2006年10月01日

しめじ的文体練習11

 






  続いていきますよ。


 どんどん文体練習をやっていきます!!


 


 1.メモ


 五限目が終わり、東西線のホームは学生でひしめいている。三鷹行きの電車に無理矢理乗り込む。目の前に真っ黒なギターケースを抱えた色の白い男。眼鏡をかけていて、縁は青。レンズは汚れていた。


 電車が揺れる。男は隣の乗客を睨んでいる。「楽器を蹴るな」と小さく呟くが、男の耳には聞こえていない。それもそのはず、男はイヤホンを差し込んでいる。やがて駅に到着し、男は降りる。


 三時間後。高田馬場を歩いていると、先ほどの楽器の男が酔いつぶれてしゃがんでいる。隣には腕の長い男。「ジンは飲むなと言っただろ。今度からは、カルーアにしろ」と言って長い腕で背中をさすりながら酒の飲み方を説明している。




 これを18「でもなく」でやっていきます!!


18. でもなく

 それは、ヘリでもなく、潜水艦でもなく、線路を走る地下鉄だった。朝でもなく、昼でもなく、夕方のこと。そこにいたのは、鳥でもなく、ミミズでもなく、若者であり、マシンガンでもなく、ガムランでもなく、ギターケースであった。優しいわけでもなく、ひょうきんなわけでもなく、いらだっている。その隣にはウジ虫でもなく、ハイエナでもなく、中年男が、イワナでもなく、アイスピックでもなく、イヤホンを耳にさしていた。愛でもなく、恋でもなく、文句だ。それは真実でもなく、嘘でもなく、口実だった。逃げるでもなく、戦うわけでもなく、電車を降りた。
 明日でもなく、昨日でもなく、その三時間後、東京駅でもなく、飛騨高山駅でもなく、高田馬場のロータリーで、恋人でもなく、他人でもなく、友人が述べていたのは、賛辞でもなく、侮蔑の言葉でもなく、酒に関するアドバイスだった。


 それではまた。

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