2006年10月21日

しめじ的文体練習16

 






 さてさて


 どんどん文体練習をやっていきます!!


 


 1.メモ


 五限目が終わり、東西線のホームは学生でひしめいている。三鷹行きの電車に無理矢理乗り込む。目の前に真っ黒なギターケースを抱えた色の白い男。眼鏡をかけていて、縁は青。レンズは汚れていた。


 電車が揺れる。男は隣の乗客を睨んでいる。「楽器を蹴るな」と小さく呟くが、男の耳には聞こえていない。それもそのはず、男はイヤホンを差し込んでいる。やがて駅に到着し、男は降りる。


 三時間後。高田馬場を歩いていると、先ほどの楽器の男が酔いつぶれてしゃがんでいる。隣には腕の長い男。「ジンは飲むなと言っただろ。今度からは、カルーアにしろ」と言って長い腕で背中をさすりながら酒の飲み方を説明している。




 これを23「あらたまった手紙」でやっていきます!!

23. あらたまった手紙

 謹啓
 時下益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。
 さて、この度ぶしつけながらお手紙を差し上げましたのは、この私が、かくも恐ろしい事件に遭遇いたしましたので、公正なる目撃者として、以下の通り謹んでご報告申し上げるためでございます。
 事件当日午後六時頃、早稲田駅から東西線に乗り込む最中でした。早稲田という町は、東京でも有数の学生街、授業の終わった学生たちが同じ電車に乗り合わせて参りました。当該電車は既に定員超過の体を表して降りましたが、学生たちの乗車マナーの悪さ、そして当該駅員が寛容と無謀をはき違え、行き過ぎた温情主義に端を発した職務規則の侵犯の結果、まさにすし詰め状態になりながら電車は発車したのでございます。もちろん乗客間での接触や衝突が起こるのは想像に難くないと存じます。その混乱はひとりの青年の怒気をはらんだつぶやき声によって一気に昇華されたのです。青年は隣に立っていた紳士に向かって、眼光煌びやかに抗議の視線を送っておりました。ただ、いかんせん弱々しさを指摘せざるを得ない、青年の抗議は、ついに紳士の耳に届くことなく、電車を降車してしまったと添え申し上げておくべきかと存じます。
 さらに補足いたしますれば、この問題の青年が身元不詳の一人物と同伴している姿を、約三時間の時間を経た後に再び目撃したのであります。青年は道路の上にいみじくも寝ころんでいて、体からはアルコール臭を周囲に発散しておりました。目も当てられない体をさらしている彼に対して、彼の同伴者はしきりに、アルコールの正しい摂取方法について解説を交えて説明を行っていたように推察いたします限りであります。
 つきましては、ご多用中まことに恐縮ではございますが、以上の状況を鑑みてこれらの事実をいかように判断すべきか、また今後の私の人生に於いていかなる行動を取り、いかなる態度を示すべきか、先生のご教示を賜りたく、お願い申し上げている次第でございます。
 はなはだ、手前勝手なお願いとは重々に存じ上げておりますが、何卒宜しくご検討のうえ、ご返事をいただけますよう、謹んでお願い申し上げます。

 恐惶頓首

それではまた。

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