2018年05月19日

セーブル 大型ベース  アートグレーズ 芸術釉の装飾

今回のブログは、セーブルの「アートグレーズ」の大型ベースを
紹介します。


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セーブル ベース「アートグレーズの装飾」H約35cm 1882年

19世紀の後半は、万国博覧会の時代でした。磁器は当時の
最先端技術で作られる工芸品でしたが、ヨーロッパの各窯が
驚いたのは、遠く東洋から展示された陶磁器でした。これらは
それまでのヨーロッパの磁器芸術にはない概念の作品でした。

ヨーロッパの磁器窯では、精密な絵付けや文様が磁器装飾
の最高峰であったのに対し、日本をはじめとする東洋の陶磁
器は、炎の中の釉薬が偶然に作り出す装飾に美を見出して
いたのです。こうした技法は「窯変」と呼ばれ、東洋では広く
親しまれていました。

このような東洋の美的価値観にいち早く反応した窯が、フランス
のセーブルです。セーブルは自身でもこうした装飾を作るべく、
研究を始めます。その結果完成されたのが、「オクセンブルート
=牛血紅」「カラックルグレーズ=貫入釉」「クリスタルグレーズ
=結晶釉」などの釉薬で、これらを総称して「芸術釉=アートグ
レーズ」と呼んでいます。



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写真2) 同上 クローズアップ

写真2)をご覧ください。セーブルがどのような技術を駆使して
この装飾を完成したのか、もはやよく分かりませんが、少なく
とも2種類の釉薬を使って、まるで大理石のような文様を作って
います。マイセンでは、筆を使って大理石のように描く技法が
知られていますが、セーブルのこの装飾は筆では絶対に描け
ない、正に炎の作り出した芸術です。


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写真3) 同上

セーブルらしいのは、この首の正確で均整のとれた美しさです。
東洋の陶磁器にありがちな形状の甘さ(これがまた東洋の魅力
なのですが・・)は皆無です。


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写真4) 同上

底部と首には金彩が施されていますが、これもセーブルらしい
です。東洋の感覚では、こうした窯変の器に金彩は使わないで
しょう。セーブルの金彩はつやかあり、まるで金属のような質感
を感じます。ボディーの釉薬は底の金彩を鏡のように映していま
す。


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写真5) 同上

そして、セーブルの一番すごいところは、この「アートグレーズ」を
磁器で作ってしまう事なのです。東洋の窯変は、そのほとんどが
焼成温度の低い陶器での製作であり、磁器の製品はあまりありま
せんでした。しかし、セーブルはこの問題を巧みに克服し、様々な
芸術釉を完成します。こうした技術を持つ窯は、当時のヨーロッパ
では、セーブルの他に、マイセン、コペンハーゲン、KPMベルリン
など極限られた窯だけでした。



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写真6) 同上 マーク

マークから、本作は白磁の製作年が1881年、アートグレーズの
装飾を施し最終的に作品として仕上がったのが、1882年と分か
ります。セーブルでは、アールヌーボー時代の初め、歴史主義や
ジャポニズムなどの様式が混在していた時代です。この後、1900
年頃を中心に、セーブルのアールヌーボー芸術が花咲くのはもう
少し後のことです。


是非、当店にて実物をご覧ください。




アンティーク西洋陶磁器専門店 
        アンティーク アーカイヴ  東京 二子玉川
            TEL-03-5717-3108
      ホームページはこちらです  
http://archiv.jp/



dresdner220 at 18:07|PermalinkComments(0) セーブル | 作品紹介

2018年05月15日

マイセン プレート  自然主義様式の花絵付け           ナスタチウムとアスター

今回は、自然主義様式の花絵のプレートが新入荷しましたので、
これを紹介しようと思います。

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写真1) マイセン プレート「自然主義様式の花」 1890年頃

まるで水彩画のように柔らかく描かれた「自然主義様式の花絵」
です。19世紀末は、マイセンの花絵付け師ブラウンズドルフ教授
が、マイセン付属素描学校ので教えていた時代で、彼の絵付け
技術や様式を製品に強く反映させていました。

マイセンの愛好家や研究家の間では、最も素晴らしい花絵付け
の時代と評されている期間で、出来のいい作品はアンティーク
市場でも大変に高価で取引されています。


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写真2) 同上 クローズアップ

白い紙の上に、摘んできた花をポンと置いて描いたような自然な
表現が「自然主義様式の花」です。現在でもマイセン花絵付けの重要
なカテゴリーであり、とても格式の高い絵付けです。

本作はナスタチウム(キンレンカ)とアスター(エゾギク)がモチーフに
なっています。


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写真3) ナスタチウムの絵付け

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写真4) ナスタチウムの花と葉

写真3)4)でお分かりの通り、植物学的にも正確な表現で
描かれています。花芯や丸い葉の形状など、柔らかいタッチ
でありながら、絵付け師はきちんとこれを捉えています。


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写真5) アスターの絵付け


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写真6) アスターの花

アスターの花絵付けは、本作のハイライトでしょう。微妙な彩色で影
をつけながら、見事な立体感を描いています。こうした表現が植物
の生命を感じさせるのでしょう。
自然主義様式の花絵は、筆数を極力抑えて、最小限のタッチしか
使っていません。この時代ならではの、最高の表現と考えています。


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写真7) 同作品  窓絵の表現

紺の地色にカールトゥーシェ(ロココ風の渦巻き文様)の窓、中心に
自然主義様式の花絵をあしらった表現を「アムステルダム様式」と
呼びますが、これはマイセンの花絵の中でも最高の花(FFブルーメ)
というカテゴリーに入ります。
現在でも作られており、とても高価な値段がつけられていますが、
こと花絵に関しては、19世紀後半の作品には遠く及びません。



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写真8) 同作品 裏面の剣マーク

最後にマークをお目にかけます。マークや絵付けから、19世紀末に
作られた作品に間違いないと推察しています。

どうぞ、当店にて実際にご覧ください。


アンティーク西洋陶磁器専門店 
        アンティーク アーカイヴ  東京 二子玉川
            TEL-03-5717-3108
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dresdner220 at 17:29|PermalinkComments(0) 自然主義様式の花絵 | 花とマイセン

2018年04月26日

東京プリンスホテル 「ザ・美術骨董ショー」のお知らせ

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写真1) ザ・美術骨董ショー 出品作品


今年も、東京プリンスホテルにて「ザ・美術骨董ショー」が開催されます。

5月1日(火)~5日(土) 東京プリンスホテル 芝 入場無料



是非、皆様お誘い合わせの上ご来場下さい。今回もたくさんの価値ある
作品を持っていきますので、一部紹介致します。


写真1)上左より
                            

01) セーブルC&S「フラワーボーダー」
天使のハンドル  
1830年頃

02) マイセンC&S「中国人の絵」
紫の地色 
1880年頃

03) R.コペンハーゲン テテアテテ
「サマーナイトドリーム」
1985年頃

04) マイセン フィギュア
「バレエのダンサー」
P.ショイリヒ作品 
 
1919年頃  H28cm

05) マイセン フィギュア
「ホラ吹き男爵」
A.シュトルク作品 限定品 
1985年 H28cm

06) セーブル プレート
「ピレネー山脈の風景」
単色画 アンバー地 
1980年 径 25cm

07) R.コペンハーゲン フィギュア 
「妖精とパン」
G.ヘニング作品 
1960年 H28cm

08) マイセン 日本茶セット
「梅に鶉 柿右衛門写し」
2002年限定品

09) セーブル 蓋物
パテ・シュール・パテ「アール・デコの人物絵」
1930年頃 径9cm

10) KPMベルリン 蓋付ベース
「アール・デコの植物文」
1925年  H 27cm

11) セーブル デミタスC&S
「アール・デコの花文様」
ボンフィルスのデザイン
1930年頃

12) ヘレンド 6人用セット
「ペルシアンミニアチュアー」
 箱付き
1978年頃

13) マイセン フィギュア 
「イタリア喜劇 コロンビーヌ」
 
1900年頃  H15cm

14) マイセン ミニベース
「クリスタルグレーズ」
ユーゲント
1900年頃  H10cm

15) セーブル プレート 
「アヴェール港の風景」
アガサブルー 
1983年頃 径25cm

16) セーブル C&S 
「葡萄の葉のボーダー」
 アンバー地 
1830年頃

17) マイセン C&S 
「自然主義様式の花絵」
ノイマルセイユレリーフ 
1890年頃

18) R・コペンハーゲン 
フィギュア「フェアリーテイル」
1960年頃 H23cm

19) セーブル フィギュア「鶏」 
沼田一雅作品 
1930年頃  H 12cm

20) セーブル ベース「
アール・デコ ブルーの植物文」
 
1925年頃 H21cm

21) マイセン プレート「天使の絵」
ホワイトエナメルの絵付け 
1870年頃 径
25cm

 

*売り切れの際はご容赦下さい
*年代サイズはおおよそのものです 
*コンディションはお問い合わせ下さい

*写真の色合いや細部は、現状を優先致します
 必ず実物をご確認下さい


 

どうぞ会場にて実際にお手にとってご覧下さい。
会場にて色々とお話できるのを楽しみにしております。



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2018年04月20日

ヘレンド デミタスC&S 「オサリバン」  シノワズリー 

今回は、ヘレンドのデミタスカップ&ソーサーを紹介します。

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写真1) ヘレンド デミタスC&S 「オサリバン」 1980年頃

ヘレンドの中では、所謂「シノワズリー」のカテゴリーに属する
作品です。装飾の名称は「オサリバン O'Sullivan」、ヘレンド
の略称はOsです。「オサリバン」はアイルランド系の人名でO’は
「誰々の孫」という系譜を示す接頭語です。何故この装飾に「オ
サリバン」の名称が付けられたのか不明ですが、恐らくこの装飾
をヘレンドに注文した顧客に関係があると思われます。



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写真2) 同上 カップのハンドル

ハンドルには中国の唐子がデザインされています。高台は透
かし彫りになっており、器型だけでもとても手がかかっているの
が分かります。


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写真3) 同上 ソーサー

青地に朱の亀甲文と中国故事を描いた絵付けが、この作品の
特徴です。「オサリバン」はヘレンドの最上位の装飾なので、細部
に至るまで全て手描きです。ヘレンドの普及品には一部銅版転写
の助けを借りた装飾もありますが、本作はカップの中に至るまで
フリーハンドで細かく手描きされています。



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写真4) ヘレンド 公式カタログより

人物はテーブルを囲み、王らしき人物が手を高く上げて席を立とう
としてします。それを押しとどめる黄色の服の人物や鳥籠を掲げる
人物、それらが景徳鎮の粉彩風に描かれています。



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写真5) ヘレンド展 図録より

こうしたヘレンドのシノワズリー絵付けは、好き嫌いがあり、まるで
稚拙な漫画のようだと揶揄されることもありますが、実はこうした
絵付けは伝統ある装飾様式なのです。写真5)は1860年に作られた
「オサリバン」ですが、伝統に従って現在でも忠実に再現されている
事に驚かされます。



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写真6) ヘレンド デミタスC&S 「オサリバン」 1980年頃

デミタスのサイズですので、カップの直径が6.7cmと小さいもの
ですが、装飾がぎゅっと凝縮されており、繊細な美しさを引き立
てています。

ヘレンドは、その成り立ちから、マイセン、セーブル、ウィーン
などの各様式を何でも作れる窯ですが、このシノワズリーシリー
ズは、他の窯にはないヘレンド独自のものであり、ヘレンド窯の
大きな特徴です。ヨーロッパの東に位地し、東洋の血統も引くハ
ンガリー民族独自のやきものという事なのでしょう。

最後にマークをお見せします。


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写真7) ソーサーのマーク

現在の代理店正価では30万円を越えるような高い価格が付けら
れているようです。

どうぞ、当店にて実際に手にとってご覧ください。



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2018年04月09日

セーブル プレート 「ル・アーヴル港の風景」

今回のブログは、セーブルのプレートを紹介します。

現在「セーヴル、創造の300年」展が巡回中ですが、4月7日から
は大阪市立東洋陶磁美術館で開催されています。東京での開催
は終了しましたが、現在セーブル陶磁器への関心は強く、たくさん
のお問い合わせを頂きます。

今回紹介する作品は、1983年に作られたものですが、オリジナル
は19世紀前半に製作されました。



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写真1) セーブル「ル・アーブル港の風景」 1983年

アガサブルーの地色に金彩の装飾はセーブルお家芸ですが、風
景が描かれているものは珍しいですね。個人的に風景の絵付けが
大好きなので、すぐに購入を決めました。


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写真2) 同作 裏面

本作の裏面から、フランスのル・アーヴルの港である事が分かり
ます。セーブルの作品は、制作年代や作品のモチーフなど、色々
な情報が付随されている事が多いです。表題の下に描かれている
Bのような文字は、絵付け師のイニシャルです。

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写真3) 同作 絵付けのクローズアップ

陶磁器絵付けのモチーフでは、元になる原画や銅版画が存在する
事が多いのですが、本作にはイギリス人芸術家による絵画がそれ
にあたります。


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写真4) 絵画 T.フィールディングによる 1825年頃

この絵画の作者はT.フィーディング、1793年生まれの画家です。
弟とともに王立協会の出品者であり、王立軍事アカデミーで絵を
描く教師でした。
風景画と得意とし1820年前後に活躍しましたが1837年に44歳で亡くなっています。
写真3)は「ル・アーヴル港」を描いた作品ですが、セーブルの絵付け
の原画になっている事は明らかです。


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写真5) 原画と磁器絵付けの比較

写真4)はフィールディングの原価とセーブルの磁器絵付けを比較
したものです。セーブルの絵付けが原画に忠実で描かれている事
がお分かりと思います。お皿の円形の窓の中に、原画を切り取って
上手く収めています。原画の右に位地する釣り人が、絵付けでは
中央に配されているのが面白いですね。


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写真6)現在のル・アーヴル港


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写真7) ル・アーヴルの地図

現在では大きく姿が変わってしまったル・アーヴル港ですが、セーヌ
川河口のこの町は、工業都市であると同時にリゾートでもあるそう
です。

多くの芸術家がこの港に魅せられ、作品のモチーフに選んでいます。
あのモネの「印象 日の出」もこの港を描いたものです。この作品は
あまりにも有名なので、モネの別の作品を紹介します。

モネ ルアーブル港







写真8) モネ 「ル・アーヴル港」 1874年


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写真9) セーブル プレート 裏面のマーク

最後にプレートのマークをお見せします。
マークから,白磁が出来上がったのが1983年,最終的に装飾
され、作品として完成されたのが1984年と分かります。

是非、店頭にてご覧ください。



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