き直ったわよ!真姫ちゃん、UTXに目にモノ見せてやるわよ!」

真姫「望むところよ!」


穂乃果「よぅし、絶対!絶対勝とうね!みんな!」


全員『おー!!!!』



132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 19:15:02.67 ID:ceA/8Lf4o

にこ「気合いが入ったところで今後の練習方針を決めていくわよ!」

穂乃果「方針って、例えば?」

にこ「大会までに練習できる残り期間ってそこまで長くはないでしょ?うちみたいに経験の浅いチームが勝ちあがっていくためには、長所を伸ばして勢いでゴリ押し。これしかないわ」

花陽「確かに…基礎力の積み重ねではどうしたって長く練習してきたチームには劣るよね。だったら個人個人の長所で押し勝つのが正しい判断かも」

凛「個の力ってやつ?」

希「自分たちのサッカー?」

海未「野球です!」

穂乃果「急に打球が来たので…」

海未「試合中に打球から視線を切るなと言ったでしょう!たるんでいます!千本ノックです!」

穂乃果「鬼ぃ!」


絵里「……で、個人の強化って言ってもどうすればいいのかしら?」

にこ「簡単よ。チームを分けて練習するの」

ことり「チームを?どんな感じで?」

にこ「この前の試合の映像を何度も見返して、UTX一軍にそのまま通用しそうだったのは希、絵里、そして私の三人。これは自惚れじゃなくて客観的な意見よ」

海未「そうですね、やはり三年生は攻守に高いレベルでバランスが取れているなと感じました」

にこ「ま、海未とことりのバッテリーもいい線いってるんだけど、求められるレベルも高いから別枠ね。で、それを踏まえて!にこたち三年がそれぞれタイプ別に後輩を直接指導する練習を組み入れようってわけ」

希「ウチらで指導かぁ、上手く教えられるやろか」

にこ「やってもらわなきゃ困るのよ。希は穂乃果と真姫ちゃんを指導して、長打力を伸ばしてやって」

穂乃果「あ、いいねいいね!穂乃果も希ちゃんみたいにホームラン打ってみたかったんだ!」

真姫「にこちゃんったら、この私のアーチストセンスを見抜いて長打を期待してるってワケね。いいわ、やってやろうじゃない」

にこ「穂乃果、アンタ大口叩いてたけど全っ然まだまだ素人に毛が生えたようなもんよ。希にスラッガーのなんたるかを叩き込んでもらいなさい!
真姫ちゃんはまあ…いっそ振り回してもらって出会い頭の一発に期待した方がマシかなって」

希「なるほど、納得やん。それじゃ、穂乃果ちゃんと真姫ちゃんよろしくな?」

穂乃果「うん!よろしくお願いします希先生っ!」

真姫「いい?未完の大器こと、この真姫ちゃんを指導するからには責任をもって最強バッターに育て上げるのよ?」

希「あはは…善処するわ」



133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 19:16:37.19 ID:ceA/8Lf4o

にこ「で、絵里。花陽と凛を指導してあげて」

絵里「了解よ。二人には何を意識して教えればいいのかしら?」

にこ「ザックリ言えば巧打力ね。まず凛の課題はバットに当てる事。当たりさえすればその足でなんとかなるんだから、一番ミートの上手い絵里にコツを教えてもらうのよ」

凛「了解にゃ!絵里ちゃんチームで一番綺麗なバッティングしてるもんねー」

絵里「あら凛、褒めたって何にも出ないわよ?ふふっ」

にこ「花陽は凛とは逆。この前の試合と普段のデータを合わせて見て、ほとんど空振りをしてない。コンタクト率がチームでトップクラスなのよね」

花陽「うん…ヒット出てないし、地味な指標だけどね…」

にこ「何言ってんのよ。野球に詳しいアンタならコンタクト率の大切さは理解してるでしょ?あとは芯に当てるだけ。絵里に指導してもらうのね。守備もいいし、頼りにしてるわよ、花陽!」

花陽「にこちゃん…うん、わかった。よろしくお願いします、絵里ちゃん!」

絵里「ええ!よろしくね、花陽!」


にこ「さて、にこは海未とことり、アンタらバッテリー組を指導するわ」

海未「よろしくお願いします、にこ」

ことり「よろしくね、にこちゃん♪」

にこ「ん、よろしく。にこたちは他2チームとは別、実戦的な部分を強化していくつもりだから。特にことりのフィールディングには課題ありね。他にも牽制とかクイックモーションだとか、まあ諸々やってくわよ」

海未「可能であればことりの球種も増やしたいところですが…」

にこ「確かにね。オッケー、そこも一緒にやってみましょう」



134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 19:19:30.48 ID:ceA/8Lf4o

♯20


【チーム絵里】


絵里「さて、全員での総合練習を終えてグループ別に別れた訳だけど」

花陽「え、絵里ちゃん、なんでっ…?」

凛「なんで凛たち、トレーニング室の大鏡の前でバレエの服を着てるの~!?」

絵里「ふふふ、よくぞ聞いてくれたわねっ…今から二人にやってもらうのは…」


絵里「エリチカ式バレエレッスンよぉ!」ババッ!


花陽「バレリーナにナッチャウノォ!!?」

凛「なんでぇ!?凛たち野球の練習をしなきゃいけないのに~!」

絵里「あはは、安心して二人とも。何も野球に役立たない事をさせようって訳じゃないわ。この練習の意図はね……っと、言葉よりも実際にやってみた方が早いかもね」

絵里「ストレッチは十分したわよね…よしっ、それじゃ二人とも、今から私が取るポーズをよく見てね?よいしょっ…」

花陽「片足立ちになって…もう片方の脚を後ろに上げて…」

凛「手をすらりと伸ばして…おぉ~!」

花陽「すごい絵里ちゃん!素敵です!」

絵里「ふふ、ありがと。この姿勢、アラベスクって言うの。バレエの基本の一つなのよ。見た事あるでしょう?」

凛「うんうん!テレビとかで見た事あるバレリーナのポーズだにゃ~!」

絵里「それじゃあ、この姿勢を二人もやってみて?」

凛「えっ凛たちが?」

絵里「そうよー。ほら、片足で立って?手を伸ばして…はい!そのままキープ!」

花陽「わ、わわっ!」ドサッ

凛「ふ 、ふらつくにゃ~!」ズテン



135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 19:21:34.07 ID:ceA/8Lf4o

絵里「うーん、二人とも思った以上に保たないわね…」

花陽「これ、私には難しいよぉ絵里ちゃん…」

凛「凛も凛もー。走るのとか思いっきり動くのは好きだけど、こういうじいっとしてるのって苦手だよ!」

絵里「そうよね。そしてそこが、二人の強化ポイントってわけ。この意味がわかるかしら?」

凛「えーっ、かよちんお願い!」

花陽「うーんと、もしかして…体幹?」

絵里「ハラショー♪正解よ花陽。それプラス、柔軟性かな」

凛「体幹って何ー?」

花陽「体のバランス力、みたいなものかな」

絵里「私から見て、二人に共通してる弱点は体のブレだと思う。凛は静止時のブレのせいでボールへの目付けが悪くなってる 。花陽は動作時のブレでスイングが安定してなくて、そのせいでボールを芯で打ててない」

花陽「た、確かに…」

絵里「それを改善するために、私が教えてあげられる事は何かしら?そう考えたら、やっぱりバレエしかないなって。そう思ったのよ」

花陽「か、かしこい…」

凛「絵里ちゃん質問!バレエってそんなに体幹を鍛えられるの?」

絵里「ええ、それはもう!バレリーナは姿勢に筋を通して美しく立つのが基本なの。だから日常生活から常に背筋を伸ばしてバランスを意識するのよ。
そんなバレリーナのための練習メニューには、効率のいい体幹トレーニングが山ほど詰まってる、ってわけ。納得してもらえたかしら?」

凛・花陽「「なるほどー」」

絵里「あと、真姫にスポーツ医学的な面から練習メニューを確認してもらったわ。怪我のリスクも低いし理想的って真姫のお墨付き。さ、ビシバシしごいていくから覚悟してね?まずは徹底的にストレッチ!柔軟性を上げる事は全てにつながるわ!」

凛「ううっ、柔軟もバランスも嫌いにゃ~」

花陽「お、お手柔らかにお願いしますっ…」



136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 19:23:39.13 ID:ceA/8Lf4o

【チーム希】


希「さてとー、ウチらもグループ練習に取り組んでこっか。二人とも、頑張ろ!」

希・穂乃果「「おー!!」」

真姫「……? ぉ、おー!」

穂乃果「よしよし、真姫ちゃんは可愛いなぁ~」ナデナデ

希「そうやなぁ愛でたくなるわ~」ナデナデ

真姫「ナデナイデ!ほ、ほら二人とも、練習するわよ!」

穂乃果「早速だけど希ちゃんっ!ホームランの打ち方教えてくださいお願いしますっ!」

希「うおお、グイグイ来るなぁ穂乃果ちゃん」

穂乃果「だって羨ましいんだよ~!穂乃果も希ちゃんみたいにバシーッと遠くに飛ばしてゆーっくりダイヤモンドを一周したいよ!」

真姫「それは同感。グラウンド上をパーフェクトに支配できるあの時間、空間…この私にこそ相応しいと思わない?」

希(真姫ちゃんはブレへんなぁ…鋼メンタル。その辺、本人の言う未完の大器っぽさも確かにあるんよね)

希「よーし、それじゃ二人とも、ホームラン打つために筋トレと素振りな?」

穂乃果「うええ!?」
真姫「ヴぇえ!?」

希「え、どしたん?二人揃って驚いたりして」

穂乃果「い、いやー…希ちゃんに教えてもらう感じだったら、もっとガンガン打てるようになる謎のおまじない的なのとか?」

真姫「相手のピッチャーが腹痛をおこす呪文とか。そういうの期待してたんだけど」

希「いやいやいや、ウチ魔女とかじゃないからね?」

穂乃果「あはは…そうだよね~。でもでも!素振りと筋トレって穂乃果たちだって毎日やってるよ?」

希「そやなぁ。ウチの一日のトレーニングメニュー見てみる?はい、書き出したメモ」ペラ

穂乃果「ふむふむ…ほ、ほうほう。ええ、なにこれ!」

真姫「希、こんなのオーバーワーク一歩手前じゃない!影でこんな無茶してたわけ?」

希「組んでくれてるメニューを無視する形になっちゃってごめんな?でも、女子の筋力、体格でホームランが打ちたいならこんぐらいせんとね」

真姫「た、確かに正論かもしれないけど…」

希「ふふ、ホームランは一朝一夕にしてならず。一にも二にもスイングスピードの向上!素振りと筋トレで今より強くバットを振れるように!」



137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 19:25:19.48 ID:ceA/8Lf4o

希「二人のスイングスピードを上げるべきってのはにこっちとも相談して決めた事なんよ。穂乃果ちゃんは打席に入る時、ピッチャーが投げるボールを直球か変化球か、どのコースに来るか、予想しながら打ってる?」

穂乃果「え? 来た球をそのまま打ってるだけだよ」

真姫「そんなのでよく打てるわね…」

穂乃果「野球ってみんなそうじゃないの?」

希「うん、やっぱり穂乃果ちゃんは天才タイプやね。大ざっぱなスタイルに対応できるだけの動体視力と反応速度がある。スイングスピードを上げて、もっとボールを長く見る余裕ができればバッチリ安定するはず!」

穂乃果「ホームラン打てるかな!」

希「打てる打てる!少しだけ真芯をずらして打つとか、そういう細かいコツもあるんよ。その辺も教えてくからね」

真姫「……」クルクル

希「ふふ、心配せんでも、真姫ちゃんも打てるようにするからね?」

真姫「べっ!別に心配とかしてない!」

希「その調子その調子。真姫ちゃんは理想のスイングを追及してるってだけあって、フォームの形はいいんよね。ただし、振り遅れてる。ならスイングスピードを上げてくのが一番やん?」

真姫「ふぅん、ま…希の言う通りにしてあげてもいいけど」

穂乃果「よーし、目標!穂乃果たち三人でUTXからホームラン打とう!」

希「うん、ウチらで試合を決めよ!」

真姫「やってやろうじゃない!」



138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 19:27:04.11 ID:ceA/8Lf4o

【チームにこ】


にこ「ことり、しっかり汗を拭いときなさい?」

ことり「う、うん…」

にこ「海未、顔を洗った後はしっかり保湿よ?」

海未「はい…」

にこ「スキンケアが終わったら表情の練習よ。いい?にこに続けて…はい!にっこにっこにー!」

海未「に、にっこにっこn」
ことり「って、にこちゃ~ん、これ何の練習なの?」

海未「はっ!そ、そうですよ!これのどこが野球に関係あるのです!それに今は小休憩中とはいえ、まだ練習するのに清潔にしたところで…」

にこ「何よ、今の今までフィールディングの練習をみっちりさせてたから少し休息させてあげようって慈愛溢れる先輩心がわからないとは言わせないわよ?
それと、ピッチャーの顔は大事!練習の合間だって隙あらば洗顔とケアしておくこと!甲子園で斎藤祐樹が大人気だったのとか知らない?物心は付いてた年齢だしなんとなく覚えてるでしょ?」

ことり「し、知ってるけど…ことりはああいう持ち上げられ方はちょっと嫌かな…」

にこ「けど、あの応援に背中を押されて優勝したのも事実よ。まあ高校時代の斎藤は実力もちゃんとあったんだけどね。
まっ、うちの場合はにこがセンターで可愛さをバッチリ担当しておいてあげるけどぉ?あんたたちもせめて肌のケアぐらいはしときなさいよ」

海未「はぁ、にこは計算高いのですね…」

ことり「了解っ♪ スキンケア頑張りまぁす」

にこ「よろしい。じゃ、ぼちぼち変化球の開発でもしてみようかしらね。にこのコレクションしてる野球資料から役に立ちそうな部分をコピーしてきたから」

海未「おや、意外と少ないのですね」

にこ「アンダースローの実践的な指導書みたいなのってあんまり多くないのよね。正直、参考になるかはわかんないわ」



139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 19:28:19.02 ID:ceA/8Lf4o

海未「なるほど…確かに書店などにあるプロ選手の変化球バイブルなども上手投げ投手の著書がほとんどですね」

にこ「ついでに男子と女子が手の大きさも身体の構造も違う。難しいとこよねー」

ことり「そうなんだね。うーん、今投げられるのはストレートとカーブとシンカー(ことりボール)。他に覚えるとしたらどんな球かな?」

にこ「ま、ベタなのはスライダーよね。アンダーのスライダーは特殊な回転をするらしいから、上手く習得できれば武器になるかも」

海未「UTXが使っていたツーシーム、あれはアンダーには合わないのでしょうか?」

にこ「投げられない事はないと思うけど、オススメしないわ。ツーシームってね、本来はあんまり高校野球で使われてないの。芯を外したところで金属バットじゃそこまで打球の勢いを殺せないから」

ことり「えっ、じゃあどうしてUTXは使っているの?」

にこ「まあ、女子野球だから男子よりは打球が弱いってのが一つ。そして決定的なのは英玲奈の先読み守備。あれがあるからこそ、少し打球を弱められるだけで十分なのよ」

海未「ははぁ…、なるほど。では導入は無理ですね、私に彼女の真似ができるとも思えませんし」

にこ「気にしない事ね。あんなの誰も真似できないわよ…。ま、変化球に関しては頭で考えるよりは実践よね。色々やってみましょ」

ことり「オリジナルの球を開発するぐらいのつもりでやった方が良さそうかなぁ」

海未「時間は短いですが、焦らずに挑戦してみましょうか」

ことり「うん、頑張りますっ。私たちで穂乃果ちゃんを守るんだから」

海未「ええ、もちろんです!誰もが目を見張る魔球を生み出してやりましょう!」



140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 19:29:39.24 ID:ceA/8Lf4o

♯21


【更衣室前】


花陽「はぁ…疲れたなぁ。ふくらはぎとかパンパンだよぉ」

凛「グループ練習始めてそろそろ一週間経つけど慣れないなあ…っていうか絵里ちゃん、バレエ練習だとやたらと厳しいにゃー」

希「お、花陽ちゃん凛ちゃんお疲れー。どう?絵里ちのシゴキはキツいやろ~」

凛「超キツいよー!絵里ちゃんなんかやたらとキリッとしてるし変にかしこそうだし!」

花陽「だねぇ…あ、でも絵里ちゃんのバレリーナ姿、とってもキレイで憧れちゃうなぁ」

希「ふふ、そうやろー?ウチもあの絵里ちはぜひぜひみんなに見て欲しかったんよね」

凛「うんうん、凛もそれは思うな!…けどスパルタにゃ~!希ち ゃんに練習見てもらった方が楽だったかもなあ」

希「ん~、それはどうやろなぁ~?」


ズズ…ズズ…


凛「にゃ?何の音?」

花陽「な、なんだろ?何か…生き物が這いずるみたいな…」


『ゥウ……ゥ゛ェ゛ェアア……』


凛「う、呻き声がするよ?」

花陽「そこの…物陰から…!」


『りぃん…!!はぁなよぉ…!!』(背後から足首ガシィッ!!)


凛「にゃああぁああ!!?!!?」
花陽「ピャアアアアァア!?!?!!」



141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 19:31:04.95 ID:ceA/8Lf4o

花陽「…って、真姫ちゃん?廊下にうつ伏せは服が汚れちゃうよ?」

真姫「う゛ぇ、う゛ぇえぇぇ……筋肉痛なのよ……」

凛「あ、そっちの物陰からは穂乃果ちゃんが這い出してきたよ」

穂乃果「も、もう穂乃果は…ふぁいと…できません…っ」ズリ…ズリ…

花陽「ふ、二人とも…大丈夫?」

穂乃果「全身がビキビキ…は、花陽ちゃん…穂乃果の手を握って…」

花陽「こ、こう?」にぎっ

穂乃果「ああ…花陽ちゃんに触れるとなんかこうヒーリング効果がある気がするぅ~…」にぎにぎ

凛「わかるにゃ~」

花陽「そ、そうかなぁ…」

希「ふっふ…今日から高負荷のトレー ニングに切り替えてみたけど、穂乃果ちゃんと真姫ちゃんにはまだちょっときつかったかな?」

穂乃果「の、希ちゃんの…鬼教官っ…!」

真姫「同じメニューを一緒にこなして平然と…化け物よ…!」

花陽「うわぁ、二人ともグロッキーだ…」

希「ま、怪我はしないラインやから平気平気!こんな感じでウチらは『希'sブートキャンプ』してるけど…」

花陽「新兵訓練ナノォ!?」

希「凛ちゃんはウチと練習したかったんやっけ?体験入隊は随時受付中やけどなぁ~?」

凛「り、凛は絵里ちゃんと練習するよ!バレエ楽しいな!エトワール目指しちゃいます!」

希「そっか、残念やなぁ?さーて、自力で動けなさそうな二人にシャワー浴びせてあげんとね。つ・い・で・ にぃ…生ワシワシを堪能しちゃうぞ~♪」

穂乃果「ああ逃れられない!」

真姫「う゛ぇえぇぇえぇ…!」



142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 19:32:23.73 ID:ceA/8Lf4o

凛「うわぁ…二人を軽々抱えてシャワー室に去っていったよ…」

花陽「ドナドナされて行っちゃったねぇ…あ、入れ替わりで海未ちゃんがシャワー室から出てきたよ」

海未「おや、二人とも。お疲れ様です」

凛「海未ちゃん~!お風呂上がりのいい匂いがするにゃ~!」ヒシッ

海未「おっと!凛、急に抱きついてきては危ないですよ?」ナデナデ

花陽「ふふふ、凛ちゃんったら。でも、私もちょっと抱きついちゃおうかな?」ぎゅっ

海未「花陽も…まったく、二人は可愛いですね。ふふ」ナデナデ

海未「ところで花陽、明日の土曜ですが、練習を休んで私に付き合ってもらえませんか?」

花陽「明日?うん、いいよ。でも何するの?」

海未「街に出ます。場合によってはお店などに入るかもしれません」

凛「えー!デート!?いくら海未ちゃんでもかよちんに手を出したら許さないにゃー!」

海未「で、デート!?そんな破廉恥なつもりではありません!」

凛「ホントにー?でもデートじゃなくても練習お休みで街に出るとか羨ましい!凛も行きたいにゃー」

海未「もう、遊びに行くのではないのですよ。捕手としての仕事、敵情視察です。私だけでは知識面でおぼつかない事もあるので、花陽についてきてもらえると心強いのですが…」

花陽「敵情視察かぁ、楽しそう!」

凛「あー、そういうやつなら凛はパスにゃー」

花陽「凛ちゃんはデータ集めとか苦手だもんねえ。でも海未ちゃん、私よりもにこちゃんが頼りになるんじゃ?」

海未「にこは練習のまとめ役でもありますし、こちらに残ってもらった方が助かります。それと、私はにこと同じくらい花陽の事も頼りにしていますよ」

花陽「え、えへへ…それじゃあ、私で良ければ一緒にお手伝いしますっ」

海未「ありがとうございます、花陽。では明日の予定は後でLINEしておきますね」



143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 19:34:41.19 ID:ceA/8Lf4o

♯22


【街中】


花陽「今日は練習をお休みして海未ちゃんと敵情視察!待ち合わせをして街に出てきたんだけど…なんで私たち帽子マスクにグラサンで物陰に隠れてるのぉモゴモガッ!?」

海未「シッ!静かに花陽!気取られてしまいますよ!」

花陽「モガガ…」

海未「現在時刻は午前11時過ぎ…情報ではそろそろ通りがかるはずです…」

花陽「…グ…。イギ…ガ…!デギナ゛イ゛ヨ゛ォ゛…!」ジタバタ

海未「え、なんですか花陽…って、ああ!ごめんなさい!口を塞いだままでしたね!」

花陽「ぶはぁっ!!ぜぇ、はぁ…はぁ…海未ちゃん…窒息するかと…」

海未「すみません…大丈夫ですか…? っと!隠れて!」

花陽「えっ?」


ブロロロ…キッ


 バタン


海未(来ました、ターゲットです)ヒソヒソ

花陽(あれは…ツバサさんたち!)ヒソヒソ



144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 19:35:41.51 ID:ceA/8Lf4o

ツバサ「英玲奈、あんじゅ、ほらほら遊ぶわよ。完全オフなんて久々なんだからー」

あんじゅ「あ、待ってツバサ…スカートの裾がめくれてるわ」

英玲奈「ツバサ、ほんの近距離を移動するのにUTXのリムジンを使うのはどうかと思うぞ」

ツバサ「あんじゅは細かい。英玲奈は説教が多い。もっと肩の力抜かなきゃダメよ?あ!アイス食べようアイス!」ダッ!

英玲奈「待てツバサ!財布を落としたぞ!?」タタッ

あんじゅ「走るとコケるわよ~」トットッ



海未「あっ、行ってしまいます!追わなくては!」

花陽「え、ええと!海未ちゃん、敵情視察って…」

海未「ええ、あの三人の休日の観察です。彼女らが今日オフになる事、オフの日は概ねこの界隈に遊びに出てくる事、どちらもヒフミたちが一晩で調べてくれました」

花陽「ツバサさん、あんじゅさん、英玲奈さんの三人の休日をスネーク…!これは、すごくいけない事をしているキ・ブ・ン…!」

海未「相手を抑えるためには野球のデータだけでなく、その人となりを知る事も重要。ですよね?花陽」

花陽「そ、そうだよね…プライバシーの侵害とか、そんなの関係ないよねっ!」

海未「その意気です!さあ追いますよ!ストーキング開始です!」

花陽「おー!」



~~~~~



花陽「あ 、サーティワンに入ったね。今日暑いもんね」

海未「ふむ、甘党なのでしょうか。ともかく店の入り口ギリギリに近付いて会話を聞いてみましょう」



145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 19:37:53.67 ID:ceA/8Lf4o

ツバサ「ふーんフフーン……あ、マスクメロンおいしい。サーティーワンは注文前に試食させてくれるのが偉いわよねー」

英玲奈「おい、早く選ばないと。他のお客さんが来て邪魔になるかもしれないぞ」

ツバサ「まだ誰もいないじゃない。店員さん、大納言あずきも味見させて?」

あんじゅ「ねえツバサ、いくらなんでも味見10種類目はどうかと思うの」

ツバサ「えー、でも何種類までって制限が書いてないし」

店員「あはは…大丈夫ですよー」

ツバサ「ほら、店員のお姉さんもこう言ってるじゃない。んー!あずきもおいしいわ!褒めてつかわす!」

英玲奈「何様だ」ペシッ



海未「なかなかの傍若無人ぶりですね。肝が据わっていると言うか、あつかましいと言うか…」

花陽「アイスいいなぁ…おいしそ…」

海未「花陽?しっかり観察してください、アイスなら後で買ってあげますから。あ、やっと注文を終えたみたいです。私たちも店内の目立たない位置へ行きましょう」

花陽「アイス…」



ツバサ「結局二人は何頼んだの?」

英玲奈「私はチョコミントとジャモカコーヒーだ」

あんじゅ「ベリーベリーストロベリーとラムレーズンよ。ツバサはトリプルにしたのね」

ツバサ「ポッピングシャワーとバニラとロッキーロード。私はいつもこれって決めてるの」

英玲奈「あれだけ試食しておいてトリプルか…よく食べられるな」

ツバサ「余裕余裕。英玲奈のコーヒーのやつ味見していい?」ガブッ

英玲奈「あ、こら!返事をする前にかじるんじゃない!ああ、一口が大きすぎる…」

ツバサ「ま、コーヒーも悪くないかな」

あんじゅ「ツバサ、口の周りベチョベチョよ」フキフキ



海未「むむ…あの三人、先日見た印象よりも…」

花陽「うん、仲いいねえ」アイスペロペロ

海未「花陽、それ何味ですか?」

花陽「クッキー&クリームだよ。食べる?」

海未「ええ、私の抹茶もどうぞ。あ、綺羅ツバサの様子が変ですよ?」



146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 19:39:50.47 ID:ceA/8Lf4o

ツバサ「………」

あんじゅ「ツバサ?いきなり静かになってどうしたのか しら?」

ツバサ「……お腹が痛いわ」

あんじゅ「あ~、お腹。やっぱり…」

英玲奈「ハァ…。ツバサ、お前はお腹を壊しやすいのに、冷たい物を大量に食べたらどうなるかくらいわかるだろ?」

ツバサ「だって…食べたかったから…」

あんじゅ「可哀想に、お腹が冷えたのね。さすって温めてあげるわね」サスサス

ツバサ「サンキューあんじゅ…あー手があったかい…」

英玲奈「ほら、店員さんにお水をもらってきたぞ。整腸剤あるから飲め」

ツバサ「さすが英玲奈、準備がいいわね…ベリーグッドよ」グッ

英玲奈「お前の腹下しはいつもだからな」

あんじゅ「いつもよねぇ…」

ツバサ「うるさい…あ、薬効いてきたかも…」

英玲奈(え?早くないか?)ヒソヒソ

あんじゅ(プラシーボ効果かしらね…ツバサ、単純だから)ヒソヒソ

ツバサ「ちょっと一回トイレ行ってくるわね…」

英玲奈「ハンカチあるか?」

ツバサ「ないわ」

英玲奈「ほら、これ持ってけ」

あんじゅ「ちゃんと手は洗うのよ~?」

ツバサ「ん、わかった」



海未「ほほう…弱点発見ですね。綺羅ツバサは腹が弱い」メモメモ

花陽「う~ん、抹茶も美味しい…流石はアイス専門店、そこらのコンビニで売ってる抹茶味とは一味違います。程よく抑えられた甘み、口の中にふんわりと広がる香り立つ抹茶のフレーバー。
すぅ…っと溶けていく滑らかな口当たり。なによりの違いは口どけの後、雑味が舌に残らないこと。原材料にこだわりを持っていることを窺わせて…」

海未「花陽…?その食レポは一体誰向けなのです」

花陽「あっ、ツバサさんがお腹壊しやすいって話だったよね。試合の前日に匿名でアイスをたくさん差し入れたら体調壊してくれたりして…」

海未「な、なるほど。スポーツマンシップの欠片もありませんがしかし、今度ばかりは手段を選んではいられないのも事実。穂乃果を守るためなら私は修羅にでも悪鬼にでも…」

花陽「う、海未ちゃん?冗談、冗談だよ?あとUTXってオフの日以外は食生活を完全管理してるから差し入れ作戦は難しいかも…」

海未「え、あ!そうですよね!というか私も冗談ですよ?冗談…あははは」



147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 19:41:07.11 ID:ceA/8Lf4o

英玲奈「なぁあんじゅ、ツバサは大丈夫だろうか?その辺のドラッグストアに薬を買いに行っておいた方がいいだろうか?」

あんじゅ「ん~、お腹が冷えただけで病気ってわけじゃないし、大丈夫じゃないかしら?」

英玲奈「む…しかしアイツの事だ、もしかしたら病気で、もっと重篤な症状が出ているのに気が付いてないなんて事も…」

あんじゅ「くすくす、英玲奈は心配性ね~。それくらいツバサが大好きなのよね?」

英玲奈「別に、否定はしないさ」

あんじゅ「私もよ~。さっきのテイスティングで粘りまくるツバサなんて子供みたいで、すっごく可愛かったと思わない?」

英玲奈「可愛いかもしれんが、あれは店員さんが迷惑だろう。まったく気疲れさせてくれる…」

あんじゅ「あ、チョコミント味見してもいいかしら?」

英玲奈「ああ、どうぞ。私もラムレーズン一口もらっていいか?」

あんじゅ「ラムレーズンね。はい、あーん」

英玲奈「あむ…ん、美味いな…」



花陽「ハイ頂きました!あんじゅさんと英玲奈さんの食べさせあいっこ!ふわあああ…!眼・福・ですっ…!」

海未「なるほど、サーティワンにはこういう利点が…私も今度、穂乃果とことりと一緒に来店して二人と食べさせあいを…」

花陽「至福の光景…素敵すぎます!にこちゃんにも見せてあげたかったなぁ…!スマホの無音カメラで撮影しとかなきゃ…」

海未「ではなく!観察、観察です。統堂英玲奈と優木あんじゅ、二人になると綺羅ツバサの話ばかりしていますね」

花陽「うん、だよね。二人とツバサさんってもっとピリピリした関係なのかと思ってたけど、全然そんな感じじゃないね」

海未「むしろあの二人、まるで保護者のような…。ふーむ、友人二人がべったり世話を焼いているからこそ、綺羅ツバサはあのように無軌道な行動を取れるのかもしれませんね…」

花陽(それって穂乃果ちゃん、海未ちゃん、ことりちゃんの関係と似てるような気もするなぁ)



148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 19:43:19.45 ID:ceA/8Lf4o

ツバサ「大復活!!」ババン!

あんじゅ「もうお腹は痛くない?」

ツバサ「大丈夫よ!二人とも、そろそろ次のお店行きましょう!」

英玲奈「わ、急に引っ張るな!」グイグイ

あんじゅ「あら、危ないわよ~?」グイグイ



花陽「わ、ツバサさんがいきなり二人の手を引いてお店を出ちゃったよぉ!?」

海未「トイレから戻ってきたと思えば、まるで嵐のような方ですね!追いますよ、花陽!」

花陽「うんっ!あ、ツバサさんたちの座ってた椅子も直しておこう…」ガタガタ

海未「あ、偉いですね花陽。私も手伝います……よし、行きましょう!」



~~~~~


花陽「そろそろ日が暮れてきたねえ」

海未「ウィンドウショッピング、ボウリング、映画にゲームセンター。あの三人、随分と遊び歩いたものです」

花陽「貴重なオフだって言ってたもんね。あの映画気になってたからストーキングついでに見られて良かったなぁ。面白かったよねっ」

海未「うう…花陽、あのような破廉恥な映画をよく見られますね…」

花陽「あ、そういえば海未ちゃん途中からずっと顔を伏せてたよね。恋愛描写もあったけど、破廉恥ってほどじゃなかったけどな…」

海未「浜辺でなにやら抱き合ったりしていたではないですか…十二分に破廉恥です。ちなみに映画の間の綺羅ツバサたちの様子はどうでしたか?」

花陽「うん、英玲奈さんは無表情だったけどBGMに合わせて指でリズムを取ってたから楽しんでたんだと思う。あんじゅさんは見るからに楽しそうだったなぁ、終わった後にパンフレットとかも買ってたし。
ツバサさんは開始15分でポップコーンを食べ終えて、後はすやすや寝てたよ」



149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 19:44:33.66 ID:ceA/8Lf4o

海未「まるで穂乃果です…」

花陽「ふふ、凛ちゃんも映画によってはそんな感じだなぁ。あ、リムジンが来たみたい」

海未「先程も見ましたが、オフにリムジンで送迎とは…UTXはすごいですね」

花陽「だねぇ…。三人とも乗ったね、これで休日おしまいかな」

海未「そのようですね。はっきりとした収穫はありませんが、彼女たちの性格はなんとなく掴めたような気がします。花陽、ありがとうございました」

花陽「えへへ、少しでもお役に立てたかな?ツバサさんたちを追いかけてだったけど、海未ちゃんと色々回れて楽しかったな」

海未「ええ、私もですよ。また近々、敵情視察など関係なしに遊びに行きましょう!」

花陽「はいっ♪」

海未「さてさて、可愛い後輩に夕食まで奢ってあげるとしましょうか。GOHAN-YAで食事などいかがです?」

花陽「わあぁ!! いいの!?黒酢酢豚定食!ナス味噌炒め定食!ミックスフライもいいなぁ!ふんわり卵焼きと納豆とポテトサラダもつけていいかなぁ?!」

海未「ふふ、凛には内緒ですよ?凛にも奢ってー!と言われてしまっては私のお財布がピンチですからね」

花陽「えへへ、うっかり口を滑らせちゃうかも?」

海未「こら、花陽!」

花陽「あははは!」



ツバサ「フフッ、なら私も奢ってほしいなぁ~。園田海未さん?」



150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 19:50:51.14 ID:ceA/8Lf4o

海未「もう、ダメだと言って………なっ!!?」

花陽「え、えええっ!?!!!なんで…!?」


ツバサ「はぁい、元気?」ヒラヒラ


海未「綺羅…ツバサっ!」

ツバサ「そう睨まないでほしいわね?同じ休日を共有した仲じゃない」

花陽 「っ…!き、気付いていたんですか?」

ツバサ「ええ、結構最初の方から。あなたたち音ノ木坂のメンバーは、顔と名前を全員覚えてるの。私にしては珍しくね。だから、近付けば大体気配でわかるのよ、小泉さん」

花陽「わぁ!ツ、ツバサさんに名前を覚えてもらえた…!感・激っ…!じゃなくて…け、気配って、そんな…」

ツバサ「英玲奈とあんじゅは気付いてなかったけどね。だから適当に理由つけて私だけリムジン降りてきたの」

海未「なるほど。それで?私たちに何か御用ですか?」

ツバサ「警戒心MAX、それはそうよね園田さん、貴女にしてみれば私は恋仇みたいな存在だものね?」

海未「こ、恋…!?私は親友を奪われたくないだけです!」

ツバサ「ま、なんでもいいけどね。ねえ園田さん、私の球を受けてみない?」

海未「えっ?」

ツバサ「ミットは用意してある。もし、その気があるならそこの公園で、一球だけ私のストレートを見せてあげる」

花陽「あ、あの…それって、ツバサさんに何のメリットもないんじゃ…?海未ちゃんと私しかいないけど、それでも一応、戦う前に直接ボールを見せちゃう事になるわけで…」

海未(花陽の言う通り、綺羅ツバサにはメリットがない。一体何を考えて?まさかキャッチボールにかこつけて私に怪我をさせるつもりでもないでしょうし…)

ツバサ「別にただの気まぐれよ。今日一日追いかけてきてわかったんじゃない?私は深く考えて行動するタイプじゃないの」

花陽「た、確かに…」

海未(試合前に綺羅ツバサのストレートを見られる…?この上ない幸運!)



151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 19:52:21.55 ID:ceA/8Lf4o

ツバサ「やるの?やらないの?ミットさえまともに構えててくれれば怪我はさせない。怖がって目を瞑ったりすればその限りじゃないけど」

海未「受けましょう。断る理由などありません」

花陽「う、海未ちゃん、大丈夫…? 」

海未「絶好の機会、逃す手はありません。ふふっ、心配しないでください花陽。たかがストレート、来るとわかっていて取れない物ではありませんよ」

ツバサ「それは上等ね。はいミット。そっち、壁の前に座って。そう、そこ」

海未「……私の準備はいいですよ」

ツバサ「それじゃ、行くわね」



ツバサ「……」ザッ



海未(構えに入った瞬間……空気が変わった)


花陽(ゆったりとしたワインドアップ…ツバサさんの小柄な身体がすごく大きく見える!)


海未(さあ、見極めてみせます…貴女のボールを。流れるような体重移動からの豪快なオーバースロー…来るっ!)



ツバサ「フッ!」ビシュッ!



海未(え、リリースポイントが見えな……速…いっ!!)



          バチィッ!!!!



花陽「うっ、海未ちゃあんっ!!」



152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 19:53:24.96 ID:ceA/8Lf4o

海未「……う、…あ」


ツバサ「………。あーあ、目をつぶってボールを弾いちゃったか。つまらないわね」


海未「ああ……ああああ!!!」ガチガチ


ツバサ「園田は生まれて初めて心の底から震え上がった…真の恐怖と決定的な挫折に…恐ろしさと絶望に涙すら流した…これも初めてのことだった…」


海未(勝手におかしなナレーションを入れられているのに…身体が竦み上がって声が出ません…!)ガタガタ

海未(……見えなかった…!球の出所がわからなくて…気付いたら球が目の前に…!怖い…!?怖いっ…!)


花陽「海未ちゃんっ、大丈夫っ!?大丈夫!?」

ツバサ「あーあ、落胆したわ園田さん。穂乃果さんの親友みたいだし、小指の先くらいは期待してたんだけど。言っておくけど今の球、全力では投げてないから」

海未「う…あぁ…」

ツバサ「今の捕り方だと突き指してるかもしれない。小泉さん、指を冷やしてあげておいて」

花陽「はっ、はいっ!」

ツバサ「それじゃ、さようなら。次に会うのは試合かしら。その体たらくで勝ち上がれるのかは疑問だけどね?」

海未「………っ…」

海未(完敗…完膚なきまでに…っ!)



153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 19:54:15.96 ID:ceA/8Lf4o

♯23


【本屋】


穂乃果「練習終わりに希ちゃん凛ちゃんと本屋に寄ったはいいけど、いやー散財…一気に4冊も漫画買っちゃったよ~」

凛「新刊がまとめて出てたもんねー。今度凛にも読ませてね!」

希「ウチもウチも。それの続き気になってたんよね」

穂乃果「いいよー、読み終わったら二人にも貸すねっ!」

凛「希ちゃんもなんか雑誌買ってたよね、何の本ー?」

希「ウチはこれ、月刊ムー」

穂乃果「むー?なにそれ?」

希「ふふふ、最高にオカルトでスピリチュアルでクールなスーパーミステリーマガジンやで。読んでみる?」

穂乃果「いいの?どれどれ…地球膨張重力増大…江戸のUFO『虚舟事件』の謎…幻の竜宮城…禁断のボイド時間… 魂活…。 おおう、オカルティック…」

希「今月の付録は【金運・財運を招き、願望を成就させる禁断の最奥義!『奇門遁甲造作法』富本銭型マグネット】二人とも、欲しければ今が買いや!」

凛「ぜっ、全力で胡散臭えにゃー!!」

穂乃果「さ、さすがは希ちゃん…穂乃果にはハイレベルすぎるよ…」

希「ふふ、読みたかったらいつでもバックナンバー貸したげるよ~?」

凛「スピリチュアルとかオカルトも奥が深いんだにゃー…」

希「そうなのだよ凛ちゃん。さてさて、スピリチュアルな話をしてたらちょうど神田明神の近くやし、軽くお参りでもしてかん?」

穂乃果「うん!大会、勝てるようにお祈りしとかなきゃね!」

凛「行くにゃ行くにゃー!」



154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 19:54:59.37 ID:ceA/8Lf4o

【神田明神】


穂乃果「平日の夕方だとさすがに人も少ないねー」

希「ふふ、静かにお参りできていいね。さ、お賽銭入れよか」

凛「希ちゃん希ちゃん」

希「ん、どうしたん?」

凛「凛、いつも思うんだけど…神様のところってたくさんの人がお祈りに来るでしょ?来た人たち全員のお願いを聞くのはいくらなんでも無理だよね。その辺、どうなってるのかなーって」

穂乃果「あ、確かに…受験の時、わざわざ遠くの学問の神様にお参りしに行ったのに落ちた~って文句言ってる子もいたなぁ」

凛「だよね、受験の時なんてほとんどの人がお参りに行くのに、落ちる人はいっぱいいるんだもんね」

希「ん~そうやねえ…」

希「ウチの考えやけど、実際んとこ、神様って別にお願いを叶えてくれるわけじゃないと思うんよ」

穂乃果「ええっ!そうなの?」

凛「お賽銭詐欺にゃー!?」

希「あはは、ウチのなんとなーくの考えやから真に受けたらあかんよ?」

凛「じゃあじゃあ、なんで希ちゃんは熱心に神様にお祈りしたりするの?」

希「うーん、そうやなあ。ウチにとってのスピリチュアルっていうのは自分を信じてあげるためのおまじないみたいなものなんよ」

凛「おまじない?」



155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 19:56:42.75 ID:ceA/8Lf4o

希「そう。誰でも自信をなくして、自分の力を信じられなくなるような時ってあるやろ?そんな時に、『あの時お参りをしたから神様が守ってくれる』って、そう思えたらちょっぴり気が楽やん?」

凛「気が楽…えー、それだけ?」

希「ご利益っていうのは神様が直接スーパーパワーで助けてくれるってよりも、ほんのちょびっとだけ自信をプラスしてくれるようなイメージやね」

穂乃果「自信を持たせてくれる…かぁ」

希「努力以外でできる事、ってとこかなぁ。それってすごく曖昧なものやけど、試す価値はある。そう思うんよ」

凛「難しい…けど、なんとなくわかるにゃー。お祈りしといて損はない!って事だよね?」

希「うんうん!せっかくお祈りするなら全力でお祈りしとこうって話やね!」

凛「よーし!神様!凛たち頑張ります!」

穂乃果「穂乃果も!神様、私はツバサさんを打ちます。打って、みんなと勝ちます!見ててください!」


希(……なーんて言いつつ、神様に愛されてるような子も世の中にはいるんやけどね?)


穂乃果「南無っ!南無ぅー!」

凛「穂乃果ちゃんそれ宗教違うにゃー」


希(穂乃果ちゃん…統堂さんの守備を破ったあの一打…。この子に憑いてる運はウチのちょっとしたラッキーとはまた違う。天に愛されてる子、そんな感じがするんよ。こういうのって、主人公属性とか言うんかな?)

希(けど、綺羅ツバサちゃん。あの子からも同じ、天運を感じる。同じ主人公属性同士なら、穂乃果ちゃんでも勝てるかはわからない。それなら手助けになってあげたい…)

希(だから神様お願いです。みんなの力になれるよう、私を見守っていてください…もう二度と、この前みたいな無様は晒さない…!)


~~~~~



156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 19:58:31.21 ID:ceA/8Lf4o

穂乃果「さてっ。買い物もしたし、お祈りもしたし、そろそろ帰ろっか!」

凛「お腹減ったよー!帰るにゃー!」

希「暗くなり始めてるしね、二人とも気をつけて帰るんよ~」

穂乃果「はーい!」
凛「はーい!」


希(絵里ちは、そろそろあの人らと会ってる時間かな…?)

ペラッ

希(カードのお告げは『正義』の正位置。決して悪いカードじゃないけど…なんだか胸騒ぎがする。おかしな事にならないといいんだけど…)


凛「あ、そうだ希ちゃん。今日の練習中に絵里ちゃんがなんだか暗かったんだけど…なんでかな?」

希「えっ!?あー、ウチは知らんなぁー?(本当は知っとるけど教えるわけには…)」

穂乃果「希ちゃん…?な~んか怪しいような…」

希「全然!全然何も知らんよ!穂乃果ちゃん考えすぎやって~」

穂乃果「ん~?そっかぁ」

凛「希ちゃんでもわかんないかぁ。うーん」

穂乃果「そういえばだけど、穂乃果が話しかけた時もなんだか上の空だったなあ。体調悪かったとか…」

凛「あ、プリンセスの日だったのかな?」

希「そ、その言い方はなんか生々しいなぁ…ええと、たぶん違うんやないかな?」

凛「心配だなぁ。練習中にあんなに落ち着かない絵里ちゃん始めて見たから。誰かと連絡を取ってたみたいだったけど…」

穂乃果「うーん…何かあったなら励ましたいよねえ。やっぱり、絵里ちゃんを元気付けてあげられるのって希ちゃんだと思うな!」

凛「凛もそう思う!希ちゃんがギュッと抱きしめてキスでもすれば一発だよ!」

希「んー、そうや なぁ、キスでも~……って、待ちたまえ!百合は軍務規定違反だぞ凛二等兵!」

凛「にゃにゃ!?」



157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 19:59:24.35 ID:ceA/8Lf4o

希「元気づけるために女の子同士でキスというその発想、まさに百合厨!風紀の乱れ、ひいてはサークルクラッシュを引き起こしかねない!」

穂乃果「な、なんだってー!?」

凛「の、希隊長っ!?凛はそんなつもりじゃ」

希「言い訳無用、軍法会議にかけさせてもらおう!穂乃果一等兵、彼女を拘束したまえ!」

穂乃果「イエスマム!」ガシッ

凛「ちょ、穂乃果ちゃ!ひえっ…なんかすっごいマッチョになってないかにゃ!?」

穂乃果「希'sブートキャンプの成果だよっ!」

凛「と、とにかく異議を申し立てるにゃー!凛は百合じゃないよ!」

希「百合じゃないよ!だとぉ~?罪深い……罪深いぞ!どの口がほざいておるのかね!君は花陽ちゃんのバッティンググローブを新品とすり替えて持ち帰り、枕の下に敷いて寝ていたそうじゃあないか!」

凛「え、それの何が悪いの?かよちんの手汗の匂いに包まれて毎晩ぐっすり快眠にゃー」

穂乃果「oh…」

希「ヒエ~ッ!とんだナチュラルボーンガチレズモンスターが隠れとったもんやね!どうやら修正が必要なようだ!ワシワシの刑に処s」

凛「異議ありにゃ!」
\バシィ!/



158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 20:00:24.87 ID:ceA/8Lf4o

穂乃果「何ィ?悪あがきは良くないぞ凛二等兵!」

凛「だって絵里ちゃんだって言ってたよ!『希とキス…?アリね♪』って!」

希「えっ……なっ、嘘、絵里ちがそう言ったん?っていうか、どんなシチュエーションでそれ聞いたん?」

凛「練習の合間のたわいもないガールズトークです希隊長!」

希「い、一年生相手になんてヘヴィなガールズトークをしとるんや絵里ち!」

穂乃果「ほほぉう…その件、詳しく聞かせてもらおうか凛二等兵」

凛「続けて爆弾投下するであります、穂乃果一等兵!絵里ちゃんは『どうせキスするなら舌まで入れちゃおうかしらね?ふふっ、ああ見えて希は攻められるのに弱いから♪』とも言っていたであります!エッロい顔して!(脚色マシマシ)」

穂乃果「Foo~!由々しき事態ですな由々しき事態ですなぁ!」

希「えっ、ちょっ、待っ…!?ひ、ひゃあぁぁ…絵里ちのアホ…!」カァァ

凛「ヘイヘイ希ちゃん顔真っ赤だよ~?真のガチレズモンスターは誰かにゃ~?がちゆり、はっじまっるにゃー!」

穂乃果「これは、希隊長……ワシワシの刑だよっ!」ワシィ

凛「執拗にやるにゃ!じっくりと!ねっとりと!!」ワシワシィ

希「うあぁ!!!ゆ、百合はあかーん!!!ブハァ!!!」

穂乃果「あっ、鼻血が!メディック!メディーック!」



159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 20:01:09.96 ID:ceA/8Lf4o

♯24


【公園】


絵里「…」


絵里「19時半…そろそろ来る頃かしらね」


絵里「…」


絵里「…来た」


ザッ

ザッ

ザッ…


絵里「……こんばんは」


あんじゅ「はぁい絢瀬さん」

英玲奈「こんばんは、絢瀬さん」


絵里(統堂英玲奈、優木あんじゅ…)


絵里「来てくれてありがとう。試合の時に連絡先を交換しておいて良かったわ」

あんじゅ「うふふ。夜会えないか、だなんて連絡が来るんだもの。びっくりしちゃった」

絵里「ごめんなさい、急に呼び出してしまって」

英玲奈「それで、日も暮れた時分にどのような要件だろうか?」


絵里「…単刀直入に 言います 。綺羅ツバサの弱点を教えて」



160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 20:02:28.01 ID:ceA/8Lf4o

あんじゅ「えっ…?あなた、何を言ってるの?」

英玲奈「……絢瀬さん、自分が何を言っているのか理解しているのか」

絵里「問答をする気はないわ。弱点を知っているの?知らないの?」

英玲奈「ツバサも人間だ。弱点も……あるといえば、ある。些細な弱点だがな。しかし、仲間の弱みを敵に話す者がいると思うか?」

絵里「勘違いしないで、これは正当な要求よ。綺羅ツバサを負かして欲しいというのがあなたたちの願い。なら、情報を提供して然るべき。そうでしょう?」

あんじゅ「それは…!」

絵里「それとも、私たちに頼んでそれで終わり?呆れるわ、他力本願もいいところね」

英玲奈「…返す言葉もない。が、それでも教えられる事はない」

絵里「そう。それじゃあ、あなたたち二人の言葉を綺羅ツバサに聞かせてあげようかしらね」

あんじゅ「私たちの言葉…?どういうこと?」

絵里「音ノ木坂が野球をしているのは廃校阻止のため。先日の試合も学校の宣材として使うため、ベンチで録画をさせてもらっていたの。もちろん、UTXの責任者の方から撮影許可は頂いてます」

英玲奈「…」

絵里「録画係をしてくれた子、穂乃果の同級生なんだけど、すごく気の回る子でね。試合が終わった後も撤収ギリギリまで録画を続けてくれていたのよ」

あんじゅ「…!まさか」

絵里「ええ、ハッキリと録画されているわ。あなたたち二人が綺羅ツバサの敗北を願う言葉がね」

英玲奈「…!」



161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 20:03:42.02 ID:ceA/8Lf4o

絵里「弱点を教えないと言うのなら結構。綺羅ツバサにダビングした映像を送り付けて、彼女の精神面の動揺と、あなたたちチームの内部分裂を狙わせてもらうわ。勝てる確率を少しでも上げるためにね」

あんじゅ「あっ、貴女…!っ、 卑怯者…!」

英玲奈「……、やめろ英玲奈。元はこちらが迷惑を掛けているんだ」

絵里「穂乃果がいなくなればみんなが悲しむ。大切な仲間を理不尽から守るためなら、私はどんな汚い手段を取ることも厭わない。それで?教えてもらえるのかしら」

英玲奈「わかった…教えよう。教えれば、ツバサにその映像が渡る事はないんだな?」

絵里「約束するわ。映像を送るのは、こちらとしても気分のいい手段じゃないから」

英玲奈「わかった、話そう。あんじゅ、それでいいな?」

あんじゅ「最低よ…絢瀬絵里、あなた最低…っ!許さないから…!」

絵里「……なんとでも言いなさい」

英玲奈「……話すぞ」



~~~~~




162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 20:04:19.61 ID:ceA/8Lf4o

絵里「弱点、聞けたわね。……要点だけを話して二人は去って行った」

絵里「………クイック、手抜き癖、そして監督、か」


ガサッ…


絵里「…!誰?」

真姫「…エリー」

絵里「真姫…!どうしてここに?」

真姫「たまたま。ちょっと散歩に出たら、エリーを見かけたから後をついてきたの」

真姫(本当は希が教えてきたんだけど。…っていうか、それなら希が来ればよかったじゃない。この真姫ちゃんを小間使い扱い?なによそれ、イミワカンナイ!)

絵里「……見ていたの?」

真姫「ん、まあ…。詭弁と脅迫で情報を引き出す。流石にやり手ね、エリー」

絵里「真姫、私を軽蔑するかしら?」

真姫「軽蔑?まさか。あなたがやらなきゃ私がやってたわよ」

絵里「……そう」

真姫「だけどエリー、聞き出した情報は私たちの胸に留めておくべきだと思う」

絵里「どうしてそう思うのかしら」

真姫「わかるでしょ…?きっと穂乃果はこのやり方を嫌う」

絵里「…そうね」



163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 20:05:56.35 ID:ceA/8Lf4o

真姫「UTXのファンでもある花陽とにこちゃんもいい気持ちはしないでしょうね。海未とことりは勝つために手段を選ばないだろうけど、穂乃果への引け目でぎこちなくなるかもしれない。
凛は…まあ、難しい事を考えさせない方がパフォーマンスがいいし」

絵里「ふふ、そうね」

真姫「でも、希には知っていてもらうべきかも。みんなの中では精神的に大人だし、絵里の事もよく分かってる。合理的な判断をしてくれるはずだわ」

絵里「……駄目よ、希は駄目」

真姫「ハァ ?どう考えたって希が一番理解してくれそうじゃない。一番の親友でしょ?」

絵里「一番の親友だからこそ……希には、私のこういう、汚い面を見てほしくないの…」

真姫「なにそれ…。じゃあそもそも、情報を聞き出した後はどうするつもりだったのよ。はぁ…メンドくさい人たち」

絵里「……ごめんね、ワガママ言っちゃって」

真姫(メールの文面的に、希は大体の事情を察してたみたいだけど。絵里のこの反応も予想してて、それで代わりに私を行かせるような真似をしたって事?ホント、二人揃って面倒)

真姫「いいわ、聞き出せた弱点については私のパパのツテで向こうの関係者から聞いたって事にしましょう。それなら、みんな抵抗なく聞いてくれると思うから」

絵里「…ありがとう、真姫」

真姫「別に……いいわよ」



164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 20:06:32.72 ID:ceA/8Lf4o

ブロロロ……キキッ



真姫「もう遅いし暗いわ。家から運転手を呼んだからエリーも乗って行きなさい。家まで送ってあげる」

絵里「う、運転手…?料理人の話は前に聞いたけど、 真姫の家には運転手さんもいるの?」

真姫「…? そりゃ、料理人がいれば運転手くらいいるわよ」

絵里「じ、じゃあ、執事とか侍女とか庭師とか家政婦とか…」

真姫「全部いるけど?ほら、車乗るわよ」

絵里「ほわあ…」チカァ


~~~~~


ブロロ…


絵里「ねえ真姫ぃ…私、統堂さんと優木さんに嫌われちゃったわ…」

真姫「んん」

絵里「せっかく連絡先を交換して、友達になれそうだと思ったのに…」

真姫「そうね」

絵里「特に優木さん…私の事、最低だって…そうよね…最低よね…」

真姫「気にしない事よ」

絵里「そうは言うけど…私の事すっごい睨んでたのよ…」

真姫「あーもう!嫌われるとか承知でやったんじゃなかったの!?めんどくさい!」



165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 20:08:30.42 ID:ceA/8Lf4o

♯25


【南家】


ことり「ん~…」

にこ「……」ペラ…ペラ…

ことり「…ね、にこちゃん?」

にこ「……なによ」パラ…

ことり「ちょ~っと休憩してぇ、お菓子でも食べない?ことりが焼いたアップルパイがあるんだよ。アイスを添えて紅茶と一緒に…」

にこ「ん、後でね…」

ことり「うう…」

にこ「集中しなさい。野球漫画でも本でも試合DVDでもなんでもいいわ、資料を徹底的に漁って新たな変化球のヒントを探すのよ!」

ことり「もう疲れたよぉ…にこちゃぁん、せっかくことりの家に遊びに来てくれたんだし、ちょっと何かして遊ぼうよぉ」

にこ「あのねぇ、遊びに来たワケじゃないのよ?にこの家よりことりの家の方が集中できそうだったから来たの。ほら手と目を止めない!」

ことり「ふえぇん…ホノカチャァン…」

にこ「ハノカチャヘアァ~ン…じゃないわよ全く。しっかし、新球種ってやっぱ難しいわねぇ」

ことり「ごめんね、ことりが普通の球種を上手く投げられれば良かったんだけど」

にこ「ん、今使えるストレートとカーブとシンカー(ことりボール)以外でオーソドックスな球種は一通り試したけど上手くいかなかったのよね」

ことり「なんだか上手くイメージができなくって…あ、でもスライダーは!」

にこ「“アレ”は使っちゃ駄目よ。絶対に」

ことり「でも…、うん…」

にこ「ま、こればっかりは向き不向きの問題だし仕方ないわ。投げにくい球を無理に覚えようとしてフォーム崩すのもバカバカしいし。…けど、もう一種類は球種が欲しい。なら新球開発しかないわ。理解オッケー?」

ことり「はぁい…」



166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 20:10:04.23 ID:ceA/8Lf4o

ことり(朝から夜まで野球野球野球野球。ことりには無理だよぉ…。もちろん穂乃果ちゃんのために頑張らないとだけど、このままじゃ試合までにことりの脳がパンクしちゃう…な、なにか違う話題を…)


ことり「にこちゃん。かわいいものゲーム、しよう」


にこ「は?なにそれ」

ことり「交互にかわいいものを言っていくゲームです。先に途切れた方が負け。明日クレープおごりね?じゃあスタート!アルパカさん♪」

にこ「ちょっ、ゲームの説明不足!まあ大体わかるけど…えっと、畠山のヒゲ」

ことり「えっ?」

にこ「えっ?」

ことり「畠山、さん?えっ、スワローズの…?あの、かわいいもの…」

に こ「なによ?時間切れになるわよ~。はい3、2」

ことり「あっ待って!チョココロネ!」

にこ「DBスターマン」

ことり「…って?」

にこ「横浜のマスコットよ。タヌキだかハムスターだかの」

ことり「あ、あれならわかるよ。かわいいね。マスコットならバファローベルちゃんもかわいいよね!」

にこ「にこ的には広島のスラィリーと迷うところね」

ことり「えぇ…じ、じゃあことりはぁ~、マンチカン!とっても小型のねこさんだよっ♪」

にこ「中継ぎが炎上した後の切なそうな阪神メッセンジャー」

ことり「~~っ??や、野球から離れようよぉ…。かんかん帽!」



167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 20:11:33.54 ID:ceA/8Lf4o

にこ「元ロッテ里崎智也」

ことり「ついに選手名だけに…く、クレームブリュレ! 」

にこ「すぽるとで立浪らPL先輩勢がサプライズ登場した時の元ヤクルト宮本のうろたえ顔」

ことり「マニアックすぎるよぉ…なんか、もういいです。ことりの負けで…」

にこ「はっ、もう降参~?ふふん、あんたのかわいいもの好きも大したことないわねー!」

ことり「うぅぅ…野球…野球が脳を侵食して…野球ってかわいいのかな?高速スライダー…えへへ…高速スライダーってかわいいよね…ビューン、パタパタパター。うふふふふ」

にこ「……あー。……うん、まあ、ちょっと根を詰めすぎたかしらね。ぱ、パイ!アップルパイ食べるわよ!」

ことり「あ、そうだね♪ 食べよっ」

にこ(ふう、目に光が戻ったわね…)


~~~~~


にこ「はむっ、もぐ、、うぅ~ん…美味しい…。アンタのアップルパイ、高級店の味とまでは言わないけど、その辺の適当なケーキ屋には負けてないわよ」

ことり「うふふ、料理上手のにこちゃんにそう言ってもらえると嬉しいなっ。アイスを一緒に口に入れても美味しいんだよ?はい、あーん」

にこ「あーんって、よくもまあ恥ずかしげもなく…ったく、アンタって女子力の塊みたいな子ね」

ことり「ほらほらぁ、アイスがでろでろになっちゃう!」

にこ「あむ。……ん、おいしい」

ことり「よかったぁ♪ えーっと、こっちのカットがみんなに持っていく分と、これがお母さんにあげる分と…分けてもまだ残るなぁ。にこちゃん後でこれ、持って帰らない?」

にこ「いいの?嬉しい。妹二人と弟がいるから喜ぶわ」



168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 20:14:58.95 ID:ceA/8Lf4o

ことり「にこちゃんの妹と弟?わぁっ絶対カワイイ!ことりも会いたい!今度にこちゃんの家に行ってもいい?」

にこ「ダメよ」

ことり「え~っ、なんでぇ。おねがぁいっ♪」

にこ「うぐぬっ…、、ふ、ふん。それが通用するのは海未と、まあ穂乃果と…せいぜい花陽ね。少なくともにこには通用しないわ。あ、真姫ちゃんもチョロるか…」

ことり「んん~……にこちゃん、どうしてダメなの?もしかして、ことりの事あんまり好きじゃないとか…」

にこ「バカ、アンタはこのにこにー直属の後輩よ?…す、好きに決まってるじゃない」

ことり「わぁ!にこちゃんっ♪」ギュッ

にこ「えーい暑苦しい!」ゲシッ

ことり「足蹴はひどいよぉ」

にこ「いい?世界のセンターことマジェスティックにこにーは軽々しく人を家に上げたりしないわ。希でも絵里でもアンタら二年組も一年のガキンチョ三人も同じ。プライベートは安売りしない主義なの」

ことり「ん~。残念…機会があったら妹さんたちと弟さんに会わせてね♪」

にこ「ま、いずれね。にこに似て最強カワイイんだから!」

ことり「いいなぁ~!仲良くなりたいなぁ♪」

にこ「そんなに仲良くなりたいんなら……にっこにっこにー!を、せいぜい必死に体得しておくのね」

ことり「ふふっ、にこちゃんはいいお姉さんしてそうだもんね?」

にこ「ほら、リピートアフターミー!にっこにっこぬぃぃぃぃい!」

ことり「にっこにっこに…って、にこちゃん!」

にこ「な、何よ!突然顔近づけないでよね!」

ことり「新球種!イメージが出来たの!外でキャッチボールしてみよ!行こっ?」グイッ

にこ「ちょ、ことり!引っ張らないでよね!あぁーもう、穂乃果じゃあるまいし!」



169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 20:16:31.23 ID:ceA/8Lf4o

♯26


【部室】


穂乃果「はぇ~、それじゃことりちゃんの新変化球っていうのは…」

ことり「うんっ!手をね、こう…にっこにっこにーの形にして…こうやってボールを掴んで投げるの!」

穂乃果「にっこにっこにーで握るのかぁ。えーっと、立ててる三本の指でボールを固定して、曲げてる二本の指の爪を立てる、っと…ことりちゃん、こんな感じ?」

ことり「うん♪ 大体そんな感じ!」

海未「穂乃果、真似すると怪我しますよ。ことりの指は人よりも少し長めですから、そのおかげで変則的な握り方でもボールを安定して握り、投げることができるのでしょう」

穂乃果「うん、穂乃果の手じゃなんか握りにくいや…それでそれで、これってどんな変化するの?」

ことり「うふふ~。練習始まったらすぐに見せてあげるねっ」

穂乃果「う~、早く見たいな。一球!一球ここで投げてみてよ!」

ことり「えっ、えぇ!部室で投げたら危ないよぉ」

穂乃果「まだ他のみんな来てないし大丈夫!一球だけ!」

海未「いけません!ダメに決まっているでしょう!こんな狭いところで投げては怪我をしますし散らかりますし、フォームも崩してしまいかねません!」

穂乃果「そっかぁ…無理言ってごめんね、ことりちゃん…」シュン

ことり「こっちこそごめんねハノケチェン…」

海未「全く、堪え性のない…」

穂乃果「むー、海未ちゃんはもう受けてみたんだよね?どんな感じだった?」

海未「そうですね、簡単に言えば沈む遅球、でしょうか。握りはナックルに似ているのですが、実際の軌道や使い方としてはチェンジアップに近いです」

穂乃果「なるほどねー。チェンジアップかぁ」

海未「ストレートとの択一を迫れる素晴らしい球でしたよ。十分に武器の一つとして使えます」

ことり「まだまだこれから精度を上げていかないとだけどね♪」


ガチャッ


穂乃果「あ、にこちゃん」

にこ「ん 、早いわね二年トリオ」

穂乃果「にこちゃん聞いたよー、にっこにっこにーの握りで変化球ができたって」

にこ「ふふん、スーパースター矢澤にこの一挙手一投足全てには大宇宙の意思が宿ってるの。にっこにっこにーの握りで投げればそれ即ち必殺の魔球と化す…世界の摂理よ。覚えときなさい!」

穂乃果(清々しいほどにドヤ顔だなぁ)

海未(にこ…こっちが恥ずかしくなるほどに鼻高々です…)

ことり(得意げなにこちゃんカワイイっ)

にこ「あの球、スーパーにこにーボールと名付ける事を許可するわ」

ことり「え、すーぱーにこにーぼーる?う、うーん…そのネーミングはちょっと…」

にこ「何よ、文句ある?」

穂乃果「はは、ダサい」

にこ「ぬわぁんですってぇ!!?穂乃果ァ!ひっぱたくわよ!!」バシッ!

穂乃果「じ、冗談!冗談っ!ひっぱたいてから言わないでよ!」



170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 20:17:23.38 ID:ceA/8Lf4o

ことり「え、えーっと…スマイルボール!にこちゃんだから、にっこり笑顔でスマイルボールはどうかなっ?」

穂乃果「あ、それいいよ!すごいいい!」

海未「ふふ、にことことりの共作にピッタリの可愛らしい名前ですね」

にこ「にこの名前が直接的に入ってないのはちょ~っと不満だけど…ま、それでいいわ」

ことり「それじゃ、新球の名前はスマイルボールでけってーい!」


海未(スマイルボール…確かに、とても効果的に使えそうな球です。ですが、ですが…あの綺羅ツバサと投げ合って、本当に勝てるのでしょうか…)


穂乃果(海未ちゃん、なんだか浮かない顔してる…。なにかあったのかな)



バァンッ!!

花陽「ダレカタスケテェッッッ!!!」



にこ「どわぁ!ビックリしたぁ!」

穂乃果「助けを求めつつ部室のドアを蹴り開けた!?斬新なエントリーだね花陽ちゃんっ!」

海未「ど、どうしたのですか花陽」


花陽「大変!大変なんですっ!これを見てくださいッッ!!」カタカタカタッターン!

ことり「パソコン?えーっと…あ、女子野球のまとめサイトだね」

海未「2525速報、女子野球関連では最大手のアフィリエイトブログですね」

にこ「…」

海未「それで、このサイトがどうしたのです?」

花陽「この記事!一番上のっ!見てくださいっ!」

穂乃果「 これ?なになに…女子高校野球界にダークホース誕生…その名も音ノ木坂学院野球部…」

海未・ことり「ええっ!?」

にこ(ふふふ…)



171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 20:18:08.31 ID:ceA/8Lf4o

穂乃果「ダークホースって?」

花陽「隠れた有力校、ぐらいの意味ですっ!」

穂乃果「なるほどー。……ん?じゃあうちの高校が注目されてるって事!?」

花陽「そうです!そうなんです!このサイト、どこだかでこの前のUTX戦の情報を手に入れたみたいで…。しかも、チーム全員についてかなり詳しくまとめてあるんです」

海未「音ノ木坂の頭脳、強肩強打の大和撫子ガール園田海未…。な、なんですかこの記事は…」

穂乃果「あ、写真も載ってるんだね。わぁ、このベンチで汗を拭きながらジュース飲んでる写真とかちょっとセクシーだよ海未ちゃん!」

海未「う、うぁあ!こんなものが全国に晒されているのですか!?恥ずかしすぎますっ…!花陽!そのパソコンを閉じてください!いいえ閉じるだけではダメです!このバットで粉々微塵に破壊を!」

花陽「ピャアアア!?PCにバットを振りおろそうとしないでぇ!」

穂乃果「ちょ、海未ちゃんストップ!落ち着こう!花陽ちゃんのパソコン壊したってその記事は消えないよ!?」

海未「放してください穂乃果ァ!」ジタバタ

ことり「どれどれ、穂乃果ちゃんはぁ…、いつも朗らかチームの太陽、鋭いスイングから放たれる打球は意外性ナンバーワン。わあ!穂乃果ちゃんも可愛く撮れた写真がいっぱい載ってるよっ」

穂乃果「おー、本当だ!この守備のシーンとかカッコよく写ってる!」

花陽「ことりちゃんもベタ褒めだったよ!ほら見て、麗しのサブマリン、美しくしなやかなフォームで打者を幻惑!」

ことり「わぁ、なんだかちょっと照れちゃうなぁ♪」



172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 20:19:37.96 ID:ceA/8Lf4o

花陽「小銭拾いしか脳のない腐れブログだと思ってたけど、まさか独自記事で音ノ木坂を取り上げてくるなんて…少しだけ、見直しました」

穂乃果「それにしても詳しい記事だねえ。ん?なんか、にこちゃんの記事だけ長いね。しかも超ベタ褒め…」

ことり「ほんとだぁ。管理人さんは特ににこちゃんのファンなのかなぁ?」

にこ「ま、にこにーの圧倒的オーラに魅了されちゃう管理人がいるのも仕方のない事よね~?あ~ん、にこにーってば、罪深すぎぃ~!」


ガチャ


希「お、みんなパソコンにかじりついて何してるん?」

海未「希ぃ…変な写真が…ネットに私の変な写真がぁ…」

希「どしたん海未ちゃん、足なんて震わせて。アイコラでも作られた?」

穂乃果「これこれ!なんか音ノ木坂野球部がネットで特集されてるんだ!」

希「あー、それにこっちのサイt…モガガ!」

にこ(希!黙ってなさい!)ヒソヒソ

希(なんで?音ノ木坂の知名度アップに役立ってるんだから言ったらいいやん。2525速報は矢澤にこの運営しているサイトですーって。絵里ちもウチも知ってるんやし)ヒソヒソ

にこ(絶対言わないわ)

希(んー?『奥ゆかしさ』なんて、にこっちに一番似合わん言葉やと思うよ?いつもの自己顕示欲全開スタンスで行こうよ)

にこ(なによ自己顕示なんちゃらって!まず海未!海未ににこのブログだって知られてみなさい、夜叉みたいな形相で記事の消去を迫ってくるのが確実よ)



173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 20:20:27.49 ID:ceA/8Lf4o

希(なるほど…その光景がありありと目に浮かぶね)

にこ(あと、花陽も…)

希(花陽ちゃん?あ、そういえば花陽ちゃん、ガチガチのアンチアフィやったね。そっか、ふふ。可愛がってる後輩に嫌われたくないもんね?)

にこ(…そ、そうよ。悪い?)

希(んーん、了解♪ じゃ、これはウチら三年生だけのヒミツって事で)

にこ(ん…それでよろしく頼むわ)

希(でも残念。にこっちが書いてるってわかって読むと、また違った面白さがあるんやけどな~)

にこ(なによ、その面白さってのは)

希(だって、ねえ?穂乃果ちゃんをチームの太陽って書いてたり、花陽ちゃんは堅守を誇るチーム1の癒し系少女、凛ちゃんは笑顔きらめく韋駄天キャットガール、真姫ちゃんはクール&キュートな未完の大器、とかやったっけ?)

にこ(書いたけど、それがどうしたのよ)

希(ふふ。なんていうか、にこっちのチームみんなへの愛がこれでもかってぐらい溢れてるんよねぇ)

にこ(うぐっ!ちょ、そういう読み方するのやめなさい!恥ずかしいでしょ !)

希(絵里ちとたぁっぷり楽しませてもらうよ~?)

にこ(やぁめなさいよ!)



174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 20:23:40.31 ID:ceA/8Lf4o

♯27


穂乃果『体力の限界、ケガ人が出る寸前まで追い込んでの練習の毎日。

思わず悲鳴を上げちゃいそうになるけど、みんな頑張ってるんだ!って自分を奮い立たせて歯を食いしばります。
掌はもうマメでカチカチ。すっかり女の子っぽくない手になっちゃったかな、えへへ。


あ、試合も色々なチームとしたんだよ!
近隣の女子チームのところに出向いたり、社会人野球のチームと対戦させてもらったり!
社会人には流石に勝てなかったけどね、あはは。


頑張ったのは穂乃果たちだけじゃありません。
ヒデコ、フミコ、ミカの三人は練習を手伝ってくれつつ、合間の休日には関東圏の強豪校のデータを集めてきてくれたんだ!
それより遠い範囲の強豪校には西木野グループの調査員の人たちが。やっぱり真姫ちゃんのお家はすごいなぁ。


あ、私たちの周りでちょっとした変化が一つ!
謎のサイトで取り上げられた影響もあってか、音ノ木坂学院野球部の知名度が上昇!近所のおじさんやおばさん、通りすがりの人なんかが「頑張って」と声をかけてくれるようになったの!
たまにお菓子なんかをくれる人も!
とっても嬉しいんだけど、海未ちゃんは「危険です!知らない人からもらった物を食べてはいけません!」だって。海未ちゃんのケチ~。


そして一ヶ月ほどが過ぎ…


いよいよ、大会が始まります!


参加を表明した全国百数十校で争われる巨大トーナメント!
会場は東京だから、遠征しなくていい分 音ノ木坂は少し有利なのかも 。UTXもそれは一緒だけどね。

期待、不安、焦燥、自信、葛藤…それぞれの胸に思いを抱えて。

自分の運命を賭けて、私たちは大会に臨みます!

一生懸命、全力のプレーで!音ノ木坂学院はこんなにいい学校なんだって全国に広めてみせるんだ!』


【大会版オーダー】

1 遊 星空凛 1030
2 中 矢澤にこ 1450
3 三 高坂穂乃果 1863
4 一 東條希 2855
5 右 綾瀬絵里 2047
6 捕 園田海未 1588
7 二 小泉花陽 772
8 投 南ことり 2540
9 左 西木野真姫 405



175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 20:24:57.68 ID:ceA/8Lf4o

♯28


【抽選会会場】


穂乃果「うわぁ…すごい人の数」

にこ「当然よ、地方予選なしのオープン参加で、今回は大会史上最多の142校!それが一堂に会してるわけだから壮観よね!」

絵里「ふう、人酔いしちゃいそうね」ゴクゴク

にこ「絵里、アンタさっきから水ばっか飲んでるけど大丈夫?変な時にトイレ行きたくなるわよー?」

絵里「あはは、なんだか緊張して喉が乾いちゃって。気をつけるわ」

花陽「ああっにこちゃん!大阪桐陽だよ!あっちにいるのは横女!広学もいる!あれは創徳!?かっこいいいぃぃぃ!はあぅっ見て凛ちゃん真姫ちゃん!
徳島に香川に…四国勢がズラリだよ!ことりちゃん見て見て!博多第一のあの二人は今大会の注目バ ッテリーなんだよ!はああぁぁあテンション上がるよぉ~!」

ことり「は、花陽ちゃん揺さぶらないでぇ~」ユラユラ

にこ「最高ね最高ね!こんな機会そうそうないわ!ガッツリ目に焼き付けておくのよ花陽!」

花陽「はいっにこちゃん!」

凛「かよちんもにこちゃんもすごく嬉しそう!」

真姫「会場に入ってからずっとこの調子。水を得た魚って感じね」

凛「この会場に集まってる人たちと今から戦うんだよね。うーっ、凛もテンション上がるにゃー!」

希「うひゃあ、報道陣もいっぱい。流石はテレビ局がメインスポンサーの大会やねぇ」

海未「の、希…気のせいでしょうか、私たちに向けられているカメラがとても多いような…」

希「んー、気のせいやないと思うよ。ネットを中心にウチらの知名度は上がってるみたいやし、廃校阻止のために戦う音ノ木坂学院!いかにもマスコミ好みやん?」



176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 20:25:41.60 ID:ceA/8Lf4o

海未「や、やっぱり…!あっフラッシュが!ひいっ !撮らないでください!恥ずかしい…!」

穂乃果「ダメだよ海未ちゃん!何事も度胸度胸っ!海未ちゃんのビボーでファンを増やさないと!」

ことり「そうだよぉ。海未ちゃんの可愛さを全国にお届けしないと、ねっ♪」

海未「無理ですぅ!恥ずかしいぃ!ううぅぅ…」

希「うひひ、照れ屋さんな感じも需要あると思うよ?これはこれで、中々そそるやん?」

ことり「わかるよ希ちゃん…、キレイなお着物を着せて、帯回しとかしたいよねえ。ヨイデハナイカ、ヨイデハナイカ…うふふふふ…」

穂乃果「おお…ことりちゃんが猛禽類の目をしてらっしゃる…」


キャアアアア!!キャアアアー!!!
パシャ!パシャシャシャ!!パシャッ!


凛「なんの歓声にゃ?」

真姫「なにかしら、入り口の方…あっ!」


にこ・花陽「「UTXキタァァァァァ!!!!!」」


真姫「二人とも、すっかりファンの目に戻ってるじゃない…そんなんじゃ困るわよ」

ことり「うふふ、今日ぐらいはいいんじゃないかなっ。花陽ちゃんもにこちゃんも、子供みたいにはしゃいでてカワイイ♪」

絵里(UTXか…)

海未「怖いぃぃ…カメラが怖いですぅぅぅ…」

穂乃果「海未ちゃん、もうカメラ全部あっち向いたから大丈夫だよー」

海未「ほんとですか…?はぁ、怖かったです…」ぎゅっ

穂乃果「よしよし」ナデナデ



177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 20:26:36.94 ID:ceA/8Lf4o

凛「あれあれ?なんかUTXの優木さん、こっちすごい睨んでない?」

花陽「え、あんじゅさんが?そんなわけないよ…って、ほ、 本当だ…」

絵里「……っ」

にこ「ちょっと…誰か、あんじゅに失礼な事したんじゃないの?穂乃果、あんたとか怪しいわね…。なんか変な事言ったりしたんじゃないの?」

穂乃果「にこちゃんってば失礼な!穂乃果じゃないよー!……た、たぶん」

絵里「……」ゴクゴク

ことり「絵里ちゃん、そんなに水飲んで大丈夫…?」

絵里「ええ…喉がカラカラなのよ。あ、水なくなっちゃった…」

ことり「ことりの水も飲んでいいよ」

絵里「ありがと、コッティー」ゴクゴク

ことり「えっ?こっ、何?」

花陽「こ、こってぃー?」

希(アカン、動揺しすぎやろ絵里ち。なんやコッティーって…。
あの晩、UTXの二人と絵里ちが会った日のこと、真姫ちゃんに聞いても詳しく話してはくれなかった。きっと絵里ちに口止めされてるんやろね。
まあそれは予想通りとして、なんとなくUTXと一悶着あったっぽい雰囲気やったからなぁ…)



178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 20:28:48.70 ID:ceA/8Lf4o

【それではこれより、組み合わせ抽選会を始めます】


海未「あ、始まるみたいですよ」

凛「ねえかよちん、抽選会ってどういう仕組みなの?」

花陽「うん、甲子園だと各チームのキャプテンが前に出て、予備抽選ってので決めた順番にくじを引いて決めるんだけど、この女子大会はチーム数が多すぎる事もあって機械抽選なんだ。
あの大きいスクリーンに初日の組み合わせから順番に発表されていくんだよ」

凛「へぇ~、なんだかハイテクにゃー」

穂乃果「え、そうなんだ。くじ引きしたかったなー」



【大会一日目、第一試合は 音ノ木坂学院 対 樫山南高校!】



穂乃果「あ、一試合が出たね。音ノ木坂と樫山南だってー。ん、音ノ木坂…?って、えええっ!!」

海未「し、初日…一試合目!」

絵里「ハラショー…」

真姫「一番最初って…どうなのかしらね。ん…花陽?どうしたの?」

花陽「樫山南?岡山県立樫山南高校!?そんな…」

にこ「っ、よりによって…」

凛「二人とも、なんで苦い顔してるの?」

ことり「もしかして…すごく強いチーム、とか?」

花陽「ううん、そうじゃないよ…。樫山南はね、音ノ木坂と同じ。廃校になる高校なんだ…」

ことり「えっ、廃校に…そうなんだ」

真姫「それじゃあうちと同じように、廃校阻止をかけて、出場してるって事?」

にこ「違うわ。樫山南はね、もう廃校は決定済みなの」

真姫「決定済み?じゃあ、どうして…」

希「樫山南、ウチも雑誌で見たよ。最後の思い出作りのために…って話やね」

穂乃果「じ、じゃあ…穂乃果たちが倒したら、そこで樫山南の選手たちは…」

にこ「そう。そこで樫山南の野球はおしまい」

ことり「……樫山南の人たち、とっても仲が良さそう」

海未「似た境遇の彼女たちに引導を渡さなければな らない… というわけですか」

凛「なんだか、ちょっと気が引けちゃうね」

絵里「そんな境遇なら、きっと試合にかける思い入れも強いはず。全力で戦わないといけないわね…!」

穂乃果「…うん、似てるからこそ、負けるわけにはいかないよね。みんな、気持ちで負けないように頑張ろう!」



179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 20:33:15.42 ID:ceA/8Lf4o

♯29


【抽選会場廊下】


ガヤガヤ…


凛「うー、やっと出られたにゃ~!背中バキバキだよー。ことりちゃん、軽くストレッチしよ」

ことり「うん、いいよ♪ 人が多くてちょっと疲れちゃったねえ。はいっ、腕引っ張るよー!」

凛「にゃー!!」パキポキ


真姫「抽選会ってこんなに時間かかるのね…。椅子の座り心地がイマイチだったせいで腰が痛いわ」

花陽「結局UTXとは反対のブロックだったね。戦えるのは決勝…アキバドーム…!」

穂乃果「アキバドームか…。決勝は地上波で全国に放送されるんだよね。そうすれば廃校も…うん、なんとしても勝ち抜かなきゃだね!」

真姫「ええ、そうね。せっかくなんだからフルに宣伝させてもらわないとね」


絵里「みんな、ちょっと私トイレに行ってくるわ。待っててね?」

にこ「アンタ抽選会の途中からずっとモジモジしてたもんねー。水の飲み過ぎよ」

絵里「うう…漏らさないうちに行ってくるわ…」

海未「あ、待ってください絵里。私も今のうちに行っておきます。穂乃果はいいのですか?」

穂乃果「んー、いいや。ツバサさんたちいないのかな?挨拶しときたかったんだけどなー」

花陽「マスコミに囲まれちゃわないように早めに会場を出たみたい。私も挨拶したかったなぁ」

海未「では行ってきますね」

絵里「急ぐわよ海未!よぅし、トイレまで競争。負けた方ジュースおごりっ!」ダダダ!

海未「あっ、絵里!ずるいですよ!それに走っては危ないです!」タタッ!

花陽「わぁ、猛スピードで行っちゃったぁ。絵里ちゃん、よっぽどトイレ我慢してたんだね」

真姫「エリー、まだジュース飲む気なの…?」

希「……」ペラッ

希(『塔』のカード。事故、トラブルの暗示…。えらく不穏やね…)



180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 20:34:31.91 ID:ceA/8Lf4o

希「ごめーん、ちょっとウチ もトーイレ。みんな待っててな」

花陽「あれ、希ちゃんも?」

真姫「二人と一緒に行けば良かったじゃない」

希「いやぁ、後から行きたくなっちゃって。さっきまではなんともなかったんやけどね?あはは」

にこ「…、じゃ、にこも行くわ。希一人じゃ心配だから」

希「え、いいよにこっち。もし迷ったらスマホで連絡するし」


にこ(……表情でわかるのよ。絵里たちに嫌な予感がするんでしょ?なら一人では行かせないわ)ヒソッ

希(あー、鋭いなぁ…にこっちは)


~~~~~


キャーアヤセエリサンヨー!
ソノダウミサンモイルワー!
ステキー!コッチムイテー!ダイファンデスー!

海未「ど、どうしてこんなにファンがいるのですか!まだ公式試合は一戦もしていないと言うのに!」

絵里「それだけ女子野球の人気が上がっているって事ね。ネットで祭り上げられただけかと思ってたけど、現実にこんなにファンがいるなんて驚きだわ」

海未「うう、しかも女性ファンばかり…私は女ですよ?」

絵里「あらっ、海未は男性ファンが欲しいのかしら?」

海未「ち、違いますっ!男性ファンも女性ファンもいらないという意味ですっ!」

絵里「あははっ!冗談冗談、からかってごめんね?それにしてもトイレが遠い…そろそろ限界な感じ…」

海未「え、絵里っ!漏らしてはいけませんよ!?これだけ注目の集まっている中でそれは洒落になりません!あっトイレが見えました」

絵里「ハラショー!駆け込みましょう! 」

タタタタ!バタン!



181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 20:36:01.06 ID:ceA/8Lf4o

~~~~~


ザーッ

絵里「はあ…間に合ってよかった…水の飲み過ぎは良くないわね」

カツ、カツ、カツ

絵里(ん、誰かトイレに入ってきたわね)

ガチャッ、ガタガタ…

ドボボボボ

絵里(掃除用具入れから何かを出して、水を…バケツ?掃除の人かしら)


『せーのっ』


バシャーッ!!!!


絵里「きゃああっ!!!」


『ギャハハハハハ!!!』


海未「絵里!?どうしたのですか!」

絵里「な、上から水…!」


バタン!


絵里「誰!?何をするの!」

モヒカン女A「あー、音ノ木坂の絢瀬絵里で合ってる?」

絵里(女なのにモヒカン?制服を着ているから高校生だろうけど、見るからにガラが悪い…それも三人)

絵里「そうだけれど。見ず知らずの相手に水をかけるなんて、一体何のつもり?」

海未「絵里…!個室の上から水を!?何の真似です、貴女方!」

モヒカン女A「なんかチヤホヤされて調子に乗ってるみたいだからさぁ」ヘラヘラ

海未「ふざけるのもいい加減にしなさい。喧嘩なら私へどうぞ。いくらでも買って差し上げます」

絵里「海未!暴力はダメよ。出場停止にされてしまうわ」



182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 20:37:02.51 ID:ceA/8Lf4o

海未「っ、ですが絵里!」

モヒカン女B「来ないの?こっちは殴るけど!」ブンッ

海未(な、後ろ手に凶器を隠していた!?まずい!)

ガシッ!

希「ちょいちょい、危ないなぁ。出会い頭に暴力はアカンやろ」

モヒカン女C「誰だよテメエ…あ、東條希!」

絵里「希!」

希「靴下に砂を詰めたブラックジャックね~。傷の証拠を残さんようにご丁寧にこんな凶器作って…ちょーっとタチ悪すぎやないかな?」

ミシ…ブチブチッ… ザーッ

モヒカン女B「あっこいつ、ナイロンを素手で引き裂きやがった…」

にこ「うわっ、モヒカン?ダサッ!?」

絵里「にこ!」

にこ「なによ絵里、ずぶ濡れになっちゃって。ははぁん、トイレ間に合わなかったわけ~?」

絵里「もう、にこったら…」


海未「さて、四対三ですね。それでもやるのなら、私が相手になりますが?」パキポキ…


希「キミらの運勢は…『死神』のカード。さぁて、ウチの親友にそれ以上何かするなら、……大変な不幸が起こるかもよ?」

にこ「え~っ、にこ喧嘩とかムぅリぃ~!警備員さん呼んじゃったぁ~」

モヒカン女A「チッ、色々と面倒だわ。行くよ」


~~~~~


にこ「行ったわね…」

絵里「はぁ…怖かった…」ヘナヘナ

海未「絵里、大丈夫ですか…?こんなに濡れてしまって、風邪を引いては大変です」

希「こんなこともあろうかとタオルと着替えのジャージを持ってきてたんよ。はい、絵里ち。着替えてき?」

絵里「わぁ、ありがとう希!」

にこ「いやいやエスパー!?用意良すぎでしょ!」

希「備えあれば憂いなし!ってね。それにしても、あの人ら誰やったん?」


絵里(もしかして、UTXの二人を怒らせたのと何か関係が…?)


にこ「絵里、表情暗いけど何か心当たりあるわけ?」

絵里「え、いや…そういうわけじゃ…」

にこ「ま、どっちでもいいけど。多分アンタが予想してる相手とは何の関係もないわ」



183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 20:39:48.31 ID:ceA/8Lf4o

希「にこっち、どうして言い切れるん?」

にこ「アイツらの制服を見たからよ。京都健英高校、通称『狂犬高校』。女子高校野球ではかなりの強豪だけど、ラフプレーと素行の悪さでも有名なの。まあ要はクソヤンキーよ」

海未「そうだったのですか…」

にこ「他校の有力選手潰しも常套手段。試合中はギリギリグレーゾーンのプレイで怪我人が多発。関わり合いになりたくない連中ね」

希「ははぁ、そんな人たちやったんやねぇ」

絵里「うん…目が怖かったわ。希、にこ。来てくれてありがとう。海未も、守ってくれてありがとう」

海未「いえ、絵里に怪我がなくて本当に良かったです…。それと、今の出来事はみんなには話さずにおきましょう。変に怖がらせてしまってもいけません」

絵里「そうね。ガラの悪い連中もいるから注意するようにとだけさりげなく伝えればいいと思うわ」

ペラッ

希「カードは『節制』。うん、その方がいいみたいやね。よし、みんなが心配したらいかんし戻ろっか!」


~~~~~


絵里「みんな、待たせちゃってごめんね!」

凛「あれっ、絵里ちゃんなんでジャージに着替えてるの?」

絵里「えっ、あ、これはね?ええと…」

海未(絵里!言い訳を考えていなかったのですか!?)

希「みんな、あんまり突っ込まんどいてあげて?絵里ちはな…間に合わなかったんよ」


絵里「え、希?」


花陽「間に合わなか……あっ…!」

穂乃果「ぅ絵里ちゃん…っ!」

凛「お漏らしにゃー!?」

絵里「ち、違っ!」

ことり「大丈夫…いいんだよ、絵里ちゃん。いいんだよ…」ぎゅっ

花陽「恥ずかしがらなくて大丈夫だよ。私もなかなかトイレに行きたいって言えない方だから、気持ちはわかります」なでなで

真姫「ま、生理現象だから。仕方ないわよ」クルクル

穂乃果「穂乃果も六年生の時にやっちゃったよ!大丈夫っ!」

凛「さすがの凛もこれはネタにしないから安心してほしいにゃ!」


海未(仕方ありませんよ、絵里。ここはもう、そういう事にしておきましょう)ヒソヒソ

絵里「ああっもう!みんなの優しさが痛い!さ、最悪よぉ!!」

希(本当はもうちょっとマシな言い訳があった気がするけど…とっさに思いつかんかったし、面白いからまあいっか。ごめんな絵里ち)


にこ(……問題は、あの京都健英高校とは準々決勝で当たる可能性があるって事よね。…これ以上、アンタたちを危ない目には遭わせないから。あいつらは私が止める!)



184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 20:40:41.97 ID:ceA/8Lf4o

♯30


【高坂家】


亜里沙「雪穂雪穂!急いで~!」

雪穂「わわ!待って亜里沙!カルピスこぼれちゃうよ!」

亜里沙「もう試合始まってるよ!パソコンの電源入れて…よいしょ!」

雪穂「女子大会はCSかネット中継でしかやってないんだよね~。おせんべいとカルピスここに置くよ?」

亜里沙「ありがと雪穂。はぁ、応援しに行きたかったな…」

雪穂「夏期講習さえなかったらなぁ。勝ち上がったら塾サボってでも行こうね!」

亜里沙「うんっ!」

雪穂「よし、繋がった!」



《全国高等学校女子硬式野球選手権大会》

(一回戦)
音ノ木坂学院(東京) 対 樫山南高校(岡山)



【実況】
『一回の表、先攻の音ノ木坂学院。流れるような攻撃を見せています。

ヒット、すかさず盗塁で二塁に進んだ星空を二番矢澤が堅実な送りバントでワンナウト三塁の場面。

ここで二年生キャプテンの三番高坂へと打順が回ります』


亜里沙「あっ穂乃果さんだよ!」

雪穂「お、お姉ちゃん~!頑張れーっ!」



185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 20:41:57.26 ID:ceA/8Lf4o

【実況】
『バッター高坂、軽く屈伸を一つ、打席へと入ります。

樫山南のエース田村、捕手のサインを見つめて、首を縦に振る。

セットポジションから、投げた。


――キインッ!


打った、高々と上がった。
これは犠牲フライには充分か。三塁走者星空はタッチアップの構え。

レフトが下がって…

いや伸びる、滞空時間が長い、
レフト下がる、レフト下がる…!

……入った、入りました!
大会第一号!スタンド最前列に飛び込むツーランホームラーン!』


亜里沙「ホームラン!ホームランだよ雪穂!すごいすごい!」

雪穂「やった!やったぁ!お姉ちゃんっ!すごいよー!」


穂乃果ママ「やったわね穂乃果!」


亜里沙「あ、雪穂のお母さんが喜んでる声がするよ。あれ、店番してるんじゃ?」

雪穂「あはは、多分今お店のカウンターに誰もいないんだと思う」


【実況】
『ん?打った高坂はまだ全力疾走しています。
おっと、二塁を蹴ったところで立ち止まりました。塁審に何か確認していますね

ホームラン?ホームラン?と尋ねているよ うに見えます。

あっ、ようやく気が付いた模様です。
あー、笑顔でバンザイ!両腕を高々と突き上げています!

素晴らしい一打!音ノ木坂学院2点を先制!』


雪穂「お姉ちゃん…また微妙に恥ずかしい事を…」

亜里沙「穂乃果さんらしくて素敵だよ!ハラッセオ!」


~~~~~


試合終了

音ノ木坂 13-1 樫山南



186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/12(水) 20:42:35.90 ID:ceA/8Lf4o

海未「穂乃果!ことり!完勝でしたね!」

ことり「うんっ!6回からは絵里ちゃんが投げてくれたから疲れもあんまりないし、すごくいい勝ち方だったと思うなっ」


穂乃果「………」


海未「穂乃果…?」
ことり「穂乃果ちゃん?」

穂乃果「樫山南のみんな、泣いてた…」

海未「…そうですね」

穂乃果「でも、最後の挨拶の時、頑張って!って言ってくれたんだ」

ことり「そうだね…」

穂乃果「勝とう。樫山南の分まで。海未ちゃん、ことりちゃん。絶対にやり遂げよう!最後まで!」

海未「ええ!」
ことり「うんっ!」






続きはこちら
【ラブライブ】穂乃果「野球で廃校を救うよ!」(後編)




 
ダイヤのA(47) (講談社コミックス)



他のおすすめSS
ことり「ポジティブになれる薬?」
ことり「恋のクスリで、穂乃果ちゃんといちゃいちゃしちゃいます♪」
花陽「はぁ……伝伝伝見たいなぁ……」
凛「穂乃果ちゃんがトラックに弾かれたにゃ!?」
海未「百合でトラックに轢かれたら感動ですか?」ことり「勿論」
にこ「真姫って美乳よね……」ゴクリ



すーぱーそに子 チアガールver. -Sun*kissed- (1/6スケール PVC製塗装済み完成品)
ロウきゅーぶ!SS 三沢 真帆 ~うさぎさんVer.~ (1/7スケール PVC製塗装済完成品)
艦隊これくしょん -艦これ- キューポッシュ 電 (NONスケール PVC塗装済み可動フィギュア) f
igma アイドルマスター シンデレラガールズ 渋谷凛 シンデレラプロジェクトver. ノンスケール 非フタル酸系PVC 塗装済み可動フィギュア

S.H.フィギュアーツ 美少女戦士セーラームーン スーパーセーラームーン 約140mm ABS&PVC製 塗装済み可動フィギュア