2017年10月

2017年10月23日

「ユーゲントシュティール時代のマイセン磁器」 書籍紹介 

今回は、私にとって非常に大切な書籍を紹介します。
1983年に出版された本ですが、現在でもその重要度は全く
変わりません。

「ユーゲントシュティール時代のマイセン磁器」
ヨハネス・ユースト著  1983年  エディションライピチヒ刊

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写真1)「ユーゲントシュティール時代のマイセン磁器」 表紙

私が本格的にマイセンを調べ始めたのは1980年頃からですが、
1984年にこの本を手に入れた時には小躍りしました。今まで
全く資料のなかったユーゲント時代のマイセン磁器が、詳細に
語られていたからです。
20世紀の始まり、若い芸術家の熱いエネルギーが、この時期
のマイセン工場には溢れていました。私も、それらに触発され
るように、この本をむさぼり読んだものです。


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写真2) 同書 目次

マイセンの歴史から始まり、当時の芸術家の動きや磁器装飾の
技術、ユーゲントの様式などについて、詳しく調べています。
世界的にみてもこうした調査は初めてで、まさしくマイセンの失わ
れた時代について書かれたものです。


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写真3) ヴァンデヴェルデのサービス紹介のページ

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写真4)リーマーシュミットのサービス紹介のページ

この本の中には、デザイン界では著名なヴァン・デ・ヴェルデの
サービスやリヒャルド・リーマーシュミットのサービスが紹介され
ています。


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写真5)クリスタルグレーズのベース紹介のページ

マイセンのユーゲント時代に極少数だけ作られた「クリスタル
グレーズ=結晶釉」の作例なども紹介されています。


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写真6)マイセンの動物のフィギュア紹介のページ

ユーゲント時代のフィギュアも独特のものです。写実的な動物像
は、それまでのマイセンにはないモチーフです。


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写真7)K・グロス チューリップベース紹介のページ

カール・グロスのデザインしたチューリップ用の花器です。マイセン
の初期ユーゲント作品として傑作と評価されています。


こんなマイセンがあるのか!
当時の私は、いつかこれらの作品を目の前で見てみたいと祈るよ
うな気持ちでした。


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写真8) 同書 裏表紙

著者のヨハネス・ユーストは1939年の生まれ、東独の美術畑を歩
んできた人です。ライプチヒのカール・マルクス大学で美術を学び
美術教師を経た後、ドレスデンの工芸美術館の責任者として働き
ます。この後、VEBマイセン磁器製作所付属美術館の館長になり
ます。この時にユーゲント時代のマイセン磁器を精緻に調べ上げ
論文を書きます。この功績によりユーストは博士号を取得します。

実は、この論文の実物も当店にありますので、紹介します。


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写真9)ユーストの論文  1972年

同書の源泉になったのがこの論文です。
130ページにも及ぶ、びっしりと文字の並んだ熱の入った論文
です。

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写真10) 同書 内表紙 ユーストのサイン

わら半紙のような紙にタイプ印刷された質素な論文ですが、これが
東独らしいですね。


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写真11) 同書 人名索引

ドイツ語の専門論文ですから、自力ではほとんど読めませんが、
芸術家の人名などは書籍よりも多く、内容も詳細です。

この論文が発表されたのは、1972年。日本ではサッポロ冬季
オリンピックの年です。未だ日本と国交のない時、遠く東独で
このような研究がなされ、ユースト氏がこの論文によって博士号
を受けたと考えると、感無量です。



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写真12) マイセンの絵付け展 図録

因みに、2011年の秋に開催した「マイセンの絵付け展 印象主義
からユーゲントシュティールへ」の図録は、このユーストの書籍に
補完するつもりで書いた本です。限定50部だけの印刷だったため
高価だったにもかかわらず、即日売り切れてしまいました。
その後、多くの方から購入のご希望を頂いたのですが、ご要望に
沿う事ができませんでした。いずれ、さらに充実させた形で再版し
たいと思っていますので、ご期待下さい。


図録の方は入手不可ですが、ユーストの本は非常に有名な本です
ので、古本では入手可能かと思います。ユーゲント時代のファンで
したら必携の本です!



西洋陶磁器専門店
 
アンティーク アーカイヴ  東京 二子玉川
     TEL-03-5717-3108
 ホームページはこちらです  
http://archiv.jp/


dresdner220 at 15:42|PermalinkComments(2) 書籍紹介 | ユーゲントシュティール

2017年10月17日

マイセンの花絵 イングレーズとオーバーグレーズ

今回のブログでは、マイセンの花絵付けについてお話します。


イングレーズという絵付けの技法をご存知でしょうか?


その前に、磁器絵付けには、オーバーグレーズとアンダーグレー
ズという二つ技法があります。グレーズとは釉薬の事ですが、オー
バーグレーズは、釉薬をかけて本焼成した磁器の上に絵付けす
る技法です。これに対して、アンダーグレーズは、本焼成の前の
素焼きの状態で絵付けし、この後釉薬を施し本焼きします。
アンダーグレーズは、釉薬に保護されて大きな耐久性を持ちます
が、本焼きの高い温度に耐えなくてはならないため、色の種類は
極めて限られます。

これに対して、イングレーズはオーバーグレーズと同様に、本焼
きした磁器の釉薬の上に絵付けしていきますが、オーバーグレイズ
よりも高い温度によって焼成し、釉薬の中に絵の具が溶け込んでく
独特の技法です。ちょうどオーバーグレーズとアンダーグレーズの
中間的な技法と言う事ができます。イングレーズのメリットは、上絵
付けと同じように修正が効くことと、釉薬の上なので筆の滑りがよく
アンダーグレーズより繊細は表現ができる事です。

では、オーバーグレーズの花絵とイングレーズの花絵をご覧にい
れます。


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写真1)マイセン プレート 「赤紫の単色の花絵」 1970年頃



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写真2) 同上 クローズアップ



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写真3)マイセン プレート「青の単色花絵」 1970年頃


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写真4) 同上 クローズアップ


写真1)2)の赤紫の単色花絵がオーバーグレーズ、写真3)4)の
青の単色花絵がイングレーズです。

双方とも1970年東独時代の作品です。イングレーズの絵付けは、
釉薬の中に溶け込んでいるので、多少ディテールが淡くなり、独特
の柔らかい雰囲気がよく表現されています。


マイセンの公式カタログ上では、以下のような正式名称が与えられ
ています。

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写真5) マイセンの公式カタログより


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写真6) 同上

装飾品番 120422  旧品番 98c

6つ花のブーケ 傾斜した構図
赤紫 金彩の葉
金の波の装飾
金の縁取り

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写真7) プレート裏面

98cは旧品番です。絵付け師番号は26です。



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写真8) マイセン公式カタログより


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写真9) 同上

装飾品番 120222  旧品番 102c

6つ花のブーケ 傾斜した構図
コバルトブルー 金彩に葉
金の波の装飾
金の縁取り


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写真10) プレート裏面

102cは旧品番、絵付け師番号は128です。


いかがでしょう、オーバーグレーズとイングレーズの違いがお分
かりになったでしょうか。写真では中々難しいと思いますが、シャ
ープな絵付けと少し柔らかいタッチが大きな違いです。




実は、イングレーズとの違いがもっと難しいのが、アンダーグレー
ズとの区別です。イングレーズもアンダーグレーズも釉薬の中に
絵付けがあるために、専門家でも完成品を見分けるのは本当に
難しいといいます。

ちなみに、カタログ上では以下の装飾がアンダーグレーズです。

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写真11)アンダーグレイズの花絵 公式カタログより

ドイツの花
コバルトブルー 
白の縁


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写真12) 同上

装飾番号 819701  旧品番 7a

装飾番号の最初の1桁 8 はアンダーグレーズの装飾を
示します。因みに同じアンダーグレーズで描かれる「ブルー
オニオン」の品番は800101で、「ブルーオーキッド」は824
001です。

何か、品雑な解説になってしまいましたが、同じコバルトブ
ルーの花絵でも、技法的には大きな差があるということが
伝われば幸いです。




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アンティーク アーカイヴ  東京 二子玉川
     TEL-03-5717-3108
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dresdner220 at 19:22|PermalinkComments(0) マイセン花絵付けについての考察 | 作品紹介
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