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1: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/05/23(水) 00:02:04 ID:EnCt.Pvs

男『どうしたんだよ、こんな朝っぱらから』

女「朝焼けを見てたら、なんだか君に電話をしたくなって」

男『…どこから朝焼け見てるんだ?』

女「マンションの屋上だけど」



2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/05/23(水) 00:05:38 ID:EnCt.Pvs

男『…なんでマンションの屋上なんかにいるんだよ』

女「もう決めたから」

男『オッケー、今から階段を使ってマンションから降りろ。いいな?』

女「嫌だ」

男『……』

女「前にも言わなかったっけ。私は未来のビジョンが描けないの」



3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/05/23(水) 00:10:25 ID:EnCt.Pvs

男『ああ』

女「先が描けない毎日を生きることは意外と辛いよ」

男『駄目なのかよ、未来が見えないと』

女「駄目なんだよ、未来が見えないと」

男『どうして』

女「君は目隠しで道を歩ける?」

男『……』



4: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/05/23(水) 00:12:43 ID:EnCt.Pvs

女「見えないならいっそやめてしまえばいい」

女「だからかれこれ十年は自殺を繰り返したわけだけど」

男『未遂だったがな』

女「そうだね。だったら今ここにいないよ」

男『なぁ。十年も自殺未遂しといて死なないのは、お前がまだ生きるべき人間だからだよ』

女「……」




5: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/05/23(水) 00:14:20 ID:EnCt.Pvs

男『お前がいなくなったら仕事場はどうするんだ』

女「新人の子が一通りできるようになったから大丈夫」

男『親は』

女「…むしろ万々歳だろうね」

男『じゃあ――俺は?』



6: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/05/23(水) 00:17:25 ID:EnCt.Pvs

女「あは、俺は?っていっちょまえに言っちゃって」

男『うるせぇ』

女「私たち、付き合ったことすらなかったじゃん」

男『…なかったが』

女「正直君を残すのは偲びないよ」

女「でも、これは私のエゴ。君は巻き込めない」



7: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/05/23(水) 00:23:00 ID:EnCt.Pvs

男『…アホか』

女「うん」

男『それに、お前がいなくなったら何人泣かせるか分かってんか』

女「百人泣いたところで地球は止まらないよ」

男『またそうやって論点を曲げる』

女「私一人がいなくなっても、世界は変わらない」

男『俺の世界は変わる』

女「チープな口説き文句」

男『自覚はしている』



8: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/05/23(水) 00:27:09 ID:EnCt.Pvs

女「まあ、やっと目的が達成されると考えると何もかも綺麗だね」

女「どうして今までこの方法を選ばなかったか不思議だけど」

男『……きれいに死にたいから、じゃなかったか?』

女「ああ、そうだね。思い出した。きれいに棺桶入れるよう」

女「だから内から死んでいこうとして薬飲みまくったりしたんだった」

男『老衰はもっときれいに死ねるぜ』

女「おばあちゃんになるまで持つかなぁ。身体ボロボロなんだよね」



9: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/05/23(水) 00:30:43 ID:EnCt.Pvs

男『薬でいたんだのか』

女「動いてるのが不思議なレベルだって」

男『……』

男『なあ。今日どこか遊びに行こう、話聞いてやるよ』

女「昔から言ってるじゃん。悩みはないって」

男『未来が見えないことは悩みなんかじゃないのか』

女「悩みだろうね。でも、もう駄目なの」

女「それが膨らみすぎて私は正気を保つだけでも精一杯だから」



10: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/05/23(水) 00:32:22 ID:EnCt.Pvs

男『……』

女「ごめんね、せっかく誘ってくれたのに」

男『揺るがないのか』

女「揺るがないね」

男『どうすれば留まってくれるんだよ』

女「……ごめんね」



11: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/05/23(水) 00:35:14 ID:EnCt.Pvs

女「それと、ありがとう」

女「嬉しいよ、こんなに心配してくれて。説得してくれて」

男『行くなよ』

女「あの世があれば、そこで待ってるからね」

男『……』

女「幸せになってね。――私のせいで不幸にならないことを祈るよ」

男『だったら』

女「さて、本格的に朝が来る」



12: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/05/23(水) 00:38:55 ID:EnCt.Pvs

女「人が多くなる前に済ませないと」

男『急ぐなよ』

女「むしろ、私は死ぬまでがゆっくり過ぎたの」

男『馬鹿』

女「うん…ねぇ、  。好きだよ」

男『……俺もだよ、  』

女「初めて君に告白した」

男『しかも両思いとかな』



13: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/05/23(水) 00:42:09 ID:EnCt.Pvs

女「まあ、君はこれから幸せな家族を築いてよ」

男『俺はお前と築きたかった』

女「やだ、照れるじゃない。…でも、無理だよ」

男『……』

女「――じゃあ、今までありがとう」

女「私は君に会えて楽しかった」

男『それは、こちらこそ、だ』

女「うん」



14: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/05/23(水) 00:46:13 ID:EnCt.Pvs

女「もし次会えるなら、私は、まともな思考を持ってうまれたいかな――」

呟きながら彼女はフェンスを乗り越える。

屋上のドアの鍵は壊してしまった。一体誰が怒られてしまうのだろう。


女「さよなら」

男『……さよなら』


電話の向こうの悲しげな別れに彼女は微笑を浮かべる。



15: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/05/23(水) 00:47:58 ID:EnCt.Pvs



女「それじゃ、いってきます」


携帯を片手に、彼女は飛び降りた。



16: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/05/23(水) 00:52:27 ID:EnCt.Pvs

――

携帯が壊れる音と、何かが潰れる音がした直後に通話が切れた。

うっかり切り忘れたのか、意図的かはついに分からない。

男「……馬鹿が」

よりによって、彼が出張中に。
止められないと分かっていたのだ、彼女は。

男「少なくとも、俺の世界はまわんねぇよ…」

懺悔のように顔を覆う彼のいる部屋へ、朝日がゆっくり差しこみはじめた。



17: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/05/23(水) 00:53:37 ID:EnCt.Pvs

おわり。
なにもかも無茶苦茶だ



21: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/05/23(水) 07:25:31 ID:IKOB.ZIs


もうちょっと本格的に女の悩みを描くべきだったな






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