転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1375103665/

1 :もーん ◆/Pbzx9FKd2 2013/07/29(月) 22:14:25.63 ID:oKQyQEO70



■■■

今回も地の文が入っています。
苦手な方はブラウザバック推奨です。

前スレ エイラ「なぁ、チョコミントは好きか?」

の続きです。





「サーニャちゃん、あのさ……今日、この後時間あるか? 前に話していた、プラネタリウム。一緒に見に行かないか?」

終業式の帰り。
私達はここ2ヶ月、日課になっている音楽室での待ち合わせをしていた。

3回目の、デートの誘い。
いいや、彼女にとってはただのお出かけだ。
しかし過去2度のお出かけの誘いだけはどれも成功している。
私は少しずつ慣れてきたような気がして、かっこよくなっている、なんて。
そんなことを考えて、自惚れていた。

今日はキメる予定だ。
明日からは夏休みに入る。
1ヶ月と少しの間、勉強から離れられる。
しかし、それは同時に彼女に会えないということも意味している。
だから私は考えた。そして出した答えは……恋人になって、夏休みを満喫するというものだった。









2 :もーん ◆/Pbzx9FKd2 2013/07/29(月) 22:15:39.08 ID:oKQyQEO70



「ほら、まだ行けてないだろ? この間はさ、その……あはは……」

2度の失敗が脳裏を過ぎる。誘いだけは上手くいくのに、その内容は……。こんな失態、もう二度と御免だった。

「……はい、分かりました。そうですね、明日からは夏休みですし、良いかもしれませんね、エイラさん」

「ほんとか!? その……今からは、ダメかな……」

私は先ほどまでピアノを弾いていた彼女と、鍵盤を交互に見る。

「えぇ、いいですよ。ここは夏休み中、開放されるそうなので、たまに来る予定ですから」






3 :もーん ◆/Pbzx9FKd2 2013/07/29(月) 22:16:16.32 ID:oKQyQEO70



それから私達は昼過ぎに最寄の駅に着くと、電車に揺られて1時間と少し。
都会までやってきた。
こんな大きな街は久しぶりで、彼女とは初めてだ。
周りには大人がたくさんいて、はぐれないかと心配した私には下心もあった。

「はぐれるといけないから……手を、繋がないか」

初めて、手を繋ごうと提案する。
私は左手を差し出す。
彼女はじっと差し出された左手を見ている。

私はその瞬間後悔した。
まだ付き合っても、告白さえもしていないのに。
さすがにこれは先走り過ぎた、調子に乗りすぎたと。
しかしその手を引っ込めるワケにも行かず、私はただ手を伸ばしていることしかできなかった。






4 :もーん ◆/Pbzx9FKd2 2013/07/29(月) 22:16:45.92 ID:oKQyQEO70



「ありがとう、ございます……」

しかし彼女はそういうと、右手を差し出し、私の掌にその細い指を軽く乗せようとする。
触れるか触れないかのところで彼女は一度手を引くと、制服のスカートからハンカチを取り出し、掌を拭う。
それを見て、私は……以前ペリーヌに言われたことを思い出して、彼女と同じようにする。

それから私はまた手を差し出すと、彼女は今度こそ乗せる。
まるで小鳥が餌を啄ばむように、軽く。

言葉にできない、嬉しさ。
何かがこみ上げてくる。
正直、浮かれていた。
だって、本当に好きな人に触れていられるのってこんなに嬉しいんだと。
初めて知ったから。







5 :もーん ◆/Pbzx9FKd2 2013/07/29(月) 22:17:11.58 ID:oKQyQEO70



私は慣れない街でできる限りエスコートする。 
今年竣工し5月に開業した、街の、いや国のシンボルになった電波塔の下にある複合ショッピングモールに入る。 
水族館に展望台、何でもあるらしい。 

遅めの昼食を取るために私達はお店を探す。 

「サーニャちゃんは、何が食べたい?」 

「エイラさんが、最近食べてないモノがいいです」 

「うーん。昨日は……えーっと、あぁ……牛丼、食べたというか、食べさせられたな」 

私は昨日陸上部の帰りのシャーリーに付き合わされて行った牛丼屋を思い出す。 

「しかも勝手に大盛り頼まれちゃって。肉、肉、脂、脂、そして肉みたいな感じでさ……もう見たくないなぁ……」 

「ふふ……それはとっても大変でしたね」 

そう話していると、私はフィンランドの童話をモチーフにしたお店に目を惹かれる。 
しかし、そんなお子様のお店ではダメだと考えた私は、もう少し背伸びできるお店を選ぶ。 
アフタヌーンティーをゆったり堪能できると謳い文句の店に入り、遅めの昼食を二人で取った。 






6 :もーん ◆/Pbzx9FKd2 2013/07/29(月) 22:17:45.28 ID:oKQyQEO70



それから私達はまた手を繋いで、ウィンドウショッピングをしてプラネタリウムを観に行った。 
モールから繋がるトンネルを抜ける。青と白の幻想的な光と空間の演出。 
上映しているのは、基本的な星についてとその星座に纏わるモノだった。 

劇場に入り、傾斜型の座席に二人並んで座る。 
繋いでいた手が離れる。 
いつまでも握っていたかったから、座ってる時も握ろうとしたけれど。 
そんな免罪符は私には浮かばなかった。 

私達は天井いっぱいに広がる夜の星の下。 
互いに無言でナレーションに耳を貸す。 

チラリと隣を覗き見ると、彼女は悲しそうにある一点を見つめていた。 
私には、それがどこかは分からなかった。 
しかし、彼女のその顔が、私にはいつまでも忘れられなかった。 






7 :もーん ◆/Pbzx9FKd2 2013/07/29(月) 22:20:21.07 ID:oKQyQEO70



劇場を出ると、スタッフに呼び止められる。 
どうやら自分の誕生月の星座のポストカードが貰えるようだった。 
誕生日を告げると、うお座のポストカードを貰う。 

彼女はというと、別のスタッフに対応されていた。 
私はその時聞き逃さなかった。 
彼女の、誕生日を。 
8月の……。 

「どうだった? プラネタリウムも良かったと思うんだけど……」 

「えぇ、とっても良かったです。見に来る機会なんて無いですし、音楽も幻想的で星もキレイで。ありがとうございました」 

「あはは、そういってくれると嬉しいな。さぁ、そろそろ帰ろうか……遅くなっちゃう」 






8 :もーん ◆/Pbzx9FKd2 2013/07/29(月) 22:23:37.49 ID:oKQyQEO70



午後18時。 
電波塔の外を出ると、曇り空だった。 
私はどこで告白するかを頭の片方で考えながら、明日になるまで降らないでくれよと祈る。 
曇ってしまったが、前に一度連れていってくれた彼女が好きなあの山に登って、告白するんだ。 
それは、もう2週間も前から考えていた。 

最寄の駅まで帰り着いた私は、いつもどおり彼女を家まで送り届ける。 

「なぁ、まだ時間……あるか?」 

彼女は私の瞳をじっ見つめる。 
何かを察したんだろうか。 

「……はい、あります……」 

セミの声は、もう聞こえなかった。 






9 :もーん ◆/Pbzx9FKd2 2013/07/29(月) 22:26:41.01 ID:oKQyQEO70



それから私達は落ちる陽を頼りに、彼女の家の近くの山に入る。 
山といっても、頂上までは舗装された道があり、ソコには開けた公園がある。 
やはり残念なのは曇り空だったことだ。 

私はこの時、緊張のし過ぎで無言だった。 
彼女も、無言。 
互いの無言は、同じ行動でも、全く違う意味を持っていたように思えた。 

歩いて5分、山の頂上に着くと私達は公園の奥、街が見下ろせるところまで歩く。 
彼女は落下防止の手すりに掴まり、下の町を眺める。 
彼女はソレをどんな気持ちで見ているのだろうか。 
少しずつ電灯がついていく、私達の町。 
地上の星のように見えるだろうか。 






10 :もーん ◆/Pbzx9FKd2 2013/07/29(月) 22:28:47.60 ID:oKQyQEO70



「……サーニャちゃん。あの、さ……大事な話があるんだ」 

彼女は私の言葉でこちらを向く。 
風になびく、肩まで伸びた髪、そして制服のスカート。 
顔は、暗くてよく見えなかった。 

言ってしまった。 
もう、後には引けないから。 
緊張で心が震える。 
大事な瞬間なのに、気分も悪くなる。 
頭がクラクラして吐きそうだ。 
胸の奥がザワつく。 
手は震えていたから無理やり、ぐっと握り締めた。 

世の中のカップルは、こんな苦しい思いをしているのかと気付くと、恋って難しいんだな。 
と当たり前のことを、当たり前のように考えていなかった自分を恥じた。 







11 :もーん ◆/Pbzx9FKd2 2013/07/29(月) 22:31:46.44 ID:oKQyQEO70



「私は……一目見た時から、キミのこと……サーニャちゃんのことが好きだった」 

彼女は俯いている。 
返事は無い。 

私はこの日のために散々練習して、用意した言葉を忘れて、頭を真っ白にさせてしまっていた。 
だけど思い浮かんだ言葉を、素直にがむしゃらに彼女に紡ぐ。 

「喋るようになってから、もっと好きになった。そして今日も、昨日よりもっと好きになった。 
私はキミと、サーニャちゃんともっと一緒にいたい。 
だから、もし良かったら……そのっ! 私と、付き合ってくれないか」 

そうして左手を差し出す。 
今日初めて繋いだ、左手。 
それはただの下心だった。 
けれどこの左手は。 
それよりも、もっと大事な意味を孕んでいた。 






12 :もーん ◆/Pbzx9FKd2 2013/07/29(月) 22:33:47.39 ID:oKQyQEO70



無言。 
お互い、またしても無言。 
そして彼女は痛いくらいの静寂を破る。 

「嬉しいです。ありがとう、ございます。エイラさん……」 

そういう彼女は、ちっとも嬉しそうじゃなかった。 
その声と、雰囲気と。 
何より、俯き加減で話す悲しそうな顔に、私は……。 

―――私は。 
嫌な予感がした。 
いいや正確には。 

それは現実となった。 






13 :もーん ◆/Pbzx9FKd2 2013/07/29(月) 22:35:19.46 ID:oKQyQEO70



「貴女を音楽室の外で見つけた時。 
最初はただの嫌がらせだと思っていました。 
もうお気づきかと思いますが、私……クラスでも浮いているんです。 
いいえ、相手にされない、いるのかいないのか分からない、幽霊みたいな子だと。 
だから、またからかわれているんだと。 
そう思っていました。 

けれど違った。 
いつからか毎日聴きに来る貴女に、私は興味を持った。 
貴女は顔を見せはしないけど、いつも来てくれた。 
私の名前も顔も知らないのに。 






14 :もーん ◆/Pbzx9FKd2 2013/07/29(月) 22:37:29.00 ID:oKQyQEO70



そして私は気になった。 
どうして私のピアノを聴きに来てくれるのか。 
どんな人か知りたくなった。 
私のピアノを、ずっと聴いてくれる貴女を。 

だから声をかけた。それが、あの日です。 

それからの毎日はとても楽しかった。 

貴女とお話するのが、近くで聴いてくれているのが嬉しかった。 
誰かが隣にいてくれたことなんてなかったから、とても、とても。 






15 :もーん ◆/Pbzx9FKd2 2013/07/29(月) 22:38:55.07 ID:oKQyQEO70



でも。 
そんな楽しい思いをすると、私は怖くなった。 
いつか、私の元を去ってしまうんじゃないか、愛想を尽かしてしまうんじゃないかって。 

私は貴女みたいに上手く喋ることもできないし、友達もいない。 
運動が出来るワケでも、明るく振舞うこともできない。 
私、面白くないんです。何もできない、迷惑をかけてばかり。 

だから、貴女はいつか私を嫌いになってしまいます。 
だって、私といて楽しいという人は今までいなかったんですから。 

それが、いつも一人の証拠なんです。 






16 :もーん ◆/Pbzx9FKd2 2013/07/29(月) 22:42:01.73 ID:oKQyQEO70



このまま一緒にいて楽しく過ごしていても、いつかは別れが来る。 
それはとても寂しいんです。 
いつか終わりが来るというのなら、そんな関係、私はイヤ。 

ずっと一緒にいて。 
そして、いつかいなくなってしまうのであれば。 
いなくなって寂しくなる前に。 
私は、離れていきたい。 
そうすれば、あまり寂しくはありません。 

それはやっぱり寂しいですが、長く一緒にいて離れられてしまうのは、もっと辛いし、悲しい。 

それが私なんです。 

私は貴女のことをずっと悩んで考えて、そして今日、答えが出ました。 
貴女は私と一緒にいてはダメなんです。 
貴女のことが、もっと気になってしまったら、私はダメになる。 
貴女も、私がダメにしてしまう。 
だから、私に関わるのは、もう止めて欲しいんです……」 






17 :もーん ◆/Pbzx9FKd2 2013/07/29(月) 22:43:04.49 ID:oKQyQEO70



彼女の抱いていた現実は、私の理想とは、もう既にかけ離れていた。 
私は彼女の言葉に、何の反論も出来ず、ただ苦し紛れに話しかけることしかできなかった。 

「そんな……だって、そうしたらサーニャちゃんはまた……」 

「いいんです。私は一人でいるのが苦ではありませんから。 
今まで一人でいたんです。これからも一人でいい……。私は、私だけでいいんです」 

「ウソだ」 

「ウソじゃ、ありません」 

「私は見てたぞ。あの音楽室で寂しそうに一人でピアノを弾くキミを。 
寂しくないと言いながら、じゃあどうしてあんな悲しい顔をしていたんだ。 
寂しい以外に、何があるっていうんだ」 

「……っ!」 

彼女は答えない。 
悲しそうに目を伏せる、その顔を見つめる。 
たっぷり5分の時間を使うと彼女は顔をあげる。 
悲しそうな微笑を浮かべた顔を。 






18 :もーん ◆/Pbzx9FKd2 2013/07/29(月) 22:46:52.22 ID:oKQyQEO70




「……そうです。その通りです。 
人と一緒に。いいえ、貴女といるのが、こんなにも楽しいだなんて。 
知らなければ良かった。 

ごめんなさい、貴女とは付き合えません。 

もう私に構うのは止めてください。 
もう私を、ほうっておいてください。 

今日のプラネタリウム。とっても楽しかったです。 
ありがとうございました。一生、忘れません。……さようなら」 






19 :もーん ◆/Pbzx9FKd2 2013/07/29(月) 22:48:46.38 ID:oKQyQEO70



彼女はそこまで一気に捲くし立てると、一礼してから走り去っていった。 
私は、声をかけることができなかった。 
動くこともできず、ただ彼女の話を聞いてるだけの木偶の坊だった。 
彼女の本心を聞くことすらできなかった。 

うな垂れる。 
暗くて足元がよく見えない。 
瞬間、首筋に冷たいモノを感じてゾクリとする。 
彼女にフラれて、雨に降られて。 
乾いた笑いが口から漏れる。 

彼女の考えていた現実を。 
私の理想は何も気付いてやれなかった。 

「ごめん……」 

その言葉は、本格的に振り出した雨音に消されて、彼女には届かなかった。 






20 :もーん ◆/Pbzx9FKd2 2013/07/29(月) 22:51:13.53 ID:oKQyQEO70




◆ 

私は部屋についてから、声を押し殺して泣いた。 
だって。 
私は嬉しかったから。 
同時に、悲しくもなった。 

私が、もう少し貴女に近づけるような女の子なら。 
どんなによかったことか。 

どうして私は彼女の友達のように話せないのか。 
どうして私は彼女の友達のように笑えないのか。 
どうして、どうして、どうして。 

何度も自問を繰り返すけど、答えは見つからなかった。 

「助けて……」 

その言葉は、顔を埋めた枕に消されて、彼女には届かなかった。 






21 :もーん ◆/Pbzx9FKd2 2013/07/29(月) 22:52:00.09 ID:oKQyQEO70






テテテテンッ デデデンッ!           つづく 








22 :もーん ◆/Pbzx9FKd2 2013/07/29(月) 22:52:45.31 ID:oKQyQEO70



オワリナンダナ 
読んでくれた人ありがとう。 

前回、次回はエイリーヌですと言いましたが、百合は嘘つき。 
次回は今度こそエイリーヌ、リクエスト頂いた智ビューです。 
少し地の文続きになりますが、お付き合いください。 

某まとめサイト様、並びに各所でコメントくださる方、いつもありがとうございます。 
それでは、また。 

ストパン3期アルマデ戦線ヲ維持シツツ別命アルマデ書キ続ケルンダナ 










他のおすすめSS