2017年11月

2017年11月20日

北斎とジャポニスム 展  国立西洋美術館  

先日、西洋国立美術館で開催中の「北斎とジャポニスム」展
に行ってきました。

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写真1)「北斎とジャポニス」ム」展 パンフレット

どうせ行くならと、妻がナイトミュージアムのチケットと取ってくれた
ので、夕食をちょっと早めにして夜の上野に出かけました。
ナイトミュージアムは夜の鑑賞だけでなく、入館人数を限定し、講
演会を聴講でき、ミニ図録までもらえるお得な企画です。もちろん、
価格は一般の入場より高く設定されていますが、それだけの価値
はあると思いました。残念ながら、本展でのナイトミュージアム企画
は終了してしまいましたが、こうした機会はこれからも増えていくと
思いますのでお勧めです。

余談ですが、世界遺産に指定されたル・コルビジェ設計の西洋国
立美術館も、夜にはまた違った景色を見せてくれます。


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写真2) パンフレット より

「ジャポニズム」という言葉はずいぶん前から使われているので、
皆様ご存知と思います。「日本趣味」というように訳されますが、
この展覧会では、「ジャポニスム」と「ス」がにごりません。これは
フランス語の「Japonisme」からきており、英語の「Japonism=ジャ
ポニズム」はこの展覧会では採用していないということでした。

本展における「ジャポニスム」は単なる日本趣味という事ではなく、
もっと広義に解釈し、「日本文化からヒントを得た、新しい創作活動」
と定義付けています。単純に「日本趣味」という場合の用語は、「ジャ
ポネズリー」がふさわしいと提唱されています。

以上、本展の企画監修にあたった国立西洋美術館館長 馬渕明子
先生の講義からの引用ですが、「ジャポニズム」という言葉や概念が
広く普及した現在、用語的な問題も大切と思います。

但し、私個人的にも、このブログでも用語や発音にはあまりこだわっ
ていないので、「ジャポニズム」の用語だけでなく、他の発音表記など
も、将来分かりやすい方向へ落ち着いていけばよいと思っています。


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写真3) 同上

本展の内容は、北斎と西洋の芸術家を比較しながら広く俯瞰しようと
する試みです。

展覧会は一章から六章から成り立っており、
1)北斎の浸透
2)北斎と人物
3)北斎と動物
4)北斎と植物
5)北斎と風景
6)波と富士
という変わりやすいテーマを設定して、「ジャポニスム」を知らなく
とも充分に楽しめる内容です。


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写真4) 正式図録

400ページに及ぶ正式図録はとても品格があり、内容も充実して
います。

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写真5) ミニ図録

ミニ図録は、ナイトミュージアム企画のプレゼントでしたが、ミュージ
アムショップで購入も可能です。


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写真6) 図録より R・コペンのベース

西洋陶磁器については、私たちファンには、ちょっと物足りないかも
しれません。磁器については僅かな展示でしたが、陶器やガラス器
は、有名なブラックモンのプレートやガレのガラスなどが展示されて
おり、足を運ぶ価値はあると思います。

国立西洋美術館での本展の開催は、2018年1月28日までです。



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写真7)マイセン 「松竹梅 柿右衛門写し」 プレート  1980年頃

マイセンの事を書かないでブログを終わるのはさみしいので、マイ
センにおける「ジャポニズム」をちょっとだけ。

マイセン磁器の始まりは、日本趣味を含む広く東洋趣味から始ま
っています。しかも、18世紀はじめからずっと柿右衛門様式等を製
作していたマイセンにとって、今さら何が「ジャポニズム」だったのでし
ょう。フランスやイギリスの陶磁器メーカーが熱烈に日本芸術を模写
した製品を作っている時、マイセンは案外冷ややかにそれを見てい
たふしがあります。マイセンにとって「ジャポニズム」がいかに受け
入れられていくか、これはユーゲントシュティール運動と密接に関
連し、マイセンの前衛の中に取り込まれていきます。
ただ、これを語るにはあまりに大きなテーマなので、別に機会を作る
ことにします。


明日から、サントリー美術館で「セーブル展」が始まります。
また、来年には1月13日からパナソニック汐留ミュージアムで「ヘレ
ンド展」です。「ヘレンド展」は全国巡回の最終開催なので、まだ未見
の方はお見逃しなく。

楽しみですね。



西洋陶磁器専門店
 
アンティーク アーカイヴ  東京 二子玉川
     TEL-03-5717-3108
 ホームページはこちらです  
http://archiv.jp/


















dresdner220 at 17:31|PermalinkComments(0) イベント 催事 | その他

2017年11月13日

マイセン 鳥絵付けの種類  バードペインティング

このブログの読者の皆様にはよく質問を頂くのですが、その
レベルの高さには驚かされます。本当に熱心に質問を下さり、
その質問の趣旨も的確です。
お答えする私としても、きちんと調べた上で正確な回答をする
のが不可欠です。皆様、マイセンと西洋陶磁器がお好きなのだ
なぁと、本当に嬉しく思います。

前回のマイセンの鳥絵の記事に関しても、熱心なご質問を頂
きましたので、このブログの記事としてお答えいたします。
ご質問の内容は、要約すれば、マイセンの鳥の絵の種類と描法
の違いを教えて欲しいということでした。

では一番の基礎になる鳥の絵について、お話していきます。


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写真1)マイセン 野鳥の絵 C&S より1980年

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写真2) マイセン公式カタログより 鳥の絵

鳥と昆虫の絵
ライトな絵付け
多色
金彩の縁取り

前回のブログでもふれましたが、装飾番号260110の鳥の絵が
基本です。マイセンの食器に描かれる装飾の多くが、この鳥の絵
です。取り上げられる鳥のモチーフは小型中型くらいの野鳥です。
大型の猛禽類や水鳥が主題となることは、原則としてありません。
(猛禽類や水鳥は、狩猟の分野の絵付けとして存在します。)

この絵は自然主義様式で描かれており、鳥の形や色は実際に
存在する鳥を再現しており、空想やファンタジーで描かれる事
はありません。鳥の描写の正確さはもちろん、背景の葉枝などに
まで気を使いながら、鳥を生き生きと描写します。しかし、磁器
絵付けは生態科学ではないので、あくまで器の装飾しての芸術
的な価値観が大切なのです。

主題となる鳥は器に中心に置かれ、副題となる木の葉や枝・実
などは、下から上へ立ち上がった構図です。

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写真3) マイセン公式カタログより

装飾番号 260210 
傾斜の構図 
ライトな絵付け
多色
金彩の縁取り

写真3)は2)のバリエーションです。花絵にもありますが、中心に
主題を置く構図の1)に対して、260210 は器の端寄りに主題の鳥
が配置されています。副題の木の枝は、斜め上から、下方向へと
流れるように描かれます。昆虫とのバリエーションはありません。


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写真4) エキゾチックな鳥の絵 ベース 1980年頃


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写真5) マイセン公式カタログより

装飾番号 263010
鳥と昆虫の絵付け 
エキゾチックな主題
縁に金彩

エキゾチックな鳥の絵付けの表現方法は自然主義様式ですが、
主題が小型の野鳥ではなく、熱帯やジャングルなどに棲む異国
の鳥になっています。通常、食器などよりも、装飾品である花器や
飾り皿に用いられる絵付けです。オウムやインコなど鳥のサイズ
が大きいのも特徴のひとつでしょう。背景となる植物も、これらの
鳥にふさわしいものが選ばれます。





ここまでは自然主義的な描法でしたが、以下は古典画法による
鳥の絵付けになります。

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写真6) マイセン 古典画法の鳥の絵  ケーキ皿 1980年頃


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写真7) マイセン 公式カタログより

装飾番号 262010

鳥の絵付け
盛り土からはえた枝葉の上に描かれる
多色
古典画法
2羽の鳥
金彩の縁取り

一見同じような鳥絵にみえますが、地面から立ち上った樹木の
上に鳥が描かれています。鳥とのサイズの対比から見て、この
樹木の表現は、自然を忠実に写したものでない事は言うまでも
ないでしょう。鳥は野鳥をかなり正確に表現していますが、自然
主義様式の柔らかな表現の鳥絵よりも、少し固くグラフィックな
印象を受けます。
これらは18世紀の銅版画による鳥類図鑑を手本にしており、混
ぜ合わされた絵の具の渋い色彩と共に、古典画法の大きな特徴
になっています。また、装飾の説明にはありませんが、古典画法
は昆虫の表現を伴う事が一般的です。

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写真8) マイセン C&S 1985年頃


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写真9) マイセン 公式カタログより

装飾番号 262007

鳥の絵付け
盛り土からはえた枝葉の上に描かれる
多色
古典画法
2羽の鳥
内側と外側に、編み籠の金糸の装飾
バスケットのレリーフ

マイセンのカタログには一応独立した装飾として扱われています
が、これは 262010 のバリエーションです。古典画法は高度な
絵付けであるために、金彩やレリーフもより凝ったものに仕上げ
られます。因みに、この装飾のレギュラーC&S一客の価格は20
万円を超えます。



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写真10) 18世紀の鳥の絵の写し ディッシュ 限定品 1999年

写真10)はミレニアム記念に限定19個だけつくられたディッシュの
鳥の絵です。ここでの鳥は、色彩や形など想像上のものであり、18
世紀のマイセン装飾が、異国への憧れを具象化したものである事
が理解できます。これらの鳥は、フランスのセーブル窯の影響を強く
受けて完成されたものです。


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写真11) 鳥の家族  陶板画より  1995年頃 

マイセンの鳥絵付けの究極が、写真11)のような作品です。鳥の絵
付けに特に秀でた絵付け師は、芸術家として自分独自の作品を作る
事が許されます。日ごろの自然観察やスケッチが、こうした鳥絵付け
を可能にします。11)は陶板画ですが、すでに磁器装飾というカテゴ
リーを超え、ファインアートに近い芸術作品と言えます。
ただし、こうした機会は特注など、極限られた場合だけのものです。


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写真12) マイセン 絵付け師の部屋  1980年頃

少々古い写真ですが、鳥や獣を描く絵付け師の部屋の様子です。
鳥の剥製がぶら下がっているのがお分かりかと思います。実際に
生きた鳥が飼われていることもあったそうです。背後の壁面には
蝶や蛾の標本が掛けられています。絵付け師たちは、仕事に当
たってこれらを参考にしていました。この部屋では、鳥や獣、魚な
ど生き物を描いていましたが、基本的には現在でも変わっていな
い思います。

しかし、マイセンが企業として宝飾やファンションに力を入れ、古く
からの絵付け師をリストラしている現状を考えると、このような東独
時代のシステムが、今後いつまで継続していくかは疑問です。




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dresdner220 at 17:27|PermalinkComments(0) 作品紹介 | マイセン作品紹介

2017年11月10日

マイセン ベース 「鳥の絵」 ミソサザイ

今回はマイセンの鳥の絵付けを紹介します。


マイセンの鳥の絵には花絵と同様、幾つかの種類があります。
ただ、花絵ほどの多くのバリエーションはなく、また花絵ほど厳格
な決まりもありません。

鳥の絵は、花絵や果物絵をマスターしたペンターのみに描くのが
許されるモチーフで、こうした熟練ペインターはマイセンの技法や
構図をしっかりと身に着けており、こうした基礎の上で鳥たちを
自由に描く事ができるのです。

それでは、今回の作品をご覧ください。

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写真1) マイセン ベース 「鳥の絵」 1987年頃

マイセンのベースで野鳥が描かれています。鳥の名前は「ミソサザ
イ」です。約10cmと小型で日本でも森や渓流に見られる鳥です。
短い尾羽を立ててさえずるのが特徴ですが、マイセンの絵付けでも
こうした特長がよく捉えられています。

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写真2) 同上

マイセンの鳥の絵では、主人公である鳥が中心に描かれ、副次的
に木々は葉、特に果実等が、鳥の存在を遮らないような構図描かれ
ます。つまり、花や葉が鳥に、視覚的に優先してはならないという事
です。


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写真3) 同上 クローズアップ


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写真4) 同上


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写真5) ミソサザイ


マイセンの絵付け師は常に自然を細かく観察しており、磁器絵付け
に当たって多くのスケッチを描きます。こうした習作は時にマイセン
の絵付けにそのまま用いられ、単なる手本の写しではなく絵付け師
のオリジナリティーが作品に生かされているのです。


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写真6)マイセンのパターンブックより

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写真7) 装飾番号と絵付け師番号

装飾番号は 260110 絵付け師番号は 137です。

鳥と昆虫の絵付け 
ライト  多色
金彩の縁取り


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写真8) ベースの裏の昆虫の絵

260110の鳥絵は、昆虫とのコンビネーションで描かれるのが決まり
です。本作もベースの裏側では、モンシロチョウが描かれています。

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写真9) 松の枝とマツボックリ

蝶と共に描かれている松の枝も見事な出来です。ちょっと日本的
な印象も感じられます。これだけを見たら、マイセンとは思わない
のではないでしょうか?


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写真10) マイセンマーク

最後にマークをお見せします。刻印の50272は、このベースの型番
です。



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