2015年11月

2015年11月29日

マイセン磁器製作所への報告書  マックス・アドルフ・プファイファー

今回のブログは、稀覯本の紹介です。

「マイセン磁器製作所への報告書」と題された50ページ
あまりの本です。著者はマックス・アドルフ・プファイファー、
言わずと知れた後のマイセンの総裁になる人物です。

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写真1) マイセン磁器製作所への報告書 内表紙


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写真2) 同背表紙  

出版は1920年、プファイファーが製作責任者に就任した翌年に
書かれた本です。プファイファーは1913年の入社当初マーケ
ティングを担当していましたが、磁器への豊富な知識、芸術家
との深い関係、そしてアイデアと実行力で1926年にはマイセン
の頂点に上りつめる人物です。そのプファイファーが入社から
7年目に、マイセン首脳部に「報告書」という形でその改革を
迫った著作です。

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写真3) 同書  目次

目次から、その内容を見てみましょう。

Ⅰ 回想と展望
Ⅱ 販売価格とそれに伴う問題
Ⅲ 1919年の新製品
Ⅳ 新製作におけるウルシュトック
Ⅴ シュタインブリュックの歴史暦
Ⅵ 図解

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写真4) プファイファーによる前書き

プファイファーはマイセンに多くの功績を残していますが、
新製品のうち11個に限定番号をつけ、芸術家のサインを
つけて、その作品の銅版画と一緒に販売する事を提唱して
います。この11個の作品は最初のロットであり、芸術家が
直接製作にあたりました。つまり、作品に大きな付加価値を
つけて、一般的な「製品」ではなく「芸術品」として販売する
事を考えていました。

この11個が「ウルシュトック」と呼ばれ、現在でも非常に高
い価値をもって、アンティーク市場で取引されています。
このアイデアを本書で会社に提案しているのです。

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写真5) 同書  装丁

そして、目次のⅤにある図解こそが、「ウルシュトック」に付属
する銅版画です。この銅版画がすごい!


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写真6) 銅版画の作者

この銅版画を製作しているのは、1919年当時マイセンの若き
芸術家たちなのです。この後にマイセンを背負ってたつ人物
ばかりです。写真6)に銅版画製作として以下の人たちが挙げら
れています。

*ウィリアム・バーリング
*パウル・ベルナー
*ルドルフ・ヘンチェル
*ヘルマン・リンバッハ
*ヒューゴ・シュタイン

この時代のマイセンが好きな人には、驚くような人物が銅版画
を作っているのです。

では、その銅版画の一部をご紹介しましょう。

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写真7) 「ムーア人と貴婦人」 パウル・ショイリッヒ


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写真8) 「ロシアンバレーより」 パウル・ショイリッヒ


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写真9)「ビーダーマイヤーの少女」 リヒャルド・ランガー


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写真10)「馬上の人物 燭台」 ゲアハルト・マルクス


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写真11) 「第一次大戦墓碑」 リヒャルト・シャイベ


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写真12) 「磁器製照明」 アデルベルト・ニーマイヤー

どうですか、すごいと思いませんか?
これらの銅版画のカラーのものは、手彩色で着色されています。
マイセンの若き芸術家が作ったこれらの銅版画の価値は計り
知れません。

手作業であるが故にこの「報告書」はそうたくさんの部数が作ら
れた訳ではありません。写真6)にあるように250部の限定です。
本書はそのうちの236番目で、その数字が手描きされています。

因みに写真1)のマイセン市の風景の銅版画もヘルマン・リン
バッハの手になるものです。リンバッハは後にマイセンのクリス
マスプレートを数多く手がける事で有名になります。

限定250部のうち、現在では一体何冊が残っているのでしょう?
マイセンの歴史を語る上で、絶対に欠かせない資料と言えます。

今回はちょっとマニアックなブログでした。



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                 TEL-03-5717-3108
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dresdner220 at 00:19|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 書籍紹介 | マイセンの芸術家

2015年11月14日

ドレスナー・クリスマス・シュトレン   シュトーレン

二子玉川の街は、すっかりクリスマスイルミネーションに
覆われました。今年は再開発が完成したので、とてもはな
やかです。

この時期になると、シュトレンが恋しくなりますね。最近では
日本でもすっかりおなじみになったクリスマス菓子です。
ただ、日本のシュトレンは、本場ドイツのものとはちょっと違う
ような気がします。

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写真1) ドレスナー・クリスマス・シュトレンの箱

シュトレンはドレスデンが発祥の地です。所謂シュトレンは
ドイツ各地にありますが、ドレスナー(ドレスデンのという意味)
シュトレンというのは、ドレスデンを中心に半径15km以内で
作られなければなりません。しかも、伝統に従ってレシピが
法律で決まっており、これに順じていなければ「ドレスナー
シュトレン」の名称は与えられません。(法律というのがドイツ
らしいです。)

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写真2) ドレスナーシュトレン1kg

粉砂糖で白く覆われているのが、おくるみにつつまれたキリ
スト誕生を思わせるところから、クリスマスに用いられるよう
になったといいます。ドイツではアドベント=降臨節(11月の
最終日曜日、今年は11月27日)から、クリスマスまでの間に
少しずつ食べながらクリスマス当日を待ちます。

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写真3) 箱に張られたアウグスト王のエンブレム

ところで、箱に張られたアウグスト2世王のエンブレムに気が
つきましたか?もちろんマイセン磁器を熱狂的に蒐集したあの
王様です。ドレスデンの新市街には、馬に乗った黄金のアウグ
スト2世王の銅像がありますが、シュトレンのエンブレムはこれに
由来したものです。シュトレンの誕生はアウグスト王よりずっと前
時代ですが、ザクセン公国ではクリスマス時期にシュトレンを献
上するのが慣習でした。

1730年、強健王と称されるように派手な事が大好きな王は、
24、000人を招いた大宴会の最後に1、8トンものシュトレンを
客に供したといいます。この巨大なシュトレンは8日間をかけて
焼かれ、客の前で1,6mのナイフで切り分けられたそうです。
アウグスト王らしい逸話です。もっとも、王はこの3年後に逝去し
ますが、その大きな原因は糖尿病でした。


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写真4) 当店のおもてなしシュトレン ブルーオニオンのお皿と

12月7日(月)より、当店でもアーカイヴのクリスマスを催します。
お買い上げのお客様には、温かいグリューワインと一緒にシュト
レンやチーズでおもてなし致しますので、是非ご来店下さい。
(催事の詳細は、また告知いたします。)


当店がいつもドイツから送ってもらっているのは、本場ドレスデン
でも一番おいしいと言われるシュトレンです。おじさんと息子さん
の小さなお店で、ほとんどが地元の人たちの予約で売切れてしま
うそうです。観光客はまず行かないお店なので、食べられるのは
日本ではアンティーク・アーカイヴだけかもしれません。

(尚、大変に申し訳ありませんが、当店ではシュトレンの輸入販売
は行っておりませんので、ご注文はお受けしておりません。どうぞ
この点、ご了承下さい。)



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2015年11月08日

セーブル アールヌーボーのベース

このブログでセーブルの作品は紹介する事はあまり多くあり
ません。HPで紹介しようと思っていたアイテムなのですが、
一足早く本ブログで取り上げてしまいましょう。

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写真1) セーブル 「アールヌーボー」のベース 1904年

セーブルのアールヌーボー時代の作品は、磁器史上でも
最高品質のものの一つと考えています。植物をモチーフと
したデザイン化された文様は、これ以降のアールデコよりも
癖が無く、洋の東西を問わず、広く磁器愛好家に好まれて
います。ただ、数があるものではないので、そう簡単に入手
できる訳ではありません。そこがまたファンの心を揺さぶる
のでしょう。


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写真2) 同上 クローズアップ

釉下彩で描かれた植物文様は、アールヌーボー時代のセー
ブルの特徴です。淡くやさしい色彩は、磁器以外では表現でき
ない独自の「芸術」と言えましょう。


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写真3) 同上

本焼成の前の素地に絵付けした「アンダーグレーズ」の技法か、
焼成後、釉薬の上から絵の具が浸透していく「イングレーズ」の
技法か、これを見分けるのはとても難しいのですが、皆様は
どのように考えますでしょう。


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写真3) 同上

そのヒントになりそうなのが、赤い花の絵付けです。絵の具が
焼成によって縮んでいます。この淡い赤色は完全に釉薬の下
にあり、指で表面を撫でても全く厚みは感じません。赤系統の
色を釉下彩で発色させるのは、とても難しいといいます。


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写真4) 同上
緑のコントラストも美しいです。よく観察すると、小さな気泡の
ようなものが見えます。2色の緑も柔らかな発色で美しいですね。


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写真5) ベースの口のクローズアップ

こうした直線を描くのは実は、とても難しいです。特に素焼きの
磁胎に付けしたとすればなおさらでしょう。アールヌーボー文様
というのはシンプルですが、実は結構手がかかる絵付けが多い
と思います。


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写真6) セーブルのマーク

磁胎が作られたのが1902年、絵付けがなされ作品として完成
されたのが1904年です。
技法についての問題については、敢えてここで答えを出さないで
おこうと思います。皆様のご意見を聞きながら考えていく事に
致します。


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写真7) スイカズラの園芸種「ハニーサックル」の花

この文様のモチーフになったのが、この花ではないでしょうか。
スイカズラの園芸品種で「ハニーサックル」という植物です。
可憐な花ですが、アールヌーボーの趣味によくあったのでしょう。


高さ23cmのベースとしては小品ですが、アールヌーボー時代
のセーブルとして、りっぱな存在感を保っています。
どうぞ、当店にて手に取り、ゆっくりとご覧ください。




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dresdner220 at 16:13|PermalinkComments(0)TrackBack(0) セーブル | 作品紹介
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