セーブル

2018年10月21日

セーブル 「ゴーヴネの照明」   秋の夜長   アールデコ  セーヴル

この頃は、日が短くなって、秋の夜長という言葉
が実感されます。今回はセーブルのランプを紹
介しましょう。

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写真1)セーブル「ゴーヴネの照明」 1935年頃

ご存知のように、焼き締まった磁器は透光性が
あります。この性質を利用してランプをつくる試み
は昔からありました。しかし、本格的にランプ(キャ
ンドルスタンドとは別として)が作られるようになっ
たのは、やはり電気が普及してからです。それまで
の蝋燭の光では、磁器を照明として利用する事は
難しかったのでしょう。



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写真2) 同上

1925年のアールデコ博覧会において、アンリ・ラパ
ンがパビリオンの組織委員会メンバーのなります。彼
は国立セーブル製陶所の組織委員もつとめ、「光の
サロン」と題された部屋の企画とデザインを担当して
います。この時、ラパンはジャン=パティスト・ゴーヴネ
との共作で、「光の噴水」という大型の照明を出品して
高い評価を得ます。




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写真3) 同上

本作はこのゴーブネによるものです。ゴーブネは彫
刻家ですが、セーブルで磁器に掘り込みをする技術
を研究し、数々の作品を生み出します。本作もその一
つで、葡萄の実の上にとまった一羽の鳥を掘り込みで
表現しています。装飾の明暗は素地の厚みを調整す
る事によって得られます。アールデコらしいシンプル
な装飾で、この時代の特徴をよく表していると思います。




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写真4) 同上

もちろん、電球を消灯すれば白磁ですが、セーブル
独自の柔らかい白で、白磁作品としても充分に観賞
価値のある作品です。器型もラパンと共通するものが
あり、これだけでも美しいです。



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写真5) 同上

本作の上部は大きく開口しているので、バックに反射
する光も美しく輝きます。ゴーヴネは当然このような効
果も計算していたのでしょう。作品を置いて点灯しただ
けで、一つの世界ができあがります。照明における光
の効果はすごいですね。



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写真6)「アールデコ様式のセーブル磁器展」1993年より

1993年に東京都庭園美術館で開催された「アールデコ
様式のセーブル磁器展」は、個人的に最も感銘をうけた
美術展の一つです。旧朝香宮邸のインテリアとセーブル
の陶磁器が完全にマッチングしていました。この時の図録
に本作と同じ作品が掲載されています。


本作に灯をともすと、あの美術展を思い出し、本作を今
扱えることを本当に嬉しく思います。
どうぞ、実際にご覧ください。



アンティーク西洋陶磁器専門店 
   アンティーク アーカイヴ  東京 二子玉川
         TEL-03-5717-3108
   ホームページはこちらです  
http://archiv.jp/




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2018年10月03日

セーブル ティーカップ&ソーサー 1867年           セーヴル フランス ティーC&S

今回はセーブルのティーカップ&ソーサーを紹介しま
しょう。


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写真1)セーブルC&S ミントグリーン 花絵 1867年

滅多に入手できないセーブルの最上級のC&Sです。
ミントグリーンとホワイトのツートンカラーを地に、窓絵
に赤紫の単色花絵が描かれています。



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写真2) 同上 カップ 


白磁部分には、淡い色彩でアイビーが添えられていま
すが、とても素晴らしい筆致で見事な出来です。高台
には半円形の金彩が装飾されており、これはこの作品
が最上級のグレードである事を示しています。



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写真3) 同上 カップ内部とハンドル

カップ内部はフルに金彩が施され、上部には金彩を掻き
落とす技法で渦巻き文様が描かれています。これも作品
の格を示すものですね。



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写真4) 同上 カップの絵付けと盛金

単色の花絵は多色と違って、濃淡だけで質感や色彩を
表現しなければならず、難しい技法といわれています。
花絵を囲む窓の金彩は、盛金(レイズゴールド)の技法
が使われています。セーブルは金彩に銅板転写を使う
事が多いのですが、これらはもちろん全て手描きです。



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写真5) 同上

花絵はカップに4面、ソーサーにも4面描かれています。
もちろん、全体としてのバランス・構成の傑出したもの
で、フランスの洒落た雰囲気を醸し出しています。



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写真6) 同上 ソーサー裏面

マークから白磁が1860年、装飾をつけて全体が完成する
のは1867年と分かります。
絵付けはL-D-Barre、1844年から81年までセーブル窯に
在籍した花のペインターです。



アンティークとしてのコンディションも素晴らしいものなの
で、是非手にとってご覧ください。




アンティーク西洋陶磁器専門店 
   アンティーク アーカイヴ  東京 二子玉川
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2018年09月23日

ウェリントン公爵のサービス       マイセン、セーブル、KPMベルリン、ウィーンの競作

「ウェリントンサービス」という食器セットをご存知です
か。正しくは「ウェリントン公爵のためのサービス」と
言います。

ウエリントン公爵は、ナポレオン戦争の際、連合軍を
率いて1815年のワーテルローの戦いに勝利した将軍
です。この勝利を記念し、思い出と感謝のしるしとして、
同盟諸国から贈られたのが、「ウェリントンサービス」
です。

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写真1)ウェリントン公爵の肖像

「ウェリントンサービス」がいかに重要なプロジェクト
であったか、以下国立マイセン磁器公団資料編纂室
の論文(マイセン磁器 美術出版社1990年)から引用
しましょう。

この仕事は単なる受注生産といった性格をこえて、
その成功が絶対に義務づけられていた。セーヴル、
ウィーン、ベルリン、マイセン―ヨーロッパの最高
峰に位置する四大磁器工場が総力をあげて、一つ
の<ウェリントンのセルヴィス>を製作するという
雄大な計画がそれである。マイセン工場はこのヨー
ロッパ磁器工場同士の最初で最後の競争に参加し、
自らの独創性をかけて、その力の証明を迫られた
のである。


では、実際にどんな作品が作られたのか、おおいに
興味をそそられますね。そのほんの一端を紹介しま
しょう。

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写真2)マイセン「ザクセンサービス」 1818年頃

マイセンの担当は、後に「ザクセンサービス」と呼ばれ
る134点からなるデザートアンサンブルです。オークと
ローレルの植物を周囲に配し、中の絵付けにはザク
センの風景やナポレオン戦争の様子が描かれました。



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写真3)セーブル「エジプシャンサービス」 1811年頃

セーブルは、ナポレオンのために作られていた「エジプ
シャンサービス」を「ウェリントンサービス」に振り替え
ました。これはナポレオンのエジプト遠征に発想を得た
食器セットであり、136の食器とセンターピースからな
るディナー用のアンサンブルです。
絵付けはセピアの単色で描かれた風景で、周囲には
エジプトの文様が添えられました。



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写真3)KPMベルリン「プロシアンサービス」1818年頃

KPMベルリンの担当は、ワインクーラーやコンポートを
含むディナーのアンサンブルでした。これらは「プロシ
アンサービス」と呼ばれていました。柏の葉を周囲に配
し、絵付けのモチーフはマイセンと同じく、戦いの様子
や関連する風景を描いたものでした。写真はイギリス
のイートン校です。



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写真4)ウィーン窯「ヴィエニーズサービス」1815年頃

ウィーン窯が担当したのも、デザートのアンサンブルで
す。装飾には歴史に関するモチーフが選ばれており、周
囲には古代ギリシャローマの小物が配され、中心には歴
史上の偉人の絵が描かれています。写真はジュリアス・
シーザーですね。


以上見てきたように、一つの目的で、マイセン、セーブル、
KPMベルリン、ウィーンの四大窯が共作したのですが、
このような例は現在までありません。正に一度きり、最初
で最後の例といえるでしょう。

なんとか、これらのサービスを一同に揃えてみる事は
できないものでしょうか。磁器の歴史における最高傑作
ですので、なんとか日本で実現できないものでしょうか?
無理ですかねぇ。




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2018年05月19日

セーブル 大型ベース  アートグレーズ 芸術釉の装飾

今回のブログは、セーブルの「アートグレーズ」の大型ベースを
紹介します。


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セーブル ベース「アートグレーズの装飾」H約35cm 1882年

19世紀の後半は、万国博覧会の時代でした。磁器は当時の
最先端技術で作られる工芸品でしたが、ヨーロッパの各窯が
驚いたのは、遠く東洋から展示された陶磁器でした。これらは
それまでのヨーロッパの磁器芸術にはない概念の作品でした。

ヨーロッパの磁器窯では、精密な絵付けや文様が磁器装飾
の最高峰であったのに対し、日本をはじめとする東洋の陶磁
器は、炎の中の釉薬が偶然に作り出す装飾に美を見出して
いたのです。こうした技法は「窯変」と呼ばれ、東洋では広く
親しまれていました。

このような東洋の美的価値観にいち早く反応した窯が、フランス
のセーブルです。セーブルは自身でもこうした装飾を作るべく、
研究を始めます。その結果完成されたのが、「オクセンブルート
=牛血紅」「カラックルグレーズ=貫入釉」「クリスタルグレーズ
=結晶釉」などの釉薬で、これらを総称して「芸術釉=アートグ
レーズ」と呼んでいます。



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写真2) 同上 クローズアップ

写真2)をご覧ください。セーブルがどのような技術を駆使して
この装飾を完成したのか、もはやよく分かりませんが、少なく
とも2種類の釉薬を使って、まるで大理石のような文様を作って
います。マイセンでは、筆を使って大理石のように描く技法が
知られていますが、セーブルのこの装飾は筆では絶対に描け
ない、正に炎の作り出した芸術です。


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写真3) 同上

セーブルらしいのは、この首の正確で均整のとれた美しさです。
東洋の陶磁器にありがちな形状の甘さ(これがまた東洋の魅力
なのですが・・)は皆無です。


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写真4) 同上

底部と首には金彩が施されていますが、これもセーブルらしい
です。東洋の感覚では、こうした窯変の器に金彩は使わないで
しょう。セーブルの金彩はつやかあり、まるで金属のような質感
を感じます。ボディーの釉薬は底の金彩を鏡のように映していま
す。


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写真5) 同上

そして、セーブルの一番すごいところは、この「アートグレーズ」を
磁器で作ってしまう事なのです。東洋の窯変は、そのほとんどが
焼成温度の低い陶器での製作であり、磁器の製品はあまりありま
せんでした。しかし、セーブルはこの問題を巧みに克服し、様々な
芸術釉を完成します。こうした技術を持つ窯は、当時のヨーロッパ
では、セーブルの他に、マイセン、コペンハーゲン、KPMベルリン
など極限られた窯だけでした。



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写真6) 同上 マーク

マークから、本作は白磁の製作年が1881年、アートグレーズの
装飾を施し最終的に作品として仕上がったのが、1882年と分か
ります。セーブルでは、アールヌーボー時代の初め、歴史主義や
ジャポニズムなどの様式が混在していた時代です。この後、1900
年頃を中心に、セーブルのアールヌーボー芸術が花咲くのはもう
少し後のことです。


是非、当店にて実物をご覧ください。




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        アンティーク アーカイヴ  東京 二子玉川
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2018年04月09日

セーブル プレート 「ル・アーヴル港の風景」

今回のブログは、セーブルのプレートを紹介します。

現在「セーヴル、創造の300年」展が巡回中ですが、4月7日から
は大阪市立東洋陶磁美術館で開催されています。東京での開催
は終了しましたが、現在セーブル陶磁器への関心は強く、たくさん
のお問い合わせを頂きます。

今回紹介する作品は、1983年に作られたものですが、オリジナル
は19世紀前半に製作されました。



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写真1) セーブル「ル・アーブル港の風景」 1983年

アガサブルーの地色に金彩の装飾はセーブルお家芸ですが、風
景が描かれているものは珍しいですね。個人的に風景の絵付けが
大好きなので、すぐに購入を決めました。


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写真2) 同作 裏面

本作の裏面から、フランスのル・アーヴルの港である事が分かり
ます。セーブルの作品は、制作年代や作品のモチーフなど、色々
な情報が付随されている事が多いです。表題の下に描かれている
Bのような文字は、絵付け師のイニシャルです。

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写真3) 同作 絵付けのクローズアップ

陶磁器絵付けのモチーフでは、元になる原画や銅版画が存在する
事が多いのですが、本作にはイギリス人芸術家による絵画がそれ
にあたります。


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写真4) 絵画 T.フィールディングによる 1825年頃

この絵画の作者はT.フィーディング、1793年生まれの画家です。
弟とともに王立協会の出品者であり、王立軍事アカデミーで絵を
描く教師でした。
風景画と得意とし1820年前後に活躍しましたが1837年に44歳で亡くなっています。
写真3)は「ル・アーヴル港」を描いた作品ですが、セーブルの絵付け
の原画になっている事は明らかです。


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写真5) 原画と磁器絵付けの比較

写真4)はフィールディングの原価とセーブルの磁器絵付けを比較
したものです。セーブルの絵付けが原画に忠実で描かれている事
がお分かりと思います。お皿の円形の窓の中に、原画を切り取って
上手く収めています。原画の右に位地する釣り人が、絵付けでは
中央に配されているのが面白いですね。


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写真6)現在のル・アーヴル港


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写真7) ル・アーヴルの地図

現在では大きく姿が変わってしまったル・アーヴル港ですが、セーヌ
川河口のこの町は、工業都市であると同時にリゾートでもあるそう
です。

多くの芸術家がこの港に魅せられ、作品のモチーフに選んでいます。
あのモネの「印象 日の出」もこの港を描いたものです。この作品は
あまりにも有名なので、モネの別の作品を紹介します。

モネ ルアーブル港







写真8) モネ 「ル・アーヴル港」 1874年


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写真9) セーブル プレート 裏面のマーク

最後にプレートのマークをお見せします。
マークから,白磁が出来上がったのが1983年,最終的に装飾
され、作品として完成されたのが1984年と分かります。

是非、店頭にてご覧ください。



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2017年12月22日

セーブル カップ&ソーサー 1836年  セーヴル窯 アンピール様式

今回のブログでは、現在開催中のセーヴル展にちなんで、
1836年に作られたティーカップ&ソーサーを紹介しましょう。

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写真1) セーブル C&S 「グリーン地 金彩」 1836年

グリーンの彩色が目を引く、ティーC&Sです。爽やかなグリーンと
セーブル独特の金彩がマッチして、本当に美しいC&Sです。

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写真2) 同上 ソーサー部分

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写真3) 同上 カップ

器型は現在でも作られている有名な「クーペ」ですね。

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写真4) セーブル公式カタログより


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写真5) セーブル公式カタログより

「クーペ」の原型が初めて作られたのは、1810年。第一ナポレオン
帝政時代のことであり、アンピール様式として有名なシェイプですね。

ただ、本作は単なる「クーペ」でなく、ハンドルに特徴があります。

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写真6) 同上 C&S ハンドル 部分

ハンドルの上の付け根の部分が二つに分かれており、上部に白磁
を残しながら、その下で一つにつながっていきます。

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写真7) 同C&S ハンドルとソーサーのクローズアップ

通常の「クーペ」には見られない美しい形のハンドルで、本作のハイ
ライトといっていいと思います。

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写真8) ソーサーの中心部

ソーサーの中心部にも絵付けがあります。器型はアンピールです
が、本作が最終的に完成された1836年は、ルイ・フィリップの時代
なので、何となく王室の優雅さを感じます。グリーンの地色はそれ
をよく表しているように思います。このグリーンは上絵の具であり、
均一に塗布するため、ぼかし筆のようなもので丹念に叩いて彩色
されています。この時代は19世紀終わりのように、絵の具をスプレ
ーでムラなく噴射するといったような技術はありませんでした。

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写真9) 実際のマークとマークブック

本マークは、セーブルにおいて1830年から1848年までつかわれた
ものですが、実際のマークには1836年に年代が入っており、マーク
ブックと適合しています。

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写真10) 同作を上から

写真10)は真上から撮影したものですが、セーブルの完成度が非
常に高いのがご理解頂けるのではないでしょうか。完璧な硬質磁器
と言えると思います。


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写真11) 同 カップとソーサー

現在開催中の「セーヴル展」の中に展示されていれば、多くの人々の
注目を集める作品になるでしょう。

どうぞ、当店にて手にとってご覧ください。




西洋陶磁器専門店
 
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