転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1549008517/

1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 17:08:37.43 ID:h184SY+g0



※公道で自転車を二人乗りするのは、本当はダメです。
※ただし例外もあります。詳しくはお住まいの自治体へ。







2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 17:10:51.36 ID:h184SY+g0

――路上


小春「え…?」

小春(今、誰か…)

小春(私を呼んだ?)

小春(でも、周りに誰もいない)

小春(気のせいかな)

小春(でもはっきり聞こえた。私の名前を呼ぶ声)

小春(しかも……その声)

小春(矢口くん)

小春(矢口くんの声みたいだった……)

小春(矢口くんが“お~い、日高~”って……)

小春(矢口くんが近くにいるの?)

小春(もし、そうなら…)

小春(嫌だなぁ……)

小春(今、配達中なのに……)



3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 17:12:58.43 ID:h184SY+g0

小春(こんなとこ見られたくない)

小春(配達用の自転車に乗ってるとこなんて)

小春(こんな大きくてゴツゴツしてて、カッコ悪い自転車)

小春(こんなのに乗ってるとこなんて……)

小春(……とにかく)

小春(とにかく気にしないで、早く配達しちゃおう)

小春(早くお店の手伝いを済ませちゃおう)

小春(この角を、曲がって…)

小春(ここだ。この家)


キーッ キキッ


小春(相変わらずうるさいブレーキの音)

小春(お父さん、まだ手入れしてないんだな)

小春(もうかなりボロだしなぁ。この配達用の自転車)

小春(こんな自転車に乗ってるのなんて、ますます見られたくない)


ピンポーン


主婦『はーい』

小春「こんにちはー。日高商店でーす」

主婦『あ、はーい』

小春「毎度さまでーす。お酒持って来ましたー」

主婦『ちょっと待ってねー』


ガチャ


主婦「こんにちは。いつもご苦労さま、小春ちゃん」




4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 17:16:15.79 ID:h184SY+g0

小春「いえいえ。でも今も、いつもどおり…」 

主婦「何?」 

小春「お勝手じゃなくて玄関へ来ちゃいましたけど、よかったんですか?」 

主婦「うちはその方が逆に都合がいいのよ。勝手口は人に見せられないほど散らかっててねえ」 

小春「そうなんですか。じゃあここに品物、持って来ます。……よいしょ、っと」 

主婦「すごいわねえ、何回見ても」 

小春「何がですか?」 

主婦「こんな可愛い女子高生がたくさん瓶ビールの入ったケース持ち上げるなんて」 

小春「“可愛い”なんて……。それにもうこんなの、慣れてますから」 

主婦「いつも思うんだけど、重くないの?」 

小春「もちろん重いです。でもこれ持って長い距離を歩いたりするわけじゃないですし」 

主婦「それもそうね」 

小春「ちょっとコツを掴めば、私みたいな女の子にもできるんです」 

主婦「コツって、さっき腰を少しクイッとしたこと? 重量挙げの選手みたいだったわね」 

小春(こんなの、もっと矢口くんに見られたくない) 

主婦「じゃ、そこに置いてくれる?」 

小春「ここですね。よっ、と…。じゃあこれにハンコかサイン、お願いします」 

主婦「はい、これでいい?」 

小春「ありがとうございます。空き瓶とケースは…」 

主婦「分かってる。月末にお父さんかお母さんが車で取りに来て、その時、一緒に代金ね」 

小春「はい、お願いします。それじゃ、毎度ありがとうございましたー」 

主婦「はーい。小春ちゃんご苦労さまー」 

小春「失礼しまーす」 



5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 17:18:34.81 ID:h184SY+g0

小春(さぁ配達終了) 

小春(早くうちへ帰ろっと) 


キ~コ キ~コ 


小春「あれっ?」 

小春(ブレーキだけじゃなくペダルも音がするようになっちゃった) 

小春(もういろんな所に無理が来ちゃってるんだ) 

小春(お父さん、きちんと手入れするか、新しいの買えばいいのに……) 


キ~コ キ~コ 


小春(……え?) 

小春(また誰か私の名前を…?) 

ハルオ「日高~」 



6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 17:20:01.88 ID:h184SY+g0

小春「げっ…」 

小春(気のせいじゃなかった) 

小春(やっぱり矢口くんだ) 

小春(どうしてこんな場所にいるのよ) 

小春(私たちの住んでる近所からは少し離れてるのに) 


キ~コ キ~コ 


小春(こんなとこ見られたくない) 

小春(ブレーキもペダルも音立てるような自転車に乗ってるとこなんて) 

ハルオ「日高!」 

小春「きゃっ」 


キキーッ! 





7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 17:22:11.51 ID:h184SY+g0

ハルオ「よう日高」 

小春「矢口くん…!」 

ハルオ「おう」 

小春「もう! 危ないでしょ!」 

ハルオ「はぁ? ちゃんと曲がり角の向こうから声かけただろ」 

小春「ほとんど出会い頭だったじゃない!」 

ハルオ「お前の進行方向を読んで先回りしたんだ。ダンジョン突破の経験の応用だな」 

小春「まったくもう……轢くところだった!」 

ハルオ「でも少しの間、姿を見失っちまったが何やってたんだ?」 

小春「それより矢口くん、もしかしてちょっと前にも私を呼んだ?」 

ハルオ「ああ。日高がチャリ乗ってるの見かけてな」 

小春「どうしてこんな場所にいるの?」 

ハルオ「いたら変か? この辺りに最近できたゲーセンの様子を見に来たんだ」 

小春「でも、私たちが住んでる近所から少し離れてるし…」 

ハルオ「おい日高。お前、この業界が絶えず進化してるのを忘れたわけじゃあるめぇ」 

小春「……」 

ハルオ「新しい動向を常に気にしてねーと」 

小春「……」 

ハルオ「今回の新ゲーセンはなかなかグッとくる所だったぜ。日高も今度行ってみっか?」 

小春「うん…今度ね。じゃあ私はこれで…」 

ハルオ「おっと。待てよ日高」 



8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 17:24:12.25 ID:h184SY+g0

キキッ 


小春「…何?」 

ハルオ「お前、今、急いでるか?」 

小春「……」 

ハルオ「どうした?」 

小春「別にそうじゃないけど……」 

ハルオ「大体お前こそ、こんな所で何してんだ?」 

小春「……見れば」 

ハルオ「へ?」 

小春「見れば分かるでしょ」 

ハルオ「“見れば”?」 

小春「……」 

ハルオ「おっ、何だそのチャリ? すっげーゴツいな! 女が乗る物とはとても思えねぇ!」 

小春(だから見られたくなかったのよ…!) 

ハルオ「日高はエプロンしてるし……?」 

小春「……」 

ハルオ「あ、そうか! 家の手伝いか」 

小春「やっと分かった? お酒の配達。これは配達用の自転車なの」 



9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 17:26:05.98 ID:h184SY+g0

ハルオ「そういえば少し前に見た時は、後ろの荷台に何か乗っけてたな。ビールケースだったのか」 

小春「この近くにあるお客さんの家へ、品物を届けに来てたの」 

ハルオ「ふーん」 

小春「それが終わって今、こうして矢口くんと会ったのよ」 

ハルオ「宮尾が前に言ってたぜ」 

小春「宮尾君? 何?」 

ハルオ「“日高は自分の家の店をほとんど毎日手伝ってるそうだ。偉いな”って」 

小春「偉くなんかないよ。うちは手伝いしないと、お小遣いをもらえないシステムなの」 

ハルオ「あ、そうなんか」 

小春「矢口くんだってバイトしてるでしょ。それと同じだよ」 

ハルオ「そういうもんか」 

小春「そういうもんだよ」 

ハルオ「ま、それはそれとして…」 

小春「何?」 

ハルオ「乗せてけや、日高」 



10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 17:27:35.20 ID:h184SY+g0

小春(……) 

小春(私、今……) 

小春(一瞬で、すごくいろんなこと考えた……) 

ハルオ「……」 

小春「……」 

ハルオ「日高?」 

小春「えっ? う、うん……」 

ハルオ「店の手伝いが終わって、これから帰るんだろ?」 

小春「うん……」 

ハルオ「俺も家へ帰るから、行く方角が同じだ。乗せてけや、日高」 

小春「……矢口くん」 

ハルオ「ああ」 

小春「まず…」 

ハルオ「まず?」 

小春「別にそれは、構わないけど…」 

ハルオ「そうか! ありがてぇ。じゃあ…」 

小春「ちょっ、何してるの!? 待ってよ!」 

ハルオ「どうした?」 

小春「つっ…次に!」 

ハルオ「次?」 

小春「何で矢口くんが後ろに乗ろうとするのよ!!」 



11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 17:29:42.32 ID:h184SY+g0

ハルオ「あ? だってコレは日高のチャリじゃねーか」 

小春「……」 

ハルオ「漕ぐのはお前の方が慣れてるに決まってんだろ」 

小春(何なの、この人……) 

小春(女の子に漕がせて、自分はシレッと後ろに座ってるつもりなの?) 

小春(男の子が前に乗って漕いで、女の子は後ろなのが当たり前なのに) 

小春(こんなの当然よ。常識よ。法律でそう決めてもいいくらいよ。違反した男は捕まって罰金よ) 

ハルオ「違うか? 日高」 

小春「駄目。矢口くんが漕いで」 

ハルオ「……」 

小春「矢口くんが前」 

ハルオ「……」 

小春「これが、乗せてあげる条件」 

ハルオ「……分かったよ」 

小春「その次に…」 

ハルオ「何なんだよ、さっきから“まず”とか“次に”とか」 



12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 17:31:32.92 ID:h184SY+g0

小春「……」 

ハルオ「どうして黙るんだよ」 

小春「それは……」 

ハルオ「俺にもっと注文があるなら早く言えや」 

小春「それは……こんな自転車でいいの?」 

ハルオ「“こんな”? どういう意味だ?」 

小春「だって、こんな……」 

ハルオ「……」 

小春「大きくてゴツゴツしてて、カッコ悪い自転車……」 

ハルオ「はぁ? 言ってる意味が分かんねぇ」 

小春「……」 

ハルオ「自転車は自転車だろ。ただの乗り物じゃねーか」 

小春「……」 

ハルオ「乗れれば十分だぜ。それ以外に必要なことなんてあるか?」 

小春「それはまぁ……そうだけど」 

ハルオ「にしても、見れば見るほどゴツいチャリだなコレ」 

小春「……」 

ハルオ「荷台やスタンドなんてメチャクチャ頑丈そうだ。それに、余分な飾りみてぇな物が全然ねーし」 

小春「……実用車っていうんだよ」 



13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 17:33:27.32 ID:h184SY+g0

ハルオ「“実用”か。まさに働くチャリだな。ある意味カッケーな」 

小春「……」 

ハルオ「じゃ、降りろ日高。俺が漕いでやっからよ」 

小春「うん……」 

ハルオ「どれどれ…おっ、このサドルやハンドル、硬ぇけどそれが逆にいい感じじゃねーか」 

小春「……」 

ハルオ「さすが実用に徹したチャリだぜ。コレに乗れる機会って、実は貴重なのかもしれねぇな」 

小春(……) 

小春(自転車、二人乗り……) 

小春(矢口くんと……) 

小春(矢口くんと、二人乗り……) 

小春(その、せっかくの機会なのに……) 

小春(何で自転車がコレなんだろう……) 

小春(何で自転車が、うちの配達用の物なんだろう……) 



14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 17:35:54.77 ID:h184SY+g0

ハルオ「じゃあ乗れ日高」 

小春「うん……」 

ハルオ「お前、後ろへどう座る?」 

小春「え? 横座りかな…こういうふうに」 

ハルオ「あ、駄目だ。逆にしろ」 

小春「逆?」 

ハルオ「座る向きを逆にしろ」 

小春「?」 

ハルオ「俺は止まる時に大抵、右足を地面に着くんだ」 

小春「あ、そうか。自転車はそっちへ傾くから…」 

ハルオ「お前は右側が背中の方へならないようにしろ。危ないからな」 

小春(何よ、この人……) 

小春(どうしてこんな、意外と優しいのよ……) 

小春(紳士ぶっちゃって……) 

小春(何よもう……こんな優しくされたら、私…) 

ハルオ「ん? おい日高?」 

小春「何…?」 

ハルオ「お前、何だか急に顔が赤くなった気がするけど、大丈夫か?」 

小春「えっ。だ、大丈夫だよ。多分……」 



15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 17:37:42.77 ID:h184SY+g0

ハルオ「行くぞ。ちゃんとチャリのどっかへ掴まってろよ」 

小春「うん」 


キ~コ キ~コ 


ハルオ「何だオイ、すげぇ音立ててるな」 

小春「もう何年も使ってる物だからね……」 

ハルオ「大丈夫かコレ?」 

小春「多分……」 

ハルオ「“多分”ばっかだな」 


キ~コ キ~コ 


小春(あ~あ……) 

小春(もっと可愛い自転車だったら良かったのに……) 

小春(せめて、ただの普通の自転車だったら……) 

小春(こんな、漕ぐたびに音がするような物じゃなくて……) 


キ~コ キ~コ 





16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 17:39:10.50 ID:h184SY+g0

ハルオ「うーん……ペダルが思ったより固い感じで、重いぜ」 

小春「……」 

ハルオ「日高」 

小春「何?」 

ハルオ「やっぱお前が漕いだ方が良かったんじゃねーか?」 

小春「今さら何言ってるのよ」 

ハルオ「それなら、日高」 

小春「何?」 

ハルオ「お前、急いでないって言ったよな」 

小春「うん」 

ハルオ「俺もこれから、特に用事があるわけじゃねぇ」 

小春「うん」 

ハルオ「ゆっくり行かせてもらうぜ。いいだろ?」 

小春「うん。いいよ……」 


キ~コ キ~コ 


小春(……) 

小春(こんな自転車だけど…) 

小春(私はこの自転車に感謝しなくちゃ、なのかな……) 



17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 17:40:43.54 ID:h184SY+g0

小春(矢口くん、ゆっくり行くって言ってる) 

小春(こんな自転車だから…) 

小春(私たち、ゆっくり行く……) 

小春(私たちはその間、ずっと二人乗り) 

小春(この自転車だから…) 

小春(ゆっくり、ずっと二人乗り……) 

小春(私はこの自転車に感謝しなくちゃ、なのかも……) 


キ~コ キ~コ 


小春(…)チラ 

小春(矢口くんの、背中……) 

小春(矢口くんの背中が…) 

小春(こんな近くに……) 



18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 17:41:50.35 ID:h184SY+g0

小春(私は…) 

小春(ずっとこの背中を見続けてきた気がする) 

小春(ゲームをしてる矢口くんの、背中を……) 


キ~コ キ~コ 


小春(ゲームをしてる矢口くん) 

小春(私は、それを後ろで見てるのが好きだった) 

小春(自分もいつの間にか、ゲームをするようになったけど…) 

小春(矢口くんに負けないくらい、強くなったけど…) 

小春(やっぱり私は、後ろで見てるのが好きだった) 


キ~コ キ~コ 





19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 17:43:10.89 ID:h184SY+g0

小春(矢口くんの背中越しに、画面を見てた) 

小春(でも同時に、矢口くんの背中を見てた気がする) 

小春(この背中を見続けて…) 

小春(私もゲームをやり始めて、強くなって…) 

小春(そして、矢口くんをどんどん好きになっていった……) 

小春(その背中が……) 

小春(こんな近くに……) 

小春(……) 

小春(抱き着いちゃいたい……) 



20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 17:46:36.13 ID:h184SY+g0

小春(…って、バカ。何考えてるのよ私) 

小春(まだ付き合ってないのに…) 

小春(そんなことしたら、馴れ馴れしい、いやらしい女って思われるだけじゃない) 

小春(ちょっと待って…) 

小春(今も私、何考えた?) 

小春(“まだ付き合ってない”?) 

小春(じゃあいつかは付き合えるってこと?) 

小春(どうしてそんなこと言えるの? そんな保証がどこにあるの?) 

小春(でも……でも、男女が自転車二人乗りしてるんだし…) 

小春(付き合ってないんだから、抱き着くのは少しやり過ぎかもしれないけど…) 

小春(体へ手を回すくらいはいいんじゃない?) 

小春(だってそうしないと危ないでしょ?) 

小春(万が一のときに危ないでしょ? ね?) 

小春(ちょっと…私って今、一体誰と会話してるの?) 

小春(あぁもう、いろんなこと考え過ぎて頭がおかしくなってる……私のバカ!) 


キ~コ キ~コ 





21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 17:48:27.85 ID:h184SY+g0

小春(でもやっぱり漕ぐ人に掴まってた方が、万が一のときに安心なはず) 

小春(うん、どう考えてもそうよ。これは安全のためなの) 

小春(決していやらしい意味なんかじゃないんだから) 

小春(ちゃんとした理由があるのよ) 

小春(だから、体に手を回すくらいならいいはず) 

小春(でも、いきなりそんなことしたら…) 

小春(矢口くんがびっくりしちゃうから…) 

小春(そーっと……)スッ 

ハルオ「ン゛ッ」 


キキーッ! 





22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 17:50:23.21 ID:h184SY+g0

小春「きゃっ、危ない!」 

ハルオ「……」 

小春「何よ矢口くん!」 

ハルオ「……」 

小春「急に止まったら危ないよ!!」 

ハルオ「危ねーのはテメェだ! 日高!」 

小春「え…?」 

ハルオ「うぅ……」 

小春「……」 

ハルオ「まだ感触が少し残ってるぜ……」 

小春「何? どうしたの?」 

ハルオ「まったく……いきなり人の体に触るんじゃねーよ」 

小春「……」 

ハルオ「俺って腰、弱いんだよ」 

小春「腰? 弱い?」 

ハルオ「そうだよ。だから…」 

小春「腰って……ここ?」ツン 

ハルオ「アヒィ」 



23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 17:51:37.61 ID:h184SY+g0

小春「あ、変な声出た」 

ハルオ「やめなさいよ! マジで…」 

小春「…」ツン 

ハルオ「ウヒィ」 

小春「…」ツンツン 

ハルオ「アヒィ ウヒィ」 

小春「わぁ…面白ーい! 触ったのと同じ回数、変な声が出る!」 

ハルオ「いい加減にしろ!! 人の体で遊びくさって!!」 



24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 17:56:30.35 ID:h184SY+g0

小春「だって、漕ぐ人の体に掴まってた方が安全かな、って…」 

ハルオ「チャリに掴まってればいいだろーが。掴まるのが人かチャリかで大した違いがあるかよ」 

小春「……」 

ハルオ「とにかく腰はやめてくれよな、腰は」 

小春「……」 

ハルオ「じゃあ再スタートだ。行くぜ」 


キ~コ キ~コ 


小春(あ~あ……) 

小春(残念……) 

小春(せっかく、矢口くんの体に手を回せる機会だったのに……) 

小春(もし、そうできたら…) 

小春(矢口くんへ思いっ切り自分の体をぴったりさせて…) 

小春(顔を、背中へ押し付けちゃおうと思ってたのに……) 


キ~コ キ~コ 





25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 17:58:06.36 ID:h184SY+g0

ハルオ「おっ……周りがだんだん見慣れた風景になってきたな」 

小春「……」 

ハルオ「俺たちの住む近所が近いぜ、日高」 

小春(……) 

小春(二人乗りが…) 

小春(もうすぐ、終わっちゃう……) 


キ~コ キ~コ 


ハルオ「なぁ日高」 

小春「うん」 

ハルオ「お前、いいのか?」 

小春「何が?」 

ハルオ「俺たちこのまま、二人乗りしてて」 

小春「……」 

ハルオ「近所の誰かに見られるかもしれねぇぜ?」 

小春「……そんなの」 

ハルオ「……」 

小春「そんなの別に、私は全然気にしないけど……」 

ハルオ「俺みたいなアホと二人乗りしてるのを、誰かに見られるかもしれねぇぜ?」 



26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 17:59:34.28 ID:h184SY+g0

小春「だから、そんなの別に……じゃ、じゃあ逆に、矢口くんはどうなの…?」 

ハルオ「俺?」 

小春「わ、私みたいな女の子と、二人乗りで…」 

ハルオ「……」 

小春「矢口くんはどうなの…?」 

ハルオ「……」 

小春「それに…」 

ハルオ「それに?」 

小春「お、重かったんじゃないの? 私……」 

ハルオ「……」 

小春「それなのに一生懸命、漕いでくれて……」 

ハルオ「へー」 

小春「何…?」 

ハルオ「お前は、一応気を使ったりするんだな」 

小春「…!」ピク 



27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 18:00:43.16 ID:h184SY+g0

ハルオ「大丈夫だ」 

小春「……」 

ハルオ「重くなんかねぇぜ」 

小春「……」 

ハルオ「俺がさっき“重い”って言ったこと気にしてんのか? もしそうなら悪かったな」 

小春「……」 

ハルオ「重いのはお前じゃねぇ。このチャリのペダルが固くて重いんだ。お前じゃねぇ」 


キ~コ キ~コ 





28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 18:02:24.08 ID:h184SY+g0

小春「矢口くん」 

ハルオ「ああ」 

小春「さっき“お前は一応気を使ったりするんだな”って言ったけど…」 

ハルオ「ああ。それが何だ?」 

小春「お前“は”って、どういうこと?」 

ハルオ「ん?」 

小春「気を使わなかった人がいたってこと? 前に誰か、別の人がいたってこと?」 

ハルオ「うっ……」 


キ~コ キ~コ 


小春「気を使って“私って重くない?”って訊いたりしない…」 

ハルオ「……」 

小春「そういう別の人が、前にいたってこと?」 

ハルオ「な、何だよいきなり……」 


キ~コ キ~コ 





29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 18:03:51.97 ID:h184SY+g0

小春「矢口くん。前に、誰かと二人乗りしたことあるの?」 

ハルオ「……」 

小春「自転車の二人乗り。したことあるの?」 

ハルオ「そ、それは……」 

小春「……」 

ハルオ「…………………………あるに決まってんだろ」 

小春「どうして答えるまでそんなに時間が掛かるの?」 

ハルオ「つ、つまんねーこと気にすんなよ……」 

小春「誰と二人乗りしたの?」 

ハルオ「小学校とかガキの頃の、ダチだよ……」 

小春「男の子?」 

ハルオ「当たり前だろ……ツルんで遊びに行く時に……」 

小春「じゃあ女の子は?」 

ハルオ「……」 


キ~コ キ~コ 





30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 18:05:00.63 ID:h184SY+g0

小春「矢口くん?」 

ハルオ「急にどうしたんだよ、日高……] 

小春「私は別にどうもしないけど?」 

ハルオ「……」 

小春「答えて、矢口くん」 

ハルオ「お前、何だかいつもと雰囲気違うぞ……」 

小春「いいから答えて」 

ハルオ「……」 

小春「矢口くん?」 

ハルオ「……」 


キ~コ キ~コ 





31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 18:06:40.15 ID:h184SY+g0

小春(まただ……) 

小春(また静かになっちゃった) 

小春(普段はあんなにお喋りなくせに…) 

小春(何だか歯切れが悪くなって、話をそらそうとしたりして…) 

小春(また静かになっちゃった) 

小春(あの人のことになると、いつもそう) 

小春(大野さん……) 

小春(大野さんのことになると、いつもこんなふうに静かになっちゃう) 

小春(だから…) 

小春(二人乗りした相手、大野さんに決まってる) 


キ~コ キ~コ 





32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 18:08:06.86 ID:h184SY+g0

小春(いつ大野さんと、自転車二人乗りしたんだろ) 

小春(二人乗りして、どこへ行ったんだろ) 

小春(そこで、二人で何したんだろ) 

小春(……) 

小春(……ムカつく) 

小春(何でこんなムカつく男を、好きになっちゃったんだろう……) 

小春(何でこんなムカつく男を、大好きなんだろう……) 

小春(こんなに、大好きなのに…) 

小春(こんなに、背中が近くにあるのに…) 

小春(何で、どうにもならないんだろう……) 

小春(ムカつく……) 

小春(ムカつくから…) 

小春(もう一回、この腰へ触っちゃえ!) 

小春(ていうかもう、つねっちゃえ!!)ギュッ 

ハルオ「アヒィー!」 



33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 18:09:48.43 ID:h184SY+g0

――日高商店前 


小春「お店の所まで来てもらっちゃって、ごめんね」 

ハルオ「いいってことよ」 

小春「矢口くんに送ってもらうみたいになっちゃった」 

ハルオ「気にすんなって。こっちはチャリに乗せてもらったんだしな」 

小春「何だか楽しかった。矢口くんの意外な弱点も分かったし♪」 

ハルオ「テメェ……もうあんなこと二度とすんじゃねーぞ」 

小春「エヘヘ、冗談だよ」 

ハルオ「じゃあな日高」 

小春「今日はありがとう、矢口くん」 

ハルオ「俺もありがとな、日高」 

小春「じゃあね。気をつけて」 

ハルオ「ああ」 

小春(……) 

小春(矢口くんと……) 

小春(矢口くんと、自転車二人乗り……) 

小春(その時に、自転車がコレ……) 

小春(自転車が、うちの配達用の物……) 

小春(でも、コレで良かった) 

小春(この自転車だったから、私たち、ゆっくり二人乗りできた) 



34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/02/01(金) 18:12:55.77 ID:h184SY+g0

小春(大野さんのことはちょっと引っかかるけど…) 

小春(私だって今日、矢口くんと二人乗りできた) 

小春(だからこれで、おあいこ) 

小春(大野さんとおあいこ) 

小春(私はこの自転車を、もっと大事にしてあげなくちゃいけないのかも) 

小春(お父さんへ頼りっ切りにしないで…) 

小春(私がコレを大事にして、手入れしてあげなくちゃ) 

小春(だって、これからも配達で乗ることになるんだから) 

小春(お父さん任せにしないで…) 

小春(私がこの自転車を大切にしてあげるんだ) 

小春(これからもよろしくね、配達用の自転車) 

小春(そして、矢口くんと二人乗りさせてくれた自転車) 


終 







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