魔王「ボクに魔王なんて出来るわけねぇ」(前編)

319 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/11(木) 15:30:29.01 ID:OWBPr/esO



  ■ 第31話 重過ぎた彼のもの ■ 
  
  
 



320 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/11(木) 15:32:15.78 ID:OWBPr/esO

魔伯爵「魔王サマのご意志を持って新たな王となりマス」 


魔王「うん……」 


 魔王は物悲しげな表情で見つめる。 
 腰にさした剣を手に取り、魔伯爵の前へ出す。 

魔王「魔剣だよ。これは“魔王”しか触れることが出来ない。解放したから、もう暴走することもないよ」 



魔伯爵「……」 

魔王「こんな剣を持てても王として……ボクは何も変えられない。民の気持ちや兵士達の信頼、そっちの方がよっぽど重い」 



魔王「キミこそ王として相応しい」 

魔王「この魔剣と共に王位を託します」 




魔王「受け取ってください……」 

魔伯爵「……はい」 

 魔伯爵は差し出された剣に手を伸ばし…… 



 受け取る。 


魔伯爵(魔剣……これで我が) 


魔伯爵「“魔王”だ……」ニヤリ 

魔王「……」 








魔王「……残念だよ。魔伯爵さん」 




321 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/11(木) 15:35:44.83 ID:OWBPr/esO

魔伯爵「?」 


 魔剣は……いや、魔王が渡した剣は黒い泥のように溶ける。 




 魔伯爵は魔法封の呪いにかかった! 

魔伯爵「これは……魔剣ではない?!!」 

魔王「キミが黒幕だったんだね」 




 魔伯爵の足元に魔法陣が浮かび上がり、部屋全体が結界に封じ込められる。 
 魔王は泣き出しそうな表情を浮かべ魔伯爵を見つめる。 
 背後から女側近、魔執事、エルフが現れ魔伯爵を取り囲んだ。 

魔王「それは魔剣ではなく、エルフさんに作ってもらった呪いの剣」 

エルフ「おぬしの魔法は封じ込めた。この結界も特別仕様じゃ」 

魔執事「……オメェを尊敬していたのにょ」 

女側近「……伯」 

魔伯爵「……」 


魔王「キミの策略は終わりだっ!」 

魔伯爵「最初から……我に“魔王”の座を譲る気など無かった」 


魔王「うん……ごめん、ハッタリだよ」 

魔伯爵「我が裏切り者ということデスか? なぜ?」 



魔王「ずっと分からなかったよ……側近が裏切るとは考えもしなかった」




322 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/11(木) 15:38:15.75 ID:OWBPr/esO


魔王「最初に違和感を感じたのは……『帝竜』の勇者」 

魔王「『帝竜』とは、あの勇者の人間界の通称だ」 

魔伯爵「……それが?」 

魔王「ボクは少年勇者から聞いていたから知っていたんだけど、魔伯爵さんは彼を倒した時、自分で『帝竜』と口に出した」 

魔伯爵「……」 


魔王「それは前から彼を知っていたということ」 

魔王「そう考えると辻褄があうことが沢山あったんだ」 

魔王「少年勇者が知っていた情報だ」 

魔王「ゲートのある浮遊島を出た後、襲撃する計画。女側近さんの氷属性を打ち破る装備。そして、ボクが下級魔族であることを想定した作戦」 



魔王「少年勇者はもう一人の裏切り者である黒魔術師から情報を得ていた。黒魔術師は当然ボクらの位置や女側近の氷属性を知っていただろう」 


魔王「でもね」 


魔王「ボクがチカラのない下級魔族というのを知っているのは、一緒に旅した魔少女、ピエロと側近の3人だけだ」 

魔伯爵「……魔執事にも同じことが出来たと思いマスが?」 


魔王「いや、魔執事さんは帝竜の勇者に殺されかけた。それに『帝竜』という意味を知らなかった」 


魔伯爵「女側近では?」 


魔王「彼女はずっとボクと一緒にいた。そもそも、魔王の座を狙っているならボクを殺して部下全員を従わせればいい。先代魔王様がいなくなって彼女が魔界最強。こんな策略する必要がない」 

魔伯爵「……なるほど」 


魔王「だからキミが裏切り者だ」 

魔伯爵「……魔王サマ」 

魔王「……」 





魔伯爵「我は裏切っていません。何かの間違いデス、信じて下さい」 

エルフ「嘘じゃ。エルフには嘘は通じん。観念しなされ」 



323 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/11(木) 15:40:19.59 ID:OWBPr/esO





魔伯爵「ククク……ハハハッ」 




 魔伯爵は観念したのか高笑いを上げ、魔王の顔を覗き込む。そこに側近という身分の表情はない。 

魔伯爵「ではどうするのだ? 戦いの嫌いな坊ちゃん魔王が我を殺すことが出来るのか?」ハハハッ 

魔王「覚悟したよ」 


 全員が武器を構える。魔王も本物の魔剣を手に取り魔伯爵に向ける。 

魔王「キミを殺すよ。戦いは嫌いだけど、秩序は必要だ」 



魔王「キミの罪は重過ぎる」 


魔伯爵「ククク……下級魔族が偉そうに」 


魔王「みんなっ! 行くよっ!」 

  ■ 第31話 重過ぎた彼のもの 終 ■ 



325 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/11(木) 17:31:26.28 ID:+4gqLP/ro

魔王さまイケメン



326 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/12(金) 08:51:47.24 ID:Mi0bRHkaO



  ■ 第32話 ラストバトル ■ 
  
  
 



327 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/12(金) 08:53:42.27 ID:Mi0bRHkaO

 最初に動いたのは女側近。 
 魔力で造った氷の剣を振り上げ魔伯爵を襲う。ジャリンッと剣の交わる音が結界に包まれた玉座の間に響く。 
 魔伯爵はマントの奥に無数の剣を隠し持っていた。あの『帝竜』の勇者に突き刺さっていた剣だ。 


 キンッ 

  キンッ 


 魔界1.2の強さの二人の剣技が交わる。女側近の剣筋は視力の無さなどまったく感じさせない。 
 魔伯爵は魔法を封じられている。だが、女側近も魔法は使わない。それは……魔伯爵も氷属性である為、ほとんどダメージは期待出来ないからである。 
 幼い頃から共に訓練をした2人。 
 互いの戦い方は知っている。 

 魔伯爵は剣を交えながらニヤリと笑う。 

魔伯爵(あの訓練を思い出す。なぁ女側近) 


女側近(なぜっ?! なぜ裏切ったの?!) 

魔伯爵(キミには分からないよ。考えるのを放棄したキミにはね) 

女側近(先代魔王様を尊敬していたんじゃないの?! その意志を……) 

魔伯爵(尊敬していたさ) 


女側近「はあぁぁぁっ」 


 ガキッィイイ! 

魔伯爵「ほぅ……よし、2本目」 

 魔伯爵はもう一本剣を取り出し、二刀流。彼女もその剣技も知っていた。怯むことなく迎え撃つ。 



328 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/12(金) 08:55:25.20 ID:Mi0bRHkaO

 ジャキィィィンッ! 


魔伯爵(尊敬していたからこそだ。先代魔王様の『弱肉強食』という教えを、我は体現したまで) 

女側近(魔王様が弱いから裏切ったと?) 

魔伯爵(そうだ。キミも『弱肉強食』こそが魔界の在り方だと思っていたはずだ。強さ……強さが全てだ!) 

   キンッ 

 キンッ 


女側近(強さ……とは、戦闘力だけではない。そう教えてくれたのは貴方よ) 

魔伯爵(その通りだ。だからこそ、我が王に相応しい) 

女側近(魔王様の強さを、貴方は知らないだけよ) 


魔伯爵(弱いさ。キミも弱い……視力を失ったせいか? 動きが鈍いぞ) 



女側近「では止めてみせろっ! はあぁぁぁっ!」 


 女側近は大氷冷魔法を放った! 


 強力なダイヤモンドダストが魔伯爵を襲う。しかし、魔伯爵も氷属性を宿しているため効果は薄い。 

魔伯爵(ふん、こちらの視界も奪い奇襲するつもりか。次、姿を見せたら仕留めてやる)ニヤリ 

 魔伯爵は二刀流の剣を構え直す。 
 氷魔法が晴れる……目の前から現れたのは彼女ではなかった。 




329 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/12(金) 08:56:44.24 ID:Mi0bRHkaO



魔執事「うらあああああっ!!」 


 魔執事は大爆炎魔法を放った! 


魔伯爵「なっ!!」 


 ゴオオオオオオオォォォッ!!! 


  
 激しい爆音と共にまばゆい炎が捲き上る。 
 氷属性には火属性の魔法だ。それも魔伯爵は魔法を封じられているために、直撃も直撃だ。 



魔王「やった」 


魔王(作戦通りだ。女側近さんの視力が無くなったせいで、魔界で1番強いのは魔伯爵になってしまった) 

魔王(そこで、エルフさんが造った呪い剣で魔法を封じ、女側近さんが剣技で時間を稼ぎ、その間に魔執事さんが弱点の火属性魔法を詠唱する) 



女側近「まだです……まだ仕留めていません」 



エルフ「ほれ」 


 エルフは支援魔法を放った。 

 魔王達の攻撃力が上がった。 
 魔王達の防御力が上がった。 
 魔王達の素早さが上がった。 
 魔王達の魔力が上がった。 


魔執事「次は仕留めるぜ」 




330 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/12(金) 08:58:18.32 ID:Mi0bRHkaO

女側近「伯……」 

魔伯爵「く……我を殺すのか?」 

女側近「魔王様の命令は絶対です」 

魔伯爵「そうか……」 





  


魔伯爵「では……3本目」 

 ジャキィィィンッ 


魔執事「ぐあああ……」 

魔伯爵「4本目」 



 ジャキィィィンッ 


エルフ「が……あああああっ」 


魔伯爵「5本目」 


 ジャキィィィンッ 



女側近「きゃあああっ……」 


魔王「え??」 

 魔王は理解できなかった。魔伯爵は2本の剣を持ったまま一歩も動いていない。 
 なぜ皆次々倒れていく? 
 なぜ皆に剣が刺さっている? 
 どんな魔法を使ったんだ? 
 いや、魔法は使えないはず。 



魔伯爵「さぁ1対1だ。ラストバトルを始めようか」 
  

  ■ 第32話 ラストバトル 終 ■ 




333 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/13(土) 00:29:35.33 ID:D5l3WST1O



  ■ 第33話 初めての実戦 ■ 
  
  
 



334 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/13(土) 00:32:44.10 ID:D5l3WST1O

魔伯爵「ククク……」 

魔王「……」 

魔伯爵「なぜ? と言った顔だな」 


 魔伯爵は倒れている3人を見て笑う。女側近、魔執事、エルフの3人は背中に剣が刺さり倒れている。 
 突然劣勢に立たされた魔王は、状況を理解しようと頭をフル回転させるが答えは出ない。 

 刺さった剣が独りでに動き出す。 


 ズボッと抜けると、宙を漂い魔伯爵の元へ……。 
 空中に浮かぶ3本の剣はクルクルと主人の周りを回る。 

魔王「剣が……??」 

魔伯爵「これは魔法ではない」 

魔伯爵「“念道力”」 



魔伯爵「触れずに物を動かす能力だ。優れた戦士や武道家は、攻撃の際に衝撃波や波動を放つことが出来る。我はそれを研究し、自ら応用し使用することが出来る」 


魔王「な、なんだよそれ……」 



魔伯爵「弱肉強食……魔界の根本理念であり、全ての在り方だ。その強さとは“魔力”」 

魔伯爵「お前自身よくわかってるだろうが、魔力が強いか弱いかによって、その人生は順位付けられ、勝者と敗者、上か下か、全てが決まる」 

魔伯爵「その圧倒的頂点にいたのが、お前の父……先代魔王様だ」 

魔王「父さん……」 


魔伯爵「先代魔王様のあまりに強過ぎる魔力は、何千年かかっても超えられるものではなかった。そこで我は考えた」 








魔伯爵「『魔力以外のチカラで対抗できないだろうか?』」 
  
  



335 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/13(土) 00:34:51.08 ID:D5l3WST1O

魔伯爵「考えたよ。どうすれば先代魔王様に勝てるか……そこで目をつけたチカラが“念動力”だ」 



魔伯爵「この念動力は魔法魔力によるものではない」 



魔伯爵「魔法を封じられても、魔力を使い果たしても使える」 

魔伯爵「優れた魔族は周りに漂う空気中の魔力を感じ取り、相手の行動を把握、先読みし戦う。女側近が戦えるのはその為だ」 

魔伯爵「しかし、念動力は魔力を使っていないので先読みが難しい。何より視力のない女側近には“念動力”の攻撃はまったく認識することができん」 

魔伯爵「今はまだ剣3本を動かせる程度だが、奇襲や不意をつけばこの通り。魔法を封じられても女側近に勝てる」 


魔王(女側近さん……) 






魔王「……」 


魔伯爵「我が“魔王”となる!」 

 ジャキィィィンッ 



 浮遊する剣は一直線に飛んで行き、魔王の腹部に突き刺さる。 

魔王「くあああぁぁ……」 



336 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/13(土) 00:36:27.38 ID:D5l3WST1O

魔伯爵「貴様に敬語を使うのがずっと苦痛だった」 


魔王「はぁはぁ……」 

魔伯爵「甘ったれた王政にもウンザリしたよ。だから、上手いこと勇者を使って最下層とスラムも掃除してやったんだ……一石二鳥だったろ」 





魔王「それがキミの本音か……はぁはぁ」ジロッ 


魔伯爵「なんだ? その目は? 下級魔族め身の丈を脇わえろ」 

 ドガッ 


魔王「ぐはぁ」 

 見えない力で吹き飛んだ魔王は、ゆっくりと起き上がり魔剣を構える。 



魔王「はぁはぁ……」 


魔伯爵「ククク……なんだ? その剣で戦うのか?」 

魔王「そうだ」 

魔伯爵「ククク……ハッハハハハ! 笑わせる」 


魔王「言ったはずだっ! 覚悟は出来ていると」 

魔伯爵「ふん」 

魔王「ボクが…… 









  キミを殺す覚悟だっ!」 

 



337 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/13(土) 00:37:31.33 ID:D5l3WST1O


 ドクンッ 


魔王「が……が……」 


魔伯爵「?」 


 ドクンッドクンッ 


魔王「ががが……来い……魔剣」 



 ドクンッドクンッドクンッドクンッドクンッドクンッドクンッドクンッドクンッドクンッドクンッ 


魔王「ががががががががががががががががががががががががががががあぁぁぁ」 

魔伯爵「な、なんだ?!」 



 魔剣から黒い魔力が吹き出し、魔王の身体を包む。 

魔伯爵「まさか……魔剣を使えるというのか?」 

魔王「がががが……ぢがゔ。魔げんがボグをづがゔんだ」 




魔王「ががあぁぁぁっ!!!!」 


 魔王はパタリと倒れると何事も無かったように起き上がる。 


魔伯爵「?」 


魔王「カラダ……カラダ……」ニヤ 



338 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/13(土) 00:39:29.85 ID:D5l3WST1O

 魔伯爵は浮遊剣で攻撃! 


 ビュッッンッ 

魔王(魔剣っ! 避けてっ) 

 魔王の身体は消える。 
 魔伯爵の背後にフワッと風が吹くと魔王は現れる。 
 ヘラヘラと薄笑いを浮かべ魔剣を握り直す。 

魔伯爵「?!」 

魔王(あいつを殺すんだ) 


魔伯爵「速過ぎる……これが魔剣のチカラだと言うのか?」 

魔王(いけっ! 魔剣っ) 

魔王「グアアあぁ」 

 魔王は魔剣で攻撃! 


 ジャァァッキィン! 

魔伯爵「くっ」 

 三本の浮遊剣でガードした魔伯爵だったが、魔剣は衝撃波を放ち、防御をすり抜け身体を切り裂く。 


魔伯爵「ぐああああっ」 

魔王「カカカ……タタカウタタカウ」 


 キンッッ 

   ガッ 

  ドドドッッ  ガッキィッッ 


 魔王の攻撃は防御に徹する魔伯爵を追い詰める。 

魔伯爵「く……」 


魔王「カカカカ……イイゾ、コロス、コロス」 

魔伯爵(なんて攻撃だ、5本の剣でも防ぐので精一杯) 

魔王「モットタノシマセロ……カラダカラダ……ラダ」 


 キンッ 


魔伯爵「くそっ!」 


魔王「カカカカァッ」 

魔王(いけるっ!) 


魔伯爵「強い……認識し直そう。貴様を甘く見ていたようだ」 

魔王「ア?」 


魔伯爵(自由は目の前にある。我こそが“魔王”だ) 

魔王(戦争を終わらす!それが“魔王”として為すべきことだ) 


魔王(ボクは負けるわけにはいかないっ!) 

 冥都最上層・黒魔城。 

 その最上階、玉座の間にて結界に包まれた2人の思いが激突する。 

  ■ 第33話 初めての実戦 終 ■ 



343 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/13(土) 13:03:56.05 ID:xwdSW1XfO



  ■ 第34話 望んだ世界 ■ 
  
  
 



344 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/13(土) 13:04:57.36 ID:xwdSW1XfO

 キンッッ 

   ガッ 

  ドドドッッ  ガッキィッッ 


魔王「カカカ」 


魔伯爵「はあああっ」 


 魔伯爵の攻撃を魔王はことごとく躱す。 


魔王(魔剣っ攻撃だ) 

魔王「カカカ……タノシイ」 


魔伯爵「ハッ」 

 シュッ 


魔王(魔剣っ! なんで攻撃しないんだ?!) 

魔王「ウルサイッウルサイッ」 


魔伯爵「?」 

魔王「ジャマスルナ、モットタノシマセロ」 

魔王(言うこと聞いてくれない) 

魔王「ガアアアアアアッ」 


魔伯爵「くらえっ」ジャキィン 


 魔伯爵の放った浮遊剣は、魔王の足に突き刺さる。たしかな手応えを感じたものの魔王の表情は笑っていた。 

魔王「……カカカカ」 




魔伯爵「効かないのか、ならば」 








魔伯爵(これならどうだ……) 




345 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/13(土) 13:06:36.58 ID:xwdSW1XfO

 魔伯爵は自ら持つ剣を、倒れている女側近の首元に当てる。 

魔王(っ!!) 

魔伯爵「女側近の命が惜しければ魔剣を捨ててもらおうか」 

魔王「カカカ……シラン」 

 魔王は衝撃波を放った。 



 ドォォォッッ!! 


魔伯爵「ぐああああああっ」 

 魔伯爵は女側近諸共吹き飛んだ。 

魔王(やめろっ魔剣!) 


魔王「ウルサイ、ダマレ」 


 魔王は魔剣を振り回すと四方八方に斬撃の衝撃が飛ぶ。 

魔王(やめろっ魔剣! 女側近さん達に当たっちゃうっ) 

魔王「カカカカッ」 



魔伯爵「くそぉぉおおっ」 


 魔伯爵は浮遊剣で攻撃! 
 ドスッっと鈍い音が聞こえると魔王の肩に剣が刺さる。 
 しかし、魔王は笑いながら剣を引き抜き叩き折る。 


 バッキィィイ…… 


 



346 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/13(土) 13:08:37.64 ID:xwdSW1XfO

魔王「カカカカッシネェ」 

魔王「グアアアアアアアアアアアアアアアァァァァッッッ!!!!」 


 暴走する魔王の表情は笑っていた。身体の傷など御構い無しで魔伯爵を滅多刺しにする。 
 剣を折られ、腕も切り落とされ、魔法も封じられ、瀕死の魔伯爵は崩れ落ちる…。 


魔伯爵「ぐぁ……ぁ……」 

魔王「カカカカカカカカッ!!!」 

 高笑いする魔王の視界は返り血で真っ黒に染まる。 


魔王(地獄だ……戦いなんて真っ平だ) 

魔王(魔剣、とどめをっ) 



魔王「ウットウシイナ……オマエ」 

魔王(魔剣……言うことを聞かないなら身体は返してもらうぞっ) 

魔王「イヤダ」 

魔王(ボクの許可なしでは身体は使えないっ! 言うことを聞かないなら二度と外には出れないぞ) 

魔王「……カラダカラダ」 

魔王(わかったらトドメをさせ!) 


魔王「ジャマスルナアアアアッッ」 


 魔王は衝撃波を放った! 
 無数の衝撃波は倒れている女側近やエルフ、魔執事を巻き込み結界内を掻き乱す。 


魔王「ココカラダセェェッ」 




347 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/13(土) 13:10:21.29 ID:xwdSW1XfO

魔王(ダメだ……封じこめよう) 



 魔王は魔剣を封印する。 
 パタリと倒れると身体の意識が魔王に戻って行く。 
 しかし、それと同時に暴走していた時間のダメージが一気に押し寄せてくる。 




魔王「ぐああああああああぁぁっっ!!!」 

 腹部と太ももからは血が吹き出し、肋骨は砕ける。左腕の筋肉は断裂。 
 暴走は魔王の身体に大きな代償をもたらす。 


魔王「はぁはぁ……」 

魔王(痛い……痛い痛い……でも) 

魔王(トドメを刺さなきゃ) 


 血塗れの魔伯爵を見ると、起き上がろうともがいている。今なら、魔王でもトドメをさせる。 
 時間が経てば封じた魔法が戻って回復されてしまう。 


魔伯爵「ぐぞぉぉ……」 

魔王「ぐぅ」 



348 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/13(土) 13:11:47.84 ID:xwdSW1XfO

 全身の痛みは麻痺してきた。力の入らない右手で魔剣を握り、なんとか立ち上がる。 
 ズルズルと足を引きずりながら魔王はかつての側近に近づく。 


魔王「はぁ……はぁ……戦いは……これで終わりだ」 


魔伯爵「ぐ……」 

魔王「平和な魔界を……造るんだ……はぁ……はぁ……」 


 瀕死の魔伯爵の前に、魔剣を持った魔王が見下ろす。 


魔伯爵「弱肉強食の世界……貴様が我を殺すのか」 

魔王「……ボクが世界を変える」 

魔伯爵「変わら……ないさ……先代魔王様の言った通りだ。強き者が頂点に立つ」 


魔王「……」 

魔伯爵「戦いはなくならない」 

魔王「……」 

魔伯爵「それが先代魔王様の望んだ世界だ」 

魔王「ちがう」 

魔王「父さんは……先代魔王様は魔法の使えない、戦えないボクを“魔王”にした」 


魔伯爵「……」 







魔王「確かめることはできないけど……きっと」 







魔王「戦いのない世界を望んだんだ」 


 ザンっと魔王の振った魔剣は魔伯爵の首を捉える。 




 魔王は魔伯爵を倒した! 



  ■ 第34話 望んだ世界 終 ■ 



353 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/14(日) 11:50:15.79 ID:SKNB4Z/s0



  ■ 第35話 裏物語の終わり ■ 
  
  
 



354 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/14(日) 11:53:10.54 ID:SKNB4Z/s0

 決着。 

 決戦の後、結界の外で待機していた魔少女率いる医療班がすぐに治療にあたり、魔王、女側近、魔執事、エルフ共に誰も欠けることはなく作戦は無事終焉した。 
 魔伯爵の直属部隊も拘束。魔王軍全体を掌握した。 

 しかし……黒魔術師の行方だけはわからなかった。 
  



女側近「魔伯爵にとっては用済みでしたので、すでに殺されてしまったと考えるのが妥当かと」 

魔王「そうかな」 


女側近「少年勇者ですが……1人で人間界に帰してしまって大丈夫だったでしょうか?」 

魔王「うん。彼は人間の王に和平を受け入れるよう説得すると約束してくれた。それを信じるよ」 


女側近「我らに捕まった状態ではそう言うしかないでしょうから……再び仲間を引き連れて攻めてくるかもしれません」 

魔王「和平とはお互いの信頼がないと成立しないもん。まず、こちらの信用を見せないと」 

女側近「……」 

魔王「?……変?」 

女側近「そこが、先代魔王様と最も違うところですね」ニコッ 


魔王「正しい選択だといいんだけどなぁ」 

女側近「魔王軍の兵は人間界の魔大陸へ派遣しました。前線から引いておりますが、何かあれば、すぐ侵略出来ます」 



魔王(人間達にしてみれば……物凄い兵力が睨みを効かせられた状態で“和平”を持ちかけられる。信用っていっても結局脅しに違い……) 


魔王(それでも、お互いにとって戦争を終わらすことが最善。きっと人間達もわかってくれる) 



355 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/14(日) 11:56:45.24 ID:SKNB4Z/s0





 魔王は魔界全土に人間との和平政策を発表した。 
 人間達の襲撃は魔伯爵の陰謀によるクーデターであり、全ての危機は去ったと伝えた。 
 最下層、第2層の復興には多くの兵士が投入され、被災した下級魔族も上層階への移住が認められた。 



 魔界情勢は落ち着きを取り戻し始めた。 





 数日後。 



女側近「魔王様、少年勇者が人間界より戻りました」 


魔王「うん、いよいよだ……通して」 

女側近「かしこまりました」 


 ガチャ 



少年勇者「よう、魔王。ちゃんと俺っち1人で戻ってきたぜ」 

魔王「待ってたよ、どうだった?」 

少年勇者「うにゃ、あせんなって。人間界は王が沢山いるから揉めまくったよ、でもちゃんと決まった」 


 少年勇者は薄笑いを浮かべながら懐から何かを取り出す。 
 一瞬配下達が警戒するが、少年勇者は表情を崩さず言った。 


少年勇者「手紙を預かってきた。これが人間の王達の結論だ」 



 魔王は手紙を受け取る。 










 『長きに渡る戦火の犠牲を讃え、新時代の子供達の為 
  我ら人間は和平を受け入れる』 



 その知らせは70年に渡る戦争の終結を意味していた。 






356 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/14(日) 11:59:54.40 ID:SKNB4Z/s0

---冥都 黒魔城・自室--- 

魔少女「まっおおおおーーさまぁぁっ!」ドタドタ 

魔王「ふぁっ! ちょ、ちょっと着替え中だよ」アセ 

魔少女「まおー様1人で着替えてるんだ。あは★ タキシード可愛い」 

魔王「うわ、魔少女さんもドレス……」ポッ 

魔少女「うふっかわいいでしょーー。さ、晩餐会行きましょ」 

魔王「うん、もうみんな集まってるのかな?」 


魔少女「まだだけど、もう始まっちゃうよっ」 

魔王「ピエロは……来るかな?」 


魔少女「どうだろ、見かけなかったけど」 

魔王「まだ元気でないか」 

魔少女「落ち込んでてもしょうがないのになぁ」 

魔王(スラムは壊滅。黒のサーカス団で助かった者はいない。落ち込むのも無理はない) 


魔王「ボク、ちょっと呼んでくるよ」 

魔少女「そうね、まおー命令で引っ張ってきて」 


魔王「魔少女さんは先に行ってて……あ、そうだ」 


魔少女「はいな?」 

魔王「えっと……明日出発するんだけど、人間界に行って和平の調印式をするんだ」 

魔少女「ちょーいんしき……」 

魔王「正式に戦争が終わる」 

魔少女「うん! まおー様の念願だもんね」 

魔王「魔少女さん達の協力があって成し得たこと。だから、最後までチームで達成したいんだ」 




魔王「ボクと一緒に人間界へ行ってくれないかな?」 

魔少女「ふふ」 

魔王「?」 

魔少女「まおー様が何も言わなくてもついて行っちゃうよ」アハ 

魔王「ありがとう……」 



魔少女「まおー様、ぎゅーしてください」 

魔王「い、今?!」 

魔少女「……」コクリ 


 ぎゅ 

魔少女「ウチはまおー様が“魔王”様だったから頑張れたの。サキュバスである前に、一人の魔族としての生き方が出来た」 


魔少女「ありがとう……」 





357 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/14(日) 12:01:12.13 ID:SKNB4Z/s0

---黒魔城・客間--- 


魔王「ピエロ……」 


魔道化師「マオ……チンチクリンなタキシードだひゃ」 

魔王「人間との晩餐会は出たくない?」 

魔道化師「……」 


魔王「無理にとは言わないよ」 

魔道化師「黒のサーカス団は……団長達は……」 


魔王「……」 

魔道化師「スラムのみんなを守るため、いっぱい戦ったって。みんな凄かったって」 

魔王「うん。魔王軍の誇りだよ」 

魔道化師「人間は憎いよ……でも、マオは立派な“魔王”だ。オイラはバカだけどそれだけはわかる」 


魔王「……」 

魔道化師「マオが決めた事は正しい。マオは魔界を……スラムを良くしてくれた」 

魔王「戦争を終わらせて、みんなが笑って暮らせる世界を創る……ピエロにも笑っていてほしい」 

魔道化師「オイラは道化師。笑うのが仕事ひゃ」 

魔王「明日、人間界へ行くんだ。ボクの最後の仕事、手伝ってくれる?」 




魔道化師「……なんで聞く?」 

魔王「え……? ピエロは部下じゃないもん、友達。命令はしないよ」 

魔道化師「うひゃひゃ……友達なんだから! 遠慮いらない! ついていくに決まってるだろっ」バンッ 


魔王「いてっ」 

魔道化師「うひゃ……ありがと、マオ」 






358 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/14(日) 12:04:10.48 ID:SKNB4Z/s0

---黒魔城・大回廊--- 


魔王(早くしないと晩餐会始まっちゃう) 


魔執事「魔王様っ」 

魔王「あれ? 魔執事さんっ何してるの? 晩餐会始まっちゃうよ」 

魔執事「それが姐御が見当たらなくて探してるっつーわけです」 

魔王「ええ?? どうしたんだろ……たぶん執務室にいると思うけど」 

魔執事「魔王様が席に着いたら始まっちゃうと思うんで、進行諸々よろしくっす」 


魔王「えーーーー!?」 


魔王「むりむり……女側近さんも魔執事さんもいないで仕切ることなんて出来ないって」 

魔執事「……そー言われても」 

魔王「ボク、女側近さん連れてくるから魔執事さん時間繋いどいて」 

魔執事「りょーかいっす」 


魔王「あ、後、明日のことなんだけど、いつものチームで人間界へ行くことにしたから、お城の方よろしくね」 

魔執事「留守番は得意分野っすよ、任せてください」 

魔王「いつもゴメンね、魔執事さんがいるからボクはやりたいことが出来た」 

魔執事「なんすか、改まって。魔王様が“魔王”になって……“側近”達、俺も姐御も魔伯爵だって待遇は変わった」 

魔執事「魔族として扱ってくれる魔王様は、尊敬すべき上官」 

魔執事「ありがとうごさいますっーわけです」 




359 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/14(日) 12:06:01.72 ID:SKNB4Z/s0

---黒魔城・エントランス--- 


エルフ「魔王、何しとる……晩餐会じゃなかったのか?」 

魔王「エルフさんこそ始まっちゃうよ、早く早く」 

エルフ「わらわは遠慮しとく。かしこまった席は苦手じゃ」 

魔王「そんなこといわないでよー魔族と人間、エルフの三種族が同じテーブルで食事するなんて凄いことだと思わない?」 

エルフ「確かにの、先代魔王の時には考えられんことじゃな……おぬしが“魔王”になったことはエルフ族にとっては歴史的に大きなことじゃ」 

魔王「そんな大げさな」 

エルフ「エルフ族は嘘が分かる。おぬしの純粋過ぎるその瞳は誰もが信用してしまう。素晴らしいチカラじゃ」 

魔王「チカラ……」 


エルフ「エルフ族の未来は明るい……礼を言わせてくれ。ありがとう」 


魔王「いやいや、助けられたのはボクの方だよ」 

エルフ「不思議な魔族じゃ」フフフ 

魔王「それより、急いでドレスに着替えて来てね!」 

エルフ「仕方ないのー」 

魔王「エルフさんのドレス楽しみ」ニコッ 

エルフ「………なんと純粋な瞳で……///」 

魔王「そうだ、女側近さん見てない?」 

エルフ「中庭におったぞ、これを渡そうと思ったが断られてしまったわい」 

魔王「それは……精霊薬? なんでそんな危ない薬を」 

エルフ「これはおぬし用じゃ。先代魔王の子供であるおぬしにはとてつもない魔力が眠ってるはず。引き出す為には精霊薬が効果的じゃろう」 

魔王「……でも後遺症が……」 

エルフ「たしかにな。しかし、魔剣を暴走させるのはエルフ族として認められん」 

魔王「……」 

エルフ「いざという時の為には持っておきなさい」 

魔王「いや、いらないよ。もう戦争は終わるんだ。戦う必要がない」 


エルフ「そうか……いらぬ心配をしてしまったの」 





360 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/14(日) 12:07:04.36 ID:SKNB4Z/s0

---黒魔城・渡り廊下--- 


少年勇者「うわっ」 

魔王「わっ!」 

少年勇者「ビビったーなんだよ。そんな焦ってどうした?」 

魔王「少年勇者、なにしてるの? 晩餐会……キミが主役なんだから早く会場へ行ってよー」 

少年勇者「ちょっとね、冥都がどんな感じかウロウロしてた……ふふん」 

魔王「?……別に人間界と変わらないでしょ?」 


少年勇者「全然変わるわっ」 

魔王「そうなの?」 

少年勇者「まず魔力で地位が決まるってのが凄いな」 

魔王「人間界は違うの?」 

少年勇者「うにゃ。魔力が強かろうと弱かろうと地位には影響しないな」 

魔王「そうなんだ……でも魔界もこれからは魔力での格差を減らそうと思ってるんだよね。ボクも魔法使えないし」 


少年勇者「……」 

魔王「人間達みたいにチカラを合わせる世界にしたい。みんなが平等で、みんなが同じように平和に暮らせる魔界」 


少年勇者「……人間界を美化し過ぎだ。こっちは魔力や戦闘力での格差はあまりないが、金のチカラが強いね。金持ちの地位が高い」 


魔王「お金……」 

少年勇者「スラムもあるし、差別もある。チカラを合わせるったって、魔界ほど一つになっていないからな。争いは絶えない」 

魔王「……」 

少年勇者「平等なんて無理な話なんだよ」 

魔王「そうなのかな」 

少年勇者「しかし、魔力が全ての世界で魔法の使えないお前がこれだけのことを成し得たのは、矛盾極まるな。“王”という地位はチカラなのか」 

魔王「ボクだけのチカラじゃないよ」 

少年勇者「それでも動かしたのはお前だ。何かを変えるのは“王”になるのが近道なのかもな」 




361 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/14(日) 12:08:47.73 ID:SKNB4Z/s0

---黒魔城・中庭--- 

 中庭には魔界では珍しい植物が多数植えてあり、小さな池がある。 
 そのほとりに女側近はいた。 
 晩餐会の為、真っ赤なドレスに身を包み佇んでいる。 
 魔王はその美しさに息を飲む。閉じられた瞳は穏やかな表情を引き立たせ、佇まいは戦う女性にはとても見えない。 


魔王「女側近……さん?」 

女側近「!……魔王様?」 

魔王「うん、晩餐会始まるよ」 

女側近「はい、参りましょう」 

魔王「……」 

女側近「……魔王様?」 

魔王「あ、ごめん。見とれちゃって。ドレス姿綺麗だよ」 


女側近「ありがとうございます」 

魔王「さ、行こう」 


 女側近の手を取り歩く。 

女側近「私がサポートされる側になってしまいましたね」 

魔王「初めて会った時のこと覚えてる? 今よりさ、すっごい無表情でさ、如何にも側近です!って感じだった」アハハ 


女側近「魔王様もだいぶ変わりました」 

魔王「そう?」 

女側近「立派になりました」 


魔王「色々あったよね……」 

魔王「いっぱいミスしたし、喜んだり、泣いたり、ずっと女側近さんに助けられた……」 

女側近「それは私も同じです」 

魔王「でも、みんなのチカラがあって戦争を終わらすことが出来る」 



女側近「……」 


魔王「ボクらはチカラを合わせれば何だって出来る」 


女側近「……」 


魔王「人間界での調印式は魔少女、ピエロにもついてきてもらうんだ。最後までチームで成し得たいんだ」 

魔王「女側近さんもよろしくね!」ニコッ 



362 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/14(日) 12:10:09.65 ID:SKNB4Z/s0



女側近「魔王様……私は」 








女側近「貴方にはついていけません」 




魔王「え?!」 


女側近「私は側近を辞めます。申し訳ありません」 

魔王「な、なんで?!」 

女側近「私は……目が見えません」 

魔王「魔力を……感じ取れるから大丈夫なんでしょ?」 

女側近「日常生活や普通の戦いなら問題ありません……しかし」 

魔王「……」 

女側近「魔力を持たない魔王様だけは」 



女側近「見えないのです」 


魔王「……っ」 


魔王「ボク……だけが見えない?」 



363 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/14(日) 12:11:42.36 ID:SKNB4Z/s0

女側近「その結果、最も重要な護衛としての役割を務めることが出来ません」 

女側近「魔伯爵との戦いでは魔王様に守られる始末。側近失格です」 


魔王「いや……ダメだよ。女側近さんがいないとボクはっ」 


女側近「決めました。申し訳ありません」 

魔王「魔王の命令は……っ」 


女側近「これが私の“意志”です」 



魔王「---ッ」 

魔王(意志……) 

 女側近が自分の意思を明確にしたのは初めてのこと。魔王はかつての自分の発言を思い出す。 
 『キミの意志で側近を辞めたいと思ったら……その時は遠慮なく言ってよ』 


 あの時は本当にそんな日が来るなんて思ってもいなかった。 



  

魔王「いやだ……いやだ……」 

女側近「……代わりの護衛はエルフにお願いしました」 

魔王「ボクは……自信がない」 




女側近「魔王様……貴方はもう独りで大丈夫です」 



 女側近は初めて会った時のような無表情で無機質に言葉を放つ。 


女側近「貴方は“魔王”です。弱音は許されません。凛とした態度を」 


魔王「う、う……うああああああああっ!!!!」 



  ■ 第35話 裏物語の終わり 続 ■



367 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/15(月) 08:49:54.12 ID:OntvnvjrO



  ■ 第36話 終着点 ■ 
  
  
 



368 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/15(月) 08:53:38.69 ID:OntvnvjrO

---人間界 魔大陸・境界都市--- 



魔王「ここが……人間界……」 

魔少女「うわぁー空が青いよ!」 

魔道化師「瘴気もないし、草がいっぱい……うひゃ」 

エルフ「樹の魔力がすごいのぉ。エルフには適した気候じゃ」 


 魔王達は和平調印式の為、人間界に入った。そのパーティに女側近はいない。 
 魔王の気持ちは沈んだままだが、目の前の大きな仕事を前に動かざる負えない。この調印式さえ終われば一休みできる。 
 先のことはそれから考えればいい。 


 人間界側ゲートのある境界都市。着陸すると一人の騎士が魔王達を迎える。 
 人間界の魔王軍兵士長・黒騎士だ。 


黒騎士「魔王様、ようこそ人間界へ」 


魔王「うん、出迎えありがとう。魔伯爵さんがいなくなって兵達は大丈夫?」 

黒騎士「はい、混乱し除隊した者もおりますが現在は統制が取れております」 


魔王「……魔伯爵さんの支持率はすごかったもんね、辞めちゃう兵士もいるとは思ってたよ。すごく残念だけど」 

黒騎士「しかし、その魔伯爵様に勝ったのが魔王様であります。皆、魔王様の為に命を賭ける所存です」 


魔王(これが弱肉強食か……強き者に従う。皆んな、魔伯爵さんの想いもボクの想いも関係はない) 

黒騎士「魔王様は……」 

魔王「?」 

黒騎士「先代魔王様のご子息」 

魔王「うん」 

黒騎士「人間界の前線で戦っている兵士達にとって“先代魔王様”は特別な存在」 

黒騎士「病で亡くなられた時は、私を含め兵達皆悲痛な思いでありました」 

魔王「……」 


黒騎士「今回、魔伯爵様の失脚の件で、ご子息である魔王様の活躍は……先代魔王様の再来と言えます」 



黒騎士「絶対的“魔王様”の復活に兵士達は歓喜に沸いております。除隊した兵士達も戻る事でしょう」 

魔王(ボクは父さんとは違う……) 


魔王(きっと真逆だ) 


魔王(死してなおこれだけのカリスマ) 

魔王(ボクや魔伯爵さんでは足元にも及ばなかったんだろうな) 


魔王(戦争が終わったら母さんに父さんの凄さを語ろう……ボクの旅のことも、全部話そう。明日全て終わるんだ) 




369 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/15(月) 08:54:12.18 ID:OntvnvjrO

黒騎士「中央大陸、王都まで我が戦艦でお連れします」 

魔王「いや、少年勇者の案内で転移魔法で王都まで行ける」 

黒騎士「……分かっておりますが、危険です。和平調印式が終わるまでは人間は敵です。転移魔法陣では少ない護衛で敵の本拠地に乗り込むことになります」 


魔王「和平をスムーズに終わらせるには、巨大な戦艦で人間達を威圧するような事があってはならないよ」 

黒騎士「しかし……」 

魔王「大丈夫。戦艦は魔界へ戻してよ、もう戦争は終わるんだ……」 

黒騎士「かしこまりました」 

魔王(大丈夫……きっと大丈夫だよ) 


少年勇者「魔王ー! 何してんだ? 行くぞ」 




370 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/15(月) 08:57:10.40 ID:OntvnvjrO


---中央大陸・王都--- 


《人間界の中央に位置する巨大都市“王都”。富裕区画からスラムまで冥都の3倍以上の広大な街。魔法学は進んでいないが、労働、保障、秩序、インフラ、物流、と豊かな安定した国。中世的なアーティスティックな建造物は冥都最上層にも引けを取らない》 



 魔王一行は少年勇者の後を歩き、王宮を進む。 
 王宮内部には至る所に人間兵士が警備をし、魔王達を睨んでいる。 

魔王(人間兵達の視線が気になる……) 


魔王(魔界でも和平には賛否あったんだ。人間界でも反対の声は当然あっただろうな) 


魔道化師「うひゃ! 綺麗なお城~」 

魔少女「ピエロっちょっと空気読んでよ……兵士にめっちゃ睨まれてるぅ」 

魔道化師「うひゃひゃっなんだー? 人間っ! やんのかー?」グイグイ 

魔王「わー! やめろっピエロ!」 

人間兵「……」ジロッ 

魔道化師「ヒッ」 


少年勇者「この先に皇帝陛下が待ってるよ 。お互いの意志を確認しあい……問題ないようだったら明日和平調印式を行う。それで戦争終了だ」 


魔王「うん」 

少年勇者「それまではお互い敵同士。ピリピリするのは堪忍してよ。ここは人間界の本拠地、本来魔族を招き入れていい場所じゃない」 


魔王「分かってるよ」 

魔王(こちらだって今襲われたら袋の鼠) 


魔王(大丈夫だ……人間を信用するんだ) 




魔王(きっとうまくいく……) 





371 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/15(月) 08:59:11.49 ID:OntvnvjrO

---王都王宮・皇帝の間--- 




皇帝「ようこそ! 王都へ! 魔王殿っ」 


 意外にも人間の王は笑顔で魔王を迎え入れた。デップリと太った身体を揺らしながら握手を求める。 
 白い髭を蓄えた中年の男の手は、とても綺麗で赤児の手の様だった。 

魔王(一度も剣を握ったことのない手だ) 

皇帝「いや~悪いね、わざわざ来てもらっちゃって」 


魔王「……」 



魔王「丁重なご対応感謝致します。一度人間界には来てみたいと思っておりました……聞いた通り美しい世界ですね」 

皇帝「特に王都の街並みは一段と綺麗だったでしょ? 食べ物は食べましたかな?」 


魔王「いえ。あの……本題に入ってもよろしいでしょうか?」 

皇帝「ああ……和平の件ね」 

魔王「はい」 




皇帝「和平調印後、魔大陸の魔族は魔界へ帰る。その後ゲートを閉じる。間違いないかね?」 

魔王「はい。時間がかかるとは思いますが、随時進めます」 

皇帝「そうかそうか、ならば何も問題あるまい」 




皇帝「明日予定通り和平調印式を行おう」 

魔王「……」ホッ 



372 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/15(月) 09:00:53.90 ID:OntvnvjrO


魔王「人間界には“王”が一人ではないと聞きました。他の王は和平に納得しているのでしょうか?」 

皇帝「うむ、少年勇者が各国説得して回ってな。承諾を得ている。魔族が去った後の魔大陸は我が中央大陸の“領土”となる。その条件で私が代表者として選ばれた。全ての決定権は私にある、心配するでない」 

魔王(領土?) 


皇帝「何処の国の王も臆病でな。魔族との接見に怖気づきよってのファッファッファ……多くの“資金”をつぎ込んで来た戦争は終わり、私の“名声”も上がる」 

魔王(資金? 名声?) 

魔王「互いの捕虜の交換方法は……」 

皇帝「おお、忘れとったわ。すぐ解放するように手配しよう」 

魔王「交換ではなく……解放?」 

皇帝「戦争は終わるんだ。“兵力”を奪い合う必要もない」 

魔王(兵士達の命は……兵力?) 


皇帝「人間と魔族、お互い望ましい形で終着点につきそうだな」 


魔王「……」 


皇帝「ファッファッファッ」 


魔王(この王は……何を言っているんだよ?) 




魔王(王の金? 名声? 人間達はそんなものの為に命をかけて来たの?) 


魔王(なんて意味のない戦争なんだ……) 








皇帝「では明日、予定通り和平調印の儀を行う。最高級の部屋を用意した。今日はゆっくり休んでくれたまえ」 





373 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/15(月) 09:03:49.44 ID:OntvnvjrO

---王都 王宮・客室--- 



エルフ「ロクでもない王じゃったな。だか、嘘は言っていなかった。エルフの眼にそう映ったのじゃ間違いない」 

魔王「うん。ボクにもそう感じた」 

エルフ「人間とはなぜあの様な弱い王に従うのか? 理解に苦しむのぉ」 

魔王「少年勇者が前に言ってた『平等な世界なんて無理』」 

魔王「形は違うけど……人間界も弱肉強食なのかもしれない」 

エルフ「そうじゃの、魔族と人間は互いを反転させたような存在。しかし、根本は同じじや」 

魔王「……。難しい事言うなぁよくわからないよ」 


エルフ「そうじゃ、先ほど魔執事より連絡があってな。裏切り者じゃった黒魔術師を見つけたそうじゃ」 

魔王「え?!?」 

エルフ「正確には黒魔術師の遺体を発見した。やはり魔伯爵に殺されていたようじゃ」 

魔王「そうか……よかった」 

エルフ「これで不安要素はなくなったのぉ」 


魔王「明日戦争は終わる」 

魔王(順調……) 


魔王(なのに何でこんなに不安なんだ) 



 次の日。 











魔少女「まおー様っおきて……」 


魔王「う、うん?……」 

魔少女「なんかおかしいの」 

魔王「どうしたの?」ムニャ 


魔少女「人間達が……いなくなってる」 

魔王「え?!」 




374 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/15(月) 09:05:28.27 ID:OntvnvjrO


 魔王達は急いで起き上がり客室の外に出ると、城全体が静まり返っている。 
 昨晩までは部屋の前に多数の人間兵が警備をしていた。 
 今は人の気配が全くない。 


魔王(……どういうこと?) 

エルフ「皆警戒するのじゃ。罠かもしれん」 

魔少女「えーーー?!」 

魔道化師「やっぱり人間っ! 和平を受け入れるなんで嘘っぱちだったのか!」 

魔王「まってよ、まだボクらは何も危害を加えられていないよ」 

エルフ「油断するでない。調印式が終わるまでは敵……奇襲されてもおかしくはない」 


魔王「王の所へいこう……」 



 人気のない王宮を魔王達は進む。 

 きっと大丈夫。魔王は自分に言い聞かせながら皇帝の間の扉を開く。 



魔王「皇帝さんっ!」 


 玉座に皇帝は座っている。しかし…… 




375 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/15(月) 09:07:25.55 ID:OntvnvjrO


魔王「---ッ」 
魔少女「う……」 
魔道化師「うひゃああっ」 

エルフ「な、なんと」 



 人間の王は死んでいた。 


 首から下は血塗れで、目は空いていたが光はない。誰がどう見ても絶命している。 

魔王「な、なんで……」 


魔王「どうして……」 


魔王「誰が……」 





??「フハハ……」 

 玉座の後ろから聞きなれない笑い声がした。 
 視線を向けると、笑い声の主は姿を現わす。 


??「面白かったよ。実に素晴らしかった……」 


エルフ「お、おぬしは!」 

魔王「え……」 











エルフ「先代魔王!!」 


先代魔王「これがお前の“魔王”としての終着点か」 


  ■ 第36話 終着点 終 ■



382 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/16(火) 00:30:39.03 ID:rq0kirqDO



  ■ 第37話 なぜボクを魔王にした?! ■ 
  
  
 



384 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/16(火) 00:32:45.72 ID:rq0kirqDO

 魔王達の前に現れた初老の魔族はゆらりゆらりと歩き、絶命した人間の王を見て薄ら笑いを浮かべる。 


先代魔王「これで和平は破断じゃな」 
  

先代魔王「弱肉強食の世界。弱き者は死に、強き者の糧となる」 






エルフ「生きていたのか!?」 

魔王「と、父さんなの?」 

先代魔王「フハハッ余は死んでなどいない。死とは弱さの象徴」 

魔王「なんで生きてるの?! 何がどうなってるのっ! 説明してよっ!」 



魔王「今まで何処にいたの?!」 

魔王「父さんっ!!!」 

先代魔王「フハハッ笑いが止まらん。“魔王”たる者取り乱しては部下に示しがつかんぞ」 

魔王「全然わかんないよ、生きているなら……」 

魔王「なぜボクを“魔王”にしたの?!」 





先代魔王「“魔剣”じゃ」 



385 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/16(火) 00:37:44.78 ID:rq0kirqDO


先代魔王「魔剣は“魔王”しか触れられない」 

先代魔王「触れた“魔王”は魔剣に乗っ取られる」 

先代魔王「手に入れるには暴走した魔剣を殺すしかない」 





先代魔王「余が暴走すれば誰に求めることは出来ん。世界を破壊してしまうであろう」 

先代魔王「そこで余は考えたのじゃ、チカラのない下級魔族を“魔王”にして魔剣を持たす」 

先代魔王「暴走した“魔王”を殺せば……魔剣は余の物となる」ニヤ 




魔王「魔剣……父さんはボクを殺す為だけに“魔王”に?」 


先代魔王「フンッ……父さんじゃと?」 


先代魔王「お前は魔剣を手に入れるために、ただ選ばれただけの下級魔族」 









先代魔王「お前は息子ではない」 




386 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/16(火) 00:39:23.15 ID:rq0kirqDO


魔王「---ッ!!!!」 

先代魔王「予想外なこともあった」 

先代魔王「魔伯爵が裏切ったこと。お前が自力で魔剣を封じ込めたこと。和平などと考えたことじゃ」 



魔王「……」 


先代魔王「……予想というのは上手くいかないものじゃ」 

先代魔王「じゃがな、どんな事が起きても対応できる枠組みを構えておくことが大事なのだ」 


魔王「……」 

先代魔王「彼女がついていれば何も問題はないと思っておった」 


魔王「彼女?」 

先代魔王「なんじゃ、お前自分のチカラですべて成し遂げたと思っておるのか?」 

魔王「え??」 

先代魔王「フハハ、下級魔族が本当に笑わせてくれる。彼女が何も知らなかったと思うのか?」 

魔王「……まさか……うそだ……」 


先代魔王「彼女は、すべて知った上でお前を操っておったのじゃ」 



先代魔王「女側近は余の下僕」ニヤ 




387 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/16(火) 00:41:13.30 ID:rq0kirqDO


 ふわっと冷たい風が立ち込めると女側近は現れる。 
 その表情は無機質で冷たい。 


魔王「女側近さんっ!!」 


女側近「……」 

魔少女「お姐ぇ……嘘でしょ??」 

魔道化師「うひゃ…わけわからん……姐さんがアイツの仲間?」 


先代魔王「女側近は余の命令ならなんでも聞く。女側近、お前の任務を説明しろ」 

女側近「はい。先代魔王様を死んだと思わせ、下級魔族を“魔王”に仕立て上げる。そして、魔剣を手に入れ殺害することです」 







魔王「う、うそだああああああああああっ!」 

 魔王は魔剣を抜き、先代魔王を無視するように叫ぶ。 


魔王「女側近さん! 嘘だ!!……嘘だと言って! 命令だっ!」 


女側近「……」 

先代魔王「フハハッ……彼女はお前の部下ではない。部下のふりをしていただけ」 



魔王「“魔王”はボクだっ! 認めないっ!」 





388 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/16(火) 00:42:52.49 ID:rq0kirqDO

先代魔王「この世は弱肉強食。認めて欲しければ余を倒せ」 

先代魔王「魔剣を暴走させるのじゃ、お前に残された道は余を殺し勝つこと以外ない」 


エルフ「魔王っ! ダメじゃ挑発になるなっ……魔剣を手に入れるのが奴の目的」 



魔少女「う……う……」 

魔道化師「あわわわわ」 

魔王「く……」 

先代魔王「魔剣を使わずして余に勝てるのか?」 


魔王(みんなを守らなきゃ) 


魔王「エルフさん……ボクが暴走したら魔少女さんとピエロを守って」 

エルフ「待て……精霊薬を」 

魔王「いらない。無属性のボクには意味がない」 


エルフ「……くっ」 

魔王「来いっ魔剣っ!!!」 




 ドクンッ 



魔王「ぐ……」 


 ドクンッ……ドクンッ…… 


先代魔王「フハハハハ……弱肉強食。やはりこれこそが世界の摂理」 



魔王「がががががががああああああああっ!!」 



389 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/16(火) 00:45:00.99 ID:rq0kirqDO

 魔剣から魔力が噴き出す。城全体がビリビリと痺れ、その魔力が魔王の身体に集中する。 


先代魔王「女側近よ、無属性のあやつは見えないじゃろうが、魔剣の魔力は感じるであろう?」 

女側近「はい」 

先代魔王「任務を果たすのじゃ。殺せ」 

女側近「……はい」 







女側近「“魔王”様の命令は絶対です」 






 女側近は絶対零度魔法を放った! 





 眩ゆい光はすべてを包む。 
 魔剣のチカラを引き出そうとする魔王。 
 泣きながら杖を構える魔少女。 
 慌てふためく魔道化師。 
 目を閉じて魔法を詠唱するエルフ。 
 痛みも、悲しみも、怒りも、絶望さえも凍りつかす。 

 魔王達は一瞬で輝く氷像と化した。 




 魔王パーティは全滅した。 



先代魔王「フハハハハッ」 


 先代魔王は凍りついた魔王に近づき、魔剣を手に取る。 

先代魔王「ふむ。女側近よ。任務完了じゃ、ご苦労だったな」 


女側近「……はい」 


先代魔王「これを期に人間界に総攻撃をしかける。準備を始めよ」 



  ■ 第37話 なぜボクを魔王にした?! 終 ■



396 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/16(火) 17:55:54.85 ID:HZQLNUHs0



  ■ 第38話 意志 ■ 
  
  
 



397 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/16(火) 17:59:33.28 ID:HZQLNUHs0


 魔王達が全滅してから3日後。 


---人間界 魔大陸・境界都市--- 


先代魔王「女側近、首尾はどうじゃ?」 


女側近「はい。魔大陸南部に帝都軍が上陸。魔王軍との大規模戦闘が開始しました。数は多いですが、地は我らにあります、問題ありません」 

先代魔王「よしよし、飛空船艦隊の方はどうじゃ?」 

女側近「数時間後にはゲートを通り人間界へ入る予定です」 



先代魔王「ふむ……あっさり終わってしまいそうで面白くないのぉ」 


魔族兵「失礼致します! 城に侵入者ですっ! 単独で……ぐああああっ!」 


 全て言い終わる前に魔族兵は背中から剣を刺され血を吐く。 



先代魔王「!」 

女側近「……」 



少年勇者「てめーが真の“魔王”か……」 

先代魔王「たった一人でよく来てくれた……歓迎しよう、“勇者”よ」 

少年勇者「シナリオ通りにはいかなかったけど……てめーさえ倒せばすべて終わるっ!」 


先代魔王「フハハッ……読みが甘いのじゃ」 

少年勇者「うにゃ、そうだね。自分の間違いを受け入れることも大事だった。自惚れていた」 

先代魔王「お前は自分の考えた“筋書き”に捉われすぎたのじゃ。大切なのは“枠組み”、臨機応変に対応出来るかどうかじゃ」 

少年勇者「返す言葉もない……」 

先代魔王「その若さで聞き分けが良いのぉ」 


少年勇者「さあ剣を抜け“魔王”っ!!」 





 先代魔王の前に美しき側近が立ちはだかる。  


女側近「相手は私だ」 


少年勇者「行くぞっ!」 

 ガッキィィイインッ! 




 少年は勇者として最後の戦いに挑む…… 





398 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/16(火) 18:05:54.72 ID:HZQLNUHs0




---人間界 王都王宮・皇帝の間--- 



 キィンッ 

   シュッシュッ 

 ドォォォンッ! 


魔王「う……う……ん」 

魔少女「あ! まおー様っ! よ、よかった」 

魔道化師「マオー!」 

 目を覚ました魔王の目の前では、エルフと人間兵達が激しい戦闘を繰り広げていた。 

 ゴオオオオッ 

人間兵「うわあああああっ!」 

エルフ「ふう……はぁはぁ……」 



魔王「……え……なにが起こったの?」 


魔少女「目を覚ましてよかった……ウチら生きてるよ」 

魔王「……い、生きてる?」 

魔道化師「うひゃ、先代魔王様が現れて、戦いが始まって……オイラ達は姐さんに……」 

魔王「女側近さん……!」 

魔少女「……」 

エルフ「あの女のせいで、わらわ達は敵陣のど真ん中で孤立状態じゃ」 


魔王(殺されなかった??) 

魔王「魔剣がない……」 

エルフ「とにかくここから脱出する方法を……」 

 ダダダダッ 

人間兵A「魔族だっ!」 

人間兵B「陛下の仇だ!」 

魔道化師「うひゃーまた敵っ!」 


 魔少女は火炎魔法を放った! 

 ゴオオオッ 



人間兵達「うわあああああっ!」 



 人間兵達を倒した!



399 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/16(火) 18:07:27.74 ID:HZQLNUHs0

魔少女「もう……次から次と敵が」 


エルフ「……人間の王を殺してしまったのじゃ、和平は白紙。戦うしかないぞ」 

魔王「くぅ……あと、あと少しだったのに」 

 魔王は悔しそうに奥歯をギジリと噛む。だが、後悔しても結果は変わらない。次取るべき行動は……? 


魔王(まずは王都から逃げないと……) 


魔王(でも、その先は?) 

魔王(先代魔王が戻って……ボクは??) 

魔王「……」 


魔道化師「マオ……」 

魔少女「まおー様」 

エルフ「“魔王”、どうするのじゃ?」 


魔王(そうだ) 



魔王(ボクは“魔王”なんだ) 


魔王(やるって決めたんだ) 

魔王「よし、ここから脱出して……先代魔王のところへ行こう」 

魔王「女側近さんを助けるんだ」



400 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/16(火) 18:08:47.02 ID:HZQLNUHs0

魔道化師「はぁ!? 姐さんが敵だったんじゃないの~?」 

エルフ「そうじゃ、最初から仕組まれていたのじゃ、今更助けるなど……」 


魔王「ちがうよ。女側近さんは敵なんかじゃない」 



魔王「だって」 

魔王「ボクら生きてるじゃん!」 


エルフ「……」 
魔道化師「……」 
魔少女「……」 



魔王「確かに今まで女側近さんは先代魔王の命令通り動いていたのかもしれない」 


魔王「でも」 


魔王「ボクや魔少女さん、エルフさん、ピエロ……一緒のチームのボクらを……殺したくなかったんだ」 








魔王「だから、生きてる」 

魔王「それが女側近さんの意志。あとで息を吹き返すよう魔法を使ったんだよ」 

エルフ「……そうか。世界樹で魔王を助けたのは彼女の意志」 


魔少女「お姐ぇは何度も側近を辞めようとしていた……自分の本当の任務から逃げたいとう“意志”だったのかな?」 

魔道化師「うひゃ、やっぱり姐さんは味方っうひゃー!」 


魔王「女側近さんを助けて……魔剣を取り返して、先代魔王を倒す。これしか道はない」 




401 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/16(火) 18:09:52.11 ID:HZQLNUHs0

 ダダダダッ 

人間兵「魔族だ、いたぞっ!」 


 無数の人間兵が現れた! 
 エルフを中心に人間達と戦う。 

エルフ「おおおおおおっ!」 


 エルフは弓矢を乱れ打ち! 

人間兵1「ぐあっ」 
人間兵2「ぎゃあ」 
人間兵3「うわあ」 


人間兵4「魔族どもめ……くらえっ」 


 人間兵4は風撃魔法を放った! 

 ブォンッブォンッブォンッ! 


魔少女「みんな下がってっ」 


 魔少女は杖を両手で持ち、魔法障壁で受け止める。それと同時に魔道化師が飛び上がり投げナイフで人間兵を仕留める。 


魔王「エルフさんっ! 左に敵多数!」 

エルフ「大地よ……」 

 エルフは土碧魔法を放った! 


 ドゴゴゴゴッ! 


 圧倒的に魔王達の方が強いが、人間兵は数が多い。倒しても倒しても敵が溢れてくる。 
 魔王達がいるのは、人間の本拠地王都の玉座の間。 




魔王(女側近さんを助けるもなにも、ここから生きて出るのは至難の技。どうする? 敵が多すぎる)



402 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/16(火) 18:11:45.01 ID:HZQLNUHs0

エルフ「はぁ……はぁ……」 

魔少女「みんな回復っ」キィィィン 

魔道化師「うひゃ……ありがと」 


魔王「魔少女さん………」 

魔少女「う、うん?」 


魔王「えっと……魔力を辿って女側近さんのところまで行ける?」 



魔少女「うん、お姐ぇの魔力なら離れてもわかる」 

エルフ「わらわがここの敵を引きつける。おぬしらは屋上から脱出を」 

魔王「え?! ダメだよっ一緒に行こう」 

エルフ「それではこの場を切り抜けられん……おぬしを守りながらではな」 

魔王「……でも」 


エルフ「この場を切り抜けられなければ何も変えられん。魔王、おぬしなら女側近を命令の呪縛から助け出せる」 

魔王「……」 

エルフ「彼女を意志のまま生きる道に。頼んだぞ」 

魔王「く……必ず助けに戻る。絶対死なないで、お願いだよ」 

エルフ「わかったわい。エルフは嘘はつかん……魔少女、魔王を頼んだぞ」 


魔少女「うん……」 


 魔王達は屋上へ向かって走り去った。 
 エルフの前には再び無数の人間兵が現れる。 

エルフ「やれやれ……嘘をついてしまった」 

エルフ「あやつが王でなければエルフ族に未来はない。ここで死なせるわけにはいかんのじゃ……」 




403 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/16(火) 18:13:51.08 ID:HZQLNUHs0

---魔大陸 境界都市・ゲート--- 

 キンッ 
       キンッキンッ! 

   キンッ 

 氷の剣と炎の剣が交わる。 
 頭上には大きな光の球体。ゲートが輝く。砦の屋上にて少年勇者と女側近のバトルが激しさを増していた。その光景を見下ろしていた先代魔王が呟く。 

先代魔王「美しいのぉ……」 

先代魔王「命を懸けた戦い。これこそ最も美しい光景じゃ」 


 ガッキィィイインッ 

少年勇者「うらああああっ!」 

女側近「はああああぁぁっ!」 



 キィィィンッッ! 

少年勇者「くっ」 

女側近「また対氷属性装備とは相変わらず準備のいいこと」 

少年勇者「ふふん、眼の見えない側近くらいは倒せると思ったんだけどな~」 

女側近「甘く見ないでもらおうか。その程度では先代魔王様の足元にも及ばん」 

少年勇者「うにゃ、そうかもしれんけどさ。そいつはさ……やってみなけりゃわからねぇだろっ」 

 ニヤリと笑うと少年勇者は先代魔王に飛びかかる。剣を振り上げ全身全霊の力で振り下ろす。 

少年勇者「うらああああっ!」 

先代魔王「ふん……」 


 奇襲のつもりだったのか、先代魔王にとってはあまりにも遅い攻撃。驚きもせず、自らの剣で受け止める。 


 ガッキィィイインッ!! 



404 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/16(火) 18:14:59.64 ID:HZQLNUHs0

 勇者の剣と先代魔王の剣が交わる。 

先代魔王「なんのつもりじゃ……つまらんの。破れかぶれの攻撃で余を倒せると思うたのか?」 


勇者「ふふん……魔剣を抜いたな」 

先代魔王「?!」 

 突然頭上に輝く光の球体、ゲートがビリビリと空気を揺らす。 

先代魔王「その剣は……聖剣!」 

 少年勇者が切りかかった剣は炎の剣ではなく、いつの間にか聖剣に持ち変えられていた。 
 聖剣と魔剣が交わる時、ゲートが閉じる。 

先代魔王「貴様の目的は最初から……」 


少年勇者「うにゃ、俺っちの目的は最初からゲートを閉じること!ふふんっ……」 


 少年勇者は先代魔王に向けて中指を立てて叫ぶ。 






少年勇者「シナリオ通りだ!」 



 それだけ叫ぶと少年勇者は逃げ出した。 
 頭上のゲートはバリバリと光を放ち、少しずつ小さくなって行く……。 


先代魔王「……してやられたが、苦肉の策と言ったところか。女側近、追うのじゃ」 

女側近「はい」 

先代魔王「ゲートはまた開けば良い。聖剣は勇者しか持てん。生きたまま連れてくるのじゃ」 

女側近「かしこまりました」 




405 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/16(火) 18:16:26.20 ID:HZQLNUHs0

---王都 王宮--- 


人間兵1「いたぞっ! 魔族だっ」 

人間兵2「殺せっ」 

人間兵3「くらえっ」 



 人間兵3は爆裂魔法を放った! 


 ドゴオオオオオッ! 

 魔少女は結界を展開! 


魔少女「くぅ……!」 

魔道化師「うひゃっひゃああああっ!」 

 魔道化師は投げナイフで攻撃! 

 ザシュッ 


 人間兵1を倒した! 

魔王(このままじゃまた囲まれる……もう少しで屋上なのに) 

魔少女「はいやあああっ」 


 次々現れる人間兵を倒しまくるが切りがない。 

魔道化師「よーし、マオ! ここの敵はオイラが食い止めるからよー先に行ってくれい」 

魔少女「はぁ?! 何言ってんのよ、無理に決まってるでしょ」 

魔王「そうだよ! ピエロ一人じゃくいとめられないでしょ!」 

魔道化師「大丈夫大丈夫~。オイラ、エルフしゃんからこれ持たされてるから」 

魔王「それは……精霊薬」



406 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/16(火) 18:17:38.42 ID:HZQLNUHs0

魔道化師「最後の手段だったけど、ここを切り抜けなきゃ。うひゃ」 


魔少女「でもピエロ……後遺症があるよ。お姐ぇみたいに目が見えなくなるかも」 

魔道化師「構わない」 


魔王「ピエロ……」 

魔道化師「ここでマオを……友達を死なせるくらいだったら、目も耳も口もいらないよ! 頭おかしくなったって構わない!」 

魔王「ダメだっ! 一緒に切り抜けるんだ!」 

魔道化師「オイラは部下じゃなくて友達だから命令は聞かない。うひゃひゃ」 

魔王「ピエロっ!」 

魔道化師「マオ……オイラはバカだけど分かるよ。このままじゃ皆んな死んじゃう。マオは……魔剣を取り返して助けに来てよ。それはマオしか出来ない」 


魔少女「ピエロ……」 

魔王「……ッ」 

魔王(この状況を皆んなで切り抜ける方法が見つからない……) 

魔道化師「先代魔王を倒す方法は思いついてるんでしょー?」 

魔道化師「だからマオは先に行って。王様だろっ! うひゃひゃひゃっ!」 


 バンッ 

 横から背中を叩かれ魔王は魔道化師に背を向ける。 

魔王「ピエロ……絶対死なないで。必ず戻る」 

魔道化師「マオ……笑え。オイラは道化師。いつも笑ってるよ」 


 魔王は振り返らず走り出した。魔少女もそれに続く。 


魔道化師「……オイラは団長達の仇をとる。人間を殺す」 

 精霊薬を一気に飲み干す。 

魔道化師「マズっ!」 


 いつの間にか無数の人間兵に取り囲まれている。 
 魔道化師は自分の頭がジリジリと熱くなっていくのを感じる……。 


人間兵「殺せぇぇっ!」 

魔道化師「うひゃ……うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!」 




407 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/16(火) 18:18:43.99 ID:HZQLNUHs0

---王都 王宮・屋上--- 



魔王「はぁはぁ……」 

魔少女「外に出た! よし……」 


 高い広い青い空……。魔少女は残った僅かな魔力を詠唱して膨らます。 

魔少女「召喚……はああああぁぁっ! いでよ! ドラゴンっ!」 


 キィィィンッ! 

 大きな光とともに飛竜が現れる。 

飛竜「ギャアアアァァッ」バッサバッサ 

魔少女「まおー様っ! 乗って!」 

魔王「うん!」 


 飛竜に乗り飛び立った魔王達は王都を離れる。 
 向かう先は最後の敵、先代魔王。 


魔王(みんなの意志を無駄にはしないっ) 

  ■ 第38話 意志 終 ■ 



409 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/16(火) 20:13:48.44 ID:Mpnd+nq/o

熱い展開



410 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/16(火) 21:51:07.13 ID:iHY3Ay+W0

少年勇者も中々かっこいい



411 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/16(火) 21:57:09.54 ID:JZVFYM0dO

乙 
この展開は予想してなかった



412 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/16(火) 23:51:40.90 ID:TNDRkzoDO

乙 
新鬼武者っぽい展開好き 



416 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/17(水) 08:50:21.24 ID:/NKe+S22O



  ■ 第39話 魔王はボクだ ■ 
  
  
 



417 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/17(水) 08:51:15.28 ID:/NKe+S22O

---人間界・魔大陸上空--- 



 飛竜に乗る魔王と魔少女。果てしなく続く空。その目前には光る球体、ゲートがビリビリと輝きを放つ。 


魔王「ゲートが……少しずつ小さくなっている? 閉じようとしてる?」 

魔少女「え? なんで?……魔界へ帰れなくなっちゃうよ」 


魔王「……。女側近さんの魔力は感じる?」 

魔少女「うん、もう近くまで来てる」 



 バッサバッサッ 

  
魔少女「いたっあそこ! お姐ぇ!」 

魔王(女側近さんっ) 




418 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/17(水) 08:52:49.12 ID:/NKe+S22O

 境界都市から少しだけ離れた草原。夕日で魔界のように赤くなり始めた空に縮みゆくゲートが浮かんでいる。 
 女側近は瀕死の少年勇者を引きずりながら歩いている。 

少年勇者「ぐ……ぅ……離しやがれ……」 

女側近「黙れ」 


 バッサバッサッ 



飛竜「ギャアッギャア……」 

魔王「女側近さぁぁん!」 

魔少女「お姐ぇ!」 


 地上に降り立ち駆け寄った魔王達に、女側近は驚きを隠せない。 

女側近「ま、魔王様?!?!」 

魔王「迎えにきたよ……」 

女側近「な、何故……ここに……」 

魔王「当然。ボクらはチームだよ」 

魔王「女側近さんを自由にしにきたんだよ」 

女側近「------ッ」 

魔少女「お姐ぇ、ウチらと一緒に戦おうよ」 





女側近「魔王様……お逃げください」 


魔王「え?!」 



419 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/17(水) 08:55:05.96 ID:/NKe+S22O

女側近「今なら貴方は死んだことになっています。身を隠せば見つかることはありません」 

魔王「……」 

女側近「先代魔王様には……誰も逆らえません。誰も敵いません」 

魔王「ボクは逃げないよ」 


女側近「魔王様っ」 

魔王「このまま先代魔王が王に戻ったら……ボクらが変えてきた魔界は、また元に戻ってしまう! それでもいいの?!」 

女側近「“魔王”様の命令は……絶対……です……」 


魔王「絶対じゃない」 

魔王「絶対じゃないよっ! だって、女側近さんボクらを殺さなかったじゃないか」 

女側近「……」 

魔王「それはキミの意志だよ」 

女側近「わ、私は……側近。その為に生まれ……その為に生きてきた……」 

魔王「女側近さんだって一人の魔族だ。笑ったり、怒ったり、悲しんだり、喜んだり、一緒に旅したんだ。みんな知ってるっ」 

女側近「『弱肉強食』……弱き者は強き者に従う。魔界の摂理です」 


魔王「ちがう!」 


魔王「誰もが……平等に暮らせる世界を創る。戦うチカラの必要のない世界」 

女側近「先代魔王様が……」 



魔王「“魔王”は……」 








魔王「ボクだっ!!」 



 



420 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/17(水) 08:56:22.39 ID:/NKe+S22O

魔王「キミの意志は?!……思うままに言うんだっ」 


女側近「私は……私は……」 


魔王「女側近さん!」 

魔少女「お姐ぇっ!」 



女側近「……」 



女側近「私は」 




 女側近の視力のない瞳からボロボロと涙が落ちる。 

女側近「魔王様と共に生きたい……」 






魔少女「お姐ぇ……」 

魔王「女側近さん……」ニコッ 





421 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/17(水) 08:58:03.67 ID:/NKe+S22O


 女側近の表情には感情が宿る。 
 そこには只々普通の魔族の女性。そんな姿に魔王も魔少女も微笑む。 
  



女側近「魔王様、私は……」グサッ 


 言いかけた女側近の言葉は突然遮られた。 
 口から血を吐く女側近の胸には魔剣が刺さっていた。 

女側近「ぐぅ……」 

魔王「女側近さん!!!!」 


 スローモーションのようにゆっくり倒れる女側近から魔剣が引き抜かれ、背後から先代魔王が現れる。 

魔王「先代魔王!!!」 

魔少女「お姐ぇっ!」 


少年勇者「く……」 



先代魔王「驚きはしないぞ。余は元々誰も信用しておらん」 


魔王「魔少女さん……回復を」 

魔少女「うん」 

先代魔王「側近はまた新しい物へ変えれば良いだけじゃ」 

魔王「女側近さんは物じゃない!」 




422 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/17(水) 08:59:56.01 ID:/NKe+S22O

先代魔王「お前らに意志は必要ない。余の言うことを聞いていればいいのじゃ」 

先代魔王「弱肉強食……余の言葉は絶対。逆らえば死ぬだけじゃ」 

先代魔王「何故そんなこともわからん。お主がどんな理想を願おうと余に勝てなければ叶わん。つまり強くなければ何もできんのじゃ」 


魔王「……」 

先代魔王「弱く、チカラもなく、魔法も使えない。それでどうしようと言うのだ?」 

魔王「……」 

先代魔王「余の強さが分からん訳ではあるまい」 


魔王「……たしかに、ボクは弱い。戦えないけど」 


先代魔王「……」 



魔王「お前にボクは殺せない」 

先代魔王「……」 


先代魔王「得意のハッタリか?……イライラしてくるわ」 


魔王「なんでも思い通りになると思うなよ」 

先代魔王「下級魔族が……。“魔王”の余が命令する。跪け。許しを請え。命乞いをしろ」 


魔王「“魔王”はボクだ」 




423 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/17(水) 09:01:28.85 ID:/NKe+S22O

先代魔王「クズが……」 


 先代魔王は一瞬で魔王に肉薄すると魔剣を胸に突き刺す。あっさりと貫通し、魔王の口から血が噴き出す。 

魔王「があっ……あああ……」 

先代魔王「脆い身体じゃ」 


魔王「ぐ……ああ……」 

 魔王は胸に突き刺さった魔剣を掴む。 

魔王「はぁはぁ……掴んだ……ぞ」 

先代魔王「あ?」 

魔王「はぁ……はぁ……」 








魔王「こ、来い……魔剣! まだ…生きてん……だろっ!」 

先代魔王「なに?!」 




 ドクンッ 






 突然魔剣が黒く光り出す。魔王は刃が食い込むほど刀身を握りしめる。 

魔王「がががががががががああああアアアアっっ!!!!」 

 ギィィィインッ! 

 魔剣の魔力に弾かれた先代魔王は、剣から手を離し吹き飛ぶ。 
 予測できなかった衝撃に目を見開て驚いた。 

魔王「」 

 胸に魔剣が突き刺さったままの魔王は自分の身体から引き抜く。 

魔王「……決着を……ツケヨウ」



424 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/17(水) 09:03:05.38 ID:/NKe+S22O



魔王「魔オうはボクダっ!!!」 




先代魔王「……」 

魔王「オマエを……倒ス」 



魔少女「魔剣を奪い返した!」 

魔王「魔ショウジョさん……みんナをマモッテ」 

魔少女「う、、うん」 

女側近「自我があるの……?」 




先代魔王「なんと……」 

先代魔王「面白い。これこそ弱肉強食っフハハハハハッ」 


魔王「ガアあああアあっ!!!」 



  ■ 第39話 魔オうはボクダ 終 ■ 




429 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/18(木) 01:48:05.98 ID:1IdDD/GU0



  ■ 最終話 勇者と魔王 ■ 
  
  
 



430 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/18(木) 01:49:43.77 ID:1IdDD/GU0

 ガアギィィィイッ! 

    ギイイィィっ! 
  ドォォォンッ 


少年勇者「な、なんて戦いだ……」 



 日が沈みゆく。 
 王と王の戦い。 
 魔剣の魔力を纏った魔王は、下級魔族では目で追えないほどのスピードで先代魔王に斬りかかる。 
 先代魔王もまた闇の魔法で創り出した剣で迎え撃つ。 

 ギイイィィンッ!! 



先代魔王「フハハハハハッ楽しいぞ。これほど充実した戦いは久しぶりじゃ」 

魔王「ガアああっ!」 

先代魔王「ほれっ」 


 先代魔王は大火焔魔法を放った! 

 先代魔王は大氷冷魔法を放った! 

 先代魔王は大風撃魔法を放った! 


 ゴオオオオオオオオオォォォォォッッッッ!!!! 


魔王「うっとうシイッ!」 

 魔王は衝撃波を放った! 


 激しくぶつかる二つのチカラに、周りの女側近達はただ呆然と見つめていた。 

女側近「魔王様……」 

魔少女「まおー様……頑張って」 

少年勇者「アイツなんなんだよ……」 





431 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/18(木) 01:51:50.20 ID:1IdDD/GU0


  ギイイィィッ! 

 キンッ!  キンッ! 


先代魔王「結局のところ戦うしかない。それでも弱肉強食を否定するのか?」 

魔王「ボクらは魔物ジャナイ……知セイがあるンダヨ。タタカワナイ選択肢もアル」 

  ギイイィ! 

先代魔王「甘ったれだ。その様な考えでは誰もついてはこまい」 

魔王「魔ゾクだっテ……ニンゲンダッテ……戦いをモトメていないっ!」 

先代魔王「何もわかっていない。全ては戦いじゃ。学問だろうと仕事だろうと、全ての理は争いで満ちている」 

 キンッ 

  ドガッ 


先代魔王「生まれた時から皆不平等なのだ。魔力、金、地位、チカラ。ならば戦って競い合うことが、この不平等な世界を生きるすべではないのか」 

魔王「違うっ! みンナ不平等だからこソ、手を取り合ウベキナンダっ」 

先代魔王「燃えろっ」 


 先代魔王は大爆炎魔法を放った×10 


 ゴオオオッッッッッッッ!!!!! 
 ゴオオオッッッッッッッ!!!!! 
 ゴオオオッッッッッッッ!!!!! 

魔少女「きゃああああっ」 

 すべてを焼き尽くす烈火の炎。魔王は魔少女、女側近、少年勇者をかばう。 
 しかし、魔王はダメージを受け付けない。 




432 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/18(木) 01:52:56.05 ID:1IdDD/GU0

先代魔王「フハハハッ……足手まといをかばってどうする」 

魔王「オマエノ考え方でハ悲しむ者が増エル……ガアああアアアっ」 

 魔王は魔剣で攻撃っ! 

 ガキィンッ! 

先代魔王「ぐっ……」 

魔王「ガアアアアアああああっ!」 


 魔王は衝撃波を放った! 

 ドォォォンッッッ! 


魔少女「やったぁ!」 

少年勇者「やったか……」 


女側近「魔王様……」 

魔王「ハァはぁ……ガァハァ……ボクハ負けナい」 




 衝撃波で巻き上がった砂埃の奥から、先代魔王は姿を現わす。身体に傷があるものの、みるみる治っていく…… 



先代魔王「まさか傷を負うとは思っておらんかった。魔剣のチカラとは素晴らしい」 

魔王「ガアアアアアっ!!」 




433 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/18(木) 01:54:41.29 ID:1IdDD/GU0

 魔王が斬りかかると先代魔王は闇の魔法を放つ。現れた闇は魔王の動きを封じる。 

魔王「があ……アアアアアああ……」 

先代魔王「これで動けまい」 


魔王「クソォぉ……」 

先代魔王「弱ければ、何も変えられない。何も動かせない」 

魔王「ガアアアアア……」 

先代魔王「余が正しい。証明しよう」 

 先代魔王はニヤリと笑い、魔王の魔剣を持った右手を切り落とす。 

 ズタンッ!!! 

 ぼとりと魔剣ごと右手は魔王の足元に落ちた。魔剣の魔力を失った魔王にダメージが戻る。 

魔王「あ、……あ、……」 


魔王「ぎゃあああああああああああっ!!!」 


先代魔王「ククク……フハハハハハッ」 

女側近「魔王様ぁぁぁっ!!!」 


 女側近は大氷冷魔法を放った! 


 しかし、先代魔王は搔き消した。 



先代魔王「なんじゃ余に勝てないというのは、おぬしが一番わかっとるじゃろうが」 

 先代魔王は氷撃魔法を放った×100 


 ドドドドォドドドドォドドドドォドドドドッッッ!!!! 
 ドドドドォドドドドォドドドドォドドドドッ!!!! 


女側近「ぐぐぐ……きゃあああああああっ」 


先代魔王「フハハハッ氷魔法で上回れてしまう気分はどうじゃ?」 




434 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/18(木) 01:56:08.96 ID:1IdDD/GU0

少年勇者「つああああぁっ!」 


 少年勇者は先代魔王の背後から聖剣で奇襲攻撃! 


 ジャキイイィィィッ!! 



少年勇者「く……はぁ……」 

 しかし、傷を負ったのは少年勇者の方だった。 
 攻撃が届く前に少年勇者の腹部に魔剣が刺さる。 



先代魔王「おぬしは奇襲してくると思っておったわ」 



魔少女「あ……あ……」 

 魔王、女側近、少年勇者は呻き声を上げて蹲る。そんな光景に魔少女は後ずさりする。 
 先代魔王は落ちていた魔剣を拾い上げて、魔少女に見てニタリと笑う。 


先代魔王「回復せんでいいのか? ほっといたら皆死んでしまうぞ?」 

魔少女「う、う……」 

先代魔王「もう魔力が残っておらんのか。つまらん」 

魔王「うあぁ……うぁ……」



435 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/18(木) 01:58:25.65 ID:1IdDD/GU0

先代魔王「この魔剣の魔力は素晴らしいの。貴様のようなクズが支配できたのじゃ……余に扱えん訳はあるまい」 


 先代魔王は魔剣を高く掲げ問いかける。 

先代魔王「魔剣よ……あとは貴様だけじゃ。余にチカラを示せ」 

 ドクンッ…… 


 ドクンッ…… 



先代魔王「来るのじゃ……魔剣よ。貴様も支配してやる」 


 ドクンッドクンッドクンッドクンッドクンッ…… 


先代魔王「ガアアアアアアアアアアッッッ!!」 


 魔剣から吹き出す魔力が先代魔王を包む。 





 虚ろな意識の中で魔王は思う。 

魔王(ボクは間違っていたのかな?) 


魔王(何も変えられないのか?) 


 目の前が少しずつ黒に染まる。 
 視界は無くなるが脳裏には仲間の顔がよぎる。 
 女側近、魔少女、ピエロ、エルフ、魔執事、母、少年勇者。 


  

魔王(みんなを死なせたくない) 


魔王(ボクはどうなってもいい) 


魔王(負けないチカラが欲しい) 








魔王(これが弱肉強食?) 


魔王(あいつの言った通りだ) 

魔王(弱いから結局何も出来ないんだ) 



魔王(ボクは戦えないんだ) 


魔王(そりゃ何も出来ないよ……) 


魔王(…………) 

魔王(……) 




436 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/18(木) 01:59:31.08 ID:1IdDD/GU0



魔王(出来ない?) 


魔王(違う!) 





魔王(出来る出来ないじゃないっ) 

魔王(“やる”っていう意志だ!) 



魔王(忘れちゃダメだ……戦えなくたってここまできたじゃないか) 

魔王(やる……) 




魔王(戦うんだ) 


 真っ黒な視界に一筋の光が差し込む……。 
 魔王は引き寄せられるように手を伸ばす。 






437 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/18(木) 02:00:14.20 ID:1IdDD/GU0







 



438 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/18(木) 02:01:40.99 ID:1IdDD/GU0





先代魔王「ガアアアアアアアアアアアッッッ!!!」 


 先代魔王を包む魔剣の魔力は徐々に身体に吸収されていく……。 



先代魔王「ふ……ふ、フハハハハッ!」 

先代魔王「勝ったぞ、やはり余は最強じゃっ!」 



先代魔王「これが魔剣のチカラ! 素晴らしいっ!」 



先代魔王「フハハハハッ……はは……は?」 


 先代魔王が高笑いが止まったのは、あるものが視界に入ったからである。 
 先ほどまで倒れていた魔王。 
 いつの間にか立って俯いている。 

 切り落としたはずの腕が戻っている。その右手には見慣れぬ剣。 
 ただならぬ気配を感じ先代魔王は身構える。 


先代魔王(あの剣は……) 


 魔王の持つ剣は眩ゆい光を放ち身体を纏う。 
 そう、魔王が持っている剣は少年勇者が持っていた剣。 







女側近「聖剣……」 



439 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/18(木) 02:02:59.89 ID:1IdDD/GU0


先代魔王「バカな?! 聖剣を持てるじゃと?!」 




魔王「戦う……」 



 ピカッと光ると魔王は光を纏ったまま先代魔王に斬りかかる。 


 ガキイィィンッ! 

 先代魔王も魔剣で受け止める。 




 聖剣の魔力と魔剣の魔力がぶつかり混じり合う。 

 ゲートの鍵。 
 聖剣と魔剣が交わる時、ゲート開閉する。 


 ガキイィィンッ 

      ギイィィィッン! 

  ガギィィンッッッ! 


 頭上に浮かぶ光の球体ゲートは剣が交わるたびに膨張と縮小を繰り返す。 
 次第にゲートは巨大化し、境界都市を飲み込み……魔王達も吸い込まれていった……。 



ーーー人間界と魔界のはざまーーー 




先代魔王「おおおおおぉぉっっ!」 


魔王「はあぁぁぁぁっっ!!!!!」 



  ■ 最終話 勇者と魔王 終 ■ 



440 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/18(木) 02:03:46.68 ID:1IdDD/GU0



  ■ エピローグ ■ 
  
  
 



441 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/18(木) 02:06:25.62 ID:1IdDD/GU0


///////// 


××××.××.×× 


覚えているのは……上も下もわからない次元の狭間で 
まおー様が光を纏いながら戦っていたこと。 

ウチは頑張れって応援することしかできなくて 
涙が止まらなかったよ…… 



いつの間にか気絶しちゃって、気が付いたら魔界の赤い空が見えたの。 
何が起こったかわからなかったけど……思ったのは魔界に帰ってきたんだって! 
辺りを見渡したら、まおー様とお姐ぇが倒れてて必死で回復した。 

二人とも無事だったし、先代魔王もいなくなっててホッとした。 

少年勇者もいなかった。 




でも、目を覚ましたまおー様は泣きじゃくった。 



それで気が付いたの……ゲートがないってこと。 
聖剣も魔剣もなくなってた。 
魔界と人間界は切り離されちゃって……ピエロやエルフは置き去りに。 
人間界にいた民や兵士、ものすごい数の魔族が取り残されちゃった。 



でも、ゲートか閉じたってことは 







戦争が終わったってこと。 

<魔少女いつかの日記より> 



442 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/18(木) 02:07:57.55 ID:1IdDD/GU0




---魔界 冥都・最上層 黒魔城--- 


魔王「先代魔王は倒してないんだ」 

女側近「おそらく人間界に……」 


魔王「うん、ハッキリ覚えてないけど、多分魔剣も聖剣も向こうの世界に行ってしまったと思う」 

女側近「つまり再びゲートを開けて攻めてくる可能性がある……ということですね」 

魔王「必ず……ピエロとエルフさんを助けに行く……」 


女側近「はい……」 


魔王「必ずだ」 





女側近「かしこまりました」 



443 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/18(木) 02:09:27.24 ID:1IdDD/GU0

魔王「……」 

女側近「?」 

魔王「女側近さんは……いや、側近一族みんなだけど」 

女側近「はい」 

魔王「一度解散してもらおうと思うんだ。自由になってほしい」 

女側近「はい」 


魔王「女側近さんも……普通の魔族として生きてほしい」 




女側近「魔王様、私は自由を知りません」 


女側近「どうしていいのか分かりませんが……」 

魔王「うん」 

女側近「魔王様の側近を続けさせて頂きたいです」 

魔王「……」 

女側近「いかがでしょうか?」 

魔王「それが……キミの意志なの?」 

女側近「え……?」 

魔王「側近としてではなく、女側近さん自身の意志なの?」 

女側近「…………。」 




女側近「はい。私が決めました、私の意志で」 


女側近「魔王様の元で……生きていかせてください」 



444 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/18(木) 02:11:06.33 ID:1IdDD/GU0

魔王「うん!」 

魔王「……ありがとう」 



女側近「魔王様一つだけお伝えしておきたいことがあります」 

魔王「……うん?」 

女側近「本当のお父様のことです」 

魔王「知ってるの?!」 

女側近「はい、以前調べましたので」 

魔王「確か母さんは魔王軍の騎士だったって……」 


女側近「そうですね。正確には魔王軍の兵士です」 

女側近「人間との戦争開戦時、異世界からの未知なる敵に魔王軍は大変苦戦し、多くの兵を失いました」 

魔王「うん……人間から攻めてきたんだよね」 

女側近「人間の強さは凄まじく、その軍隊は冥都にも迫る勢いでした」 


女側近「そんな中、志願兵として前線へ出たのが貴方のお父様です」 

魔王「志願……」 




445 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/18(木) 02:11:59.64 ID:1IdDD/GU0

女側近「記録では……その後、前線にて戦死。となっております」 

魔王「……」 

女側近「どのような形で亡くなられたかは分かりませんが、お父様の部隊は大変戦果を上げ、人間部隊を魔界から追い出すことに成功致しました」 

女側近「お父様は冥都を守るために戦った」 

女側近「愛する妻と息子の為に戦ったのだと……思います」 


魔王「女側近さん……」 


女側近「それだけは覚えておいてください」 




魔王「うん」 




446 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/18(木) 02:13:53.37 ID:1IdDD/GU0

 母親の『父親は勇敢な騎士だった』という言葉を思い出す。 
 なんだか心のモヤモヤが晴れてく気がした。ずっと否定してきた父は……先代魔王は親ではなかった。 
 それだけで少し救われた気がした。 
 何が正しいかなんて分からない。 
 先代魔王は『弱肉強食』という考えで魔界を何百年も安定させてきた。それは、ある意味では正しいのかもしれない。 
  
 ボクの考えのせいで悪い方へといってしまうかもしれない。 
 ボクに“魔王”なんて出来るわけねぇって思う魔族は沢山いるだろう。 


 そうかもしれない。 

 でも 




 ボクを支持してくれる仲間もいる。 

 女側近さん…… 
 魔少女さん、ピエロ、魔執事、エルフさん。 

 だからボクは僕を信じられる。 







 自分を信じて進むしかないんだ。 


 そう“決めた”から。 








女側近「魔王様、お座りください」 


魔王「うん」 


 魔王は魔界の頂点、玉座に座る。 









……そして、魔界に争いのない時が過ぎていく。 








  ■ THE END ■ 

[魔王「ボクに魔王なんて出来るわけねぇ」]END 

最後まで読んで頂きありがとうございました!



447 : ◆Ks1JsTemxeE/ 2017/05/18(木) 02:20:07.14 ID:1IdDD/GU0

今作は裏物語、実は表の物語があります。 

女騎士「こんな勇者についてけねぇ」 


 こちらが今作の約30年後の人間界の話です。“表”なので今作はこの話がベースになってます。人間界に取り残されたピエロや少年勇者の30年後が少し見れます。 


兵士「勇者の為に死にたくねぇ」 


 ①の勇者の最終決戦の話です。初めて書いたSSです… 


勇者「魔王倒したらやることねぇ」 


 ②のその後です。ここに出てくる勇者とは“西の勇者”のことです。誰が犯人?!っていうミステリー物を一度描いてみたくてやりました。 


勇者「魔王を捕まえたが殺さねぇ」 


 同じ舞台での駆け引きを、違う視点で同時にスレ立てたら面白いかな?と思ってやってみました。 


どれも単体で読んでも大丈夫なように書いているつもりです。(つもりです)でも舞台は繋がりがあります。なのでどれも終わり方が… 
未熟な作品ばかりですが読んで頂けたら幸いです。 
以上過去作の宣伝でした。 

本当に最後まで読んで頂きありがとうございました!!! 



453 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/18(木) 02:49:41.43 ID:coY8dM4Go

乙 
楽しかったよ



455 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/18(木) 21:26:54.24 ID:wWxa8WZf0

乙乙 
ピエロってあいつなのか……



461 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/20(土) 23:23:42.13 ID:yP+NtphB0

今更だけど30年後に少年勇者のパーティの女賢者がお婆さんになってるけどこの時点で40才くらいだったのか....






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