2015年06月

2015年06月23日

高島屋のバラとマイセン

二子玉川は高島屋のお膝元なので、高島屋のバラの紙袋は
いつも見かけます。今日はこのバラの包装紙についてのブログ
です。

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写真1) 高島屋のバラの包装紙

高島屋といえば、このバラの包装紙はあまりにも有名です。
おなじみの方も多いでしょう。あまりよく見ることもないくらい
見慣れてしまっていますが、実は芸術的にもとても素晴らしい
作品と評価されています。よく観察すると分かりますが、まるで
香ってくるような花絵で、柔らかで迷いの無いタッチは、見事
と言うほかにありません。

この原画を描いたのは誰でしょう。
実は、バラのリースの7時ごろの位置に、サインがあるのです。

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写真2) 同包装紙のバラにある作者のサイン

印刷になってしまっているので、よく読めませんが、実は、フォルク
マール・ブレッチュナイダー、その人です。

「エエッ!」と思った方、かなりのマイセン通です。
「知ってるよ」と思った方、すでにマイセン病です。

サインは「、V.Bretschneider 1980」 と記されています。

マイセンファンならフォルクマール・ブレッチュナイダーの名前は
ご存知でしょう。ハインツ・ヴェルナー等と共に、マイセンで「芸術
的発展のための集団」を結成し、20世紀のマイセンを芸術的に
リードしたアーティストの一人です。彼は花絵付けの名手であり、
マイセンでも花絵付けで彼に右に出る人はいない、と言われた
人物です。特にバラの絵は自由自在です。

ブレッチュナイダーは1980年に初来日しています。
この年(昭和55年)は、高島屋で「マイセン磁器300年展」が開催さ
れました。これは記念すべき日本初のマイセン単独展であり、また
高島屋創業150周年でもあり、大きな規模で非常に充実した内容
の催事でした。

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写真3) 1980年(昭和55年) マイセン展のチケット半券

当事のドイツは西と東に分断されており、互いに独立国として覇権
を競っていた時期です。マイセンは東独に属していましたが、日本
と東独は1973年に国交が樹立されたばかりで、両国共に文化的
経済的な関係を強めようとしていた時代でした。
この意味で本催しは単なるイベントではなく、国家単位の重要な
文化交流あり、東独から政府関係の要人も来日していました。


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写真4) 1981年当事のV・ブレッチュナイダー

フォルクマール・ブレッチュナイダーもマイセン側の芸術分野を代表
とする要人として来日していました。そして、これに際し、この包装紙
のデザインの元となった飾り皿を高島屋に贈呈しました。マイセン磁
器は東独を代表する贈り物として使われていましたので、この時に
ブレッチュナイダーのバラが採用されたのもよく理解できます。推測
ですが、マイセン側も高島屋のバラの包装紙を知った上で、この飾り
皿を贈ったのではないでしょうか。とすれば、この作品をバラ絵付け
の名手であるブレッチュナイダーに描かせたのは、とても納得ゆく事
です。


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写真5) 高島屋 高岡徳太郎による旧包装紙のバラ

2007年、高島屋新宿店のリニューアルオープンを機に、包装紙の
バラのデザインが一新されました。この時に選ばれたのがブレッ
チュナイダーの絵付けからのデザインでした。
それまでは洋画家高岡徳太郎のデザインが採用されていました。
高島屋ではこれを、「モダン・ローズ」から「イングリッシュ・ローズ」
への変更とコメントしています。


余談ですが、このときに一緒に来日していたハインツ・ヴェルナーは
高島屋に関する絵画を残しています。

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写真6)絵画 「高島屋の女性」 H・ヴェルナー 1980年

高島屋のデパートの女性がヴェルナー独特の筆致で描かれて
います。きっと高島屋での体験がヴェルナーの印象に強く残った
のでしょう。

この後、ブレッチュナイダーは何度か日本を訪れる事になります
が、このときの話はまた折に触れて語る事にしましょう。



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dresdner220 at 17:51|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 花とマイセン | マイセンの芸術家

2015年06月18日

ロイヤルコペンハーゲン サクソンフラワー

以前のブログでの昔話が意外に好評でしたので、今回もちょっと
懐かしい話題です。

ロイヤルコペンハーゲンは現在ではほとんどが東南アジア製という
悲しい状況ですが、1970年代の後半頃には全ての製品がデン
マーク製であり、上絵付け(オーバーグレイズ)の多彩色の装飾も
作っていました。
上絵付け装飾の代表である「サクソンフラワー」は、所謂「ドイツの
花」と呼ばれる様式の花絵付けでした。


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写真1)ロイヤルコペンハーゲン 「サクソンフラワー」 C&S

なかなかよく描きこんである花絵付けで、もちろん全てフリー
ハンドの手描きで絵付けされていました。


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写真2) 同上 

当然ながら、1980年頃においても、ずいぶん高い価格がつけられて
おり、当事の定価で5~60,000円だったと思います。年次統計に
よれば、1980年の大卒初任給は10,9500円ですから、給料の半分
の価格のC&Sであった訳です。この頃は、日本も急速に豊かになり
つつある時で、「世界の一流品」などというムックや雑誌が盛んに
出版され、所謂ブランドブームの走りの頃だったと記憶しています。


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写真3) 同上 絵付けのクローズアップ

ロイヤルコペンハーゲン独特の色彩とタッチで、質の高い絵付
けでした。縁取りののこぎり状の金彩が特徴的ですね。この当事、
サクソンフラワーには「リッチ」と「ライト」の二種類がありました。


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写真4) Rコペン 「サクソンフラワー ライト」

「ライト」の装飾は、花絵付けが多少簡略化されており、絵付師の
負担を減らした廉価版です。金彩も単なるラインで、のこぎり状に
なっていない事でも「リッチ」と区別できます。


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写真5) 「サクソンフラワー リッチ」のマークと品番

「サクソンフラワー リッチ」の装飾品番は「1221」です。これに対
して「ライト」の装飾品番は「493」です。


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写真6) 1920年頃のサクソンフラワーの品番 「4」

もともと、サクソンフラワーの品番は「4」だったようですが、マーケ
ティングの戦略から、リッチとライトに分け、これに際して新しい品番
を用意したと考えられます。


「サクソンフラワー」と類似した装飾に「フリッセンボーグ」(あるいは
フリセンボー 等とも呼ばれていた) という装飾があります。

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写真7)当事の「フリッセンボーグ」のカタログ

「フリッセンボーグ」は「サクソンフラワー」とよく似た花の装飾で
すが、これらはプリントによるものです。とはいえ、花絵のプリント
も6種類のパターンを用意し、絵柄が重ならないように配慮されて
います。また釉薬もアイボリーがかった独特の色で、白磁の「サク
ソンフラワー」とは容易に区別がつきます。「フリッセンボーグ」の
装飾品番は910です。


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写真8) 1981年のカタログと価格表

1981年の日本での価格表を見ると、「フリッセンボーグ」「ヘンリ
エッテ」は掲載されていますが、すでに「サクソンフラワー」はカタ
ログの中に見られません。しばらく前までは、「サクソンフラワー」
は店頭で見かけましたので、恐らくこの時期に製造が中止されたと
思われます。この後、2004年頃に復刻版として、「サクソンフラワ
ー」が一時的に製造されましたが、これは「ライト」の方だったと思い
ます。

いずれにしても、コペンが製造の拠点を東南アジアに移している
現在、高度な技術を要する上絵付けの「サクソンフラワー」は、今後
コペンの製造ラインに乗る事はまずないのではないでしょうか。マー
ケティングやコスト、製造の手間を考えると、もはや商品として成り立
たないのでしょう。昔からの磁器大好き人間には、ちょっと寂しい思い
を隠せません。



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2015年06月13日

お花の季節 ペチュニア? マイセンの自然主義様式の花絵

昨日は近くのお住まいのお客様がいらっしゃり、色々な
な話に花が咲きました。花といえば、このお客様は園芸が
ご趣味で、ご自宅の庭で色々な花を育てていらっしゃいます。

実は新入荷したマイセンの自然主義様式の花のプレートが
あるのですが、何の花か分かりませんでした。単純に西洋の
ツツジかと思っていたのですが・・・・・

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写真1) マイセン 「自然主義様式の花絵」 1900年頃

ところが、お客様のおっしゃるには、これはツツジではないと
おっしゃいます。確かに形状は似ているが、ツツジだとオシベ
やメシベがはっきり見えるはずという御意見です。
そして、お客様のおっしゃるには、この花は「ペチュニア」では
ないかということでした。

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写真2)ショップの前のペチュニアの花

ペチュニアなら、アーカイヴの前の花壇にも今が盛りと咲いて
います。写真を撮ってきました。花びらの形状はちょっと違う
ようですが、確かに花の中心部分などは良く似ています。


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写真3) 同上

お客様のおっしゃるには、ペチュニアは園芸品種が多く、色々
な形状があり、中には八重咲きの花まであるそうです。ただ
葉っぱがっちょっと違うかなと考えていらっしゃいました。

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写真4)絵付けの花の形状に似たペチュニアの花

結局この時に結論はでなかったのですが、ツツジでない事は
間違いなさそうです。後で調べてみると、確か本作の絵付けに
似ているペチュニアも見つかりました。

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写真5) 絵付けのクローズアップ

マイセンの自然主義様式の絵付けであれば、本物の花をよく
観察して絵付けしているので、想像上の花を適当に描くという
事はありません。きっと100年前には間違いなく存在した花な
だと思います。という事は100前のペチュニアでしょうか?

花の名前がお分かりの方、是非お教え頂きたいと思います。



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2015年06月08日

マイセン C&S 「流水菊花文碗皿」 1990年 

今日はのブログは、ちょっと昔話です。
1990年の事なので、もう25年も前の話ですね。


1990年は松坂屋デパートの会社創立80周年記念という
年でした。これに関連して色々な催しが行われたのです
が、「青い剣の魅惑 マイセン磁器展」はその目玉ともなる
イベントでした。

そこで、松坂屋はマイセンに記念特別注文の作品をオー
ダーしたのです。

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写真1)マイセン 「流水菊花文碗皿」 1990年

松坂屋は名古屋の呉服店からの創業です。1931年に新しい
呉服の意匠を創出する目的で、京都の仕入れ店に染織参考室
を設置し、小袖を始めとする衣装を蒐集しました。現在の松坂屋
京都染織参考館です。

マイセンに特注するに当たり、松坂屋京都染織参考館から
江戸時代の小袖「流水菊縫文様」を取材し、オリジナルの装飾
文様を、マイセンと共に創作しました。
こうして出来上がったのが、写真1)「流水菊花文碗皿」 です。

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写真2) 流水に菊模様小袖 江戸時代中期

菊花に流水を配した文様は、不老長寿の瑞祥の象徴であり、
小袖や能衣装だけでなく、古鏡や蒔絵などにも用いられる
日本の独自の意匠です。

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写真3) 当事のパンフレットより


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写真4) 文様のクローズアップ

本作を実際に手にとって見ると、多くの色を使っているにも
かかわらず品格があり、完成度の高い良品と思います。
マイセンの白磁に日本文様が美しいです。

マイセンは柿右衛門文様を始めとする東洋文様(マイセンでは
インド文様と言います)も得意とする分野であり、とてもやりがい
のある仕事だったのではないでしょうか。

特注品なので、装飾番号は9から始まるスペシャルなものです。
本作の装飾番号は960680、絵付師の番号は160です。

当事、期待してマイセン展の会場に向かった私は、本作を見て
感激し、付けられた価格を見てため息をついたものです。

現在マイセンは、上海や北京に直営店を出すなど、もっぱら
中国の市場を意識したマーケティングですが、この頃は日本に
力があったのですね。しかも、現在の醜怪ともいえる中国向け
の製品に比べて、本作を代表とする日本向けの特注品は、本当
に高品質だったと思います。


今となっては、本当に懐かしい思い出です。



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