曜「千歌ちゃんが記憶喪失になった……」(前編)

325: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/01(火) 20:00:36.20 ID:ZPiavn7W

ザザーン… 

果南(……) 

果南「……うぅ、やっぱり朝は体を動かさないと……なんだかな~……」 

果南(でも……こうやって、波の音を聞いて、朝日を眺めてるのも……) 

果南「これはこれで、良い時間……だよね」 

タタッ… 

「おはよ、果南ちゃん!」 

果南「おっ、来たね。おはヨーソローも敬礼もないみたいだけど……」 

曜「あっ……やり直すね」タッタッタッ… 

果南「あはは、そうきたか」 

曜「よしっ……おはヨーソロー、果南ちゃんっ!」ビシッ 

果南「うん、おはよ。曜ちゃん」ニコッ



326: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/01(火) 20:01:04.34 ID:ZPiavn7W

ザザーン… 

果南「ありがとね、こっちまで来てくれて」 

曜「ううん。私も果南ちゃんと話がしたかったから、ちょうど良かったよ」 

曜「……果南ちゃんは……」 

果南「ん?」 

曜「今日、千歌ちゃんに会う……んだよね」 

果南「……まあね」 

ザーッ…パシャッ… 

果南「『会うのは夜にしたい』って頼んだけど、あっさりOKが返ってきてさ」 

果南「付き添うことに加えて、時間があんまり遅くならなければ大丈夫……だって」 

曜「あの病院、結構自由だよね……」 

曜「昨日、花丸ちゃんからメールが来たけど……学校にはもう一人で行けるみたいだね」 

果南「そうだね。あの時と比べれば……だいぶ回復してるんだなって。そう思うと、少し安心したよ」 

果南「勿論、不安なことも……たくさん、あるけどさ」 

曜「……うん」




327: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/01(火) 20:01:32.12 ID:ZPiavn7W

ザザーン…パシャッ… 

果南「そもそも、今日会うことについても……」 

曜「……」 

果南「不安がない、って言ったら……嘘になる」 

果南「それ以上に、楽しみでもあるし……記憶が完全に戻らなくても、何か思い出してくれれば……って思いもあるし」 

果南「……色々な感情が、気持ちが……混ざりあってる」 

ザザーン… 

果南「でも、あれこれ考えるよりは……体を動かして、千歌と一緒に遊んで……そう思ったのが、一番だよ」 

曜「……」 

果南「……昔、二人でいた時と同じ……」 

果南「――……あの頃、みたいに……ね」 

曜「……っ」



328: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/01(火) 20:02:00.27 ID:ZPiavn7W

果南「それに、曜ちゃんも一緒に……3人で集まる日も。近いうちに、絶対に作るつもり」 

果南「その時は、付き合ってもらうからね?」 

曜「……うん、もちろんだよ」 

ザーッ…ザザーン… 

果南「……私、さ」 

曜「ん?」 

果南「……あの時言ったこと、未だに引っかかってるんだ」 

果南「なんで、あんな……ごまかすような、中途半端なこと言っちゃったんだろうって」 

曜「まあ、私も追いかけようかなってくらいには思いつめてたように見えたよ」クスッ 

曜「鞠莉ちゃんなら大丈夫って思ってたから、そうはしなかったけどね」 

果南「あはは、そっか」 

果南「……『黙ってても何も進まない』『気持ちの整理をつけよう』……」 

果南「みんな、自分の中で考えてるはずなのに……それを、自分は考えていなかった。今でも、そう思う」



329: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/01(火) 20:02:27.82 ID:ZPiavn7W

ザザーン… 

果南「まあ、過去のことをグチグチ言ってても仕方ないけどね」 

果南「……マルにも『無理してるように見えた』って、前に言われちゃったし」アハハ 

曜「ふふっ。やっぱり、お互いのことがわかってきたんじゃないかな」 

曜「私は、果南ちゃんと千歌ちゃんとは……昔から、ずっと一緒だったけど」 

曜「Aqoursが出来て、梨子ちゃんが入ってきて……ルビィちゃんに花丸ちゃんが。ダイヤさんに、鞠莉ちゃん」 

曜「……そして、果南ちゃんも。9人が集まって、一緒に時間を過ごしたからこそ……」 

ザーッ…パシャッ… 

曜「――千歌ちゃんや果南ちゃんに、私が知らなかった……」 

曜「……そして、知りたかった一面があったんだなって。私は、そう思わされた」 

果南「……」 

曜「果南ちゃんと一緒に、のんびり朝日を眺める……この時間もそうだよ」 

果南「うん。私も、この時間があって良かったって思ってるよ」



330: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/01(火) 20:02:54.43 ID:ZPiavn7W

曜「それにね。こうやって、悩んでたことを話してくれるのも……私は嬉しい」 

果南「……っ」 

ザザーン… 

曜「果南ちゃん、いつもはクールだしね……って、どうしたの?」 

果南「……ううん、夏休みも明日で終わりだなってさ。唐突に思い出しちゃって」 

曜「うわ、そうだった……まだ課題少し残ってるし、終わらせなきゃ……」 

曜「でも、善子ちゃんは7割残ってるとか言ってたし、鞠莉ちゃんは8割残ってるって言ってたし……それに比べれば……」 

果南「……ねえ、曜ちゃん」 

曜「ん?」 


果南「――……今、私が見てる曜ちゃんは……前に曜ちゃんが見ていた私と、同じだと思う」 


…ピシャッ…



331: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/01(火) 20:03:20.15 ID:ZPiavn7W

…ザーッ、ザザーン… 

曜「……え……?」 

果南「……私も、曜ちゃんのことはわかってきたって……そう思ってるからさ」 

果南「私の思い違いだったら、それで構わない。むしろ、その方が良い」 

果南「ただ……もし、本当にそうなら。私の目に見えてる通りなら……」ポンッ 

曜「っ!?」ドキッ 

曜(肩、を……) 


果南「――……絶対に、自分に素直に……自分の思ってることを、千歌にぶつけてほしい」 


曜「……っ」 

果南「……私はそう思うってだけだけど、ね」パッ 

果南「曜ちゃんが、もう一度千歌と会うかどうか。それならいつ会うか」 

果南「そして――……会って何を話すか。全部……曜ちゃんが決めることだよ」フフッ 

曜「……」



332: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/01(火) 20:03:48.05 ID:ZPiavn7W

果南「……今までのみんなもね。きっと……そうだと思うんだ」 

曜「……みん、な?」 

果南「千歌が記憶を失って、何もかも忘れちゃって……」 

果南「私と同じで……みんな、会う時には少なからず不安を抱いてたと思う。遠慮していたところもあるかも知れない」 

果南「そして、楽しみっていう気持ちも……記憶を取り戻すことへの希望も……同じように」 

ザザーン… 

果南「でも……それでも」 

果南「――それでも、みんな……千歌に、自分の気持ちを……自分をぶつけてることだけは、変わらない」 

果南「……みんなの話を聞くたびに、それが伝わってきた」 

曜「……っ」 

果南「だから、私も……ここまで迷い続けていたけど」 

果南「みんなと同じように……そうすることに決めたよ」 

果南「……それに、もうすれ違いなんてこりごりだからさ」アハハ



333: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/01(火) 20:04:18.55 ID:ZPiavn7W

曜「……果南ちゃん」 

果南「ん~?」 

曜「私……みんなのことを考えたり、千歌ちゃんのことを考えたり……」 

曜「千歌ちゃんが取り乱すようなことを言っちゃったら、強い言葉を使いすぎちゃったら……」 

曜「そしたら、千歌ちゃんだけじゃない。みんなもきっと、混乱しちゃうって」 

曜「……その内に、どんどん自分を押し込めて、踏み出せなくなって、遠慮して……」 

曜「みんな、私の力になりたいって言ってくれたのに……それ、までも……」 

果南「それこそ、責める人なんていないと思うよ」フフッ 

曜「うん。だから……私も、いらない気を使うのはもうやめるよ」 

ザーッ…ザザーン… 

曜「私のこと、みんなは受け入れてくれるって。最初から、分かってたはずなのに……」 

曜「……でも……」 


曜「――……今……やっと気づけて、良かった」フフッ



334: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/01(火) 20:04:44.59 ID:ZPiavn7W

曜「私……」 

曜「みんなを信じて、千歌ちゃんを信じて……」 

曜「――……自分が、やりたいことをやるよ」 

果南「……うん。曜ちゃんがそう決めたなら、もちろんそれでいいと思うよ」 

曜「……」 

果南「……不安?」 

曜「……ちょっとね」 

果南「私もだよ。今だって心の準備ができていない」 

果南「――でも……」 

曜「えっ?」 


果南「――……私たちが知ってる千歌は……そう簡単に、壊れたりしない」 


曜「……っ」 

果南「そうだよね? 曜ちゃん」ニコ 

曜「……うんっ、間違いないよ」 

ザザーン…



335: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/01(火) 20:05:12.05 ID:ZPiavn7W

果南「……さて! 私はあっちに戻って、やっぱりジョギングしてこようかな~」 

曜「わかった。私も、もう少ししたら戻るよ」 

果南「うん……あ、そうだ。ちょっと待ってて」 

曜「えっ?」 

タッタッタッ…ガリガリ… 

曜(明らかに何かを削ってる音……) 

果南「……はい、話に付き合ってくれたお礼。曜ちゃんはブルーハワイだよね?」トン 

曜「やった、ありがとっ!」 

果南「それじゃ、またね」 

曜「うん、バイバ~イっ」フリフリ 

タッタッタッ… 

曜「じゃあ、さっそくっ!」パクッ 

曜「……なんだか、いつもより……」 

ザザーン…パシャッ… 

曜「……ちょっと美味しい、かも」クスッ



340: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 17:33:47.81 ID:U+ixAFtP

タッ… 

果南(……結局……) 

果南(ここに来るのは、あの日以来……か) 

果南(千歌が記憶喪失になって、私が駆けつけて……そして、すぐ……) 

ウイーン…ピシャッ 

果南「まずは、受付に……」 

タッ、タッ… 

果南「……ふぅ」 

…ガララッ 

千歌「……あっ、果南さん! こんにちはっ」 

果南「やぁ、千歌。そろそろ、こんばんはの時間だけどね」 

千歌「そうですね。でも、出かける準備は出来てますよ!」 

果南「なら良かったよ。先にロビーに戻って、話を通しておくね」 

千歌「わかりましたっ」



341: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 17:34:13.68 ID:U+ixAFtP

ウイーン…ピシャッ 

果南(やっぱり、ちょっと曇ってるか。もう少ししたら晴れる……天気予報の通りだといいけど)タッ… 

千歌「……果南さん?」 

果南「おっと……じゃ、行こうか。ほら、手繋いでおこうっ」パッ 

千歌「はいっ」ギュッ 

トコトコ 

果南「ちょっと歩くけど、大丈夫だよね?」 

千歌「もちろんです! 今日は、星を見に行くんですよね」 

果南「うん、山に登ってね。ロープウェイを使うけど」 

千歌「病院で見るより、綺麗なんでしょうか?」 

果南「う~ん……病院で見る星に、私の家で見る星だって……全部違った良さがあると思う!」 

果南「だから、なんとも言えないけど……綺麗なことは確かだよ。山の空気も新鮮だしね」ニコッ 

千歌「そうですか。それなら、楽しみですっ」



342: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 17:34:43.81 ID:U+ixAFtP

果南「……さ、こっち。これがロープウェイだよ」 

千歌「おお、これが……! なんだか、さっきより少し晴れてきましたね」 

果南「そうだね。これならきっと、ロープウェイからもいい景色が見られるよ」 

千歌「じゃあ、乗りましょうっ」タッ 

ガタン…ウイーン 

千歌「わあっ、すごい景色っ!」ベタッ 

千歌「ほら、果南さんも一緒に……」 

果南「わ、私は座って見るだけでいいよ。そ、その……あんまり揺らしちゃダメだよ?」 

千歌「はい、わかりましたっ……あっ、あっちにかなり大きな山が!」ガタガタッ 

果南「はぐぅ!?」ビクッ 

果南(……あれ?) 

果南(……千歌が言ってるのって『富士山』のこと……だよね) 

果南(そうだ……『いつもの千歌だ』って、あんまり意識してなかったけど……) 

千歌「あれ? 果南さん、こういうのダメなんですか?」 

果南「えっ……い、いや、大丈夫大丈夫。あはは……」



343: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 17:35:17.88 ID:U+ixAFtP

ガタン、タッ… 

果南「よし、すっかり晴れてるね。ほら、こっち」タタッ 

千歌「はいっ。そういえば、帰りもロープウェイなんですか?」タッ 

果南「そうだよ。遅くなりすぎるとなくなっちゃうから、余裕をもって少し早めに戻るつもり」 

千歌「わかりましたっ。それじゃあ、星が出てくるまで待機ですね!」 

果南「うん……さ、この場所で待とうか。ここが一番、良く見えるよ」 

「……」 

千歌「……この時期って、日が沈むのが遅いんですね。今もまだ、少し赤い光が見えます」 

果南「夏、だからね。と言っても、明日でもう終わりだけど」 

果南「……これからは、どんどん日が沈むのが早くなっていくよ」 

果南「それと……」 

千歌「それと?」 


果南「――……私たちの、そして……千歌の夏休みも、明日でおしまい」



344: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 17:35:57.06 ID:U+ixAFtP

千歌「……はい、他の人にも言われました」 

千歌「それで、やっぱり……学校に戻るのは……」 

千歌「――……まだまだ時間がかかる、って……先生に言われてます」 

果南「っ……そっか」 

果南「……大丈夫。学校が始まっても、必ず会いに行くし……こうやって、外にも連れ出すよ」 

果南「……昔と同じように」 

千歌「……それなら、良かったです」 

果南「それに、私だけじゃないよ。みんなも会いに来てくれる」 

果南「そして……まだまだ色々なところに連れ出してくれるはずだよ」 

果南「それぞれの違ったやり方で、ね」ニコッ 

千歌「……入院生活も、退屈しなさそうですね」クスッ



345: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 17:36:27.77 ID:U+ixAFtP

果南「もしかすると、千歌の病室に行列が出来ちゃうかもね?」 

千歌「ええっ……アイドルじゃないんですから、そんな……」 

果南「アイドルだよ?」 

千歌「……はっ!?」 

果南「っと、そろそろ星が見えてくる頃だね。夏の空は、冬に比べると疎いんだけど……」ポツ… 


果南(……え……?)ポツ、ポツ… 


果南「これって……」 

千歌「あ、雨……?」ポツポツ… 

果南「雲も、突然……さっきまでは見えなかったのに……」 

千歌「ホントだ……空、真っ黒ですね……」



346: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 17:37:33.82 ID:U+ixAFtP

ポツ、ポツ…ザーッ… 

千歌「わっ、雨が強くっ!?」 

果南「千歌、こっちに!」ギュッ、タタッ 

ザザーッ… 

果南「ここなら大丈夫だけど……ちょっと濡れちゃったよね? ほら、このタオルを使って」 

千歌「ありがとうございますっ」パッ、フキフキ 

「……」ザーッ…ビュウッ… 

果南(雨に加えて、風も……なんで、こんな時に……) 

果南(……でも) 

果南「……千歌、今日は戻ろうか」 

千歌「えっ?」 

果南「ロープウェイはまだ動いてると思うけど……これ以上、雨が強くなってもおかしくない」 

果南「もしそうなったら……ロープウェイが止まっちゃう」 

千歌「……っ」



347: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 17:38:08.59 ID:U+ixAFtP

果南「……徒歩でも帰れなくはないけど、強い雨が降ってたらどちらにせよ危険だよ」 

果南「特に……今の千歌に、そんなことをさせるわけにはいかない」 

果南「一応、病院への連絡を入れておくね。え~っと、千歌は先にこの傘を……」ガサッ 


千歌「――……私……戻りたくないです」 


果南「……えっ?」 

ザー、ザーッ… 

果南「……何言ってるの? 戻らないと……」 

千歌「……わがままなのはわかってます。危険だってことも、そうした方が良いってことも」 

千歌「でも……私、は……」 

千歌「……ここで止めたら、絶対……後悔します……」 

果南(……っ) 

千歌「だから、もうちょっとだけ待ってみませんか?」 

果南「それ……本気で言ってるの?」 

千歌「……本気です」 

果南「……っ!」グッ



348: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 17:38:36.50 ID:U+ixAFtP

パァン! 


千歌「――……え……?」 


果南「……はぁ、はぁ……」 

千歌「……い……た……」ジワッ 

果南「――千歌! 自分が……自分が何言ってるかわかってるの!?」 

千歌「……っ」 

果南「ここで待ってて、雨がより強くなったら……帰れない、かもしれない……」 

果南「私だって、悔しいよ! ここまで来て、千歌と二人っきりで星を見られれば……」 

果南「昔みたいに、あの時みたいに……そうできればどんなに良かっただろうって、今だって思ってる!」 

千歌「……果南、さん……」 

果南「でも……それでも……」 

「……」ザーッ… 

果南「……千歌を、無事に帰さないわけにはいかない……」グスッ 

果南「ここで、何かあったら……私だけじゃない。千歌を待ってる、みんなだって……」 


果南「――……そんなの、後悔しても……しきれないよ……」グッ



349: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 17:39:03.24 ID:U+ixAFtP

ザザーッ… 

千歌「……そう、ですよね」 

果南「……えっ?」 

千歌「いえ、私……自分の事しか、見えてなかったんだなって……」 

果南「……」 

千歌「果南さんの、気持ちのこと……考えて、ませんでした」グスッ 

果南「……っ」 

千歌「だから……ぐすっ……ごめんなさい」ゴシゴシ 

千歌「……今日は、帰りましょう。でも……また誘ってくださいね」 

千歌「絶対……絶対、ですよっ。約束、です」 

果南「……うん、約束する」ニコ



350: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 17:39:34.15 ID:U+ixAFtP

千歌「こういう時って……『ゆびきりげんまん』っていうのをするんでしたっけ?」 

果南「う~ん……それは違うかな」クスッ 

千歌「えっ、そうなんですか? じゃあ、何を……」 

果南「こういう時は……」スッ 


果南「――……ハグ、しよ?」ポタッ 

ガバッ 

千歌「……果南、さんっ……うぅ……ぐすっ、ひっぐ……」ギュウッ… 

果南「ごめんね、千歌。星も見られなくて……それに……」 

千歌「謝らないでくださいっ! 私は……」 

千歌「私は……果南さんがああしてなかったら、絶対……諦めなかった……」ギュウッ 

果南「……っ」 

千歌「私が……ぐすっ、一番……よくわかってます……」 

ギュウッ 

千歌「っ!」 

果南「――……私も、だよ」ポタッ 

ザーッ…



351: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 17:40:05.67 ID:U+ixAFtP

タッタッタッ… 

果南「千歌、こっち! 気を付けてね」 

千歌「はいっ」タッタッ 

タッ… 

果南「まだ大丈夫ですか?」 

<ハイ、コチラヘ… 

ガタン…ウイーン 

果南「ふぅ……何とかなったね」 

千歌「そうですね」 

ザーッ… 

千歌「それにしても……果南さんも私も、結構濡れちゃいましたね」エヘヘ 

果南「あはは、傘もあんまり意味なかったね。あれだけ降ってるから、仕方ないけどさ」 

千歌「私、先生に怒られちゃうかも。『雨の中何やってるんだー!』って……」 

果南「大丈夫大丈夫」 

千歌「何も大丈夫じゃないです……」 

果南「『私が無茶苦茶に引っ張りまわした』ってことにすれば、多分気が逸れるよ」アハハ 

千歌「……そういうもの、なんですか?」 

果南「うん。そういうものだよ」



352: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 17:40:31.36 ID:U+ixAFtP

果南「私ね」 

千歌「……はい」 

果南「小さい頃も、ここに来たことがあるんだ」 

千歌「私と一緒に……ですか?」 

果南「ううん。さっき言ったのは、淡島に遊びに来てくれた千歌と一緒に星を見たって話」 

果南「Aqoursが出来てからもそうだけど……小さい頃も、同じくらい千歌と会って遊んでたんだよ?」 

千歌「……」 

果南「ここに来たのは……ダイヤと鞠莉と私。3人でだった」 

千歌「へ~……」 

果南「あの時、鞠莉は部屋を抜け出してまで私たちに会いに来てさ」 

果南「このロープウェイに乗ってる間、下で鞠莉の捜索が始まってたのは、今でも覚えてる」フフッ 

千歌「え~……まあ、なんとなく想像できちゃいますけど……」



353: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 17:40:56.97 ID:U+ixAFtP

果南「3人で、流れ星を探しに行こうって……流れ星に、願い事をしようってね」 

千歌「わあっ、素敵ですね!」 

果南「それでさっき千歌と一緒にいた所まで、登って行って……」 

果南「……でも」 

千歌「……でも?」 

果南「流れ星は見られなかった。今日と同じように、雨が降ってきてさ」 

ザーッ… 

果南「……いや、『見られなかった』……は、少し語弊があるか」クスッ 

千歌「へ?」 

果南「ううん、なんでもない」 

「……」ザーッ… 

果南「……こうやってまた、雨に阻まれるなんてね」 

千歌「……」



354: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 17:41:22.60 ID:U+ixAFtP

千歌「……でも、約束は守ってもらいますよ?」ジー 

果南「もちろん。私だって……今日はダメでも、いつか必ずって思ってる」 

果南「このまま終わりで、いいわけないよ」 

千歌「そうですよ。雨だって、降り続けるわけじゃないです!」 

果南「その通り。だから、雨がやむ日まで……晴れる日までは」 


果南「――千歌と、私と……みんなで遊んでようか」ニコッ 


千歌「……楽しみです」クスッ 

果南「……さ、そろそろだよ。まだ結構降ってるし、早めに帰らないとね」 

千歌「はいっ」 

ウイーン、ガタン…タッ パサッ 

千歌「……やっぱりちょっと狭いですね、これ」 

果南「確かに……でも、たまにはこういうのもいいんじゃない? いつ以来だろ」 

千歌「昔も、一緒の傘に入ってたんですか?」 

果南「たまに、ね」 

タッ、タッ…



355: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 17:41:48.98 ID:U+ixAFtP

ウイーン…ピシャンッ 

果南「これ、受付でボロボロに言われそうだね」ビショビショ 

千歌「私、病室から追い出されちゃうかもしれません……」ビショビショ 

果南「それはないと思うけど……」 

果南「さ、今のうちにこれで拭いておきな。私は受付に行ってくるから」パサッ 

千歌「ありがとうございます」パッ、フキフキ 

果南(……結局、予報は大ハズレかぁ。未だに降ってるし)タッ 

果南(……明日まで、降り続けたら……) 

タッ、タッ 

果南「……はい、戻ったよ。とりあえず、お風呂に入ってきた方が良いと思う」 

千歌「そ、そうですね……果南さんも、拭いた方が」 

果南「そうだね……っと」パッ、ゴシゴシ 

千歌「受付の人には、なにか……」 

果南「病人でもないのに『お大事に』って言われちゃった」 

千歌「あははっ」



356: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 17:42:14.71 ID:U+ixAFtP

果南「でも……風邪は引きたくないし、早く帰ることにするよ」 

千歌「はい、わかりましたっ。まだ降ってるみたいですし、お気をつけて!」 

果南「うん、ありがと……あ、そうだ」 

千歌「どうしました?」 

果南「この後、LINEはしっかり見ておいてね」 

千歌「大丈夫ですっ」 

果南「……それじゃ」 

千歌「さようならっ」フリフリ 

ウイーン…ピシャン …パサッ 

果南(空は……)フッ 

果南(……雲が覆ったまま、か。雨も、少しだけ強くなってる……) 

ザーッ… 

果南(明日は……天気予報だと、一日中曇りに時々雨……だっけ)トコトコ



357: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 17:42:40.20 ID:U+ixAFtP

果南(……曜、ちゃんは……)ピタッ 

ザーッ… 

果南「……ううん」 

果南「『やりたいことをやる』。曜ちゃんの言葉を……」 

果南「私はただ……待つだけ、だよね」 

果南「きっと、みんなも同じはず」 

果南「それに……千歌の言う通り、雨がいつまでも降り続けるわけないしね」クスッ 


果南「――さぁ、帰ろうか!」タッ 

ピチャ、ピシャッ… 

ザーッ…



360: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 22:07:58.03 ID:U+ixAFtP

「……」 

チッ、チッ… 

曜(……12時……) 

曜「……そろそろ出た方が良いかな。早め早めに準備を、っと……」 

ガサゴソ… 

曜「……よしっ」 

バタンッ タッタッ 

曜「ママ、いってくるねっ!」 

<ハーイ 

ガチャッ…バタン 

タタッ 

曜「……」 

タッ、タッ…



361: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 22:08:24.34 ID:U+ixAFtP

曜(雨……昨日の夜は、強く降ってたけど……) 

タッ、タッ… 

曜(……今は、やんでる) 

曜「でも……雲は出たまま、かぁ」 

曜(昨日、果南ちゃんは……) 

タッ、タッ… 

曜(結局、星は見られなかった――そう言ってたっけ) 

タッ… 

曜「……」 

トコトコ…



362: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 22:08:49.89 ID:U+ixAFtP

タッ、タッ…ピタッ 

曜「……」 

曜(――……ここだ……)タッ 

ザザーン… 

曜(……千歌ちゃんの、家の前……) 

ザーッ…ザザーン… 

パシャッ… 

曜(この……海岸、で……) 

「……あっ!」 

曜「……っ」 

タッタッタッ… 

…ザッ 

「――……こんにちは、曜さんっ」ニコッ 

曜「……ふふっ」 

曜「――こんにちは、千歌ちゃんっ!」 

千歌「えへっ」



363: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 22:09:17.14 ID:U+ixAFtP

千歌「さ、こっちへっ!」ギュッ 

曜「わわっ!? い、いきなり引っ張られると……」タタッ 

…ザッ 

千歌「この場所なら、海がよく見えますっ」 

曜「……そうだね」 

ザザーン… 

千歌「よ……っと」ザッ 

ザーッ…ピシャッ… 

曜「……私より、早く来てたんだね」 

千歌「はい。待ってる間は……こうやって、座って海を眺めてました」 

ザザーン…



364: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 22:09:42.92 ID:U+ixAFtP

曜「ここまでの道は大丈夫だった?」 

千歌「大丈夫ですよ。曜さんに言われた道を、何度も確認したので」 

曜「そっか」クスッ 

ザーッ…ザザーン… 

千歌「――……いい場所、ですね」 

曜「うん、私もそう思う」 

「……」 

パシャッ… 

曜「……隣、いい?」 

千歌「もちろんっ」 

曜「ありがと。よいしょ……っと」ザッ 

ザーッ…



365: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 22:10:48.77 ID:U+ixAFtP

曜「――……寂しかった、かな?」 

千歌「……へっ!? ど、どうして、突然……?」 

曜「ううん、なんとなく」 

千歌「……」 

ザザーン… 

曜「千歌ちゃんが、そんな表情だったから」 

千歌「そう、なんですか?」 

曜「そうだよ」 

千歌「そう、ですか……」 

曜「それと――もし、私もここに一人で座ってたら……ちょっと寂しかったかも、って」クスッ 

千歌「……」 

ザーッ…ザザーン…



366: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 22:11:16.17 ID:U+ixAFtP

曜「……待たせちゃってごめんね」 

千歌「いえ、そんなっ。私が早く来ただけですよっ」 

「……」 

ザザーン…パシャッ… 

千歌「……この場所、私の家の前なんですね」 

曜「そうだね」 

千歌「病院からだと、少し遠いですけど……」 

曜「うん。入院が終わって家に戻ったら、すぐ来られるようになるよっ」 

千歌「……そうですね」ニコ 

ザザーン… 

曜「……そうだ。ここ、千歌ちゃんと梨子ちゃんが初めて会った場所なんだよ?」 

千歌「えっ、そうなんですか!?」 

曜「そ。千歌ちゃんが話してくれたの、よく覚えてる」クスッ



367: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 22:11:53.77 ID:U+ixAFtP

曜「あと、梨子ちゃんが海に飛び込もうとした話も……」 

千歌「ええっ!? 危ないですよ、それ!」 

曜「だから、それを千歌ちゃんが止めたんだよ」 

曜「……その後、二人とも海に落っこちたって聞いたけど」 

千歌「む、無茶苦茶ですね……」 

曜「あははっ、そうだね」 

ザザーン… 

曜「……私ね」 

千歌「えっ?」 

曜「ここに来る前……千歌ちゃんと会うって決意した時から、今まで……」 

千歌「……」



368: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 22:12:43.33 ID:U+ixAFtP

ザーッ…パシャッ… 

曜「『何を話そうか』『会話に詰まったらどうしよう』『変なこと言わないようにしないと』とかとか……」 

曜「ずっと、ず~っと……頭の中で考えてた」 

千歌「……っ」 

曜「――でもね」 

千歌「……でも?」 

曜「こうして横に並んで、座ってみたら……」 


曜「――……不思議と、話したいことが次々思い浮かんできた」クスッ 


曜「もしかすると、夜までずっとここ話してるかもね?」 

千歌「ええっ!? それじゃあ先生に怒られちゃいますっ、今日は検査にリハビリに……」 

曜「あはは、冗談だよ。ごめんごめん」 

千歌「でも……そう言ってくれるのは、嬉しいです」



369: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 22:13:24.81 ID:U+ixAFtP

ザザーン… 

千歌「……いつか、ここで……」 

千歌「――……曜さんと、夜まで……星が見えるまで。ずっと、話せたらいいな……って」ニコ 

曜「……ふふっ、私もそう思うっ」 

曜「そうだっ! どうせなら、Aqoursのみんなを誘ってドンチャンやってもいいかもっ」 

千歌「あっ、それも楽しそうですねっ! 9人みんなで、夜まで……」 

ザーッ…ザザーン… 

千歌「今までのこととか、これからのこととか」 

曜「……」 

千歌「ずっと、話してるのも……」 

曜「……千歌ちゃん」 

千歌「きっと、楽しいですよっ」 

曜「千歌ちゃんっ」 

千歌「だから絶対、みんなで集まっ……」 

曜「千歌ちゃんっ!」 

千歌「ひうっ!?」



370: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 22:15:08.88 ID:U+ixAFtP

パシャッ… 

千歌「……えっ? ど、どうしたんですか? 突然……って、わわっ!?」 

ガバッ…ドサッ! 

ギュウッ… 

千歌「よ、曜さん? そんな、抱きしめられると……」 


曜「――千歌ちゃん……お願い……っ」グスッ 


千歌「お、お願いって~……一体、何を……」 

曜「千歌ちゃん、気付いて……」 

千歌「気付いてって……」 


曜「――……気付いてよっ!」ポタッ 


千歌「……っ」 


曜「千歌ちゃんは……」 


曜「……千歌ちゃんは、今……」 


曜「――……泣いてるんだよ?」ギュウ…



371: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 22:15:45.54 ID:U+ixAFtP

千歌「――……ほぇ……?」ゴシゴシ 


千歌「――……あれ、ホント……だ……」ポタッ 

千歌「私……なんで、だろ……なんで、泣いて……」グスッ 

ギュッ 

曜「お願い。自分の涙に……心に」 

曜「――……気付いて、あげて……っ」ポロポロ 

ギュウッ… 


千歌「……っ」 

千歌「……うぅ……」グスッ 

千歌「――……わぁぁぁぁん! ひっぐ……うぅ……うわぁぁぁぁん!!」ポロポロ 

ギュッ 

曜「……千歌、ちゃん……っ」ギュウッ 

千歌「……ぐすっ……わぁぁぁぁん……」ポタ、ポタッ…



372: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 22:16:21.96 ID:U+ixAFtP

ザーッ… 

「……」 

ザザーン…ピシャッ… 

曜「……落ち着いた?」 

千歌「……はい」グスッ 

ザザーン… 

千歌「……恥ずかしいところ、見せちゃいましたね」エヘヘ 

曜「いいの、もう何度も見てきたし♪」 

千歌「そ、そんなぁ~……」 

曜「そして、私も見せてきたっ! なんたって、小さい頃から今の今まで……ずっと一緒だったんだもん」 

千歌「……っ」 

千歌「……そう、ですよね」 

曜「……」



373: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 22:17:25.49 ID:U+ixAFtP

ザザーン… 

千歌「私……」 

曜「ん?」 

千歌「……『記憶を失っている』って聞かされた時のこと、今でも覚えてます」 

千歌「真っ白な、全く知らない場所で目覚めて……知らない人が何人もいて」 

千歌「……その時は、酷く暴れてましたっけ」 

ザーッ…ザザーン 

千歌「でも……」 

曜「……うん」 

千歌「梨子さんが、学校に連れて行ってくれて……善子さんと曜さんでゲームをして」 

千歌「ダイヤさんにルビィさんと神社にお参りして、鞠莉さんとソフトボールをして」 

千歌「花丸さんと本を読んで、果南さんと星を見……られな……えっと、ハグして」 

曜(ハグしたんだ果南ちゃん……) 

千歌「そして、今ここに居られて……曜さんと話せて」 

千歌「――……本当に、とっても、と~っても……楽しかったっ!」ニコッ



374: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 22:18:16.26 ID:U+ixAFtP

曜「……そっか」クスッ 

ザザーン… 

千歌「それで、みんな……まだまだ、たくさん遊んでくれるって」 

千歌「そう言ってくれたのも、嬉しくて……今から、わくわくしてますっ」 

千歌「だから、私……」 


千歌「――……記憶を失った今でも……今が、楽しいです。未来が、楽しみです」 

ザザーン…パシャッ… 

千歌「……もちろん、心配事も不安もあるけど……」 

曜「……」 

千歌「勉強も、歌もダンスも……遊びも。そして……スクールアイドルとしての活動も」 

千歌「Aqoursのみんなが、近くにいて……色々なことを教えてくれる」 

千歌「――……そうですよね、曜さん?」 

曜「ヨーソロー! もちろんでありますっ!」ビシッ 

千歌「ふふっ……良かった」ニコ



375: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 22:18:42.53 ID:U+ixAFtP

千歌「そう思うと、たくさんある心配事も不安なことも……怖くないんです」 

ザザーン… 

曜「……」 

千歌「……曜さん?」 

曜「……ううん。千歌ちゃんがそう思ってくれていることが、私も嬉しくて」 

千歌「……えへへ」 

ザーッ…ザザーン… 

千歌「まあ、卒業した後のこととかは何にも考えてませんけどっ」 

曜「あははっ」 

千歌「笑えません」 

曜「はい……」 

ザザーン…



376: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 22:19:25.55 ID:U+ixAFtP

千歌「……そうだ」 

曜「どうしたの?」 

千歌「私たちの学校の夏休みって……今日で終わり、なんですよね」 

曜「……そうだね」 

千歌「夏休みが終わったら、新学期が始まって……」 

千歌「秋が来て、冬が来て……春が来て」 

千歌「……そして、卒業式の日も」 

ザザーン… 

千歌「3年生のみんなとは、離れ離れになって……その次は、私たちも……」 

千歌「――……時間は、止められない……」 

パシャッ… 

曜「……っ」



377: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 22:20:25.66 ID:U+ixAFtP

「……」 


千歌「――……一つだけ、心残りがあるんです」 


曜「……心、残り……?」 

千歌「はい。記憶を失って、何にも残ってない私が言うのもなんですけど……」エヘヘ 

千歌「今が楽しくて、未来が楽しみで……怖いものも何もない。それは、本当です」 

千歌「でも……一つだけ」 


千歌「――……『記憶を失ってしまったこと』……」 

千歌「それだけが、私の……心残り。辛くて悲しくて……悔しくて」 

千歌「そして、きっと……一生忘れられないこと」 


曜「――……ちか、ちゃ……ん……」 


ザザーン…



378: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 22:21:33.09 ID:U+ixAFtP

千歌「みんなと会って、色々なところに行って……」 

千歌「楽しいって思ったり、悲しいって思ったり、嬉しいって思う……そのたびに」 

千歌「失った今までの時間が、記憶が……思い出が。どれほど大切なものだったか」 

千歌「そんな思いが、どんどん強くなっていって……」 

ザーッ… 

千歌「……さっき……」ポタッ 

曜「……っ」 

千歌「――さっきは……それを思い出しちゃったから」ゴシゴシ 

千歌「ちょっと……感極まった?というか……」エヘヘ 

曜「……そっか」



379: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 22:22:05.24 ID:U+ixAFtP

曜「……私はね、それでいいと思うっ」 

千歌「……へ?」 

曜「自分の中にあるもの、それがどんなに辛いものでも……楽しいものでも」 

曜「……抱え込んでいいと思う」 

千歌「……」 

曜「ただ……」 

千歌「……ただ?」 

曜「もし、それを抱えることに……耐えきれなくなったら」 

曜「その時は――さっきみたいに」 


曜「――さっきみたいに、我慢しないで……思いっきり泣いてほしい」 


千歌「……っ」



380: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 22:22:42.38 ID:U+ixAFtP

曜「千歌ちゃんはね、いっつも周りのことをよく見てた」 

曜「――でも……その分、自分の事には……あんまり、目を向けてなかったというか」 

千歌「……」 

曜「小さい頃からずっと一緒に居る私が思うんだから、間違いないっ!」 

曜「……だから、きっと抑え込んじゃう部分もあると思うんだ」 

千歌「むぅ……人のこと言えるんですか?」ジトー 

曜「ううん、言えないっ!」ガバッ 

千歌「え……わあっ!?」 

ドサッ、ギュッ 

曜「っ……だか、ら……」グスッ 


曜「――私も、そうする……よ……」ポタ… 


千歌「……曜、さん……」 

ギュウッ…



381: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 22:23:23.80 ID:U+ixAFtP

曜「……私……」 

曜「千歌ちゃんが、記憶を失ってから……ずっ、と……」ポタ 

曜「ぐすっ……幼馴染の私がしっかりしなきゃ、とか……みんなを動揺させたくない、とか……」 

曜「余計なこと、ばっかり……考えてて……っ」ギュウッ 

千歌「……っ」 

曜「千歌ちゃんと、会うこと……も……うぅ……いっつも、遠ざけてて……」グスッ 


曜「……本当は……会って、話をして……」 

曜「――……こうやって、抱きしめたかったのに……っ」 


千歌「……」 

曜「そうしない方が辛い、って……わかってた、のに……」ポタポタ 

千歌「……曜、さん……」 

…ギュッ 

曜「っ……うぅ……わぁぁぁぁん!!」ポロポロ 

ギュウッ…



382: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 22:23:51.33 ID:U+ixAFtP

曜「ぐすっ……」 

千歌「……落ち着き、ましたか?」 

曜「んっ……」コシゴシ 

曜「……うん、なんとか」ニコ 

曜「よっ……と」 

ザッ 

千歌「よ、曜さん……? どこへ……」 

曜「そろそろ、帰ろうかなって思って……私も、すっきりしたし」エヘヘ 

ザッ、ザッ… 

曜「千歌ちゃん、病院まで一緒に帰ろう?」 

千歌「……すみません」 

千歌「――……私は……もう少し、ここに残りたいです」 

曜「……そっか。じゃあ、病院には私が連絡しておくねっ」 

千歌「……はい、ありがとうございます」



383: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 22:24:40.48 ID:U+ixAFtP

曜「じゃ……」 

ザッ、クルッ 

曜「またね、千歌ちゃんっ!」ビシッ 

千歌「……はい、また今度」ニコッ 

クルッ、ザッザッ… 

キラッ…ポタッ 

千歌(……っ) 

千歌(……今、の……) 

…ザザーン…



384: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/02(水) 22:25:45.00 ID:U+ixAFtP

千歌「……」 

ザッ…ドサッ 

千歌「空……」 

千歌(……一面の雲、かぁ……) 

千歌「私が記憶を失って、ここまできて……」 

千歌「今が楽しくて、未来が楽しみで」 

千歌「……」 

千歌「……私は、これでいいんだよね」



390: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:33:22.16 ID:mKDAuNGP

千歌(……) 

千歌(……本当に……?) 


千歌(――本当に、これでいいのかな……?) 


千歌(――……何か、大切なことを……忘れてる、ような……) 


千歌「でも……」 


千歌「何を忘れてるのか、わからないよ……」 


千歌「――……なんでだろ……」 


千歌「なんで、なんで――わからないんだろ……」



391: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:33:47.92 ID:mKDAuNGP

千歌(……私……) 

千歌「やっぱり、バカだ……」ギュッ 


千歌「――……バカ……ち……」ツー… 

ポタッ… 

… 
……



392: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:34:19.76 ID:mKDAuNGP

~~ 

千歌「……んぅ」パチッ 

千歌「――……あれ? 私……寝てた?」 

千歌「……えーっと……」キョロキョロ 

千歌「……ええっ!? こ、ここどこ!?」 


??「ここは、私の部屋だよ!」 


千歌「……ほぇ?」 

千歌「こ、声? どこから? 私の声と似てる……いや、同じだよね!?」 

??「いいからいいからっ! さ、こっちに来てっ!」 

千歌「こっちって……わっ!? これ……」 

キラキラ 

千歌「青い……羽根? なんだか、綺麗……って、わあっ!?」 

フワッ… 

千歌「は、羽根が飛んで……ま、待って~っ!」ダッ 

??「あははっ。最近練習してなかったし、ちょうどいいよっ」 

千歌「えっ……むぅ、余計なお世話だよっ」



393: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:34:50.03 ID:mKDAuNGP

ガタンッ! 

「いってらっしゃい」 

「バカチカ、また遅刻~?」 

「気を付けてね、千歌ちゃん」 

千歌「へ? えっと……い、いってきまーすっ!」 

タッタッタッ… 

千歌「……はぁ、はぁ……」タッ 

千歌「……こ、ここって……」 

??「うん。私が通ってる学校、浦の星女学院だよ。じゃ、次はこっちっ」フワッ 

千歌「え~っ!? まだ走るの!?」 

タッタッ… 

??「はい、ここまでっ」 

千歌「はぁ、はぁ……おんがく、しつ?」 

??「ふふっ。羽根は、その中にあるよ」 

千歌「え、えぇ……じゃあ、失礼しまー……す……」ガララッ



394: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:35:35.02 ID:mKDAuNGP

「……」 

…タン♪ 

千歌「……っ」 

「Aqoursは、千歌ちゃんから始まったものだった」 

「曜ちゃんが入って、私が入って……1年生のみんなに、3年生のみんなも」 

「学校で初めてのライブをやって、東京に行って……地方予選に出て」 

「体育館、屋上、花火大会に……色々な場所で、色々な曲を披露してきた」 

「地方予選では、負けちゃったけど……『めげずに、残された夏休みも練習頑張ろうっ』って」 

「そう言った千歌ちゃんに、みんながうなずいて……笑ってた」 

「『想いは一つ』……その時に改めて感じたこと。私も、笑っちゃった」 

「……でも」



395: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:36:08.53 ID:mKDAuNGP

??「さ、次はこっち」フワッ 

千歌「……うん」タッ 

タッタッ… 

??「ここだよ、図書室!」 

ガララッ 

「そのすぐ後に、千歌ちゃんが……」 

「――事故で、記憶を失った」 

「オラと一緒に勉強して、本を読んだことも……」 

「私と、たくさんゲームで遊んだことも……」 

「何もかもの思い出が、千歌ちゃんの中から消えちゃった……まるで、本の中の出来事みたいに」 

「私は、どうすればいいのかわからなかったわ」 

「マルは、ここでルビィちゃんと……たくさんの本を開いて、閉じて……」 

「何か手掛かりがないかって、ずっと探してた」



396: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:37:57.53 ID:mKDAuNGP

「みんなが集まって、別れて……9人が、一人ひとりになったその日ね」 

「梨子ちゃんから『千歌ちゃんを学校に連れていきたい』っていうメールがあった」 

「その時は、私もみんなもショックで動揺してて……梨子だって、そうだった」 

「それでも、梨子ちゃんはそう提案した……梨子ちゃんなら」 

「梨子なら、大丈夫。私もずら丸も、みんなが思ってたこと」 

「そして……次の日、梨子ちゃんと千歌ちゃんは……この学校に来た」



397: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:38:32.51 ID:mKDAuNGP

??「さ、次はここ。生徒会室!」フワフワ 

千歌「……っ」 

ガララッ 

「梨子さんが千歌さんと会ったこと。様子はどうだったか、記憶はどうだったか……」 

「梨子ちゃんは、全部ルビィたちに教えてくれた」 

「千歌さんらしさ、千歌さんの個性……それが失われていないように見える。そう聞いたときは、安心して」 

「千歌ちゃんの中に、記憶はない――思い出がない。そう聞いた時は……やっぱり、悲しかった」 

「でも……その日の夜、善子さんが千歌さんに会うと話していて」 

「ルビィも、お姉ちゃんも……おんなじことを思ってたっ」 

「どこに連れ出せばいいか、どこで遊べばいいか……」 

「それは、正解なんてないこと」 

「だから……わたくしは、行きたいところに行こうと決めました」



398: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:38:57.89 ID:mKDAuNGP

「梨子さんがピアノを弾いて……」 

「善子ちゃんが、ゲームで遊んだように」 

「結局……わたくしたちも、自分らしい場所で自分らしく……そうありたかった」 

「そして、千歌ちゃんと一緒に……楽しみたかったっ」 

「もちろん、不安もありましたけど……」 

「帰る時は……会えてよかった、遊べてよかった。そんな気持ちで、いっぱいだったよっ」 

「……でも、わたくしは……」 

「ルビィも……」



399: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:40:42.84 ID:mKDAuNGP

??「どう? まだ走れるよねっ」フワフワ 

タッタッ 

千歌(……理事長、室……) 

ガチャッ… 

「私も、梨子ちゃんも、善子ちゃんも」 

「マルも、私も……ね♪」 

「みんなが、千歌に会ったその日、千歌の前で泣いていて……」 

「……ちかっちも、同じように泣いていた」 

「――……けどね、それは悲しいからってだけじゃない」 

「私は、ちかっちが変わってなくて良かった……そう思って、安心して」 

「私は、星を見れなかった悔しさと……千歌を叩いたこと。でも……千歌を抱きしめられたことも」 

「私たちだけじゃないわよ?♪」 

「千歌に会ったみんなは……みんなが、それぞれの涙を流してた」 

「それはね? みんなが、自分を……自分の感情を……」



400: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:41:34.90 ID:mKDAuNGP

「――心を……千歌にぶつけてるから」 

「そして、それにちかっちが応えてくれたからよ♪」 

「記憶を失っていても、なんであっても……千歌は千歌、変わらないことだった」 

「それでね、思ったの。ちかっちが変わらない様に……私たちだって変わってない、って」 

「ルビィちゃんが、大好きなスクールアイドルを始められた時」 

「マルがためらいを振り切って、やりたいって決めた時」 

「善子ちゃんが、堕天使キャラを捨てず……そのままでいいって、思い直した時。そして……」 

「私に果南にダイヤ、3人が仲直り出来た時だってそうよ♪」 

「いつだって、私たちは……千歌に、他のみんなに、自分をぶつけてきた」 

「ちかっちが、みんながいて……やりたいようにやってきたのよ♪」



401: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:42:51.55 ID:mKDAuNGP

タッタッ… 

??「最後は……部室、だね」フワフワ 

千歌「……ぐすっ……うぅ……」ポタッ 

ガララッ 

千歌「……っ」ゴシゴシ 


「……ねえ、千歌ちゃん」 


「私ね、『今が楽しい、未来が楽しみ』……千歌ちゃんが、そう言ってくれたこと」 


「本当に、ほんとうに……ほんっとうに、嬉しかったっ」 


「私は、この言葉……絶対忘れないよ。忘れたくないっ!」 


「みんなが言ってくれたように……千歌ちゃんがいたから、みんながいたから」 


「私たちは、自分であり続けて……ぶつかり合って。今まで……過ごしてきた」 


「だから……ありがとう」



402: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:43:21.89 ID:mKDAuNGP

ビュウッ、ゴオッ! 

千歌(っ!? か、風……!?) 


「――……ありがとう、千歌ちゃん」ニコッ 


千歌「い、いかないでっ!」グッ 

ゴオオッ! 

千歌「――いかないでよっ!」ザッ 


ゴオオォッ! 


千歌「――……かない、で……っ!」 


千歌「――……よう、ちゃ……っ……」 

ビュウッ!! 

千歌「ぐうっ……! 待っ……わあっ!?」



403: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:44:00.29 ID:mKDAuNGP

??「……大丈夫?」ポン 

千歌「……んっ」パチッ 

千歌「……あれ? ……ここ、は……」 

千歌(……一面、真っ白……) 

??「ほら、起きてっ」ギュッ 

千歌「あ、ありがと……よいしょ、っと」タッ 

千歌「あなた、は……」 

??「私は、記憶を失う前のあなた」タッ… 

クルッ 

??「――……チカ、だよ?」ニコッ 

千歌「……っ」



404: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:44:35.66 ID:mKDAuNGP

千歌「なんで、あなたが……」 

??「そんなの決まってるよ。あなたが……チカが、忘れたくないから」 

千歌「……じゃあ、ここは……」 

??「あなたが見てる、夢の世界?……っていうか……」 

千歌「Aqoursのみんなが出てきたのは……」 

??「もちろん、あなたが会いたいって思ってるからっ」 

??「……ねえ」 

千歌「……」 


??「――……あなたは、記憶を取り戻したい?」 


千歌「っ!?」 

千歌「――そんなの、決まってる。もちろん、取り戻したいよ……」 

千歌「取り戻したいよっ! でも……私は、事故で……」



405: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:45:34.79 ID:mKDAuNGP

??「……ううん」 

千歌「えっ?」 

??「あなたが記憶を取り戻せなかったのは、思い出せなかったのは……事故のせいじゃない」 

千歌「っ……違う! 頭に負った傷で、私は……」 

??「記憶は頭の中にだけあるわけじゃない、心にだってあるよ」 

千歌「……どうして」 

??「……」 

千歌「どうして、そんなことが言えるの!? 根拠なんて、どこにも……」 

??「え~……そう言われると、そうだけど。でも、私は――あなたなんだよ?」 

千歌「……っ」 

??「……今までは、心にある記憶を取り戻すなんて……」 

??「誰とも話さず、誰とも同じ時間を過ごしてない」 

??「手がかりもない状態では……出来ないことだった」 

??「でも……今のチカなら。みんなと会って、話して……ぶつかって」 

??「心を通わせて、応えて……共鳴させた。今のチカなら、思い出せるはず」ニコッ 

??「頭で、じゃない……心で!」



406: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:46:02.46 ID:mKDAuNGP

千歌「……」 

??「大丈夫」 

千歌「……」 

??「あなたが、みんなの心に応えてくれたように……」 

千歌「……」 

??「みんなが、あなたの心に応えてくれた」 

千歌「……」 

??「8人、みんなが」 

千歌「……」



407: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:46:28.66 ID:mKDAuNGP

??「思い出して」 

千歌「……」 


??「――みんなが流した、あなたが流した涙を……その意味を」 


千歌「……」 

??「……怖がらないでいい。あなたなら……」 

??「――今のチカなら、絶対に思い出せる!」 

パァッ…! 

千歌「っ!?」グッ



408: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:47:19.27 ID:mKDAuNGP

パッ 

千歌(……ここ……は……)タッ 

千歌(……どこ、だろ……?) 

??「私……ダメだ。何をやっても変われないよ」 

千歌(……この、声……) 

千歌(だれ、だっ……け……) 

??「前の学校でも、千歌ちゃんの前でも……ミスをして」ポタッ… 

??「コンクールに来てくれた人も、千歌ちゃんも……きっと、失望させた……」 

千歌「……いや……」 

千歌「――……いや……違うっ!」 

??「……っ」 

千歌「――梨子ちゃんの涙は、そんなのじゃない!」 

千歌「梨子ちゃんはちゃんとミスを受け入れて、謝って……」 

千歌「ピアノに、聴きに来てくれた人に……私に! 真面目に向き合ってた!」 

千歌「私の心を動かしてくれたのも、コンクールで入賞できたのも……そうだったからでしょ!?」 

千歌「梨子ちゃんは、変われたんだよ! そして、私も変えてくれた!」 

??「……ふふっ。ホント、変な人」 

ポタッ… 

梨子「……大好きだよ」ニコ



409: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:48:03.86 ID:mKDAuNGP

パッ 

千歌(……ここ、は……)タッ 

??「ダメね、私。千歌の気も知らないで、好きなことを一方的に喋って……」 

千歌(……もしかして……) 

千歌(ここには、前にも……) 

??「堕天使とか、黒魔術とか……そんなもの、あるわけないじゃない」ポタッ… 

??「さっ、片づけはこれで終わりね。これを捨てたら……今度こそ、明日から普通の高校生に……」 

千歌「――……ううん、ダメだよっ!」 

??「……っ」 

千歌「――私は、善子ちゃんと話すのも、ゲームで遊ぶのも楽しかった!」 

千歌「それは、善子ちゃんが好きなものを好きでいてくれたから! それを私に見せて、話してくれたから!」 

千歌「好きなものを捨てて、自分の中にしまい込む……善子ちゃんが流したのは、そんな涙じゃなかった!」 

千歌「だから……そんな大事なもの、捨てちゃダメだよ!」 

??「……じゃあ、リトルデーモンになれとか言うかもよ?」 

千歌「ええっ、それはちょっと……でも、嫌だったら嫌って言うよ! だから、そのままで……っ!?」パッ…ギュッ 

ポタッ… 

善子「ふふっ……ありがと」ニコ



410: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:48:46.64 ID:mKDAuNGP

パッ 

千歌(……ここは、神社……? でも、私が住んでる場所には、こんな神社……)タッ 

??「わたくし、後輩の前で弱いところを……泣いてしまう、なんて。これじゃあ、先輩失格ですわね」 

千歌(……ううん、きっと……ここも、前に……!) 

??「運動でも同じ。後輩の背中を追いかけるくらいなら、足手まといになるくらいなら……」ポタッ 

??「大丈夫ですわ。わたくしがいなくても、千歌さんならちゃんとリーダーを……」 

千歌「――……そんなわけない!」 

??「……っ」 

千歌「ダイヤさんは、すっごく頼りになる……大事な大事な先輩で、友達で、仲間だよ!」 

千歌「どんなに弱いところを見せても、どんなに泣いても変わらないこと!」 

千歌「内浦から、ここまできて……私が全く知らないこの街を案内して、楽しませてくれたことも!」 

千歌「……この階段をのぼるのは、今は私のほうが速いかもしれない。でも!」 

千歌「ダイヤさんは、私に負けないくらい頑張るって言ってくれた! いくら遠くに背中があったって、追いつこうとしてくれた!」 

千歌「あの涙は……『足手まといになるならやめる』なんて、そんな意味じゃない!」 

千歌「ダイヤさんがいてくれないと、ダメなんだよ!」 

??「……まったく」 

ポタッ… 

ダイヤ「それなら、離れるわけにはいきませんわね」クスッ



411: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:49:38.27 ID:mKDAuNGP

パッ 

千歌(ここもだ……私たちが住んでる場所じゃない。こんな場所、来た事あったっけ……)タッ 

??「ルビィ……お姉ちゃんが泣いてて、千歌ちゃんが泣いてて……でも、慰めることもできなかった」 

千歌(あれは……窓? 景色が流れて……動いてる、のかな) 

千歌(……それだけじゃない、この景色……どこかで見たはず!) 

??「それどころか、ルビィも泣いちゃうなんて……いっつも泣き虫で、臆病で……」ポタッ 

??「泣いてばっかりじゃ、人を避けてばっかりじゃ……何も進まない、わかりあえないって。わかってるのに……」 

千歌「――違うよっ!」 

??「……っ」 

千歌「ルビィちゃんが泣いたのは……涙を流したのは、泣き虫だからとかじゃない! 気持ちを受け止めてくれたからでしょ!?」 

千歌「涙を流す人に寄り添って、一緒に泣くのは……ルビィちゃんがその気持ちを、感情を」 

千歌「自分の事のように感じて、汲み取って……その人の心にも寄り添ってるから。わかってるからだよ!」 

千歌「慰めようって思うことも大事かもしれない。でも、私はルビィちゃんが泣いてくれただけで……」 

千歌「自分と同じ気持ちだって、それが伝わってるって思えた!」 

千歌「そうじゃなきゃ、絵馬に込められた気持ちに気付けるわけない! その気持ちを、大切に思うことなんてできないよ!」 

??「……うん、ありがとっ」 

ポタッ… 

ルビィ「また、泣いちゃったけど……それでいいんだよねっ」エヘヘ



412: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:50:26.88 ID:mKDAuNGP

パッ 

千歌(ここ……)タッ 

??「勝負に夢中になって、自分で言ったことを自分で破るなんて……」 

千歌(そうだ、ここは……学校のグラウンドだ!) 

??「負けるってわかってる勝負……そんなもの、いくら引っ張ったって意味ないのに」ポタッ 

??「こんなことで体力を使うなら、初めからやらなければ良かった。自分を大切にしないと……」 

千歌「――そんなの、間違ってる!」 

??「……っ」 

千歌「自分を大切にすることが大事なのはわかる。鞠莉ちゃんが私にそう言ってくれたことだって、嬉しかった」 

千歌「でも……譲れない部分を、曲げられないところを曲げちゃダメだよっ!」 

千歌「私が、私であるように……鞠莉ちゃんも鞠莉ちゃんであってほしい!」 

千歌「二人でやったソフトボールは、鞠莉ちゃんが負ける勝負……私が勝てるってわかってる勝負なんかじゃなかった!」 

千歌「鞠莉ちゃんが自分を曲げなかったから……引っ張ったから、私は負けた。鞠莉ちゃんが勝ったんだよ!」 

千歌「鞠莉ちゃんは、勝つために挑んでた! 自分が負けるって決めつけたり、やらなきゃ良かったって挑んだことを否定して」 

千歌「簡単に自分を曲げるような……鞠莉ちゃんの涙は、そんなのじゃない!」 

??「……じゃあ、今から50打席勝負ね♪」 

千歌「うえぇっ!?」 

ポタッ… 

鞠莉「イッツジョーク♪ でも、次の勝負も負ける気はないわよ?♪」フフッ



413: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:51:14.12 ID:mKDAuNGP

パッ 

千歌(ここだって……私は、あんまり来たことはないけど……)タッ 

??「……ここで千歌ちゃんに勉強を教えて、一緒に本を読んでた。でも、千歌ちゃんは図書室なんて……」 

千歌(図書室だよ! そして、カウンターにいるのは……はな、ま……) 

??「千歌ちゃんに好きな本を押し付けても……一緒に本を読んでも、意味ないよ」ポタッ 

??「マルは、ここで……一人で本を読めれば、それでいい。ずっと、自分の世界に居られれば……」 

千歌「――違う……違うっ!」 

??「……っ」 

千歌「私は、図書室に居て楽しかった! 確かに、あまり来ない場所だけど……嫌いなんかじゃない!」 

千歌「花丸ちゃんが勉強を教えてくれたことも、一緒に本を読んだのも……隣に座って、話すことだって!」 

千歌「……一人で本を読むことも、自分の世界にいることだって大事だと思う」 

千歌「でも! あの時、この場所で一緒に居なきゃ……楽しいって気持ちだって、本の感想だって伝わらなかった!」 

千歌「二人だけの、大事な一冊の本ができた時。花丸ちゃんが手を握ってくれた時」 

千歌「あの時の花丸ちゃんの涙に、意味がないわけないっ!」 

千歌「本を読むことの楽しさを……本の世界を教えてくれたのは、花丸ちゃんだよ!」 

千歌「……さあ」サッ 

??「……ありがとう、千歌ちゃん」パッ…ギュッ 

ポタッ… 

花丸「この手を握れて……図書委員でいられて、良かったずら」ニコッ



414: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:52:02.72 ID:mKDAuNGP

パッ 

千歌(この場所は……確か、ロープウェイで登った山)タッ 

??「はあ……また雨、かぁ。まただ……こうやって、雲や雨に邪魔されてばかり」 

千歌(ここには、星を見に来て……あの場所にいるのは、きっと果南ちゃんだ!) 

??「そうだよね。もう、何度ここにきても……絶対、雨が降って雲がかかる」ポタッ 

??「千歌を……大事な人を連れて行ってダメだった。千歌を傷つけて諦めさせるくらいなら、私が諦める方が……」 

千歌「そんなんじゃないっ!」 

??「……っ」 

千歌「私が知ってる果南ちゃんは、そんなんじゃない! 一度の失敗で、諦めるような……やめるような性格じゃない!」 

千歌「『絶対』なんて……『絶対ダメだ』なんて言わない! 果南ちゃんなら『絶対できるから』、そうでしょ!?」 

千歌「私を叩いたことだって……私の知ってる果南ちゃんなら、絶対そうしてた!」 

千歌「雨からかばったり、また行こうって約束してくれたり……ハグしてくれたり」 

千歌「あの涙は、私を大事に思ってくれてるからだって……私には、わかってるっ!」 

??「……ふふっ」 

ポタッ… 

果南「やっぱり、千歌は鋭いね」ニコッ



415: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:52:49.58 ID:mKDAuNGP

パッ 

千歌(ここは……私の家の前にある海岸だ!)ザッ 

??「私、みんなみたいにはできない。千歌ちゃんから逃げて、避けて、離れることしか……」 

千歌(あそこに立ってるのは曜ちゃん、間違いないよ!) 

??「千歌ちゃんやみんなを動揺させちゃったら、会話に詰まっちゃったら……私と二人でいることが、嫌だったら」ポタッ 

??「小さい頃からずっと一緒に居たんだもん、私がしっかりしないと。会いたいって思ってても、我慢しなきゃ……」 

千歌「違う、ちがうっ――ちが~~うっ!!」 

??「……っ」 

千歌「ずっと一緒に居て、ず~っと遊んできた! それなのに、二人でいるのが嫌なんて……そんなわけないっ!」 

千歌「自分を抑え込まないでって……我慢しないでって言ってくれたのは、曜ちゃんだよ!」 

千歌「これだけ一緒に居れば……すれ違ったり、お互いが本音を言えなかったり。それは、確かにあるかも知れないけど……」 

千歌「でも……でも! 何度すれ違っても、何度息が合わなくても、何度ぶつかっても!」 

千歌「私は、曜ちゃんといる時間が大好きだよ! 曜ちゃんだって、その気持ちは一緒でしょ!?」 

??「……うんっ」 

ポタッ… 

曜「ヨーソロー! もちろんだよ、千歌ちゃんっ!」ビシッ



416: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:53:42.00 ID:mKDAuNGP

… 

パッ 

千歌(……) 

千歌「……んぅ」 

千歌(……ここ……) 

千歌(――……真っ白な、世界……) 

??「――おかえりっ」タッ 

千歌「……っ」 

??「どうだった?」ニコッ 

千歌「……」 

千歌「……うん」 


千歌「――……私……思い出した……」グスッ 


千歌「――……思い出せた、よ……」ポタッ



417: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:54:27.77 ID:mKDAuNGP

千歌「なんで……気づけなかったんだろ……」 

千歌「こんな……大切な、ものに……」 

千歌「自分の中に……ぐすっ……心に、最初から……っ」 

千歌「――……持ってたもの……だった、のにっ……!」ポロポロ 

??「……ううん」 

千歌「……えっ?」 

??「Aqoursの8人、みんなと……今まで過ごした時間」 

??「抱いた感情に、流した涙……心が共鳴し、感応したこと」 

??「記憶を失ったあなたが、辿ってきた過去……」 


??「――……今までに描いた、軌跡の力」 


千歌「……っ」ゴシゴシ 

??「心にある記憶を取り戻すのは……この力がないと、出来なかった事なんだよ?」



418: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:55:04.42 ID:mKDAuNGP

千歌「ぐすっ……で、も……」ポタッ 

ギュッ 

??「……泣き止んで」 

千歌「……っ」 

??「あなたには、待っててくれる人が……」 

??「会うべき人が、たくさんいるっ。そうでしょ?」 

千歌「……」 

??「あなたが大切なものを取り戻した。私は、それが嬉しいっ」 

千歌「……でも」 

??「私は……チカは、それでいい」 

千歌「でもっ!」 

??「この夢は、これで終わり」パッ 

??「……さあ、行って」 

千歌「……っ」 

??「さあ」ニコッ



419: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:55:39.05 ID:mKDAuNGP

千歌「……」クルッ 

タッ、タッ… 

??「……」 

タッ、タッ… 

千歌「……」 

タッ、タッ… 


??「――……バイバイっ!」ニコッ 


千歌「……っ」グッ 


ポタッ… 


タッ、タッ… 

タッ… 

…… 



420: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:56:33.04 ID:mKDAuNGP

千歌「……んっ」パチッ 

ザザーン… 

千歌(……青い空に……太陽……) 

ザーッ…ザザーン… 

千歌(波の、音……) 

ザザーン… 

千歌「そっか、私……」 

千歌「海岸で、寝ちゃったんだっけ。よっ、と」ザッ 

千歌「うぇ~、砂がベッタリ……」パッパッ 

「……」 

千歌「……さっ、家にかえ……」クルッ



421: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:57:58.92 ID:mKDAuNGP

千歌「……い、え……?」 

ザザーン… 

千歌(……) 

千歌「――……違う……」 

千歌「……私、夢を……」 

「……」 

千歌「……記憶……?」 

千歌「……そうだ」



422: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:58:31.07 ID:mKDAuNGP

千歌「――……そうだ、私……!」 


千歌「――……記憶、を……っ!」 


千歌「っ!」ザッ…ダッ! 

タッタッタッ… 

千歌「――そうだ、そうだよっ!」 

千歌「私は……私はっ!」 


千歌「大切な、記憶を……」 


千歌「――思い出、を……!」 

タッタッタッ… 

千歌(家にだって……家にだって、今すぐに帰りたいっ) 

千歌(今すぐに、美渡ねえや志満ねえに……お母さんにも……!)グスッ 

千歌「……でもっ……!」 

千歌「――……私、にはっ……!」ダッ! 

タッタッタッ…



423: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 19:59:27.40 ID:mKDAuNGP

タッタッ… 

千歌「はぁ、はぁ……ここだ、私の……!」 

千歌「――私が通ってた、浦の星女学院……忘れるわけ、ないっ!」ダッ! 

タッタッ… 


梨子「~♪」 

梨子「お~な~じ~あし~たを~……♪」タン♪ 

梨子「……しんじてる~♪」タン…♪ 

…タッタッ、ダン! 

ガララッ! ガタンッ! 

梨子「ひゃあっ!? だ、誰……」 


梨子「――……え……?」 


千歌「……はぁ、はぁ……!」 


梨子「――……ちか、ちゃん……?」ガタッ



424: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:00:00.29 ID:mKDAuNGP

梨子「ど、どうしたの? そんなに息を切らして……」タタッ 

梨子「ダメだよ、病院に……」 


千歌「――梨子ちゃんっ!」 


梨子「……っ」 

梨子(……りこ『ちゃん』……?) 

ダッ、ガバッ! 

梨子「きゃあっ!?」ドタッ 

千歌「梨子ちゃんっ! 私……わたし……っ!」ギュッ 


千歌「――……思い出した、思い出したよっ!」グスッ 

千歌「あの海岸で初めて会ったことも……この音楽室で、ピアノを聴かせてくれたことも……!」ポタッ… 

千歌「オレンジ色のシュシュを、私にくれたこともっ!」 

千歌「――……大切な……大切な、記憶が……全部っ!」ポタポタ 


梨子「……っ」 

梨子「――……ち、か……ちゃん……」グスッ 

梨子「本当、に……ぐすっ……記憶、を……っ! うぅ……」ポタッ 

ギュウッ…



425: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:00:29.60 ID:mKDAuNGP

千歌「――……うぅ……うわぁぁぁぁん!」ポロポロ 

梨子「よかった……私のことも、みんなのことも……」ギュッ 

梨子「私が案内した……ぐすっ……この学校のことも……思い出して、くれたんだね」ポタポタ 

千歌「うん……うんっ! 私も……」ギュウッ 

千歌「――梨子ちゃんのこと、絶対に……忘れたくなんか、なかった……っ!」 

千歌「こんなに、大切だったのに――……梨子ちゃんのこと、大切に想ってたのに……私っ……!」 

梨子「もうっ……いいのよ。私は、今……千歌ちゃんが、私を想ってくれてるのが嬉しい」 

梨子「私が、ここで弾いた曲も……歌った歌も……」 

梨子「記憶を失った千歌ちゃんに、学校を案内したことも」 

梨子「少しでも、千歌ちゃんの力になれたなら……」グスッ 

千歌「ううん……少しじゃ、少しなんかじゃないよっ! ぐすっ、えぐっ……」ギュウッ 

梨子(……っ) 

梨子「……ありがとう」ポタッ 

ギュウッ…



426: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:00:58.90 ID:mKDAuNGP

梨子「……でも……」パッ 

千歌「……ほぇ?」 

梨子「――……千歌ちゃんには、まだ会わなきゃいけない人がいる」 

千歌「……っ」 

梨子「そうでしょ?」ニコッ 

千歌「……」 

梨子「もう……私が知ってる千歌ちゃんは、そんなに悲しそうな顔はしなかったよ?」 

千歌「え、ええっ!?」 

梨子「……なんて、ね♪ ほら、これ……水分補給もしっかりしないと」タッ…サッ 

千歌「……うん、ありがとっ!」パッ ゴクゴク 

千歌「……ぷは~っ! 美味しいっ!」 

梨子「ふふっ、良かった」



427: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:01:25.79 ID:mKDAuNGP

千歌「……じゃあ、私……」 

梨子「うん」 

千歌「……」 

梨子「……大丈夫。また、すぐ会えるよ」ニコッ 

千歌「……そうだねっ! ありがとう、梨子ちゃんっ」 

タッ! 

千歌「いってくるっ!」 

梨子「いってらっしゃい、千歌ちゃん」フリフリ 

ガララッ…ガタン 

梨子「……ぐすっ……」ポタッ 

梨子「……っと」ゴシゴシ



428: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:02:25.88 ID:mKDAuNGP

梨子「ふふっ。私も、いつまでも泣いてないで……」 

梨子「千歌ちゃんの病院に、連絡を……」ポツ… 

梨子「……あれ?」 

ポツポツ…ザーッ 

梨子「外は……雨? 雲一つないのに、なんで……」 

梨子「こんなこと、あるんだ……千歌ちゃん、大丈夫かな……」 

梨子「――ううん。大丈夫、だよね」フフッ 

ポチポチ…ピッ 

梨子「……もしもし? そちらの病院に入院されてる、高海さんの友人の……」 

梨子「はい……高海さんが、記憶を……」 

ザーッ…



429: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:02:56.97 ID:mKDAuNGP

タッタッタッ… 

千歌(雨……こんなに、晴れてるのに……) 

千歌「でもっ……そんなの、今の私には……!」 


千歌「――……私には、関係ないっ!」ダッ! 


パシャッ、ピシャッ! 

タッタッタッ…



430: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:03:59.13 ID:mKDAuNGP

「わかったわ、報告ありがとう。高海さんの脳や身体の状態、精密検査を行えるようすぐ準備して」 

「いや、どうせすぐ帰っては来ないだろうしゆっくりでも……こほん、早急にお願い」 

「すぐ病院に戻るよう、携帯に連絡も。下がっていいわよ」 

ガララッ…ガタン 

(……『高海さんの記憶が戻った』……桜内さんが言うなら、間違いないことだろうけど) 

(……記憶喪失を起こした人間が記憶を取り戻す症例は、少なくはない) 

(『代償機能』……損傷を受けた脳から失われた機能を、脳の別の部分が補うことがある) 

(でも、高海さんが受けた脳の損傷はかなり大きなものだった。『思い出』の記憶を司る部分は、特に……) 

(それに、代償機能は長い時間をかけて働く場合がほとんど。この短期間で、記憶が戻るなんて……) 

(……頭ではない……『心』が記憶を補ったとでも言うの?) 

「……まさか、ね」 

(なんにせよ……) 

「――月並みな言い方だけど……これが奇跡でなくて、なんなのよ」フフッ



431: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:04:41.27 ID:mKDAuNGP

ザーッ… 

善子「こんなに晴れてるのに、雨なんて……」ポチポチ 

善子「フッ、これこそが我が黒魔術! 天候そ……わあっ!?」 

デデーン 

善子「ま、また負けた……なんでこんな強い敵を終盤に……って、当たり前か」 

善子「くっ……こうなったら、千歌に……」 

「……」 

善子「……いや、私だけでもいけるはずよっ!」ポチポチ 

…ピンポーン♪ 

善子「げっ、ゲームやってるのに誰か来た……」 

善子「ママは外に出てるし……待たせるのは悪いけど、キリが良いところまで進めてから……」 

ピンポーン♪ 

善子「……」 

ピンポーン♪ ピンポーン♪ ピンポーン♪ 

善子「なんなのよコイツっ!?」



432: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:05:36.45 ID:mKDAuNGP

善子「あ~っ、もう!」タッ、スタスタ 

ピンポーン♪ ピンポーン♪ ピンポーン♪ 

善子「何よ、さっきから! うるさ……」ガチャ 

ガバッ! 


千歌「――善子ちゃんっ!」ギュッ 


善子「……っ」 


善子「――……千歌……?」 

善子「こんな……びしょ濡れじゃない。ほら、上がって。今すぐ拭くものを……」 

ギュウッ 

善子「……あの、離してくれないと……」 

千歌「私……」 


千歌「――記憶が……記憶が、戻ったんだよっ!」グスッ 


善子「っ!?」 

善子(そ、そんな……でも……嘘をついてるようには、全く……) 

善子(……違う! 千歌がそんな嘘つくわけ……)



433: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:06:18.40 ID:mKDAuNGP

千歌「本当だよっ!」 

善子「……っ」 


千歌「本当に、本当に――……ほんっとうに、思い出した!」 

千歌「黒い羽根を持つ私の手を、握ってくれたことも!」 

千歌「部室でゲームの話をしたことも……ぐすっ……ひっぐ……善子ちゃんの家で、ゲームをやったことも!」 

千歌「善子ちゃんが……対戦で、私をボッコボコにしたのも……時間を忘れて熱中したこと……もっ!」ポタッ 

千歌「――……善子ちゃんが、堕天使ヨハネであることもっ!」ポロポロ 


善子「――……ち、か……」ポタッ 


善子「……っ」 

善子「……ぐすっ、うぅ……」ゴシゴシ 


善子「フッ――さすが、我がリトルデーモンね……」ポタッ 

善子「――人の身でありながら……ぐすっ……刹那のうちに、記憶を……ひっぐ、えぐっ……蘇らせる、とは……」ポロポロ 


千歌「善子、ちゃん……」 


善子「本当……千歌には……敵わない、わ……」ギュウッ…



434: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:06:45.74 ID:mKDAuNGP

千歌「でも……私、ゲームでは……」 

善子「……ぐすっ……それは、私の方が上手いわね」 

千歌「……記憶喪失の時は、勝ててた……けど」ギュッ 

善子「っ……うるさいっ!」ギュウッ 

「……」 

善子「……っと、ちょうどいいところに来てくれたわ」パッ 

千歌「えっ?」 

善子「ちょっとゲームで詰まってるところがあるの。今から手伝いなさいっ!」 

千歌「……私、は」 

善子「……ふふっ、冗談よ」 

千歌「……っ」 

善子「貴女には、まだ行かなければならない約束の地が……」 

千歌「じゃあ、いってくるっ!」 

善子「軽く流すなっ!」



435: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:07:12.18 ID:mKDAuNGP

善子「それに、今の千歌をそのまま行かせるわけにもいかないの。ちょっと待ってなさい」 

タタッ…タッ 

善子「ほら、このタオル。夏とはいえ、体を冷やすと良くないわよ」サッ 

千歌「善子ちゃん……うん、ありがとっ」パッ…フキフキ 

善子「……雨」 

千歌「えっ?」 

ポツ、ポツ… 

善子「……もう、ほとんどやんでるのね」 

千歌「ホント、だ……」 

善子「……さっ、次に行って」 

千歌「……っ」



436: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:07:54.01 ID:mKDAuNGP

「……」 

善子「……じゃあ、私と契約しない?」 

千歌「えっ?」 

善子「千歌がこの時この場所を去り、新たなる地へ向かうかわりに……」 

善子「――今度、堕天使ヨハネとこの場所で会うことを約束する」サッ 

千歌「……っ」 

善子「……それでどう?」ニコッ 

パッ…ギュッ 

千歌「――契約は絶対、だからね」 


善子「ふふっ、破るわけないじゃない」



437: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:08:23.65 ID:mKDAuNGP

千歌「……じゃあ、行くね」クルッ 

善子「……いってきなさい」 

…タッ! 

タッタッタッ… 

善子「……慌てて出てきちゃったけど、放置したゲームの方は今頃……」 

「……」 

善子「……また挑めばいい話。そうよね」クスッ



438: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:08:52.63 ID:mKDAuNGP

タッタッタッ… 

千歌「……はぁ、はぁ……」 

ピシャッ、パシャッ 

千歌(さすがに、この距離は……)ハァハァ 

千歌「……いや」 

ダッ! 

千歌「――……こんなところで、止まってなんか……っ!」 

パシャッ! 

タッタッタッ…



439: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:10:15.94 ID:mKDAuNGP

ルビィ「……お姉ちゃん、濡れちゃったかなぁ……」 

ルビィ(さっきまでは雨だったのに……今は、すっかり晴れてる) 

ルビィ「変な天気……」 

ルビィ「……でも、ちょっと面白いかも」ニコ 

ルビィ(きっと、この場所でしか見られなかったもの) 

ルビィ(東京では……アキバでは、違う空が広がって……) 

「……」 

タッタッ…ガチャン! バタンッ! 

ルビィ「ピギィッ!?」ビクッ 

ルビィ「お、お姉ちゃあ……帰ってきたの、かなぁ? ……で、でも……こんな扉の開け方しないような……」 

ルビィ「か、鍵開いてたみたいだし……変な人、だったらどうしよう……」 

ダン! タッタッ… 

ルビィ「ピギャアッ!? こ、こっちにっ……うぅ……」グスッ 

タッタッ…ダンッ 


千歌「ルビィちゃ~~んっ!」ガバッ! 


ルビィ「――え……ち、千歌……ちゃあ……ピギャアァッ!?」ドタッ



440: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:11:28.71 ID:mKDAuNGP

ルビィ「……千歌、ちゃん……」 

ルビィ「汗、びっしょり……」ギュッ 

ルビィ「ダメ、だよ……こんな、無理しちゃ……っ!」グスッ 

ルビィ「だって……千歌ちゃあは、今っ……」ギュウッ 


千歌「――……私……私、思い出したよ!」 


ルビィ「……っ」 


千歌「ルビィちゃんと入学式の時に初めて会って、今みたいに大声で叫んだ時……」ギュッ 

千歌「長い階段を登り切って……ぐすっ……私と同じ景色を、眺めてっ……スクールアイドルを始めるって決めてくれた時っ!」ポタッ 

千歌「そして、アキバでも! 一緒に……ひっぐ……階段を、登ったっ! 記憶を失った後だけじゃない……記憶を失う前、も……っ!」ポロポロ 

千歌「――……お姉ちゃんを、ダイヤさんを……大事に大事に思ってることもっ!」 


ルビィ「――……ちか、ちゃ……」



441: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:12:03.07 ID:mKDAuNGP

ルビィ「本当に……」グスッ 


千歌「うんっ」 

ルビィ「ホントの、ホントに……」ポタッ 

千歌「うん……うんっ」ギュッ 

ルビィ「ホントのホントの、ホントに……」ポロポロ 

千歌「ホントの、ホントの――ホントにっ!」グスッ 


ルビィ「うぅ……ちか、ちゃあ……」 


ルビィ「――……うわぁぁぁぁん!! ちか、ちゃんっ……わぁぁぁぁん!!」ギュッ 


千歌「ぐすっ、ひっぐ……ルビィ、ちゃん……うぅ……」 

ギュウッ…



442: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:12:51.14 ID:mKDAuNGP

ルビィ「ルビィ……ルビィ、千歌ちゃんの記憶が戻ったらって……」グスッ 

ルビィ「千歌ちゃんの中で、思い出が消えちゃったって思うと……ずっと、ずっと……悲しくてっ」ギュウッ 

千歌「ごめんね……こんな、こんな大切な事っ……!」ポタポタ 

ルビィ「ううん、ルビィは……ぐすっ……私は、嬉しいよっ……安心した、よ……っ!」ポタッ 

ギュウッ… 


…ガチャッ 

「ただいま……ルビィ? アイスを買ってきたから、一緒に……」 

「……なっ!? この足跡はなんですの!? 土足で入り込むなんて、まさか……強盗、じゃ……」 

ルビィ「……あ、お姉ちゃんの声」 

千歌「ダイヤさんだ……」 

「……」 

千歌「……ふふっ」 

ルビィ「あははっ」 

ルビィ「さっ、早く行かないと……お姉ちゃあが通報しちゃうかもっ!」パッ 

千歌「……うん、いってくるっ」タッ



443: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:13:31.43 ID:mKDAuNGP

ダッ! 

ダイヤ「ピギャッ!?」ドサッ 

タッタッ… 

ダイヤ(や、やっぱり家の中にルビィ以外の誰かが!? この際、アイスはどうでも……) 

タタッ 

ダイヤ(こ、こっちに……もう、こうなったらっ!) 

ダイヤ「……」スゥ… 

ダイヤ「――……こそこそ隠れてないで、出て来なさ……」 


千歌「――……隠れないよっ!」ダンッ! 


ダイヤ「なっ……!? ちか、さ……」 


千歌「隠れない……隠れるわけないっ! 私は、ダイヤさんに会いに来たんだもんっ!」グスッ 

ダッ…ガバッ! 

ダイヤ「……っ」 

千歌「――……ダイヤ、さん……私……記憶、が……っ!」ギュウッ…



444: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:14:16.63 ID:mKDAuNGP

タッ、タッ…タッ 

ルビィ「……おかえり、お姉ちゃん」ニコ 

ダイヤ「ルビィ……」 


ダイヤ「……そう」 


ダイヤ「――……本当の事、なのね……」ギュッ 


千歌「本当のことだよっ。ダイヤさんが、昔はスクールアイドルに反対していたことも……」 

ダイヤ「……ふふっ」 

千歌「あと、私たちを砂利扱いしてたこととか」 

ダイヤ「えっ」 

千歌「明らかに無理な特訓のスケジュール組んでたこととか」 

ダイヤ「……」 

千歌「記憶喪失後だと、病院でこけそうになってたこととかっ」ギュッ 

ダイヤ「……ひっぱたきますわよ」ギュウッ 

ルビィ「あはは……」



445: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:14:50.12 ID:mKDAuNGP

ダイヤ「だいたい、なんでわたくしの思い出がそんなものばかり……」 


千歌「……ダイヤさん、いっつもしっかりしてるから……こういうのばっかり思い浮かんで……」 

千歌「――……でも……それだけ、頼りになるから……だよっ……」グスッ 


ダイヤ「……っ」 

ダイヤ「――……いえ、千歌さんも……頼りになるリーダー、ですわ」ギュッ 

ダイヤ「事故に遭っても……こうやって、すぐ……記憶を取り戻してしまう、なんて……」ポタッ 

ダイヤ「――……本当に……ぐすっ……良かった……」 


千歌「……そうだっ。ダイヤさんがルビィちゃんを大事に大事に思ってたことも、ちゃんと思い出したよ」 

ダイヤ「ふふっ、わたくしの大事な大事な妹ですから」 

ダイヤ「……同じ、ですわ」 

千歌「……おな、じ?」 

ダイヤ「……いつだって、姉は妹を大事に思うものだと……わたくしは、そう考えてます」 

ダイヤ「――……千歌さんのお姉さんと同じように」 

千歌「……っ」 

ダイヤ「今の千歌さんなら、きっと思い出している事ですわ」クスッ 

千歌「ダイヤさん……」



446: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:15:26.73 ID:mKDAuNGP

ダイヤ「だから、家に戻った時は……羞恥心があっても、お姉さんに今までの感謝を伝えて」 

ダイヤ「色々なことを……たくさん話してあげてください」 

千歌「……」 

ダイヤ「――……姉妹であっても、いつまでも一緒に居られるとは限りませんから」 

ルビィ「……お姉、ちゃあ……っ」グスッ 

千歌「……うん、絶対にそうする! 約束するよ」 

ダイヤ「ふふっ、良かった。さあ、ルビィ?」 

ルビィ「……うんっ」タッ 

ギュッ 

ルビィ「お姉ちゃあ……千歌、ちゃん……っ」グスッ 

千歌「ダイヤさん……ルビィ、ちゃん……」ギュッ 

ダイヤ「――……こうやって、3人で……あの時以来、ですわね」 


ダイヤ(……でも……) 

ダイヤ(――あの時より、もっと近くにいるみたい……)ポタッ 

ギュウッ…



447: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:15:56.48 ID:mKDAuNGP

ダイヤ「……千歌さん、そろそろ……」パッ 

千歌「……ほぇ?」 

ダイヤ「千歌さんには、まだまだ先があるのでしょう?」クスッ 

千歌「……っ」 

ルビィ「ふふっ、ルビィもそう思ったっ」 

千歌「……うん」 

ダイヤ「それなら、早く行った方が良いですわ」 

千歌「そう、だよね……」 

「……」 

ダイヤ「……ルビィ?」 

ルビィ「……千歌ちゃんっ」ポンッ 

千歌「えっ?」 


ルビィ「――がんばルビィ!」エヘヘ



448: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:16:53.64 ID:mKDAuNGP

千歌「ルビィ、ちゃん……」 

千歌「……うん、ありがとっ」ギュッ 

ルビィ「ピギッ!?」 

ダイヤ「……いつまで経っても離れられませんわよ」 

ダイヤ「さ、玄関まで一緒に……」 

千歌「うんっ」 

タッタッ…ガチャッ 

ルビィ「……わあっ! しゅごい……」 

パァッ キラキラ 

ダイヤ「に、虹……? でも、こんな綺麗なものは、初めて……」 

千歌「わあ……」 

ダイヤ「……見とれてる場合ではありませんわ」 

千歌「……あ、そうだった」エヘヘ 

ルビィ「まだ地面が濡れてるみたい。気を付けてねっ」 

ダイヤ「滑って怪我しないでよ?」 

千歌「……うん」タッ…



449: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:17:27.19 ID:mKDAuNGP

千歌「――……いってくるっ!」ダッ! 

ダイヤ「ええ」 

ルビィ「いってらっしゃいっ!」フリフリ 

タッタッタッ… 

ダイヤ「……さて、派手に汚れた床の掃除を……」 

ダイヤ「……はっ!?」 

ルビィ「ど、どうしたの? お姉ちゃん」 

ダイヤ「これ……」パッ 

ダイヤ「買ってきたアイス……完全に溶けてますわね……」 

ルビィ「あ、ホントだ……」 

「……」 

ダイヤ「……ふふっ」 

ルビィ「……あははっ」 

「ふふっ、あはははっ……!」



450: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:17:53.68 ID:mKDAuNGP

タッタッタッ… 

千歌「はぁ、はぁ……」 

千歌(私も、だ……) 

千歌(こんな綺麗な虹、初めて見た……) 

パシャッ 

千歌「でも……そろそろ、日が傾いて……」 

千歌「……ううん」 


千歌「――まだまだいけるっ!」ダッ! 

タッタッタッ…



451: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:18:49.69 ID:mKDAuNGP

鞠莉「……はぁ、はぁ……」 

鞠莉「……ふっ!」グルッ、ビュンッ! 

ダンッ! ポテッ、コロコロ… 

鞠莉「よしっ! 球速もコントロールも、だいぶ良くなってきたわね♪」 

鞠莉(これなら、ちかっちに一泡も二泡も……) 

鞠莉「……ううん。ちかっちは、そう簡単じゃない……か」フフッ 

鞠莉「もう少しだけやってから帰ろっと♪」 


「……鞠莉ちゃ~ん!」 


鞠莉(……っ!? こ、この声……) 

鞠莉(間違いない、ちかっちだよ……でも、呼び方が……)クルッ 

ガバッ 

鞠莉「きゃっ!?」



452: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:19:28.92 ID:mKDAuNGP

千歌「――鞠莉、ちゃん……っ!」グスッ 


鞠莉「ち、ちかっち……!? なんで、このグラウンドに……」 

鞠莉「そんなに息を切らして、だいじょ……」 

千歌「鞠莉ちゃんっ!」ギュッ 

鞠莉「……っ」 


千歌「――……私、思い出したよ……記憶が、戻って……っ」ポタッ 


鞠莉「――……ちか、っち……」 


千歌「鞠莉ちゃんが理事長としてこの学校に来たことも、部員が足りないのにスクールアイドル部を承認してくれたことも!」ギュッ 

千歌「6人でここ内浦のPVを作った時、『努力の量と結果は比例しない』って奮い立たせてくれたのも鞠莉ちゃんだった!」 

千歌「ぐすっ……それに、みんなでソフトボールをやった時……」ポタポタ 

ギュウッ 

千歌「……っ」 


鞠莉「――……そっか……思い出した、んだね……」ポタッ 

鞠莉「……よかった……ぐすっ、うぅ……」ポロポロ 


千歌「――……うん……全部、思い出したよっ……ぐすっ……大切な事、全部……!」ポタッ 

ギュウッ…



453: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:19:59.74 ID:mKDAuNGP

「……」 

鞠莉「……ちかっちって、そこそこ大きいよね」ギュウッ 

千歌「……やめてください」グスッ 

鞠莉「……ふふっ、名残惜しいわ♪」パッ 

タッタッ…ポタッ 

千歌「……鞠莉ちゃん?」 

鞠莉「――……ちかっち、次は?」グスッ 

千歌「……っ」 

鞠莉「……『ちかっちのことはよく見てる』、前に言ったことだから」 

千歌「……」 

鞠莉「早くしないと、日が暮れちゃうわよ?」 

千歌「……うん」



454: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:20:32.76 ID:mKDAuNGP

鞠莉「……大丈夫」グスッ 

千歌「えっ?」 

鞠莉「これから私が卒業するまでの時間なんて、まだまだたくさんあるでしょ?」ゴシゴシ 

千歌「……」 

鞠莉「また、何度だって勝負できる。9人で集まってやるのも、きっと楽しいわよ♪」タッ… 

千歌「……でも」 

…クルッ 

鞠莉「――……ここにず~っといたら、次の勝負ができませんよ?」クスッ 


千歌「……うん! そうだよねっ」 

鞠莉「レッツゴー!」 

千歌「いってくるっ!」ダッ! 

鞠莉「チャオ~♪」



455: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:21:07.92 ID:mKDAuNGP

タッタッ… 

鞠莉「……ふふっ」 

鞠莉「……じゃあ、私もそろそろ……」 

「……鞠莉ちゃ~ん!」クルッ 

鞠莉「……ちかっち? どうしたんだろ……」 


「――……あの52球目、次は無しだよ~!」 

「じゃあね~っ!」フリフリ 

クルッ、タッタッタッ… 


鞠莉「……ちかっち……」フフッ 


鞠莉「――……本当、よく覚えてるのね」ポタッ 


鞠莉「さ、今度こそ……私も行かないと。ボールを拾って……」タッ… 

鞠莉(……あっ)フッ 

鞠莉「……そっか。もう夕焼けが……」 


鞠莉「――……夕焼けって、こんなに綺麗だったんだね……」



456: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:21:55.49 ID:mKDAuNGP

花丸(――……真っ赤な、夕焼け……) 

花丸「今まで見たどんな夕焼けよりも……真っ赤で、綺麗……」 

花丸(マルがいるこの場所は、現実なのに……空想の世界にいるみたい) 

花丸(今まで、色々な本を読んで……色々な空想を巡らせてきた。でも……) 

花丸「……ううん。そろそろ、本を読むのも……図書室も、おしま……」パタ… 


「――待ってっ!」 


花丸「ひゃあっ!?」ビクッ 

タッタッ…ガララ、ガタンッ! 


千歌「……はぁ、はぁ……!」 


花丸「え……」 


花丸「……千歌、ちゃん……?」



457: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:24:41.97 ID:mKDAuNGP

花丸「……来てくれたのは、嬉しいけど……」 

花丸「……でも、ダメだよ。連絡もせずに会いに来ちゃ……」 

花丸「それに、学校も図書室も……もう、終わり……」 

ガバッ! ギュッ 

花丸「……っ」 


千歌「……もう少し……もう少しだけでいいからっ!」ポタッ 


千歌「――……ここに……いさせ、て……っ」グスッ



458: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:26:13.05 ID:mKDAuNGP

花丸「……わかった」ギュッ 

花丸「千歌ちゃんがそう言うなら、マルはそれで……」 

千歌「――……私……わたしっ……!」 


花丸「……千歌、ちゃん?」 


千歌「――……記憶が……記憶が、戻ったんだよ……っ!」ギュウッ 


花丸「……え?」 


千歌「私が部室の本を返しにここへ来たこと、私が伸ばした手を握ってくれたこと!」 

千歌「――……テストの点数が酷かったから、ここで花丸ちゃんと勉強したことも!」ポタッ 

千歌「途中から脇道に逸れちゃって……ぐすっ、うぅ……二人で読んだ、植物図鑑のことだって……っ!」 


花丸「……本当、に……」 


千歌「――……入学式の時に見た桜が、どんなに綺麗だったかもっ!」 


花丸「……っ」



459: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:26:54.66 ID:mKDAuNGP

花丸「……そっ、か……」 

花丸「――……うぅ……ぐすっ……ちか、ちゃ……」ギュウッ 


千歌「私、あの時の景色……今でも、はっきり覚えてる……」ポタッ 

千歌「――……花丸ちゃんと、初めて会ったんだよ? 大事な、大事な……思い出……」 

千歌「でも……それを、忘れちゃって……ぐすっ……忘れたく、なかったのに……」ポロポロ 

ギュウッ… 

千歌「……っ」 


花丸「――……ううん。オラは、今思い出してくれたことが……千歌ちゃんの記憶が戻ったことが」 

花丸「桜の美しさ、綺麗な景色。今までに千歌ちゃんが見てきた、色々なものが……千歌ちゃんの中にあることも」 

花丸「……『マルを忘れないでいたかった』っていう気持ちも」ポタッ 

花丸「その全部が、何より嬉しい」 

花丸「――……それ以上は……ぐすっ……マルには、思いつかないよ……」ポロポロ 


千歌「――……花丸、ちゃん……」 


花丸「ふふっ……よかった」ニコ 

ギュウッ…



460: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:27:32.18 ID:mKDAuNGP

花丸「……でも、これ以上図書室にいるのはちょっとマズいずら」パッ 

千歌「……花丸、ちゃん」 

花丸「図書委員の仕事も、そろそろ終わり」 

花丸「……まあ、こうやってずっとカウンターで本読んでただけだけど……」 

千歌「あ、あはは……」 

花丸「この本も、元の場所にしまってくるね」スタッ、タッタッ… 

花丸「……それに」 

千歌「それに?」 

花丸「――……千歌ちゃんも、そろそろここを出ないと」ニコッ 

千歌「……っ」 

タッタッ… 

花丸「えーっと……この棚、だね。よいしょ……っと」ガサゴソ



461: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:28:10.21 ID:mKDAuNGP

千歌「……」 

花丸「……千歌ちゃん?」タタッ 

千歌「……ううん、なんでも……」 

…ポンッ 

千歌「わっ!? ……花丸、ちゃん……?」 


花丸「――ふふっ。こういう時って、背中を押すものなのかなって」ニコッ 


千歌「……ありがとっ! いってくるねっ!」 

花丸「……うん、気をつけてね」 

ダッ! タッタッタッ… 

花丸「……記憶が戻った、かぁ」 

花丸「『事実は小説よりも奇なり』って……こういうことなのかな」 

「……」 

花丸「……なんて♪ そろそろ暗くなってきたし、オラも早く……」 

…キラッ 

花丸(……えっ? 今、外に見えたのって……) 

花丸(――……流れ、星……?)



462: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:28:45.24 ID:mKDAuNGP

キラッ 

果南(……また、流れ星……) 

ヒュー…キラッ 

果南(一つじゃない……さっきから、何回も……) 

果南(――……こんな、ことって……) 

ザザーン… 

果南「……まあ、たまにはこんな夜もあるか」フフッ 

キラッ 

果南「結局、一人で流れ星を見ることになるなんてね」 

果南「これはこれで、いいのかな」



463: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:30:16.60 ID:mKDAuNGP

果南(……ううん) 

果南(私は……ダイヤや鞠莉と山に登った時みたいに、3人で) 

果南(昔みたいに、このテラスで……千歌と一緒に、二人で) 

果南(――……Aqoursの9人、みんなで) 

「……」ザザーン… 

果南「……でも、それは今度に取っておけばいいよね」アハハ 

果南「そろそろ、部屋に戻ろ……」 

…タッタッタッ… 

果南(……足、おと……? こんな時間に、誰が……) 

タッタッタッ



464: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:31:02.02 ID:mKDAuNGP

果南(……まさ、か……)クルッ 


「――……果南ちゃ~んっ!」タッタッ…ダンッ! 


果南「……ち、か……」 

千歌「……はぁ、はぁ……ふ~っ……疲れた……」 

果南「疲れた、って……どうして、ここまで……」 


千歌「――……私、思い出した……この場所に何度も来てたってこと!」 


果南「……っ」 


千歌「小さい頃から一緒に居て、何度もここに遊びに来て……こうやって星を見てたことも覚えてる!」グスッ 

千歌「ここでみかんと干物を押し付け合ってたことも、何度も何度もあったし……」 

千歌「……はぁ、はぁ……前、海に飛びこ……わあっ!?」フラッ… 

果南「千歌っ!?」タッ! 

千歌「……っとと、大丈夫大丈夫……あはは……」 

果南「千歌……どうして、そこまで……」グスッ



465: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:31:32.25 ID:mKDAuNGP

…キラッ 

千歌「――決まってるよ……今やらないと……絶対に、後悔するもん」ポタッ 


果南「……っ」 

千歌「記憶が戻った今、この時に……果南ちゃんに会いにいかないと」 

千歌「……私は、ずっと……わわっ!?」 

ガバッ! 

果南「――……よかった……」ギュッ 


千歌「果南、ちゃ……」 


果南「うぅ……ぐすっ、えぐっ……」ポロポロ 

果南「――……千歌……ち、かっ……!」ギュウッ 


千歌「……」 

ギュウッ…



466: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:32:09.27 ID:mKDAuNGP

果南「……星」 

千歌「……ほし?」 

果南「こんな形で、一緒に見られるなんて……思いも、しなかった……」グスッ 

千歌「……私も、だよ……」ポタッ 

「……」ギュウッ… 

果南「……っと」パッ 

千歌「……」 

果南「……いつまでもハグしてるわけにもいかないよね」ゴシゴシ 

千歌「果南ちゃん……」 

果南「――……次は、曜ちゃんのところでしょ?」 

千歌「……っ」 

果南「さあ、行ってきて」



467: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:32:44.17 ID:mKDAuNGP

千歌「……」 

果南「ここまでがどんなに長かったか、千歌が今どんなに疲れてるか。私にはわかる」 

果南「……止めたいって気持ちだって、ないわけじゃない」 

千歌「……」 

果南「でも……今の千歌は、きっと……私が、何をしてもやめない……」 

千歌「……」 

果南「――……ここに居ても、何も変わらないよ?」 

千歌「……ううん」 

千歌「ちょっと休んでただけだよ」 

千歌「――……止まったり、しないよ」 

果南「そっか」フフッ



468: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:33:13.53 ID:mKDAuNGP

タッ… 

千歌「……いってくるね」 

果南「いってらっしゃい、千歌」ニコッ 

タッタッタッ… 

果南「……ぐすっ……」ゴシゴシ 

果南「……ううん、私にも行かないといけないところが……」 

ヒュー…キラッ 

果南「ん? また、流れ星……」 

果南(……っ!?) 

ヒュー…キラキラ 

果南「――……こんな、空……本当、に……」



469: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:33:55.05 ID:mKDAuNGP

キラッ ヒュー…キラキラ 

曜「……すごい……」ガララッ…タッ 

曜(流れ星が、いくつもいくつも……) 

キラキラ… 

曜「お昼は……千歌ちゃんと海岸で会った時は、曇ってたのに」 

曜「……こういう時って、願い事をするべきなのかな?」 

キラッ キラキラ 

曜「……いや、それにしても多すぎるし……それ以上に、願い事なんてキリがないし……」アハハ 

曜(私は……) 

曜(……梨子ちゃんに、果南ちゃんに、ダイヤさんに、鞠莉ちゃんに……) 

曜(ルビィちゃんに、善子ちゃんに、花丸ちゃんに……千歌ちゃん) 

曜「みんなが……この綺麗な夜空を、見ていれば。そして、同じ夜空を見上げていたら……」 

ヒュー… 

曜「――……そう、だったら……」キラッ



470: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:34:39.65 ID:mKDAuNGP

曜(……千歌ちゃんは病院の中、なのかな……一応、入院中だし……) 

曜(……どんなに伝えたくても……この感動は、きっと言葉では伝えられないことだよね) 

曜「千歌ちゃん……外に出られてたらいいけど」 

「……」 

ヒュー…キラキラ 

曜「……よしっ。ず~っと見ていたいけど、そろそろ部屋に戻ろうかな」 

曜「明日から学校だし、準備もしないと……あと、課題も……」 

キラッ… 

「――……よ~ちゃ~ん!」



471: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:35:08.21 ID:mKDAuNGP

曜(……っ)タッ 

曜(……誰も、いない……) 


曜「……さ、課題を」 


「よう……はぁ、はぁ……よう、ちゃ~~ん!!」 


曜「っ!」タッ 


曜「――……ちか、ちゃん……」 

キラキラ 

千歌「曜ちゃんっ!」 

ヒュー…キラッ 

曜「――……どうして、ここ……に……」グスッ 


曜「……っ」ダッ! ピシャンッ 


千歌「曜ちゃんっ!?」



472: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:37:03.10 ID:mKDAuNGP

曜(千歌ちゃんっ……ちか、ちゃんっ……!)タッタッ 


曜「……わあっ!?」トッ…ドタンッ! 

曜「う……いったぁ~……!」サスサス 


曜「……で、も……っ!」ダッ 

タッタッ…ガチャッ! 


曜「――……千歌ちゃんっ! ……って、わっ!?」 

ガバッ! ドスッ… 


千歌「――……曜ちゃんっ! 曜、ちゃん……よう、ちゃ……っ」ポタッ 

ギュウッ… 

千歌「うぅ……うわぁぁぁぁん!! ぐすっ……わぁぁぁぁん!!」ポロポロ 


曜「ちか、ちゃ……ん……」グスッ 

曜「――……うぅ……ちか、ちゃ……ぐすっ……」ギュウッ… 

ヒュー…キラキラ



473: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:37:56.44 ID:mKDAuNGP

曜「千歌ちゃん……ぐすっ……記憶、が……」ギュッ 


千歌「――うんっ……ぐすっ、ひっぐ……思い出したよっ! 何も、かもっ!!」ポロポロ 


千歌「ずっと、ず~っと……小さい、頃から……一緒で……」ポタッ 

曜「うんっ」ギュッ 

千歌「何度も何度も……ぐすっ……何度も一緒に遊んで……」 

曜「うん……うんっ!」グスッ 

千歌「スクールアイドル部を立ち上げた時、曜ちゃんが一緒にやろうって言ってくれたこと……」 

千歌「――……前にも、この場所で会ったことも……曜ちゃんが、抱き着いてきたことも……!」ポタッ 

曜「千歌、ちゃんっ……うぅ……」ポタッ 

千歌「私の傍に、いつもいてくれて……ぐすっ、えぐっ……」 

千歌「――……私も曜ちゃんも、一緒に居る時間が大好きだったこと、も……っ!」ポロポロ 

曜「そう……ぐすっ……そう、だよっ……!」ポタポタ 

曜「……ぐすっ、うわぁぁぁぁん……」ギュウッ… 

キラキラ…



474: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:39:14.44 ID:mKDAuNGP

千歌「――……私……曜ちゃんのこと……Aqoursのみんなのこと……全部……忘れ、ててっ……」ギュッ 

千歌「……みんな、あんなに優しくしてくれたのに……記憶を失う前も、その後も……っ」 

曜「いいんだよ……私は、記憶が戻って……ホントに、嬉しい……っ」ギュウッ 

曜「――……だから……もう、泣かない……でっ」ポタポタ 

千歌「でも、我慢しないでって言ったのは……よう、ちゃ……ぐすっ……」 

曜「いいのっ」ポタッ 

千歌「……涙、止められなく、て……っ」グスッ 

曜「……いい、のっ……!」ギュッ 

千歌「無理、だよっ……泣き止め、ないよっ……」ポロポロ 

曜「ぐすっ、えぐっ……いい……のっ!」ギュウッ 

キラッ 


曜「千歌、ちゃん……っ」 

千歌「ぐすっ……ひっぐ……」ギュウッ… 


キラキラ…



475: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:40:30.68 ID:mKDAuNGP

ギュウッ… 

曜「……ぐすっ……」ゴシゴシ 

千歌「んっ……」グスッ 

パッ 

曜「――……そろそろ、いこっか」スタッ 

千歌「……そうだねっ」タッ 

曜「……8人みんなと会ったんだよね」 

曜「……きっと、みんな待ってるよ」ニコッ 

千歌「うんっ」



476: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:41:01.52 ID:mKDAuNGP

ヒュー…キラキラ 

曜「空……」 

千歌「……」 

曜「すごい、ね……」 

キラキラ… 

千歌「こんなにたくさんの流れ星が……ずっと、見ていたいくらいだね」 

千歌「……でもっ」 

曜「うん、いこうっ!」



477: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:41:27.98 ID:mKDAuNGP

曜「よ~し、じゃあ……」 

千歌「病院に向かって……」 

曜「全速前進……ヨーソロー!」ダッ 

タッタッタッ… 

曜(……あれ、でも……千歌ちゃん、ここまで走ってきたなら疲れてるんじゃ……) 

曜「千歌ちゃん? やっぱり歩いて……」クルッ 

千歌「……」 

キラッ 

曜「――……ちか、ちゃん……?」 

タッタッ…



478: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:42:17.24 ID:mKDAuNGP

曜「千歌ちゃん?」タタッ 

千歌「曜ちゃん……」 

曜「ごめんね、一人で走っちゃって。疲れてるなら、おぶっていっても……」 

千歌「えっ、そこまでしなくてもいいよっ!?」 

曜「あはは……それで、どうしたの?」 

千歌「ううん……」 


千歌「――……私……」 

千歌「……また……大切なことを、忘れてる気がして……」 


曜「……っ」 


千歌「あとちょっとで、思い出せそうな気がするんだけど……」 

千歌「……でも、みんなを待たせるわけにもいかないよっ! 病院の人も、これだけ待たせ……」 


曜「――……じゃあ、やめる?」



479: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:43:38.29 ID:mKDAuNGP

千歌「……っ」 

曜「ふふっ」ニコッ 

千歌「……ううん、やめな……あっ!?」 

曜「えっ?」 

千歌「――……思い出した、思い出したよっ!」ダッ 

曜「わっ!? ちょっ、千歌ちゃんっ!?」 

千歌「ごめんっ! 曜ちゃんは先に病院に行ってて! 必ず……必ず、すぐ行くから!」 

タッタッタッ… 

曜「千歌ちゃん、待っ……! ……いっちゃった」 

ヒュー…キラキラ 

曜「心配だし、一緒に病院まで歩いていきたかったけど……」 

曜「……でも、私は先に病院に行って、皆に話しておこうっと」 

「……」 

曜(……流れ星、本当に……) 

ヒュー…キラキラ 

曜「綺麗だな……」 

曜「……っと、みんな待ってると思うし早く行かないとっ!」ダッ 

タッタッタッ…



480: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:44:11.40 ID:mKDAuNGP

千歌「……はぁ、はぁ……はぁっ……」 

タッタッタッ… 

千歌(記憶を取り戻してから、Aqoursの8人みんなと会ってきたけど……) 


千歌(――……まだ、会うべき人が一人だけ残ってる……) 


千歌「……で、でも……つ、つかれ……もう、走れ、な……」フラッ… 

千歌「……っ!」ダンッ! 

千歌「――……それ、でも……はぁ、はぁ……走らない、とっ!」ダッ! 

タッタッタッ…



481: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:44:42.83 ID:mKDAuNGP

ダッ… 

千歌「……はぁ、はぁ……」フラフラ… 

ザーッ…ザザーン…パシャッ… 

千歌「……ここ……だ……」 

ザッ… 

千歌「……やっと……つい、た……」 

ザッ、ザッ… 

千歌「……はぁ、はぁ……はぁっ……」フラフラ… 

ザッ…ザッ… 

…ザッ 

千歌「……ここで……私、は……」 

千歌「……この、海岸で……」ザッ 

ヒュー…キラッ 

千歌「――……夢……を……」フラフラ…



482: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:45:50.99 ID:mKDAuNGP

千歌「……はぁ、はぁ……っ……――」フラッ… 

キラッ 

千歌「――……いや、だ」ザッ 

千歌「……はぁ、はぁ……ここで、倒れたら……」 

千歌「……今じゃ、ないとっ……!」 


千歌「これだけ、流れ星があるなら……」 

ヒュー…キラキラ… 


千歌「――……願い事の、一つ……くらいっ……!」 


キラキラ



483: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:46:18.29 ID:mKDAuNGP

千歌(……)パチッ… 


千歌(――……お願いっ……!)グッ 


千歌(……あの時、夢で見た……) 


千歌(私を……助けて、くれた……!)ギュッ 


千歌(――……私、を……!)ギュウッ 


ヒュー…キランッ 

パァッ…



484: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:47:38.89 ID:mKDAuNGP

千歌(……ひか、り……?) 

千歌「……」パチッ 


千歌「――……っ……」 


??「――……まさか、こんなところに呼び出されるなんて……」ザッ 

??「……こんなに早く、また会うことになるなんて」クルッ 

??「……思いもしなかった」ニコッ



485: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:48:22.46 ID:mKDAuNGP

千歌「……忘れないよ」 

??「……忘れ……ない?」 


千歌「――記憶を取り戻せたのは……ぐすっ……今の私が、あるのは……」 

千歌「……夢に出てきた、あなたの――過去のチカの、おかげ……なんだよ?」ポタッ 

千歌「忘れるわけ、ない……忘れられるわけ、ないっ……!」グッ…ポタポタ 


??「え、そ、そんなに泣かれると……」 

千歌「……っ」グスッ 

??「そ、そもそも、ここに出てきた時私が一番びっくりしてたし……あはは……」 

??「――……私は、あなたが……チカが。記憶を取り戻してくれただけで……それで、良かった」 

千歌「でもっ!」 

??「な~に?」 


千歌「――……あなたが良くても……私は、嫌だよ」 


??「……っ」



486: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:49:06.62 ID:mKDAuNGP

千歌「あのまま……お別れ、なんて。あの時、私は……お礼だって、言ってないのに」グスッ 

??「……い、いや~、お礼を言い忘れることくらい、チカならよくある……いや、あんまりなかったっけ……」 

千歌「別れる、時も……私……何も……ぐすっ、うぅ……言えな、くて……っ」ポタッ 

??「そ、そんなの気にしてないって~。ほら、あなただってきっと色々混乱してたと思うし!」 


千歌「……ぐすっ、ひっぐ……」ポロポロ 

??「大げさすぎだよっ、もう……いや、自分の事だけど……」 

??「それに、私は……」 


??「――……今、こうやってここに居られて……あなたと話せて、嬉しい」 


千歌「……っ」 


??「あなたが……私に感謝してくれている事。私を忘れたくなかった……そう思ってくれてること」 

??「……私に会おうって思ってくれたのも、そうだよ」エヘヘ 


千歌「……」



487: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:50:01.33 ID:mKDAuNGP

??「……さあ、そろそろ行ってきなよっ」 

千歌「……で、も……」グスッ 

??「あの時と同じ……みんな、待ってるんだよ?」 

??「それに……私だって、いつまでもここに居られるわけじゃないしっ」 

千歌「……」



488: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:50:41.55 ID:mKDAuNGP

ギュッ 

千歌「……っ」 

??「……大丈夫」 

??「私は……過去のチカは、ず~っとあなたの中にいる」 

??「あなたが、忘れたくないって思っていれば……」 

??「案外、また夢の中ですぐ会えるかもしれないよ?」 

千歌「……」



489: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:51:25.63 ID:mKDAuNGP

??「ほら、早く行かないと……みんな、探しにきちゃうかもっ」 

千歌「……」 

??「さあ、行ってきて」 

千歌「……っ」ギュッ 

??「……さあ」 

千歌「……ぐすっ、うぅ……」ギュウッ 

「……」 

パッ… 

千歌「……」クルッ 

ザッ、ザッ… 

千歌「……」ピタッ…



490: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:52:52.14 ID:mKDAuNGP

千歌「――……ありがとう」 


??「こちらこそっ!」 


千歌「――……じゃあね」 


??「……うん、バイバイ」 


ザッ…ザッ… 


千歌「……」 


ザッ… 


千歌「……ねえ」クル… 


??「振り向かないでっ」 


千歌「……っ」ザッ… 


??「――私が……チカが消えるところなんて、見たくないでしょ?」



491: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:53:58.95 ID:mKDAuNGP

千歌「……」 


??「……顔が見えなくても……」 


千歌「……」 


??「――……最後くらい、笑ってお別れにしよ?」 


千歌「……うん」 


千歌「――……ホントのホントに……さようならっ!」 


??「ふふっ」 


??「――……バイバイっ!」 


ポタッ… 


ダッ… 

タッタッタッ…



492: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:55:01.00 ID:mKDAuNGP

「……」 

曜「千歌、ちゃん……」 

ダイヤ「……病院についてから、すぐ奥の病室に……」 

鞠莉「記憶喪失が、突然回復したんだから……長引くのは当然なのかも」 

梨子「でも……もう、1時間以上経ってるよ……」 

果南「うぅ、なんだか落ち着かない……」 

花丸「マルも何か食べてないと落ち着かない……」 

善子「そういう問題なの……」 

ルビィ「大丈夫かなぁ……」 

<ガララッ… 

曜「っ!」 

梨子「奥から、音が……お、終わったのかな?」



493: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:55:31.98 ID:mKDAuNGP

タッ、タッ… 


千歌「ただいまっ」タッ… 


ダイヤ「……おかえりなさい」 

ルビィ「ち、千歌ちゃん……」 

梨子「千歌、ちゃん……」 

善子「……おかえり」 

鞠莉「ちかっち……」 

花丸「おかえり、千歌ちゃん」 

果南「それで……千歌」 

曜「……記憶は……記憶喪失、は……」



494: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:56:56.78 ID:mKDAuNGP

千歌「うん……」 

千歌「今までずーっと色々な検査をしてたけど……さっき、終わって」 


千歌「……先生から、『記憶の欠落は一切見られないし、一時的な回復等でもない――』」 

千歌「――……『記憶喪失は、完全に回復している』……そう言われた」 


曜「……千歌、ちゃん……」 


千歌「――……こういう時……ぐすっ……なんて言えば、いいんだろ……」ゴシゴシ 

千歌「……きっと……『ありがとう』だよね?」グスッ 


千歌「……みんな……」ポタッ…ゴシゴシ 


千歌「――……ありがとっ!」ニコッ



495: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:57:23.91 ID:mKDAuNGP

ダッ…ガバッ! 

千歌「わわっ、曜ちゃん!?」ドサッ 

ギュウッ… 

曜「――……よかった……本当、に……」ポタッ 

曜「……記憶が、戻って……!」 

千歌「うん……でも、ちょっと恥ずかしいんだけど……」 

千歌「一応、ここロビーだし……わあっ!?」ドサッ 

果南「――……千歌……よかった……」ギュッ 

千歌「もう、果南ちゃんも……わっ!?」ドサッ 

鞠莉「――……ぐすっ……おかえり、ちかっち……」ギュウッ 

千歌「ま、鞠莉ちゃんまで……もう動けないんだけど……」 

千歌「だ、ダイヤさ~ん! 助けて~!」



496: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:57:52.61 ID:mKDAuNGP

ダイヤ「全く、もう……仕方ないですわね」ダッ 

ガバッ…ギュッ 

ダイヤ「――……本当、放っておけない人ですわ……」ポタッ 

千歌「……あの……」 

ドサッ 

ルビィ「――……千歌、ちゃん……うぅ、うわぁぁぁぁん!!」ポロポロ 

千歌「……潰れちゃう……」 

ガバッ 

善子「――……やはり、貴女には……ぐすっ……特別な、力が……」ギュッ 

千歌「……ここ、一応病院のロビー……」 

ドサッ 

花丸「――……千歌ちゃん……今度、また一緒に本を……読ん、で……」ギュウッ 

千歌「梨子ちゃ~ん! 助けて~っ!」



497: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:58:18.96 ID:mKDAuNGP

タッ…ガバッ 

梨子「……千歌、ちゃん……」グスッ 

梨子「――……ありが、とう……」ギュウッ 


千歌「――……みん、な……」 

千歌「……」 

千歌「……ふふっ」 

…ポタッ 

「……」 

ギュウッ…



498: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 20:59:12.53 ID:mKDAuNGP

ウイーン…ピシャン 

ダイヤ「……さすがに、早く帰った方が良いですわね」 

果南「星は綺麗だけど……あれだけあった流れ星は、すっかり無くなっちゃったんだね」 

鞠莉「……ううん、また探しに行けばいいだけよ♪」 

ダイヤ「ふふっ、その通りですわ」 

果南「そうだね。今度は、9人で探しに行こうか!」 

花丸「澄んだ空気に澄んだ空……こうやって歩くのも、いいものだね」 

ルビィ「そうだねぇ。暗いのはちょっと怖いけど、みんなとならっ」 

善子「この闇の力が満ちた今なら、堕天使ヨハネの真の力を解放し……」 

ルビィ「……解放、して?」 

花丸「どうするの?」 

善子「……課題を進めるわ……」 

花丸「……じゃあ、わからないところがあったら教えてあげる」フフッ 

ルビィ「ルビィもっ! 課題は全部終わってるし、力になれると思うよっ」ニコッ 

善子「二人、とも……ふふっ、ありがとう」



499: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 21:00:02.89 ID:mKDAuNGP

曜「千歌ちゃんは、夏期課題……」 

千歌「全く手をつけてなかったことはよく覚えてる!」 

曜「あはは……」 

梨子「そっか……今日で夏休みは終わりだもんね」 

曜「うん。本当に、色々あった夏休みだねっ」 

梨子「そうだね。でも……千歌ちゃんの記憶が戻って良かったよ」ニコッ 

千歌「う~……夏期課題のことは思い出したくなかった……」 

梨子「……じゃあ」 

曜「やめる?」 

千歌「やめないっ! ……一応……」 

曜「一応って……」



500: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 21:00:53.53 ID:mKDAuNGP

梨子「こうなったら、私たちが一肌脱ごっか」クスッ 

曜「ふふっ、そうだね。私と梨子ちゃんに、千歌ちゃん……3人でやれば、きっとすぐ終わるよっ」 

千歌「いいの!? やったっ、ありがと!」 

梨子「……けど、千歌ちゃんの入院はもう少し続くみたいだね」 

千歌「うん……今日は家に帰っていい、って言われたけど……まだ、記憶が戻ったばっかりだし」 

千歌「でも、お母さんや美渡ねえ、志満ねえとゆっくりお話ししてくるよっ」 

曜「うん、それがいいと思うっ!」 

梨子「私も……あ、そうだ。大事なこと忘れてた」 

千歌「またドジ?」 

梨子「……怒るわよ?」 

千歌「……へい」 

曜「あはは。それで、どうしたの?」



501: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 21:01:44.80 ID:mKDAuNGP

梨子「さっき、受付の人に『先生から高海さんに』って……このCDを渡されて」パッ 

曜「CD? 千歌ちゃんを担当していた先生からの贈り物、ってこと?」 

梨子「そうみたい……はい、千歌ちゃん」 

千歌「ありがとっ! えーっと……『for Chika』?」 

梨子「『ピアノの曲が入ってる』って、受付の人が言ってたよ」 

千歌「あっ、そういえば……退院したら先生にピアノを聴かせてもらう、って約束してたんだった!」 

曜「病院に勤めてて、ピアノも弾けるんだ……」 

梨子「前から気になってたんだけど……千歌ちゃんの先生って、どんな人だったの?」 

千歌「う~ん……とっても優しい人だったっ!」 

梨子「……普通の答え……」 

千歌「……悪い?」ジトー 

梨子「えっ!? い、いや、そんなことないよっ」 

曜「ふふっ。明日病院に戻ったら、ちゃんとお礼を言わないとね」 

千歌「もちろんっ!」



502: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 21:03:01.75 ID:mKDAuNGP

曜「でも、今は早く帰らないと!」 

梨子「そうだねっ、千歌ちゃんも……」 

トコトコ 

千歌「……」…ピタッ 

曜「……千歌ちゃん?」 

千歌「……本当に、ありがとね」



503: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 21:04:33.19 ID:mKDAuNGP

「……いいんだよ」 

千歌「……果南ちゃん」 

果南「私だって、千歌には感謝してるんだから」ニコッ 

鞠莉「マリーもよ?♪」フフッ 

ダイヤ「わたくしだって」クスッ 

ルビィ「ルビィも!」エヘヘ 

花丸「マルもそうだよ」ニコッ 

善子「私も、ね」フフッ 


梨子「もちろん……」ポン 

曜「私たちもっ!」ポンッ 


千歌「……みん、な……」



504: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 21:05:38.64 ID:mKDAuNGP

梨子「ふふっ……さ、千歌ちゃん」 

曜「行こうっ?」 


千歌「――……うんっ!」タッ 


…キラッ



505: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 21:06:04.74 ID:mKDAuNGP

~fin~



506: 名無しで叶える物語(家) 2019/01/03(木) 21:06:46.69 ID:mKDAuNGP

以上で完結です 
読んでくれた方に感謝を、ありがとうございました



508: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2019/01/03(木) 21:19:53.19 ID:NF19vt+u

おぉ… 
おつでした、ありがとう



511: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2019/01/03(木) 21:55:19.14 ID:NtCVJpLg

乙 
よかった



514: 名無しで叶える物語(笑) 2019/01/04(金) 03:13:32.33 ID:qC6N13Ww

|c||^.- ^|| 素晴らしいですわ



515: 名無しで叶える物語(笑) 2019/01/04(金) 04:33:26.02 ID:EHmAAD1J

大作乙 
メンバー同士がしっかり交流してるのがすごくよかった