2015年09月15日

2015年09月15日

『映画の荒野を走れ──プロデューサー始末半世紀』 /伊地智啓


            映画の荒野を走れ──プロデューサー始末半世紀

     

 80年代のキティ・フィルム作品を支えたプロデューサー・伊地智啓が語る貴重なインタビュー!

 太陽を盗んだ男』『翔んだカップル』『セーラー服と機関銃』『あぶない刑事』…など1980年代に数々のヒット作・話題作を手掛けてきたプロデューサー・伊地智啓!

 かつて上記の作品観をていたものの失礼ながら伊地智氏の事は存じておらず、今回本書を手にして改めて伊地智氏の業績に触れることができました。

 日活ロマンポルノ時代では本書のタイトルの元にもなっている濡れた荒野を走れ〈1973〉の挿話(70頁)は興味深く、脚本が長谷川和彦『太陽を盗んだ男』が執筆している事なのでも知られている本作なので拝見した事があるのですが、ロマンポルノという括りではあるもののピカレスクロマンあふれるアクション映画に仕上がっているのにビックリしました。なにより主役である地井武男さんの悪徳刑事も素晴らしく、『ダーティーハリー』を下敷きにして作った事を初めて知りました。

 日本映画史に残る怪作にして大傑作である『太陽を盗んだ男』〈1979〉
 この作品に関して伊地知氏はそうとうシンドイ思いをしたようでフィルムの量自体、当時の映画2、3本が作れる分量であったとか、クランクインができる状態ではなく、企画自体が消滅していたかもしれない状況だったとか、どの現場の段階においても「スムーズ」という言葉があてはまらないとか、苦労々々の連続で完成して公開しても赤字だったなどほとんどいい思い出のない挿話で語られているのが印象的ででもそうした作品が現在では絶大なる評価されているのだから面白いものである。名作が生まれる背景というのは得てしてそういうものが多いそうだ(園子温監督のけもの道を笑って歩けにも名作の背景には難産が多い事に触れていたのを思い出しました)。

 キティフィルムを象徴する作品として
相米慎二監督×薬師丸ひろ子主演2部作『翔んだカップル』『セーラー服と機関銃』!
 翔んだカップル1980〉は当時のラブコメを象徴する大ヒット漫画(原作は『特命係長只野仁』の柳沢きみお)で前作『野性の証明』で衝撃的デビューを果たした薬師丸ひろ子当時『3年B組金八先生』の生徒役で注目を浴びた鶴見唇吾による人気ラブコメ漫画原作だったがあまり印象に残っておらず、セーラー服と機関銃1981〉も同様に薬師丸人気を最高潮に押し上げた大ヒット作品で「カ・イ・カ・ン」の名場面などとかラストのマリリン・モンローばりに薬師丸のスカートが風圧でまくりあがるシーンとか覚えているけれども意外とストーリー自体は覚えてないのだ。
 『セーラー服と機関銃』は『太陽』と同じスタッフで作られたそうだが、『太陽』の時よりも『セーラー服』の方が撮影がスムーズに進んだ挿話が印象的でした(監督の資質の差なのでしょうか?)。

 それ以降、相米慎二監督との作品が多く、その次のションベン・ライダー〈1983〉では藤竜也の役を当初は松田優作にあて書きされて進めていた挿話や予算が一億オーバーしたが同時上映がうる星やつら オンリーユー〈監督:押井守〉であったために赤字が目立つことはなかった挿話……当時はプログラムピクチャー(二本立て)が主流で実写とアニメの2本立てという観客にとっては食いあわせのよくないブッキングがまかり通っていた。その昔、地方では『ルパン三世 カリオストロの城』『戦国自衛隊』の2本立てで上映していたのだから……など『ションベン』自体タイトルは知っていても作品は観たことがないのでなんともいえないが、近年、主演であった坂上忍さんが相米監督に「せりふを噛んでもこちらが声(カット)をかけるまで芝居を続けろ」と指導された事が今でも自身の役者の心得として残っているそうだ。
 
 めぞん一刻〈1986〉についても語られており、作品自体はよくても原作ファンからは激怒されたという点では私も同意するものだ。石原真理子さんの音無響子と石黒賢(本作がデビュー作)の五代くんからしてあんまりはまってなかったし、そもそも原作の面白さが全く活かされておらず、すごい退屈な映画だった印象がある(しかも同時上映が松田優作監督・主演の問題作『ア・ホーマンスだから見た観客もきつかったのは想像に難くない)。
 
 他にも『あぶない刑事』にも関わっているハズなのだが、あまり語られておらず、終始、相米作品との付き合いや思い出が多く語られているのが特徴である。

 あと村上龍原作『半島を出よについても語られており、発売当時は話題になって読んで面白かったので映画にすればいいのになあと思いつつ、題材が題材だけに(北朝鮮を扱った映画なので)ムリだと思っていたが、映画化の話が動いていた事にビックリしました。
 亡国のイージス』『ミッドナイトイーグルをみてもわかるように企画としては面白くても今の日本映画(の取り巻く環境と製作レベルでは)では確かに正直手にあまる題材だと思うので韓国の映画界で作った方がまちがいなく物量や質的にもクオリティの高い納得のいく作品ができると思うので伊地智さんや日本側スタッフが韓国に交渉して現地で作った方が絶対にイイと思います
 おそらく他にも企画としては挙がってもなかなか映像化に踏みきる事ができない原作(『原発ホワイトアウト』とか)というのは多くあるのだろうなと思います。

 個人的にはいささか物足りない部分(『あぶない刑事』の挿話など)があるものの一時代を築いたキティフィルムの舞台裏を知るうえでは貴重な挿話が満載で面白かった。こうした話は記録としても希少価値の高いものなので残してほしいものだ。

 追伸:残念ながら伊地智さんは第一線を退かれたようだが、長谷川和彦監督にはなんとか次回作を撮っていただきたいものだ。 


   
『雪の断章−情熱−』トークイベント/伊地智 啓、小川 富美夫 【2015・11・24】

   
  『セーラー服と機関銃』予告篇〈1981〉

      
   『太陽を盗んだ男』予告篇〈1979〉



dr_frankee at 10:38コメント(0)トラックバック(0)『くりえいたあ』(映像&アニメ)の本 
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