2011年06月

2011年06月30日

マイセンの花のカテゴリー その2  マイセン花絵付けのチャート

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写真1)マイセン 「バラの花一輪」の絵付け  19世紀


今回はマイセンの花のカテゴリーチャートをご紹介します。

きちんとしたマイセンの花の分類は、今まで日本ではなされた
ことがなかったと思います。文献的な知識だけでなく、やはり
たくさんの実例を見ていなくては把握できません。
例えば、下のチャートにある「b ドイツの花」を、正確に説明
出来る人はいないのではないでしょうか。私も最初は解説を
読んでも何が何だか分かりませんでした。「ドイツの花」って
マイセン様式の花の事を全て指すのではないの、と思ってい
ました。
因みに、東独時代のマイセンの説明は以下のようなものです。

 ―ドイツ花―       マイセン「ヨーロッパにフローラ」による
・描写を手本とする
・ヨーロッパのフローラである
・マイセンにおいて1745年以来発展する
・手本での陰影を表す影となる部分は、陶磁器に移し変えられる
 際に省略されている
・「乾燥した花」の場合と違って、花の形が一つ一つ異なっている
 花は大抵花束になっている
・混合され、つやを消した絵の具が用いられる
・手本の精緻な線は、絵付けにもとり入れられている

以上です。具体的にどんな花絵か把握できた人はいますか?
東独時代のマイセンの説明は始終こんな具合で、非常に難しいです。

そこで、私なりの解釈を含めて、マイセンの花絵を以下のように
分類しました。基本的にはマイセンの分類を踏襲しています。しかし
4)のビーダーマイヤー様式と言う項は、私の新設です。冊子では
「バラの花一輪」と「ブドウの葉」を二つのカテゴリーとして扱ってい
ます。また、9)のハインツ・ヴェルナーの花は、冊子では「新しい
花絵」や「ブルーオーキッド」などを独立したカテゴリーとして扱って
いますが、これらはひとつに分類し、今回はこれについては触れない
事とします。尚、日本語への訳は他にもっと適切なものがあるかも
しれませんが、愛好家の間で使い慣れている訳にしました。



マイセンの花絵付け -ヨーロッパのフローラ-

1)版画を手本とする花

    a  乾燥した花  

           b ドイツの花

    c  FFブルーメ(最高の花)
2〉様式化された花

     多くのバリエーション
3〉マルコリーニの花
4〉ビーダーマイヤー様式の花

    a  バラの花一輪

    b  ブドウの葉

    c  散らし小花
5〉自然主義様式の花
6〉印象主義様式の花
7
E.P.ベルナーの花
8〉野に咲く花
9〉ハインツ・ヴェルナーの花

    多くのバリエーション

それでは、次回から写真で例をあげながら、各々の花絵に
ついて解説していこうと思います。



余談ですが、私のHPやブログでの解説 を、そのまま他の方が
使用している例があります。あるオークションの解説に、言い回し
までそっくりコピペされているのにはあきれてしまいました。ネット
に発表する以上仕方ない事とは思いますが、せめて一言断る
とか出典を明らかにするなどの配慮が欲しいものです。


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dresdner220 at 18:27|PermalinkComments(3)TrackBack(0) マイセン花絵付けについての考察 

2011年06月26日

マイセンの花のカテゴリー その1                   マイセン花絵付けの考察 前書き

前回のコメントで、マイセンの花絵付けについて説明をして
欲しいというリクエストを頂きました。また磁器絵付けをされて
いるお客様からも、分かり易い解説が欲しいという事を望まれ
ております。

日本ではマイセンの膨大な花絵付けについて、これまで
ほとんどきちんとした形で説明されてきませんでした。ドイツ
の専門書から引用する形での論文などはありましたが、それ
も一部分であり、愛好家の好奇心を満たすものではありません
でした。また、ネットの中で説明されている記事や解説もあり
ますが、これらも説明不足や、中には不正確なものも見られ、
むしろマイセンに対する理解を妨げていると感じます。
このブログでマイセンの花絵を簡単に分類しようとするのは
無謀な試みですが、できるだけ簡単に分かり易い形で論じて
みようと思います。

当初は、マイセンの花絵の成立を年代順に紹介してゆくつもり
でした。しかし、これでは大雑把であり、カテゴリーを分類解説
するという目標とはちょっとずれてしまいます。そこで、今回は
マイセンの公式な分類を採用する事にします。
マイセンが花絵についての研究分類を始めたのは20世紀初頭
プァイファー時代頃からと言われます。当時マイセンの責任者
であったマックス・アドルフ・プァイファーは自社の製品の分類
整理に着手し、製品カタログをつくって販売促進しようとします。
これがマイセンの花絵付け研究の始まりとされています。
これはその後も体系化され現在にいたるのですが、あくまで
マイセン社内でのことであり、大々的に発表されるようなことは
ありませんでした。しかし、マイセンの製品が普及してゆくと、花絵
付けへの関心が高まり、こうした資料の開示が望まれるように
なります。ところが、当時は東独時代であり、こうした一般の要求は
なかなか叶いませんでした。

そして、1979年、VEBマイセン磁器公団は一冊の冊子を発表
します。これが「マイセンの花絵 ヨーロッパのフローラ」です。

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写真1) 「マイセンの花絵付け ヨーロッパのフローラ」 
     1979年発行 DDR VEBマイセン磁器公団  編

当時、市場からの要求に応えた形で、マイセンの正規代理店の
ために制作された冊子ですが、マイセンの花絵付けを解説したもの
としては、唯一の公式な文書です。その後、付属美術館のH.ゾン
ターク博士や研究家のG.シュテルバ氏などがマイセンの花絵付け
についての本を著していますが、その分類方法はこの冊子に習った
ものです。従って本ブログでもこの分類を踏襲しようと思います。
しかし、この冊子は東独特有の分かりにくい表現であり内容も難しい
事から、当ブログでは私の解釈も含めてもっと具体的に説明して
いこうと思います。


前置きが長くなりましたが、よろしければ何回か本ブログにお付き
合いください。


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dresdner220 at 17:33|PermalinkComments(2)TrackBack(0) マイセン花絵付けについての考察 | 書籍紹介 マイセナー・マニュスクリプト

2011年06月17日

マイセン自然主義様式の花絵 part 3  矢車菊

今回も、自然主義の花絵について書こうと思います。
アカツメクサ、ハハコグサに続いて、ヤグルマギクを
とりあげようと思います。
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写真1)矢車菊  ヤグルマギク  ヤグルマソウ

ヤグルマソウとも呼ばれますが、同名他種の花もあるので、
ヤグルマギクと称されます。
ヨーロッパ原産でもともとは麦畑にはえる雑草だったそうです。
欧州ではとても馴染みのある花で、ドイツの国花なのですね。

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写真2)ヘレンド C&S 「ブルーガーランド」 現代もの

磁器装飾の分野でも、ポピュラーな花です。写真2)は
ヘレンドの例ですが、このようにパターン化された文様は
ヨーロッパの色々な窯で作られています。
磁器絵付けを趣味にしている方も、一番最初の基礎として
習った事があるかもしれません。「コーンフラワー」とか
「ブラウエ blaue=青いの意」などと呼ばれる事もあります。

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写真3)マイセン 自然主義様式 ヤグルマギク 1890年頃

さて、本題の自然主義様式のヤグルマギクです。19世紀から
20世紀初めの頃の制作されたものです。オーバル皿に描かれた
比較的大きなサイズの花絵付けです。柔かなタッチ、淡い色彩と
いうこの時代の特徴がはっきりとご覧頂けると思います。

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写真4)マイセン 自然主義様式 ヤグルマギク 1985年頃

1985年頃に描かれた作品です。スープチュリーンの蓋に
絵付けされたものです。構図や色彩も良い出来の絵付けと
思いますが、19世紀の柔らかなタッチは再現しきれていない
ように感じます。

一見、ささっと描いてあるような自然主義様式の絵付けがいか
に難しいか、改めて知らされる思いです。

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dresdner220 at 14:05|PermalinkComments(4)TrackBack(0) 自然主義様式の花絵 | 花とマイセン

2011年06月11日

マイセン自然主義様式の花絵 part 2 ハハコグサ

前回に書きましたマイセン自然主義様式の花絵の
比較が好評でした。是非他の例も紹介して欲しいとの
リクエストもありましたので、今回のグログでもこの
テーマを取り上げたいと思います。

今回紹介する花は「ハハコグサ」です。
春に咲く花で、ちょっとした草地でもよく見られる植物です。
春の七草の「ゴギョウ」としてご存知の方も多いでしょう。
アジアには広く分布する植物でヨーロッパが原産とあるので、
マイセンで野草としてモチーフに取り上げられてもおかしく
ないでしょう。
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写真1) ハハコグサ  キク科
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写真2) 別名 春の七草の「ゴギョウ」



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写真3)マイセン 自然主義様式の「ハハコグサ」
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写真4) プレート裏のマーク 1890年頃の製作

光を意識した柔らかいタッチで描かれています。また
彩色も水彩画のような淡い色です。決して筆数の多い
細かいタッチではありませんが、植物の持つ本質を
よく捉えていると思います。それまでのマイセンにはない
当時としては画期的な描法だったでしょう。

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写真5)現代の自然主義様式の「ハハコグサ」 プレート
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写真6)上の作品のマーク  1985年頃の製作

現代の自然主義様式の花絵は筆数も多く、色もあざやかで
きれいです。食器としてはこちらの絵付けを好む方もいらっしゃる
でしょう。これは個人の嗜好であり優劣ではありません。しかし
これら二つの作品の時代による違いは明らかです。
写真6)の215210は自然主義様式の花絵の装飾番号、50は
ペインター番号です。

リクエストを下さったP&I 様、誠に有難うございました。

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2011年06月05日

マイセン 自然主義様式の花絵 part 1            アカツメクサ

花のきれいな季節ですね。
先日、多摩川の土手を散歩していたら、アカツメクサを
見つけたので写真を撮りました。
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写真1)多摩川の土手のアカツメクサ  2011年6月初旬

四葉のクローバーで馴染みのあるシロツメクサとよく似ていますが、
色が違うだけでなく、花の下にすぐ下に葉があるのが特徴です。
(シロツメクサは花の下に長い柄がつづきます)
ヨーロッパが原産であり、家畜の飼料として人間との関係も深い植物です。
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写真2)アカツメクサのクローズアップ 


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写真3)自然主義様式のアカツメクサの花絵  19世紀後半

マイセンにもこのアカツメクサをモチーフにした花絵付けがあります。
野に咲く小さな花が絵付けの題材として取り入れられたのは、
19世紀末、画家ブラウンズドルフ教授の指導下でのことです。
それまでは専ら園芸用の花や豪華な花束が磁器装飾の題材
でした。磁器装飾に自然主義様式を導入したブラウンズドルフ
教授は、マイセンの歴史に残る偉大な仕事をした人物だと考えてい
ます。
まるで、今、野原から摘んできて白い画用紙の上にポンと置いた
ような花絵付です。水彩画のように淡い色彩でありながら、花の持つ
生命感や質感を見事に表現しています。マイセンの自然主義様式の
花絵を写実的表現と勘違いしている方も多いですが、上の例でお分
かりのように、決して筆致をつくした写真的な表現ではありません。

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写真4)マイセン 自然主義様式のアカツメクサの花絵  1985年頃

もちろん、自然主義様式の絵付けは、マイセンの重要なレパートリー
として今でも作られています。しかし、こうした微妙な感覚に左右され
る水彩画のような絵付けは、決まった様式の花絵付けよりはるかに
難しいのですね。長い年月の間には次第に形式化されてしまい
ます。写真4)は東独時代の同モチーフに花絵です。好き嫌いは別
としてとてもよく描かれているとは思います。しかし、比較して見て
頂ければ、二つの絵付けには大きな違いがあることは一目瞭然でしょう。

19世紀末から20世紀初めに描かれたマイセンの自然主義様式の花
の作品に、非常に高い価格がつく理由がここにあります。


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